JP4427662B2 - 湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体からのリン酸カルシウム微粉末の製造方法 - Google Patents

湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体からのリン酸カルシウム微粉末の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細化されたリン酸カルシウム微粉末の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を、通常の乾燥より遙かに長時間乾燥した後、焼成することにより1ミクロン以下の平均粒径を有し、分散性の良好なリン酸カルシウム微粉末を製造する方法に関するものである。本発明は、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に所定の乾燥時間で乾燥を続ける工程を付加することにより、得られるリン酸カルシウム粉体を選択的、臨界的に微細化して、1ミクロン以下の平均粒径のリン酸カルシウム微粉末を製造することを可能とする新しいリン酸カルシウム微粉末の製造方法及び得られた製品を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウムは、生体中で骨と直接結合するという優れた特性が見出されて以来、例えば、人工骨等に広く実用化されている。また、リン酸カルシウムは、蛋白質、DNA等との特異的な吸着特性を有することから、高度分離精製用のカラム充填材や、ウィルス、バクテリアにも吸着することから、ウィルス吸着用マスク用材料、濾過材等にも使われている。このように、リン酸カルシウムには、生体と高い親和性を有するという特徴があるため、様々な用途への展開がなされている。一般に、粉体は、粒径が小さくなると、効果的な緻密な充填が可能となり、高強度の焼結体を得やすくなり、また、反応性も高くなるが、一方では、凝集しやすくなるという問題がある。市販されているリン酸カルシウム粉体は、湿式合成などの方法で得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成することにより合成されているが、平均粒径が数ミクロンのレベルであり、当該技術分野では、更に小さい粒径で、分散性の良好なリン酸カルシウム粉体を合成する方法を開発することが求められていた。
【0003】
従来、リン酸カルシウム粉体の製造方法としては、粉末の原料を高温での固相反応により合成する乾式合成法(非特許文献1)、溶液反応を利用する湿式沈殿法(非特許文献2)などが提案されている。乾式合成法では、例えば、文献に記載のように、Ca3 (PO42 とCaCO3 をCa/P比1.67となるように混合し、水蒸気下、1300℃で焼成すると、Ca/P比1.67の粉体を得ることができるが、粒子径が大きい(約3μm)という欠点がある。また、湿式沈殿法では、(NH42 HPO4 ,Ca(NO32 ,CH3 COONH4 を原料とし、水溶液をNH4 でpHを塩基性に調整し、比較的高温(100℃)で長時間熟成させると、アパタイトに結晶化する。しかし、副生成物が生じやすく、化学的特性のコントロールが難しく、化学組成を一定に保つためには厳密な合成条件の制御が必要である。得られた粉末の一次粒子径は小さいものの凝集性が強く、粒子径は大きい(5μm以下)。このように、これらの方法では、1ミクロン以下の平均粒径を有するリン酸カルシウム微粉末を合成することは困難であった。
【0004】
また、水熱合成法(非特許文献3)と湿式沈殿法を組み合わせる(非特許文献4)ことで微細なアパタイト粉体を得る方法が報告されている。水熱合成法は、CaHPO4 を350℃で48時、密閉容器の中で反応させると、2mmの単結晶を得ることができるなど、比較的大きな単結晶を作製するのに用いられている。湿式沈殿法と水熱法を組み合わせた方法では、得られたアパタイト前駆体を、密封容器の中で10時間、200℃の条件で反応させることにより、0.1μmの比較的小さな結晶性の良い粉体を得ることができる。
【0005】
【非特許文献1】
門間,金沢,日化,1972,339(1972)
【非特許文献2】
E. C. Moreno, T. M. Gregory, W. E. Brown, J. Res. Natl. Bur., Stand.,72A, 773 (1968)
