以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車V(車両)の主にシートレイアウトを模式的に示す。この自動車Vには、車室最前部のインストゥルメントパネル1を臨む前部シートとして右側(車体の右側であり、以下、特に断らない限り同様とする)に運転席2が、また左側に助手席3が、互いに並んで配置され、その前部シート2,3の後方には、それぞれ、この実施形態では左右独立のキャプテンシートからなる後部シート4,5が配置されている。さらに、その後部シート4,5の後方にはベンチタイプの最後部シート6が配置され、通常はその後方が荷室スペースになっている。
つまり、この実施形態の自動車Vは、車室と荷室とが繋がった2BOXタイプのもので、前後に合計3列のシート2〜6がレイアウトされていて、その個々のシートクッションの位置やシートバックの傾きを変更できるだけでなく、それらを重ねて折り畳んだり、さらにはフロア下に収納したりして、荷室スペースを大幅に変更できるようになっている。以下、前記の前部シート2,3を1列目シートと呼び、後部シート4,5を2列目シートと呼び、最後部シート6を3列目シートと呼ぶ。
尚、図示の如く、1列目シート2,3のシートバック背面には、それぞれアシストグリップ2a,3aが取り付けられている。また、前記2列目シート4,5は、この実施形態では左右独立のものであるが、これを2人乃至3人掛けのベンチタイプのものとしてもよいし、3列目シート6を左右独立のものとしてもよい。
前記各シート2〜6のシート位置の調整(シートアレンジ)について具体的に、前記1列目シート2,3は、それぞれシートクッションを前後及び上下に移動させたり、シートバックの傾きを調整したりすることができ、2列目シート4,5はさらにシートクッションを左右にも移動可能になっている。この2列目シート4,5は、それぞれ、シートバックをシートクッション上に重ねて、両者を一体に前方へ向かって回動させることにより、1列目シート2,3の背後に折り畳んで格納することもできる(所謂ダブルフォールディング)。
また、前記3列目シート6は、前後左右の位置の調整はできないが、折り畳んでフロア下に収納することができ、こうすれば、通常は当該3列目シート6の後方のみである荷室スペースが2列目シート4,5の後方にまで拡がって、マウンテンバイクなどの大きな荷物も積載できるようになる。さらに、前記2列目シート4,5をダブルフォールディングさせれば、荷室スペースはさらに大きくなる(尚、3列目シート6は、フロア下に収納する代わりに、左右に分割してそれぞれ車室側面に跳ね上げる所謂跳ね上げ式のものであってもよい)。また、前記1〜3列目シート3,5,6のシートバックだけを前に倒してシートクッション上に重ねれば、その上に例えば絨毯などの長い荷物を載せることもできる(図6(a)参照)。
そのようなシートアレンジを自動的に行えるように、この実施形態では、各シート2〜6にそれぞれ対応して電気モータなどのアクチュエータ19,19,…(図1には示さず)が配設されており、図2に示すように、それらの各アクチュエータ19の作動はコントローラ20によって制御されるようになっている。言い換えると、自動車Vには、各シート2〜6毎にアクチュエータ19の作動によって、シートの前後左右の位置や座面の高さ、シートバックの傾きなどを調整し、さらにそれらを折り畳んで格納することもできる自動シートアレンジ装置Aが搭載されている。
この自動シートアレンジ装置Aの構成は前記図2に示されており、コントローラ20には、前記各シート2〜6のシートクッションにそれぞれ配設されて、乗員の着座などを検出する重量センサ等からなる着座センサ21(着座検出手段)が接続されている。また、図2にのみ示すが、コントローラ20には、自動車Vのドア7〜11にそれぞれ配設されて、その開閉状態を検出するドアセンサ22が接続されているとともに、自動車Vに搭載されたキーレスエントリシステムの車載機23も接続されていて、相互に信号を授受可能になっている。
さらに、コントローラ20には、後述の如く、荷物や乗員の携行物に付いているICタグ(記録手段)から無線通信により所定の情報を読み取るためのリーダ装置24(読取装置)が接続されている。このリーダ装置24は、図1に示すように各ドア7〜11に対応して、それぞれドア開口部の外側の所定範囲(破線で模式的に示す)からICタグ情報を読み取るように、例えば天井部やピラーなどに配設さるとともに(以下、車外向リーダともいう)、各シート2〜6に対応して、それぞれシートクッション上乃至荷室スペースの範囲からICタグ情報を読み取るように、例えば天井部などに配置されていて(以下、車内向リーダともいう)、車内外の荷物や携行物の情報を読み取り可能に設けられている。
