しかしながら、従来における電気光学装置には次のような問題点がある。すなわち、アクティブマトリクス駆動が可能な電気光学装置においては、上述のように基板の上に薄膜トランジスタ等の画素スイッチング素子がマトリクス状に設けられるが、この画素スイッチング素子に完全に正確な動作をさせることが必ずしも容易ではないことである。
まず、第1に、画素スイッチング素子を正確に動作させるためには、画素スイッチング素子自体が設計通りに製造され動作する必要があるほか、該画素スイッチング素子周囲の各種の要素もまた設計通りに製造され動作する必要がある。例えば画素スイッチング素子が前記薄膜トランジスタからなる場合においては、チャネル領域、ドレイン領域及びソース領域を含む半導体層をマトリクス状に作り込んだ上、各半導体層のチャネル領域に対向するようにゲート電極を設け、且つ、該ゲート電極と電気的に接続される走査線をマトリクス状における各行について作り込む、などといった構造を構築する必要がある。ここでゲート電極及び走査線の採り得るより具体的な構造については様々な形態が提案されており、例えば走査線とゲート電極とを基板上の別々の層に構築し、両者をコンタクトホールで電気的に接続するなどという構造を採用することが可能である。しかし、かかる構造では、当該走査線の製造段階(例えば、パターニング処理時)に例えば該走査線の一部につき過度にエッチングを進行させてしまい当該走査線に断線を生じさせる場合もあり得、そうすると当該走査線に連なる薄膜トランジスタの正確な動作はもはや期しえなくなる。このように、画素スイッチング素子の正確な動作を実現するためには、該画素スイッチング素子周囲の要素についても配慮する必要があるのである。特に、走査線については、上述のように構造によってはほんの一部の断線でもって一行分全部の薄膜トランジスタの動作を不能ならしめるおそれがあるなど、特別な配慮が必要となる。
また第2に、画素スイッチング素子として薄膜トランジスタを用いる場合には、そのチャネル領域に入射光が照射されることを極力防止しなければならない。なぜなら、チャネル領域に入射光が照射されると、光による励起で光リーク電流が発生して薄膜トランジスタの特性が変化するからである。特に、プロジェクタのライトバルブ用の電気光学装置の場合には、入射光の強度が高いため、薄膜トランジスタのチャネル領域やその周辺領域に対する入射光の遮光を行うことは重要となる。このように、薄膜トランジスタの正確な動作を実現するためには、耐光性という観点からも配慮をしておく必要がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、走査線等の配線につき仮に断線等が生じた場合でも正確な動作を期しえるとともに、そのチャネル領域への光入射が極力防止され得るような薄膜トランジスタを備え、もって正確な画像表示を行いうる電気光学装置を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するため、基板上に、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域を有する半導体層と、前記チャネル領域上にゲート絶縁膜を介して積層されたゲート電極と、前記半導体層の下層側に積層され前記ゲート電極と電気的に接続される第1走査線と、前記ゲート電極と同一膜からなり前記第1走査線の延びる方向に沿って延びる第2走査線と、前記ドレイン領域に電気的に接続され且つ前記第1走査線及び前記第2走査線の延びる方向にその長尺方向を一致させる中継電極層と、前記中継電極層に電気的に接続される画素電極とを備えてなり、前記第2走査線及び前記中継電極層は遮光性材料からなるとともに、前記第2走査線の縁及び前記中継電極層の縁は平面的に光透過領域を規定するようにされている。
本発明の電気光学装置によれば、その動作時には、薄膜トランジスタのソース領域に、例えばデータ線を介して画像信号が供給され、薄膜トランジスタのゲート電極に、第1走査線、あるいは第2走査線を介して走査信号が供給される。すると、薄膜トランジスタのドレイン領域に接続された画素電極を、薄膜トランジスタによりスイッチング制御することによって、アクティブマトリクス駆動方式による駆動を行える。例えば、このような基板に対向する位置には、液晶等の電気光学物質を介して、画素電極に対向配置された対向電極が設けられて、これと画素電極との間で電圧印加が行われる。また、横電界駆動方式の場合には、このような対向電極は不要であり、相隣接する画素電極間で電圧印加が行われる。若しくは、例えばこのような画素電極の各々により、有機又は無機EL(Electro-Luminescence)発光層への電流供給が行われるように構成することも可能である。
そして、本発明ではまず第1に、上述したように、ゲート電極には、第1走査線、あるいはこれとは別の層に位置する第2走査線により走査信号が供給されるようになっている。したがって、例えば第1走査線が何らかの事情により断線することで走査信号の供給を行えなくなったとしても、第2走査線を用いれば走査信号の供給を滞りなく行うことができる。その逆もまた当然に成り立つ。このように、本発明によれば、第1走査線が第2走査線にとって、あるいは第2走査線が第1走査線にとって冗長な関係にあることにより、薄膜トランジスタのより正確な動作を期しえることになるのである。
また、本発明では第2に、ドレイン領域と画素電極との電気的な接続は中継電極層によって実現されている。これにより、ドレイン電極及び画素電極間で電気的な接続を実現する際に、中継電極層を利用することができるから、基板上の積層構造及び製造プロセスの複雑化を回避すること、あるいは蓄積容量を形成する場合にはその大面積を図ることなどができる。さらに、第2走査線及び中継電極層は遮光性材料からなるとともに、これら第2走査線及び中継電極層それぞれの縁が平面的に見て光透過領域を規定するようにされている、あるいは好ましくは画素電極の縁を覆うようにされている。好ましくは例えば、画素電極がマトリクス状に配列される場合を考えると、各画素電極の上辺については中継電極層の縁(この場合の「縁」は、当該中継電極層の長尺方向に沿った縁が好ましいことは言うまでもない。)が覆い、その下辺については第2走査線が覆うなどという形態とするのが最も好ましい。このような光透過領域の規定により、電気光学装置の内部にむやみに光が進入してくるということを未然に防止することができ、当該内部で多重反射光等を生じさせるおそれを低減することができるから、チャネル領域、あるいはその周辺の領域に光が入射することを未然に防止することができる。かかる効果は、第2走査線及び中継電極層が遮光性材料からなること、ことに第2走査線はチャネル領域上に積層されるゲート電極を含むことから、より効果的に享受される。
以上により結局、本発明によれば、走査線につき仮に断線等が生じた場合でも正確な動作を期しえるとともに、そのチャネル領域への光入射が極力防止され得るような薄膜トランジスタを備え、もって正確な画像表示を行いうる電気光学装置を提供することが可能になる。
