JP4429577B2 - 細胞内反応測定装置および細胞内反応測定方法 - Google Patents

細胞内反応測定装置および細胞内反応測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞内反応を光学的に測定する細胞内反応測定装置、細胞内反応測定方法に関し、特に、医薬品の開発過程におけるスクリーニングに好適な細胞内反応測定装置などに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、細胞内反応(例えば膜電位変化やイオン濃度変化)の光学的な測定は、多数の細胞を含む標本から放射される光の強度を測定視野内で一括検出することにより行われていた(例えば特許文献1を参照)。一括検出用の代表的な光検出器には、光電子増倍管やフォトダイオードがある。
【0003】
【特許文献1】
特許3172060号公報
例えば、膜電位変化を測定する場合、標本には、膜電位感受性の蛍光色素が予め導入される。また、イオン濃度変化を測定する場合には、イオン濃度感受性の蛍光色素が予め導入される。これらの蛍光色素は、細胞内反応測定用の蛍光プローブであり、膜電位変化やイオン濃度変化に応じて異なる強度の蛍光を放射する。このため、標本から放射される蛍光の強度を検出することで、膜電位変化やイオン濃度変化が測定できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術では、測定視野内の全て細胞から放射される光(例えば蛍光)の強度を一括検出している、つまり、測定視野内での平均的な光強度を検出しているため、測定視野内に反応性の高い細胞や反応性の低い細胞が混在していると、細胞内反応の測定感度および再現性が低下してしまう。
【0005】
なお、細胞内反応の測定感度および再現性を向上させるためには、反応性の高い細胞のみを含むように標本を調整することも考えられるが、その作業は非常に煩雑であり、膨大な労力と時間を必要とする。すなわち、反応性の高い細胞のみを含むような標本の調整は現実的ではない。
【0006】
本発明の目的は、標本の煩雑な調整作業を行わなくても、細胞内反応の測定感度と再現性を向上させることができる細胞内反応測定装置、細胞内反応測定方法提供することにある。
【0008】
第1の発明は、複数の細胞集団が非接触状態で含まれる標本を用いて、前記標本を照明して励起することにより前記細胞集団から発せられる蛍光を検出し、薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定装置において、前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質もしくは、前記蛋白質に結合した蛍光色素から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記複数の細胞集団のうち前記蛋白質の存在する発現細胞を含む注目集団を特定する特定手段と、前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目集団の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択手段と、を備えたものである。
【0010】
の発明は、第1の発明の細胞内反応測定装置において、前記特定手段によって特定された各々の注目集団に関し、前記蛋白質の存在する細胞の割合を算出する算出手段と、前記特定手段によって特定された注目集団のうち、前記割合が所定の基準割合よりも高い注目集団を選別する選別手段とを備え、前記選択手段は、前記第2の蛍光の強度を検出し、検出した前記第2の蛍光の強度のうち、前記選別手段によって選別された注目集団から放射される前記第2の蛍光の強度を測定対象とするものである。
【0011】
の発明は、第の発明の細胞内反応測定装置において、前記算出手段は、さらに前記特定手段によって特定された各々の注目集団に関し、全細胞の数の算出も行い、前記選別手段は、前記特定手段によって特定された注目集団のうち、前記割合が所定の基準割合よりも高く、かつ、前記全細胞の数が所定の基準数よりも少ない注目集団を選別するものである。
【0013】
の発明は、複数の細胞どうしが密着している標本を用いて、前記標本を照明して励起することにより前記細胞から発せられる蛍光を検出し、薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定装置において、前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質もしくは、前記蛋白質に結合した蛍光色素から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記蛋白質の存在する発現細胞の割合が所定の基準割合よりも高い注目領域を特定する特定手段と、前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目領域の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択手段と、を備えるものである。
【0019】
の発明は、第1から第4の何れかの発明の細胞内反応測定装置において、前記標本への前記薬物の導入タイミングを検知する検知手段を備え、前記選択手段は、前記薬物が導入される前と導入されてから一定時間後との少なくとも2回、前記第2の蛍光の強度を検出し、検出した前記第2の蛍光の強度のうち、前記注目集団または前記注目領域または前記注目細胞から放射される前記第2の蛍光の強度を測定対象として選択するものである。
【0021】
の発明は、第1から第5の何れかの発明の細胞内反応測定装置において、前記選択手段によって選択された前記第2の蛍光の強度に基づいて、前記細胞内反応に関わる測定情報を生成する生成手段を備えたものである。
【0022】
の発明は、複数の細胞集団が非接触状態で含まれる標本を用いて薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定方法において、前記薬物の標的となる蛋白質の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子を細胞に導入し、該細胞を培養した後で、細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入することにより、前記標本を調整する調整工程と、前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記複数の細胞集団のうち前記蛋白質の存在する発現細胞を含む注目集団を特定する特定工程と、前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目集団の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択工程とを備えたものである。
【0023】
の発明は、複数の細胞どうしが密着している標本を用いて薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定方法において、前記薬物の標的となる蛋白質の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子を細胞に導入し、該細胞を培養した後で、細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入することにより、前記標本を調整する調整工程と、前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記蛋白質の存在する発現細胞の割合が所定の基準割合よりも高い注目領域を特定する特定工程と、前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目領域の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択工程とを備えたものである。
【0025】
の発明は、第7または第8の発明の細胞内反応測定方法において、前記選択工程で選択された前記第2の光の強度に基づいて、前記細胞内反応に関わる測定情報を生成する生成工程を備えたものである
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0034】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態では、薬物による膜電位変化を高感度で再現性良く測定可能な細胞内反応測定装置の例を説明する。
ちなみに、膜電位変化の「膜」とは、細胞内に存在する膜(例えば細胞膜やミトコンドリア膜や核膜など)のことである。「膜電位」とは、膜外に対する膜内の電位のことである。ここで、第1実施形態と後述の第2,第3,第5実施形態での膜電位は、細胞膜電位である。
【0035】
第1実施形態の細胞内反応測定装置10は、図1に示すように、倒立型の蛍光顕微鏡(11〜16)と、薬物導入用のピペット17と、画像処理装置18と、表示装置19と、制御装置20とで構成されている。制御装置20内の記憶部には、薬物による膜電位変化を測定する手順を記載した細胞内反応測定プログラムが格納されている。
【0036】