また、図2のみに示すが、コントローラ20には、各シート2〜6や各ドア7〜11に対応してピラーなどに配設され、後述の如く自動シートアレンジを許容するための所定の操作が行われる操作ボタン25(操作手段)が接続されているとともに、シート位置の調整について乗員に報知するための報知器26が接続されている。この報知器26は、例えば、シート位置調整の音声ガイドを行うスピーカーや、単にアクチュエータが作動中であることを報知するブザーなどでもよく、それ以外に、シートアレンジの手順を表示するためのLCDやELなどのディスプレイ装置でもよい。
尚、この実施形態では、1列目シート2,3に隣接する左右のフロントドア7,8が前側のヒンジを中心に回動して開閉されるヒンジ式のものであり、一方、2列目シート4,5に隣接する左右のリヤドア9,10は、車体外側面に沿って前後にスライドして開閉されるスライド式のものであるが、これに限らず、ドアは全てヒンジドアであってもよいし、全てスライドドアであってもよい。また、最後部のバックドア11は、この実施形態では上ヒンジのハッチゲートであるが、これに限らず、横ヒンジのものであってもよい。
(自動シートアレンジ装置)
本発明の特徴として、この実施形態の自動シートアレンジ装置Aは、主に乗員の荷物に添付されたICタグなどからその荷物に関する情報を自動的に読み取り、この荷物情報に基づいて車室への荷物の積載性を判定して、自動でシート位置の調整(シートアレンジ)を行うようになっている。すなわち、近年、物品やその包装に種々の情報(例えば物品の種類、大きさ、重さなど)を記録したICタグ(電子ラベル、電子レッテルなどとも呼ばれる)を直接、張り付けたり、内蔵したりすることが実用化されつつある。
そのICタグは、一般的に無線通信用のアンテナを有しており、自動車Vに搭載したリーダ装置24からの電波を受信して電磁誘導により起動され、記録している情報をリーダ装置24に対して送信するようになっている。従って、ICタグは、電池などを必要とせず、リーダ装置24から所定の距離内であれば非接触で情報を提供することができる。そして、そのICタグなどに記録されている荷物情報に基づいて、当該荷物の大きさや重さ、或いは壊れやすさなどの積載性に関する属性を精度よく判定することができ、この判定の結果に基づいて、その荷物を積載するための最適なシートアレンジを決定することができる。
しかも、単に荷物を積載できるようにシートアレンジを行って、荷室スペースを広げるだけでは、これに伴い車室スペースが減少して乗員の一部が乗れなくなる虞れがあるから、この実施形態では、乗員の着座状況も加味して前記最適シートアレンジを決定するようにしている。
以下、前記自動シートアレンジ装置Aの動作を主に図3及び図4に示すフローチャートに基づいて具体的に説明すると、まず、図3のスタート後のステップS1において、自動シートアレンジ装置Aの制御に用いる種々のデータを入力する。これは例えば、以下に述べる装置Aの起動操作信号を入力したり、各シート2〜6の状況を認識するためのデータをコントローラ20のメモリから読み込むということである。
続いて、ステップS2では、自動シートアレンジ装置Aの起動を選択する起動操作があったかどうか判別する。これは例えば、キーレスエントリシステムのリモコンの解錠ボタンが所定時間内に続けて2回、押されたときや、或いは、各ドア7〜11に設けられているエントリボタンが押されたときなど、予め設定されている起動操作が行われたときに、起動操作あり(YES)と判別してステップS3に進む(この際、リモコンなどに設けた装置Aの起動ランプを点灯させるようにしてもよい)。一方、YESと判別されるまではステップS1に戻る。
ステップS3では、乗員が自動車Vの車室乃至荷室に乗せようとしている予載荷物(乗車荷物)のICタグから荷物情報を読み込むために、各ドア7〜11の車外向リーダ装置24を所定時間、作動させる。すなわち、起動操作に応じて乗員による荷物の積み込みを予測して車外向リーダ装置24を作動させることで、予載荷物の荷物情報を適切なタイミングで確実に行える。尚、このように起動操作信号の入力に応じて行う他に、例えばドア7〜11がアンロックされたときから所定時間、リーダ装置24を作動させるようにしてもよいし、ドア7〜11が開かれたときから所定時間、作動させるようにしてもよい。
また、読み取った荷物情報の全てをメモリするのではなく、自動車Vへの積載性を判定するのに適した主要な荷物を予め設定しておき、この荷物(例えば旅行鞄や家具、家電製品など、通常の荷室容積の1/4以上を占めるような比較的大きな荷物や例えば10kg以上の比較的重い荷物など)の情報のみをメモリして、判定に不適な小物(アクセサリ、時計、文具など)の情報はメモリしないのが好ましい。こうすれば、車両への積載性に影響の大きな荷物についての荷物情報のみに基づいて、正確な判定を行えるからである。
