JP4421218B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウェハーやガラス基板等(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することにより基板を熱処理する熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、イオン注入後の半導体ウェハーのイオン活性化工程においては、ハロゲンランプを使用したランプアニール装置等の熱処理装置が使用されている。このような熱処理装置においては、半導体ウェハーを、例えば、1000℃ないし1100℃程度の温度に加熱(アニール)することにより、半導体ウェハーのイオン活性化を実行している。そして、このような熱処理装置においては、ハロゲンランプより照射される光のエネルギーを利用することにより、毎秒数百度程度の速度で基板を昇温する構成となっている。
【0003】
通常、上記のような熱処理装置では複数のランプを備えるとともに、処理中のウェハー温度を測定してその測定結果に基づいてランプへの出力をフィードバック制御する機構を備える。例えば、複数の白熱ランプを幾つかのゾーンに分割し、それらゾーン毎にランプ電力をフィードバック制御する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、ハロゲンランプにより毎秒数百度程度の速度で半導体ウェハーを昇温する熱処理装置を使用して半導体ウェハーのイオン活性化を実行した場合においても、半導体ウェハーに打ち込まれたイオンのプロファイルがなまる、すなわち、熱によりイオンが拡散してしまうという現象が生ずることが判明した。このような現象が発生した場合においては、半導体ウェハーの表面にイオンを高濃度で注入しても、注入後のイオンが拡散してしまうことから、イオンを必要以上に注入しなければならないという問題が生じていた。
【0005】
上述したイオン拡散の問題を解決するため、キセノンフラッシュランプ等を使用して半導体ウェハーの表面に閃光を照射することにより、イオンが注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリセカンド以下)に昇温させる技術が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、イオンが拡散するための十分な時間がないため、半導体ウェハーに打ち込まれたイオンのプロファイルをなまらせることなく、イオン活性化のみを実行することができるのである。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−244212号公報
【特許文献2】
特開昭59−169125号公報
【特許文献3】
特開昭63−166219号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
キセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置においても、複数のフラッシュランプが設けられている。それら複数のフラッシュランプには製造誤差、回路特性誤差、経時変化等に起因した個体間のバラツキが存在する。このような個体間のバラツキにより、照射強度が不均一となる場合があり、各フラッシュランプの出力を調整する必要がある。しかしながら、照射時間が極めて短いフラッシュランプの場合、半導体ウェハーの温度測定結果に基づくランプ出力のフィードバック制御は不可能である。このため、実際に熱処理を行った半導体ウェハーの特性を測定し、それに基づいて各フラッシュランプの出力を調整しなければならない。
【0008】
ところが、フラッシュランプの電源回路に変更を加えて各フラッシュランプごとにランプ両端電圧を調整することは非常なコスト高となって現実的ではなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ランプの照射強度を安価かつ容易に調整することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、複数のランプを有する光源と、前記光源の下方に設けられたチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を略水平姿勢にて保持する保持手段と、前記複数のランプに1対1で対応して設けられ、それぞれが対応するランプに電力を供給するための複数の配線と、前記複数の配線の少なくとも1本に対して着脱自在に周設され、該配線を流れる電流を調整する磁性体リングと、を備える。
【0012】
また、請求項の発明は、基板に対して閃光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、複数のフラッシュランプを有する光源と、前記光源の下方に設けられたチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を略水平姿勢にて保持する保持手段と、前記複数のフラッシュランプに1対1で対応して設けられ、それぞれが対応するフラッシュランプに電力を供給するための複数の配線と、前記複数の配線の少なくとも1本に対して着脱自在に周設された磁性体リングと、を備える。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項1または請求項2の発明にかかる熱処理装置において、前記磁性体リングにはフェライトコアが内蔵されている
