運転状態に応じて予混合燃焼と通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関において、予混合燃焼時と通常燃焼時とでは、気筒内に供給すべきEGRガス量に大きな差がある。即ち、予混合燃焼時はその特性上、過早着火が生じやすいため、それを回避すべく通常燃焼時より多量のEGRガスを必要とする。そのため、圧縮着火内燃機関において、燃焼を予混合燃焼から通常燃焼へ切り替える場合、気筒内に供給されるEGRガス量もそれぞれの燃焼に応じた量に切り替える必要がある。
ここで、気筒内へのEGRガス量は、通常、吸気量等のEGRガス量に関連するパラメータがフィードバック制御によって燃焼に応じた値に制御されることで、調整される。しかし、燃焼の切替時には可及的に速やかなEGRガス量の変更が行われるのが望ましいが、フィードバック制御の応答特性によっては、EGRガス量を目的とする量に正確に且つ速やかに変化させることが困難となる場合がある。
本発明では、上記した問題に鑑み、圧縮着火内燃機関の運転状態に応じて予混合燃焼と通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関において、EGRガス量に関連する制御パラメータをフィードバック制御するに際し、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒内に供給されるべく、該制御パラメータの制御を行うことを目的とする。
本発明では、上記した課題を解決するために、第一に、予混合燃焼から通常燃焼への切替を行う燃焼切替制御システムにおいて、燃焼切替時に行われる制御パラメータである吸気量のフィードバック制御の一部もしくは全部を変更し、そのフィードバック制御を変更する所定期間に着目した。吸気量のフィードバック制御を変更することでその応答特性を調整し気筒内へのEGRガスの供給を速やかに行うことが可能となるが、一方でフィードバック制御の変更を行う時間を不必要に長く取ると通常のフィードバック制御を良好に行うことが困難となるため、このフィードバック制御の変更を所定期間に限るものである。
詳細には、本発明は、圧縮着火内燃機関の燃料を気筒内に噴射する燃料噴射弁と、前記圧縮着火内燃機関の運転状態が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた燃焼領域のいずれに属しているかを判定する燃焼領域判定手段と、前記圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた量のEGRガスを前記気筒内に再循環させるべくEGR弁の開度を制御するEGR制御手段と、を備え、前記燃焼領域判定手段によって判定される燃焼領域に応じて、前記燃料噴射弁の燃料噴射条件を制御することで、圧縮行程上死点近傍の時期より早い時期の燃料噴射によって予混合気を形成することで行われる予混合燃焼と圧縮行程上死点近傍の時期の燃料噴射によって行われる通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムであって、前記圧縮着火内燃機関における実際の吸気量である実吸気量が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた目標吸気量になるべく吸気量のフィードバック制御を行う吸気量フィードバック制御手段と、予混合燃焼から通常燃焼への切替時に前記フィードバック制御における前記目標吸気量と前記実吸気量との吸気量差が所定吸気量以上となる場合、所定期間、前記吸気量フィードバック制御手段による吸気量のフィードバック制御を一時的に変更し吸気量を当初より増量させる吸気量フィードバック制御変更手段と、を更に備え、前記所定期間は、前記吸気量差が大きくなるに従い、長くなる圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムである。
上述の圧縮着火内燃機関においては、圧縮着火内燃機関の機関回転速度や機関負荷等によって決定される運転状態がどの燃焼領域に属するか、即ち燃焼領域判定手段によって判定される燃焼領域が、予混合燃焼が行われる予混合燃焼領域と通常燃焼が行われる通常燃焼領域との何れであるかによって、該内燃機関で行われる燃焼が決定される。この予混合燃焼領域および通常燃焼領域は、予混合燃焼時の過早着火の生じやすさ等に基づいて実験等で決定される。
ここで、圧縮着火内燃機関において予混合燃焼を行う場合は、燃料噴射を圧縮行程上死点近傍の時期、即ち通常燃焼時の燃料噴射時期より早い時期に行うことで、吸気と燃料がより混合された予混合気を形成する。これによって、NOxやスモークの抑制を図る。尚、本発明における予混合燃焼においては、予混合燃料を一回の燃料噴射で噴射する場合に限られず、気筒の内壁面に燃料が付着するのを回避する等の理由で複数回の燃料噴射によって予混合燃料を噴射する場合も含まれる。また、通常燃焼時は、圧縮行程上死点近傍の時期に燃料を噴射していわゆる拡散燃焼が行われる。
圧縮着火内燃機関で予混合燃焼が行われているときに圧縮着火内燃機関の運転状態が変動し燃焼領域判定手段によって判定された燃焼領域が予混合燃焼領域から通常燃焼領域へ移行することで、予混合燃焼から通常燃焼への切替が行われる。この燃焼の切替時には、予混合燃焼時の燃料噴射と通常燃焼時の燃料噴射とは異なる態様の燃料噴射が行われることで、燃焼切替を円滑に行うことが好ましい。