或いは、読み取った荷物情報の中に荷物の外形の情報と、この荷物を収納可能な収納物の外形の情報とが含まれている場合、その荷物の外形の情報はメモリせず、収納物の外形の情報のみをメモリするのが好ましい。すなわち、ICタグのような記録媒体は、物品だけでなくその包装用の袋や梱包用の箱にも別に取り付けられることがあるが、例えばテレビとその梱包箱の両方の荷物情報が読み取られた場合には、テレビが箱に梱包されている状態であると判断することで、荷物の積載性について正確に判定することができるからである。
続いて、ステップS4では、車内に既に積載されている荷物(既載荷物)や各シート2〜6上の物品のICタグから情報を読み込むために、車内向リーダ装置24を所定時間、作動させて、その情報をメモリする。こうして読み取った物品の情報に基づいて、その物品が既載荷物なのかチャイルドシートのようにシート2〜6に装着されたものなのかを認識することができる。尚、前記予載荷物情報と同様に、読み取った情報の全てをメモリするのではなく、既載荷物についても自動車Vへの積載性を判定するのに適した前記主要な荷物の情報のみをメモリすればよい。
続いて、ステップS5では、前記既載荷物の総重量が所定値以上か(例えば20kg以上か)どうか、或いはその既載荷物の外形寸法が所定値以上か(例えば荷物の高さが室内高の9割以上か)どうか判別する。そして、いずれかが所定値以上でYESであれば、既載荷物がかなり大きいか重いものであってシート2〜6の動作に伴い荷崩れが起きると、これによる不具合が大きいと判断し、後述する図4のステップS15へ進んで自動シートアレンジは行わないようにする一方、NOであればステップS6に進む。
ステップS6では、アクチュエータ19の動作履歴などから現シートアレンジを確認し、それから荷室の直前に位置するシート2〜6の状況を認識する。すなわち、例えば各シート2〜6の着座センサ21からの信号と、前記ステップS4にて車内向リーダ装置24により読み取ったICタグの情報と、メモリに保存されている前回走行中の乗員の着座状況や予め登録されている装備品などの情報とに基づいて、荷室直前のシート2〜6に現在、乗員が着座しているか、ベビーシート(乳児用シート)やチャイルドシート(幼児用シート、子供用シート)、或いはターンクッション等の介護用具が装着されているか、停車前の前回の走行中に乗員が着座していたかなど、シートアレンジを抑制する要因となるものを判定する。
尚、前記ターンクッションというのは、シートクッション上に載置される回転台のことで、乗員が乗り降りしやすいようにその身体の向きを前方から左右方向に回動させて変更できるものである。このようなシート2〜6に取り付けられる介護用の装備などの情報だけでなく、例えば車室が車椅子を搭載可能なレイアウトになっているかどうかなど、その自動車に固有の情報も参照することが望ましい。
前記ステップS6に続くステップS7では、前記ステップS3,S4,S6にて読み込んだ各種の情報に基づいて、最適なシートアレンジを決定する。例えば、まず、前記ステップS3にて読み込んだ予載荷物の情報に基づいて、それらを所定の手順で積載したときの荷物全体の外形寸法及び重量を当該荷物の積載性に関与する属性として判定し、これにステップS4にて読み込んだ既載荷物の外形寸法及び重量を加味して、両者を合わせた積荷全体の外形寸法や重量を判定する。尚、前記所定の手順というのは、相対的に大きなものや重いものを下にするという当たり前の手順であり、ステップS6では、このような手順での荷物の積載を模擬するようにした周知のソフトウェアプログラムを利用することができる。
そして、そうして求めた積荷全体の外形寸法や重量などに基づき、その積荷全体の重量が自動車Vの最大積載量などに対応する所定値を越えないことを前提として、基本的にはその積荷全体を収容可能な荷室スペースが形成されるように、従来周知のシミュレーション(例えば特許文献1に開示されるようなもの)によってシートアレンジの概略を決定する。このように既載荷物も考慮して荷積みのシミュレーションを行うことで、積荷全体を残さず積載可能なシートアレンジを概略、特定することができる。
それから、前記荷積みのシミュレーションにより仮決定したシートアレンジを基礎として、前記荷室直前のシート2〜6における乗員の着座状況を加味し、シート位置の変更を抑制すべき何らかの要因(アレンジ抑制要因)があるシート2〜6については、これをできるだけ動かさずに済むようにシートアレンジを決定する。すなわち、詳しくは後述するが、例えば、第1に現在、乗員が着座していること、第2にベビーシート、チャイルドシートなどが装着されていること、第3に前回の走行中に乗員が着座していたこと、の順に優先順位を付けて、その優先順位の高いものほど、シート位置の変化が小さくなるようにシートアレンジを決定すればよい。