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1および図2は本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。この熱処理装置は、キセノンフラッシュランプからの閃光によって半導体ウェハー等の基板の熱処理を行う装置である。
【0016】
この熱処理装置は、透光板61、底板62および一対の側板63、64からなり、その内部に半導体ウェハーWを収納して熱処理するためのチャンバー65を備える。チャンバー65の上部を構成する透光板61は、例えば、石英等の赤外線透過性を有する材料から構成されており、光源5から出射された光を透過してチャンバー65内に導くチャンバー窓として機能している。また、チャンバー65の本体部を構成する底板62および側板63、64は、例えばステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて構成されている。
【0017】
また、底板62には、後述する熱拡散板73および加熱プレート74を貫通して半導体ウェハーWをその下面から支持するための支持ピン70が立設されている。さらに、側板64には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための開口部66が形成されている。開口部66は、軸67を中心に回動するゲートバルブ68により開閉可能となっている。半導体ウェハーWは、開口部66が開放された状態で、図示しない搬送ロボットによりチャンバー65内に搬入される。また、チャンバー65内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われるときには、ゲートバルブ68により開口部66が閉鎖される。
【0018】
チャンバー65は光源5の下方に設けられている。光源5は、複数(本実施形態においては29本)のキセノンフラッシュランプ69(以下、単に「フラッシュランプ69」とも称する)と、リフレクタ71とを備える。複数のフラッシュランプ69は、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿うようにして互いに平行に平面状に配列されている。リフレクタ71は、複数のフラッシュランプ69の上方にそれらの全体を覆うように配設されている。
【0019】
このキセノンフラッシュランプ69は、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設されたガラス管と、該ガラス管の外局部に巻回されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。このキセノンフラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
【0020】
光源5と透光板61との間には、光拡散板72が配設されている。この光拡散板72は、赤外線透過材料としての石英ガラスの表面に光拡散加工を施したものが使用される。
【0021】
フラッシュランプ69から放射された光の一部は直接に光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。また、フラッシュランプ69から放射された光の他の一部は一旦リフレクタ71によって反射されてから光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。
【0022】
チャンバー65内には、加熱プレート74と熱拡散板73とが設けられている。熱拡散板73は加熱プレート74の上面に貼着されている。また、熱拡散板73の表面には、半導体ウェハーWの位置ずれ防止ピン75が付設されている。
【0023】
加熱プレート74は、半導体ウェハーWを予備加熱(アシスト加熱)するためのものである。この加熱プレート74は、窒化アルミニウムにて構成され、その内部にヒータと該ヒータを制御するためのセンサとを収納した構成を有する。一方、熱拡散板73は、加熱プレート74からの熱エネルギーを拡散して半導体ウェハーWを均一に予備加熱するためのものである。この熱拡散板73の材質としては、サファイア(Al23:酸化アルミニウム)や石英等の比較的熱伝導率が小さいものが採用される。または、加熱プレート74と同様に窒化アルミニウムにて構成しても良い。
【0024】
熱拡散板73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降する構成となっている。
【0025】
すなわち、加熱プレート74は、筒状体41を介して移動板42に連結されている。この移動板42は、チャンバー65の底板62に釣支されたガイド部材43により案内されて昇降可能となっている。また、ガイド部材43の下端部には、固定板44が固定されており、この固定板44の中央部にはボールネジ45を回転駆動するモータ40が配設されている。そして、このボールネジ45は、移動板42と連結部材46、47を介して連結されたナット48と螺合している。このため、熱拡散板73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降することができる。
【0026】
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置は、図示しない搬送ロボットを使用して開口部66から搬入した半導体ウェハーWを支持ピン70上に載置し、あるいは、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWを開口部66から搬出することができるように、熱拡散板73および加熱プレート74が下降した位置である。この状態においては、支持ピン70の上端は、熱拡散板73および加熱プレート74に形成された貫通孔を通過し、熱拡散板73の表面より上方に突出する。