ここで、予混合燃焼と通常燃焼が行われているときとでは、それぞれの燃焼に応じた適量のEGRガスが、EGR制御手段によって気筒内に再循環させられている。このEGRガス量は、それぞれの燃焼状態において燃焼騒音が増大したりエミッションが悪化したり
するのを回避すべく、予混合燃焼や通常燃焼の燃焼特性が考慮された上で決定される。
このEGRガス量の調整は、それと関連のある吸気量がフィードバック制御手段によって制御されることを介して、行われる。具体的には、吸気量を増量するとそれに伴い気筒内に供給されるEGRガス量は減量され、逆に吸気量を減量するとそれに伴い気筒内に供給されるEGRガス量は増量される。この吸気量のフィードバック制御は、実空気量を燃焼に応じた目標空気量に制御することで、EGRガス量が燃焼に適した量に調整される。
ここで、予混合燃焼から通常燃焼への切替時には、気筒内に供給されるEGRガス量を予混合燃焼に適した量から通常燃焼に適した量に速やかに減量する必要がある。即ち、吸気量を速やかに増量することでEGRガス量を減量する必要がある。しかし、予混合燃焼や通常燃焼が行われているときの、燃焼切替が行われていない通常時の吸気量フィードバック制御のままでは、燃焼の切替時に十分に早い応答速度をもって吸気量を変化させることは困難である。一方で、EGR弁の遮断を行うことでEGRガス量を減量することも可能であるが、該EGR弁遮断を長期にわったて継続すると、燃焼が通常燃焼に切り替わったときに気筒内に供給されるEGRガス量が過少となり燃焼状態が悪化する虞がある。
そこで、上記の燃焼切替制御システムでは、実吸気量と目標吸気量との吸気量差が拡大し所定吸気量以上となった場合、即ち、予混合燃焼から通常燃焼へと切り替えられる際に、吸気量フィードバック手段による吸気量のフィードバック制御が十分に速やかに応答することが困難となり、フィードバック制御におけるエラー量が増加した場合、吸気量フィードバック制御変更手段によって、該吸気量のフィードバック制御を変更する。従って、前記所定吸気量とは、該吸気量のフィードバック制御の変更を行うと判断するためのフィードバック制御におけるエラー量である。尚、ここでいうフィードバック制御の変更とは、それまで行っていたフィードバック制御において、その制御パラメータの一部または全部をそれまでとは異なった値に変更することやフィードバック制御自体を中断することを意味し、換言すると通常と異なる吸気量の制御およびそれに伴うEGRガス量の制御を意味する。
そして、この吸気量のフィードバック制御の変更を前記所定期間に限ることで、通常と異なるフィードバック制御が行われる時間を制限し、一時的にフィードバック制御の応答速度を高めて吸気量を当初より増量させるとともに、それに合わせて副作用的に生じる実吸気量の急激な変動の影響を可及的に抑制し得る。従って、前記所定期間とは、フィードバック制御の応答速度の向上とその副作用の抑制の均衡を保つための期間である。
また、前記所定期間は一定ではなく、前記吸気量差に基づいて可変制御される。即ち、フィードバック制御におけるエラー量である吸気量差が大きくなるに従い、実吸気量をより確実に目標吸気量に到達させる必要があると判断し、所定期間の長さを長くする。この結果、EGRガス量に関連する制御パラメータである吸気量をフィードバック制御するに際し、吸気量の制御を介して、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒内に供給される。
上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気量フィードバック制御変更手段は、前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記吸気量フィードバック制御手段による吸気量のフィードバック制御を中断し、且つ前記EGR弁の開度を全閉としてもよい。即ち、吸気量のフィードバック制御を中断し且つEGR弁の開度を全閉とすることで、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気量のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
また、上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気量フィードバック制御変更手段は、前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記吸気量フィードバック制御手段による吸気量のフィードバック制御において、前記目標吸気量の値を前記吸気量差が大きくなるに従って増大させてもよい。即ち、フィードバック制御における目標吸気量の値を増加させることで、一時的にフィードバック制御のエラー量が増加する。これにより、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気量のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
