JP4428083B2 - 透明性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、透明性、耐熱性、靱性及びその他機械特性に優れた透明性樹脂組成物に関するものである。
古くから光学材料として無機ガラスが使用されてきたが、近年、成形性、軽量性に優れた透明樹脂がガラスに代わる光学材料として使用されている。光学部品の樹脂化は、近年の光を利用した情報関連技術の発展を反映して、例えばLCD、PDP、有機ELなどのフラットパネルディスプレイ用シート、バックライトの導光板、光ディスク、光ファイバー、光導波路などの分野で盛んに検討されている。また、光学以外の分野、例えば電気・電子分野、自動車分野、医療分野、食品包装分野、建設資材分野などでも透明樹脂は広く使用されている。
従来、透明性の材料としては一般にガラスが用いられてきたが、近年、生産性、軽量化、コストなどの点から高分子材料が用いられるようになってきた。このような透明樹脂としては、例えばポリスチレン(以下、PSと略記する。)、ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)、ナイロンなどが挙げられる。
一方、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、透明性、耐熱性、機械強度が優れるといった特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献1参照。)。
また、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物が提案されており、耐熱性に優れ、非常に複屈折が小さいため、光学用途に適した特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献2参照。)。
さらに、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び非晶性ナイロンからなる樹脂組成物が提案されており、透明性、耐熱性、機械強度に優れるといった特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献3参照。)。
特許第3168466号公報
特許第3414083号公報 特許第3208811号公報
しかし、PS、PMMA、およびそれらを含む共重合体や樹脂組成物は透明性に優れるものの耐熱性、靱性が乏しいため、使用できる用途が限定される。また、PCは比較的高い耐熱性を示し靱性も優れるが、複屈折が生じ易いため、光学用途において問題となる場合があり、表面硬度が低く傷つきやすいなどの課題がある。ナイロンは耐熱性、靱性に優れるが、吸水性が高く、剛性、表面硬度が低いなどの課題がある。
そして、特許文献1及び2に提案されているN−置換マレイミド・オレフィン共重合体、樹脂組成物は、透明性が高く、耐熱性、表面硬度、剛性が優れるなどの特徴を有するが、靱性が乏しいため、成形時あるいは成形後のハンドリング性などに課題が残った。
また、特許文献3に記載されているN−置換マレイミド・オレフィン共重合体組成物は、透明性が高く、剛性、耐衝撃性に優れるなどの特徴を有するが、複屈折が若干生じ易く、また、流動性が乏しいため、成形加工性に課題があり、さらに、容易に屈折率が調整できないなどの課題が残った。
そこで、本発明は、透明性、耐熱性、靱性及びその他機械特性に優れた透明性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題に関し、鋭意検討した結果、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体、特定の分子構造を有するアクリロニトリル・スチレン共重合体及び特定の屈折率を有する非晶性ナイロンからなる樹脂組成物が高い透明性を有し、耐熱性、表面硬度、剛性に優れ、さらに靱性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%及び下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなる共重合体であり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるマレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%及びアクリロニトリル残基単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体50〜1重量%からなる樹脂組成物(a)1〜99重量%、測定波長589nmにおける屈折率が該マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率以上該アクリロニトリル・スチレン共重合体の屈折率未満の範囲にあり、該樹脂組成物(a)との屈折率差が0.01以下である非晶性ナイロン99〜1重量%からなることを特徴とする透明性樹脂組成物に関するものである。
Figure 0004428083
(R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基、アルキル基置換フェニル基、ナフチル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。)
Figure 0004428083
(R2、R3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の透明性樹脂組成物を構成するマレイミド・オレフィン共重合体は、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%及び上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなる共重合体であり、数平均分子量1×10以上5×10以下を有するものである。
一般式(I)で示される単位のR1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基、アルキル基置換フェニル基、ナフチル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基であり、これら以外の有機基を有する単位である場合、得られるマレイミド・オレフィン共重合体組成物の耐熱性が劣るものとなる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1,2−ジメチルプロピル基等を挙げることができ、炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができ、アルキル基置換フェニル基としては、例えば2−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、2−i−プロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、2−s−ブチルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、2−n−ペンチルフェニル基、2−t−ペンチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジ−n−プロピルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル基、2−メチル−6−i−プロピルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等を挙げることができ、特に耐熱性、剛性、靱性に優れる樹脂組成物となることから一般式(I)で示される単位のR1はメチル基であることが好ましい。
