JP4422262B2 - 内視鏡手術システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡下で外科的処置を行なう内視鏡手術システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、脳神経外科において、手術用顕微鏡によるマイクロサージャリーが頻繁に行われている。手術用顕微鏡の観察範囲は頭蓋の開創部を通して観察できる範囲に限られており、手術用顕微鏡では見えない部分(死角)を観察するために、内視鏡が頻繁に用いられている。そして、この内視鏡の観察像を見ながら、処置具を頭部内に挿入して処置が行なわれている。
【0003】
一般に、手術用顕微鏡の死角観察を目的として使用される内視鏡としては、その長手方向に対して所定の角度をなす側方を観察することが可能ないわゆる斜視型の硬性鏡が使用される。このような斜視型の硬性鏡101を含む内視鏡手術システムが図11に示されている。この内視鏡手術システムは、TVカメラヘッド102aとコントローラ102bとからなるTVカメラシステム102と、TVカメラシステム102により撮像された画像を表示するモニタ103と、硬性鏡101に照明光を供給する光源装置104およびライトガイド105とから成る。術中、硬性鏡101はスコープホルダ106により固定支持される。TVカメラヘッド102aは、モニタ103の表示画面の下方が硬性鏡101の挿入方向深部側(先端側)となり且つモニタ画像の上方が硬性鏡101の挿入方向の浅部側(手元側)になるように、硬性鏡101に接続される。術者100は、モニタ103の内視鏡観察画像を見ながら、処置具107を操作し、腫瘍の摘出や止血等を行っている。
【0004】
一方、内視鏡観察下で遠隔操作により処置具を作動して手術を術者に代わって行なう手術用マニピュレータが、例えば、特開平7−328015号公報に開示されているこの手術用マニピュレータでは、術者がマスタマニピュレータの操作を行なうと、これに追従して処置用マニピュレータがアクチュエータにより動作して、術部の処置を行なう。また、術者は、頭部に表示装置を装着し、その表示画像を見ながらマスタマニピュレータを操作して手術を行なう。この場合、術者の頭の位置が検出され、これに合わせて内視鏡の観察位置が移動される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図11では、術者100から見て左方向を硬性鏡101が観察しており、その硬性鏡画像がモニタ103に表示されている。こうした状況下で、術者100がモニタ103に表示された画像を見ながら手術を行なって処置具107をモニタ103上で右方向(矢印D1方向)に動かすと、実際の処置具107は術者に対して前方(矢印d1方向)に移動されてしまう。逆に、処置具107をモニタ103上で左方向(矢印B1方向)に動かすと、実際の処置具107は術者に対して手前側(矢印b1方向)に移動されてしまう。
【0006】
一方、図12に示されるように、図11の状態から硬性鏡を90度左回りに回転させて術者100側を観察する状況下で、モニタ103上の処置具107を左右方向(D2,B2方向)に移動させたい場合には、実際には、処置具107をモニタ103上の画像に対し完全に反対方向に移動させる必要がある。すなわち、挿入方向に対して観察方向の異なる内視鏡を使用する手術では、実際に処置具を動かす方向とモニタ上での処置具の移動方向とが一致しない。このため、術者は、モニタを見ながら、頭の中で処置具を移動させる方向を考えたり、処置具を微妙に動かして移動方向を確認しながら処置具を移動させる方向を判断しなければならない。したがって、手術時間が長くなり、結果的に術者の疲労を招いていた。こうした問題を解決するためには、内視鏡の観察方向にあわせて術者が手術部位に対して場所を移動して、観察方向と術者の正面方向とが一致するようにすれば良いが、患者の体や他の手術装置と干渉してしまうため、困難である。
【0007】