また、上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気量フィードバック制御変更手段は、前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記フィードバック制御手段による吸気量のフィードバック制御におけるゲインの値を、前記吸気量差が大きくなるに従って増大させてもよい。即ち、フィードバック制御におけるゲインの値を増加させることで、一時的にフィードバック制御の指令量が増加する。これにより、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気量のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
ここで、上述までの圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記目標吸気量は、予混合燃焼から通常燃焼への切替時においては前記圧縮着火内燃機関のアクセル開度に基づいて決定され、該切替時を除く予混合燃焼時または通常燃焼時においては前記燃料噴射弁からの燃料噴射量に基づいて決定されるようにしてもよい。即ち、予混合燃焼から通常燃焼への切替時には、アクセル開度に基づくことで圧縮着火内燃機関の運転状態の変動を直ちに検出し目標吸気量の決定を行い、燃焼状態の悪化を抑制しながらより円滑な燃焼の切替を行うことが可能となる。
第二に、本発明では、上記した課題を解決するために、予混合燃焼から通常燃焼への切替を行う燃焼切替制御システムにおいて、燃焼切替時に行われる制御パラメータである吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の一部もしくは全部を変更し、そのフィードバック制御を変更する所定期間に着目した。吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を変更することでその応答特性を調整し、気筒内へのEGRガスの供給を速やかに行うことが可能となるが、一方でフィードバック制御の変更を行う時間を不必要に長く取ると通常のフィードバック制御を良好に行うことが困難となるため、このフィードバック制御の変更を所定期間に限るものである。
詳細には、本発明は、圧縮着火内燃機関の燃料を気筒内に噴射する燃料噴射弁と、前記圧縮着火内燃機関の運転状態が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた燃焼領域のいずれに属しているかを判定する燃焼領域判定手段と、前記圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた量のEGRガスを前記気筒内に再循環させるべくEGR弁の開度を制御するEGR制御手段と、を備え、前記燃焼領域判定手段によって判定される燃焼領域に応じて、前記燃料噴射弁の燃料噴射条件を制御することで、圧縮行程上死点近傍の時期より早い時期の燃料噴射によって予混合気を形成することで行われる予混合燃焼と圧縮行程上死点近傍の時期の燃料噴射によって行われる通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムであって、前記圧縮着火内燃機関における吸気絞り弁の実際の開度である実開度が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた目標開度になるべく該吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を行う吸気絞り弁開度フィードバック制御手段と、予混合燃焼から通常燃焼への切替時に、前記フィードバック制御における前記目標開度と前記実開度との開度差が所定開度以上となる場合、もしくは該目標開度に対応する目標吸気
量と該実開度に対応する実吸気量との吸気量差が所定吸気量以上となる場合、所定期間、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を一時的に変更し吸気量を当初より増量させる吸気絞り弁開度フィードバック制御変更手段と、を更に備え、前記所定期間は、前記開度差もしくは前記吸気量差が大きくなるに従い、長くなる圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムである。
上記の圧縮着火内燃機関において、予混合燃焼と通常燃焼が行われているときとでは、それぞれの燃焼に応じた適量のEGRガスが、EGR制御手段によって気筒内に再循環させられている。このEGRガス量は、それぞれの燃焼状態において燃焼騒音が増大したりエミッションが悪化したりするのを回避すべく、予混合燃焼や通常燃焼の燃焼特性が考慮された上で決定される。
このEGRガス量の調整は、それと関連のある吸気絞り弁の開度がフィードバック制御手段によって制御されることを介して、行われる。具体的には、吸気絞り弁の開度を開け側に変更して吸気量を増量するとそれに伴い気筒内に供給されるEGRガス量は減量され、逆に吸気絞り弁の開度を閉じ側に変更して吸気量を減量するとそれに伴い気筒内に供給されるEGRガス量は増量される。この吸気絞り弁の開度のフィードバック制御は、実開度を燃焼に応じた目標開度に制御することで、EGRガス量が燃焼に適した量に調整される。
ここで、予混合燃焼から通常燃焼への切替時には、気筒内に供給されるEGRガス量を予混合燃焼に適した量から通常燃焼に適した量に速やかに減量する必要がある。即ち、吸気量を速やかに増量することでEGRガス量を減量する必要がある。しかし、予混合燃焼や通常燃焼が行われているときの、燃焼切替が行われていない通常時の吸気絞り弁の開度のフィードバック制御のままでは、燃焼の切替時に十分に早い応答速度をもって吸気絞り弁の開度を変化させることは困難である。一方で、EGR弁の遮断を行うことでEGRガス量を減量することも可能であるが、該EGR弁遮断を長期にわったて継続すると、燃焼が通常燃焼に切り替わったときに気筒内に供給されるEGRガス量が過少となり燃焼状態が悪化する虞がある。
