JP4420586B2 - 平面磁気素子およびスイッチング電源 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、長方形の平面磁気素子およびそれを利用したスイッチング電源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器やノート型パソコン等のような、電池で駆動する小型電子機器の利用が進んでいる。
かような電子機器に対しては、従来から、より一層の小型・軽量化が望まれており、最近ではこれらに加えて、マルチメディア化への対応、すなわち通信機能や表示機能の充実、あるいは画像データを含んだ大量情報の高速処理などの高機能化が求められている。
【0003】
これに伴い、電池からの単一電圧を、CPUやLCDモジュール、通信用パワーアンプなど様々な搭載デバイスがそれぞれ必要とする電圧レベルに的確に変換できる小型電源の需要が増加してきた。
そこで、電子機器の小型・軽量化と高機能化を両立させるために、電源に搭載されるトランスやインダクタ等の磁気素子と併せた電源の小型・軽量化を進めることが重要な課題となっている。
【0004】
このような状況下で、磁気素子の小型・軽量化を図るために、シリコン基板上に、金属磁性膜層/絶縁層/平面コイル層/絶縁層/金属磁性膜層で構成された平面インダクタ(例えば、日本応用磁気学会誌 20 (1996) 922、特開平4−363006号公報)が提案されている。
しかしながら、上記の平面インダクタには、製造コストと特性の両面から問題が残っていた。
すなわち、まずコストの面について述べると、上記の平面インダクタは、6〜7μm 厚程度の金属磁性膜をスパッタ法などで成膜する必要があり、また金属磁性膜と平面コイルの間に絶縁層を形成する必要があるため、従来の磁気素子に比べて、コストアップが避けられなかった。
【0005】
また、特性上の問題については次のとおりである。
すなわち、平面インダクタは、MHz 帯域の高周波で駆動されるため、電気的に導体である金属磁性膜内部での渦電流の発生により鉄損が増大する。また、上下金属磁性層がわずかな非磁性空間を介して対峙しているため、垂直交番磁束が平面コイルに鎖交し、コイル内に渦電流が発生することによって損失の増大を招いていた。
前者の問題に対しては、金属磁性膜と同一の平面に高抵抗領域を形成して渦電流を細分化すること(特開平6−77055 号)、一方後者の問題に対しては、平面コイル導体を複数に分割した導体ラインとすること(特開平9−134820号)により、それぞれ損失の改善が試みられたが、これらの方法では、十分な改善効果を得ることができなかった。
【0006】
上記の問題を解決するために、金属磁性膜の代わりに印刷法やシート法で形成したフェライト磁性膜を用いた平面型磁気素子が提案された(特開平11−26239号公報)。
この技術は、フェライト粉にバインダを混ぜた磁性ペーストを、シリコン基板上に印刷、焼成することによって高抵抗のフェライト磁性膜を形成し、ついでこの膜上にコイルパターンをめっき法などで形成したのち、さらにその上に同様にしてフェライト磁性膜を形成して磁気素子とするものである。
このような構成とすることにより、磁気素子の薄型化に成功し、さらに高周波領域における損失の低減も達成された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特開平11−26239 号公報に開示の技術でも、以下に述べるような問題があった。
すなわち、平面磁気素子を表面実装部品として使用する場合、平面磁気素子の形状を長方形にして、その短辺側に外部電極を付けた形で使用することが考えられる。このような平面磁気素子の使用形態において、平面コイルとして、通常の矩形のコイルを配した場合、コイル幅は短辺長さで決まってしまうため、平面磁気素子の長手方向にはコイルが配置されていないデッドスペースが発生する。
【0008】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、上記のデッドスペースを有効に活用することにより、コイル直流抵抗の有利な低減を達成した平面磁気素子を、それを利用したスイッチング電源と共に提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
さて、長方形の平面磁気素子の長手方向の両サイドにデットスペースがあるということは、その分、平面磁気素子の短辺に平行な平面コイルのコイル線幅を大きくする余裕があるということである。
