JP4420263B2 - 電磁遮蔽工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は電磁遮蔽工法に関し、とくに誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルを利用した電磁遮蔽工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報化の進展に伴い、オフィスビル等において無線LANシステム(Local Area Network System)や屋内PHS(Personal Handy Phone System)等の電波通信の利用が進み、コンピュータや精密機器の電磁障害防止、機密保持・盗聴防止等のセキュリティ、混信の防止、電波の効率的利用などの面から、建物の電磁シールド(以下、電磁遮蔽ということがある。)に対する要求が高まっている。
【0003】
従来の建物の電磁遮蔽では、建物の構造部材とは別に例えば金属板、金属箔、金属メッシュ、金属をメッキした不織布、金属製建築材料等の導電性部材(以下、電磁遮蔽部材ということがある。)で床、天井、側面の全てを被覆して建物又は建物内の空間を電磁遮蔽している。電磁遮蔽部材に穴があると電波漏れが発生し遮蔽性能が劣化するので、電磁遮蔽部材は隙間なく敷設する必要がある。このため、電磁遮蔽材料の施工はかなり煩雑であり、手間がかかるので工事期間が長くなる問題点がある。
【0004】
これに対し本発明者は、Fe、Al、Mg等の金属粉体及び/又はこれら金属の酸化物粉体が混練された電磁遮蔽コンクリート又はモルタルを用いて建物の壁やスラブを形成する電磁遮蔽方法を開発し、特願平11-033532号に開示した。電磁遮蔽コンクリート又はモルタル(以下、両者を纏めて電磁遮蔽コンクリートということがある。)は、前記金属粉体及び/又は金属酸化物粉体の混練量の調節により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率εを高めたものであり、コンクリート10に入射する電波を反射すると共に進入した電波を誘電損失により減衰させるものである。一般に誘電率εで厚さdのパネルの電波透過係数は下記(1)式で表せるので(電気情報通信学会技術研究報告、A・P95-47(1995-09)「ミリ波帯における建材の反射特性と屈折率の測定」)、電磁遮蔽コンクリートの誘電率εと所望透過係数Tとを(1)式へ代入することにより、遮蔽対象周波数の電波に対して所望の遮蔽性能(下記(4)式参照)を与える壁やスラブの厚さdを設計することができる。
【0005】
誘電率εを高めた電磁遮蔽コンクリートの利用により、建物の躯体自体に電磁遮蔽性能を持たせることができるので、躯体と別に電磁遮蔽部材を施工する手間を省くことができ、施工期間の短縮が図れる。また従来問題となっていた電磁遮蔽部材の継目等からの電波の漏れが軽減でき、遮蔽機能が劣化し難いスラブや壁が構築できる。
【0006】
【数1】
【0007】
【数2】
遮蔽性能=-20・log(透過係数T)…………………………………………(4)
【0008】
前記電磁遮蔽コンクリートに混練する金属粉体及び/又は金属酸化物粉体として製鉄所の作業施設から発生する煤塵、粉塵を乾式又は湿式集塵機にて捕集した環境集塵ダスト(以下、製鉄所ダストという。)を利用できる。製鉄所ダストは製鉄プラントの副産物として大量に排出されるので安価であり、製鉄所ダストの利用により電磁遮蔽コストの低減が図れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリートを利用した電磁遮蔽方法においても、例えばスラブと外壁とを別々に施工する場合は、スラブと外壁との突き合わせ部分から電波が漏洩して遮蔽性能の劣化が起こり得る。また、スラブのみを前記電磁遮蔽コンクリート製とし、電磁遮蔽部材で被覆した従来の普通コンクリート製の周囲壁と組み合わせて遮蔽する場合は、スラブと周囲壁の電磁遮蔽部材との間から電波が漏洩し得る。
【0010】