蛍光顕微鏡(11〜16)には、光源11と、励起フィルタ12と、ダイクロイックミラー13と、対物レンズ14と、蛍光フィルタ15と、冷却CCDカメラ16とが設けられている。さらに、対物レンズ14の上方には、シャーレ21を支持するステージ(不図示)が設けられている。シャーレ21は底面が透明な培養容器であり、その中に、複数の培養細胞22を含む標本が入っている。
【0037】
第1実施形態の細胞内反応測定装置10の各構成要素(11〜20)について説明する前に、シャーレ21の中に入っている標本(複数の培養細胞22)の説明を行う。標本の調整は、概略、次の手順<1>〜<3>にしたがって行われる。
<1> まず初めに、薬物の標的となる蛋白質(以下「標的蛋白質」という)の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子を含む発現ベクターを作成し、この発現ベクターを用いて培養細胞に遺伝子を導入する。標的蛋白質とは、イオンチャネルや受容体(レセプタ)のことであり、膜電位変化を誘発する蛋白質である。蛍光性蛋白質とは、蛍光性を有する蛋白質のことである。
【0038】
なお、後述の具体的な測定例では、標的蛋白質として、ラット由来の小コンダクタンスCa2+依存性 K+チャネル(以下「rSK2チャネル」という)を用い、これに作用する既知の薬物として、300μM chlorzoxazone(rSK2チャネル開口薬)と、100nM apamin(rSK2チャネル阻害薬)とを用い、蛍光性蛋白質として、Green Fluorescence Protein(以下「GFP」という)を用いる。
【0039】
rSK2チャネルなどのイオンチャネルは、生体のあらゆる細胞の膜電位を形成する上で不可欠な因子である。特に、神経・筋・分泌線などの細胞において、生体電気信号の発生・伝搬・伝達および収縮、さらにはホルモンなどの生理活性物質分泌などの細胞生理機能を発揮する上できわめて重要な因子として働く。
イオンチャネル開口薬や阻害薬などのイオンチャネル作用薬は、不整脈・高血圧症・糖尿病などの多くの重大な疾患の治療において、組織機能障害を回復・制御する目的で既に用いられている。さらに近年、中枢神経の虚血性障害からの保護や緊張性膀胱・気道過敏症・消化管運動不全・アトピー性皮膚炎などの多様な疾患の治療を目的とした新薬の開発が、イオンチャネルを標的として試みられている。
【0040】
<2> 次に、上記の発現ベクターが導入され、標的蛋白質の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子が導入された培養細胞をシャーレ21の中で培養する。培養細胞は、通常、集団を形成しながら増殖していく。このため、培養条件や培養時間を制御することにより、細胞集団(コロニー)どうしが密着しないように培養することができる。
【0041】
その結果、シャーレ21の中の標本には、図2に示すように、複数の細胞集団23が非接触状態で含まれることになる。各細胞集団23における培養細胞22の数は、数個〜数十個である。各細胞集団23の培養細胞22どうしは密着している。なお、細胞集団23どうしの間は培養液で満たされている。
このように、複数の細胞集団23が非接触状態で含まれるように標本を培養するのは、第1実施形態の細胞内反応測定装置10において、薬物による膜電位変化の測定を細胞集団23ごとに行うためである。
【0042】
標本(図2参照)において、幾つかの培養細胞22には、膜の表面に標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)が発現する。さらに、標的蛋白質が発現した培養細胞22のほぼ全てには、蛍光性蛋白質(例えばGFP)が発現する。したがって、標的蛋白質と蛍光性蛋白質とは、常に、1つの培養細胞22の中で共に発現する。
このため、蛍光性蛋白質から放射される蛍光の有無に基づいて、標的蛋白質の存在を確認することができる。つまり、蛍光性蛋白質からの蛍光が現れた培養細胞22には、標的蛋白質が発現していると考えることができる(詳細は後述する)。
【0043】
標的蛋白質が発現した培養細胞22(以下「発現細胞」という)では、後述の測定時に薬物(例えばrSK2チャネル開口薬などの作用薬)が導入されると、薬物による膜電位変化を引き起こす。逆に、標的蛋白質が発現していない培養細胞22(以下「非発現細胞」という)では、基本的に、薬物が導入されても膜電位変化が起こらない。
【0044】
しかし、1つの細胞集団23の中に発現細胞が10%程度(またはそれ以上)の割合で存在していれば、薬物による膜電位変化は、発現細胞だけでなく、発現細胞を含む細胞集団23で全体的に起こることが分かった。細胞集団23の中では、培養細胞22どうしの接触により、発現細胞での膜電位変化が近隣の非発現細胞に伝播するからと考えられる。
【0045】
第1実施形態の細胞内反応測定装置10では、この性質を利用して、薬物による膜電位変化を細胞集団23ごとに測定する。したがって、標本における発現細胞の割合(発現効率)が低く、変動が大きくても、薬物による膜電位変化を高感度で再現性良く測定することができる(詳細は後述する)。このため、標的蛋白質が定常的に発現する細胞標本の作成など、煩雑で日時を要する調整作業が不要となる。
【0046】
<3> 調整作業の最後に、シャーレ21の中の標本(複数の細胞集団23)に対して、全体的に細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入する。本実施形態では、この蛍光プローブは、膜電位感受性の蛍光色素である。この蛍光色素には、膜電位の絶対値を測定するためものや、膜電位の相対変化を測定するためのものがある。
【0047】
なお、後述の具体的な測定例では、膜電位感受性の蛍光色素として、Oxonol系のbis-(1,2-dibutylbarbituric acid)-trimethine oxonol(以下「DiBAC4(3)」という)を用いる。このDiBAC4(3)から放射される蛍光は、上記のGFPから放射される蛍光と、波長域が異なっている。したがって、これら2種類の蛍光は、明確に区別して検出可能である。
【0048】
このように、標本の全体に膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))を導入するため、標本の中の全ての培養細胞22では、それが標的となる蛋白質を発現している細胞であるか発現していない細胞であるかに関係なく、導入された蛍光プローブから蛍光を放射する。このため、膜電位感受性の蛍光プローブから放射される蛍光の有無に基づいて、全ての培養細胞22(つまり複数の細胞集団23)の存在を確認することができる。
【0049】
膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))は、後述の測定時に薬物が導入されると、薬物による膜電位変化に応じて異なる強度の蛍光を放射する。既に説明したように、膜電位変化は、発現細胞を含む細胞集団23で全体的に起こるため、膜電位感受性の蛍光色素から放射される蛍光の強度変化も、発現細胞を含む細胞集団23で全体的に起こる。
【0050】
これに対し、発現細胞を含まない細胞集団23では、薬物が導入されても膜電位変化が起こらないため、膜電位感受性の蛍光色素から放射される蛍光の強度も基本的には変化しない。ただし、アーチファクト(雑音成分)として、多少の強度変化が現れることもある。
上記のように、手順<1>〜<3>を経て調整された標本には、複数の細胞集団23が非接触状態で含まれ(図2参照)、かつ、標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)と蛍光性蛋白質(例えばGFP)を同時に持つ発現細胞が通常の発現効率(例えば20%〜30%程度)で含まれ、かつ、膜電位感受性の蛍光プローブ(例えばDiBAC4(3))が全体的に導入される。
【0051】
次に、細胞内反応測定装置10について説明する。第1実施形態の細胞内反応測定装置10では、標本内の蛍光性蛋白質(例えばGFP)から放射される蛍光と、膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))から放射される蛍光とを区別して検出するために、蛍光顕微鏡(11〜16)の励起フィルタ12,ダイクロイックミラー13,蛍光フィルタ15(総じて「フィルタセット」という)が切り替え可能となっている。
【0052】
例えばGFPから放射される蛍光の検出に最適なフィルタセットは、470nm〜490nmの波長域を透過する励起フィルタ12と、505nmよりも短波長域を反射して長波長域を透過するダイクロイックミラー13と、520nm〜560nmの波長域を透過する蛍光フィルタ15との組み合わせである。
【0053】
DiBAC4(3)から放射される蛍光の検出に最適なフィルタセットは、540nm〜580nmの波長域を透過する励起フィルタ12と、595nmよりも短波長域を反射して長波長域を透過するダイクロイックミラー13と、600nm〜660nmの波長域を透過する蛍光フィルタ15との組み合わせである。
第1実施形態の細胞内反応測定装置10において、蛍光性蛋白質(例えばGFP)用のフィルタセットと、膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))用のフィルタセットとの切り替え動作は、制御装置20からの制御信号に応じて自動的に行われる。
【0054】
