JP4420534B2 - 管継手 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は管継手に係り、特にパイプが正規深さまで挿入されたか否かを検知するための検知機構を備えた管継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図17は従来の管継手を示すものである。図中、100は管継手本体であり、その軸芯に沿って挿入孔101が貫通して形成されており、一端側よりパイプPを挿入可能である。また、パイプPの入り口側に近い部分にはリング状に形成されたリテーナ102が嵌着されている。このリテーナ102は一部が切れたリング状をなし、拡開方向へ撓み変形をなしうる。また、リテーナ102の内周面には、一対の抜け止め突起103が設けられ、管継手本体100の壁面の開口へそれぞれ嵌め込まれて挿入孔101内に突出している。パイプPが挿入孔101へ挿入されると、パイプPの途中に形成されたフランジ104が、上記した抜け止め突起103に当接しこれらを外方へ押しのけるため、リテーナ102全体は拡開変形する。そして、フランジ104が抜け止め突起103部分を通過すると、リテーナ102は弾性復帰してフランジ104が抜け止め突起103と係合する。これによって、パイプPは管継手本体100内に抜け止めされた状態で挿入される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来のものは、パイプPが正規深さまで挿入されたか否かが外観からは容易に判断できない、という問題点があった。すなわち、作業者がパイプPを挿入していき、リテーナ102が拡開変形を生じたことが視覚をもって判断できたとしても、抜け止め突起103を通過する前に、押し込みを中断してしまった場合には、リテーナ102の弾性力によって抜け止め突起103の手前位置に押し戻されてしまうことがありうる。そのような場合には、パイプPが不完全挿入であるにも拘わらず、外観上は区別がつかないため、正規挿入と誤って判断してしまう虞がある。
【0004】
本発明は、こうした要請に応えるために開発されたものであり、その目的とするところは、作業者がパイプが正規挿入されたか否かを確実に実感させることができる管継手を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1の発明の構成は、外周面の先端部寄りの位置に抜け止め用フランジが形成されたパイプを挿入して接続するための管継手であって、前記パイプが挿入される挿入孔を有する管継手本体と、前記パイプが前記挿入孔に対し正規深さまで挿入されたときに前記抜け止め用フランジに係止して前記パイプを抜け止め状態に保持するリテーナとを備えた管継手において、前記挿入孔へ前記パイプが正規深さまで挿入されているか否かを検知するためのチェッカーを有し、このチェッカーは、前記管継手本体に対して取り付けられる取付部と、管継手本体に対し軸方向へ移動させたときに前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されている場合には前記管継手本体あるいは前記取付部に配された被係止部に係止可能であるが、前記パイプが正規深さまで挿入されていない場合には前記管継手本体に対する係止が不能となる検知部と、この検知部と前記取付部との間を連結しかつ前記取付部が前記管継手本体に取り付けられた状態において、前記管継手本体に対する前記検知部の係止操作の過程で撓み変形し、前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されているときには前記被係止部に対する検知部の係止を許容するが、前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されていないときには、前記被係止部に係止不能状態にある前記検知部を、前記撓み変形に伴う弾性反力によって前記管継手本体のほぼ径方向へ離間した位置に跳ね上げ可能とするばね性連結部とからなることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記検知部は、前記挿入孔へ突入可能に形成されかつ前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されているときには、前記パイプのフランジに当接せず前記管継手本体あるいは前記取付部に対する係止を可能にし、前記パイプが正規深さまで挿入されていないときには、前記パイプのフランジに当接して