スラブと周囲外壁との突き合わせ部分からの電波漏洩を防止する方法として、例えば特開平11-112190号公報は、床スラブのデッキプレートと隣接配置する導電性材料製PC版(外壁部)との間に弾力性のある導電性材料を介在させ、PC版とデッキプレートとを電気的に接続した電磁シールド工法を開示する。しかし同工法は、PC版の建て込み時に導電性材料を目地部などへ詰め込む必要があり、詰め込み作業に手間がかかる問題点がある。施工の容易化が図れる電磁遮蔽コンクリート利用の電磁遮蔽方法の実用化を進めるため、スラブと壁との突き合わせ部分又はスラブと電磁遮蔽部材との間からの電波漏洩を簡単に防ぐことができる技術の開発が求められている。
【0011】
そこで本発明の目的は、施工が簡単で且つ電波の漏洩を確実に防ぐことができる電磁遮蔽コンクリート利用の電磁遮蔽方法を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリートの研究開発の結果、酸化鉄粒体の混練により誘電率を高めたコンクリートは、電波遮蔽性能を有すると共に、僅かなひび割れが生じた場合でも電波遮蔽性能が維持できるとの実験的知見を得た。図9は、酸化鉄粒体の混練により誘電率を高めた厚さd=150mmの電磁遮蔽モルタルパネル材の遮蔽性能と、そのパネル材に外力を加えてひび割れを生じさせた場合の遮蔽性能とを比較した実験結果を示す。図9のグラフαはひび割れを生じる前、グラフβはひび割れを生じさせた後のパネルの遮蔽性能を示す。本実験におけるひび割れの大きさは、外力印加側で幅0.5〜0.7mm、反対側で0.2mm、長さ70cm程度であった。
【0013】
本実験では、酸化鉄粒体として、酸化第二鉄70%、四三酸化鉄20%、その他の粒体10%の組成の製鉄ダストの一種を用いた。この製鉄ダストは、年間を通じて成分が安定している。この酸化鉄粒体の粒径は数10μm〜数百μmのサイズであり、通常のコンクリート細骨材の粒径に比べて細かいものであった。そのため、電磁遮蔽モルタルのコンクリートスランプ値を適当な値とするために、高性能AE減衰剤をセメントの重量に対して2〜3%程度添加した。
【0014】
図9のグラフαとグラフβとの比較から、酸化第二鉄及び四三酸化鉄等を主成分とする酸化鉄粒体を混練した電磁遮蔽コンクリートは、幅0.5〜0.7mm程度で長さ70cm程度のひび割れが存在しても、1.0〜4.0GHz帯域の電波に対して、ひび割れがない場合と同程度の遮蔽性能が維持できることが分かる。この理由は、酸化鉄粒体が混練された電磁遮蔽モルタルは誘電率が大きいので、ひび割れ間隙に進入した電波がひび割れ周囲の電磁遮蔽コンクリートの電波吸収性能により減衰するためと考えられる。
【0015】
本発明者は、更なる実験の結果、酸化鉄粒体の混練により誘電率を高めた電磁遮蔽モルタルパネルは、僅かな幅のひび割れが生じても、遮蔽対象電波の1/4波長以上の厚さがあれば、ひび割れ間隙内に進入した電波を効果的に減衰し、遮蔽性能が維持できることを確認できた。本発明は、この知見に基づき完成に至ったものである。
【0016】
図1の実施例を参照するに、本発明の電磁遮蔽工法は、酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタル10により遮蔽すべき空間1の床2を形成し、空間1の周囲壁5に設けた電磁遮蔽部材17の下端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて床2と密着させてなるものである。
【0017】
好ましくは、図1(B)に示すように、空間1の上階床3を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、空間1の周囲壁5に設けた電磁遮蔽部材17の上端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて上階床3と密着させる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、遮蔽すべき空間1の床2を電磁遮蔽コンクリート10製のスラブ6とした実施例を示す。電磁遮蔽コンクリート10の好ましい一例は、主成分が酸化第二鉄(Fe2O3)及び四三酸化鉄(Fe3O4)である酸化鉄粒体の混練により遮蔽対象周波数の電波に対する誘電率を高めたものである。電磁遮蔽コンクリート10に混練する酸化鉄粒体の一例を表1に示す。酸化鉄粒体の種類、混練量、及び打設するコンクリート10の厚さを調節することにより、床スラブ6に対し所望の遮蔽性能を与えることができる。
【0019】
【表1】
【0020】