そこで、上記の燃焼切替制御システムでは、実開度と目標開度との開度差が拡大し所定開度以上となった場合、または、目標開度に対応する目標吸気量と実開度に対応する実吸気量との吸気量差が所定吸気量以上となった場合、換言すると、予混合燃焼から通常燃焼へと切り替えられる際に、吸気絞り弁開度フィードバック手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御が十分に速やかに応答することが困難となり、フィードバック制御におけるエラー量が増加した場合、吸気絞り弁開度フィードバック制御変更手段によって、該吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を変更する。従って、前記所定開度および前記所定吸気量とは、該吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の変更を行うと判断するためのフィードバック制御におけるエラー量である。尚、ここでいうフィードバック制御の変更は、上述と同様である。
そして、この吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の変更を前記所定期間に限ることで、通常と異なるフィードバック制御が行われる時間を制限し、一時的にフィードバック制御の応答速度を高めて吸気量を当初より増量させるとともに、それに合わせて副作用的に生じる、実開度の変動に伴った実吸気量の急激な変動の影響を可及的に抑制し得る。従って、前記所定期間とは、フィードバック制御の応答速度の向上とその副作用の抑制の均衡を保つための期間である。
また、前記所定期間は一定ではなく、前記開度差または前記吸気量差に基づいて可変制御される。即ち、フィードバック制御におけるエラー量である開度差または吸気量差が大
きくなるに従い、実開度をより確実に目標開度に到達させる必要があると判断し、所定期間の長さを長くする。この結果、EGRガス量に関連する制御パラメータである吸気絞り弁の開度をフィードバック制御するに際し、吸気量の制御を介して、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒内に供給される。
上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御変更手段は、前記開度差が前記所定開度以上となる場合、もしくは前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を中断し、且つ該吸気絞り弁の開度を全開としてもよい。即ち、吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を中断し且つ該吸気絞り弁の開度を全開とすることで、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気絞り弁の開度のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
また、上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御変更手段は、前記開度差が前記所定開度以上となる場合、もしくは前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御において、前記目標開度の値を、前記開度差もしくは前記吸気量差が大きくなるに従って、増大させてもよい。即ち、フィードバック制御における目標開度の値を増加させることで、一時的にフィードバック制御のエラー量が増加する。これにより、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気絞り弁の開度のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
また、上記の圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御変更手段は、前記開度差が前記所定開度以上となる場合、もしくは前記吸気量差が前記所定吸気量以上となる場合、前記所定期間、前記吸気絞り弁開度フィードバック制御手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御におけるゲインの値を、前記開度差もしくは前記吸気量差が大きくなるに従って、増大させてもよい。即ち、フィードバック制御におけるゲインの値を増加させることで、一時的にフィードバック制御の指令量が増加する。これにより、気筒内に急激に吸気を導入することが可能となる。当然、この吸気絞り弁の開度のフィードバック制御変更は、所定期間に限って行われるものである。そのようにすることで、上述したように燃焼の切替に応じた速やかな吸気量の増量、換言するとEGRガス量の減量と、その副作用の影響との均衡を保つことが可能となる。