前記検知部の前記管継手本体あるいは前記取付部に対する係止を不能にする検知片が突設されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、前記リテーナは、前記管継手本体の壁面に開口する窓部を通して前記挿入孔内に突出する抜け止め突起が備えられるとともに、この抜け止め突起は前記パイプが挿入される過程で、前記パイプの前記フランジによって前記管継手本体の外方へ押し出されてフランジの通過を許容し、フランジの通過後には前記リテーナの弾性によって前記挿入孔内に突出する位置に復帰して前記フランジに係止可能となっており、また前記フランジが前記リテーナの前記抜け止め突起を通過する途上に位置することで、前記リテーナが前記管継手本体に対し径方向外方へ拡開変形しているときには、前記チェッカーは前記リテーナと干渉して前記管継手本体へ径方向から嵌め込み不能に形成されていることを特徴とするものである。
さらにまた請求項4の発明は、請求項1または3いずれかに記載のものにおいて、前記ばね性連結部は、前記管継手本体に対する前記検知部の係止操作の際の屈曲箇所が、他の部分よりも薄肉に形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の作用および効果】
請求項1の発明によれば、パイプを管継手本体の挿入孔へ差し込んでゆき、パイプが正規深さまで挿入されると、リテーナがフランジに係止する結果、パイプは管継手本体内に抜け止め状態で保持される。
パイプの正規挿入の有無を検知する作業は、上記パイプの挿入作業の後においてなされる。すなわち、取付部が管継手本体に取り付けられた状態で、ばね性連結部を撓ませつつ検知部を管継手本体の後方に位置させ、そのまま軸方向に沿って前進操作する。そして、パイプが管継手本体内に正規深さまで挿入されている場合には、この前進操作によって検知部を被係止部に係止させることができる。
しかし、パイプが正規深さまで挿入されていない場合には、検知部を被係止部に係止させることができないため、このまま作業者が検知部から手を離すと、この間に蓄勢されたばね性連結部の弾性反力によって検知部は管継手本体からほぼ径方向へ離間した位置に跳ね上げられる。このときの状態は、検知部が管継手本体から遠く離れて位置しているため、検知部が管継手本体に対し正規に装着されている状態との差異が明らかであるから、作業者はパイプが不完全な挿入であったことを確実に知ることができる。
請求項2の発明によれば、管継手本体に対する検知部の取付けを行う場合には、検知部の検知片が管継手本体の挿入孔へ突入される。パイプが正規深さまで挿入されていれば、検知片はパイプのフランジと突き当たることがないため、検知部の取付けに何らの障害とならない。しかし、パイプが正規深さまで挿入されていなければ、検知片の先端がパイプのフランジに突き当たって、それ以上には検知部を軸方向に沿って前進させることができないため、検知部を被係止部に係止させることができない。したがって、この状態で検知部から手を離せば、ばね性連結部によって検知部が跳ね上がり、もって作業者にパイプの不正嵌合を知らせる。
請求項3の発明によれば、パイプが管継手本体の挿入孔内へ挿入されてゆく過程で、フランジはリテーナの抜け止め突起を径方向外方へおしやることで、リテーナ全体が拡径変形する。このままパイプが正規深さまで挿入されれば、フランジが抜け止め突起を通過するため、リテーナは弾性復帰して抜け止め突起とフランジが係止する結果、パイプが抜け止めされた状態となる。この後、検知部の取付けがなされる場合にも、リテーナは弾性復帰しているため、取付けの妨げとなることはない。しかし、パイプの挿入にあたり、フランジが抜け止め突起を押し広げた状態で挿入が停止されてしまった場合には、リテーナは拡開変形した状態となっている。したがって、そのまま検知部を嵌合しようとしても拡開しているリテーナと干渉してしまい、嵌合させることができず、検知部から手を離せば上記と同様、ばね性連結部の弾性力によって跳ね上げられ、作業者はこのことをもってパイプが正規深さまで挿入されていないことを知る。
請求項4の発明によれば、検知部を係止させるときにばね性連結部が屈曲する箇所が他の部分よりも薄肉に形成されているため、円滑な撓み動作が可能でありながら、接続箇所は厚肉であるから、破断等の虞が少ない、という効果が得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】
−実施形態1−