本発明は、図1(C)に示すように、空間1の周囲壁5に設けた電磁遮蔽部材17の下端における遮蔽対象電波(波長λ)の1/4波長(λ/4)以上の長さ部分を折り曲げ、床2のスラブ6の頂面と例えば接着により密着させる。上述したように、酸化鉄粒体の混練により誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリートは電波吸収性能を有するので、たとえ導電性部材17とスラブ6との僅かな隙間に電波が進入した場合でも、1/4波長以上の径路を進行する間に電波が電磁遮蔽コンクリートに吸収されて減衰する。従って、電磁遮蔽部材17とスラブ6との接続部に、電波的に見て実質上隙間のない連続的な遮蔽性能を与えることができる。なお、電磁遮蔽部材17と床2との電気的接続を必要としないので、例えばエポキシ系の絶縁性接着剤等を用いて電磁遮蔽部材17と床2の頂面とを接着することができる。
【0021】
また従来の導電性の電磁遮蔽部材を用いた電磁遮蔽では、たとえ隙間なく接続して敷設した場合でも、高周波数になると導波管の原理で接続部から電波が漏洩し易い問題があった。これに対し本発明で用いる電磁遮蔽コンクリートは、図9からも分かるように、周波数が高くなるほど電波吸収性能が大きくなる特徴がある。よって本発明によれば、高周波数に対しても電磁遮蔽部材17とスラブ6との接続部からの電波漏洩を抑えることが期待できる。
【0022】
更に、図1(B)に示すように、電磁遮蔽コンクリートにより空間1の上階床3を形成した場合は、周囲壁5の電磁遮蔽部材17の上端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて上階床3と密着させることにより、上階床3のスラブ7と電磁遮蔽部材17との接続部からの電波漏洩を抑えることができ、空間1の実質上隙間のない遮蔽が可能となる。
【0023】
こうして本発明の目的である「施工が簡単で且つ電波の漏洩を確実に防ぐことができる電磁遮蔽コンクリート利用の電磁遮蔽方法」の提供が達成できる。
【0024】
図5に示すように、遮蔽すべき空間1の床2だけでなく、空間1の周囲壁5を酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート10により形成した場合は、床2及び周囲壁5の間の間隙を、遮蔽対象電波の1/4波長以上の幅で床2及び周囲壁5と密着する交差壁面を有する導電性アングル部材20bにより塞ぐことができる。アングル部材20bと床2との間、又はアングル部材20bと周囲壁5との間の僅かな隙間に電波が進入した場合でも、同図(C)に示すようにアングル部材20bと床2及び周囲壁5と密着幅を遮蔽対象電波の1/4波長以上とすることにより、進入電波を電磁遮蔽コンクリートの吸収により減衰させることができる。よって、床2と周囲壁5との接続部に電波的に見て実質上隙間のない連続的な遮蔽性能を付与できる。
【0025】
また、同図(B)に示すように、空間1の上階床3を電磁遮蔽コンクリート10で形成した場合は、上階床3及び周囲壁5の間の間隙を、遮蔽対象電波の1/4波長以上の幅で上階床3及び周囲壁5と密着する交差壁面を有する導電性アングル部材20tで塞ぐことにより、空間1の実質上隙間のない遮蔽が可能となる。周囲壁5を電磁遮蔽コンクリート10製とすることにより、電磁遮蔽部材17の施工の手間を省き、施工の更なる簡単化が期待できる。
【0026】
【実施例】
図2は、酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート10により遮蔽すべき空間1の床2を形成し、床2の周縁部に沿って該床2の頂面から上向きに突出する導電性の閉鎖環状突条12b(図3及び4参照)をコンクリート10に埋設し、空間1の周囲壁5に設けた電磁遮蔽部材17の下端縁を環状突条12bの床上突出部分と電気的に接続した本発明の実施例を示す。上述したように、電磁遮蔽コンクリート10と電磁遮蔽部材17とを遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さで密着させることにより電磁遮蔽が可能であるが、床2に埋設した導電性の閉鎖環状突条12bと電磁遮蔽部材17とを電気的に接続することにより、床と周囲壁との突合せ部分の電波遮蔽を一層確実に維持することができる。
【0027】