また、一般式(II)で示される単位のR2及びR3は、各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数が6を超える場合、得られる透明性樹脂組成物の耐熱性が劣るものとなる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、靱性に優れる樹脂組成物となることからメチル基であることが好ましい。
そして、このようなマレイミド・オレフィン共重合体は、例えば一般式(I)で示される単位を誘導するマレイミド類と一般式(II)で示される単位を誘導するオレフィン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。
その際、一般式(I)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばN−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が例示され、特に耐熱性、剛性に優れる透明性樹脂組成物が得られることからN−メチルマレイミドであることが好ましい。
一般式(II)で示される単位を誘導する化合物としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン等のオレフィン類が例示でき、このうち特に耐熱性、靱性に優れる樹脂組成物となることからイソブテンが好ましい。
また、本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体を構成する一般式(I)で示される単位は40〜60モル%の範囲であり、特に耐熱性、剛性に優れる透明性樹脂組成物となることから45〜55モル%であることが好ましい。ここで、一般式(I)で示される単位が60モル%を越える場合、得られる透明性樹脂組成物は脆くなる。一方、40モル%未満の場合、透明性樹脂組成物の耐熱性が低下する。
本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体は、数平均分子量(Mn)が1×10以上5×10以下であり、特に靱性と成形加工性のバランスに優れる樹脂組成物となることから1×10以上5×10以下が好ましい。数平均分子量が5×10を超える場合、マレイミド・オレフィン共重合体の溶融粘度が高くなりすぎるため、樹脂組成物の流動性が乏しくなり、成形加工性が劣るものとなる。一方、数平均分子量が1×10未満の場合、透明性樹脂組成物の靱性が乏しくなる。ここで、本発明における数平均分子量とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算値のことである。
本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体は、特に耐熱性、靱性、剛性のバランスに優れたものとなることから、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体であることが好ましい。
更に、本発明の透明性樹脂組成物を構成するマレイミド・オレフィン共重合体は、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で他のモノマー成分より誘導される単位を含有するものであってもよく、そのような他のモノマー成分としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸又はそのエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピオビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;無水マレイン酸;アクリロニトリルより選ばれる1種類以上の化合物が挙げられ、その含有率としては5モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体は、一般式(I)で示される単位を誘導する化合物及び一般式(II)で示される単位を誘導する化合物を公知の方法により重合することで得ることができる。このような重合方法として、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、及び乳化重合法のいずれの方法によっても得ることができ、その中でも特に透明性、色調に優れる樹脂組成物が得られることから沈殿重合法により得られるものであることが好ましい。
重合反応の際に用いる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
溶液重合法、沈殿重合法において用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などが挙げられる。
その際の重合温度は、開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
また、マレイミド・オレフィン共重合体は、別法として無水マレイン酸・オレフィン共重合体をアミン化合物を用いて、後イミド化することによっても得ることができる。
このような後イミド化反応は、例えば無水マレイン酸・オレフィン共重合体をメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶媒;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒;芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。)などの溶媒に溶解あるいは分散させ、アミン化合物と50〜250℃の温度で反応させることによりアミド化反応とイミド化反応を連続的に行う方法、アミン化合物と反応させてアミド体を得た後、該アミド体を加熱して脱水閉環させ、イミド化を行う方法等により製造することができる。
アミン化合物の例としては、例えばメチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アダマンチルアミン、アニリン、2−メチルフェニルアミン、2−エチルフェニルアミン、2−n−プロピルフェニルアミン、2−i−プロピルフェニルアミン、2−n−ブチルフェニルアミン、2−s−ブチルフェニルアミン、2−t−ブチルフェニルアミン、2−n−ペンチルフェニルアミン、2−t−ペンチルフェニルアミン、2,6−ジメチルフェニルアミン、2,6−ジエチルフェニルアミン、2,6−ジ−n−プロピルフェニルアミン、2,6−ジ−i−プロピルフェニルアミン、2−メチル−6−エチルフェニルアミン、2−メチル−6−i−プロピルフェニルアミン、2,4,6−トリメチルフェニルアミン、2,4−ジメチルフェニルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、i−プロピルアミン、i−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン等を挙げることができ、その中でも特に耐熱性、靱性、剛性のバランスに優れる透明性樹脂組成物となることから、一般式(I)で示される単位を誘導するアミン化合物としてメチルアミンが好ましい。