【0027】
一方、図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置は、半導体ウェハーWに対して熱処理を行うために、熱拡散板73および加熱プレート74が支持ピン70の上端より上方に上昇した位置である。熱拡散板73および加熱プレート74が図1の搬入・搬出位置から図2の熱処理位置に上昇する過程において、支持ピン70に載置された半導体ウェハーWは熱拡散板73によって受け取られ、その下面を熱拡散板73の表面に支持されて上昇し、チャンバー65内の透光板61に近接した位置に水平姿勢にて保持される。逆に、熱拡散板73および加熱プレート74が熱処理位置から搬入・搬出位置に下降する過程においては、熱拡散板73に支持された半導体ウェハーWは支持ピン70に受け渡される。
【0028】
半導体ウェハーWを支持する熱拡散板73および加熱プレート74が熱処理位置に上昇した状態においては、それらに保持された半導体ウェハーWと光源5との間に透光板61が位置することとなる。なお、このときの熱拡散板73と光源5との間の距離についてはモータ40の回転量を制御することにより任意の値に調整することが可能である。
【0029】
また、チャンバー65のチャンバー壁面に沿ってライナー20が嵌合されている。ライナー20はチャンバー65に対して固定はされておらず、着脱自在とされている。ライナー20は、例えば石英にて構成されており、側板63、64および底板62の内壁面を覆うように有底筒形状に形成されている。なお、ライナー20は、筒部と底部とに分離可能な分割体としても良いし、一体成型するようにしても良い。
【0030】
また、加熱プレート74、熱拡散板73およびそれらを支える筒状体41の周囲には、熱拡散板73の上面を除いてヒーターリフレクタ30が周設されている。ヒーターリフレクタ30も石英製の部材である。ヒーターリフレクタ30は、加熱プレート74からの熱エネルギーが熱拡散板73以外に伝導するのを防ぐ。
【0031】
また、チャンバー65の底板62と移動板42との間には筒状体41の周囲を取り囲むようにしてチャンバー65を気密状体に維持するための伸縮自在の蛇腹77が配設されている。熱拡散板73および加熱プレート74が熱処理位置まで上昇したときには蛇腹77が収縮し、熱拡散板73および加熱プレート74が搬入・搬出位置まで下降したときには蛇腹77が伸長してチャンバー65内の雰囲気と外部雰囲気とを遮断する。
【0032】
チャンバー65における開口部66と反対側の側板63には、開閉弁80に連通接続された導入路78が形成されている。この導入路78は、チャンバー65内に処理に必要なガス、例えば不活性な窒素ガスを導入するためのものである。一方、側板64における開口部66には、開閉弁81に連通接続された排出路79が形成されている。この排出路79は、チャンバー65内の気体を排出するためのものであり、開閉弁81を介して図示しない排気手段と接続されている。
【0033】
また、熱処理装置には、各フラッシュランプ69に電力を供給するための電源回路が設けられている。図3は、フラッシュランプ69に電力を供給するための電源回路を示す図である。チャージスイッチ51をON状態にすると、コンデンサー52に蓄電される。そして、コンデンサー52に蓄電された電荷量にしたがってフラッシュランプ69の両端電極に電圧が印加される。但し、フラッシュランプ69の内部に封入されているキセノンガスは絶縁体であるため、両端電極に高電圧が印加されたとしてもガラス管55内に電流は流れない。
【0034】
フラッシュランプ69の両端電極に高電圧が印加された状態において、トリガースイッチ53をON状態にしてトリガー電極54に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサー52に蓄えられた電荷がガラス管55内に瞬時に流れ、そのときのジュール熱でキセノンガスが加熱されて光が放出される。このときに流れる電流の波形は、コイル56のインダクタンスによって概ね定まる。この電源回路はフラッシュランプ69の個々に設置されているが、トリガースイッチ53は複数の電源回路に共通としても良い。
【0035】
本実施形態では、さらにフラッシュランプ69に電力を供給するための配線57に磁性体リング58を取り付けている。図4は、配線57に磁性体リング58を取り付けた状態を示す斜視図である。また、図5は、磁性体リング58の断面図である。磁性体リング58は、半円弧形状の第1部材58aと第2部材58bとを開閉自在に蝶着して構成されている。第1部材58aおよび第2部材58bは、例えばプラスチックにて構成されている。磁性体リング58における蝶着部位の反対側には、係止部材59a,59bが設けられている。係止部材59aは第1部材58aに固設され、係止部材59bは第2部材58bに固設されている。
【0036】
第1部材58aにはその形状に沿って半円弧形状のフェライトコア60aが内蔵されている。同様に、第2部材58bにもその形状に沿って半円弧形状のフェライトコア60bが内蔵されている。フェライトコア60a,60bは強磁性体である。
【0037】