細胞内反応測定装置10では、GFP用のフィルタセットが蛍光顕微鏡(11〜16)に挿入されているとき、このフィルタセットと対物レンズ14を介して、シャーレ21の中の標本(複数の細胞集団23)が落射照明され、発現細胞内のGFPが励起される。励起光の中心波長は480nmである。なお、対物レンズ14は、例えば40倍の油浸レンズである。
【0055】
また、発現細胞内のGFPから放射された蛍光(中心波長は約510nm,緑色)は、対物レンズ14とフィルタセット(GFP用)を介して、冷却CCDカメラ16に入射する。冷却CCDカメラ16では、GFPからの蛍光に基づいて標本像(発現細胞の像)を撮影し、画像処理装置18に蛍光画像を出力する。
一方、DiBAC4(3)用のフィルタセットが蛍光顕微鏡(11〜16)に挿入されているときには、このフィルタセットと対物レンズ14を介して、シャーレ21の中の標本が落射照明され、全ての培養細胞22内のDiBAC4(3)が励起される。励起光の中心波長は560nmである。
【0056】
全ての培養細胞22内のDiBAC4(3)から放射された蛍光(中心波長は630nm,赤色)は、対物レンズ14とフィルタセット(DiBAC4(3)用)を介して、冷却CCDカメラ16に入射する。冷却CCDカメラ16では、DiBAC4(3)からの蛍光に基づいて標本像(細胞集団23の像)を撮影し、画像処理装置18に蛍光画像を出力する。
【0057】
このように、細胞内反応測定装置10では、制御装置20からの制御信号に応じてフィルタセットの組み合わせを切り替えるだけで、蛍光性蛋白質(例えばGFP)による発現細胞の蛍光画像と、膜電位感受性蛍光色素(例えばDiBAC4(3))による細胞集団23の蛍光画像とを順に取り込むことができる。
細胞内反応測定装置10において、蛍光性蛋白質(例えばGFP)による発現細胞の蛍光画像の取り込みは1回だけ行われ、膜電位感受性蛍光色素(例えばDiBAC4(3))による細胞集団23の蛍光画像の取り込みは一定の時間間隔で(例えば10secおきに)繰り返し行われる。このような2種類の画像取り込み動作は、制御装置20からの制御信号に応じて自動的に切り替えられる。
【0058】
各々の蛍光画像は、画像処理装置18内の記憶装置(例えばハードディスク)に記録され、以降の画像処理時(後述の膜電位変化に関わる測定情報を生成する際)、必要に応じて読み出される。また、各々の蛍光画像は、適宜、表示装置19に表示される。蛍光画像の大きさ(測定視野)は、標本上で、例えば210μm×170μmである。
【0059】
さらに、細胞内反応測定装置10では、薬物による膜電位変化を測定するために、膜電位感受性蛍光色素(例えばDiBAC4(3))による細胞集団23の蛍光画像を繰り返し取り込みながら、途中で、ピペット17からシャーレ21内の標本に薬物(rSK2チャネル開口薬や阻害薬)を導入する。このような薬物の導入タイミングは、制御装置20からの制御信号に応じて自動的に設定される。
【0061】
次に、上記のように構成された細胞内反応測定装置10における膜電位変化の測定手順について、図3,図4を用いて説明する。制御装置20は、内部に格納されている細胞内反応測定プログラムを参照しながら、薬物による膜電位変化の測定を行う。
ここでは、図3(a)に示すように、測定視野10aの中に2個の細胞集団23(1),(2)が含まれているとして説明を行う。ただし、測定視野10aの中に含まれる細胞集団23の数が1個であっても3個以上であっても、同じように測定できることは言うまでもない。
【0062】
2個の細胞集団23(1),(2)のうち、一方の細胞集団23(1)には、標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)と蛍光性蛋白質(例えばGFP)を同時に持つ発現細胞22aが1つ含まれ、他方の細胞集団23(2)には、発現細胞22aが全く含まれないとする。図3(a)では、発現細胞22aに点ハッチングを付した。非発現細胞22bにはハッチングが付されていない。
【0063】
制御装置20は、まず初めに、蛍光性蛋白質(例えばGFP)用のフィルタセットを挿入する(図4のステップS1)。このとき、図3(a)の測定視野10a内では、細胞集団23(1)の発現細胞22a(点ハッチング部分)の蛍光性蛋白質のみから蛍光が放射される。
この状態で、制御装置20は、画像処理装置18を介して冷却CCDカメラ16を制御し、細胞集団23(1)の発現細胞22aの蛍光性蛋白質から放射される蛍光に基づいて、1枚の蛍光画像Aを取り込み(ステップS2)、画像処理装置18の記憶装置に記録させる。この蛍光画像Aは、測定視野10a内での発現細胞22aを含む細胞集団23(1)の特定に用いられる(後述する)。
【0064】
次に、制御装置20は、膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))用のフィルタセットに切り替える(ステップS3)。このとき、測定視野10aでは、図3(b)に示すように、2個の細胞集団23(1),(2)を構成する全ての培養細胞(発現細胞22aおよび非発現細胞22b)に導入された膜電位感受性蛍光色素から蛍光が放射される。
【0065】
この状態で、制御装置20は、画像処理装置18を介して冷却CCDカメラ16を制御し、発現細胞22a,非発現細胞22bの両方の膜電位感受性蛍光色素から放射される蛍光に基づいて、一定時間(例えば10sec)おきに蛍光画像Bを取り込み(ステップS4)、画像処理装置18の記憶装置に記録させる。この蛍光画像Bは、測定視野10a内での細胞集団23(1),(2)の特定や、薬物による膜電位変化の測定情報を生成するために用いられる(後述する)。
【0066】
さらに、制御装置20は、ステップS4で蛍光画像Bを繰り返し取り込みながら、途中の予め決められたタイミングにおいて、ピペット17から標本に2種類の薬物を順に導入する。例えば、標的蛋白質の開口薬(例えば chlorzoxazone)を導入した後、標的蛋白質の阻害薬(例えば apamin)を導入することにより、標本の培養液内での薬物の組成を変化させる。
【0067】
したがって、発現細胞22aを含む細胞集団23(1)では、膜電位感受性の蛍光色素(例えばDiBAC4(3))から放射される蛍光の強度が、薬物の導入に応じて全体的に変化する。具体的には、標的蛋白質の開口薬の導入によって蛍光の強度が大きく減少し、標的蛋白質の阻害薬の導入によって強度が回復する。なお、発現細胞22aを含まない細胞集団23(2)では、顕著な強度変化は起こらない。
【0068】
制御装置20は、上記ステップS1〜S4の結果、1枚の蛍光画像Aと多数の蛍光画像Bを取り込み終えると、画像処理装置18を制御して、次のステップS5〜S9の処理を実行させ、薬物による膜電位変化の測定情報を生成させる。なお、蛍光画像Aは、発現細胞22aの画像である。蛍光画像Bは、細胞集団23(1),(2)の画像である。
【0069】
画像処理装置18は、まずステップS5で、1枚の蛍光画像Aの輝度情報を検出することにより、測定視野10a内の発現細胞22aに対応する高輝度領域(以下「発現細胞領域a」という)を全て抽出する。発現細胞領域aの抽出は、蛍光画像Aの2値化によって行われる。蛍光画像Aの輝度情報は、蛍光性蛋白質(例えばGFP)から放射される蛍光の強度を表している。
【0070】
さらに、ステップS5では、全ての発現細胞領域aのうち、連続して輝度の高い部分(つまり閉じた部分)を“1つの発現細胞に対応する領域”と判断する。図3(a)のように1個の発現細胞22aのみが存在する場合、発現細胞領域aは1つの部分からなる。仮に、2個の発現細胞22aが存在すれば、発現細胞領域aは2つに分かれていることになる。
【0071】
次のステップS6では、多数の蛍光画像Bのうち任意の1枚(例えば薬物導入前のもの)を選択し、その輝度情報を検出することにより、測定視野10a内の細胞集団23(1),(2)に対応する高輝度領域(以下「細胞集団領域b」という)を全て抽出する。細胞集団領域bの抽出も、蛍光画像Bの2値化によって行われる。蛍光画像Bの輝度情報は、膜電位感受性蛍光色素(例えばDiBAC4(3))から放射される蛍光の強度を表している。
【0072】
ステップS6では、全ての細胞集団領域bのうち、連続して輝度の高い部分(つまり閉じた部分)を“1つの細胞集団に対応する領域”と判断する。図3(b)のように2個の細胞集団23(1),(2)が存在する場合、細胞集団領域bは、2つの部分に分かれていることになる。
以下の説明では、ステップ6の処理の対象となった蛍光画像B、および、他の蛍光画像Bの各々において、細胞集団領域bのうちの細胞集団23(1)に対応する部分を「細胞集団領域b(1)」、細胞集団23(2)に対応する部分を「細胞集団領域b(2)」という。
【0073】
次のステップS7では、ステップS5,S6での抽出結果を用い、発現細胞領域aを含む蛍光画像Aと、細胞集団領域b(1),(2)を含む蛍光画像Bとを重ね合わせて、細胞集団領域b(1),(2)のうち発現細胞領域aを1つ以上含むものを選択する。例えば図3(a),(b)の場合、細胞集団23(1)に対応する細胞集団領域b(1)のみが選択される。
【0074】