本発明の透明性樹脂組成物は、マレイミド・オレフィン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、及び非晶性ナイロンからなり、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)の屈折率と非晶性ナイロンの屈折率との差が0.01以下であることにより、高い透明性を示すものである。更に屈折率差が0.005以下である場合、より高い透明性が得られるため好ましく、屈折率差が0.001以下である場合、非常に高い透明性が得られるため特に好ましい。屈折率差が0.01を超える場合、樹脂組成物が成形されてなる成形体は光散乱現象によって白濁化し、透明性が乏しいものとなり、更に、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物と非晶性ナイロンの相溶性が乏しくなる結果、靱性が低下するものとなる。
本発明では上記3成分の樹脂により屈折率を調整するが、2成分の樹脂、例えばマレイミド・オレフィン共重合体及び非晶性ナイロンにより屈折率を調整する場合と比較して屈折率の調整が容易となる。2成分の樹脂により屈折率を調整する場合、互いの分子構造あるいは共重合組成を制御して屈折率差を小さくする必要があり、重合条件等の製造条件を制御するために通常、多大な時間や費用を要する。一方、本発明の透明樹脂組成物は、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリトニトリル・スチレン共重合の配合割合を調節することによって屈折率を調整することが可能である。該配合割合の調整によって屈折率が調整できる理由は、特定の分子構造を有するマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリトニトリル・スチレン共重合が分子単位で完全に相溶するため、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリトニトリル・スチレン共重合からなる樹脂組成物(a)の屈折率を両樹脂の配合割合によって変化させることができるためである。また、該屈折率変化の範囲は、マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率〜アクリトニトリル・スチレン共重合の屈折率の範囲であり、更に、非晶性ナイロンの屈折率を該範囲内とすると共に、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリトニトリル・スチレン共重合からなる樹脂組成物(a)の屈折率と非晶性ナイロンの屈折率との差を0.01以下とすることにより透明性に優れる樹脂組成物となる。なお、本発明でいう屈折率とは、測定波長589nmで測定したものである。
本発明の透明性樹脂組成物がアクリロニトリル・スチレン共重合体を含有する別の効果として、複屈折の低減、流動性上昇による成形性の向上などが挙げられる。複屈折が低減する理由としては、マレイミド・オレフィン共重合体が正の複屈折性を示すことに対し、アクリロニトリル・スチレン共重合体は負の複屈折性を示すため、互いの複屈折を打ち消し合うことによるものである。
本発明に用いられるアクリロニトリル・スチレン共重合体は、アクリロニトリル残基単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体であり、アクリロニトリル残基単位が21重量%未満、又は、45重量%を越える場合、マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との相溶性が低下するため、樹脂組成物は不透明になり、耐熱性も低下する。なお、本発明の透明性樹脂組成物は、透明性を損なわない範囲においてアクリロニトリル残基単位を21〜45重量%含むアクリロニトリル・スチレン共重合体を2種類以上含有しても良い。このようなアクリロニトリル・スチレン共重合体は市販品として入手することが可能である。
また、本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体の配合割合は、マレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体50〜1重量%であり、特に加工性、耐熱性、光学特性のバランスに優れた樹脂組成物となることからマレイミド・オレフィン共重合体60〜90重量%とアクリロニトリル・スチレン共重合体40〜10重量%であることが好ましい。マレイミド・オレフィン共重合体が50重量%未満である場合、透明性樹脂組成物の耐熱性が乏しくなるため好ましくなく、また、マレイミド・オレフィン共重合体が99重量%を超える場合には、透明性樹脂組成物の加工性、機械強度が乏しくなるため好ましくない。
本発明に用いられる非晶性ナイロンは、測定波長589nmにおける屈折率が該マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率以上該アクリロニトリル・スチレン共重合体の屈折率未満の範囲にあり、マレイミド・オレフィン共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる該樹脂組成物(a)との屈折率差が0.01以下である非晶性ナイロンである。
本発明で用いられる非晶性ナイロンは、ジアミンと芳香族ジカルボン酸とを必須成分とし、更に、他の脂肪族共重合成分を含有するものであることが好ましい。ジアミンの代表例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの2〜18個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状脂肪族ジアミン;1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジメチルシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジメチルシクロヘキシルプロパン、ビス(4−アミノ−3−メチル−5−エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチル−5−エチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−メチル−5−イソプロピルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチル−5−イソプロピルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−イソプロピルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−イソプロピルシクロヘキシル)プロパン、α−α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α−α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α−α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,4−シクロヘキサン、α−α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,3−シクロヘキサンなどのシクロヘキサン環を有する脂肪族アルキレンジアミンから誘導されるものが好ましい例として挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の代表的な例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、および、これらの混合物が代表的であり、特にイソフタル酸、または、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物が好ましく用いられる。非晶性ナイロンを構成する他の脂肪族共重合成分の代表的な例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウリルラクタムなどの4〜12個の炭素原子を有するラクタム;アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。なお、本発明の透明性樹脂組成物は、透明性を損なわない範囲において2種類以上の非晶性ナイロンを含有しても良い。