第1部材58aと第2部材58bとを閉じて係止部材59a,59bの双方を係止させることにより、第1部材58aおよび第2部材58bが閉じた状態に固定され、円環形状の磁性体リング58となる(図5(a)の状態)。一方、係止部材59a,59bの係止状態を解除するだけで、容易に第1部材58aおよび第2部材58bが開いた状態にすることができる(図5(b)の状態)。従って、第1部材58aと第2部材58bとの間に配線57を挟み込んで双方を閉じ、係止部材59a,59bを係止させるだけで磁性体リング58は配線57に周設することができる。また、その状態から係止部材59a,59bの係止状態を解除するだけで、容易に磁性体リング58を配線57から取り外すことができる。すなわち、磁性体リング58は配線57に対して着脱自在に周設されるものであり、作業者は容易にフラッシュランプ69に電力を供給するための配線57に対して磁性体リング58を取り付けたり取り外したりすることができる。なお、配線57は29本のフラッシュランプ69に1対1で対応して設けられているものであり、29本の配線57のそれぞれについて磁性体リング58を着脱することができる。
【0038】
次に、上記構成を有する熱処理装置による半導体ウェハーWの熱処理動作について説明する。この熱処理装置において処理対象となる半導体ウェハーWは、イオン注入後の半導体ウェハーである。
【0039】
この熱処理装置においては、熱拡散板73および加熱プレート74が図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置に配置された状態にて、図示しない搬送ロボットにより開口部66を介して半導体ウェハーWが搬入され、支持ピン70上に載置される。半導体ウェハーWの搬入が完了すれば、開口部66がゲートバルブ68により閉鎖される。しかる後、熱拡散板73および加熱プレート74がモータ40の駆動により図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇し、半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持する。また、開閉弁80および開閉弁81を開いてチャンバー65内に窒素ガスの気流を形成する。
【0040】
熱拡散板73および加熱プレート74は、加熱プレート74に内蔵されたヒータの作用により予め所定温度に加熱されている。このため、熱拡散板73および加熱プレート74が半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇した状態においては、半導体ウェハーWが加熱状態にある熱拡散板73と接触することにより予備加熱され、半導体ウェハーWの温度が次第に上昇する。
【0041】
この状態においては、半導体ウェハーWは熱拡散板73により継続して加熱される。そして、半導体ウェハーWの温度上昇時には、図示しない温度センサにより、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達したか否かを常に監視する。
【0042】
なお、この予備加熱温度T1は、例えば200℃ないし600℃程度、好ましくは350℃〜550℃程度の温度である。半導体ウェハーWをこの程度の予備加熱温度T1まで加熱したとしても、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散してしまうことはない。
【0043】
やがて、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達すると、フラッシュランプ69を点灯してフラッシュ加熱を行う。このフラッシュ加熱工程におけるフラッシュランプ69の点灯時間は、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の時間である。このように、フラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーがこのように極めて短い光パルスに変換されることから、極めて強い閃光が照射されることになる。
【0044】
このようなフラッシュ加熱により、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に温度T2に到達する。この温度T2は、1000℃ないし1100℃程度の半導体ウェハーWのイオン活性化処理に必要な温度である。半導体ウェハーWの表面がこのような処理温度T2にまで昇温されることにより、半導体ウェハーW中に打ち込まれたイオンが活性化される。
【0045】
このとき、半導体ウェハーWの表面温度が0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の極めて短い時間で処理温度T2まで昇温されることから、半導体ウェハーW中のイオン活性化は短時間で完了する。従って、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散することはなく、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンのプロファイルがなまるという現象の発生を防止することが可能となる。なお、イオン活性化に必要な時間はイオンの拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であってもイオン活性化は完了する。
【0046】
また、フラッシュランプ69を点灯して半導体ウェハーWを加熱する前に、加熱プレート74を使用して半導体ウェハーWの表面温度を200℃ないし600℃程度の予備加熱温度T1まで加熱していることから、フラッシュランプ69により半導体ウェハーWを1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで速やかに昇温させることが可能となる。
【0047】