そこで、発明者らは、上記のデットスペースを利用して、平面磁気素子の短辺に平行なコイル線の幅を大きくしたところ、従来に比べてコイル直流抵抗を大幅に低減することができることの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.下部フェライト磁性層の面上に、平面コイルを有し、該平面コイルのコイル線間の空隙も含めてその上に上部フェライト磁性層をそなえ、全体が長方形になる平面磁気素子において、該平面磁気素子の短辺に平行な平面コイルのコイル線の幅を、長辺に平行なコイル線の幅よりも広くしたことを特徴とする平面磁気素子。
【0011】
2.上記1において、平面磁気素子の長辺長さをa、中窓の長辺長さをf、長辺に平行なコイル線の幅をd、コイル線間隔をs、コイルのターン数をnとする時、短辺に平行なコイル線の幅eが、次式
d<e≦(a−f+s)/2 n
の関係を満足することを特徴とする平面磁気素子。
【0012】
上記2の発明は、平面磁気素子の短辺に平行な平面コイルのコイル線幅の好適範囲を規定したものである。
すなわち、短辺に平行なコイル線の幅をスペースの許す限り広くする構造にすると、その分コイル全体の抵抗を下げることができる。しかしながら、コイル線の幅があまりに広くなる、換言するとコイル線とコイル線の間隔があまりに狭くなると、上下部のフェライト磁性層を渡る磁束がコイルを横切ってしまい、うず電流損失の増大を招く。
そこで、発明者らは、短辺に平行なコイル線幅の適切な範囲について検討したところ、図1に示すように、平面磁気素子の長辺長さをa、短辺長さをc(c<a)、中窓の長辺長さをf、短辺長さをb(f≧b)、長辺に平行なコイル線の幅をd、コイル線とコイル線の間隔をs、コイルのターン数をnとする時、短辺に平行なコイル線の幅eが、次式
d<e≦(a−f+s)/2 n
の関係を満足する場合にとりわけ良好な結果が得られることが解明されたのである。
【0013】
3.上記1または2に記載の平面磁気素子を搭載したことを特徴とするスイッチング電源。
上記3の発明は、上記1または2に記載の平面磁気素子を搭載したスイッチング電源であり、このような平面磁気素子を利用することによって、スイッチング電源の小型・軽量化はいうまでもなく、そのエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明におけるフェライト磁性層としては、スピネル構造を有するものが好適であり、とりわけ以下に示す組成になるNiZn系フェライトが好適である。
なお、下記の組成は、磁気素子全体を平均した場合の値であり、下部フェライト磁性層、上部フェライト磁性層およびコイル線間に充填するフェライトなど、場所に応じてその組成を適宜変更することができる。
【0015】
Fe203 :40〜50 mol%
Fe203 が40 mol%に満たないとフェライトの透磁率低下に伴うインダクタンスの劣化が大きい。逆に50 mol%を超えるとFe2+イオンの存在により電気抵抗が急激に低下して、高周波領域で使用する場合に渦電流の発生によりフェライトコアの損失が急増する。従って Fe203は40〜50 mol%程度とすることが好ましい。
【0016】
NiO:15〜50 mol%
NiOが15 mol%に満たないと実用上必要なキュリー温度を得ることができず、逆に50 mol%を超えると異相が析出し、磁気特性が低下するので、NiOは15〜50 mol%程度とすることが好ましい。
【0017】
ZnO:15〜35mol %
ZnOは、インダクタンスとキュリー温度に大きな影響を与える。キュリー温度は磁気素子の耐熱性を決定づける重要なパラメータである。ZnOが15 mol%に満たないとキュリー温度は高いもののインダクタンスが低下し、一方35 mol%を超えるとインダクタンスは高いものの、キュリー温度が低下する。従って、ZnOは15〜35 mol%程度とすることが好ましい。
【0018】
CuO:0〜20 mol%
CuOは、焼成温度を低減するのに有用な成分である。しかしながら、20 mol%を超えると、焼成温度は低下するもののインダクタンスの劣化を招くので、含有させる場合にはCuOは 20mol%以下とすることが好ましい。
【0019】
Bi203 :0〜10 mol%
Bi203 は、CuOと同じく、焼成温度を低下する効果がある。しかしながら、10 mol%を超えると焼成温度は低下するものの、インダクタンスが劣化するため、含有させる場合には10 mol%以下で含有させることが好ましい。