図1において、1は管継手本体であり、合成樹脂材にて略円筒状に形成されている。そして、先端側は例えば合成樹脂製のチューブを嵌合可能なチューブ嵌合部1Aが形成されており、その先端部の外周面には複数の抜け止め鍔部1Bが形成されている。また、管継手本体1の内部には例えば金属製のパイプPを挿入するための挿入孔2が軸芯に沿って貫通して形成されている。但し、パイプPの先端寄りの位置にはバルジ加工によって形成された抜け止め用フランジ3が全周に沿って張り出している。
【0008】
図10等に示されるように、挿入孔2の途中の位置にはスペーサリング4を挟んで軸方向の両側に2つのシールリング5,6が嵌挿されており、その後方より嵌め込まれた押さえ筒7によって抜け止めがなされている。両シールリング5,6はパイプPの外周面に密着してパイプPと挿入孔2の孔壁との間のシールを行う。さらに、挿入孔2において前記押さえ筒7より入り口側の範囲は、抜け止め用フランジ3が挿入可能な孔径に形成されている。また、挿入孔2の孔壁には後述する検知片21を受入れ可能な一対の挿通溝9が凹設されている。両挿通溝9は挿入孔2の入り口側の端部より軸方向へ所定長さ範囲に亘って刻設されている。但し、以後、説明の便宜上、両挿通溝9が対向する方向を上下と呼び、これと直交する方向を左右と呼ぶこととする。
【0009】
また、管継手本体1の外周面の途中には軸方向から見た場合に正方形状をなす平板の鍔部10が径方向へ張り出し形成されている。この鍔部10は四隅が円弧状に面取りがなされるとともに、その両側縁の中央部には一対の係止突起11が左右方向へ突出している。両係止突起11の後面側にはテーパー面11Aが形成されていて、後述する連結腕23の撓み動作を案内可能とすることにより、係止動作が円滑になされるようにしている。また、鍔部10においてチューブ嵌合部1A側の面には、図7に示すように、チューブ嵌合部1Aの外周面から左右へ張り出す一対の引掛け突縁10Aが形成され、これらは上下で対称をなす位置に配されており、上下いずれの方向からも後述するチェッカー19を取付け可能としている。また、鍔部10における同面には、チェッカー19の取付部34に対する回り止めを行うリブ10Bが、チューブ嵌合部1Aの外周面から径方向へかつ上下で対称をなして配されている。これにより、チェッカー19の取付部34は管継手本体1に対し上下のいずれの方向からも装着が可能であるものの、左右方向からの装着を不能にする(図8参照)。この点は、改めて後に説明する。
【0010】
一方、挿入孔2の孔縁にもリング状の張り出し縁13が形成されている。管継手本体1の外周面において、鍔部10と張り出し縁13との間には、一対の窓部14が左右方向を向いて対称に開口しており、次述するリテーナ15の抜け止め突起17を貫通させて挿入孔2内に突出して臨ませることができる。
【0011】
管継手本体1の外周面であって両鍔部10と張り出し縁13との間には、略C字形状をなす合成樹脂製のリテーナ15が嵌着されている。
このリテーナ15は円環形状をなす一部が切り離されることによって、拡開方向への弾性変形が可能となっている。したがって、一旦、リテーナ15を拡開させて管継手本体1の外周面を抱え込むようにして嵌め付ければ、自らの弾性によって管継手本体1に固定される。この実施形態では、管継手本体1に固定されたリテーナ15を離脱させる場合のために、切り離された部分の端部に操作用突部16が径方向外方へ突出形成しており、リテーナ15を嵌着したままの状態で押圧操作することで、リテーナ15を拡開させ易くしている。操作用突部16の側面にはストッパ突縁16Aが張り出している。これに対し、管継手本体1の外周面であって鍔部10の背面寄りには、リング縁12が周方向に沿って所定範囲に亘って突出しており、その一方の端部には鍔部10と接合された当て面12Aが形成されている(図10参照)。上記したストッパ突縁16Aは、リテーナ15が装着されている状態では、リング縁12の一方の端部に当接可能な位置にあって、リテーナ15が拡開されるときにはリング縁12他方の端部である当て面12Aに当接可能となるまで変位することができる。これにより、リテーナ15は過度の拡開変形が規制される。
【0012】
さらに、リテーナ15の内周面にはパイプPの抜け止めを行うための一対の抜け止め突起17が突出形成されている。両抜け止め突起17は、リテーナ15が管継手本体1に装着されたときに、窓部14を通して挿入孔2内へ突出するようにしてある。また、抜け止め突起17の前面側(挿入孔2の入り口側)は外方へ向けて拡開するテーパー面18となっており、パイプPが挿入されてその抜け止め用フランジ3が抜け止め突起17部分を通過する際に、抜け止め突起17を押し上げ易くしている。