そして、次のステップS8,S9において、画像処理装置18は、選択した細胞集団領域b(1)に注目して、薬物による膜電位変化の測定情報を生成する。なお、上記のステップS5〜S7の処理は、測定視野10aの中に含まれる細胞集団23(1),(2)のうち、発現細胞22aを1つ以上含む注目集団(つまり細胞集団23(1))を特定する処理に対応している。“発現細胞22aを含む”とは、“標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)を含む”という意味である。
【0075】
画像処理装置18は、次のステップS8において、ステップS4で一定時間おきに取り込んだ各々の蛍光画像Bの中から、ステップS7で選択した細胞集団領域b(1)の輝度情報を選択的に検出し、蛍光画像Bごとに平均輝度を算出する。
なお、細胞集団領域b(1)の輝度情報は、発現細胞22aを含む注目集団(つまり細胞集団23(1))から放射される蛍光の強度を表している。平均輝度は、注目集団から放射される蛍光の平均強度を表している(以下の説明において単に「蛍光強度」という)。
【0076】
そして最後のステップS9において、各々の蛍光画像Bごとに算出した平均輝度(つまり発現細胞22aを含む注目集団から放射される蛍光強度)の時間変化を解析することにより、注目集団の膜電位変化に関わる測定情報を生成する。膜電位変化に関わる測定情報とは、例えば、標的蛋白質の開口薬(例えば chlorzoxazone)を導入してから阻害薬(例えば apamin)を導入するまでの間に、蛍光強度が減少した割合(減少率)である。
【0077】
このように、第1実施形態の細胞内反応測定装置10では、測定視野10aの中の細胞集団23(1),(2)のうち、発現細胞22aを含む注目集団(つまり細胞集団23(1))から放射される蛍光の強度を選択的に検出し、薬物による膜電位変化の測定情報を生成する(例えば蛍光強度の減少率を求める)ため、高感度で再現性良く膜電位変化を測定できる。
【0078】
最後に、具体的な標本の調整例と、これを用いた測定例について説明する。
標本の調整は、上述の手順<1>〜<3>にしたがって行われる。
手順<1>では、まず初めに、哺乳動物細胞発現ベクターである Ptracer-CMV2(Invitrogen,USA)に対し、全長をクローニングしたrSK2チャネルの遺伝子(cDNA)を挿入して、発現ベクターを作成する。Ptracer-CMV2には、元々、GFPの遺伝子が組み込まれている。
【0079】
次に、ヒト胎児腎臓由来の培養細胞(以下「HEK293細胞」という)(ヒューマンサイエンス研究資源バンク,日本)を105個/mlの濃度で含む溶液に対して、リン酸カルシウム共沈法により、上記の発現ベクターを導入する。
手順<2>では、発現ベクターの導入により、rSK2チャネルの遺伝子およびGFPの遺伝子が導入されたHEK293細胞を、シャーレ21の中で培養する。このときの培地は、10%ウシ胎児血清(FCS;JRS Biosciences,USA)を添加した Minimum Essential Medium 培地(Gibco BRL,USA)である。培養時間は36〜48時間、培養温度は37度である。
【0080】
発現ベクターを導入後、36〜48時間が経過したHEK293細胞を測定に使用する。このとき、シャーレ21の中には、複数のHEK293細胞からなる細胞集団23(図2参照)が非接触状態で含まれている。さらに、幾つかのHEK293細胞には、rSK2チャネルとGFPとが同時に発現している。この発現効率は、例えば20%〜30%程度である。
【0081】
手順<3>では、シャーレ21の中の標本に対して、全体的に、膜電位感受性蛍光色素であるDiBAC4(3)(Molecular Probes,USA)を導入する。つまり、DiBAC4(3)を50nMの濃度で含む生理塩類溶液に、約30分間、HEK293細胞を浸して負荷させる。このような負荷は、膜電位変化の測定中にも継続させる。
【0082】
調整後の標本を用いた測定は、図4のフローチャート(ステップS1〜S9)の手順にしたがって行われる。測定温度は、室温(24±1℃)である。
以下の測定例を説明するに当たって、適宜、標本の位相差顕微鏡写真(図5)を参照する。この写真と後述の図6から分かるように、測定視野の中には2個の細胞集団GFP(+),GFP(−)が含まれている。また、一方の細胞集団GFP(+)は20個〜30個のHEK293細胞を含み、他方の細胞集団GFP(−)は4個のHEK293細胞を含む。
【0083】
細胞内反応測定装置10の制御装置20は、図4のステップS1,S2を実行することにより、測定視野の中に存在するGFPから放射される蛍光に基づいて、1枚の蛍光画像A(図6)を取り込む。蛍光画像Aは、発現細胞(rSK2チャネルとGFPとを同時に発現したHEK293細胞)の画像である。
次に、ステップS3,S4を実行することにより、測定視野の中に存在するDiBAC4(3)から放射される蛍光に基づいて、10secおきに蛍光画像B(図7)を取り込む。蛍光画像Bは、細胞集団GFP(+),GFP(−)の画像である(図5も参照)。蛍光画像Bの取り込みは、およそ16分間、継続的に行われる。
【0084】
さらに、ステップS4で蛍光画像Bを繰り返し取り込みながら、途中の予め決められたタイミングt1において、300μM chlorzoxazone(rSK2チャネル開口薬)を導入し、その後のタイミングt2において、100nM apamin(rSK2チャネル阻害薬)を導入する。
このようにして、上記ステップS1〜S4の結果、制御装置20による1枚の蛍光画像A(図6)および多数の蛍光画像B(図7)の取り込みが終了すると、以降は、画像処理装置18がステップS5〜S9の処理を実行し、薬物による膜電位変化の測定情報を生成する。
【0085】
すなわち、蛍光画像A(図6)の輝度情報に基づいて、蛍光画像Aの中に現れた全ての高輝度領域(つまり発現細胞領域a)を、発現細胞ごとに抽出する(ステップS5)。図6の場合、蛍光画像Aの中には、3つの発現細胞領域aが存在している。
さらに、薬物導入前の蛍光画像B(図7)の輝度情報に基づいて、蛍光画像Bの中に現れた全ての高輝度領域(つまり細胞集団領域b)を、細胞集団ごとに抽出する(ステップS6)。図7の場合、蛍光画像Bの中には、2つの細胞集団領域bが存在している。ここで、蛍光画像Bと図5の写真を比較すると分かるように、2つの細胞集団領域bは、測定視野の中の2個の細胞集団GFP(+),GFP(−)に対応している。
【0086】
そして次に、3つの発現細胞領域aを含む蛍光画像A(図6)と、2つの細胞集団領域bを含む蛍光画像B(図7)とを重ね合わせて、2つの細胞集団領域bのうち発現細胞領域aを1つ以上含むものを選択する(ステップS7)。
例えば図5〜図7の場合、一方の細胞集団GFP(+)に対応する細胞集団領域bが3つの発現細胞領域aを含むため、この細胞集団領域bのみがステップS7で選択される。
【0087】
なお、細胞集団領域bに含まれる発現細胞領域aの数によって、測定視野の中の細胞集団GFP(+),GFP(−)に含まれる各々の発現細胞の数を知ることができる。例えば図5〜図7の場合、細胞集団GFP(+)は3個の発現細胞を含み、細胞集団GFP(−)は発現細胞を全く含まない。
次いで、画像処理装置18は、細胞集団GFP(+)に対応する細胞集団領域bに注目してステップS8の処理を行う。つまり、多数の蛍光画像B(図7)の中から、細胞集団GFP(+)に対応する細胞集団領域bの輝度情報を選択的に検出し、蛍光画像Bごとに平均輝度を算出する。つまり、細胞集団GFP(+)から放射される蛍光強度を算出する。
【0088】
そして最後に、各々の蛍光画像Bごとに算出した平均輝度、すなわち、細胞集団GFP(+)から放射される蛍光強度の時間変化(図8)を求め、これを解析することにより、細胞集団GFP(+)の膜電位変化に関わる測定情報を生成する(ステップS9)。
図8の横軸は、蛍光画像B(図7)の取り込み開始(以下「測定開始」という)後の経過時間 time(min)を表す。縦軸は、測定開始時に細胞集団GFP(+)から放射された蛍光強度F0と、任意の経過時間において細胞集団GFP(+)から放射された蛍光強度Fとの比 ratio(F/F0)を表す。
【0089】
なお比較のため、図8には、発現細胞を全く含まない細胞集団GFP(−)から放射される蛍光強度の時間変化(アーチファクト)も併せて示した。さらに、図8の上方に示した2本の横線は、標本の培養液中に薬物(chlorzoxazone,apamin)が含まれている時間を表している。各々の横線の左端は、薬物の導入タイミングt1,t2に対応する。
【0090】
細胞集団GFP(+)から放射される蛍光強度の時間変化(図8)から次のことが分かる。つまり、300μM chlorzoxazone(rSK2チャネル開口薬)の導入により、細胞集団GFP(+)では、細胞集団GFP(−)と比較して、顕著な蛍光強度の減少(つまり過分極)が現れる。さらに、100nM apamin(rSK2チャネル阻害薬)の導入により、上記の蛍光強度の減少が抑制される。
【0091】
細胞集団GFP(+)の膜電位変化に関わる測定情報は、例えば次のようにして生成される。つまり、細胞集団GFP(+)の蛍光強度の時間変化(図8)のうち、300μM chlorzoxazoneを導入する前の蛍光強度を100%として、300μM chlorzoxazoneを導入してから一定時間後(2種類目の100nM apaminを導入するタイミング)における蛍光強度(%)を求め、その減少率Δ(%)を求めることで生成される。
【0092】