【非特許文献3】
金澤,梅垣,門間,セラミックス,10,461(1975)
【非特許文献4】
井奥,吉村,宋宮,日化,1988,1565(1988)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の方法は、上述した技術的背景に鑑みて開発されたものであり、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体から1ミクロン以下の平均粒径を有し、分散性の良好なリン酸カルシウム微粉末を簡便な合成方法で合成する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成して該前駆体から微細化されたリン酸カルシウム微粉末を製造する方法であって、1)湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に所定の乾燥時間で乾燥を続ける工程を付加、2)上記工程で40〜200℃で3日以上15日以下の範囲で少なくとも平均粒径1.8μmになるまで乾燥を続けて、微細化、3)乾燥したリン酸カルシウム前駆体を大気中650〜1000℃で2〜24時間焼成して、平均粒径1ミクロン以下の分散性に優れるリン酸カルシウム微粉末を製造する、ことを特徴とするリン酸カルシウム微粉末の製造方法。
(2)リン酸カルシウム前駆体として、湿式粉砕法により、カルシウム塩とリン酸塩あるいはカルシウムリン酸塩を水の共存下で粉砕することにより徐々に反応を進めて、合成したリン酸カルシウム前駆体を使用する、前記(1)に記載の方法。
(3)湿式粉砕法によるカルシウム塩とリン酸塩あるいはカルシウムリン酸塩のカルシウムとリン酸の割合(Ca/P比)が、2.5〜1.2である、前記(2)に記載の方法。
(4)湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に40〜200℃で1週間から10日間乾燥を続けて微細化した後に、大気中で焼成することにより平均粒径0.4〜1.0μmのリン酸カルシウム微粉末を得る、前記(1)に記載の方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明においては、リン酸カルシウム前駆体を湿式粉砕法で調製し、これを焼成するが、これにより、焼成する前に長時間乾燥することにより粒径が小さく、分散性に優れるリン酸カルシウム粉体を得ることが可能となる。本発明では、リン酸塩とカルシウム塩あるいはリン酸カルシウム塩を、水の共存下で粉砕することにより、徐々に反応させリン酸カルシウム前駆体を得る。これらの成分は、反応開始の折り、全て溶解していなくても反応が可能であるため、原料の入手が容易なものを使用することができる。また、共存する水の量は、粉砕が促進される量が使用される。湿式粉砕法で得られたリン酸カルシウム前駆体を焼成前に乾燥するが、通常は、50〜80℃で1晩行われる乾燥時間を、本発明では、3日以上、14日以下という遙かに長い時間乾燥を行う。
【0009】
従来は、スラリー状のリン酸カルシウム前駆体を、ろ過と1晩の乾燥により解砕できる程度のケーキ状の固化体にしていた。ケーキ状の固化体に乾燥することが目的であるため、乾燥時間は短期であった。一方、本発明では、更に乾燥を継続してこれを十分に乾燥させ、リン酸カルシウム前駆体がその結晶構造に含んでいる構造水等を除去することで粉の表面特性を変えること、それにより、粉体の表面電位、分散性を向上させることが目的であるため、乾燥時間は長期である。このように、乾燥と言っても両者の技術内容は本質的に別異のものである。乾燥時間は、粉体の表面電位、分散性を向上させるレベルであれば特に限定されるものではないが、具体的には40〜200℃で3日以上、好適には1週間から10日間である。乾燥時間を長くすることにより、平均粒径は次第に小さくなり、比表面積は大きくなり、例えば、1日乾燥と比べて10日間乾燥では、平均粒径は1/5〜1/6に小さくすることができる。しかし、10日を越えると粉の表面特性が変化し、平均粒径は次第に大きくなる。乾燥したリン酸カルシウム前駆体を焼成するが、焼成温度は、結晶化温度を越えた温度で、また、焼結が開始される900℃以下であることが好ましい。
【0010】
