JP4422078B2 - ポリウレタンフォームの製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリウレタンフォームの製造法に関する。更に詳しくは、建材、冷凍倉庫、浴槽、配管等の断熱材、戸建住宅、マンションや産業用配管等の結露防止材、製品形状を保持するために出窓やサッシ等の建材部品等の内部に詰められる軽量なコア材等として好適に使用し得るポリウレタンフォームの製造法及び該製造法に好適に使用しうるポリオール混合物に関する。
本発明のポリウレタンフォームの製造法は、特にスプレー方式による現場施行タイプの断熱材及び結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際に好適に使用することができる。
ポリウレタンフォームは、良好な断熱特性を有することから、建材、冷凍倉庫、浴槽、配管等の断熱材として使用されている。
ポリウレタンフォームは、例えば、家屋やビル建材等の断熱材として使用する場合には、スプレーマシン等により、ポリオールを主成分とする成分とイソシアネートを主成分とする成分とを発泡剤、触媒及び必要に応じて他の助剤の存在下で混合し、家屋やビル等の建設現場で壁面や天井等の目的部位にスプレーし、発泡、硬化させる方法等によって製造されている。
近年、発泡剤として、水のみを使用するポリウレタンフォームの製造法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの特許文献に記載されているポリウレタンフォームの製造法では、水を比較的多量に使用しているため、ポリウレタンフォームの収縮問題(寸法安定性)を独立気泡率の低減、即ち、セルの連通化によって解決している。
特に、近年、軽量化や廃棄物量の低減化を図るために、ポリウレタンフォームの更なる低密度化が求められ、密度が20kg/m以下の連通気泡型のポリウレタンフォームを製造する場合がある。このようなポリウレタンフォームを製造するには、ポリオール混合物中における水の含有量を8重量%程度以上とするので、ポリオール混合物が白濁したり、分離するため、イソシアネート成分と反応させる前に、あらかじめポリオール混合物を十分に混合攪拌する必要がある。
更に、現場施工でポリウレタンフォームを製造する際に、ポリオール混合物は、通常、ドラム詰めで数ヵ月間の保証期間を満足させなければならず、その保管中にポリオール混合物の分離が促進される。したがって、イソシアネート成分と反応させる前に、あらかじめポリオール混合物が均一な組成となるように十分に攪拌されていない場合には、イソシアネート成分との反応が不均質となってしまい、製造したポリウレタンフォームにボイドが発生したり、セルが乱れたりして、均質なポリウレタンフォームを得ることができない。
特開平10−45862号公報 特開平11−343681号公報 特開2002−179756号公報
本発明は、密度が20kg/m以下の低密度を有する連通型ポリウレタンフォームを製造する際に、発泡剤として水を多量に使用した場合であっても、ポリオール混合物が均一でかつ透明であり、現場施工時に、煩雑なポリオール混合物の混合攪拌という工程を削減し、ポリウレタンフォームの生産効率を高めることができるポリオール混合物およびそれが用いられたポリウレタンフォームの製造法を提供することを課題とする。
本発明は、また、ボイドの発生及びセルの乱れが少ないポリウレタンフォームおよびそれが用いられた断熱材を提供することを課題とする。
本発明は、
(1)密度が8〜20kg/mであり、独立気泡率が20%以下のポリウレタンフォームを製造するためのポリオール混合物であって、(A)水酸基価25〜120mgKOH/gのポリオキシアルキレン系ポリオール20〜50重量%、(B)水8〜30重量%、(C)アミン系触媒0.5〜10重量%、及び(D)炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸1〜15重量%を含有するポリオール混合物、
(2)前記ポリオール混合物と、イソシアネート成分とを反応させるポリウレタンフォームの製造法、並びに
(3)前記製造法によって得られるポリウレタンフォームからなる断熱材
に関する。
本発明によれば、密度が20kg/m以下の低密度を有する連通型ポリウレタンフォームを製造する際に、発泡剤として水を多量に使用した場合であっても、ポリオール混合物が均一でかつ透明であり、現場施工時に、煩雑なポリオール混合物の混合攪拌という工程を削減し、ポリウレタンフォームの生産効率を高めることができる。本発明によれば、ボイドの発生及びセルの乱れが少ないポリウレタンフォームおよびそれが用いられた断熱材が得られる。
本発明のポリウレタンフォームは、8〜20kg/mの密度を有する。ポリウレタンフォームの密度は、物性保持の観点から、8kg/m以上、好ましくは9kg/m以上とされる。一方、ポリウレタンフォームの密度は、軽量化及び廃棄物量の低減化の観点から、20kg/m以下、好ましくは17kg/m以下とされる。ポリウレタンフォームの密度は、後述する「実施例」に記載の測定方法で測定された「コア密度」を意味する。
また、本発明のポリウレタンフォームの独立気泡率は、ポリウレタンフォームの収縮を防止する観点から、20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。ポリウレタンフォームの独立気泡率は、ASTM(アメリカ材料試験協会)D 2856に記載の方法に従って測定されたときの値である。
本発明のポリウレタンフォームを製造する際には、(A)水酸基価25〜120mgKOH/gのポリオキシアルキレン系ポリオール20〜50重量%、(B)水10〜30重量%、(C)アミン系触媒0.5〜10重量%、及び(D)炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸1〜15重量%を含有するポリオール混合物が用いられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールの水酸基価は、セルの連通化を促進し、ポリウレタンフォームへの寸法安定性を付与する観点から、25〜120mgKOH/g、好ましくは30〜110mgKOH/g、より好ましくは35〜100mgKOH/gである。なお、水酸基価は、JIS K1557に基づいて求めたときの値である。