図2では、遮蔽すべき空間1の床2をデッキプレート11付き床スラブ6、即ち金属製デッキプレート11上に電磁遮蔽コンクリート10を打設した床スラブ6としている。図8のグラフは、金属製デッキプレート11のみによる電波遮蔽性能と、該デッキプレート11上に電磁遮蔽コンクリート10を打設した場合の電波遮蔽性能とを比較した実験結果を示す。同グラフは、デッキプレート11のみでは10〜30dB程度の遮蔽性能であるのに対し、電磁遮蔽コンクリート10の打設により200MHz〜4GHzの広帯域に亘り70dB以上の大きな遮蔽性能が得られることを示す。この結果は、デッキプレート11のみではデッキプレート相互間の継ぎ目や吊りボルト差込み用の開口等からの電波漏洩が発生するのに対し、デッキプレート11上に電磁遮蔽コンクリート10を打設することによりデッキプレート11の継ぎ目等からの電波漏洩をほぼ完全に防止できることを表す。デッキプレート11付き床スラブ6により、図8に示すように、電磁遮蔽コンクリート10の誘電損失とデッキプレート11による電波反射効果との組み合わせによる高度の遮蔽性能を遮蔽空間1の床2に付与できる。但し、本発明のおける遮蔽空間1の床2はデッキプレート11付きスラブ6に限定されず、電磁遮蔽コンクリート10を打設したスラブ6であれば足りる。
【0028】
図2の実施例では、床スラブ6の周縁部に沿って、床スラブ6の頂面から上向きに突出する導電性の閉鎖環状突条12bを電磁遮蔽コンクリート10中に埋設する。図3は、環状突条12bが埋設された床スラブ6の一例の断面図を示す。同図の環状突条12bは、コンクリート10の打設前に床スラブ6の周縁となるべき部位に適当な構造部材へ支持することにより配設し、コンクリート10の打設時に環状突条12bの下端部をコンクリート10に埋設することにより固定したものである。このような環状突条12bは、一部突出する部材をコンクリートスラブ中に埋設して固定する従来の建築技術を利用して比較的容易に施工可能である。閉鎖環状部材12bは、適当な長さの直線状部材12bの電気的な接続により形成してもよい。また、同図は下端拡径部を有する断面形状の環状突条12bを示すが、環状突条12bの形状は図示例に限定されない。図4は、床スラブ6の周囲の端縁に環状突条12bを固定した他の一例の断面図を示す。
【0029】
環状突条12bの上端縁を床スラブ6上に露出させることにより、空間1の周囲壁5に設けた電磁遮蔽部材17の下端縁と容易に接続可能となる。例えば圧着、締め付け、ボルト固定、導電性粘着テープの貼り付けによる結合、溶接等の方法により、環状突条12bの突出部と電磁遮蔽部材17の下端縁とを電気的に接続することができる。環状突条12bと電磁遮蔽部材17とを電気的に接続することにより、電磁遮蔽部材17とスラブ6との接続部に、電波的に見て実質上隙間のない連続的な遮蔽性能を与えることができる。
【0030】
図2では、環状突条12bと電磁遮蔽部材17とを電気的に接続するので、電磁遮蔽部材17への進入電波による電流が環状突条12bへ流れる。環状突条12bを埋設するコンクリートの導電率が大きいと、環状突条12bからコンクリート中に電流が漏れ、環状突条12bの漏れ電流流出部が電解作用により腐食(電食)する問題がある。例えば、従来から提案されている金属やカーボン等の導電性物質が混練された導電性コンクリート利用の電磁遮蔽スラブ(例えば特開平5-222785号公報)では、導電性突条12bをスラブの導電性コンクリート中に埋め込むと、導電性突条12bと導電性コンクリート相互間に大きな電流が流れるので、導電性突条12bが腐食して遮蔽性能の劣化の原因となり得る。これに対し本発明で用いる酸化鉄粒体を混練した電磁遮蔽コンクリート10は導電率が小さく、通常のコンクリートと同程度であるため、導電性突条12bとコンクリート10相互間を流れる電流を小さく抑え、導電性突条12bの電食を避けることができる。
【0031】
また、図2(B)に示すように空間1の上階床3にデッキプレート11付き床スラブ7を設けた場合は、例えば導電性接続装置14により電磁遮蔽部材17の上端縁と上階床3のデッキプレート11付きのスラブ7のデッキプレートとを電気的に接続すれば、遮蔽空間1の全周を実質上隙間なしに遮蔽することができる。図2(C)に示すように、上階床のスラブ7がデッキプレート11付きでない場合も、上階床3の電磁遮蔽コンクリート10の周縁部に底面から下向きに突出する導電性の閉鎖環状突条12tを電磁遮蔽コンクリート10中に埋設し、電磁遮蔽部材17の上端縁を上階床7の環状突条12tの床下突出部分と電気的に接続することにより、空間1の実質上隙間のない遮蔽が可能である。