本発明は、上述のように、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成して該前駆体から微細化されたリン酸カルシウム微粉末を製造する方法であって、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に少なくとも平均粒径1.8μmのレベルになるまで乾燥を続けて、微細化した後に、焼成することを特徴とするものである。本発明で得られるリン酸カルシウム微粉末は、一般式Ca10(PO462 (式中、Xは、水酸基、ハロゲン、又は炭酸基を示す。)で表される水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、及びCa3 (PO42 で表されるリン酸三カルシウムから選択された1種、あるいはそれらの混合物からなる微粉末である。
【0011】
本発明では、湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体が用いられるが、この場合、水にリン酸塩とカルシウム塩あるいはリン酸カルシウム塩を加えて、湿式で粉砕する方法が採用される。ここでリン酸塩としては、リン酸水素アンモニウム、リン酸マグネシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムなどが例示され、カルシウム塩としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム及び塩化カルシウムなどが例示され、リン酸カルシウム塩としては、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムなどが例示される。共存させる水の量は40wt%以上、好適には70%以上であることが望ましい。粉砕時間は、粉末X線回折法で、原料が全てリン酸カルシウム前駆体に変わる時間が必要であるが、好適には、8時間以上が適切である。本発明では、上記各成分を水の共存下で粉砕することにより徐々に反応が進み、リン酸カルシウム前駆体が合成される。
【0012】
次に、得られたリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に乾燥を続ける。この場合、乾燥温度は、リン酸カルシウム前駆体の含む水が除去される条件であれば制約されるものではないが、40℃以上、200℃以下であることが望ましい。乾燥時間は、少なくとも平均粒径1.8μmのレベルに達するまで微細化するための乾燥を続ける必要があり、上述したように、40〜200℃で3日以上、15日以下、より好適には1週間から10日間が適切である。
【0013】
次に、乾燥したリン酸カルシウム前駆体を焼成するが、焼成温度は、結晶化温度以上で焼結温度以下、好適には、大気中、650〜1000℃で2〜24時間が適切であり、これにより、平均粒径1ミクロン以下、例えば、平均粒径0.4〜1.0μmの分散性の良好なリン酸カルシウム微粉末を得ることができる。本発明は、リン酸カルシウム前駆体を湿式粉砕法で調製し、これを焼成するが、焼成する前に少なくとも平均粒径1.8μmのレベルになるまで長時間乾燥を続けて微細化する工程を付加することにより、粒径が小さく、分散性に優れるリン酸カルシウムの微粉体を得ることを特徴とするものである。湿式合成法では、リン酸とカルシウムを溶解した水溶液を反応させるが、本発明では、リン酸塩とカルシウム塩あるいはリン酸カルシウム塩を、水の共存下で粉砕することにより、徐々に反応させリン酸カルシウム前駆体を得る。また、湿式法では、原料を水に溶解させるが、本発明では、反応開始の折り、全て溶解していなくても可能であるため、原料の入手が容易であり、原料面における制約がない。
【0014】
また、共存させる水の量は特に限定されるものではないが、好適には、粉砕が促進される量で使用する。本発明では、湿式粉砕法で得られたリン酸カルシウム前駆体を焼成前に乾燥するが、乾燥温度は、リン酸カルシウム前駆体が含む水分を十分に除去できれば、特に制限されるものではない。また、十分に乾燥したリン酸カルシウム前駆体を焼成するが、この場合、結晶化温度を越えた温度で焼成する必要があり、また、焼結が開始される900℃を越えない必要がある。
【0015】