【0020】
MnO:0〜20 mol%、MgO:0〜20 mol%
MnOおよびMgOはいずれも、インダクタンスを増加する効果のある成分であるが、20 mol%を超えると飽和磁化の低下を招くので、含有させる場合には20 mol%以下で含有させることが好ましい。
【0021】
以上、好適フェライトとして、NiZn系フェライトについて主に説明したが、これ以外のフェライトであってもNiZn系フェライトと同等の特性を持つものであれば、いずれもが使用できるのはいうまでもない。
【0022】
本発明の平面磁気素子において、平面コイルの形状としては、図1に示したような、矩形スパイラルが好適である。
なお、かような矩形スパイラルコイルにおいて、その最外周のコイル端子の形状を、図2(a) に示すように、大きめの三角形にして、背面側の外部電極との接続面積を大きくすることは、外部電極との接続を容易ならしめる点で、より有利である。また、コイル形状は必ずしも矩形とする必要はなく、図2(b) に示すように、楕円渦巻き形状として、その短辺側コイルに相当する部分のコイル線の幅を、長辺側に相当する部分のコイル線の幅よりも広くするようにしても良い。
【0023】
また、平面コイルの材質としては、比抵抗の小さい導体材料を用いることが好ましく、かような材料としては、Ag (1.47×10-8Ω・m)、Cu (1.55×10-8Ω・m)が挙げられる。なお、AgはCuに比べて高価であるため、平面磁気素子のコイルとしてはCu導体からなる平面コイルがより好適である。
【0024】
次に、本発明の平面磁気素子の好適製造方法について説明する。
まず初めに、下部フェライト磁性層を形成するが、これはシリコンやアルミナなどの基板上にスクリーン印刷法のような厚膜形成法を用いて、フェライト磁性粉を含んだペーストを塗布したのち、 800〜1000 ℃程度で焼成することによってフェライト磁性層を形成しても良いし、あるいは別途製造しておいた薄手のフェライト焼結板をそのまま用いても良い。このような焼結板の好適厚みは 0.2〜0.6 mm程度である。
【0025】
ついで、必要に応じて、数μm 厚程度の樹脂コート(ポリイミド等)を施して表面を平滑化したのち、この上にコイル形成の下地層として無電解めっきによりCu膜を 0.5μm 厚程度に成膜する。ついで、この下地めっき層の上にフォトレジストを塗布したのち、フォトエッチングにより所望のコイル形状のレジストフレームを形成する。引き続き、電気めっきにより、レジストフレーム内にCuを析出させたのち、レジストを剥離し、ついで化学エッチングによりコイル線間の下地めっき層を除去して、平面コイルを下部フェライト磁性層の上に形成する。この時、コイル端子も併せて形成することが好ましい。
【0026】
その後、コイル線間を含めて平面コイルの上に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの樹脂とフェライト粉末を混ぜた樹脂ペーストを印刷法にて塗布した後、熱硬化処理を施して、上部フェライト磁性層を形成する。
この上部フェライト磁性層の形成に際し、樹脂ペーストの硬化処理温度は 150〜400 ℃程度とすることが好ましい。
【0027】
また、下部フェライト磁性層を基板上に形成する場合、基板材料としては、シリコンが低コストで好適であるが、アルミナやフェライト磁性基板を用いても良い。フェライト磁性基板を用いる場合は、前記下部フェライト工程が不要となる。また、シリコンやアルミナ基板を用いてこの上に下部フェライトから形成する場合において,最後に基板から素子部を剥がすか、基板を削り落として基板フリーの平面磁気素子としても良い。この場合、さらなる薄型化を達成できる。
【0028】
さらに、本発明では、上記の平面磁気素子を搭載することによって、スイッチング電源を作製することができる。ここに上記した平面磁気素子は、小型かつ軽量なだけでなく、コイル直流抵抗を大幅に低減することができるので、かような平面磁気素子を使用することにより、スイッチング電源の小型・軽量化と共に、エネルギー効率の大幅な向上を達成することができる。
【0029】
なお、かような長方形の平面磁気素子を、スイッチング電源本体と接続する場合、外部電極を介して接続することになるが、例えば図3(a) に示すように、平面磁気素子の背面側の最外周のコイル端子部分および中央部の中窓部のコイル端子部分のみに外部電極を設けた場合、実際に平面磁気素子を取り付ける際には左右いずれの端部に外部電極が設けられているか分からないという不都合が生じる。
