JP4428553B2 - 家畜動物用予防及び/又は治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイフラクトース アンハイドライドIII(以下、DFA IIIということもある)及び/又はダイフラクトース アンハイドライドIV(以下、DFA IVということもある)を有効成分として含有する家畜動物用飼料組成物、予防剤、治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反芻動物は、4つの胃を持ち、特に第1胃内でほとんどの食物はルーメン微生物により分解消化される。従って、分解されずに腸に達する食物は数少ない。
【0003】
反芻動物である乳牛の乳へのカルシウムの供給源は、血中のカルシウムであり、飼料中のカルシウムや骨など体組織から移行している。反芻動物の代表である乳牛の血中のカルシウム濃度は通常9〜11mg/dlで、過剰にカルシウムを給与されると、腸管からの吸収が減少し、尿中への排泄量が増加する。この結果、牛乳のカルシウムは乳牛の品種や乳成分の影響を受けるものの、ほぼ一定に保たれている。
【0004】
また、乳牛は分娩前後の周産期において血中カルシウム濃度が低下し、低カルシウム血症の病態を呈する。低カルシウム血症は血中カルシウム濃度が7mg/dl以下で、5mg/dl以下になると、起立不能となり重篤な場合は死亡する。これは乳熱とも呼ばれ、米国で乳牛の約6%が罹患し、乳房炎(大腸菌性)や、第四胃変位、胎盤停滞およびケトーシスなどの代謝性疾患を併発しやすい。また、臨床症状が出るまでには至らない、潜在性低カルシウム血症は経産牛の66%程度に起こり、分娩直後の牛を食欲不振にさせて、乳熱と同様にケトーシス、胎盤停滞、第四胃変位、および乳房炎などの疾病を起こしやすくさせる。
【0005】
更に、低カルシウム血症が長期化すると、牛乳自体のカルシウム濃度が低下する場合がある。ヒトの栄養として必要とするカルシウムの供給源としては、様々な食品があるものの、日本人の1日の摂取量(約600mg)は必要量を下回っている。特にカルシウムの供給源の一つである牛乳は、コップ一杯(200ml)当たり約227mgのカルシウムを含んでいるので、カルシウムの供給源としては重要である。
【0006】
乳牛の低カルシウム血症を改善させる方法として、乾乳期に陰イオン塩を給与したり、乳熱牛に対してはカルシウム剤の静脈内投与が一般に行われるが、血中カルシウム濃度の回復・維持が困難な症例の存在が知られている。また、遣伝的改良により乳生産能力が高まった現在、分娩後の泌乳量も多く、これらがさらに低カルシウム血症の牛を増加させ、起立不能など重篤な状態をつくりだし、大きく影響する原因にもなっており、これら乳牛におけるカルシウム欠乏症の克服が待望されている。
【0007】
また、利尿効果は人間のみならず乳牛等の反芻動物においても、健康維持、疾病の緩和に重要なものである。特に分娩前後の乳牛では乳房浮腫が発生し、重症の場合、乳頭が外傷を受けやすく乳房炎を併発しやすい。また、乳房堤靭帯が脆弱化し、乳房の下垂により搾乳しにくくなる。乳房浮腫の治療に対しては、血液循環改善のために運動やマッサージ等管理方法の改善、利尿剤による治療、外科手術などが知られているが十分な効果をあげるには至っていない。
【0008】
一方、フラクトース2分子が結合してなるオリゴ糖であるDFA III及びDFA IVについては、DFA IIIを有効成分とするカルシウム吸収亢進組成物及びDFA IVを有効成分とするカルシウム吸収亢進組成物がそれぞれ既に開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、家畜動物のカルシウム欠乏症や浮腫の予防や治療に効果を有することは記載されていない。なかでも、四つの胃を持つ反芻動物、特に、乳牛に対するDFA III及びDFA IVによる生理作用は全く明らかにされていない。ましてや、DFA III、IVがこれらの胃の中で分解されないこと、更には、カルシウム欠乏症、浮腫の予防及び/又は治療に有効であることなど全く触れるところがなく、そもそも、これらの文献には牛はおろか反芻動物についてすら何の記載もない。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−43438号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2000−204042号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術の現状に鑑み、食品としての牛乳中のカルシウム含量を高めるとともに、乳牛の分娩後における血中カルシウム濃度の回復・維持、さらには周産期疾病の予防や乳生産を改善する家畜動物用医薬及び/又は飼料組成物を開発することを目的になされたものである。