ここで、前記の優先順位は、実際に乗員が着座する確率の高いシートほどアレンジを強く抑制するとともに、健常者よりも被介助者のためのスペースを確保することを優先したものである。また、シート位置の変化が小さくなるように自動シートアレンジを抑制するというのは、例えばシート位置の調整量を相対的に小さくしたり、調整速度を相対的に低くしたりするだけでなく、シート位置の調整をしないことも含む。
前記ステップS7に続いて、図4のステップS8では、前記のように決定した最適シートアレンジとステップS6で確認した現在のシートアレンジとを比較して、自動シートアレンジを行うかどうか判別し、シートアレンジが不可能か又は不要でNOであれば、後述のステップS15に進む一方、シートアレンジが可能で且つ必要であれば、YESと判別してステップS9に進み、今度はドアセンサ22からの信号によりドア7〜11が開いているかどうか判別する。そして、ドア閉状態でNOであれば開くまで待つ一方、ドア開状態であればステップS10に進む。
ステップS10では、前記最適シートアレンジとするために位置を変更するシート2〜6にアレンジ抑制要因がないかどうか判別し、何らかの要因があってNOであれば、後述のステップS13に進む一方、シートアレンジを抑制する要因がなければ、YESと判定してステップS11に進む。そして、シート2〜6のアクチュエータ19に駆動信号を出力して、前記最適シートアレンジとなるようにシート位置を変更するとともに、報知器26によりシートアレンジの変更動作について乗員に報知する。そしてステップS12においてドアが閉じられれば、制御を終了してリターンする。
すなわち、荷物の積載のためにシートアレンジを行うことが必要であって、且つそれを抑制する必要がないときには、バックドア11などが開かれていることを条件として、即ち乗員の見ている前で、自動でシートアレンジを行う。このように自動で適切なシートアレンジが行われるので、乗員は自分でシートを動かす必要がなく、また、目の前でシートの作動状況を確認できる。
しかも、そうして目の前でシートの作動状況を確認できることに加えて、そのシートアレンジの仕方について例えば音声ガイドなどの報知があるので、乗員はシートの動作に不測の不具合がないことを容易に確認でき、極めて利便性が高く、また安全性も高い。尚、作動状況に応じてシートアレンジを中止できるように、シート近傍の所定箇所(例えばピラートリムなど)にキャンセルスイッチを設けておくこともできる。
これに対し、前記ステップS10において何らかのアレンジ抑制要因があると判定して進んだステップS13では、前記の最適シートレイアウトを報知器26により所定時間、乗員に報知し、その所定時間(例えば60〜120秒)が経過するまでの間に操作ボタン25が押されるか、或いは、例えばキーレスエントリシステムのリモコンの解錠ボタンが所定時間以上、続けて押されるなどの所定の操作が行われたときに、コントローラ20に入力する操作信号の入力に応じてステップS14においてYESと判別し、前記ステップS11,S12に進んで、前記と同様に自動シートアレンジを行う。
すなわち、何らかのアレンジ抑制要因があるときには、先にシート位置の調整内容を報知し、これを乗員が確認してシートアレンジを許容した場合に限って、自動シートアレンジを行うようにする。こうすることで、万一、間違って望ましくないシート位置の変更が行われること(例えば乗員が着座予定であったり、チャイルドシートが装着されているシートが折り畳まれることなど)も防止することができる。
また、そのようにアレンジ抑制要因のある自動シートアレンジを行うときには、アレンジ抑制要因のないときに比べて、シート位置の変化が相対的に小さくなるようにする。これは、詳しくは後述するが、例えばチャイルドシートの装着されているシート3〜6のシートバックを畳むことを禁止したり、シートクッションのスライド移動量を相対的に小さくしたり、或いは移動速度を低くする、というようにシートアレンジを抑制するということである。
一方、前記所定時間内に前記のような操作が行われなければ、乗員が自動シートアレンジを行う必要がないと判断したので、前記ステップS14においてNOと判別して、ステップS15に進む。このステップS15では報知器26を作動させ、シートアレンジを行わない(非動作)ことを報知した後に前記ステップS12に進み、ドアが閉じられればリターンする。尚、前記ステップS15においてシートアレンジを行わないことを報知するだけでなく、その理由も報知するようにしてもよい。
すなわち、例えば、既載荷物が所定以上に大きいか重いものであるときや(ステップS5にてYES)、如何にシート位置を変更しても全部の荷物を積載できないか、その反対に荷物が小さくてシート位置を変更しなくても積載できるとき(ステップS8にてNO)、さらに乗員による所定操作が行われなかったときには(ステップS14にてNO)、自動シートアレンジは行わない。