ここで、上述までの圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムにおいて、前記目標開度は、予混合燃焼から通常燃焼への切替時においては前記圧縮着火内燃機関のアクセル開度に基づいて決定され、該切替時を除く予混合燃焼時または通常燃焼時においては前記燃料噴射弁からの燃料噴射量に基づいて決定されるようにしてもよい。即ち、予混合燃焼から通常燃焼への切替時には、アクセル開度に基づくことで圧縮着火内燃機関の運転状態の変動を直ちに検出し目標開度の決定を行い、燃焼状態の悪化を抑制しながらより円滑な燃焼の切替を行うことが可能となる。
第三に、本発明では、上記した課題を解決するために、予混合燃焼から通常燃焼への切替を行う燃焼切替制御システムにおいて、燃焼切替時に行われる制御パラメータであるE
GR弁の開度制御を介した吸気量のフィードバック制御および吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の一部もしくは全部を変更し、そのフィードバック制御を変更するそれぞれの所定期間に着目するとともに、吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の変更を、EGR弁の開度制御を介した吸気量のフィードバック制御変更より優先して行うこととした。
吸気量および吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を変更することでその応答特性を調整し、気筒内へのEGRガスの供給を速やかに行うことが可能となるが、一方でフィードバック制御の変更を行う時間を不必要に長く取ると通常のフィードバック制御を良好に行うことが困難となるため、このフィードバック制御の変更をそれぞれの所定期間に限るものである。
また、吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の変更を優先して行うのは、EGR弁の開度を調整して吸気量を制御するよりも吸気絞り弁の開度を調整して吸気量を制御する方が、吸気を効率的に気筒内に導入することが可能となるからである。特に、圧縮着火内燃機関に過給機が備えられ、該過給機によってEGRガスが過給されている場合、先にEGR弁の開度を大きく変化させてしまうと、吸気におけるEGRガスと新気とのバランスが急変し、気筒内での燃焼状態に悪影響を与える虞がある。そこで、気筒内での燃焼状態を考慮しても、吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の変更を優先して行うのが好ましい。
詳細には、本発明は、圧縮着火内燃機関の燃料を気筒内に噴射する燃料噴射弁と、前記圧縮着火内燃機関の運転状態が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた燃焼領域のいずれに属しているかを判定する燃焼領域判定手段と、前記圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた量のEGRガスを前記気筒内に再循環させるべくEGR弁の開度を制御するEGR制御手段と、を備え、前記燃焼領域判定手段によって判定される燃焼領域に応じて、前記燃料噴射弁の燃料噴射条件を制御することで、圧縮行程上死点近傍の時期より早い時期の燃料噴射によって予混合気を形成することで行われる予混合燃焼と圧縮行程上死点近傍の時期の燃料噴射によって行われる通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムであって、前記圧縮着火内燃機関における実際の吸気量である実吸気量が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた目標吸気量になるべく吸気量のフィードバック制御を行う吸気量フィードバック制御手段と、前記圧縮着火内燃機関における吸気絞り弁の実際の開度である実開度が、該圧縮着火内燃機関で行われる燃焼に応じた目標開度になるべく該吸気絞り弁の開度のフィードバック制御を行う吸気絞り弁開度フィードバック制御手段と、予混合燃焼から通常燃焼への切替時に、前記目標開度と前記実開度との開度差が所定開度以上となる場合、もしくは前記目標吸気量と前記実吸気量との吸気量差が所定吸気量以上となる場合、第一所定期間における前記吸気絞り弁開度フィードバック制御手段による吸気絞り弁の開度のフィードバック制御の中断および該吸気絞り弁の開度の全開への変更を、第二所定期間における前記吸気量フィードバック制御手段による吸気量のフィードバック制御の中断および前記EGR弁の開度の全閉への変更より優先して行うフィードバック制御変更手段と、を更に備え、前記第一所定期間は、前記開度差が大きくなるに従い、長くなり、前記第二所定期間は、前記開度差もしくは前記吸気量差が大きくなるに従い、長くなる圧縮着火内燃機関の燃焼切替制御システムである。
圧縮着火内燃機関の運転状態に応じて予混合燃焼と通常燃焼とを切り替えて行う圧縮着火内燃機関において、EGRガス量に関連する制御パラメータをフィードバック制御するに際し、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒内に供給されるべく、該制御パラメータの制御を行うことが可能となる。