また、健康維持、疾病緩和に重要な利尿作用を有し及び/又は浮腫退行(又は予防)作用を有する家畜動物用医薬及び/又は飼料組成物を開発することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、本発明者らは、各方面から、鋭意研究の結果、DFA III及びDFA IVが、通常の哺乳動物とは異なり、4つの胃を有する独特な消化器系を持つ牛において、複雑にして独特な胃の構成にもかかわらず、分解されないことをはじめて見出した。そしてこの新規有用知見に基づいて更に研究を進めた結果、DFA III及びDFA IVは、カルシウム吸収を亢進し、血中カルシウム量が上昇し、その結果、牛乳のカルシウム濃度を高めるとともに、低カルシウム血症を改善するという非常に有用な作用を有することをはじめて見出し、そしてこれらの作用が確実に行われ、再現性があることも確認した。
【0013】
一般に、乳牛は、特に分娩後において血中のカルシウム量が減少し、その結果、各種の疾病にかかり易くなり、生産性が低下する危険性が高いうえ、分娩の回数がふえると、それだけカルシウム量も減少するので、ますます生産性が低下することとなり、牛、特に乳牛に特有な問題点の解決が希求されていたのであるが、本発明はこれら牛に独特の問題点を解決するのにはじめて成功したものである。したがって、本発明によるDFA III、IVの牛、特に分娩前後の周産乳牛に対する投与はきわめて有効である。
【0014】
また、上記した牛に独特な作用効果は、カルシウム、ビタミンDによって高められることも新規に見出した。そのうえ、全く予期せざることに、更に、DFA III、IVは、すぐれた利尿効果を有し、乳房浮腫等の浮腫の予防及び/又は治療にも有効であるという有用な新知見も得た。
【0015】
本発明は、これらの新規にして有用な数多くの知見に基づいてなされたものであり、しかも上記した新規作用は牛のみでなく家畜動物であればすべてに対して奏されることもはじめて確認し、更に研究の結果遂に完成されたものであって、DFA III及び/又はDFA IVを有効成分とする家畜動物用医薬に関するものであり、また、家畜動物用飼料組成物に関するものである。
以下、本発明について詳述する。
【0016】
本発明においては、有効成分としてDFA III及び/又はIVを使用するが、所望に応じて更にカルシウム及び/又はビタミンDも併用するものである。本発明において有効成分として使用するDFA III(difructose anhydride III)は、フラクトース2分子が1,2’及び2,3’で結合している2糖類(di-D-fructofuranose-1,2':2,3'dianhydride)である。DFA IIIは最近工業生産が行われるようになった。また、有効成分として利用するDFA IV(difructose anhydride IV)は、フルクトース2分子が2,6’及び6,2’で結合している2糖類(di-D-fructfuranose-2,6:6,2'dianhydride)である。なお、有効成分としては、DFA III及び/又はDFA IVの精製品、粗精製品、製造工程において生成する中間生成物、同排液、これらの処理物(濃縮物、ペースト化物、乾燥物、希釈物、懸濁物、乳化物の少なくともひとつ)から選ばれる少なくともひとつが包含される。
【0017】
カルシウム剤としては飼料および食品として使用が認められているすべてを指すものである。具体的には、例えば、グルクロン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、カキ殻、骨粉等が非限定的に例示される。
【0018】
また、ビタミンD剤としてはビタミンD2、ビタミンD3、又、これらの前駆物質を含み、DFA IIIおよびDFA IVのカルシウム吸収亢進効果を補完あるいは、増強を目的として供することができる。
【0019】
本発明においては、上記した有効成分のほか、澱粉やデキストリン等の増量剤や、嗜好性やビフィズス効果を高める上記以外の糖類等を必要に応じて混合することができる。糖類としては、糖蜜、ラフィノース、メリビオース、フラクトース、ラクトース、蔗糖等があげられる。
【0020】
本発明にしたがって、上記した有効成分を用いて飼料組成物(飲料を含む)及び/又は動物医薬(栄養強化剤、経口投与剤等)を調製するが、その際、DFA IIIおよび、あるいはDFA IVの給与量は、飼料あるいは飲料として給与する場合、1日当たり、動物の体重1kgにつき10mg〜1000mg、好ましくは100〜300mgとするのがよい。また、栄養強化剤、経口投与剤では1回当たり、動物の体重1kgにつき10mg〜1000mg、好ましくは100〜300mgとし、1日1〜3回給与するのがよい。これらの給与量はここで示した範囲のみに限定されるものではなく、この範囲から逸脱する場合もあり得る。
【0021】