なお、本発明にいう「遮光性材料」には、光吸収率が数十パーセント以上である材料も含まれる。そのような材料としては、具体的には例えば、導電性ポリシリコン膜がある。これを用いれば、第2走査線又は中継電極層において相応の光吸収効果が得られる他、導電性ポリシリコンは比較的電気抵抗値の低い材料であることから走査信号又は画像信号の渋滞なき伝送が可能となる。また、より光吸収率が高い材料としては、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。又は、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)等の他の金属を含んでもよい。若しくは、例えば導電性ポリシリコン膜等からなる第1膜と高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜とが積層された多層構造を持ってもよい。いずれにせよ、以上に挙げた材料ないし構成はすべて「遮光性材料」ないし「遮光性材料からなる」に含まれる。
また、「画素電極の縁を覆うように」というのは、当該縁を完全に覆っている場合のほか、当該縁の全部ではないがその一部を覆っている場合や、当該縁の付近を覆っている場合も含む。
本発明の電気光学装置の一態様では、前記第2走査線及び前記中継電極層は同一層の膜からなる。
この態様によれば、前記第2走査線及び前記中継電極層は同一層の膜からなる(本明細書において、「同一膜からなる」も同じ意味である。)から、積層構造及び製造プロセスの複雑化を避けることができる。例えば、これら第2走査線及び中継電極層を別々の層に形成するなどという場合に比べて、積層構造の多層化を防止することができる。
この態様では、前記第2走査線は、第1幅狭部と、該第1幅狭部よりも幅が広く且つ前記第1走査線と電気的に接続されるための第1接続部を含む第1幅広部とを含み、前記中継電極層は、第2幅狭部と、該第2幅狭部よりも幅が広く且つ前記ドレイン領域又は前記画素電極に電気的に接続されるための第2接続部を含む第2幅広部とを含み、前記第1幅狭部は前記第2幅広部と対向し、前記第1幅広部は前記第2幅狭部と対向するように構成してもよい。
このような構成によれば、第2走査線及び中継電極層が同一膜からなる構造、更にはこれを含む基板上の積層構造をより好適に構築することができる。すなわち、本構成によれば、平面的に見て、第2走査線中の第1幅狭部が中継電極層中の第2幅広部にいわば噛み合うように、且つ、第2走査線中の第1幅広部が中継電極層中の第2幅狭部にいわば噛み合うように、これら第2走査線及び中継電極層のそれぞれを配置するということができる。したがって、限られた基板の上において、第2走査線及び中継電極層を無理なく配置することができるのである。また、第2走査線中の第1幅広部と中継電極層中の第2幅広部とは接続部を含むことから、これら第2走査線及び中継電極層と他の要素との電気的接続をも無理なく図ることができる。
以上により、最初に述べたように、本構成によれば第2走査線及び中継電極層が同一膜からなる構造、更にはこれを含む積層構造をより好適に構築することができるのである。
あるいは、第2走査線と中継電極層とが同一膜からなる態様では、前記ドレイン領域及び前記中継電極層のそれぞれと相互に電気的に接続された画素電位側容量電極、該画素電位側容量電極に対向配置された共通電位側容量電極、及びこれら両電極に挟持された誘電体膜からなる蓄積容量を更に備えてなるように構成してもよい。
このような構成によれば、まず、中継電極層を介して画素電極に接続されることとなる蓄積容量によって、画素電極における電荷保持特性を高められる。そして本構成では特に、以下のような作用効果を得ることができる。
まず、本発明では、中継電極層が第2走査線と同一膜からなり、且つ、該第2走査線がゲート電極を含むということから、該ゲート電極下には比較的薄いゲート絶縁膜を介してドレイン領域を含む半導体層が存在していることになる。したがって、本構成においては、画素電位側容量電極が、半導体層及びゲート電極と中継電極層との上に共通に存在する層間絶縁膜を介して積層されているという態様を典型的には想定することができる。そうすると、この場合、画素電位側容量電極を画素電極に電気的に接続するために、該画素電位側容量電極の上側に電気的な接続点を設ける必要がないことになる。なぜなら、画素電位側容量電極はドレイン領域と前記層間絶縁膜を介してその下側で接続可能であるとともに、中継電極層ともまた前記層間絶縁膜を介してその下側で接続可能であって、中継電極層は画素電極と接続されているからである。
この点、もし仮に画素電位側容量電極の上側に電気的な接続点を設ける場合であって、下側から順に、画素電位側容量電極、誘電体膜及び共通電位側容量電極を積層していく場合を考えると、画素電位側容量電極の上側の適当な領域を露出するために、誘電体膜及び共通電位側容量電極のパターニングを好適に実施する必要がある。しかし、このようなパターニングは、これら三つの要素がそれぞれ異なるエッチングレートをもつことなどから一般に困難であり、悪い場合には画素電位側容量電極においていわゆる「突き抜け」を生じさせるおそれも生じてくる。また、そのようなパターニングの後には、当然、共通電位側容量電極の面積は画素電位側容量電極の面積よりも小さくなるから、当該蓄積容量の容量値は小さくなってしまうことになる。
しかるに、本構成によれば、画素電位側容量電極の上側に画素電極との電気的接続点を設ける必要がないことから、前述の困難な加工工程を実施する必要がないのである。したがって、その動作においてより信頼性の高い蓄積容量を提供することができる。また、例えば画素電位側容量電極及び共通電位側容量電極の形状を同じに形成することも可能であって、前述のような場合に比べて相対的にこれら電極の大面積化を果たすことができるから、蓄積容量の容量値を稼ぐこともできる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第2走査線の上層側に積層され且つ該第2走査線及び前記第1走査線に交差する方向に延びる第1部分を含む上側遮光膜を更に備えてなり、該上側遮光膜は、平面的に見て前記中継電極層間の隙間と重なるようにされている。
この態様によれば、上側遮光膜が存在していることから、チャネル領域に光が入射するおそれを更に低減することができる。また本態様では特に、上側遮光膜が第1及び第2走査線に交差する方向に延びる第1部分を含むから、前述のように画素電極の上辺及び下辺をそれぞれ中継電極層及び第2走査線で規定する例において更に、前記第1部分の縁が画素電極の左辺及び右辺を規定するように上側遮光膜の配置を決定すれば、光透過領域の規定をより好適に実施することができる。