【0013】
チェッカー19も合成樹脂材により形成されており、構造としては、管継手本体1への取付けのための取付部34と、パイプPの正規嵌合の有無をチェックするための検知部35と、この両者を接続するためのばね性連結部36とからなっている。
【0014】
まず、取付部34から説明すると、取付部34は厚肉に形成された基板部37を有している。この基板部37は鍔部10の前面とほぼ密着状に対向可能であるとともに、その内縁はチューブ嵌合部1Aの外周面に適合できるような円弧状に形成されている。また、基板部37において鍔部10と対向する側の面の中央部には位置決め溝38が縦向きに形成されており、前記した位置決めリブ10Bと嵌め合い可能である。さらに、基板部37の両側部からは一対の脚片39が対向して設けられている。両脚片39は拡開方向への撓みが許容されるとともに、その先端にはフック爪40がそれぞれ向き合うようにして形成されており、これにより、取付部34をチューブ嵌合部1Aに対して径方向から接近させると、両フック爪40は管継手本体1における左右の引掛け突縁10Aを広がって乗り越え、復帰してこれらに係止することができる。但し、取付部34がチューブ嵌合部1Aに対し図7に示すのとは直交する方向(左右方向)から誤って装着されようとしても、引掛け突縁10Aに当接してこれ以上深くは装着を為し得ないようになっている。
なお、図2に示すように、基板部37の下端は段差37Aが形成されているが、これは鍔部10に対し正規の組み付け姿勢とは表裏反対向きに組み付けようとした場合に、鍔部10の上縁と干渉して組付けを不能にする役割を果たす。
【0015】
次に、検知部35について説明すると、検知部35は一対の側壁19A、天井壁19Bおよび後面壁19Cとからなっている。後面壁19Cには下方へ開口するアーチ状のパイプ挿通部20を有し、管継手本体1の挿入孔2内に差し込まれているパイプPを径方向から跨ぐことができるようになっている。このパイプ挿通部20における内側開口縁の頂部には内向きにかつ軸方向に沿って検知片21が延出している。この検知片21はパイプPと挿入孔2の内面との間に突入可能であり、パイプPが正規深さまで挿入されておらず、より具体的にはパイプPのフランジ3がリテーナ15の抜け止め突起17に到達しない深さまでしか挿入されていない場合には、検知片21の先端がパイプPのフランジ3に突き当たって検知部35をこれ以上には軸方向に沿って前進させることができないようにしている。
【0016】
また、検知片21の強度アップのために、付け根部分はパイプ挿通部20の開口縁に沿って両側に補強縁22が張り出し形成されているが、両補強縁22は検知片21よりは短かい寸法をもって形成されている。さらに、後面壁19Cは検知部35が管継手本体1に対し正規状態で装着されたときに張り出し縁13の後端面と当接可能である。さらにまた、後面壁19Cの内面でかつ天井壁19Bおよび両側壁19Aとの境目部分には90゜角度間隔で3箇所にがた詰め凸部25が配されており、検知部35が管継手本体1に正規状態で取り付けられたときに、張り出し縁13周りの隙間を埋めて検知部35ががた付かないようにしている。
【0017】
天井壁19Bはその前部側が一段高く形成されており、リテーナ15の操作用突部16との干渉を避けつつ内部に収容することができるようにしている。
また、両側壁19Aはリテーナ15が管継手本体1に対して正規に装着された状態で、両間にリテーナ15を収容することができる程度の幅寸法に設定されている。また、両側壁の先端側は幅広に形成されて一対の連結腕23となっている。両連結腕23は拡開方向の適度な撓みが許容されるとともに、それぞれには係止窓24が開口しており、パイプPが正規深さまで挿入されているときに限り、係止窓24内に鍔部10の係止突起11を係止させることができる。さらに、パイプPが挿入される途上で、フランジ3がリテーナ15の抜け止め突起17を突き上げている状態で挿入が停止されてしまった場合には、リテーナ15全体が拡径状態に変形している。この状態のときには連結腕23を引掛け突縁10Aに係止させるべく検知部35を前進させても、検知部35内において側壁19Aと連結腕23との段差部分26に拡径したリテーナが干渉し、これ以上の前進を為し得ないようになっている(図15参照)。
【0018】