一方、特開平7−328015号公報に開示されているシステムは、術者の頭部の位置を検出して内視鏡の視野を移動させるものであるが、システムが大掛かりで簡便ではない。また、内視鏡の観察位置を変更するには、術者自身の移動や頭の移動が必要である。このため、遠隔手術では有効であるが、手術室は多くの機器やケーブルが設置されており、術者が手術室内で使用する場合には邪魔になったり、術者の移動範囲が狭くなるといった問題がある。また、内視鏡が挿入方向を中心に回転した場合には、術者が観察している表示画像の向きが変化してしまう。このため、マスタマニピュレータを動かす方向と表示画像上で処置用マニピュレータが動く方向との間にズレが生じてしまう。
【0008】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、内視鏡の観察方向が変更されても、術者に対する処置具の操作方向と表示画像上の処置具の移動方向とが一致し、手術の時間短縮と術者の疲労軽減を図ることができる内視鏡手術システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の内視鏡手術システムは、挿入方向に対し異なる方向が観察可能な内視鏡と、前記内視鏡に接続され、内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの情報を表示する表示手段と、術者が操作を行なう入力部と、前記入力部の操作に基づき動作を行なう出力部と、前記入力部に対して前記出力部の動作方向を変更可能な動作方向変更手段とを備えた処置具と、前記内視鏡の挿入方向まわりの観察方向の変化に伴い、前記動作方向変換手段を動作させる制御手段とを具備し、前記動作方向変更手段は、前記入力部の操作を前記出力部に伝達する操作伝達手段と、前記処置具の術部への挿入方向まわりに前記入力部に対して前記出力部を回転可能な回転部とをそなえ、前記制御手段は、前記内視鏡の挿入方向まわりの回転を伝達し前記回転部を回転させる回転伝達手段よりなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。 図1に示されるように、本実施形態に係る内視鏡手術システムは、硬性鏡1と、硬性鏡1の手元側に取り付けられたTVカメラヘッド3aとコントローラー3bとからなるTVシステム3と、モニタ5とを備えている。硬性鏡1の先端に設けられた対物レンズ2の光軸13は、硬性鏡1の挿入部1aの中心軸O1に対して角度αをもって斜めに方向付けられている。また、対物レンズ2を通して得られる観察像は、図示しないリレー光学系と結像光学系とを介して、TVカメラヘッド3aの図示しない撮像素子により撮像される。TVカメラヘッド3aは、コントローラ3bを介して、モニタ5上に観察像を表示する。図中、6は、硬性鏡1の視野に照明光を供給するための図示しない光源装置に接続されたライトガイドである。TVカメラヘッド3は、モニタ5の表示画像の下方が硬性鏡1の挿入方向深部側(先端側)となり且つモニタ5の表示画像の上方が挿入方向の浅部側(手元側)となるように、硬性鏡1に接続されている。
【0012】
図中、7は、可撓性を有し且つ硬性鏡1を支持するスコープホルダである。このスコープホルダ7は、図示しないベッドサイドのステーに固定されている。スコープホルダ7は硬性鏡1を中心軸O1回りに回動可能に支持している。図中、8は処置具である。この処置具8は、接続部材12を介して、硬性鏡1の挿入部1aに一体的に固定されている。処置具8は、術者が操作する入力部9と、入力部9の操作に対応して動作する出力部10とを有している。また、処置具8には、電極間に高周波電流が流されることによって術部の止血や凝固を行なうバイポーラプローブ11が装着されている。処置具8は、出力部10が硬性鏡1の光軸13方向に配置されて常に硬性鏡1により撮像可能となるような位置関係で、硬性鏡1に接続されている。
【0013】
図2および図3には処置具8の具体的な構成が示されている。図2に示されるように、処置具8は、硬性鏡1の挿入部1aに接続部材12を介して一体的に接続された下部シャーシ8aと、下部シャーシ8aに回動可能に接続された上部シャーシ8bと、下部シャーシ8aと上部シャーシ8bとの接続部である関節8cとを有している。上部シャーシ8bは、硬性鏡1の挿入部1aの中心軸O1と略平行な回転軸O3を中心に回動できる。