本発明においては、上記構成を採用することにより、平均粒径1ミクロン以下、例えば、平均粒径0.4〜1.0μmの分散性の良好なリン酸カルシウム微粉末を得ることができる。また、本発明によれば、専用の装置を必要としないため、目的製品の製造におけるランニングコストダウンを果たすことができる。本発明の方法により製造されたリン酸カルシウム微粉末は、高分散性、生体親和性、イオン交換特性、表面吸着特性等の性質を有し、例えば、人工歯根、人工骨、湿度センサー、アルコールセンサー、重金属やリン除去汚水処理用材、高分子分離用カラム充填材、濾過材、薬剤担体等に代表される各種の部材として好適に利用し得るものである。
【0016】
次に、試験例を示して本発明を説明する。
試験例
(1)リン酸カルシウム粉体の調製
炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムを10wt%、Ca/P比が1.67となるように秤量し、水を90wt%加えて、湿式で粉砕した。粉砕後、60℃で乾燥時間を変えて乾燥し、乾燥後、得られたケーキ状の固体を解砕し、電気炉で大気中720℃で8時間焼成した。得られた粉体を、粉末X線回折法とFT−IRにより測定した。また、遠心沈降法で平均粒径、BET法で比表面積を調べた。
【0017】
(2)試験結果
得られた粉体は、粉末X線回折図及びFT−IR測定結果より、リン酸カルシウムであることが確認された。それらを図1及び図2に示す。また、乾燥時間による、60℃で乾燥あるいは乾燥後720℃で8時間熱処理したリン酸カルシウム粉末の平均粒径の変化を図3に示す。リン酸カルシウム前駆体の乾燥を3日以上続けて、乾燥時間が長くなると、平均粒径が小さくなり、乾燥時間が10日を越えると、平均粒径が大きくなることが分かった。乾燥時間が10日を越えると、平均粒径が大きくなるのは、炭酸カルシウムなど副生成物の生成によるものと考えられる。これらのことから、乾燥を続けて3〜15日間乾燥することで、平均粒径を選択的、及び臨界的に小さくできることが分かった。本発明の方法により作製したリン酸カルシウム微粉末は、乾燥後、焼成前の平均粒径は0.62±0.10μm、焼成後の平均粒径は0.32±0.04μmのレベルに達した。
【0018】
また、乾燥時間による、60℃で乾燥あるいは乾燥後720℃で8時間熱処理したリン酸カルシウム粉末の比表面積の変化を図4に示す。リン酸カルシウム前駆体の乾燥を3日以上続けて、乾燥時間が長くなると、比表面積が大きくなり、乾燥時間が10日を越えると、比表面積が小さくなることが分かった。乾燥時間が10日を越えると比表面積が小さくなるのは、前述のように、平均粒径の大きい副生成物の生成によるものと考えられる。これらのことから、乾燥を続けて3〜14日間乾燥することで、比表面積を選択的、及び臨界的に大きくできることが分かった。本発明の方法により、作製したリン酸カルシウム微粉末は、乾燥後、焼成前のBET値は94.1±1.3mg、焼成後のBET値は38.0±0.6mgのレベルに達した。
【0019】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムを10wt%、Ca/P比が1.67となるように秤量し、水を90wt%加えて、湿式で粉砕した。粉砕後、60℃で10日間乾燥し、乾燥後、得られたケーキ状の固体を解砕し、電気炉で大気中720℃で8時間焼成した。得られたアパタイト粉体は、粉末X線回折法とFT−IRにより炭酸アパタイトであることを確認した。遠心沈降法で平均粒径、BET法で比表面積を調べたところ、乾燥後、焼成前の平均粒径は0.62±0.10μm、BET値は94.1±1.3mgであった。焼成後の平均粒径は0.32±0.04μm、BET値は38.0±0.6mgであった。
【0020】
参考例
実施例1と同様にして得た水酸アパタイト前駆体を、60℃で3日間乾燥し、乾燥後、得られたケーキ状の固体を解砕し、電気炉で大気中720℃で8時間焼成した。得られたアパタイト粉体は、粉末X線回折法とFT−IRにより炭酸アパタイトであることを確認した。遠心沈降法で平均粒径、BET法で比表面積を調べたところ、乾燥後、焼成前の平均粒径は1.58±0.08μm、BET値は80.79±0.91mgであった。焼成後の平均粒径は1.27±0.08μm、BET値は23.34±0.62mgであった。
【0021】
実施例
実施例1と同様にして得た水酸アパタイト前駆体を、60℃で14日間乾燥し、乾燥後、得られたケーキ状の固体を解砕し、電気炉で大気中720℃で8時間焼成した。得られたアパタイト粉体は、粉末X線回折法とFT−IRにより炭酸アパタイトであることを確認した。遠心沈降法で平均粒径、BET法で比表面積を調べたところ、乾燥後、焼成前の平均粒径は0.76±0.12μm、BET値は88.04±0.45mgであった。焼成後の平均粒径は0.44±0.01μm、BET値は31.09±0.67mgであった。