図8の例では、rSK2チャネルを発現させた標本に対する 300μM chlorzoxazone の導入によって、蛍光強度が約20%減少するという測定結果が、膜電位変化に関わる測定情報として得られたことになる。
【0093】
さらに、異なる5つのシャーレ21の中で調整された各々の標本を用いて、同様の測定を行った結果(図9)について説明する。図9の縦軸は、300μM chlorzoxazone を導入する前の蛍光強度を100%として、300μM chlorzoxazone の導入による蛍光強度の減少率 response rate (%)を表す。2個の細胞集団GFP(+),GFP(−)の各々の測定結果を比較することで、Student の t-検定により、**p<0.01 の有意差が認められた。
【0094】
この具体例からも明かなように、発現細胞を全く含まない細胞集団GFP(−)が測定視野の中に存在しても、細胞集団GFP(−)からの擬似的な蛍光強度は検出せず、発現細胞を1つ以上含む細胞集団GFP(+)からの本質的な蛍光強度のみを選択的に検出するため、薬物による膜電位変化の測定情報(例えば蛍光強度の減少率Δ)を高感度で再現性良く求めることができる。
【0095】
さらに、標本における発現細胞の割合(発現効率)が低くても、また、標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)などの発現が一過性であっても、薬物による膜電位変化を高感度で再現性良く測定できるため、標本の調整作業を確実に簡略化できる。
なお、上記した第1実施形態では、図4のステップS5〜S7の処理によって発現細胞を含む注目集団(図3の細胞集団23(1))を特定したが、本発明はこれに限定されない。
【0096】
例えば、ステップS6で1枚の蛍光画像Bから高輝度領域(細胞集団領域b)を全て抽出する代わりに、ステップS5で抽出した発現細胞領域aを1つ以上含むような細胞集団領域bのみを、直接、蛍光画像Bから抽出してもよい。この場合、ステップS7の処理は省略される。
また、上記した第1実施形態では、図4のステップS1〜S4の処理によって蛍光画像A,Bを全て取り込み終えた後に、薬物による膜電位変化の測定情報を生成する処理(ステップS5〜S9)を行ったが、本発明はこれに限定されない。
【0097】
例えば、ステップS2で蛍光画像Aを取り込んだ直後に、蛍光画像Aからの発現細胞領域aの抽出(ステップS5の処理)を行ってもよい。この場合、測定視野10aの中に発現細胞22aが存在することを確認後、ステップS3,S4,S6,…の処理を実行できるので、膜電位変化の測定を効率良く行うことができる。ただし、発現細胞22aの存在確認は、表示装置19で行っても良い。
【0098】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、薬物による膜電位変化を高感度で再現性良く測定可能な細胞内反応測定装置の例を説明する。
第2実施形態の細胞内反応測定装置は、上記の細胞内反応測定装置10における膜電位変化の測定手順(図4)のステップS7とS8の間に、画像処理装置18が後述の処理<S11>〜<S13>を行うものである
【0099】
ちなみに、上記の細胞内反応測定装置10では、蛍光画像Bの中で、発現細胞領域aを1つ以上含む細胞集団領域bを選択すると(S7)、ここで選択した細胞集団領域bに注目してステップS8以降の処理を行った。
第2実施形態の細胞内反応測定装置では、ステップS7の処理により、発現細胞領域aを1つ以上含む細胞集団領域bを選択すると、ステップS8の処理に進む前に、次の処理<S11>〜<S13>を実行する。
【0100】
<S11> まず、ステップS7で選択された細胞集団領域b(1つ以上の発現細胞領域aを含む)ごとに、発現細胞領域aの割合を算出する。これは、測定視野10a内の注目集団(1つ以上の発現細胞22aを含む)ごとに、発現細胞22aの割合を算出する処理に対応している。
<S12> 次に、ステップS7で選択された細胞集団領域b(1つ以上の発現細胞領域aを含む)ごとに、全て細胞領域の数を算出する。これは、測定視野10a内の注目集団(1つ以上の発現細胞22aを含む)ごとに、全細胞の数を算出する処理に対応している。
【0101】
<S13> 最後に、測定視野10a内の注目集団(1つ以上の発現細胞22aを含む)のうち、発現細胞22aの割合が20%よりも高く、かつ、全細胞の数が20個よりも少ない注目集団を選別する。
その後、図4のステップS8以降の処理を実行し、上記の処理<S11>〜<S13>によって選別された注目集団(細胞数が比較的少なく発現細胞の割合が高い細胞集団)から放射される蛍光の強度を選択的に検出することで、薬物による膜電位変化の測定情報(例えば蛍光強度の減少率Δ)を求める。したがって、測定感度と再現性がさらに向上する。
【0102】
ここで、様々な細胞集団GFP(+)の各々において、発現細胞の割合(%)(横軸)と、300μM chlorzoxazone の導入による蛍光強度の減少率 response rate (%)(縦軸)との関係を調べた結果を図10に示す。対象とした細胞集団GFP(+)の数は、41個である。
図10の各測定点は、細胞集団GFP(+)の全細胞の数nごとに異なるマーク(●:n=1〜5,★:n=6〜10,■:n=11〜20,▲:n=21〜30,×:n>31)により区別してある。これらの測定点から、全細胞の数nが多い細胞集団(×,▲)では、薬物に対する蛍光強度の減少率(%)が小さいということが分かる。このため、第2実施形態では、上記のように、全細胞の数nが20個より少ない細胞集団(●,★,■)に注目した。
【0103】
さらに、図10の“測定点○”は、全て(41個)の細胞集団GFP(+)における平均値と標準誤差を表している。発現細胞の割合の平均値は 26.8% 、薬物の導入による蛍光強度の減少率の平均値は 15.2% であった。
図10の“測定点□”は、発現細胞の割合が20%以上の24個の細胞集団GFP(+)における平均値と標準誤差を表している。発現細胞の割合の平均値は 37.82% 、薬物の導入による蛍光強度の減少率の平均値は 19.8% であった。
【0104】
また、図10の“測定点▽”は、上記の測定点○,□との比較のために示したものであり、発現細胞を全く含まない細胞集団GFP(−)に関する。つまり、異なるシャーレ21から得た8個の細胞集団GFP(−)における平均値と標準誤差を表している。細胞集団GFP(−)の場合、薬物の導入による蛍光強度の減少率(アーチファクト)の平均値は 5.2% であった。
【0105】
これらの測定点○,□,▽から次のことが分かる。つまり、発現細胞の割合が20%以上の細胞集団GFP(+)を選別し、薬物の導入による蛍光強度の減少率を求めることで、アーチファクト(細胞集団GFP(−)における蛍光強度の減少率)の4倍の反応を検出できる。なお、測定点○は、アーチファクトに対して0.1%の危険率で有意差を持っている。
【0106】
なお、上記した第2実施形態では、処理<S13>において、発現細胞の割合と全細胞の数との双方を各々の基準値と比較することにより、注目集団(細胞集団GFP(+))を選別したが、本発明はこれに限定されない。発現細胞の割合のみを基準割合と比較して注目集団を選別しても良いし、全細胞の数のみを基準数と比較して注目集団を選別しても良い。
【0107】
さらに、上記した第1,第2実施形態では、発現細胞を全く含まない細胞集団GFP(−)の蛍光強度の減少率(例えば図8,図9,図10の測定点▽)に基づいて、薬物導入時のアーチファクトを測定できるため、このアーチファクトとの比較によって、発現細胞を含む細胞集団GFP(+)の薬物導入による蛍光強度の減少率を極めて正確に測定することができる。
【0108】
ここでアーチファクトとは、標的のrSK2蛋白質に直接作用することなく、DiBAC4(3)の蛍光強度を変化させる反応のすべてを含んでいる。したがって、薬物が標的のrSK2蛋白質に直接作用することなく、他の作用によって(例えば細胞エネルギー生産を阻害するなどして)、間接的に膜電位を変化させる副作用的な反応を含んでいる。そのため、GFP(−)集団での薬物による蛍光強度の変化(アーチファクト)も細胞内反応を検出する場合に、重要な情報を提供する。
【0109】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態では、薬物による膜電位変化を高感度で再現性良く測定可能な細胞内反応測定装置の例を説明する。
第3実施形態の細胞内反応測定装置は、上記した第1,第2実施形態と異なり、複数の培養細胞どうしが密着し、ほぼシート状になった標本を用いて、薬物による膜電位変化を測定するものである。このため、上記の細胞内反応測定装置10における膜電位変化の測定手順(図4)のステップS6,S7に代えて、後述の処理<S21>〜<S23>を行うように構成されている。また、これに付随して、処理<S21>〜<S23>の後に実行する図4のステップS8にも多少の変更がある(後述する)。
【0110】
ここで、処理<S21>〜<S23>について具体的に説明する前に、標本の調整について説明しておく。標本の調整は、上述の手順<1>〜<3>のうち、手順<2>を次の手順<4>に置き換えたものである。
<4> 発現ベクターの導入によって、標的蛋白質(例えばrSK2チャネル)の遺伝子および蛍光性蛋白質(例えばGFP)の遺伝子が導入された培養細胞(例えばHEK293細胞)をシャーレ21の中で培養する際、培養条件や培養時間を変更することにより、細胞集団どうしが密着するように培養する。