また、ポリオキシアルキレン系ポリオールの官能基数は、取扱い粘度及びポリウレタンフォームへの物性付与の観点から、2〜4、好ましくは2〜3である。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、例えば、前記水酸基価及び官能基数を有する、ポリオキシプロピレン系ポリオール、末端エチレンオキシド付加ポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ポリオキシアルキレン系ポリオールは、2個以上の活性水素含有基を有する化合物を出発原料とし、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドの開環付加反応により製造することができる。
2個以上の活性水素含有基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3〜4価の多価アルコール;レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等の多価フェノール;エチレンジアミン、トリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、イソホロンジアミン、N、N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等の多価アミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、それらの変性物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
好適なポリオキシアルキレン系ポリオールの例としては、グリセリン系ポリオキシプロピレントリオール、エチレングリコール系ポリオキシプロピレンジオール、それらの末端エチレンオキシド付加化合物等が挙げられる。
ポリオール混合物におけるポリオキシアルキレン系ポリオールの含有量は、セルの連通化を安定させる観点から、20重量%以上、好ましくは25重量%以上であり、ポリウレタンフォームの強度や難燃性を確保する観点から、50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
ポリオール混合物には、ポリオキシアルキレン系ポリオール以外にも、他のポリオール成分を用いることができる。
他のポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、前記ポリオキシアルキレン系ポリオール以外のポリエーテルポリオール(通称、マンニッヒポリオールを含む)、ポリマーポリオール、フェノール樹脂系ポリオール等が挙げられる。
他のポリオール成分のなかでは、加水分解を抑制する観点及びポリウレタンフォームの強度を高める観点から、例えば、水酸基価が200〜800mgKOH/gである、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、ジグリセリン系ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパン系ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、シュガー系ポリエーテルポリオール、シュークロース系ポリエーテルポリオール、デキストロース系ポリエーテルポリオール等が好ましい。
また、ポリウレタンフォームのセルの連通化を促進する観点から、他のポリオール成分として、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリアクリロニトリル微粒子やポリスチレン微粒子が分散したポリマーポリオールも好ましい。
ポリオール混合物におけるポリオキシアルキレン系ポリオールを含むポリオール成分の含有量は、ポリウレタンフォームとしての特性を保持する観点から、20重量%以上、好ましくは25重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であり、水、アミン系触媒、炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸等を配合し、それらの効果を発現させる観点から、ボリオール成分の含有量は、80重量%以下、好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。
水は、発泡剤として用いられる。本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、水とともに、炭化水素、ヒドロクロロフルオロカーボン、水素化フルオロカーボン等を用いてもよいが、環境面等を考慮すれば、水のみを用いることが好ましい。
ポリオール混合物における水の含有量は、低密度化を達成し、連続気泡を有するポリウレタンフォームを形成させる観点から、8〜30重量%、好ましくは8〜20重量%、より好ましくは8〜15重量%である。
触媒としては、水とイソシアネート成分との反応性を高め、ポリオール混合物の相溶化に寄与する観点から、アミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒の例としては、式(I):
(CH)N(CHCHO)-H (I)
(式中、nは1〜4の数を示す)
で表される化合物、式(II):
(CH)N CHCHN(CH)X (II)
(式中XはCHCHYOH基、CHCHN(CH)基又はCHCHN(CH)CHCHYOH基、Yは水素原子又はメチル基を示す)
で表される化合物、及び式(III):
(CH)NCHCHOCHCHN(CH)Z (III)
(式中、Zはメチル基又はCHCHYOH基、Yは前記と同じ)