そのように既載荷物の外形寸法や重量が大きいときに自動シートアレンジを行わないようにすることで、荷崩れによる荷物の破損など大きな不具合の発生を予防することができる。この際、一律に自動シートアレンジを禁止するのではなく、荷物の状況に応じてシートアレンジを抑制するようにしてもよい。また、前記のように、乗員による所定操作が行われなかったときに自動シートアレンジを行わないようにすることで、乗員の(シートアレンジ不要という)意志を反映した適切な制御が行える。
前記図3及び図4に示すフローにおいて、ステップS2は、自動シートアレンジ装置Aの起動を選択する起動操作があったとき、このことから乗員乃至その携帯する車両用携行品が自動車Vの所定距離内に接近したことを検出して、荷物の積み込みを予測する予測手段20aを構成している。尚、乗員による荷積みの予測は、それ以外に例えば自動車Vのバックドア11などの開放、そのロックの解除などを検出して行うこともできる。
また、前記フローのステップS4,S5は、自動車Vの車室乃至荷室の既載荷物を認識するとともに、この既載荷物の外形寸法や重量が所定値以上であることを認識する既載物認識手段20bを構成し、ステップS6は、シート2〜6への乗員の着座状況を認識する着座状況認識手段20cを構成している。この着座状況認識手段20cは、各シート2〜6に現在、乗員が着座していること、チャイルドシートなどが装着されていること、前回の走行中に乗員が着座していたことなどを認識可能なものである。
さらに、前記フローのステップS3,S7は、前記予測手段20aによる荷積みの予測時に車外向リーダ装置24によって荷物のICタグから読み取られた荷物情報に基づいて、乗員の所持する荷物の積載性に関与する外形寸法や重量などの属性を判定する属性判定手段20dを構成し、ステップS9は、バックドア11などの開作動に基づいて、乗員が自動車Vの近傍の所定範囲内に存在することを判定する乗員判定手段20eを構成している。
そして、ステップS7,S10〜S15が、前記乗員判定手段20eにより乗員が所定範囲内に存在することが判定されたとき、前記属性判定手段20dにより判定された荷物の外形寸法や重量などに基づいて、さらに前記乗員の着座状況及び既載荷物の認識結果を加味して最適なシートアレンジを決定し、各シート2〜6のシート位置を自動で調整するとともに、そのシート位置の調整について乗員に報知するための制御を行う制御手段20fを構成している。
すなわち、前記制御手段20fは、各シート2〜6のアクチュエータ19を駆動してシート位置を調整する駆動制御部と、そのシート位置の調整内容を報知器26により乗員に報知する報知制御部とを備えており、特にステップS13,S14に示すように、荷室直前のシート2〜6にシートアレンジを抑制すべき何らかの要因があるときには、先にシート位置の調整内容を報知し、これを乗員が確認してシートアレンジを許容した後に、自動シートアレンジを行うようになっている。
また、前記制御手段20fは、特にステップS5→S15に示すように、前記既載物認識手段20bによって既載荷物の外形寸法や重量が所定値以上であると認識されたときには自動シートアレンジを行わず、一方、前記着座状況認識手段20cによって乗員の着座やチャイルドシートなどの装着が認識されたシート2〜6については、そのシート位置の変化が相対的に小さくなるように、自動シートアレンジを抑制するものである。
次に、乗員が自動車Vに荷物を積み込む際の自動シートアレンジ装置Aの一連の作動を、アレンジ抑制要因のない場合とある場合とに分けて、図5のタイムチャートに基づき、図6を参照して具体的に説明する。
まず、図5のタイムチャートにおいて時刻t1に自動シートアレンジ装置の起動を選択する操作が行われて(図3のフローのステップS2に対応する。以下、同様)、車載機23からコントローラ20に起動操作信号が入力すると、該コントローラ20は車外向及び車内向リーダ装置24を作動させて、乗員の所持する予載荷物の情報と荷室の既載荷物や車室の物品の情報とをそれぞれ読み込ませる(ステップS3,S4)。これにより、車外向及び車内向リーダ装置24からそれぞれコントローラ20へ情報読込信号が入力する。
そうして読み込んだ情報に基づいて、予載荷物の積載性の判定や既載荷物の認識、さらには荷室直前のシート2〜6の着座状況の認識などが行われて(ステップS6)、総合的に最適シートレイアウトが決定される(ステップS7)。すなわち、例えば図6(a)に示すように、丸めた絨毯などの長い荷物Lを載せるときには、1列目及び2列目の左側のシート3,5と3列目シートとののシートバックを前に倒し、それら1〜3列目シート3,5,6のシートバック背面上に跨るようにして、荷物L(仮想線で示す)を載せるようにする。