【0111】
その結果、シャーレ21の中の標本には、複数の培養細胞(例えばHEK293細胞)どうしが密着した状態(いわゆるコンフルエント状態)で含まれることになる。幾つかの培養細胞には、標的蛋白質と蛍光性蛋白質とが同時に発現している。この発現効率は、例えば20%〜30%程度である。
また、手順<1>→<4>→<3>を経て調整された後の標本を用いて行われる膜電位変化の測定は、図4のステップS1〜S5の後に、後述の処理<S21>〜<S23>を実行し、最後にステップS8,S9と同様の処理を実行する、という手順で行われる。
【0112】
以下の説明に当たり、適宜、標本の位相差顕微鏡写真(図11)を参照する。この写真から分かるように、測定視野内において複数の培養細胞はコンフルエント状態となっている。写真の一辺の長さは約180μmである。
蛍光画像A(図12)は、測定視野の中に存在するGFPからの蛍光に基づく画像であり、発現細胞(rSK2チャネルとGFPとを同時に発現したHEK293細胞)の画像である。蛍光画像A(図12)を取り込む際、励起光の中心波長は480nmとした。フィルタセットのうち蛍光フィルタ15としては、510nm〜540nmの波長域を透過可能なものを用いた。
【0113】
さらに、図4のステップS3,S4によって同一視野の蛍光画像B(図13)を繰り返し取り込む際、励起光の中心波長は560nmとした。フィルタセットのうちダイクロイックフィルタ13には、590nmよりも短波長域を反射可能で長波長域を透過可能なものを用いた。蛍光画像B(図13)は、測定視野の中に存在する膜電位感受性蛍光色素(DiBAC4(3))からの蛍光に基づく画像であり、コンフルエント状態となっている複数の培養細胞の画像である。
【0114】
図11〜図13の写真から、標本の発現細胞は、測定視野の中で左上に片寄っていることがわかる。さて、図4のステップS5によって、蛍光画像A(図12)から発現細胞に対応する高輝度領域(発現細胞領域a)を、発現細胞ごとに全て抽出する。そして次の処理<S21>に進む。図12の場合、蛍光画像Aの中には、6つの発現細胞領域aが存在している。
【0115】
<S21> まず、多数の蛍光画像B(図13)のうち任意の1枚(薬物導入前のもの)を選択する。そして、選択した蛍光画像Bの輝度情報を検出することにより、測定視野内の全ての培養細胞に対応する高輝度領域(以下「培養細胞領域」という)を抽出する。
【0116】
<S22> 次に、ステップS5,S6での抽出結果を用い、発現細胞領域aを含む蛍光画像Aと、培養細胞領域を含む蛍光画像Bとを重ね合わせる。そして、培養細胞領域の中に、1つ以上の発現細胞領域aを含むような任意の領域を幾つか設定する(例えば図14の2つの楕円領域を参照)。これらの領域は、薬物導入による蛍光強度の減少率を求めるための候補領域である。
【0117】
なお、図14は、測定開始時に取り込んだ蛍光画像Bの各画素の輝度値(∝蛍光強度)により、薬物を導入する直前に取り込んだ蛍光画像Bの各画素の輝度値を割り、結果を疑似カラー表示したものである。輝度値の割り算は、同一視野の同一画素どうしで行った。
<S23> 次に、上記<S22>で設定された複数の候補領域(例えば図14の2つの楕円領域)(1つ以上の発現細胞領域aを含む)ごとに、発現細胞領域aの割合を算出する。そして最後に、複数の候補領域のうち、発現細胞領域aの割合が20%よりも高いものを選別する。
【0118】
例えば図14の場合、小さい方(赤色)の楕円領域が選別される。この領域には、全部で約20個の培養細胞が含まれている。また、同じ領域の中で、発現細胞領域a(図12参照)の数は、約6個である。このため、発現細胞領域aの割合は、約30%となる。
その後、図4のステップS8,S9と同様の処理を実行し、上記<S23>で選別された注目領域(発現細胞の割合が高い領域)(以下「高発現領域」という)の輝度情報に基づいて蛍光強度を選択的に検出すると共に、その蛍光強度の時間変化(図15)を求め、これを解析することにより、薬物による膜電位変化の測定情報(例えば蛍光強度の減少率)を求める。
【0119】
図15の横軸は、測定開始後の経過時間 time(min)を表す。縦軸は、測定開始時に高発現領域から放射された蛍光強度F0と、任意の経過時間において高発現領域から放射された蛍光強度Fとの比 ratio(F/F0)を表す。
【0120】
さらに、図15の上方に示した2本の横線は、標本の培養液中に薬物(chlorzoxazone,apamin)が含まれている時間を表している。各々の横線の左端は、薬物の導入タイミングt1,t2に対応する。第3実施形態において、タイミングt2は測定開始から8分後とした。
なお比較のため、図15には、上記<S23>で選別されなかった領域(例えば図14の大きい方(黒色)の楕円領域)(以下「低発現領域」という)から放射される蛍光強度の時間変化も併せて示した。低発現領域は、測定視野のほぼ全体に対応する広い領域であり、発現細胞領域a(図12参照)の割合が10%未満となっている。
【0121】
この低発現領域による蛍光強度の時間変化は、従来のように、測定視野内での平均的な光強度を測定する場合と同等の測定である。図15から分かるように、低発現領域における蛍光強度の時間変化には、薬物導入による強度低下や強度上昇がほとんど見られない。すなわち、従来方法にしたがって蛍光強度の時間変化を調べても、薬物による膜電位変化の測定情報を正確に求めることは非常に困難である。
【0122】
これに対し、高発現領域における蛍光強度の時間変化には、300μM chlorzoxazone の導入によって蛍光強度が低下し、100nM apamin の導入によって蛍光強度が上昇する様子が明確に現れる。このような高発現領域における変化は、薬物によって膜電位変化が生じ、その結果、膜電位感受性蛍光色素(DiBAC4(3))の蛍光強度が変化したことを示している。
【0123】
したがって、上記<S23>で高発現領域(例えば発現効率30%)を選別し、この高発現領域からの本質的な蛍光強度のみを選択的に検出することで、薬物による膜電位変化の測定情報(例えば蛍光強度の減少率Δ)を高感度で再現性良く求めることができる。
なお、上記した第3実施形態では、測定視野の中に設定した高発現領域からの蛍光強度を検出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定視野の全体における発現細胞の割合を算出し、これが基準割合より大きい場合には、上記のような高発現領域を設定せずに、測定視野の全体から放射される蛍光強度を検出してもよい。
【0124】
また、上記した第3実施形態では、複数の培養細胞が密着している標本を用いて膜電位変化を測定したが、標本の中に複数の細胞集団が非接触状態で含まれる場合(図2参照)でも、個々の細胞集団が比較的大きく、測定視野の中で培養細胞どうしが密着している場合には、第3実施形態の測定手順を適用できる。
さらに、上記した第1〜第3実施形態では、発現細胞を1つ以上含む細胞集団からの蛍光強度、または、上記の高発現領域からの蛍光強度を選択的に検出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定視野内に存在する発現細胞そのものから放射される蛍光強度を選択的に検出しても、同様に正しい結果を得ることができる。
【0125】
ただし、蛍光強度の検出対象となる細胞数が少なくなる分だけ、合計の蛍光強度が減少し、また各々の細胞の状態に由来するばらつきの多い結果となってしまう。したがって、上記した第1〜第3実施形態のように、細胞集団や高発現領域からの蛍光強度を選択的に検出する方が、検出対象となる細胞数を多く確保でき、精度の高い測定を行うことができる。
【0126】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態では、薬物によるイオン濃度変化を高感度で再現性良く測定可能な細胞内反応測定装置の例を説明する。ちなみに、イオン濃度変化の「イオン」とは、細胞内に存在するイオン(例えばカルシウムイオン,水素イオン,マグネシウムイオン,ナトリウムイオン,カリウムイオン,塩素イオンなど)のことである。
【0127】
測定対象となる標本の調整は、上述の手順<1>〜<3>のうち、手順<3>を次の手順<5>に置き換えたものである。手順<2>での培養後、シャーレ21の中の複数の培養細胞(例えばHEK293細胞)が、互いに非接触状態の細胞集団を形成していても、コンフルエント状態になっていても、どちらでも構わない。
<5> 調整作業の最後に、シャーレ21の中の標本(複数の培養細胞を含む)に対して、全体的に、細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入する。ここで用いられる蛍光プローブは、イオン濃度感受性の蛍光色素である。この蛍光色素には、イオン濃度の絶対値を測定するためのものや、イオン濃度の相対変化を測定するためのものがある。
【0128】
例えば、カルシウムイオン濃度(Ca2+)変化を測定する場合には、蛍光プローブとして、Fura-2/AM(Molecular Probes,USA)が用いられる。標本へのFura-2の導入は、このFura-2を100nMの濃度で含む生理塩類溶液に、インキュベータ中で約30分間、培養細胞(HEK293細胞)を浸すことにより行われる。インキュベータから取り出した培養細胞は、生理塩類溶液で洗浄される。イオン濃度変化の測定中、シャーレ21は生理塩類溶液で満たしてある。