また、本発明において有効成分として使用するDFA IIIおよび/あるいはDFA IVは、飼料や医薬組成物中のカルシウムに対して、飼料あるいは飲料として給与する場合、重量比で0.1〜2倍以上、好ましくは0.5〜1.5倍とするのがよく、また、栄養強化剤、経口投与剤では、重量比で0.2〜3倍以上、好ましくは1〜2倍がよい。しかしながら、長期に亘る給与や、疾病に対する改善効果を期待する場合は、上記範囲を逸脱しても一向にさしつかえない。
【0022】
飼料および飲料タイプの組成物として使用する場合には、本有効成分(その処理物)をそのまま使用したり、他の飼料ないし飼料成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。本有効成分を用いる本発明にかかる組成物は、固体状(粉末、顆粒状、錠剤)、ぺースト状、液状、懸濁状、その他の形態によって投与することができる。
【0023】
栄養強化剤および経口投与剤タイプの医薬組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態は、有効成分を一定量含有するように用量単位として、固形状又は液状とした、例えば、末剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、懸濁剤等をあげることができる。経口又は非経口で摂取できるものであれば、形態の制限はなく、製剤の常法にしたがって、主薬に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、嬌味嬌臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤、乳化剤などのヒトや動物用医薬の製剤技術分野において常用される補助剤を用いて、経口投与医薬あるいは注射薬や坐薬その他の非経口投与医薬に製剤化される。
【0024】
有効成分の含有量は上記したとおりであるが、予防や健康上の目的で摂取する場合には、上記範囲より少量であってもよいし、また、また、本有効成分は、本来、天然物由来でもあり、安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に使用しても一向にさしつかえない。現に、マウスを用いた10日間の急性毒性試験によっても、DFA III及びIVは、いずれも、1000mg/kgの経口投与でも死亡例は認められなかった。
【0025】
本発明において、家畜動物とは、人が飼育する動物一般を意味し、反芻動物のほか、特定の目的で飼育、繁殖せしめる哺乳動物や鳥類をいい、例えば、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、カンガルー、サル、ニワトリ、アヒル、ウズラ、ダチョウ、七面鳥、その他ペット類、動物園等で飼育されている動物や鳥類が例示される。反芻動物とは、牛のほか、山羊、羊、ラクダ、水牛等の家畜はもとより野生の反芻動物も広く包含するものである。反芻動物は、反芻胃を有する等の通常の哺乳動物とは相違するユニークな消化器系を有するものであって、通常の哺乳動物における技術常識がそのまま適用し得ない場合が多い独特の動物である。
【0026】
本発明は、反芻動物を含む家畜動物のカルシウム欠乏症の予防及び/又は治療に有効である。カルシウム欠乏症としては、例えば、カルシウムの吸収阻害、血中カルシウム濃度の低下、乳中カルシウム含量の低下等が挙げられる。また、本発明の有効成分は、すぐれた利尿作用を有するので、乳房浮腫等の予防及び/又は治療にも有効である。
【0027】
このように本発明は、泌乳する動物の乳中カルシウム強化や低カルシウム血症改善にも有効であり、血中カルシウム濃度の低下も治療ないし予防できるため、低カルシウムに起因する疾病の治療や予防も達成され、また、分娩によるカルシウム濃度の低下も治療ないし予防することもできるし、利尿作用によって乳房浮腫の治療ないし予防も可能であり、本発明は、特に乳牛といった泌乳する反芻動物に対して非常に有効である。
以下、本発明の実施例について詳細に述べる。
【0028】
【実施例1】
反芻動物において、DFA IIIおよびDFA IVがカルシウム吸収を亢進するためには、反芻胃での微生物による分解を免れて、腸管に到達しなければならない。そこで、DFA IIIおよびDFA IVの反芻胃における分解性を検討した。
【0029】
乾乳牛の栄養管理を想定して濃厚飼料を4kg給与し、乾草を自由採食としているルーメンカニューレを装着したホルスタイン去勢牛と、乳量30kgで給与飼料中の濃厚飼料割合が55%の乳牛から、それぞれ第一胃内容液を採取し、4重ガーゼで濾過し、イノキュラムとした。
【0030】
緩衝液は、0.25Mリン酸緩衝液(KH2PO4 6.8045g+Na2HPO4・12H2O 26.8605g/500ml、pH7.0)を使用し、この緩衝液100ml当たりDFA III、あるいはDFA IVを1g添加した。
【0031】