で表される化合物、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2-メチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-(ジメチルアミノエチル)モルホリン、ジモルホリノジエチルエーテル、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N',N'-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、N,N',N''-トリス(3- ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール、イソプロパノールアミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-メチルアミノエタノール、N,N-ジメチル-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-1,3-プロパンジアミン、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等の第3アミン系触媒及びこれらの誘導体、これらとカルボン酸や炭酸等の酸との塩等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
好適なアミン系触媒の例としては、イソシアネート成分との反応性を格段に高める観点から、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物及び式(III)で表される化合物が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
式(I)〜(III)で表されるアミン系触媒のなかでは、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、2-〔2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エトキシ〕エタノール、N-(2-ジメチルアミノエチル)-N-メチルエタノールアミン、N,N,N’,N”-テトラメチル-N”-イソプロパノール-ジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル及びN-(2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エチル)-N-メチルエタノールアミンが好ましい。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリオール混合物におけるアミン系触媒の含有量は、反応性及び相溶性の観点から、0.5〜10重量%、好ましくは1〜9重量%、より好ましくは1.5〜8重量%である。
炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸は、ポリオール成分と水に対する相溶化剤として作用するものである。該脂肪酸の炭素数は、界面活性機能によりポリオール成分と水に対する相溶性を高める観点から、10〜24、好ましくは10〜20であり、低温での取扱性や相溶性の観点から、不飽和基を含有する脂肪酸がより好ましい。
炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸の好適な例としては、オレイン酸、カプリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、低温での安定性に優れていることから、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びリシノレン酸が好ましく、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリオール混合物における炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸の含有量は、ポリオール成分と水に対する相溶性を高める観点から、1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、ポリウレタンフォームの強度や難燃性を確保する観点から、15重量%以下、好ましくは12重量%以下である。
なお、ポリオール混合物には、必要により、整泡剤、難燃剤、架橋剤等を配合することができる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサン共重合体、
ポリジアルキルシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩、スルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサン共重合体が好ましい。
ポリオール混合物における整泡剤の含有量は、整泡剤の種類、ポリウレタンフォームの特性等によって異なるので一概には決定することができないので、整泡剤の種類等に応じて適宜調整することが好ましい。
難燃剤としては、トリクレジルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(1,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート等のハロゲン系難燃剤が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェートが好ましい。
ポリオール混合物における難燃剤の含有量は、ポリウレタンフォームへの難燃性付与及びポリウレタンフォームとしての特性を保持する観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
架橋剤としては、例えば、水酸基、第1アミノ基、第2アミノ基、その他のイソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を2個以上有する低分子化合物等が挙げられる。好適な架橋剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン等の多価アルコール、ジエチルトルエンジアミン、クロロジアミノベンゼン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、相溶性を更に向上させる観点から、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールが好ましい。
ポリオール混合物における架橋剤の含有量は、ポリウレタンフォームの強度を確保し、ポリオール混合物の相溶化を向上させる観点から、好ましくは0.3〜10重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
