JP3668530B2 - リン酸四カルシウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨補填材、骨結合材、歯科用セメント材等の素材として有用なリン酸四カルシウムを製造する為の方法に関し、殊に高純度なリン酸四カルシウムを比較的簡単な工程によって製造する為の方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リン酸四カルシウム[Ca4 (PO4 )2 O、以下「TTCP」と略記することがある]は、人間の骨や歯の主要構成物質であるヒドロキシアパタイト[Ca10(PO4 )6 (OH2 )2 、以下「HAP」と略記することがある]の前駆体というべき物質であり、生体内に埋入された場合に生体との親和性が良く、またそれ単独または他のリン酸化カルシウム化合物との組み合わせによって、水和反応で容易に硬化して安定なアパタイトになるという特性を有する物質である。TTCPはこうした特性を利用して、骨補填材、骨結合材、歯科用セメント等の素材として用いられている。
【0003】
TTCPを製造する方法としては、CaHPO4 ・2H2 OやCaHPO4 とCaCO3 を原料として用い、これを2段階以上の焼成工程を含んで行なうのが一般的であるが(例えば、特開平6−329405号)、こうした方法では反応工程が複雑になるという欠点がある。
【0004】
こうした欠点を解消した方法として、例えば特開平1−96006号、同3−183605号および同3−193615号等には、ボールミルや湿式粉砕工程等のメカノケミカル的に作用させる工程を含むことによって、焼成工程を簡略化(1段階の焼成工程)した方法が提案されている。
【0005】
しかしながらこれらの方法は、メカノケミカル的に作用させる工程を含んでいるので、その為の装置が必要になるばかりか、外部からの汚染物質が混入し易いという欠点がある。またこうした方法では、未反応物質や副生成物が発生し易いという傾向があり、高純度のTTCPが得られないという問題がある。こうしたことから、より高純度のTTCPを製造する為には、依然として2段階以上の焼成工程を含んで製造されることになる(例えば、特開平6−329405号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、比較的簡単な工程で、高純度のリン酸四カルシウムを製造する為の方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明とは、CaHPO4 ・2H2 O粉末とCaCO3 微粒子粉末を、モル比で1:1の割合で混合して水懸濁状態とし、これを70℃を超える温度で加温・保持して反応させた後、反応生成物を焼成する点に要旨を有するリン酸四カルシウムの製造方法である。
また本発明で用いるCaCO3 微粒子粉末は、その平均粒径が5μm以下であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するべく様々な角度から検討した。その結果、CaHPO4・2H2 O粉末と、CaCO3 微粒子粉末を所定量の割合に混合して水に懸濁させて水懸濁液とし、この水懸濁液を所定の温度に保持して反応させた後、焼成する様にしてやれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明では、CaHPO4 ・2H2 O粉末と、CaCO3 微粒子粉末を、湿式反応によって予めある程度の反応を進行させた後、焼成すれば、2段階の焼成工程を実施せずとも、高純度のTTCPが得られることを見いだしたのである。
【0009】
本発明では、CaHPO4 ・2H2 O粉末を原料の一つとして用いる必要があるが、これは後述する反応条件、即ち70℃を超える温度で無水化するときに反応活性が高まり、アパタイトが生成すると同時に過剰のCaCO3 と反応して結晶性の低いCaCO3 を生成する。そして、こうした反応を予め進行させることによってその後1段階の焼成によって希望するTTCPが得られるのである。こうした観点からして、無水物であるCaHPO4 粉末は本発明の原料として使用できない。即ち、CaHPO4 粉末は、反応活性が低いので、この様な粉末を原料として用いて本発明で規定する条件で反応させてても反応が進まず、本発明の目的が達成されない。
【0010】
本発明で用いるもう一方の原料であるCaCO3 は、できるだけ微粒子のものを用いる必要がある。これはCaCO3 の粒子が大きいと、本発明で規定する反応条件(70℃を超える温度)において反応が進まず、生成物中に未反応のCaCO3 粉末が残留する。こうした観点からして、CaCO3 の平均粒径は、5μm以下の微粒子であることが好ましい。
【0011】
上記の様なCaHPO4 ・2H2 O粉末とCaCO3 粉末は、水懸濁状態とされるが、このときの両粉末の混合比率は後述する反応式(1)から明らかな様に、モル比で1:1の割合とする必要がある。
【0012】
次に、本発明で規定する反応条件について説明する。まず水懸濁状態で加温・保持するときの温度は、70℃を超える温度とする必要がある。この温度が70℃以下では、CaHPO4 ・2H2 O粉末固有の板状の結晶形態が保たれ、その後行われる1段階の焼成工程だけでは、TTCP、アパタイトおよびCaOの混合物となるだけであり、希望する高純度のTTCPが得られない。
【0013】
尚、加温・保持温度の上限については、特に限定されるものではないが、耐圧構造を有しない一般的な開放反応缶を利用できるという観点からして、100℃以下であることが好ましい。また加温・保持時間についても、特に限定されるものではないが、上記の条件下では4〜6時間程度で反応がほぼ終了する。