【0129】
このように調整された標本を用いてイオン濃度変化を測定するため、第4実施形態の細胞内反応測定装置では、GFPから放射される蛍光の検出に最適なフィルタセットと、Fura-2から放射される蛍光の検出に最適なフィルタセットとが切り替え可能となっている。GFP用のフィルタセットは、既に説明したものと同じである。
【0130】
Fura-2用のフィルタセットは、340nm付近の波長域を透過する第1の励起フィルタ12と、380nm付近の波長域を透過する第2の励起フィルタ12と、400nmよりも短波長域を反射して長波長域を透過するダイクロイックミラー13と、510nm付近の波長域を透過する蛍光フィルタ15との組み合わせである。第1,第2の励起フィルタ12は、何れか一方が挿入される。
【0131】
そして、第4実施形態の細胞内反応測定装置では、まず初めに、上記した図4のステップS1,S2と同様に、測定視野の中に存在するGFPからの蛍光に基づいて、発現細胞(rSK2チャネルとGFPとを同時に発現したHEK293細胞)の蛍光画像Aを取り込む。
次に、フィルタセットをGFP用からFura-2用に変更すると共に、励起フィルタ12を“340nm”に設定し、測定視野内のFura-2から放射される蛍光に基づいて蛍光画像C(1)を取り込む。さらに、励起フィルタ12を“380nm”に変更して、同様の蛍光画像C(2)を取り込む。そして、これら2枚の蛍光画像C(1),C(2)を1組として、蛍光画像C(1),C(2)の取り込みを10secおきに繰り返す。
【0132】
また、蛍光画像C(1),C(2)を繰り返し取り込みながら、途中の予め決められたタイミングで、標本に2種類の薬物(chlorzoxazone,apamin)を導入する。さらに、1組の蛍光画像C(1),C(2)を用い、蛍光画像C(1)の各画素の輝度値を蛍光画像C(2)各画素の輝度値で割ることによって、カルシウムイオン濃度の分布画像Dを生成する。
【0133】
その後、蛍光画像A,蛍光画像C(1),C(2)の取り込みと、カルシウムイオン濃度の分布画像Dの生成が終了すると、図4のステップS5と同様の処理を行い、蛍光画像Aから、発現細胞に対応する高輝度領域(発現細胞領域a)を全て抽出する。
そして次に、発現細胞領域aを含む蛍光画像Aと、蛍光画像C(1),C(2)から生成したカルシウムイオン濃度の分布画像Dとを重ね合わせて、分布画像Dの輝度情報の中から発現細胞領域aに対応する部分情報を選択的に検出し、その平均輝度(つまり蛍光強度)を分布画像Dごとに算出する。
【0134】
最後に、各々の分布画像Dごとに算出した蛍光強度の時間変化を解析することにより、発現細胞のイオン濃度変化に関わる測定情報を生成する。薬物導入の前後で蛍光強度が増加した場合には、発現細胞の中のカルシウムイオン濃度が増加したため、薬物の効果があるとみなされる。
【0135】
このように、第4実施形態の細胞内反応測定装置では、測定視野の中の発現細胞から放射される蛍光の強度を選択的に検出し、薬物によるイオン濃度変化の測定情報を生成する(例えば蛍光強度の増加率を求める)ため、高感度で再現性良くイオン濃度変化を測定できる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態では、第1実施形態の細胞内反応測定装置10(図1)を医薬品の開発過程におけるスクリーニングに適用した例を説明する。この場合、標本の培養容器として96穴のマイクロプレートが用いられ、蛍光顕微鏡(11〜16)のステージ上に載置される。マイクロプレートの底面も透明である。
【0136】
標本の調整に当たり、マイクロプレートの各ウエルには、培養細胞(例えばHEK293細胞)を105個/mlの濃度で含む溶液が適量(例えば150μlずつ)注入される。ただし、1つのウエルには、培養液のみ入れた。つまり、このウエルには、培養細胞が入っていない。
そして、各ウエルの溶液に対して、リン酸カルシウム共沈法により、rSK2チャネルの遺伝子およびGFPの遺伝子が導入され、37度で36〜48時間、培養される。また調整の最後に、各ウエルの中の標本には全体的に膜電位感受性蛍光色素(DiBAC4(3))が導入される。
【0137】
マイクロプレートを使用した場合の測定手順は、基本的には上述した図4と同じである。
培養細胞の入っていないウエルにおいても、GFP用のフィルタセットを使用して蛍光画像A0を取得し、次に、DiBAC4(3)用のフィルタセットを使用して蛍光画像B0を取得する。これらの蛍光画像A0,B0は、背景光画像として補正用に使用される。つまり、以降の各ウエルにおける蛍光画像の輝度情報から背景光を減算して除去するために使用される。ここで背景光とは、培養液やマイクロプレートなど標本以外の物からの蛍光のことである。
【0138】
同様に、その他の各ウエル(培養細胞が入っているもの)においては、GFP用のフィルタセットを使用して蛍光画像Aを取得し、次に、DiBAC4(3)用のフィルタセットを使用して蛍光画像Bを一定時間(例えば10sec)おきに取得する。また、蛍光画像Bの取り込み中、各ウエルごとに、種類や濃度が異なる薬物を50μlずつ加える。
【0139】
このようにして全ての蛍光画像A,Bの取り込みが終了すると、これらの蛍光画像A,Bの輝度情報は、背景光画像(蛍光画像A0,B0)の輝度情報によって補正される。そして、補正後の蛍光画像A,Bを用いて、薬物による膜電位変化の測定情報(蛍光強度の減少率)が各ウエルごとに生成される。
既に説明したように、発現細胞を含む注目集団からの本質的な蛍光強度を選択的に検出するため、各ウエルの様々な薬物による膜電位変化の測定情報(例えば蛍光強度の減少率Δ)を高感度で再現性良く求めることができる。したがって、各々の薬物の反応の違いを明確に解析することができ、効率の良いスクリーニングが可能となる。なお、蛍光強度の減少率が有意と認められたウエルに導入された薬物が、rSK2チャネルに対して効果が高いと認められる。
【0140】
なお、マイクロプレートを使用して薬物の作用をスクリーニングする際、各ウエルごとに、薬物を導入しつつ蛍光画像Bを一定時間おきに取得すると、全部のウエルについてのイオン濃度変化の測定を終えるまでには、かなりの時間が必要となってしまう。
そこで、蛍光画像Bの取り込み回数を減らし、“少なくとも2回”行うようにすることが好ましい。例えば2回行う場合、1回目の取り込みは薬物が導入される前に行われ、2回目の取り込みは薬物が導入されてから一定時間後に行われる。なお、薬物の導入タイミングは、制御装置20内で検知可能である。
【0141】
このように、マイクロプレートの各ウエルごとに、薬物導入の前後で一定時間をおいて蛍光画像Bを取り込む場合、1つのウエルに対する2回の画像取り込みの間に、他のウエルの画像取り込みを行うことができ、全体としての測定時間を短縮することができる。
【0142】
例えば、11個のウエルを測定対象とする場合、まず、各ウエルにおける蛍光画像A,Bを1枚ずつ順に取得し、次いで、各ウエルに薬物を順に導入する。11個の全ウエルに薬物を導入するための所要時間は約3分程度であった。各ウエルに対する薬物導入の時間は記録しておく。そして、約5分後に、各ウエルの2回目の蛍光画像Bの取得を順に行う。
【0143】
その結果、各ウエルごとに2枚の蛍光画像Bを効率良く取り込むことができ、全体の測定時間を短縮できる。このため、高速・高効率の薬物作用検査システムを構築できる。
なお、上記した第5実施形態では、第1実施形態の細胞内反応測定装置10をスクリーニングに適用したが、本発明はこれに限定されない。その他、第2〜第4実施形態の細胞内反応測定装置をスクリーニングに適用することもできる。
【0144】
(変形例)
なお、上記した第1〜第4実施形態では、細胞内反応に応じた蛍光画像B(または蛍光画像蛍光画像C(1),C(2))を一定時間ごとに取り込む例を説明したが、第5実施形態と同様、薬物を導入する前後に1回ずつ(所定のタイミングで)、蛍光画像B(または蛍光画像蛍光画像C(1),C(2))を取り込む場合にも、本発明を適用できる。
【0145】
また、上記した全ての実施形態では、ピペット17を制御装置20によって制御したが、本発明はこれに限定されない。例えば、手動操作用のピペットを用いた場合にも本発明は適用できる。この場合、ピペットによる薬物の導入タイミングを検知するためのスイッチを設けることが好ましい。
さらに、上記した全ての実施形態では、標本から放射される蛍光の強度に基づいて細胞内反応(膜電位変化やイオン濃度変化)を測定したが、本発明はこれに限定されない。その他、標本から放射される化学発光や生物発光の強度に基づいて細胞内反応を測定する場合にも、本発明は適用できる。この場合には自己発光であるため、標本に対する励起光の照射は不要になる。
【0146】
また、上記した全ての実施形態では、薬物による細胞内反応(膜電位変化,イオン濃度変化)の測定例を説明したが、薬物以外の要因(例えば温度などの環境変化)による細胞内反応を測定することもできる。
さらに、上記した全ての実施形態では、標的蛋白質の存在を確認するために蛍光性蛋白質であるGFPを使用したが、蛋白質の存在は、その蛋白質に対する抗体を蛍光色素で標識したものを使用しても確認することができる。