また、ポリウレタンフォームを製造する際には、必要により他の助剤を用いることができる。他の助剤としては、一般にポリウレタンフォームの製造の際に使用されているものを用いることができる。助剤としては、例えば、安定剤、顔料、充填剤、減粘剤等が挙げられる。これらの助剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内で用いることができる。
本発明のポリオール混合物は、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むポリオール成分、水、アミン系触媒、炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸、及び必要により、整泡剤、難燃剤、架橋剤、他の助剤等を混合することにより、容易に調製することができる。
得られたポリオール混合物は、透明でかつ均一なものである。なお、本明細書において、「透明」とは、濁りのないことを意味する。また、「均一」とは、層分離していないことを意味する。
したがって、本発明のポリオール混合物は、発泡剤として水を多量に使用した場合であっても、透明でかつ均一であり、現場施工時に、煩雑なポリオール混合物の混合攪拌という工程を削減し、ポリウレタンフォームの生産効率を高めることができるという利点を有する。
このように、本発明のポリオール混合物の優れた効果が発現される理由は、定かではないが、脂肪酸の長鎖脂肪族基とカルボン酸基がポリオールと水への相溶化剤として働き、更には脂肪酸のカルボン酸基とアミン系触媒との塩の形成により相溶性が増していることに基づくものと考えられる。
しかし、脂肪酸として、炭素数10未満の脂肪酸を用いた場合には、ポリオール混合物が相分離し、均一でかつ透明なポリオール混合物を得ることができないため、発泡剤としての水の含有量が変動してポリウレタンフォームに密度斑や異常発泡によるボイド等が発現する。これは、脂肪酸の炭素数が少ないとポリオールへの相溶性が低下するばかりでなく、脂肪酸の酸性度が増し、アミン系触媒と形成した塩の親水性がより強くなるため、ポリオールと水との相溶性のバランスを逸することに由来するものと考えられる。
更に、本発明のポリオール混合物を用いた場合には、イソシアネート成分との反応前に、わざわざ煩雑な混合攪拌という操作を行わなくても、ポリウレタンフォームにボイドが発生したり、セルが乱れたりすることを抑制することができる。このように優れた効果が奏されるのは、ポリオール混合物の組成が均質であるからである。
本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール混合物とイソシアネート成分とを反応させることにより、製造することができる。
イソシアネート成分としては、例えば、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;ウレタン結合、カルボジイミド結合、ウレトイミン結合、アロファネート結合、ウレア結合、ビューレット結合、イソシアヌレート結合等の1種以上を含有する前記ポリイソシアネート変性物等が挙げられる。これらのイソシアネート成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。イソシアネート成分の中では、ポリウレタンフォームへの強度の付与及び耐熱性の向上の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートが好ましい。
ポリオール成分とイソシアネート成分との割合は、通常、イソシアネートインデックスが20〜300、好ましくは30〜110、より好ましくは30〜80となるように調整することが好ましい。
ポリウレタンフォームは、例えば、ポリオール混合物と、イソシアネート成分とを成形機等により、混合、攪拌し、成形型内に注入し、反応させることにより、また、スプレーマシン等により、噴霧し、衝突混合して反応させることにより得ることができる。より具体的には、例えば、ポリオール混合物を20℃程度に調温した後、両者を混合し、ポリオール混合物とイソシアネート成分とを反応させることにより、得ることができる。
かくして、本発明の製造法によれば、ポリオール混合物とイソシアネート成分との均質な混合を実現し、ボイドの発生を抑制した、セルの均質化及び安定化が図られたポリウレタンフォームが得られる。得られたポリウレタンフォームは、例えば、建材、冷凍倉庫、浴槽、配管等の断熱材、戸建住宅、マンションや産業用配管等の結露防止材、製品形状を保持するために出窓やサッシ等の建材部品等の内部に詰められる軽量なコア材等として好適に使用することができる。
また、本発明の製造法は、特にスプレー方式による現場施工タイプの断熱材及び結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際に好適に使用することができる。
実施例1〜6及び比較例1〜4
ポリオール成分として、ポリオキシアルキレン系ポリオール〔水酸基価:56mgKOH/g、ダウケミカル(株)製、商品名:ボラノール3010(グリセリン系ポリオキシプロピレントリオール)〕50重量部及びエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールB〔水酸基価:768mgKOH/g、三井武田ケミカル(株)製、商品名:アクトコールAE−300〕50重量部、整泡剤〔シリコーン系整泡剤、東レダウシリコーン(株)製、品番:SF2938F〕4重量部、難燃剤〔トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、大八化学工業(株)製、品番:TMCPP〕40重量部、発泡剤として水20重量部、表1に示す重量部のアミン系触媒、及び表1に示す重量部の相溶化剤をラボミキサーで混合し、ポリオール混合物を得た。
次に、得られたポリオール混合物の相溶性を以下の方法により調べた。その結果を表1に示す。
(1)相溶性
ポリオール混合物の20℃における相溶性を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(相溶性の評価基準)
○:透明かつ均一であることから、相溶性が良好
△:若干の相分離及び濁りあり
×:相分離が観察され、相溶性が不良