200ml容三角フラスコにイノキュラム30ml、緩衝液20mlを加え、炭酸ガスで内部の空気を置換した後、ブンゼンバルブを装着したゴム栓で栓をし、39℃のインキュベータで培養した。培養0、1、2、4、6、8、12および24時間毎にフラスコを採取し、培養液を分析に供した。
【0032】
フラスコに入った培養液を攪拌し、20ml採取後、スルホサリチル酸(20%溶液)を0.1ml加え、除タンパクした。8,000回転で10分間遠心後、0.45μmの濾紙で濾過し、液体クロマトグラフィーによりDFA IIIおよびDFA IVを分析した。
【0033】
培養液へのDFA IIIおよびDFA IV添加量は400mg/dlに設定した。その結果、DFA IIIおよびDFA IVは何れのイノキュラムを用いた場合においても分解されず、各培養時間においてもほぼ全量が回収された(図1)。ルーメン微生物により分解されなければ、乳牛においてもDFA IIIおよびDFA IVは腸管まで到達し、カルシウムの吸収を亢進することが認定された。
【0034】
【実施例2】
DFA IIIおよびDFA IVの給与が泌乳牛のカルシウム代謝、産乳性および尿排泄量に及ぼす効果を検討した。
【0035】
ホルスタイン乳牛(2〜4産、分娩後90〜120日、平均体重642kg、平均乳量36kg)9頭を3群に分け、1期15日(予備期10日、本期5日)とする3×3のラテン方格により、試験を実施した。
【0036】
給与飼料は、1日量として、グラスサイレージ、コーンサイレージ、ビートパルプを乾物重量で各々3.4および2kgの一定量として、配合飼料(粗蛋白質含量18%、TDN含量74%)は乳量の1/3量とした。また、ミネラル剤およびビタミン剤は無給与とし、個体ごとの採食量不足は乾草を給与して補った。なお、これらの給与飼料は全牛とも同一内容であり、飲水は自由摂取とした。
【0037】
対照区は、上記の給与のみとし、DFA III区は、給与飼料+DFAIII 100g給与、DFA IV区は、給与飼料+DFA IV 100g給与とした。
【0038】
乳牛は、代謝試験施設に収容し、5時と17時の2回搾乳を行い、本期5日間は乳量、乳成分の分析を行った。糞尿については本期5日間それぞれを全量回収、計量し、一定割合を混合して分析に供した。
【0039】
表1に試験の結果を示した。その結果から明らかなように、乾物摂取量とカルシウム摂取量は各区とも大きな差はなかった。乳量はDFA IIIおよびDFA IV区が対照区よりも約1kg増加した。乳脂率および乳蛋白質率も区間で差は見られなかったが、乳中カルシウム率は対照区に対してDFA IIIおよびDFA IV区とも有意に増加した(P<0.05)。カルシウム排泄量は、DFA IIIおよびDFA IV区において、糞中への排泄量が有意に減少し(P<0.05)、乳中への排泄量が有意に増加した(P<0.05)。また、これらの結果、DFA IIIおよびDFA IV給与によって、カルシウムの可消化量は増えたものの、蓄積量に対しては効果を示さなかった。飲水量は各区間に差はなかったが、尿量はDFA IIIおよびDFA IV区とも有意に増加した(P<0.05)。なお、表中、TDNは可消化養分総量を示す。
【0040】
以上から、DFA IIIおよびDFA IVは、乳牛のカルシウム吸収においてすぐれた効果を奏し、併せて、牛乳のカルシウム濃度を高める効果を有することが認められた。また、尿量の増加も確認された。
【0041】
【表1】
【0042】
【実施例3】
乳牛の分娩時血中カルシウム濃度に対する、DFA IIIおよびDFA IVの影響を検討した。
【0043】
供試牛は2産以上のホルスタイン分娩牛を1区5頭、3区計15頭を用いた。分娩直後に尾根部から採血を行い、対照区は温湯300mlを経口投与し、DFA III区とDFA IV区はそれぞれDFA III100gと、DFA IV100gを温湯250mlに溶かして、経口投与した。また、分娩直後の採血を基点として、6時間および60時間後に尾根部からの採血を実施し、併せて、触診による乳房浮腫の程度も確認した。
【0044】
分娩後の給与飼料は、グラスサイレージ、コーンサイレージ、配合飼料を含むTMR(以下混合飼料という。粗飼料割合47.8%)を1日当たり20kgと配合飼料4kgおよび乾草を自由摂取とした。給与飼料の内容、要求量および充足率を下記表2に示す。なお、要求量の計算条件は次のとおりである:分娩後日数3日、2産、体重612kg、乳量20kg、乳脂率4.0%、乳蛋白質率3.2%。また、NEIは泌乳正味エネルギーを示し、efNDFは有効中性洗剤不溶繊維を示す。
【0045】
【表2】
【0046】
血液は3,000rpmで10分間遠心分離し、その血清部分を−30℃で分析まで保存した。カルシウムの分析はOCPC法で行った。また、浮腫の程度は、触診によって行い、重度は4、中度は3、軽度は2、正常は1とした。得られた結果を、それぞれ、表3および表4に示した。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