本発明に用いられるマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)と非晶性ナイロンとの配合割合は、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)1〜99重量%、非晶性ナイロン99〜1重量%であり、特に靱性、剛性のバランスに優れた透明性樹脂組成物となることからマレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)90〜50重量%、非晶性ナイロン10〜50重量であることが好ましい。マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)が1重量%未満である場合、透明性樹脂組成物の剛性が乏しくなるため好ましくなく、また、マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなる樹脂組成物(a)が99重量%を超える場合には、透明性樹脂組成物の靱性が乏しくなるため好ましくない。
本発明の透明性樹脂組成物は、製造時や成形加工時の熱履歴に起因する着色や分解、架橋等を抑制するため、フェノール系、リン系、イオウ系、その他の酸化防止剤を必要に応じて含有しても良い。また、これら酸化防止剤はそれぞれ単独で用いてもよく、それぞれを併用して用いても良い。以下にその詳細を示すが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−(1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル アクリレート、及び2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイトなどが挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えばジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
また、その他の酸化防止剤として例えば、フェノール系酸化防止剤としての機能とリン系酸化防止剤としての機能を併せ持つ酸化防止剤として、フェノール/リン系酸化防止剤として、6−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ)−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ(d,f)(1,3,2)−ジオキサホスフェピン、ビタミンE系酸化防止剤として、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オールなどが挙げられる。
上記酸化防止剤のうち、透明性樹脂組成物が着色し難いことから、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を含有することが好ましい。その場合、例えばフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部の割合で含有することが好ましい。また、酸化防止剤の含有量としては、100〜20000ppmであることが好ましい。
また、透明性樹脂組成物が光学材料として用いられる場合、可視光線、紫外線、赤外線などの光の照射を受けることが想定され、特に高温状況下で光が照射されると、熱着色や光劣化が生じ易いため、該熱着色や光劣化を抑制する目的にて、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤などを必要に応じて含有しても良い。以下にその詳細を示すが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、熱着色抑制効果に優れることから分子量が1,000以上のものが好ましい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、熱着色防止効果および光安定化効果に優れることから、100〜15000ppmであることが好ましい。
このようなヒンダードアミン系光安定剤として例えば、ポリ((6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5―トリアジン−2、4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,6−ヘキサメチレンジアミンと、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物などが挙げられる。
また、紫外線吸収剤としては、従来、一般的に知られるベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系、サリチル酸系、アクリレート系、金属錯塩系などの紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量としては、500〜100000ppmであることが好ましい。
紫外線吸収剤として例えば、特開2001−98163号公報に開示されるような化合物が挙げられ、具体的にはフェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’-ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−オクチルフェニルサリシレート、ビス(4−t−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、ヘシサデシル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートおよびそれらの混合物などのサリシレート誘導体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよびそれらの混合物などの2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−s−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−((3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル)−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールの混合物、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2,2’−メチレンビス(4−t−ブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)と2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールとの縮合物、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)とメチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとの縮合物、2−エチルヘキシル3−(3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル3−(3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、メチル3−(3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−(3−t−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、及び2−(4,6−ジフェニール−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル(オキシ))−フェノールなどが挙げられる。