【0014】
入力部9は中空構造の入力レバー15を有している。入力レバー15は、手元側(術者側)に位置する細径の把持部15aと、先端側に位置する円板状の変位部15bとを有している。入力レバー15には、手元側から順に、細径穴15cと、球形の窪みをした凹部15dとが形成されている。細径穴15cにはバイポーラプローブ11が挿入されている。また、細径穴15cの終端(凹部15dとの境界部)には、細径穴15cと同一内径の可撓性チューブ16の一端が接続されている。そして、チューブ16内にバイポーラプローブ11が進退可能に挿入されている。上部シャーシ8bには、上部支持軸17の一端が一体的に固定されている。また、上部支持軸17の他端は、球形を成して入力レバー15の凹部15dに嵌挿されており、その中心部P1を中心に入力レバー15が傾斜できるように入力レバー15の先端側を支持している。なお、上部支持軸17は、中空構造を成しており、その内部にチューブ16が挿通されている。
【0015】
図3にも示されるように、入力レバー15の変位部15bには、4本のワイヤ20a〜20dの一端がそれぞれ固定されている。ワイヤ20a〜20dは、中心部P1を通る軸O4を中心とする半径rの円の円周上に互いに90度の角度間隔をもって配置固定されている。一方、変位部15bと対向する上部シャーシ8bの部位には、ワイヤ20a〜20dの4つの固定位置に対応する位置に、中空の可撓性ホース21a〜21dの一端が接続されている。ホース21a〜21dの内部にはそれぞれ、対応するワイヤ20a〜20dが進退可能に挿通されている。
【0016】
出力部10は中空構造の出力レバー25を有している。出力レバー25は、先端側(術部側)に位置する細径部25aと、術部と反対側に位置する円板状の変位部25bとを有している。また、出力レバー25には、術部側から順に、細径穴25cと、球形の窪みをした凹部25dとが形成されている。細径穴25cにはバイポーラプローブ11が挿入されている。また、細径穴25cの終端(凹部25dとの境界部)には、細径穴25cと同一内径のチューブ16が接続されている。
【0017】
下部シャーシ8aには、下部支持軸27の一端が一体的に固定されている。下部支持軸27の他端は、球形を成して出力レバー25の凹部25dに嵌挿されており、その中心部P2を中心に出力レバー25が傾斜できるように、出力レバー25を支持している。なお、下部支持軸27は、中空構造を成しており、その内部にチューブ16が挿通されている。
【0018】
出力レバー25の変位部25bには、4本のワイヤ20a〜20dの他端がそれぞれ固定されいる。ワイヤ20a〜20dは、中心部P2を通る軸O5を中心とする半径rの円の円周上に互いに90度の角度間隔をもって配置固定されている。また、変位部25bと対向する下部シャーシ8aの部位には、ワイヤ20a〜20dの4つの固定位置と対応する位置に、ホース21a〜21dの他端が接続されている。なお、この場合、ワイヤ20a〜20dおよびホース21a〜21dは、図3に示されるように、入力部9側の軸O4回りの配置を軸O5回りに180度回転させた状態で、変位部25bおよび下部シャーシ8aに固定されている。
【0019】
次に、上記構成の内視鏡手術システムの動作について説明する。
【0020】
硬性鏡1が術者側から見て前方を観察している場合、硬性鏡1とTVカメラシステム3により撮像される観察像は、図4に示されるように、TVモニタ5に表示されている。
【0021】
実際に、モニタ5の画面上でバイポーラプローブ11を矢印A3,B3,C3,D3の各方向に動かしたい場合には、入力レバー15を各方向に対応させて矢印a3,b3,c3,d3方向にそれぞれ傾斜させれば良い。すなわち、モニタ5上でバイポーラプローブ11を右に動かしたい場合には、入力レバー15を右に傾斜させるというように、モニタ5を見ながら動かしたい方向に入力レバー15を傾斜させれば良い。