さて、取付部34と検知部35とはばね性連結部36によって連結されている。具体的には、ばね性連結部36は取付部34における基板部37の中央と天井壁の上面の先端中央部とを接続するように形成されている。また、ばね性連結部36は自然状態では取付部34と検知部35とをほぼ直角をなすようにしている(以後、このときのチェッカー19全体の姿勢を起立姿勢という)。そして、取付部34を管継手本体1に装着した状態で、検知部35を管継手本体1の後方に位置させ、軸方向に沿って移動させた後、係止窓24と係止突起11とを係止させるまでの間の撓みを許容する。そして、係止窓24と係止突起11とが係止完了する前のいずれの時において、作業者が検知部35から手を離せば、ばね性連結部36の弾発力によって検知部35を起立姿勢まで跳ね上げることができるようになっている。さらに、ばね性連結部36の中央部は薄肉部36Aが形成されており、円滑な撓みがなされるようにしている。
【0019】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明すると、リテーナ15が管継手本体1に組み付けられた状態において、パイプPを挿入孔2の入り口側から挿入する。このとき、パイプPはフランジ3が挿入孔2の孔壁にほぼ摺接しつつ前進してゆく。そして、抜け止め用フランジ3はリテーナ15の両抜け止め突起17に当接する。さらにパイプPの差込みがなされると、両抜け止め突起17のテーパー面18の案内作用を受けて抜け止め突起17が外方へ退避し、これによってリテーナ15全体が拡開変形する。
【0020】
このままパイプPが差し込まれてゆくと、フランジ3は両抜け止め突起17間を通過する。すると、リテーナ15は弾性復帰して抜け止め突起17を再度挿入孔2内へ突出させる。これによって、両抜け止め突起17がフランジ3に係合する結果、パイプPが抜け止め状態に保持される(図11等に示す正規挿入状態)。
【0021】
上記のようにして管継手本体1に対するパイプPの挿入作業がなされた後、あるいは挿入作業に先立って、管継手本体1に対するチェッカー19の取付部34の取付け作業がなされる。すなわち、位置決めリブ10Bと対向する方向から取付部34を接近させ、両脚片39のフック爪40を両引掛け突縁10Aに当接させる。そのまま取付部34を強く押し込んでやると、両フック爪40は拡開して引掛け突縁10Aを乗り越えて係止する。これによって、チェッカー19の管継手本体1からの脱落が規制される。また、この状態では、位置決めリブ10Bと位置決め溝38とが嵌まり合って係止しているため、併せて回り止めもなされている。なお、取付部34の取付け方向を誤り、上記とは直交する方向としてしまった場合には、図8に示すように、取付部34がチューブ嵌合部1Aと干渉して取付部34の嵌め付けを規制する。さらに、取付部34を無理に押し込んだ場合にも、基板部37における鍔部10と対向する側の面の内縁部37Bが上下の引掛け突縁10Aとそれぞれ突き当たるため、それ以上の嵌め込みを不能として作業者に誤組み付けであることを知らせる。
【0022】
こうして、取付部34が管継手本体1に対して取り付けられると、チェッカー19はばね性連結部36によって起立姿勢に保持される。その後、検知部35を摘んでばね性連結部36を撓ませつつ検知部35を管継手本体1の後方にほぼ同軸で位置させ、そのまま軸線に沿って前進させる。そのとき、検知片21は挿通溝9に嵌まり合いながらパイプPの外側を前進してゆく。パイプPが上記したような正規深さまで挿入されている場合には、検知片21はパイプPのフランジ3に当接することがないため、検知部35の前進は妨げられないため、両連結腕23の先端が係止突起11に摺接する過程で外方へ拡開し、係止窓24と係止突起11が適合した時点で復帰して両者が係止する。これによって、検知部35が管継手本体1に対して抜け止め状態で取り付けられる。
【0023】
かくして、作業者は検知部35が取付けられたことをもってパイプPが正規深さまで挿入されたことを知る。また、チェッカー19が取り付けられた状態では、検知部35内にリテーナ15が収容されているが、前述したように両側壁19Aの間の寸法は、リテーナ15が拡開したときの幅寸法よりも小さくなっているため、チェッカー19が管継手本体1に正規に取り付いている状況では、リテーナ15を拡開させてパイプPが抜け出るような事態は確実に回避されている。
【0024】