近赤外線吸収剤としては、例えばシアニン系近赤外線吸収剤、ピリリウム系赤外線吸収剤、スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤、アズレニウム系近赤外線吸収剤、フタロシアニン系近赤外線吸収剤、ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤、ナフトキノン系近赤外線吸収剤、アントラキノン系近赤外線吸収剤、インドフェノール系近赤外線吸収剤、アジ系近赤外線吸収剤などが挙げられる。
また、本発明の透明性樹脂組成物は、上述の成分以外に、顔料、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、染料、可塑剤、オイルなどを必要に応じて含有しても良く、透明性が損なわれない場合においてのみその他の樹脂を含有しても良い。以下にその詳細を示すが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
滑剤としては、例えば流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系滑剤;セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸などの高級脂肪族系アルコール・高級脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミドなどの脂肪族アマイド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチレングリコールなどの脂肪酸エステル系滑剤;シリコーンオイルなどが挙げられ、滑剤の含有量は、1〜10000ppmであることが好ましい。
その他の樹脂として、少なくともアクリロニトリル・スチレン共重合体を含む耐衝撃性樹脂が挙げられ、そのような樹脂として例えば、ASA(アクリロニトリル/スチレン/アクリルゴム)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、AES(アクリロニトリル/EPDMまたはEPR/スチレン)、SAS(スチレン/アクリロニトリル/シリコン)などが挙げられる。
本発明の透明性樹脂組成物の製造方法としては、該組成物を構成する成分であるマレイミド・オレフィン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、非晶性ナイロンが良好な分散性を示す方法であれば特に制限はなく、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて混合する方法、あるいは透明性樹脂組成物を構成する成分を溶媒中に溶解あるいは分散させて混合する方法などを挙げることができる。また、透明性樹脂組成物を構成する成分の混合の順序についても特に制限はなく、例えば3成分を同時に混合しても良いし、2成分を混合した後、該2成分の混合物に残りの1成分を混合しても良い。
本発明の透明性樹脂組成物は、従来公知の成形方法により成形体とすることができ、例えば射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト法射出成形、押出成形、多層押出成形、回転成形、熱プレス成形、ブロー成形、発泡成形などの方法により、射出成形体、チューブ、シート、パイプ、ボトルなどに成形することができる。
本発明の透明性樹脂組成物の用途としては、例えば電気・電子機器に使用されるリレー、バーンインソケット、コネクター、センサーハウジング、可変抵抗器、ポリバリコンケース、エアレーション用ボビン、トランジスタ、IC、LSI、LED等の封止材、ICカードのICメモリーの封止材、モーター、コンデンサー、スイッチ、センサー等の封止材;カメラ、VTR、プロジェクター等の映像機器に使用される撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、ボディ材等;CDプレーヤー、DVDプレーヤー、MDプレーヤー、ゲーム機器等の光記録機器に使用されるカード、ディスク、ピックアップレンズ等;光通信分野で使用される光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等;LCD、有機EL、PDP、複写機、プリンター、ファクシミリ、タッチパネル、光ファイル等の情報機器に使用される導光板、ライトガイド、フレネルレンズ、プリズムシート、光拡散シート、透明電極シート基板、ディスプレイの表面保護シート、インクタンク、カバー類、ボディ材等;自動車、電車などの車両分野で使用されるメーター類、ランプ類、レンズ類、ソケット、ヒューズケース、計器カバー等;医療機器分野で使用される眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、内視鏡レンズ、注射器、人口透析器、薬液容器、義歯、アンプルカッター容器等;建材分野における採光窓、ドア、監視カメラレンズ、カーポート、テラス、照明部品等;日用品分野で使用される照明部品、玩具、サングラス、文房具、化粧品容器、釣り具、食品用容器、飲料水用容器などが挙げられる。
本発明により得られる透明性樹脂組成物は、耐熱性、剛性、表面硬度、靱性に優れることから、光学用材料などとして好適に使用することができる。
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
実施例に示された諸物性は以下の方法により測定した。
〜数平均分子量〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い測定したマレイミド・オレフィン共重合体の溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として求めた。
〜ヘイズ〜
JIS K7136に準拠し、厚さ3mmの試験片を用いて測定した。
〜屈折率〜
ASTM D542に準拠し、厚さ3mmの試験片を用い、測定温度25℃、測定波長589nmの条件で測定した。
〜引掻き鉛筆硬度〜
JIS K5600−5−4に準拠し、厚さ3mmの試験片を用いて測定した。
〜引張破断伸び〜
JIS K7161に準拠し、厚さ4mmの試験片を用いて測定した。
〜曲げ弾性率〜
JIS K7171に準拠し、厚さ4mmの試験片を用いて測定した。
〜複屈折〜
全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)により、厚さ3mmの試験片を用い、測定波長546nmの条件で測定した。
合成例1(N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の合成)
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管の付いた5lセパラブルフラスコに、無水マレイン酸・イソブテン共重合体(株式会社クラレ製、商品名イソバン10)500g及び溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)を3000g充填し、室温で攪拌して無水マレイン酸・イソブテン共重合体をNMPに溶解させた。次いで、メチルアミンガス200gを室温で導入した後、80℃に昇温して1時間攪拌することにより無水マレイン酸単位のアミド化反応を行った。引き続き、205℃に昇温し、1時間攪拌することによりイミド化反応を行った後、室温まで冷却し、イソプロパノールを用いて再沈殿処理してポリマーを回収した。