しかしながら、この点に関しては、図3(b) に示すように、中窓部のコイル端子部分について、最外周のコイル端子部分の反対側の端部領域まで電極面積を増大させることにより、かような不都合は解消することができる。
【0030】
【実施例】
シリコン基板上に、 Fe203/ZnO/CuO/NiO=49/23/12/16(mol%) の組成になるフェライト磁性粉を含んだペーストを、スクリーン印刷法にて、長辺:4mm、短辺:3mmの下部フェライト層として成膜し、引き続き大気中にて 950℃で焼成した。焼成後の膜厚は40μm であった。次に、このフェライト磁性層上に、ポリイミド樹脂をスピンコートにより塗布したのち熱硬化させて、3μm 厚の平滑層を形成した。引き続き、この上に下地めっき層として 0.5μm 厚のCu膜を無電解めっき法で成膜した。次に、この下地めっき層の上にフォトレジストを塗布したのち、フォトエッチングにより、下部フェライト層の外周部から50μm の位置から中窓 550μm の範囲にわたって、矩形スパイラルコイルのレジストフレームを形成した。その後、電気めっきによりレジストフレーム内にCuを70μm 析出させたのち、レジストフレームを剥離し、ついで化学エッチングでコイル線間の下地めっきを除去して、図4に示すような、平面コイルを作製した。この際、長辺に平行なコイル線の幅dは60μm 、コイル線とコイル線の間隔sは25μm 、コイルのターン数nは14に固定し、短辺に平行なコイル線の幅eを表1に示すように種々に変更した。
【0031】
次に、 Fe203/ZnO/CuO/NiO=49/23/12/16(mol%) の組成になるフェライト磁性粉を含んだエポキシ樹脂ペーストを、スクリーン印刷法にて上部フェライト層として成膜し、150 ℃で熱硬化させた。熱硬化後のコイルトップからの膜厚は 100μm であった。
かくして得られた各平面磁気素子を、図5に示すような回路を有するスイッチング電源のコイルとして、5MHz で駆動した。入出力は 3.8 V/1.5 V, 0.1 A である。
この時のインダクタの形状、コイル直流抵抗Rdcおよびスイッチング電源のエネルギー効率について調べた結果を、表1に併記する。
【0032】
【表1】
Figure 0004420586
【0033】
表1から明らかなように、本発明に従う平面磁気素子をスイッチング電源のコイルとして使用した場合には、従来に比べて、低直流抵抗でかつ高効率を達成することができることが分かる。
【0034】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、小型かつ軽量で、しかもコイル直流抵抗を大幅に低減した平面磁気素子を得ることができる。
また、本発明によれば、上記の平面磁気素子を搭載することにより、やはり軽量かつ小型で、エネルギー効率に優れたスイッチング電源を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従う平面磁気素子の平面コイルとして好適な、矩形スパイラルコイルの形状を示した図である。
【図2】 本発明に従う平面磁気素子の平面コイルとして好適な、矩形スパイラルコイルの別例(a) および楕円渦巻き形コイル(b) の形状を示した図である。
【図3】 平面磁気素子の背面に設けた外部電極の形状を示した図である。
【図4】 実施例で形成した矩形スパイラルコイルの形状・寸法を示した図である。
【図5】 スイッチング電源の回路を示した図である。

Claims (3)

  1. 下部フェライト磁性層の面上に、平面コイルを有し、該平面コイルのコイル線間の空隙も含めてその上に上部フェライト磁性層をそなえ、全体が長方形になる平面磁気素子において、該平面磁気素子の短辺に平行な平面コイルのコイル線の幅を、長辺に平行なコイル線の幅よりも広くしたことを特徴とする平面磁気素子。
  2. 請求項1において、平面磁気素子の長辺長さをa、中窓の長辺長さをf、長辺に平行なコイル線の幅をd、コイル線間隔をs、コイルのターン数をnとする時、短辺に平行なコイル線の幅eが、次式
    d<e≦(a−f+s)/2 n
    の関係を満足することを特徴とする平面磁気素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の平面磁気素子を搭載したことを特徴とするスイッチング電源。
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