さらに、本態様に係る上側遮光膜は平面的に見て中継電極層間の隙間と重なるようにされている。ここで「中継電極層間の隙間」とは、該中継電極層が画素電極と電気的に接続されることが予定されており、且つ、該画素電極が典型的には複数設けられることが予定されていることによる。すなわち、このような場合、複数の画素電極に対応するように、複数の中継電極層が設けられることになり、そうすると、例えば隣接しあう二つの中継電極層の間には隙間を設けておかなければならないことになる(仮に全中継電極層を一体的にパターニングしてしまうとすれば、もはや画素電極ごとに異なる画像信号を供給することは不可能になる。)。この隙間、つまり中継電極層をパターニング等により島状に形成する際において同時に形成される隙間が、本態様にいう「中継電極層の隙間」の含意するところである。そして、本態様では、かかる隙間を埋めるようにして上側遮光膜が存在していることになる。すなわち、この隙間の存在は、中継電極層が前述のように遮光のためにも働くことを鑑みると、必ずしも好ましいものではない。しかしながら、本態様では、かかる隙間を埋めるように、上側遮光膜が存在しているのである。つまり、中継電極層のみでは遮光を実現し得ない部分を上側遮光膜によってバックアップしているということができるのである。よって、本態様では、このような観点からも、チャネル領域を含む半導体層の耐光性を高めることができるといえる。
なお、本態様の上側遮光膜を構成する材料としては、前述の第2走査線及び中継電極層を構成する材料として例示した材料を同じように用いるのが好ましい。
この態様では、前記上側遮光膜は前記ソース領域に電気的に接続されるデータ線を含むように構成してもよい。
このような構成によれば、上側遮光膜がデータ線を含むから、例えば単なる遮光機能だけを有する上側遮光膜と、ソース領域に画像信号を供給する機能だけを有するデータ線を別々に作り込むなどという場合に比べて、基板上の積層構造及び製造プロセスの簡略化を図ることができる。
上側遮光膜を備える電気光学装置では更に、前記上側遮光膜は、前記第1走査線及び前記第2走査線の延びる方向に延びる第2部分を含み、当該第2部分は、前記第2走査線及び前記中継電極層間の隙間と重なるようにされているように構成してもよい。
このような構成によれば、上側遮光膜が第1及び第2走査線の延びる方向に延びる第2部分を含む。仮に、この第2部分が第1及び第2走査線と同様に、相当程度の長さ延在するものと、また、前記の第1部分も相当程度の長さ延在するものと仮定すると、当該上側遮光膜は、概ね格子状を有するようなことになる。したがって、これによると、光透過領域の規定をより好適に行いうることが可能であるとともに、電気光学装置の内部に入り込む光の総量の規制をもよりよく行うことができることになるから、チャネル領域を含む半導体層の耐光性をより高めることができる。また、前記第2部分は、第2走査線及び中継電極層間の隙間(当該隙間は、第2走査線及び中継電極層が前述のように同一膜からなる場合には、両者間の短絡を防ぐため当該膜が形成される層において必ず生成されなければならない。)に重なるようにされているから、第2走査線及び中継電極層のみでは遮光を実現し得ない部分を上側遮光膜によってバックアップしているということができる。よって、本態様では、このような観点からも、チャネル領域を含む半導体層の耐光性を高めることができるといえる。
なお、上側遮光膜が前述のようにデータ線を含む場合においては、該データ線が相互に断絶されたストライプ状に形成されなければならないことからして、本態様にかかる第2部分の長さにも自ずと限界がある。この点、上述でも既に「相当程度の長さ延在するものと…仮定すると」というように注意深く表現されていることからもわかるように、本態様にかかる「第2部分」は、第1走査線及び第2走査線の延びる方向に延びはするが、前記のように上側遮光膜たるデータ線がストライプ状に形成される場合には、隣り合う第2部分同士、あるいはあるデータ線から延びる第2部分とこれに隣接するデータ線とは必ずしも接続されている必要はない。なお、この場合には、「第2部分は、前記第2走査線及び前記中継電極層間の隙間と重なるようにされている」というのは、より正確には、「第2部分は、前記第2走査線及び前記中継電極層間の隙間『の一部』と重なるようにされている」ということになるが、いうまでもなく、「隙間と重なるように」は、「隙間の一部と重なるように」を当然含意するものである。
さらに、上側遮光膜を備える電気光学装置の態様では、前記上側遮光膜は低応力材料からなるように構成してもよい。
このような構成によれば、上側遮光膜は低応力材料、例えばアルミニウム等からなるから、当該上側遮光膜中に比較的大きな内部応力等を発生させるおそれがなく、該内部応力による上側遮光膜自身の破損、あるいは該内部応力によって上側遮光膜の周囲に与えられる機械的・物理的影響の発生などを未然に回避することができる。
ところで、上側遮光膜を、上述のような低応力材料からなるものとすると、一般的にはその遮光機能が若干の低下を被るおそれがあるとは考えられるものの、本発明では、それ以外にも第2走査線及び中継電極層などというように遮光機能を発揮する材料が存在する。つまり、仮に上側遮光膜の遮光機能が低下するとしても、それは本発明にとって本質的に不利な事柄になるわけではない(むしろ上記のような内部応力低減に関する効果は得られるのであるから、かかる効果を得ることと、上側遮光膜における遮光機能をできる限り維持したいということとはトレード・オフの関係にあるといえる。)。また、「低応力材料」として完全に透明な材料を用いない限り、一定の遮光機能の発揮は期待できるから、上述した上側遮光膜に関する作用効果について特に書き改めが必要な部分が生じるわけではない。
なお、上述のような本構成の意義から、「低応力材料」とは、一般的には、遮光機能には優れているが内部応力の観点からすると前述したような悪影響を及ぼす好ましくない材料を基準として、それよりも内部応力が低い材料という意味を有する。当該材料としては、具体的には、タングステンシリサイドを挙げることができる。すなわち、この場合、本構成に係る「低応力材料」とは、「タングステンシリサイドを成膜した場合に発生する内部応力よりも低い応力をもつ材料」と言い換えることができる。
さらに、上側遮光膜を備える電気光学装置の態様であって前述の蓄積容量を備える電気光学装置では、前記上側遮光膜は前記共通電位側容量電極に共通電位を供給する容量配線の機能を有する。
このような構成によれば、積層構造及び製造プロセスの複雑化を避けることができる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1走査線は遮光性材料からなる。
この態様によれば、半導体層の下層側に積層される第1走査線が遮光性材料からなるから、基板の下方からの光入射に対する当該半導体層の耐光性を高めることができる。なお、「遮光性材料」の意義は、第2走査線及び中継電極層に関して前述した通りである。