ところで、パイプPが正規深さまで挿入されていない場合であって、例えばフランジ3が抜け止め突起17を外方へ押しやる過程で止まってしまった場合には、リテーナ15が拡開状態にある。したがって、チェッカー19を前進させても、リテーナ15の外周縁が検知部35内における側壁19Aと連結腕23との段差部分26に突き当たり、それ以上には前進させることができない。これにより、連結腕23の係止窓24に係止突起11を係止させることができない。この時点で作業者が検知部35から手を離すと、ばね性連結部36の弾発力によって検知片21が挿通溝9から抜け出て、検知部35全体を管継手本体1の外方へ跳ね上げる。これにより、検知部35は再度、起立姿勢に復帰してしまうため、検知部35が正規状態とは外観上明瞭に相違するため、作業者に対しパイプPが不完全な挿入状況にあることを確実に認識させることができる。
【0025】
また、パイプPの挿入深さが上記よりもさらに浅く、フランジ3がリテーナ15の抜け止め突起17にも至っていないような場合には、検知部35の検知片21がフランジ3に突き当たり、検知部35の前進操作を妨げるため、係止窓24を係止突起11に係止させることはできない。したがって、この時点で作業者が検知部35から手を離すと、上記と同様、ばね性連結部36によって検知部35全体を起立姿勢にまで跳ね上げる。かくして、作業者はパイプPが不完全な挿入状況にあることを確実に認識することができ、正規深さに至るまでパイプPの挿入作業が改めてなされる。
【0026】
以上のように、本実施形態では、パイプPが不完全な挿入状態であれば、検知部35が管継手本体1の外方上方に跳ね上げられた起立姿勢に保持されるため、パイプPの不完全挿入であることを、その外観から確実に検知することができる。
【0027】
また、本実施形態ではパイプPの不完全挿入があった場合の検知部35の前進動作を規制する手段として、検知片21をフランジ3に突き当てることの他、リテーナ15が拡開していることを利用して検知部35の内面に干渉させる、の方法を設定している。後者の設定は、パイプPのフランジ3がより深い位置に至っている場合を想定しているため、検知片21による突き当て方法では、検知部35が解放さればね性連結部36による弾発力が作用しても検知片21が挿入孔2内で引っかかってしまうことが懸念されるが、本実施形態では、拡開したリテーナ15との干渉を利用しているため、検知片21が挿入孔2内に浅くしか進入されておらず、跳ね上げ動作の妨げとなることはない。
【0028】
さらに、本実施形態ではばね性連結部36の中央に薄肉部36Aが形成されているから撓み変形させやすく、したがって管継手本体1に対する検知部35の取付け作業を円滑に行わせることができる。
【0029】
−変形例−
図16は本発明の変形例を示すものである。前記した実施形態では、引掛け突縁10Aを上下に一対ずつ張り出し、各対のものに脚片39のフック爪40を係止させるものを示したが、ここに示した変形例はチューブ嵌合部1Aの壁面に左右対称に平坦部27を張り出し状に形成し、その端部の段部27Aにフック爪40が係止されるようにしたものである。このようなものにおいても、取付部34は管継手本体1に対し上下いずれの方向からも組み付け可能であり、誤ってこれと直交する方向から組み付けようとした場合には、脚片39が両位置決めリブ10Bと当接して取付部34の装着を不能にする。
他の構成は前記した実施形態と同様であり、もって同様の作用効果を発揮することができる。
【0030】
なお、本発明は種々の変更が可能であり、次のような変形例も本発明の技術的範囲に含まれる。
▲1▼連結腕23の係止相手は必ずしも管継手本体1(鍔部10の係止突起11)である必要はなく、取付部34に適当な被係止部を設定することにより可能となる。
▲2▼挿通溝9は図示では二箇所に設定されたものを示したが、一箇所のみでも足りる。
▲3▼リテーナ15は本実施形態のものに限定されるべきものでなく、全体が挿入孔2内に装着されるものであってもよく、また本実施形態のように予め管継手本体1に装着される形式の他、パイプPの挿入後に装着されてパイプPの抜け止めを行うものであってもよい。さらには、リテーナ15は管継手本体1と別体のものの他、一体に形成されたもの、つまり管継手本体1に抜け止め用フランジ3に係止する機能のみを付加したものであってもよい。
▲4▼連結腕23は必ずしも一対設ける必要はなく、片側のみであってもよい。但し、そのような場合には、チェッカー19を管継手本体1に装着した状態にあっても、ばね性連結部36のばね力の作用により、連結腕23が設けられていない側が管継手本体1から離れる方向へチェッカー19全体を傾けてしまう傾向となる。そのための対策として、例えば連結腕23の先端側を内側へ屈曲させ、管継手本体1の外面に突き当てるようにしておき、これによってチェッカー19の傾きを規制するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】管継手の分解斜視図