【0022】
例えば、モニタ5上でバイポーラプローブ11の先端を矢印A3方向(上)に移動させる場合には、入力レバー15を矢印a3方向(上)に操作する。これにより、入力レバー15が中心部P1を中心に上部支持軸17に対して傾斜し、ワイヤ20cが手元側に引張られるとともに、ワイヤ20aが先端側に押し出される(緩む)。押し出されたワイヤ20aは、ホース21a内を前進し、出力レバー25を中心部P2を中心に矢印a3方向に傾動させる。すなわち、モニタ5上でバイポーラプローブ11の先端が矢印A3方向に移動する。なお、他の方向の場合も同様に動作する。具体的には、入力レバー15を矢印b3方向(左)に操作すると、出力レバー25が矢印b3方向に傾動し、モニタ5上でバイポーラプローブ11が矢印B3方向に移動し、また、入力レバー15を矢印c3方向(下)に操作すると、出力レバー25が矢印c3方向に傾動し、モニタ5上でバイポーラプローブ11が矢印C3方向に移動し、また、入力レバー15を矢印d3方向(右)に操作すると、出力レバー25が矢印d3方向に傾動し、モニタ5上でバイポーラプローブ11が矢印D3方向に移動する。また、バイポーラプローブ11を目的部位へ進退させる場合には、術者100が入力レバー15に対してバイポーラプローブ11を進退させれば良い。これにより、バイポーラプローブ11がチューブ16内で進退し、出力レバー25の先端に対してバイポーラプローブ11が突没する。
【0023】
次に、硬性鏡1を術者100に対し軸O1回りに90度左回転させた場合(術者100から見て、左側を観察する場合…図5参照)の処置具8の動作について説明する。
【0024】
図5に示されるように、硬性鏡1を90度左回転させると、処置具8も一体となって90度左に回転するが、手術中、手術部位に対する術者100の位置は変わらないため、術者100は、上部シャーシ8bを下部シャーシ8aに対して矢印S方向に90度回転させ、入力レバー15を術者100の正面位置に戻して使用する。すなわち、入力レバー15に対し出力レバー25が90度ずれた状態になる。しかしながら、この場合でも、硬性鏡1の光軸13と処置具8の出力部10とが既に一体的に移動しているため、モニタ5上での処置具8の出力レバー25の移動方向と入力レバー15の操作方向との関係は図4に示した関係と変わらない。すなわち、術者100が正面方向にモニタ5を設置するとともに、処置具8の入力レバー15を正面(手前)に向けて使用さえすれば、モニタ5上で処置具8を動かしたい方向に入力レバー15を傾斜させると、出力レバー25すなわちバイポーラプローブ11が適正に移動する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、硬性鏡1と処置具8とを一体的に接続することにより、硬性鏡1の観察方向の変化を処置具8に機械的に伝達して入力に対する出力の方向を変更しているため、構造がシンプルであり手術作業の邪魔にならない。また、入力部9の操作を可撓性ワイヤと可撓性ホースとにより出力部10に伝達しているため、複雑な機構が必要なく、シンプルに構成できる。
【0026】
なお、本実施形態では、処置具8を硬性鏡1の挿入部1aに一体的に固定しているが、公知の内視鏡の外套管と同様に、硬性鏡1の挿入部1aの外周に外挿する方式で構成し、本実施例の如く、内部にバイポーラプローブ等を挿入する構造としても良い。
【0027】
図6は本実施形態の変形例を示している。この変形例では、スコープホルダ7が回転規制部材30によって上部シャーシ8bに機械的に固定されている。この構成によれば、硬性鏡1を軸O1回りに回転させても、常に入力部9を術者の正面に位置させることができる。 したがって、手術時間の短縮を図ることができる。
【0028】