本発明の電子機器は、上記課題を解決するために、上述の電気光学装置(但し、その各種態様を含む。)を具備してなる。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、より信頼性の高い薄膜トランジスタを備えることで殆ど常に高品位の画像表示が可能な、投射型表示装置、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
〔画素部における構成〕
以下では、本発明の本実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図1から図4を参照して説明する。ここに図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路であり、図2及び図3は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。なお、図2及び図3はそれぞれ、後述する積層構造のうち下層部分(図2)と上層部分(図3)とを分かって図示している。また、図4は、図2及び図3を重ね合わせた場合のA−A´断面図である。なお、図4においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
なお、以下では、まず、本実施形態に係る電気光学装置の基本的構成について予め説明した後、本実施形態において特徴的な構成等については、後に改めて(第1及び第2走査線等の構成)なる項目を立てて詳述することとする。
(画素部の回路構成)
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
また、TFT30のゲートにゲート電極3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、第1走査線11a及びゲート電極3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。この蓄積容量70は、第1走査線11aに並んで設けられ、共通電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極300を含んでいる。
〔画素部の具体的構成〕
以下では、上記データ線6a、第1走査線11a及びゲート電極3a、TFT30等による、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の、具体的な構成について、図2乃至図4を参照して説明する。
まず、図3において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられており(点線部により輪郭が示されている)、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び第1走査線11a(図2参照)が設けられている。データ線6aは、例えば後述するようにアルミニウム膜等を含む積層構造からなり、第1走査線11aは、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる。また、第1走査線11aは、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a´に対向するゲート電極3aにコンタクトホール12cvを介して電気的に接続されており、該ゲート電極3aは該第1走査線11aに含まれる形となっている。すなわち、ゲート電極3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a´に、第1走査線11aに含まれるゲート電極3aが対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。これによりTFT30(ゲート電極を除く。)は、ゲート電極3aと第1走査線11aとの間に存在するような形態となっている。
次に、電気光学装置は、図2及び図3のA−A´線断面図たる図4に示すように、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなるTFTアレイ基板10と、これに対向配置される、例えばガラス基板や石英基板からなる対向基板20とを備えている。
TFTアレイ基板10の側には、図4に示すように、前記の画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電性膜からなる。他方、対向基板20の側には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は、上述の画素電極9aと同様に、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。
このように対向配置されたTFTアレイ基板10及び対向基板20間には、後述のシール材52(図6及び図7参照)により囲まれた空間に液晶等の電気光学物質が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。
一方、TFTアレイ基板10上には、前記の画素電極9a及び配向膜16の他、これらを含む各種の構成が積層構造をなして備えられている。この積層構造は、図4に示すように、下から順に、第1走査線11aを含む第1層、ゲート電極3aを含むTFT30等を含む第2層、蓄積容量70を含む第3層、データ線6a等を含む第4層、容量配線400等を含む第5層、前記の画素電極9a及び配向膜16等を含む第6層(最上層)からなる。また、第1層及び第2層間には下地絶縁膜12が、第2層及び第3層間には第1層間絶縁膜41が、第3層及び第4層間には第2層間絶縁膜42が、第4層及び第5層間には第3層間絶縁膜43が、第5層及び第6層間には第4層間絶縁膜44が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これら各種の絶縁膜12、41、42、43及び44には、例えば、TFT30の半導体層1a中の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール等もまた設けられている。以下では、これらの各要素について、下から順に説明を行う。なお、前述のうち第1層から第3層までが、下層部分として図2に図示されており、第4層から第6層までが上層部分として図3に図示されている。
(積層構造・第1層の構成―第1走査線等―)
まず、第1層には、第1走査線11aが設けられているが、この第1走査線11aついては、後の(第1及び第2走査線等の構成)において詳細に説明することとする。
(積層構造・第2層の構成―TFT等―)