上記結果から明らかなように、分娩直後の血中カルシウム含量は各区7.1〜7.3mg/dlであった。6時間目の血中カルシウム含量において、対照区では増加はみられなかったが、DFA III区およびDFA IV区とも分娩直後より約1mg/dl増加し、それぞれ8.3mg/dl、8.0mg/dlとなった。しかし、60時間目ではDFA III区で8.0mg/dlとなり、DFA IV区でも6時間目から増加する傾向は見られなかった。なお、いずれの区においても乳熱症状を呈する牛は見られなかった。また、乳房浮腫の程度において、対照区は6時間目に上昇したのに対し、DFA III区およびDFA IV区とも改善され、60時間目にはほぼ正常になった。
【0050】
以上の結果より、DFA IIIおよびDFA IVは、分娩直後の血中カルシウム濃度を高め、乳房浮腫を軽減することが確認された。
【0051】
【実施例4】
乳牛の分娩時血中カルシウム濃度に対して、DFA IIIおよびカルシウムとビタミンDの効果を検討した。
【0052】
供試牛は2産以上のホルスタイン分娩牛を1区5頭、3区計15頭を用いた。分娩直後に尾根部から採血を行い、DFA III区はDFA III100gを温湯250mlに溶かして、経口投与した。DFA+Ca区はDFA IIIおよび炭酸カルシウムをそれぞれ100gとして温湯200mlに溶かし、DFA+Ca+VD区はDFA IIIおよび炭酸カルシウムをそれぞれl00gに加えて、ビタミンD10000IUを温湯200mlに溶かし、経口投与した。また、分娩直後の採血を基点として、6、24および70時間後に尾根部からの採血を実施した。
【0053】
飼料給与、血中カルシウム含量の分析は、実施例3と同様に行った。得られた結果を下記表5に示した。
【0054】
【表5】
【0055】
上記結果から明らかなように、分娩直後の血中カルシウム濃度は6.4〜7.4mg/dlであり、DFA+Ca区が最も低い値であった。6時間目の血中カルシウム濃度は分娩直後よりも、DFA III区1.2、DFA+Ca区2.0、DFA+Ca+VD区は1.7mg/dl増加した。24時間では、6時間よりもDFA III区、DFA+Ca区で低下したものの、DFA+Ca+VD区はさらに増加し、正常値と考えられる9.3mg/dlに達し、70時間でもその濃度が維持されていた。DFA III区とDFA+Ca区の70時間目においての血中カルシウム濃度は、それぞれ8.5と9.1mg/dlであり、DFA+Ca区の回復程度の向上が認められた。
【0056】
以上の結果より、DFA IIIは単独で投与するよりも、カルシウム剤と併用し、さらには、ビタミンDと併用することにより、その効果を高めることが認められた。
【0057】
【発明の効果】
本発明のDFA IIIおよび/あるいはDFA IVを有効成分として含有することを特徴とする家畜動物用医薬ないし飼料組成物の使用によって、家畜動物の乳中カルシウム含量が増加し、分娩時の低カルシウム血症を改善するのみならず、乳の生産性が向上し、周産期病を減少させる可能性を奏しているものである。また、本発明の有効成分は、利尿作用を有することから家畜動物の健康維持、乳房浮腫等の疾病の緩和に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ルーメン培養によるDFA IIIおよびDFA IV含量の変化を示す。但し、該変化としては、培養液による差は見られなかったため、両培養液の平均値を使用した。
Claims (7)
- ダイフラクトース アンハイドライドIII及び/又はダイフラクトース アンハイドライドIVを有効成分としてなること、を特徴とする反芻動物用医薬の浮腫予防及び/又は治療剤。
- 乳房浮腫の予防及び/又は治療をすること、を特徴とする請求項1に記載の剤。
- 反芻動物が牛、山羊、羊、水牛、ラクダから選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の剤。
- 牛が乳牛であること、を特徴とする請求項3に記載の剤。
- 乳牛が分娩前後の周産乳牛であること、を特徴とする請求項4に記載の剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤を反芻動物に経口投与すること、を特徴とする反芻動物における浮腫を予防及び/又は治療する方法。
- 乳房浮腫の予防及び/又は治療をすること、を特徴とする請求項6に記載の方法。
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JP2004329110A (ja) | 2004-11-25 |
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