【0032】
図6は、空間1の周縁を、内面下端部に床2と平行な導電性突条18bが埋設された電磁遮蔽コンクリート10製の周囲壁5で覆った実施例を示す。この場合は、床2上の環状突条12bの床上突出部分と周囲壁5の下端部の導電性突条18bとを導電性接続部材19で電気的に接続することにより、床スラブ6と周囲壁5との接続部を実質上隙間なしに形成できる(図7参照)。周囲壁5の一例は、酸化鉄粒体の混練量と厚さの調節により遮蔽対象周波数に対し所望の遮蔽性能を与える電磁遮蔽コンクリート10製のパネル材である。また、導電性接続部材19の一例は、金属網、金属メッキ布等の導電性部材である。
【0033】
また図6(B)に示すように、電磁遮蔽コンクリート10製の周囲壁5の内面上端部にも上階床3と平行な導電性突条18tを埋設し、上階床に打設した電磁遮蔽コンクリート製床スラブ7の周縁部に埋設した閉鎖環状突条12tと周囲壁上端部の導電性突条18tとを電気的に接続することにより、遮蔽空間1の全周を実質上隙間なしに遮蔽することができる。
【0034】
上階床3にデッキプレート11付き床スラブ7を設けた場合は、周囲壁5の内面上端部に埋設した導電性突条18tを上階床3のデッキプレート11と電気的に接続してもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電磁遮蔽方法は、酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルにより遮蔽すべき空間の床を形成し、空間の周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の下端又は上端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて床と密着させるので、次の顕著な効果を奏する。
【0036】
(イ)遮蔽対象空間の床スラブと周囲壁との突き合わせ部を実質上隙間なしに形成し、突き合わせ部からの電波漏洩をほぼ完全に防ぐことができる。
(ロ)施工が簡単であり、電磁遮蔽の工事期間を短縮することができる。
(ハ)床に埋設した導電性突条と周囲壁の導電性部材とを電気的に接続すれば、床と周囲壁との突合せ部分からの電波漏洩を一層確実に防止できる。
(ニ)また、導電性突条の電食が起こり難いので、初期の遮蔽性能を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の一実施例の説明図である。
【図2】は、床スラブに環状突条を設けた本発明の実施例の説明図である。
【図3】は、床スラブの環状突条と周囲壁の電磁遮蔽部材との接続方法の一例を示す断面図である。
【図4】は、床スラブの環状突条と周囲壁の電磁遮蔽部材との接続方法の他の一例を示す断面図である。
【図5】は、本発明の他の実施例の説明図である。
【図6】は、床スラブに環状突条を設けた本発明の他の実施例の説明図である。
【図7】は、床スラブの環状突条と周囲壁の導電性突条との接続方法の一例を示す断面図である。
【図8】は、デッキプレート付き電磁遮蔽コンクリートスラブの遮蔽性能を示すグラフの一例である。
【図9】は、ひび割れの有無による電磁遮蔽コンクリートの遮蔽性能の相違を示す説明図である。
【符号の説明】
1…電磁遮蔽空間 2…床
3…上階床 5…周囲壁
6…床スラブ 7…上階床スラブ
10…電磁遮蔽コンクリート
11…デッキプレート
12…閉鎖環状突条 13…閉鎖環状突条
14…導電性接続装置 16…普通コンクリート
17…電磁遮蔽部材 17b、17t…折り曲げ部分
18…導電性突条 19…導電性接続部材
20…導電性アングル部材
Claims (10)
- 酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルにより遮蔽すべき空間の床を形成し、前記空間の周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の下端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて前記床と密着させてなる電磁遮蔽工法。