また、同図(b)に示すように外形寸法の大きな荷物Lを載せるときには、まず、荷室左側面に配設されている自動収納スイッチ27(図には点灯表示)を押して、3列目シートを折り畳みフロア下に収納することによって荷室スペースを広げ、それでも入らないときには、さらに2列目シート4,5を前進させたり、ダブルフォールディングさせたりすればよい。その際、積み込もうとする予載荷物の他に既載荷物があれば、その両方を収容できるように荷室スペースを拡大する必要があるが、荷室直前に位置する2列目シート4,5のアレンジは、乗員の着座状況を考慮して行わなくてはならない。
すなわち、例えば同図(c)に示すように右側シート4にチャイルドシートCが装着されていて、ここに子供が座ると推定される一方、左側シート5には既に乗員Mが着座しているときには、これら両方のシートアレンジを抑制する。具体的には乗員Mの着座している左側シート5の作動は禁止する一方、チャイルドシートCが装着されている右側シート4については、シートバックを前に倒すことは禁止するものの、シートクッションは前進させ、これにより荷室スペースを拡大する。
こうして、図示の如く、大きな鞄などの袋物の既載荷物L1の後ろにさらに大きな箱入りの家電製品等の荷物L2を積載することができる。しかも、乗員Mが現に着座しているシート5は動かさないことで、この乗員Mのためのスペースを確保し、さらにシート5の予期せぬ作動に伴う不快感を緩和することができる。また、チャイルドシートCの装着されているシート4についてもシートバックの前倒しを禁止することで、乗員のスペースを確保することができる。
また、別の例として同図(d)に示すように、右側シート4にチャイルドシートCが装着される一方、左側シート5には、前回走行中に乗員が着座しており、従って再び乗員が着座する可能性が高いと推定されるとき(図中?マークで示す)にも、これら両方のシートアレンジを抑制する。但し、今度は前回、乗員が着座していた左側シート5の作動よりもチャイルドシート装着の右側シート4の作動を強く抑制する。具体的には、いずれもシートバックの前倒しは禁止するとともに、右側シート4の前進移動量を左側シート5よりも小さくする。
そうすることで、前記図(c)の場合と同様に大きな袋物の既載荷物L1と大きな箱入りの荷物L2とを両方共に積載することができる。また、チャイルドシート装着の右側シート4の前進移動量を相対的に小さくすることで、被介助者である乗員のためのスペースを優先的に確保して、その乗り降りに介助が必要な場合でも十分な広さが得られるようになる。
前記図6(a),(b)の例のように、乗員の着座状況を考慮してもシートアレンジの抑制要因がない場合は、図5のタイムチャートの上側に示すように、時刻t2にバックドア11が開かれてドアセンサ信号が入力すると(ステップS9)、直ちに各シート2〜6のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シート位置が変更されるとともに、このシート位置の変更について報知器26により報知が行われる。そうして、シート位置の変更が時刻t4に終了した後に、乗員により荷物が積み込まれて、その後、時刻t6にバックドア11が閉じられると(ステップS12)、制御終了となる。
尚、仮に乗員がバックドア11を開いた後に自動シートアレンジ装置Aの起動操作を行った場合には、図5において破線で示すように、情報の読み込みが終わった時点で既にバックドア11が開いているので、直ちにシート2〜6のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シートアレンジが行われることになる。
一方、前記図6(c),(d)の例のように、シートアレンジの抑制要因がある場合は、図5のタイムチャートの下側に示すように、時刻t2にバックドア11が開かれてドアセンサ信号が入力すると(ステップS9)、報知のみが行われるとともに(ステップS13)所定時間のタイマカウントが行われ、この所定時間が経過する前の時刻t3に操作ボタン25の操作などが行われて、コントローラ20に操作信号が入力すると(ステップS14)、シート2〜6のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シート位置が変更される。そして、時刻t5にシート位置の変更が終了した後に乗員により荷物が積み込まれて、その後、バックドア11が閉じられれば(時刻t6)、制御終了となる。
したがって、この実施形態に係る自動シートアレンジ装置Aによれば、乗員の所持する予載荷物のICタグなどから得られる情報に基づいて、当該予載荷物の積載性に関与する外形寸法や重量などの属性を自動的に判定し、主にこの判定結果に基づいて決定した最適なシートアレンジになるようにアクチュエータ19を作動させて、当該乗員の目の前でシート位置を自動で調整するとともに、そのシート位置の調整について報知するようにしたので、乗員は自分でシートを動かす必要がなく安楽であるとともに、シートアレンジに不測の不具合がないことを容易に確認でき、極めて利便性が高いものである。