図7〜図9は本発明の第2の実施形態を示している。なお、本実施形態において、第1の実施形態と共通する構成部分については、以下、同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図7に示されるように、本実施形態に係る内視鏡手術システムは、硬性鏡1をXYZ方向にスライド可能に支持するスコープホルダ40を有している。このスコープホルダ40はベッドサイドのステー41aに固定されている。スコープホルダ40は硬性鏡接続部材42を有している。硬性鏡接続部材42には、スコープホルダ40に対する硬性鏡1の回転角度を検出する角度検出手段43が配設されている。角度検出手段43は、エンコーダ44(図9参照)から成り、硬性鏡1の挿入部1aの中心軸軸O1回りの回転角度を検出する。
【0030】
また、この内視鏡手術システムは、処置具8をXYZ方向にスライド可能に保持する処置具ホルダ45を有している。処置具ホルダ45は、ベッドサイドのステー41bに固定されており、処置具8を支持する処置具接続部材46を有している。
【0031】
図8に示されるように、処置具ホルダ45の先端部に設けられた処置具接続部材46は、処置具8の下部シャーシ8aに回り止め固定されたギア47を有している。ギア47は、処置具接続部材46とともに、下部シャーシ8aがその軸O3方向に沿って移動することを規制するとともに、下部シャーシ8aを関節8cにおいて軸O3回りに回動可能に保持している。一方、上部シャーシ8bは、処置具接続部材46に取り付けられたピン52によって、軸O3回りの回動が規制されている。
【0032】
また、処置具接続部材46は、保持部材99に固定されたモータ48を有している。モータ48の出力軸48aには、ギア47と噛み合うギア49が同軸的に固定されている。なお、処置具8の入力部9および出力部10とその動きを伝達する構成は第1の実施形態と同一である。
【0033】
図9に示されるように、角度検出手段43を構成するエンコーダ44は制御回路50に接続されている。制御回路50は、モータ48に接続されたモータ駆動回路51に接続されている。制御回路50は、エンコーダ44からの入力信号に対し、硬性鏡1の中心軸O1回りの回転角度と同一方向に同一角度だけ処置具8を軸O3回りに回動すべく、予め設定された条件に従い所定の信号をモータ駆動回路51に出力する。
【0034】
次に、上記構成の内視鏡手術システムの動作について説明する。
【0035】
硬性鏡1を中心軸O1回りに回転させると、角度検出手段43のエンコーダ44により、硬性鏡1の硬性鏡接続部材42に対する回転角度が検出され、制御部50に角度情報が出力される。制御部50は、この角度情報に基づいて硬性鏡1の回転角度を演算し、処置具8をこれと同一の角度回転すべく信号をモータ駆動回路51へ出力する。モータ駆動回路51は、この入力信号に従い、必要量モータ48を回転させる。このモータ48の回転は、出力軸48aに同軸に固定されたギア49とギア47との噛み合いにより、下部シャーシ8aへと伝達され、下部シャーシ8aが硬性鏡1と同一角度回転する。すなわち、硬性鏡1の観察方向と処置具8の出力部10の方向とが第1の実施形態と同じ関係になる。この際、上部シャーシ8bは、ピン52の作用により、処置具接続部材46に対して回転しない。したがって、入力部9の位置は常に術者100に対して変わらない。これにより、術者の処置具8の操作方向とモニタ5上での処置具8の移動方向とを一致させることができる。なお、硬性鏡1の中心軸O1回りの回転により、処置具8の出力部10が観察範囲から外れた場合には、処置具ホルダ45により処置具8をXYZ方向に移動させて、調整を行なう。
【0036】
以上説明したように、本実施形態は、第1の実施形態と異なり、電気的に硬性鏡1の挿入方向回りの回転を検出するとともに、処置具8の出力部10を電気的に回転させるため、硬性鏡1と処置具8とを分離して保持可能となり、手術の状況に応じて、硬性鏡1と異なる位置および方向から処置具8を挿入できる。これにより、幅広い手術のスタイルに対応できる。
【0037】
なお、本実施形態では、硬性鏡1の回転をエンコーダ44により検出しているが、硬性鏡1に発光体を接続し、この発光体を撮影手段(TVカメラ)により撮像して、その撮像信号により硬性鏡の位置および回転角度を演算する、公知の光学的位置検出手段により、硬性鏡1の回転を検出することも可能である。これにより、スコープホルダを用いない場合でも、位置検出が可能となる。