元素分析、赤外吸収スペクトル測定及び13C−NMR測定から、生成したポリマー中のN−メチルマレイミド残基及びイソブテン残基の比は0.5/0.5(モル比)であることを確認した。また、生成したポリマーの数平均分子量は90000であり、屈折率は1.5276であった。
実施例1
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体85重量%及びアクリロニトリル・スチレン共重合体(テクノポリマー株式会社製、商品名サンレックスSAN−L;アクリロニトリル残基単位含量29重量%、屈折率1.5643)15重量%をタンブラーミキサーでドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して押出し、透明な樹脂組成物(1)(屈折率1.5331)を得た。
次いで、得られた樹脂組成物(1)70重量%及び非晶性ナイロン(株式会社エムス昭和電工製、商品名グリルアミドTR55;屈折率1.5336)30重量%を30mmφ2軸押出機に供して押出し、透明性樹脂組成物を得た。引き続き、得られた透明性樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度90℃の条件で射出成形して試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。得られた透明性樹脂組成物は複屈折が小さく、高い透明性を有し、剛性、表面硬度、靱性のバランスに優れるものであった。
実施例2
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%及びアクリロニトリル・スチレン共重合体(ダイセルポリマー株式会社製、商品名セビアン050SF;アクリロニトリル残基単位含量20重量%、屈折率1.5723)20重量%をタンブラーミキサーでドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して押出し、透明な樹脂組成物(2)(屈折率1.5372)を得た。
次いで、得られた樹脂組成物(2)70重量%及び非晶性ナイロン(株式会社エムス昭和電工製、商品名グリルアミドTR70LX;屈折率1.5365)30重量%を30mmφ2軸押出機に供して押出し、透明性樹脂組成物を得た。引き続き、得られた透明性樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度100℃の条件で射出成形して試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。得られた透明性樹脂組成物は複屈折が小さく、高い透明性を有し、剛性、表面硬度、靱性のバランスに優れるものであった。
比較例1
実施例1と同様にしてN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体85重量%及びアクリロニトリル・スチレン共重合体15重量%からなる透明な樹脂組成物(1)(屈折率1.5331)を得た。
次いで、得られた樹脂組成物(1)70重量%及び非晶性ナイロン(株式会社エムス昭和電工製、商品名グリルアミドTR90;屈折率1.5046)30重量%を30mmφ2軸押出機に供して押出し、透明な樹脂組成物を得た。引き続き、得られた樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度90℃の条件で射出成形して試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は透明性、靱性(引張破断伸び)が劣るものであった。
比較例2
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体70重量%及び非晶性ナイロン(株式会社エムス昭和電工製、商品名グリルアミドTR55LX;屈折率1.5241)30重量%をタンブラーミキサーでドライブレンドした後、30mmφ2軸押出機に供して押出し、透明な樹脂組成物を得た。引き続き、得られた透明な樹脂組成物を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度90℃の条件で射出成形して試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は複屈折が比較的大きいものであった。
比較例3
実施例1と同様にしてN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体85重量%及びアクリロニトリル・スチレン共重合体15重量%からなる透明な樹脂組成物(1)(屈折率1.5331)を得た。
引き続き、得られた樹脂組成物(1)を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度90℃の条件で射出成形して厚み3mmの試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は靱性(引張破断伸び)が劣るものであった。
比較例4
市販のポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、商品名L−1250Y)を射出成形機(東芝機械株式会社製、商品名IS50EP)に供し、ノズル部温度280℃、金型温度100℃の条件で射出成形して試験片を得た。
本射出試験片を用いて物性を測定した結果を表1に示す。ポリカーボネート樹脂は剛性、表面硬度が乏しく、複屈折が大きいものであった。
Figure 0004428083

Claims (1)

  1. 下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%及び下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなる共重合体であり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるマレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%及びアクリロニトリル残基単位21〜45重量%を含むアクリロニトリル・スチレン共重合体50〜1重量%からなる樹脂組成物(a)1〜99重量%、測定波長589nmにおける屈折率が該マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率以上該アクリロニトリル・スチレン共重合体の屈折率未満の範囲にあり、該樹脂組成物(a)との屈折率差が0.01以下である非晶性ナイロン99〜1重量%からなることを特徴とする透明性樹脂組成物。
    Figure 0004428083
    (R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基、アルキル基置換フェニル基、ナフチル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。)
    Figure 0004428083
    (R2、R3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
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