次に、第2層としてTFT30が設けられている。TFT30は、図4に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したゲート電極3a、例えばポリシリコン膜からなりゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a´、ゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。なお、上述のTFT30は、好ましくは図4に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、ゲート電極3aをマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。
また、本実施形態では特に、この第2層に、上述のゲート電極3aを含むように第2走査線3a1が設けられている。さらに、第2層には、この第2走査線3a1と同一膜として中継電極719が形成されている。これらゲート電極3a、第2走査線3a1及び中継電極719については、後の(第1及び第2走査線等の構成)において詳細に説明することとする。
(積層構造・第1層及び第2層間の構成―下地絶縁膜―)
以上説明した第1走査線11aの上、かつ、TFT30の下には、例えばシリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、第1走査線11aからTFT30を層間絶縁する機能のほか、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
この下地絶縁膜12には、平面的にみて半導体層1aの両脇に、後述するデータ線6aに沿って延びる半導体層1aのチャネル長の方向に沿った溝状のコンタクトホール12cvが掘られているが、このコンタクトホール12cvついても、後の(第1及び第2走査線等の構成)において詳細に説明することとする。
(積層構造・第3層の構成―蓄積容量等―)
前述の第2層に続けて第3層には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての下部電極71と、共通電位側容量電極としての容量電極300とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。また、本実施形態に係る蓄積容量70は、図2の平面図を見るとわかるように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する光透過領域には至らないように形成されているため(換言すれば、遮光領域内に収まるように形成されているため)、電気光学装置全体の画素開口率は比較的大きく維持され、これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
より詳細には、下部電極71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。ただし、下部電極71は、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。また、この下部電極71は、画素電位側容量電極としての機能のほか、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもつ。ちなみに、ここにいう中継接続は、前記の中継電極719を介して行われている(図4参照)。
容量電極300は、蓄積容量70の共通電位側容量電極として機能する。本実施形態において、容量電極300を共通電位とするためには、共通電位とされた容量配線400(後述する。)と電気的接続が図られることによりなされている。また、容量電極300は、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、或いは好ましくはタングステンシリサイドからなる。これにより、容量電極300は、TFT30に上側から入射しようとする光を遮る機能を有している。
誘電体膜75は、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほどよい。本実施形態において、この誘電体膜75は、図4に示すように、下層に酸化シリコン膜75a、上層に窒化シリコン膜75bというように二層構造を有するものとなっている。上層の窒化シリコン膜75bは画素電位側容量電極の下部電極71より少し大きなサイズにパターニングされ、遮光領域(非開口領域)内で収まるように形成されている。
なお、本実施形態では、誘電体膜75は、二層構造を有するものとなっているが、場合によっては、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等というような三層構造や、あるいはそれ以上の積層構造を有するように構成してもよい。むろん単層構造としてもよい。
(積層構造、第2層及び第3層間の構成―第1層間絶縁膜―)
以上説明したTFT30ないしゲート電極3a及び中継電極719の上、かつ、蓄積容量70の下には、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはNSGからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。
そして、この第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dと後述するデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール81が、後記第2層間絶縁膜42を貫通しつつ開孔されている。また、第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール83が開孔されている。さらに、この第1層間絶縁膜41には、蓄積容量70を構成する画素電位側容量電極としての下部電極71と中継電極719とを電気的に接続するためのコンタクトホール881が開孔されている。更に加えて、第1層間絶縁膜41には、中継電極719と後述する第2中継電極6a2とを電気的に接続するためのコンタクトホール882が、後記第2層間絶縁膜を貫通しつつ開孔されている。
(積層構造・第4層の構成―データ線等―)
前述の第3層に続けて第4層には、データ線6aが設けられている。このデータ線6aは、図4に示すように、下層より順に、アルミニウムからなる層(図4における符号41A参照)、窒化チタンからなる層(図4における符号41TN参照)、窒化シリコン膜からなる層(図4における符号401参照)の三層構造を有する膜として形成されている。窒化シリコン膜は、その下層のアルミニウム層と窒化チタン層を覆うように少し大きなサイズにパターニングされている。
また、この第4層には、データ線6aと同一膜として、容量配線用中継層6a1及び第2中継電極6a2が形成されている。これらは、図3に示すように、平面的に見ると、データ線6aと連続した平面形状を有するように形成されているのではなく、各者間はパターニング上分断されるように形成されている。例えば図3中最左方に位置するデータ線6aに着目すると、その直右方に略四辺形状を有する容量配線用中継層6a1、更にその右方に容量配線用中継層6a1よりも若干大きめの面積をもつ略四辺形状を有する第2中継電極6a2が形成されている。