フラッシュ加熱工程が終了した後に、熱拡散板73および加熱プレート74がモータ40の駆動により図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置まで下降するとともに、ゲートバルブ68により閉鎖されていた開口部66が開放される。そして、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWが図示しない搬送ロボットにより搬出される。以上のようにして、一連の熱処理動作が完了する。
【0048】
ところで、本実施形態においては光源5に29本のキセノンフラッシュランプ69を設けているが、既述したように、これらの間には製造誤差、電源回路の特性誤差や経時変化等に起因した個体間のバラツキが存在する。そして、このような個体間のバラツキが存在すると照射強度の分布が不均一となり、その結果処理後の半導体ウェハーWの特性にも面内の不均一性が生じることとなる。例えば、あるフラッシュランプ69の照射強度のみが他に比べて強いと、その直下に位置する半導体ウェハーWの部位の温度のみが高くなり、処理後の半導体ウェハーWの特性に面内不均一性が生じることとなるのである。なお、フラッシュランプ69を使用した装置においては、照射時間が極めて短いため処理中のリアルタイムな半導体ウェハーWの測温は不可能であり、処理後の半導体ウェハーWのシート抵抗値等を測定することによって初めてフラッシュランプ69の個体間のバラツキが判明する。
【0049】
上記のように、あるフラッシュランプ69の照射強度のみが他に比べて強い場合、作業者はそのフラッシュランプ69に電力を供給するための配線57に磁性体リング58を装着する。この作業は第1部材58aと第2部材58bとの間に配線57を挟み込んで、係止部材59a,59bを係止させるだけの極めて簡単なものであり、これにより図4に示した如く配線57に磁性体リング58が周設されることとなる。
【0050】
フラッシュランプ69を点灯してフラッシュ加熱を行うときには、例えば配線57に約1m秒の間に約4000Aという大電流が流れることとなる。これほどの大電流が流れると配線57の周囲にはアンペールの法則に従って強力な磁場が発生する。その結果、配線57に周設された磁性体リング58(正確には、磁性体リング58に内蔵された強磁性体であるフェライトコア60a,60b)が瞬間的に磁化される。
【0051】
磁性体リング58が瞬間的に磁化されると、電磁誘導作用によって配線57に誘導起電力が生じる。このときに生じる誘導起電力は、磁性体リング58に生じた磁束変化を妨げる方向に誘導電流を流すような向きに発生するものである(レンツの法則)。つまり、コンデンサー52からフラッシュランプ69に流れる電流とは逆向きの誘導電流を流すように誘導起電力が発生するのである。その結果、コンデンサー52からフラッシュランプ69に流れる電流の波形が若干なだらかにシフトするように変化する。
【0052】
図6は、磁性体リング58によるフラッシュランプ69に流れる電流の波形変化を示す図である。同図において、横軸はフラッシュランプ69内の絶縁が破壊された瞬間からの経過時間であり、縦軸はフラッシュランプ69内に流れる電流量である。配線57に磁性体リング58を周設しない通常の状態での電流波形は実線に示すようなものである。そして、配線57に磁性体リング58を周設した場合には、磁性体リング58が磁化されることによる誘導起電力によって図6の点線に示すような電流波形に変化する。つまり、瞬間的に流れる電流が若干低減されるのである。その結果、他に比較して照射強度が強かったフラッシュランプ69に瞬間的に流れる電流が若干低減され、その照射強度が僅かに弱くなり、光源5全体としての照度分布が均一となる。これにより、フラッシュ加熱時の半導体ウェハーWの面内温度分布が均一となり、処理後の特性の面内分布も均一となるのである。
【0053】
以上のように、本実施形態では着脱自在の磁性体リング58を配線57に取り付けるだけの簡単な作業によってフラッシュランプ69の照射強度を調整している。これに要するコストはフラッシュランプ69の電源回路を調整する場合に比較して極めて安価であり、また要する時間も極めて短い。すなわち、本実施形態のようにすれば、作業者が極めて容易かつ安価にフラッシュランプ69の照射強度を調整することができるのである。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては光源5に29本のフラッシュランプ69を備えるようにしていたが、これに限定されずフラッシュランプ69の本数は任意のものとすることができる。
【0055】
また、上記実施形態においては、他に比較して照射強度が強いフラッシュランプ69の照射強度を弱める場合について説明したが、他に比較して照射強度が弱いフラッシュランプ69の照射強度を強めることも可能である。このような場合に備えて、予め29本のフラッシュランプ69に電力を供給する29本の配線57の全てに1個の磁性体リング58を取り付けておく。そして、あるフラッシュランプ69の照射強度のみが他に比べて弱い場合、作業者はそのフラッシュランプ69に電力を供給するための配線57から磁性体リング58を取り外す。すると、上述したのとは逆の作用によってフラッシュランプ69に流れる電流が若干多くなり、そのフラッシュランプ69の照射強度が少し強くなるのである。なお、フラッシュランプ69の照射強度を弱めたい場合には配線57に磁性体リング58を追加して取り付けるようにすれば良い。
【0056】