【図2】チェッカーの側面図
【図3】同じく背面図
【図4】同じく正面図
【図5】同じく底面図
【図6】同じく平面図
【図7】取付部の取付け状態を示す断面図
【図8】誤組付け状態を示す断面図
【図9】管継手本体に取付部を装着した状態を示す側面図
【図10】パイプの挿入途上の状態を示す断面図
【図11】パイプが正規深さまで挿入されたときのチェッカーの組み付け状態を示す断面図
【図12】図11の別角度から見たときの断面図
【図13】チェッカーの組み付け完了状態を示す側面図
【図14】検知片がフランジに突き当たっている状態を示す断面図
【図15】パイプが半挿入でリテーナとチェッカーが干渉しているときの状態を示す断面図
【図16】変形例を示す断面図
【図17】従来の管継手を示す斜視図
【符号の説明】
1…管継手本体
2…挿入孔
3…フランジ
10…鍔部
11…係止突起(被係止部)
15…リテーナ
17…抜け止め突起
19…チェッカー
21…検知片
23…連結腕
24…係止窓
34…取付部
35…検知部
36…ばね性連結部
36A…薄肉部
P…パイプ

Claims (4)

  1. 外周面の先端部寄りの位置に抜け止め用フランジが形成されたパイプを挿入して接続するための管継手であって、
    前記パイプが挿入される挿入孔を有する管継手本体と、
    前記パイプが前記挿入孔に対し正規深さまで挿入されたときに前記抜け止め用フランジに係止して前記パイプを抜け止め状態に保持するリテーナとを備えた管継手において、
    前記挿入孔へ前記パイプが正規深さまで挿入されているか否かを検知するためのチェッカーを有し、
    このチェッカーは、前記管継手本体に対して取り付けられる取付部と、
    管継手本体に対し軸方向へ移動させたときに前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されている場合には前記管継手本体あるいは前記取付部に配された被係止部に係止可能であるが、前記パイプが正規深さまで挿入されていない場合には前記管継手本体に対する係止が不能となる検知部と、
    この検知部と前記取付部との間を連結しかつ前記取付部が前記管継手本体に取り付けられた状態において、前記管継手本体に対する前記検知部の係止操作の過程で撓み変形し、前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されているときには前記被係止部に対する検知部の係止を許容するが、前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されていないときには、前記被係止部に係止不能状態にある前記検知部を、前記撓み変形に伴う弾性反力によって前記管継手本体のほぼ径方向へ離間した位置に跳ね上げ可能とするばね性連結部とからなることを特徴とする管継手。
  2. 前記検知部は、前記挿入孔へ突入可能に形成されかつ前記パイプが前記管継手本体に対し正規深さまで挿入されているときには、前記パイプのフランジに当接せず前記被係止部に対する係止を可能にし、前記パイプが正規深さまで挿入されていないときには、前記パイプのフランジに当接して前記検知部の前記被係止部に対する係止を不能にする検知片が突設されていることを特徴とする請求項1記載の管継手。
  3. 前記リテーナは、前記管継手本体の壁面に開口する窓部を通して前記挿入孔内に突出する抜け止め突起が備えられるとともに、この抜け止め突起は前記パイプが挿入される過程で、前記パイプの前記フランジによって前記管継手本体の外方へ押し出されてフランジの通過を許容し、フランジの通過後には前記リテーナの弾性によって前記挿入孔内に突出する位置に復帰して前記フランジに係止可能となっており、また前記フランジが前記リテーナの前記抜け止め突起を通過する途上に位置することで、前記リテーナが前記管継手本体に対し径方向外方へ拡開変形しているときには、前記チェッカーは前記リテーナと干渉して前記管継手本体へ径方向から嵌め込み不能に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の管継手。
  4. 前記ばね性連結部は、前記管継手本体に対する前記検知部の係止操作の際の屈曲箇所が、他の部分よりも薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の管継手。
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