【0014】
本発明における上記加温・保持工程は、原料粉末の単なる混合工程ではなく、前述の如く反応を焼成前に予めある程度進行させる為のものであって、焼成前にこうした工程を行なうことによって、1段階の焼成によって希望する高純度のTTCPが製造できるのである。
【0015】
上記湿式反応によって得られた反応沈殿物は、濾別された後乾燥され、更に焼成されるのであるが、このときの焼成条件は常法に従って行なえば良く、例えば焼成温度は1300〜1500℃程度である。本発明の全反応工程は、下記反応式(1)に示す通りである。
2CaHPO4 ・2H2 O+2CaCO3
→Ca4 (PO4 )2 O+4H2 O+2CO2 ↑…(1)
【0016】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0017】
【実施例】
実施例1
ステンレス鋼製の5リットルビーカーにイオン交換水3000gを入れ、デジタルミキサーで撹拌しつつ、CaHPO4 ・2H2 O粉末(太平化学産業株式会社製)344gと、平均粒径:4μmのCaCO3 粉末(カルシード株式会社製、超高純度品)200gを加えて水懸濁状態とした後、加温して液温を90℃に保ち、撹拌下に5時間反応させた。
ヌッチェで反応沈殿物を濾別した後、150℃で3時間乾燥し、反応生成物(中間生成物)を358g得た。この中間生成物を、1450℃で5時間焼成して焼成物とした。
【0018】
実施例2
ステンレス鋼製の5リットルビーカーにイオン交換水3000gを入れ、デジタルミキサーで撹拌しつつ、CaHPO4 ・2H2 O粉末(太平化学産業株式会社製)275gと、平均粒径:4μmのCaCO3 粉末(カルシード株式会社製、超高純度品)160gを加えて水懸濁状態とした後、加温して液温を80℃に保ち、撹拌下に5時間反応させた。
ヌッチェで反応沈殿物を濾別した後、150℃で3時間乾燥し、中間生成物を290g得た。この中間生成物を、1350℃で8時間焼成して焼成物とした。
【0019】
実施例3
ステンレス鋼製の5リットルビーカーにイオン交換水3000gを入れ、デジタルミキサーで撹拌しつつ、CaHPO4 ・2H2 O粉末(太平化学産業株式会社製)344gと、平均粒径:8μmのCaCO3 粉末(和光純薬工業株式会社製、試薬特級粉砕品)200gを加えて水懸濁状態とした後、加温して液温を95℃に保ち、撹拌下に5時間反応させた。
ヌッチェで反応沈殿物を濾別した後、150℃で3時間乾燥し、中間生成物を356g得た。この中間生成物を、1450℃で5時間焼成して焼成物とした。
【0020】
比較例1
ステンレス鋼製の5リットルビーカーにイオン交換水3000gを入れ、デジタルミキサーで撹拌しつつ、CaHPO4 ・2H2 O粉末(太平化学産業株式会社製)344gと、平均粒径:14μmのCaCO3 粉末(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)200gを加えて水懸濁状態とした後、加温して液温を95℃に保ち、撹拌下に5時間反応させた。
ヌッチェで反応沈殿物を濾別した後、150℃で3時間乾燥し、中間生成物を359g得た。この中間生成物を、1450℃で5時間焼成して焼成物とした。
【0021】
比較例2
実施例1と同様にして、CaHPO4 ・2H2 O粉末とCaCO3 粉末を水懸濁状態とした後、加温して液温を55℃に保ち、撹拌下に10時間反応させた。
ヌッチェで反応沈殿物を濾別した後、150℃で3時間乾燥し、中間生成物を355g得た。この中間生成物を、1450℃で5時間焼成して焼成物とした。
【0022】
上記実施例1〜3および比較例1,2で得られた中間生成物および焼成物について、X線回折装置(商品名「RAD−1A」、理学電機株式会社製)を用いて同定すると共に、HAP(2θ=25.9°)とTTCP(2θ=29.7°)のX線回折強度比[IHAP /(IHAP +ITTCP)]からTTCPの純度を測定した。
【0023】
これらの結果を、反応条件と共に、下記表1に示す。尚表1において、「am−HAP」は低結晶性ヒドロキシアパタイト、「am−CaCO3 」は低結晶性炭酸カルシウムを、夫々示している。また中間生成物のX線回折結果を図1に、焼成物のX線回折結果を図2に、夫々示す。
【0024】
【表1】
【0025】
これらの結果から明らかな様に、本発明で規定する要件を満足する実施例1〜3のものは、高純度のTTCPが得られていることが分かる。
【0026】
【発明の効果】
以上述べた様に本発明によれば、未反応物質や副生成物を含まず、高純度のリン酸四カルシウムを製造することができた。また本発明方法によれば、ボールミル等のメカニケミカル作用を有する工程を含まないので、比較的簡単な製造工程によってそれが実現できると共に、外部からの汚染物質の混入という不都合を基本的に招くこともなく、工業的な大量生産も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜3および比較例1,2によって得られた中間成物におけるX線回折結果を示すチャートである。
【図2】実施例1〜3および比較例1,2によって得られた焼成物におけるX線回折結果を示すチャートである。
Claims (2)
- CaHPO4 ・2H2 O粉末とCaCO3 微粒子粉末を、モル比で1:1の割合なる様に混合して水懸濁状態とし、これを70℃を超える温度で加温・保持して反応させた後、反応生成物を焼成することを特徴とするリン酸四カルシウムの製造方法。
- CaCO3 微粒子粉末の平均粒径が5μm以下である請求項1に記載の製造方法。
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