【0038】
図10は本発明の第3の実施形態を示している。
【0039】
なお、本実施形態において、硬性鏡1、TVカメラシステム3、モニタ5、スコープホルダ40、スコープホルダ40に対する硬性鏡1の位置を検出する回転角度検出手段は第2の実施形態と同一であるため、その説明を省略し、異なる部分である処置具63についてのみ説明する。
【0040】
図中、60は、処置具63を先端に固定し且つベッドサイドのステー41bに取り付けられたスレーブマニピュレータ(以下、 処置用マニピュレータという)である。スレーブマニピュレータ60は、垂直方向および旋回方向に動作する支持機構としての第1の動作アーム60aと、第1の動作アーム60aに設けられ且つ水平方向に動作する第2の動作アーム60bと、第2の動作アーム60bの先端部に設けられた関節部60cとから構成されている。また、処置用マニピュレータ60は、マニピュレータ制御装置61と方向変換回路65とを介して、術者が操作できる領域内に設置されたマスタマニピュレータ62に接続されている。
【0041】
マニピュレータ制御装置61は、公知の如く、マスターマニピュレータ62からの信号を入力し、マスターマニピュレータ62に対して処置用マニピュレーター60が同一の動きをすべく、駆動信号を処置用マニピュレータ60に出力するものである。
【0042】
方向変換回路65には、第2の実施例と同様の角度検出手段43を構成するエンコーダ44が接続されている。方向変換回路65は、エンコーダ44からの入力信号により、マニピュレータ制御装置61からの信号を所定の変換式に基づき変更し、マスターマニピュレータ62の操作に対する処置用マニピュレーター60の動作方向を変更する駆動信号を処置用マニピュレータ60に出力する。
【0043】
処置用マニピュレータ60の第1の動作アーム60aと第2の動作アーム60bは、例えば電磁モータ等のアクチュエータ(図示しない)によって動作する上下e、旋回f、水平gの動作軸からなるいわゆる円筒座標型マニピュレータの駆動構造を有しているが、複数の関節部からなるいわゆる多関節型マニピュレータの構造でも構わない。関節部60cは、電磁モータ等のアクチュエータ(図示しない)により動作して、互いに直交する2軸h,i回りに処置具63を傾斜できるように処置具63と接続している。
【0044】
次に、上記構成の内視鏡手術システムの動作について説明する。
【0045】
処置用マニピュレータ60に接続された処置具63の先端位置Qは、上下e、旋回f、水平g、傾斜h、iの各動作位置と各部材の幾何学的寸法により、マニピュレータ制御装置61で既知となっている。一方、マスタマニピュレータ62の作用点62aの位置はマニピュレータ制御装置61による演算により求められ、マスタマニピュレータ62の作用点62aの位置に処置具先端Qが移動すべく信号がマニピュレータ制御装置61から方向変換回路65へ出力される。また、硬性鏡1の観察方向は、第2の実施形態と同様に回転角度検出手段43のエンコーダ44により検出され、方向変換回路65に伝えられる。
【0046】
ここで、角度変換回路65は、エンコーダ44からの信号に基づき、マニピュレータ制御装置61から入力される信号を、予め記憶された計算式に基づき演算処理し、マスタマニピュレータ62の操作方向がモニタ5上における処置具63の移動方向とが常に一致するように、処置用マニピュレータ60に駆動信号を出力する。すなわち、第2の実施形態と同様に、モニタ5の画面上で表示されている処置具63の先端位置Qの移動方向がマスターマニピュレータ62の操作方向と同じになるように、処置用マニピュレータ60に信号が出力される。これにより、第2の実施形態と同様、術者による処置具63の操作方向とモニタ5上での処置具63の移動方向とが一致するようになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、処置具63の操作がマスターマニピュレータ62により遠隔的に行なうことができるため、マスタマニピュレータ62の設置場所に制限がなく、術者が操作し易い位置で手術が行なえる。したがって、術者はより楽な姿勢で手術操作が行えるようになる。