ちなみに、これら容量配線用中継層6a1及び第2中継電極6a2は、データ線6aと同一膜として形成されていることから、下層より順に、アルミニウムからなる層、窒化チタンからなる層、プラズマ窒化膜からなる層の三層構造を有する(図4参照)。
(積層構造・第3層及び第4層間の構成―第2層間絶縁膜―)
以上説明した蓄積容量70の上、かつ、データ線6aの下には、例えばNSG、PSG,BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはTEOSガスを用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成された第2層間絶縁膜42が形成されている。この第2層間絶縁膜42には、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続する、前記のコンタクトホール81が開孔されているとともに、前記容量配線用中継層6a1と蓄積容量70の上部電極たる容量電極300とを電気的に接続するコンタクトホール801が開孔されている。さらに、第2層間絶縁膜42には、第2中継電極6a2と中継電極719とを電気的に接続するための、前記のコンタクトホール882が形成されている。
(積層構造・第5層の構成―容量配線等―)
前述の第4層に続けて第5層には、容量配線400が形成されている。この容量配線400は、平面的にみると、図3に示すように、図中X方向及びY方向それぞれに延在するように、格子状に形成されている。該容量配線400のうち図中Y方向に延在する部分については特に、データ線6aを覆うように、且つ、該データ線6aよりも幅広に形成されている。また、図中X方向に延在する部分については、後述の第3中継電極402を形成する領域を確保するために、各画素電極9aの一辺の中央付近に切り欠き部を有している。
さらには、図3中、XY方向それぞれに延在する容量配線400の交差部分の隅部においては、該隅部を埋めるようにして、略三角形状の部分が設けられている。容量配線400に、この略三角形状の部分が設けられていることにより、TFT30の半導体層1aに対する光の遮蔽を効果的に行うことができる。すなわち、半導体層1aに対して、斜め上から進入しようとする光は、この三角形状の部分で反射又は吸収されることになり半導体層1aには至らないことになる。したがって、光リーク電流の発生を抑制し、フリッカ等のない高品質な画像を表示することが可能となる。この容量配線400は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。
また、第4層には、このような容量配線400と同一膜として、第3中継電極402が形成されている。この第3中継電極402は、後述のコンタクトホール804及び89を介して、第2中継電極6a2及び画素電極9a間の電気的接続を中継する機能を有する。なお、これら容量配線400及び第3中継電極402間は、平面形状的に連続して形成されているのではなく、両者間はパターニング上分断されるように形成されている。
他方、上述の容量配線400及び第3中継電極402は、下層にアルミニウムからなる層、上層に窒化チタンからなる層の二層構造を有している。
(積層構造・第4層及び第5層間の構成―第3層間絶縁膜―)
以上説明した前述のデータ線6aの上、かつ、容量配線400の下には、第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、前記の容量配線400と容量配線用中継層6a1とを電気的に接続するためのコンタクトホール803、及び、第3中継電極402と第2中継電極6a2とを電気的に接続するためのコンタクトホール804がそれぞれ開孔されている。
(積層構造・第6層並びに第5層及び第6層間の構成―画素電極等―)
最後に、第6層には、上述したように画素電極9aがマトリクス状に形成され、該画素電極9a上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下には第4層間絶縁膜44が形成されている。この第4層間絶縁膜44には、画素電極9a及び前記の第3中継電極402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されている。画素電極9aとTFT30との間は、このコンタクトホール89及び第3中継層402並びに前述したコンタクトホール804、第2中継層6a2、コンタクトホール882、中継電極719、コンタクトホール881、下部電極71及びコンタクトホール83を介して、電気的に接続されることとなる。
(第1及び第2走査線等の構成)
以上述べたような構成を備える電気光学装置において、本実施形態においては特に、積層構造の第1層として設けられる第1走査線11a及び第2層として設けられるゲート電極3a及び第2走査線3a1並びに中継電極719に関して特徴がある。以下では、前述までに参照した各図及び図5を参照して、これについて詳述する。ここに図5は、図3から積層構造の第1層、第2層及び第6層の構成(即ち、第1走査線11a、ゲート電極3aを含む第2走査線3a1及び中継電極719並びにコンタクトホール12cv並びに画素電極9a)の配置関係を抜き出して描いた平面図である。
まず、第1層に設けられる第1走査線11aは、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、或いは導電性ポリシリコン等からなる。この第1走査線11aは、平面的にみて、図2のX方向に沿うように、ストライプ状にパターニングされている。より詳しく見ると、第1走査線11aは、図2のX方向に沿うように延びる本線部と、データ線6a或いは容量配線400が延在する図2のY方向に延びる突出部とを備えている。なお、隣接する第1走査線11aから延びる突出部は相互に接続されることはなく、したがって、該第1走査線11aは1本1本分断された形となっている。
次に、第2層には、TFT30のチャネル領域1a´に対向するようにゲート電極3aが形成されているとともに、該ゲート電極3aと一体的に第2走査線3a1が設けられている。このうち第2走査線3a1もまた、第1走査線11aと同様に、ストライプ状に形成されており、1本1本分断された形となっている。より詳細には、第2走査線3a1は、第1走査線11aの本線部の延びる方向に沿って延びる本線部を有している。また、第2走査線3a1のうちゲート電極3aとなる部分は、前記本線部よりも幅広に形成されている。また、第2走査線3a1もまた、前述の第1走査線11aと同様に、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、或いは導電性ポリシリコン等からなる。