図1は、本発明が適用される圧縮着火内燃機関(以下、単に「内燃機関」という。)1およびその制御系統の概略構成を表すブロック図である。内燃機関1は、4つの気筒2を有する圧縮着火式内燃機関である。また、気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を備えている。燃料噴射弁3は、所定圧に加圧された燃料を貯留する蓄圧室4と接続されている。内燃機関1には吸気枝管7が接続されており、吸気枝管7の各枝管は、吸気ポートを介して燃焼室に接続される。同様に、内燃機関1には排気枝管12が接続され、排気枝管12の各枝管は排気ポートを介して燃焼室に接続される。ここで、吸気ポートおよび排気ポートには、各々吸気弁および排気弁が設けられている。
また、吸気枝管7は吸気管8に接続されている。更に、吸気管8における吸気枝管7の直上流に位置する部位には、吸気管8内を流れる吸気の流量を調節する吸気絞り弁10が、更に吸気絞り弁10の上流側には、吸気管8を流れる吸気量を検出するエアフローメータ9が設けられている。この吸気絞り弁10には、ステップモータ等で構成されて該吸気絞り弁10を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ11が取り付けられている。
エアフローメータ9と吸気絞り弁10との間に位置する吸気管8には、排気のエネルギーを駆動源として作動する過給機16のコンプレッサ側が設けられ、排気枝管12には過給機16のタービン側が設けられている。ここで、過給機16は、図2に示すように、低圧側過給機16bと高圧側過給機16aが直列に構成される二段過給機である。先ず、排気によって低圧側過給機16bによって一段階目の過給圧に加圧された後に下流の吸気管に設けられた吸気冷却用のインタークーラ16cによって冷却され、更に高圧側過給機16aによって目的の過給圧へと加圧される。ここで、過給機16における高圧側過給機16aは、いわゆる可変容量型遠心過給機であって、高圧側過給機16aの可変ノズルの開度が調整されることで、最終的に到達する過給圧を細かく調整することが可能となる。
また、過給機16内部には、EGR装置21が設けられている。EGR装置21は、高圧側過給機16aのタービン側から排出された排気の一部を、そのコンプレッサ側へ再循環させる。EGR装置21は、タービン側(上流側)からコンプレッサ側(下流側)へ延出しているEGR通路22と、EGR通路22上に上流側から順に設けられたEGRガス冷却用のEGRクーラ23と、EGRガスの流量調整用のEGR弁24と、から構成される。
また、過給機16の高圧側過給機16aのタービン側に排気が流入するのを回避するためのバイパス路17が、高圧側過給機16aの上流側の排気枝管12の部位から、高圧側過給機16aのタービン側と低圧側過給機16bのタービン側の間の排気通路の部位であってEGR装置21の排気導入部より下流側の部位へと繋がっている。そして、後者の部位にはバイパス通路17における排気の流れを制御する流路切替弁18が設けられている。従って、流路切替弁18が閉弁しているときは、排気は、高圧側過給機16a、低圧側過給機16bのタービン側に順次流れ込むことで、内燃機関1において比較的高い過給圧を発生させる。このとき、排気の一部はEGR装置21によって、高圧側過給機16aのコンプレッサ側に再循環される。一方で、流路切替弁18が開弁しているときは、高圧側過給機16aのタービン側に流れ込む排気量は減少し、低圧側過給機16bのタービン側に作用する排気エネルギーが大きくなる。従って、過給機16によって行われる過給が一段過給となり、流路切替弁18は閉弁されて二段過給される場合と比べて最終的な過給圧が低下する。流路切替弁18による排気の流れの切替は、内燃機関1での燃焼に応じて行われ、その制御については後述する。
図1に戻って、過給機16より下流の吸気管8には、過給機16における高圧側過給機16aによって加圧されて高温となった吸入空気を冷却するためのインタークーラ15が設けられている。また、過給機16のタービン側は、排気管13と接続され、この排気管13は、下流にてマフラーに接続されている。そして、排気管13の途中には、内燃機関1からの排気を浄化する排気浄化触媒14が設けられている。
また、内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(以下、「ECU」という)20が併設されている。このECU20は、CPUの他、後述する各種のプログラム及びマップを記憶するROM、RAM等を備えており、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態等を制御するユニットである。
ここで、燃料噴射弁3は、ECU20からの制御信号によって開閉動作を行う。即ち、ECU20からの指令によって、燃料噴射弁3からの燃料噴射時期および燃料噴射量が、内燃機関1の機関負荷や機関回転速度等の運転状態に応じて、噴射弁毎に制御され、以て内燃機関1において予混合燃焼や、通常燃焼が行われる。内燃機関1で行われる燃焼制御につては、後述する。また、EGR弁24、アクチュエータ11、高圧側過給機16aの可変ノズルの開度、流路切替弁18の開閉等も、ECU20からの指令に従って制御される。
更に、アクセル開度センサ26がECU20と電気的に接続されており、ECU20はアクセル開度に応じた信号を受け取り、それより内燃機関1に要求される機関負荷等を算出する。また、クランクポジションセンサ25がECU20と電気的に接続されており、ECU20は内燃機関1の出力軸の回転角に応じた信号を受け取り、内燃機関1の機関回転速度や、該機関回転速度とギア比等から内燃機関1が搭載されている車両の車両速度等を算出する。更に、エアフローメータ9がECU20と電気的に接続され、吸気管8を流れる吸気量をECU20が取得する。