【0147】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、標本の煩雑な調整作業を行わなくても、細胞内反応の測定感度と再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞内反応測定装置10の全体構成を示す概略図である。
【図2】標本に含まれる複数の細胞集団23を説明する模式図である。
【図3】測定視野10aの中に含まれる2個の細胞集団23(1),(2)を説明する模式図である。
【図4】細胞内反応測定装置10における膜電位変化の測定手順を示すフローチャートである。
【図5】標本の位相差顕微鏡写真である。
【図6】GFPから放射される蛍光に基づいて取り込んだ蛍光画像の写真である。
【図7】 DiBAC4(3)から放射される蛍光に基づいて取り込んだ蛍光画像の写真である。
【図8】細胞集団GFP(+),GFP(−)から放射される蛍光強度の時間変化を示す図である。
【図9】異なる5つのシャーレで調整された標本による測定結果である。
【図10】細胞集団GFP(+)の発現細胞の割合(%)と薬物導入による蛍光強度の減少率 response rate (%)との関係を示す図である。
【図11】標本の位相差顕微鏡写真である。
【図12】GFPから放射される蛍光に基づいて取り込んだ蛍光画像の写真である。
【図13】 DiBAC4(3)から放射される蛍光に基づいて取り込んだ蛍光画像の写真である。
【図14】 DiBAC4(3)から放射される蛍光に基づいて取り込んだ蛍光画像を、測定開始時の蛍光画像に対する比で表し、疑似カラー表示した画像の写真である。
【図15】高発現領域,低発現領域から放射される蛍光強度の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
10 細胞内反応測定装置
11 光源
12 励起フィルタ
13 ダイクロイックミラー
14 対物レンズ
15 蛍光フィルタ
16 冷却CCDカメラ
17 ピペット
18 画像処理装置
19 表示装置
20 制御装置
21 シャーレ
22 培養細胞
22a 発現細胞
23 細胞集団

Claims (9)

  1. 複数の細胞集団が非接触状態で含まれる標本を用いて、前記標本を照明して励起することにより前記細胞集団から発せられる蛍光を検出し、薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定装置において、
    前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質もしくは、前記蛋白質に結合した蛍光色素から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記複数の細胞集団のうち前記蛋白質の存在する発現細胞を含む注目集団を特定する特定手段と、
    前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目集団の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択手段と、を備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  2. 請求項1に記載の細胞内反応測定装置において、
    前記特定手段によって特定された各々の注目集団に関し、前記蛋白質の存在する細胞の割合を算出する算出手段と、
    前記特定手段によって特定された注目集団のうち、前記割合が所定の基準割合よりも高い注目集団を選別する選別手段とを備え、
    前記選択手段は、前記第2の蛍光の強度を検出し、検出した前記第2の蛍光の強度のうち、前記選別手段によって選別された注目集団から放射される前記第2の蛍光の強度を測定対象とする
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  3. 請求項に記載の細胞内反応測定装置において、
    前記算出手段は、さらに前記特定手段によって特定された各々の注目集団に関し、全細胞の数の算出も行い、
    前記選別手段は、前記特定手段によって特定された注目集団のうち、前記割合が所定の基準割合よりも高く、かつ、前記全細胞の数が所定の基準数よりも少ない注目集団を選別する
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  4. 複数の細胞どうしが密着している標本を用いて、前記標本を照明して励起することにより前記細胞から発せられる蛍光を検出し、薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定装置において、
    前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質もしくは、前記蛋白質に結合した蛍光色素から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記蛋白質の存在する発現細胞の割合が所定の基準割合よりも高い注目領域を特定する特定手段と、
    前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目領域の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択手段と、を備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  5. 請求項1から請求項4の何れか1項に記載の細胞内反応測定装置において、
    前記標本への前記薬物の導入タイミングを検知する検知手段を備え、
    前記選択手段は、前記薬物が導入される前と導入されてから一定時間後との少なくとも2回、前記第2の蛍光の強度を検出し、検出した前記第2の蛍光の強度のうち、前記注目集団または前記注目領域または前記注目細胞から放射される前記第2の蛍光の強度を測定対象として選択する
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  6. 請求項1から請求項5の何れか1項に記載の細胞内反応測定装置において、
    前記選択手段によって選択された前記第2の蛍光の強度に基づいて、前記細胞内反応に関わる測定情報を生成する生成手段を備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定装置。
  7. 複数の細胞集団が非接触状態で含まれる標本を用いて薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定方法において、
    前記薬物の標的となる蛋白質の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子を細胞に導入し、該細胞を培養した後で、細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入することにより、前記標本を調整する調整工程と、
    前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記複数の細胞集団のうち前記蛋白質の存在する発現細胞を含む注目集団を特定する特定工程と、
    前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目集団の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択工程とを備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定方法。
  8. 複数の細胞どうしが密着している標本を用いて薬物による細胞内反応を測定する細胞内反応測定方法において、
    前記薬物の標的となる蛋白質の遺伝子および蛍光性蛋白質の遺伝子を細胞に導入し、該細胞を培養した後で、細胞内反応測定用の蛍光プローブを導入することにより、前記標本を調整する調整工程と、
    前記標本内の細胞から前記薬物の標的となる蛋白質が発現することで、前記標本に第1の励起光を照射すると、前記蛋白質と共に発現した前記蛍光性物質である蛍光性蛋白質から前記第1の蛍光が放射され、前記第1の蛍光を検出することで、前記蛋白質の存在する発現細胞の割合が所定の基準割合よりも高い注目領域を特定する特定工程と、
    前記第1の励起光の照射後に、前記標本に第2の励起光(前記第1の励起光と異なる波長)を照射し、前記標本の前記細胞内反応に応じて前記標本に導入された細胞内反応測定用の蛍光プローブから放射される第2の蛍光(前記第1の蛍光と異なる蛍光)を検出し、検出した前記第2の蛍光のうち、前記注目領域の全体(前記発現細胞だけでなく、非発現細胞も含む)から放射される前記第2の蛍光を測定対象として選択する選択工程とを備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定方法。
  9. 請求項7または請求項8に記載の細胞内反応測定方法において、
    前記選択工程で選択された前記第2の光の強度に基づいて、前記細胞内反応に関わる測定情報を生成する生成工程を備えた
    ことを特徴とする細胞内反応測定方法。
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