次に、ポリオール混合物と、イソシアネート成分〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:スミジュール44V20〕とを理論上のイソシアネートインデックスが50となるように20℃でラボミキサーを用いて混合、攪拌し、得られた混合物を用いてポリウレタンフォームを製造し、以下の特性を調べた。その結果を表1に示す。
(2)反応性
300mL容のポリカップ内で攪拌された前記混合物20gのフリー発泡におけるクリームタイム(以下、CTという)及びライズタイム(以下、RTという)に到達するまでの時間を測定した。
(3)コア密度
ポリオール混合物とイソシアネート成分の混合、攪拌によって得られた前記混合物120gを成形型〔内寸:150mm×150mm×300mm(高さ)]内に注入し、ポリウレタンフォームのフリーフォームを成形した。
ポリウレタンフォームのフリーフォームを1日間放置した後、そのコア部分から、100mm×100mm×100mmの大きさの試験片を切り出した。該試験片の重量を測定し、式:
〔コア密度〕=〔試験片の重量〕÷〔試験片の体積〕
に基づいてコア密度を求めた。
(4)独立気泡率
ASTM D 2856に規定の方法に基づいて独立気泡率を調べた。
(5)ポリウレタンフォームの内部状態
ポリウレタンフォームのフリーフォームを1日間放置した後、発泡方向に沿って中央部で切断し、その切断面を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:フォーム内部が極めて良好でセルサイズが均一である。
○:フォーム内部が良好でフォーム中央部のセルに若干の乱れがある。
△:フォーム中央部にセル粗れが発生、又は小さいボイドが発生。
×:フォーム内部に大きなボイドが発生。
なお、各実施例及び各比較例で得られたポリウレタンフォームに使用した原料は、以下のとおりである。
(1)アミン系触媒
・KL−26:2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.26〕
・KL−23NP:2−〔2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エトキシ〕エタノール〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.23NP〕
・KL−28:N−(2−ジメチルアミノエチル)−N−メチルエタノールアミン〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.28〕
・KL−3:N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.3〕
・KL−12P:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.12P〕
(2)相溶化剤
〔脂肪酸〕
・ルナックO−A:オレイン酸を主成分とする脂肪酸〔花王(株)製、商品名:ルナックO−A〕
・ルナック10−98:カプリン酸〔花王(株)製、商品名:ルナック10−98〕
・ルナック8−98:オクタン酸〔花王(株)製、商品名:ルナック8−98〕
〔界面活性剤〕
・エマルゲン408:ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル)〔花王(株)製、商品名:エマルゲン408〕
・ペレックスOT−P:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを主成分とするアニオン系界面活性剤〔花王(株)製、商品名:ペレックスOT−P〕
Figure 0004422078
表1に示された結果から、各実施例によれば、密度が20kg/m以下の低密度を有する連通型ポリウレタンフォームを製造する際に、発泡剤として水を多量に使用した場合であっても、ポリオール混合物が均一でかつ透明であることから、現場施工時に、煩雑なポリオール混合物の混合攪拌という工程を低減し、ポリウレタンフォームの生産効率を高めることができる。
また、各実施例によれば、ボイドの発生及びセルの乱れが少ないポリウレタンフォームが得られることがわかる。
本発明のポリウレタンフォームは、建材、冷凍倉庫、浴槽、配管等の断熱材、戸建住宅、マンションや産業用配管等の結露防止材、製品形状を保持するために出窓やサッシ等の建材部品等の内部に詰められる軽量なコア材等として好適に使用しうるものである。また、本発明の製造法は、特にスプレー方式による現場施工タイプの断熱材及び結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 密度が8〜20kg/mであり、独立気泡率が20%以下のポリウレタンフォームを製造するためのポリオール混合物であって、(A)水酸基価25〜120mgKOH/gのポリオキシアルキレン系ポリオール20〜50重量%、(B)水8〜30重量%、(C)アミン系触媒0.5〜10重量%、及び(D)炭素数10〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸1〜15重量%を含有するポリオール混合物。
  2. 脂肪酸がオレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びリシノレン酸からなる群より選ばれた1種以上を含有する請求項1記載のポリオール混合物。
  3. アミン系触媒が、式(I):
    (CH)N(CHCHO)-H (I)
    (式中、nは1〜4の数を示す)
    で表される化合物、式(II):
    (CH)N CHCHN(CH)X (II)
    (式中XはCHCHYOH基、CHCHN(CH)基又はCHCHN(CH)CHCHYOH基、Yは水素原子又はメチル基を示す)
    で表される化合物、及び式(III):
    (CH)NCHCHOCHCHN(CH)Z (III)
    (式中、Zはメチル基又はCHCHYOH基、Yは前記と同じ)
    で表される化合物からなる群より選ばれた1種以上を含有する請求項1又は2記載のポリオール混合物。
  4. 請求項1〜3いずれか記載のポリオール混合物と、イソシアネート成分とを反応させるポリウレタンフォームの製造法。
  5. 請求項4記載の製造法によって得られるポリウレタンフォームからなる断熱材。
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