ここで、上記の内燃機関1においては、機関回転速度および機関負荷で表される内燃機関1の運転状態に基づいて、予混合燃焼と通常燃焼との切替が行われる。図3に、内燃機関1の運転状態の属する燃焼領域と内燃機関1で行われる燃焼との関係を示す。尚、図3に示すグラフの横軸は内燃機関1の機関回転速度で、縦軸は内燃機関1の機関負荷を表す。ここで、内燃機関1の運転状態は機関回転速度と機関負荷とで表され、低負荷側の予混合燃焼領域R1、高負荷側の通常燃焼領域R2の何れかの燃焼領域に属する。
内燃機関1の機関負荷が大きくなり燃焼室に供給される燃料量が増大すると、又は機関回転速度が高くなり燃焼室内に予混合気を形成する実質的な時間が短くなると、燃焼室に形成される予混合気が均一とならず、過早着火が生じやすくなる。そこで、内燃機関1の運転状態が、過早着火を回避し得る予混合燃焼領域R1に属するときは予混合燃焼を行うことで、エミッションの改善や燃焼騒音の低減を図る。また、内燃機関1が、過早着火の回避が困難となる通常燃焼領域R2に属するときは予混合燃焼ではなく、いわゆる拡散燃焼である通常燃焼を行うことで、高機関出力の発揮を図る。
上述したように、内燃機関1の運転状態が属する燃焼領域に応じて、予混合燃焼又は通常燃焼が行われるが、予混合燃焼時には、燃料噴射時期が圧縮行程上死点近傍の時期より早い時期において燃料噴射弁3から燃料が噴射されることで、気筒2内に予混合気が形成される。そして、予混合燃焼時の過早着火を抑制するために、内燃機関1の運転状態が予混合燃焼領域R1に属すると、ECU20によってEGR弁24の開度が、内燃機関1の運転状態が通常燃焼領域R2に属する場合よりも開き側に制御され、より多くのEGRガスが吸気枝管7を経て気筒2内に供給される。即ち、予混合燃焼と通常燃焼が行われると
きとでは、EGR弁24の開度は、それぞれの燃焼に適した開度に制御される。
また、内燃機関1において予混合燃焼が行われるときは、気筒2内に吸気を導入すべく比較的高い過給圧が要求される。そこで、予混合燃焼時には、流路切替弁18を閉弁状態として内燃機関1における過給圧を上昇させる。一方で、通常燃焼時は、機関負荷が比較的大きいことによって排気枝管12内の排気圧の過度の上昇に伴い燃焼状態が悪化するのを回避するために、流路切替弁18を開弁状態とする。
このように構成される内燃機関1において、内燃機関1の機関負荷が上昇して、内燃機関1の運転状態が属する燃焼領域が予混合燃焼領域R1から通常燃焼領域R2へ変化したとき、予混合燃焼から通常燃焼への切替を行う必要がある。しかし、このような場合であっても、ECU20からの指令によってEGR弁24の開度が予混合燃焼から通常燃焼に適した閉じ側の開度に制御されても、吸気枝管7やEGR通路22の容積等によって気筒2内に供給されるEGRガス量は通常燃焼に適したEGRガス量に直ちに変化しない。その結果、燃焼状態が不安定になったりエミッションが悪化したりする虞がある。
そこで、予混合燃焼から通常燃焼への切替時には、その遷移状態に応じた燃焼が内燃機関1で行われることで、燃焼状態が不安定になったりエミッションが悪化したりしないように、燃料噴射弁3からの燃料噴射が制御される。その燃焼切替時の燃料噴射制御について、図4および図5に基づいて説明する。
図4は、予混合燃焼から通常燃焼への切替が行われる際の、燃料噴射の様子を示す。予混合燃焼時の燃料噴射の様子は図4(a)に示され、内燃機関1の機関負荷が上昇するに従い、図4(b)、(c)の順に燃焼の遷移状態における燃料噴射が実行され、最終的に図4(d)に示すような通常燃焼時の燃料噴射が行われる。
先ず、予混合燃焼時は、図4(a)に示すように、圧縮行程上死点TDCより早い時期の予混合燃焼時噴射開始時期HCCI_ainjに、燃料噴射弁3から燃料噴射が行われる。尚、図中Qとあるのは、燃料噴射量を意味する。従って、本実施例においては、予混合燃焼時噴射開始時期HCCI_ainjに燃料噴射量25の燃料噴射が行われている予混合燃焼から、通常燃焼への切替が行われる。尚、図4中の燃料噴射量は一例示であり、本発明の実施例はこの燃料噴射量に限定されない。
ここで、通常燃焼への第一段階として、図4(b)に示される燃料噴射が行われる。図4(b)に示す燃料噴射の態様を、第一燃料噴射モードという。第一燃料噴射モードでは、早い時期に行われるプレ噴射と該プレ噴射の後に行われるメイン噴射の二段噴射が行われる。これは、予混合燃焼から通常燃焼への切替時において燃焼状態が急激に変化しないように、切替前の予混合燃焼における燃料噴射と切替後の通常燃焼における燃料噴射とを複合させた燃焼の遷移状態における燃料噴射の態様である。
このときプレ噴射の燃料噴射開始時期Pre_ainjは予混合燃焼時噴射開始時期HCCI_ainjと同時期であり、プレ噴射の燃料噴射量(Q=23)とメイン噴射の燃料噴射量(Q=2)との和は、切替直前の予混合燃焼時の燃料噴射量(Q=25)と同量である。即ち、予混合燃焼からの燃焼切替が開始された段階の第一燃料噴射モードでは、予混合燃焼時の燃料噴射態様に近づけることで、燃焼状態が急激に変化するのが抑制される。
ここで、燃料噴射弁3からは蓄圧室4内に貯留された加圧燃料が噴射されるが、一度燃料噴射弁3が開弁すると蓄圧室4内の圧力が局所的に低下し、その圧力の変動波が蓄圧室4の内壁に反射されて圧力脈動が生じる。この圧力脈動は時間の経過とともに減衰するが