ゲート電極3aの形成領域に対応する部分の下地絶縁膜12には、コンタクトホール12cvが開孔されている。より詳細には、コンタクトホール12cvは、平面的に見て、一つの半導体層1aについてそのチャネル領域1a´を挟み込むように二つずつ形成されているとともに、その開口部は該チャネル領域1a´の延在する方向に長細くなっている。このようなコンタクトホール12cvに対応して、その上方に積層されるゲート電極3aは下側に凹状に形成された部分を含んでいる。すなわち、ゲート電極3aはコンタクトホール12cv全体を埋めるようにして形成されていることにより、該ゲート電極3aにはこれと一体的に形成された側壁部3b(前記の「下側に凹状に形成された部分」)が延設されるようになっている(図4参照)。これにより、TFT30の半導体層1a、とりわけチャネル領域1a´は、図2及び図5によく示されているように、平面的にみて側方から覆われるようになっており、少なくともこの部分からの光の入射が抑制されるようになっている。また、この側壁部3bは、前記のコンタクトホール12cvを埋めるように形成されているとともに、その下端が前記の第1走査線11aと接するようにされている。これにより、第1走査線11aと、ゲート電極3a、ひいては第2走査線3a1とは電気的に接続された状態になる。このことから、ある行に存在する第1走査線11a、ゲート電極3a及び第2走査線3a1は、当該行に着目する限り常に同電位となる。
また、第2層には、前記のゲート電極3aと一体的な第2走査線3a1と同一膜として島状にパターニングされた中継電極719が設けられている。中継電極719は第2走査線3a1と同一膜からなるから、それを構成する材料は、前述の第2走査線3a1に関して述べた材料と同じである。
この中継電極719は、図2及び図4に示すように、第1層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール881を介して、蓄積容量70の下部電極71と電気的に接続されているとともに、第1及び第2層間絶縁膜41及び42に開孔されたコンタクトホール882を介して第2中継電極6a2と電気的に接続されている。そして、既述のように、下部電極71は半導体層1aの高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されており、第2中継電極6a2は第3中継電極402を介して画素電極9aと電気的に接続されているから、結局、中継電極719は、高濃度ドレイン領域1aと画素電極9aとを中継接続する機能を担っていることになる。
また、この中継電極719は、その長尺方向(図中X方向)が第1走査線11a及び第2走査線3a1の延びる方向に一致するように配置されている。図2及び図5において特に、図中Y方向に沿って「幅」を観念すると、第2走査線3a1は、その両端部に幅狭部を有し、これらに挟まれるようにして中央部に幅広部を有している。このうち幅狭部は、前記の第2走査線3a1中のゲート電極3aに対応する部分に対向し、幅広部は、第2走査線3a1の本線部に対向している。つまり、平面的に見て、中継電極719と第2走査線3a1とは、相互に噛み合うようにして配置されているのである。これにより、両者を同一平面内に無理なく配置することが可能となっていることは、図2及び図5から明らかである。
また、中継電極719の図中まっすぐな線分となる下辺(図中上辺は前記幅広部の存在によりいわば凸凹になっている。)は、画素電極9aの上辺付近を覆うように配置されている。これと同様に、第2走査線3a1の図中まっすぐな線分となる上辺(図中下辺はゲート電極3aの存在によりいわば凸凹になっている。)は、画素電極9aの下辺付近を覆うように配置されている。
本実施形態に係る電気光学装置は、このような構造を備えることにより、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、まず、ゲート電極3aには、第1走査線11a、あるいはこれとは別の層に位置する第2走査線3a1により走査信号が供給されるようになっている。したがって、例えば第1走査線11aが何らかの事情により断線することで走査信号の供給を行えなくなったとしても、第2走査線3a1を用いれば走査信号の供給を滞りなく行うことができる。その逆もまた当然に成り立つ。このように、本実施形態によれば、第1走査線11aが第2走査線3a1にとって、あるいは第2走査線3a1が第1走査線11aにとって冗長な関係にあることにより、TFT30のより正確な動作を期しえることになる。
また、第2走査線3a1及び中継電極719は、前述のような高融点金属等を含む遮光性材料からなるとともに、これら第2走査線3a1及び中継電極719それぞれの縁が、前述のように平面的に見て画素電極9aの縁を覆うようにされていることから、光透過領域が好適に規定されることになる。このような光透過領域の規定により、電気光学装置の内部にむやみに光が進入してくるということを未然に防止することができ、当該内部で多重反射光等を生じさせるおそれを低減することができるから、チャネル領域1a´、あるいはその周辺の領域に光が入射することを未然に防止することができる。かかる効果は、ことに第2走査線3a1がチャネル領域1a´上に積層されるゲート電極3aを一体的に含む、即ち該ゲート電極3aが前述のような高融点金属等を含む遮光性材料からなることから、より効果的に享受される。
以上により結局、本実施形態によれば、第1走査線11a又は第2走査線3a1につき仮に断線等が生じた場合でも正確な動作を期しえるとともに、そのチャネル領域1a´への光入射が極力防止され得るようなTFT30を備え、もって正確な画像表示を行いうる電気光学装置を提供することが可能になる。
また、本実施形態では上述の効果に加えて以下のような効果を得ることもできる。すなわち、本実施形態では、図4に示すように、下部電極71の上側に電気的な接続点をもつことがないから、蓄積容量70の大面積化を図ることができ、その容量値を増大させることができる。
また、本実施形態においては、半導体層1aの下層側に積層された第1走査線11aもまた、上述のように高融点金属等を含む遮光性材料からなるから、該半導体層1aの下側から光が入射する事態も未然に防止することができるようになっている。例えば図4に示す戻り光、具体的には例えば、TFTアレイ基板10の裏面反射光や、複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合(図8参照)に他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けてくる投射光などが、半導体層1aに下側から入射することを未然に防止することができる。