また、フラッシュランプ69の個体間バラツキの程度に応じて、1本の配線57に複数の磁性体リング58を取り付けるようにしても良いし、複数の配線57に磁性体リング58を取り付けるようにしても良い。また、全ての配線57に予め同数の複数の磁性体リング58を取り付けておいて、フラッシュランプ69の個体間バラツキの程度に応じて、各配線57から磁性体リング58を増減するようにしても良い。いずれの調整作業であっても、配線57に対する磁性体リング58の着脱は極めて容易であるため、容易かつ安価にフラッシュランプ69の照射強度を調整することができる。なお、1個の磁性体リング58によって調整できる照射強度の変化は小さなものであるが、そもそも経時変化等に起因したフラッシュランプ69の個体間のバラツキが僅かなものであるため、そのような簡易な調整であっても十分である。
【0057】
また、光源5にフラッシュランプ69に代えて他の種類のランプ(例えばハロゲンランプ)を備え、当該ランプからの光照射によって半導体ウェハーWの加熱を行う熱処理装置であっても本発明に係る技術を適用することができる。この場合であっても、交流特性を有する電流をランプに流すことによって発光させるのであれば、上記実施形態と同様に、磁性体リング58を配線に着脱することによって容易かつ安価にランプの照射強度を調整することができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、半導体ウェハーに光を照射してイオン活性化処理を行うようにしていたが、本発明にかかる熱処理装置による処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではない。例えば、窒化シリコン膜や多結晶シリコン膜等の種々のシリコン膜が形成されたガラス基板に対して本発明にかかる熱処理装置による処理を行っても良い。一例として、CVD法によりガラス基板上に形成した多結晶シリコン膜にシリコンをイオン注入して非晶質化した非晶質シリコン膜を形成し、さらにその上に反射防止膜となる酸化シリコン膜を形成する。この状態で、本発明にかかる熱処理装置により非晶質のシリコン膜の全面に光照射を行い、非晶質のシリコン膜が多結晶化した多結晶シリコン膜を形成することもできる。
【0059】
また、ガラス基板上に下地酸化シリコン膜、アモルファスシリコンを結晶化したポリシリコン膜を形成し、そのポリシリコン膜にリンやボロン等の不純物をドーピングした構造のTFT基板に対して本発明にかかる熱処理装置により光照射を行い、ドーピング工程で打ち込まれた不純物の活性化を行うこともできる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ランプに電力を供給するための配線の少なくとも1本に対して、該配線を流れる電流を調整する磁性体リングを着脱自在に周設しているため、ランプの照射強度を安価かつ容易に調整することができる。
【0062】
また、請求項の発明によれば、フラッシュランプに電力を供給するための配線の少なくとも1本に対して磁性体リングを着脱自在に周設しているため、フラッシュランプの照射強度を安価かつ容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。
【図2】本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。
【図3】フラッシュランプに電力を供給するための電源回路を示す図である。
【図4】配線に磁性体リングを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】磁性体リングの断面図である。
【図6】磁性体リングによるフラッシュランプに流れる電流の波形変化を示す図である。
【符号の説明】
5 光源
51 チャージスイッチ
52 コンデンサー
53 トリガースイッチ
54 トリガー電極
55 ガラス管
56 コイル
57 配線
58 磁性体リング
60a,60b フェライトコア
61 透光板
63,64 側板
65 チャンバー
69 フラッシュランプ
71 リフレクタ
72 光拡散板
73 熱拡散板
74 加熱プレート
W 半導体ウェハー

Claims (3)

  1. 基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    複数のランプを有する光源と、
    前記光源の下方に設けられたチャンバーと、
    前記チャンバー内にて基板を略水平姿勢にて保持する保持手段と、
    前記複数のランプに1対1で対応して設けられ、それぞれが対応するランプに電力を供給するための複数の配線と、
    前記複数の配線の少なくとも1本に対して着脱自在に周設され、該配線を流れる電流を調整する磁性体リングと、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  2. 基板に対して閃光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    複数のフラッシュランプを有する光源と、
    前記光源の下方に設けられたチャンバーと、
    前記チャンバー内にて基板を略水平姿勢にて保持する保持手段と、
    前記複数のフラッシュランプに1対1で対応して設けられ、それぞれが対応するフラッシュランプに電力を供給するための複数の配線と、
    前記複数の配線の少なくとも1本に対して着脱自在に周設された磁性体リングと、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、
    前記磁性体リングにはフェライトコアが内蔵されていることを特徴とする熱処理装置。
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