【0048】
なお、以上説明してきた技術内容によれば、以下に示すような各種の構成が得られる。
【0049】
1.挿入方向に対し異なる方向が観察可能な内視鏡と、前記内視鏡に接続され前記内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの情報表示する表示手段と、術者が操作を行う入力部と、前記入力部の操作に基づき動作を行う出力部と、前記入力部に対して前記出力部の動作方向が変更可能な動作方向変更手段を備えた処置具と、前記内視鏡の挿入方向まわりの観察方向の変化にともない、前記動作方向変換手段を動作させる制御手段を備えたことを特徴とする内視鏡手術システム。
【0050】
2.前記動作方向変更手段は、前記入力部の操作を出力部に伝達する操作伝達手段と、前記処置具の術部への挿入方向まわりに前記入力部に対して前記出力部を回転可能な回転部をそなえ、前記制御手段は、前記内視鏡の挿入方向まわりの回転を伝達し前記回転部を回転させる回転伝達手段よりなることを特徴とする第1項に記載の内視鏡手術システム。
【0051】
3.前記操作伝達手段は、機械的伝達手段よりなることを特徴とする第2項に記載の内視鏡手術システム。
4.前記回転伝達手段は、前記内視鏡と前記処置具を一体的に接続する接続部材よりなることを特徴とする第2項または第3項に記載の内視鏡手術システム。
【0052】
5.前記回転伝達手術は、所定の部位に対する内視鏡の挿入方向まわりの回転変位を検出する回転検出手段と、前記回転部を回転可能な駆動手段と、前記回転検出手段からの信号に基づき前記駆動手段の駆動を制御する電気的制御手段よりなる第2項または第3項に記載の内視鏡手術システム。
6.前記回転検出手段は、エンコーダであることを特徴とする第5項に記載の内視鏡手術システム。
7.前記回転検出手段は前記内視鏡に接続された、光学的発光体と、前記光学的発光体を撮像する第2の撮像手段と、前記第2の撮像手段からの信号に基づき、前記内視鏡の回転角度を算出する演算手段を備えた光学的位置検出手段よりなることを特徴とする第5項に記載の内視鏡手術システム。
【0053】
8.前記駆動手段はモーターであることを特徴とする第5項に記載の内視鏡手術システム。
9.前記機械的伝達手段は、第1の可撓性部材と前記第1の可撓性部材に対して相対的に変位する第2の可撓性部材よりなることを特徴とする第3項に記載の内視鏡手術システム。
10.前記第1の可撓性部材はワイヤーであり、前記第2の可撓性部材は前記ワイヤーに外挿されたホースであることを特徴とする付記9記載の内視鏡手術システム。
【0054】
11.挿入方向に対し、側方が観察可能な内視鏡と、前記内視鏡に接続され前記内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの情報を表示する表示手段と、術者が操作を行うマスタマニピュレータと、前記の操作に基づき動作を行うスレーブマニピュレーターと、前記スレーブマニピュレーターが前記マスタマニピュレータの動きに追従した動作をすべく制御を行うマニピュレータ制御手段を備えた処置具と、前記内視鏡の挿入方向まわりの回転変位を検出する回転検出手段と、前記マニピュレータ制御手段および前記回転検出手段からの情報により前記スレーブマニピュレータの動作方向を制御するマニピュレータ動作方向変換手段を備えたことを特徴とする内視鏡手術システム。
【0055】
(第1項の目的)
内視鏡の観察方向を変更しても、術者に対する処置具の操作方向と、表示画像上の処置具の移動方向が一致させることにより、手術の時間短縮と術者の疲労軽減が可能な内視鏡手術システムの提供。
【0056】
(第1項の作用)
内視鏡が挿入方向まわりに回転することにより生じる表示手段の上での術部の上下、水平方向変化に合わせて、制御手段により、動作方向変換手段を駆動し、処置具の入力部の操作方向に対して出力部の動作方向を制御する。(表示手段上での処置具の出力部の動作方向と実際の処置具の入力部の操作方向が常に一致するように制御される。)