さらに、本実施形態に係る電気光学装置では、上述で第5層の構成として説明した、容量配線400が存在している。この容量配線400は、上述のように窒化チタンからなる層を含み、該窒化チタンからなる層は比較的光吸収性能に優れているから、上側遮光膜として十分機能し得る。そして、図2及び図3を対比参照すると分かるように、この容量配線400は、島状に形成された中継電極719間の隙間を埋めるように、且つ、第2走査線3a1及び中継電極719間の隙間を埋めるように配置されていることがわかる。したがって、中継電極719のみ、あるいは第2走査線のみでは遮光を実現し得ない部分が、容量配線400によってバックアップされているということができる。よって、本実施形態では、このような観点からも、チャネル領域1a´を含む半導体層1aの耐光性を高めることができるといえる。
ちなみに、本実施形態においては、やはり窒化チタンからなる層を含むデータ線6aが設けられているとともに、該データ線6aもまた中継電極719間の隙間を埋めるように形成されていることが分かるから(図2及び図3を対比参照。)、前述と略同様な作用効果が得られることになる。
以上により結局、本実施形態では、半導体層1aの上側及び下側双方からの遮光が十分に行われることになり、電気光学装置全体の耐光性が高まっているということができる。
なお、上記実施形態では、容量配線400、あるいはデータ線6aは、比較的光吸収性能に優れた窒化チタンからなる層を含み、上側遮光膜としての機能をよりよく果たさせることが行われていたが、本発明は、かかる形態に限定されない。例えば、容量配線400、あるいはデータ線6aは例えばアルミニウムのみからなる等としてもよい。このようにすれば、容量配線400、あるいはデータ線6a中に比較的大きな内部応力等を発生させるおそれがなく、該内部応力による当該容量配線400、あるいは当該データ線6a自身の破損、あるいは該内部応力によって該容量配線400、あるいは該データ線6aの周囲に与えられる機械的・物理的影響の発生などを未然に回避することができる。特に、容量配線400は、上側遮光膜としての機能のほか、蓄積容量70の容量電極300に共通電位を供給する機能をもち、データ線6aはTFT30ひいては画素電極9aに画像信号を供給する機能をもっているため、上述したアルミニウムのような電気抵抗値の低い材料から、これら容量配線400及びデータ線6ajを構成することによれば、信号の迅速な伝達という効果を得ることもできる。
また、場合によっては、本実施形態において、容量配線400は上側遮光膜としての機能と蓄積容量70の容量電極300に共通電位を供給する機能を果たしているが、これを他の要素によって置換することが可能であるなら(例えば、容量電極300を容量配線とする等々)、場合によっては、容量配線400の設置は省略してもよい。
〔電気光学装置の全体構成〕
以下では、前記の電気光学装置に係る実施形態の全体構成について、図6及び図7を参照して説明する。ここに、図6は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図7は、図6のH−H’断面図である。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
図6及び図7において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。この額縁遮光膜53より以遠の周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には特に、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、前記額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナーに対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図7において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
なお、図6及び図7に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
(電子機器)
次に、以上詳細に説明した電気光学装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例たる投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。ここに、図8は、投射型カラー表示装置の図式的断面図である。
図8において、本実施形態における投射型カラー表示装置の一例たる液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、それぞれRGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。これらライトバルブ100R、100G及び100Bには、前述した第1から第3実施形態いずれかの電気光学装置(図1乃至図5参照)が用いられている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロックミラー1108によって、RGBの三原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。この際特に、B光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bによりそれぞれ変調された三原色に対応する光成分は、ダイクロックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
このような投射型カラー表示装置においては、ライトバルブ100R、100G及び100Bに入射する入射光の強度が比較的高く、また当該入射光はランプユニット1102からの光を前記の各種レンズで絞った光束であるから、斜めに入射する成分を無視し得ないほどに含んでいる。したがって、かかる投射型カラー表示装置では、一般にライトバルブ100R、100G及び100Bを構成するTFT30に対する光遮蔽を十分に行うことは困難となっている。
しかるに、本実施形態では、上述したようにTFT30に対する光遮蔽は十分に行われるようになっているから、前記の問題は有効に解消されるようになっているのである。逆にいうと、TFT30に対する光遮蔽がより困難である投射型カラー表示装置においてこそ、本発明はより大きな効果を発揮するということもできる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び電子機器もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…第1走査線、3a…ゲート電極、3a1…第2走査線、719…中継電極、6a…データ線、30…TFT、1a…半導体層、1a´…チャネル領域、9a…画素電極、70…蓄積容量、400…容量配線