【0022】
実施例
炭酸カルシウムとリン酸水素カルシウムを10wt%、Ca/P比が1.5となるように秤量し、水を90wt%加えて、湿式で粉砕した。粉砕後、60℃で10日間乾燥し、乾燥後、得られたケーキ状の固体を解砕し、電気炉で大気中720℃で8時間焼成した。得られた粉体は、粉末X線回折法とFT−IRによりβ−リン酸三カルシウムであることを確認した。遠心沈降法で平均粒径、BET法で比表面積を調べると、焼成後の平均粒径は0.2μm、BET値は23mgであった。
【0023】
比較例
乾燥時間以外は、実施例1と同様にして、乾燥せずに又は1夜乾燥して濾過して得られたケーキ状の水酸アパタイト前駆体を、同様に焼成してアパタイト粉体を調製した。遠心沈降法で平均粒径を調べたところ、この方法で得られたアパタイト粉体の平均粒径は、3〜4ミクロンのレベルであった。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、リン酸カルシウム微粉末の製造方法に係るものであり、本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体から平均粒径1ミクロン以下の微細な分散性の良好なリン酸カルシウム微粉末を得ることができる。
(2)この発明によれば、出発物質に制約はなく、また、特に専用の装置を必要としないため、目的製品の製造において、大きなランニングコストダウンを果たすことができる。
(3)リン酸カルシウム前駆体を焼成する前に乾燥を続けて微細化する工程を付加することにより、選択的、及び臨界的に微細化されたリン酸カルシウム微粉末を製造することが可能となる。
(4)本発明の方法により作製されたリン酸カルシウム微粉末は、高分散性、生体親和性、イオン交換特性、表面吸着特性等の性質を有し、例えば、人工歯根、人工骨、湿度センサー、アルコールセンサー、重金属やリン除去汚水処理用材、高分子分離用カラム充填材、濾過材、薬剤担体等に代表される各種の部材として好適に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の粉体の粉末X線回折図を示す。
【図2】実施例1の粉体をFT−IRにより測定した結果を示す。
【図3】乾燥時間による、60℃で乾燥あるいは乾燥後720℃で8時間熱処理したリン酸カルシウム粉末の平均粒径の変化を示す。
【図4】乾燥時間による、60℃で乾燥あるいは乾燥後720℃で8時間熱処理したリン酸カルシウム粉末の比表面積の変化を示す。

Claims (4)

  1. 湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成して該前駆体から微細化されたリン酸カルシウム微粉末を製造する方法であって、1)湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に所定の乾燥時間で乾燥を続ける工程を付加、2)上記工程で40〜200℃で3日以上15日以下の範囲で少なくとも平均粒径1.8μmになるまで乾燥を続けて、微細化、3)乾燥したリン酸カルシウム前駆体を大気中650〜1000℃で2〜24時間焼成して、平均粒径1ミクロン以下の分散性に優れるリン酸カルシウム微粉末を製造する、ことを特徴とするリン酸カルシウム微粉末の製造方法。
  2. リン酸カルシウム前駆体として、湿式粉砕法により、カルシウム塩とリン酸塩あるいはカルシウムリン酸塩を水の共存下で粉砕することにより徐々に反応を進めて、合成したリン酸カルシウム前駆体を使用する、請求項1に記載の方法。
  3. 湿式粉砕法によるカルシウム塩とリン酸塩あるいはカルシウムリン酸塩のカルシウムとリン酸の割合(Ca/P比)が、2.5〜1.2である、請求項2に記載の方法。
  4. 湿式粉砕法により得られるリン酸カルシウム前駆体を焼成する前に40〜200℃で1週間から10日間乾燥を続けて微細化した後に、大気中で焼成することにより平均粒径0.4〜1.0μmのリン酸カルシウム微粉末を得る、請求項1に記載の方法。
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