(第2項の作用)
内視鏡が挿入方向まわりに回転すると、回転伝達手段により前記処置具の回転部が回転される。これにより出力部が処置具の入力部に対して挿入方向まわりに回転する。この状態で、入力部の操作は操作伝達手段により、出力部に伝達されるため、入力操作に対して出力部の動作方向が変換される。
【0057】
(第4項の作用)
内視鏡が挿入方向まわりに回転すると、接続部材により処置具が硬性鏡と一体的に回転し、処置具の回転部が回転される。これにより出力部が処置具の入力部に対して挿入方向まわりに回転する。この状態で、入力部の操作は操作伝達手段により、出力部に伝達されるため、入力操作に対して出力部の動作方向が変換される。
【0058】
(第5項の作用)
内視鏡が挿入方向まわりの回転は回転検出手段により検出され、電気的制御手段に入力される。電気的制御手段はこの入力信号に基づき駆動手段を駆動し回転部を回転させる。これにより出力部が処置具の入力部に対して挿入方向まわりに回転する。この状態で、入力部の操作は操作伝達手段により、出力部に伝達されるため、入力操作に対して出力部の動作方向が変換される。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、硬性鏡の挿入方向まわりの回転にあわせて、処置具の移動方向を制御するため、術者が表示手段を見ながら処置具の出力部を動かしたい方向と同一方向に処置具の入力部を操作すると、処置具の出力部が表示手段上で意図した方向(動かしたい方向)に移動する。そのため、手術中に移動方向を考えたり、確認を行なう必要がなくなる。これにより、処置具の操作が容易となり、手術時間の短縮、ひいては、術者の疲労を大幅に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡手術システムの斜視図である。
【図2】図1の内視鏡手術システムを構成する処置具の断面図である。
【図3】図2の処置具のワイヤによる伝達手段を説明するための概念図である。
【図4】図1の内視鏡手術システムの第1の動作形態を示す斜視図である。
【図5】図1の内視鏡手術システムの第2の動作形態を示す斜視図である。
【図6】図1の内視鏡手術システムの変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡手術システムの斜視図である。
【図8】図7の内視鏡手術システムの処置具接続部材の断面図である。
【図9】図7の内視鏡手術システムの電気制御系のブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る内視鏡手術システムの斜視図である。
【図11】内視鏡手術システムの従来例を示す図である。
【図12】内視鏡手術システムの従来例を示す図である。
【符号の説明】
1…硬性鏡(内視鏡)
9…入力部
10…出力部
Claims (1)
- 挿入方向に対し異なる方向が観察可能な内視鏡と、
前記内視鏡に接続され、内視鏡の観察像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段からの情報を表示する表示手段と、
術者が操作を行なう入力部と、前記入力部の操作に基づき動作を行なう出力部と、前記入力部に対して前記出力部の動作方向を変更可能な動作方向変更手段とを備えた処置具と、
前記内視鏡の挿入方向まわりの観察方向の変化に伴い、前記動作方向変換手段を動作させる制御手段と、
を具備し、
前記動作方向変更手段は、
前記入力部の操作を前記出力部に伝達する操作伝達手段と、
前記処置具の術部への挿入方向まわりに前記入力部に対して前記出力部を回転可能な回転部とをそなえ、
前記制御手段は、前記内視鏡の挿入方向まわりの回転を伝達し前記回転部を回転させる回転伝達手段よりなることを特徴とする内視鏡手術システム。
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