しかも、前記のようなシートアレンジの決定に際して、乗員により積み込まれる予載荷物だけでなく、既に車室乃至荷室に積載されている既載荷物のICタグなどから得られるその外形寸法や重量などの情報を加味して、当該既載荷物も含めた積荷全体を収容できる荷室スペースが形成されるようにするとともに、さらに、その荷室スペースの直前に位置するシート2〜6における乗員の着座状況も加味して、そこに乗員が着座する場合には、そのためのスペースを確保するようにしている。つまり、荷物の積載と乗員の着座とを高次元で両立した最適なシートアレンジを実現することができる。
すなわち、荷室直前のシート2〜6に乗員の着座などシートアレンジの抑制要因がある場合には、このシート2〜6をできるだけ動かさないようなシートアレンジとすることで、乗員のためのスペースを確保することができる。しかも、その際、先にシートアレンジの仕方を報知し、乗員が確認してシートアレンジを許容したときにのみ、自動でシートアレンジを行うようにしているので、乗員の意志を反映した適切なシートアレンジを行うことができる。
また、特に既載荷物については、その外形寸法及び重量の少なくとも一方が所定値以上で、荷崩れを起こしたときの不具合が大きいと予想される場合には、自動シートアレンジを行わないようにすることで、荷崩れを確実に予防できる。
(変形例)
ところで、前記した実施形態では、図4のフローのステップS11に示すように、シートアレンジの自動調整とそれについての報知との両方を行うようにしているが、これに限らず、例えば報知はせずに、シートアレンジの自動調整だけを行うようにしてもよいし、反対に、最適シートアレンジやその仕方を乗員に報知(指示)するだけに留めてもよい。
以下に、自動シートアレンジを行わず、シートアレンジの仕方を乗員に報知するだけの変形例について説明すると、例えば図7に示すフローのように、スタート後のステップT1〜T4において前記図3のフローのステップS1〜S4と同様に、起動操作信号の入力に応じて車外向及び車内向リーダ措置24を作動させて、乗員の荷物や既載荷物、或いはシート2〜6上や荷室の物品の情報を読み込む。その後、ステップT5においてドア7〜11が開いているかどうか判定し、開いていればステップT6に進んでシートアレンジに関する報知を行い、その後、ドア7〜11が閉じられれば(ステップT7でYES)、制御終了とする。
前記ステップT6のシートアレンジに関する報知は、前記実施形態のフローのステップS11と同様に最適シートアレンジやその仕方について報知する他に、同ステップS15と同様に既載荷物の外形寸法や重量が所定以上のときにはシートアレンジをしないように報知してもよく、或いは、前記ステップS11においてシートアレンジ抑制要因がある場合と同様に、荷室直前のシート2〜6の動きを抑制するような(シート位置の変化が相対的に小さくなるような)シートアレンジの仕方を報知(指示)するようにしてもよい。
そのような報知の具体的な方法は、前記実施形態と同じく音声ガイドであってもよいし、前記図6に示すような模式図をディスプレイ上に表示して、シートアレンジの仕方を図示するものであってもよい。すなわち、例えば同図(a)のように長い荷物を載せる場合にはディスプレイ表示に加えて、或いはそれに代えて、まず「バックドアが開いていることを確認して下さい。」続いて「1〜3列目シートのシートバックを前に倒して下さい。」などと音声ガイドすればよい。
また、同図(b)の場合の音声ガイドは、例えば、「バックドアが開いていることを確認して下さい。」「左側の自動収納スイッチ(図に点灯表示)を押して、3列目シートを収納して下さい。」となり、同図(c)の場合の音声ガイドは、それに続いて「右側リヤドアを開いて下さい。」「2列目右側シートのシートバックドア側にあるロックレバーをフリーにして、シートを前方に5ノッチだけスライドさせて下さい。」となる。すなわち、同図(c)のように2列目シートにアレンジ抑制要因がある場合は、それに応じて、シートバックの前倒しやシートスライドを抑制するようにする。
さらに、同図(d)の場合の音声ガイドは、例えば、前記(c)の場合と同様に「バックドアが開いていることを確認して下さい。」「左側の自動収納スイッチを押して、3列目シートを収納して下さい。」の後に、「右側リヤドアを開いて下さい。」「2列目右側シートのシートバックドア側にあるロックレバーをフリーにして、シートを前方に3ノッチだけスライドさせて下さい。」「左側リヤドアを開いて下さい。」「2列目左側シートのシートバックドア側にあるロックレバーをフリーにして、シートを前方に5ノッチだけスライドさせて下さい。」として、右側シート4のスライド量を左側シートに比べて抑制するようにすればよい。
こうしてシートアレンジの仕方や具体的な手順について模式的に表示したり、音声ガイドを行うだけであっても、乗員は目の前で実際のシート2〜6やそのレイアウトを見ながらガイダンスを受けることになるので、非常に分かりやすく、従って、シートアレンジの仕方を誤解することは殆どなく、手動でシート位置を変更することによって荷物の積載に適したシートアレンジを容易に実現することができる。