- 請求項1の工法において、前記空間の上階床を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、前記空間の周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の上端における遮蔽対象電波の1/4波長以上の長さ部分を折り曲げて前記上階床と密着させてなる電磁遮蔽工法。
- 酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルにより遮蔽すべき空間の床を形成し、該床の周縁部に沿って該床の頂面から上向きに突出する導電性の閉鎖環状突条を前記コンクリート又はモルタルに埋設し、前記空間の周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の下端縁を前記環状突条の床上突出部分と電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
- 請求項1又は3の工法において、前記空間の上階床にデッキプレート付き床スラブを設け、前記周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の上端縁を前記上階床のデッキプレートと電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
- 請求項1又は3の工法において、前記空間の上階床を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、該上階床の周縁部に沿って該床の底面から下向きに突出する導電性の閉鎖環状突条を前記コンクリート又はモルタルに埋設し、前記周囲壁に設けた電磁遮蔽部材の上端縁を前記上階床の環状突条の床下突出部分と電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
- 酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルにより遮蔽すべき空間の床を形成し、前記空間の周囲壁を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、前記床及び周囲壁の間の間隙を遮蔽対象電波の1/4波長以上の幅で該床及び周囲壁と密着する交差壁面を有する導電性アングル部材により塞いでなる電磁遮蔽工法。
- 請求項6の工法において、前記空間の上階床を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、前記上階床及び周囲壁の間の間隙を遮蔽対象電波の1/4波長以上の幅で該上階床及び周囲壁と密着する交差壁面を有する導電性アングル部材により塞いでなる電磁遮蔽工法。
- 酸化鉄粒体の混練で遮蔽対象周波数の誘電率を高めた電磁遮蔽コンクリート又はモルタルにより遮蔽すべき空間の床を形成し、該床の周縁部に沿って該床の頂面から上向きに突出する導電性の閉鎖環状突条を前記コンクリート又はモルタルに埋設し、前記空間の周囲壁を前記コンクリート又はモルタルにより形成し且つ該周囲壁の内面下端部に前記床と平行に導電性突条を埋設し、前記周囲壁の内面下端部の導電性突条を前記環状突条の床上突出部分と電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
- 請求項8の工法において、前記空間の上階床にデッキプレート付き床スラブを設け、前記周囲壁の内面上端部に前記上階床と平行に導電性突条を埋設し、前記周囲壁の内面上端部の導電性突条を前記上階床のデッキプレートと電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
- 請求項8の工法において、前記空間の上階床を前記コンクリート又はモルタルにより形成し、該上階床の周縁部に沿って該床の底面から下向きに突出する導電性の閉鎖環状突条を前記コンクリート又はモルタルに埋設し、前記周囲壁の内面上端部に前記上階床と平行に導電性突条を埋設し、前記周囲壁の内面上端部の導電性突条を前記上階床の環状突条の床下突出部分と電気的に接続してなる電磁遮蔽工法。
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