(他の実施形態)
尚、本発明の構成は、上述した実施形態やその変形例に限定されることなく、その他の種々の構成をも包含するものである。すなわち、前記実施形態では自動シートアレンジ装置Aの起動操作に応じて乗員による荷物の積み込みを予測し、このときに車外向リーダ装置24を作動させてICタグ情報を読み取るようにしているが、これに限らず、例えば、リーダ装置24をキーレスエントリシステムのリモコンなどの車両用携行品に配設しておき、これがICタグの所定距離(例えば数cm〜従数cmくらい)以内に接近した状態で荷物情報を読み取るように構成することもできる。こうすれば、乗員が意図的に読み取らせた荷物情報のみに基づいて、荷物の積載性を適切に判定できるようになる。
また、前記実施形態では、荷物の積載性に関与する属性として、複数の予載荷物の外形寸法や重量を判定するようにしているが、これに限らず、例えば、さらに荷物の柔軟性や壊れやすさなども判定するのが好ましく、荷物が生鮮食品などの場合には、熱い物と冷たい物とは離して積載するのが好ましいので、このような荷物の温度状態なども含めて判定を行い、この判定結果に基づいて最適シートアレンジを決定するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、車内向リーダ装置24によって読み込んだICタグ情報に基づいて、既載荷物や乗員の着座状況に関連するシート2〜6上の装備を認識するようにしているが、これに限らず、例えば車室乃至荷室を撮影するカメラなどを設置して、これにより取得した画像情報から前記既載荷物などを認識するようにしてもよい。或いは、既載荷物の認識に関しては車外向リーダ装置24による読み込み結果を利用することも可能である。
すなわち例えば、前記車外向リーダ装置24によって予載荷物のICタグなどから荷物情報を読み取ってメモリするだけでなく、反対に室乃至荷室から降ろされる荷物(降車荷物)の荷物情報も読み取って、この降車荷物の情報をメモリから消去するようにし、こうして消去した後にメモリされている荷物情報を既載荷物のものとして認識するようにすればよい。こうすれば、既載荷物のためのリーダ装置24は不要になるので、装置構成の簡略化、低コスト化が図られる。
さらに、前記実施形態では、予載荷物の情報に基づいて、さらに既載荷物の情報や乗員の着座状況を加味して最適シートアレンジを決定するようにしているが、例えば既載荷物がアクセサリ、時計、文具などの小物のみで、その外形寸法及び重量の少なくとも一方が所定値以下のときには、これらの既載荷物の情報によらずに最適シートアレンジを決定するようにしてもよいし、さらなる簡略化のためには、既載荷物や乗員の着座状況を加味せず、常に予載荷物の情報のみに基づいて最適シートアレンジを決定するようにすることもできる。
また、前記実施形態では、荷室直前のシート2〜6のアレンジを抑制する要因として、現に乗員が着座していること、チャイルドシートなどが装着されていること、前回走行中に乗員が着座していたこと、の3つをこの順番に優先順位を付けて考慮するようにしているが、これは一例に過ぎず、優先順位が異なっていてもよいことは勿論、3つのうちのいずれか1乃至2の要因のみを考慮するようにしてもよいし、さらに別の手法で乗員の着座を認識するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、前記のようなシートアレンジ抑制要因があるときにのみ、先に最適シートアレンジに関する報知を行ってから、自動シートアレンジを行うようにしているが、これに限らず、シートアレンジを抑制する要因がないときでも、念のため乗員に報知して確認した上で、自動シートアレンジを行うようにしてもよい。
そのように乗員の意思を確認するために、前記実施形態では、自動車Vの各ドア7〜11に対応するピラーなどに操作ボタン25を配設し、これにより乗員が自動シートアレンジを許容するかどうか決定できるようにしているが、これに限らず、例えばキーレスエントリシステムのリモコンに操作ボタンを配設してもよいし、或いは、そのリモコンの解錠ボタンやドアノブ付近のエントリボタンなどを通常の操作とは異なる態様で操作したときに、自動シートアレンジが許容されるようにしてもよい。
加えて、本発明は、図1に示す自動車VのようなRV車やハッチバック車などに限らず、4ドアのセダンや3ドアのコンパクトカーは勿論、オープンカーやトラック、バスなどにも適用可能である。セダンに適用する場合、車内向リーダ装置24をトランクルームに配設するとともに、車外向リーダ装置24をトランクリッドに対応して配設し、さらに該トランクリッドの開閉状態を検出するセンサ(前記実施形態のドアセンサ22に相当するもの)も設ける必要がある。