、まだ圧力脈動が顕著なときに再び燃料噴射弁3から燃料噴射を行うべく開弁しても、燃料噴射弁3の噴射圧がばらつくため開弁時間と燃料噴射量との関係がばらつき、正確な燃料噴射量の制御が困難となる。これは、図4(b)に示すようなプレ噴射とメイン噴射の二段噴射を行う場合、メイン噴射の燃料噴射量のばらつきの要因になる。
更に、プレ噴射の燃料噴射量が多いほど蓄圧室4内の圧力変動が大きくなるため、メイン噴射の燃料噴射量のばらつきも大きくなる傾向がある。メイン噴射量のばらつきが大きくなると、燃焼切替時に対応した燃料噴射が困難となり、燃焼状態が不安定となったりエミッションが悪化したりする虞がある。
そこで、第一燃料噴射モードにおいては、プレ噴射とメイン噴射との燃料噴射間隔が所定間隔Pint2に維持される。この所定間隔Pint2は、燃料噴射弁3と蓄圧室4との相関によって決定される時間である。図5に、燃料噴射弁3からプレ噴射を行いその後メイン噴射を行ったときの、該メイン噴射の燃料噴射量のばらつきを実験によって計測した結果である。図5のグラフの横軸は、プレ噴射とメイン噴射との燃料噴射間隔であり、縦軸はメイン噴射の燃料噴射のばらつきΔQである。このばらつきは、目標とする燃料噴射量を達成する開弁時間において、燃料噴射弁3から実際に噴射された燃料噴射量と目標とする燃料噴射量との差である。
図5中には、プレ噴射とメイン噴射の合計燃料噴射量は同量であって、プレ噴射の燃料噴射量とメイン噴射の燃料噴射量との比率が異なる三通りの燃料噴射態様において、燃料噴射間隔に対するメイン噴射の燃料噴射量のばらつきが示されている。このように、プレ噴射とメイン噴射との関係によって、メイン噴射の燃料噴射量のばらつきは変動するが、その中でも、プレ噴射の燃料噴射量とメイン噴射の燃料噴射との比率にかかわらず、該メイン噴射の燃料噴射量のばらつきが略一定となる燃料噴射間隔が存在する。本実施例においては、燃料噴射間隔が2.5msec近傍のときに、メイン噴射の燃料噴射量のばらつきが略一定となると認められる。
これは、プレ噴射において燃料噴射弁3が開弁することで蓄圧室4内に生じる圧力脈動が、蓄圧室4の形状や燃料噴射弁3と蓄圧室4との接続状態によって、略一定となることが原因の一つと考えられ得る。従って、このメイン噴射の燃料噴射量のばらつきが略一定となる燃料噴射間隔は、実際の燃料噴射弁3や蓄圧室4の状況に応じて決定される。
ここで、第一燃料噴射モードにおける所定間隔Pint2を2.5msec近傍の時間に設定すると、プレ噴射とメイン噴射の相関にかかわらずメイン噴射の燃料噴射量のばらつきが略一定とすることが可能となる。そこで、そのばらつきを解消すべくメイン噴射における燃料噴射弁3の開弁時間を調整することで、メイン噴射の燃料噴射量をより正確に制御することが可能となる。
第一燃料噴射モードにおいては、プレ噴射の燃料噴射開始時期Pre_ainjは、予混合燃焼時噴射開始時期HCCI_ainjと同時期とし、該プレ噴射における燃料噴射弁3の開弁時間τ1は目標の燃料噴射量(Q=23)を噴射し得る時間である。そして、プレ噴射の終了後、所定間隔Pint2をもってメイン噴射が開始される。従って、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjは、プレ噴射の燃料噴射開始時期Pre_ainjから、プレ噴射の開弁時間τ1と所定間隔Pint2が経過した時期となる。そのため、プレ噴射の開弁時間τ1と所定間隔Pint2次第で、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjが圧縮行程上死点TDCの前後の何れになるかが決定される。
次に、第一燃料噴射モードによる燃料噴射が開始されてから時間の経過とともに、プレ噴射とメイン噴射の各燃料噴射時期を進角側に移行する。このときプレ噴射とメイン噴射
との燃料噴射間隔は、所定間隔Pint2に維持される。そして、この燃料噴射時期の進角側への移行にともない、プレ噴射の燃料噴射量を減少させ且つメイン噴射の燃料噴射量を増加させる。
燃料噴射時期の進角側への移行は、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjが、燃焼切替後に行われる通常燃焼での圧縮行程TDC近傍での燃料噴射時期と同時期となるまで行われる。これにより、燃焼切替時の燃料噴射態様が、第一燃料噴射モードから第二燃料噴射モードへと移行する。この第二燃料噴射モードによる燃料噴射の様子が、図4(c)に示されている。
第二燃料噴射モードにおいては、上述したように、プレ噴射の燃料噴射量(Q=2)は、第一燃料噴射モードにおけるプレ噴射の燃料噴射量より減量され、且つメイン噴射の燃料噴射量(Q=23)は、第一燃料噴射モードにおけるメイン噴射の燃料噴射量より増量される。そして、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjは、燃焼切替後の通常燃焼での圧縮行程TDC近傍での燃料噴射時期と同時期であって、プレ噴射とメイン噴射との燃料噴射間隔は所定間隔Pint2である。従って、プレ噴射の燃料噴射開始時期Pre_ainjは、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjより、プレ噴射の開弁時間τ2と所定間隔Pint2前の時期となる。
以上より、第二燃料噴射モードは、予混合燃焼時の燃料噴射態様に近い第一燃料噴射モードから、通常燃焼時の燃料噴射態様により近づいた燃料噴射態様と言い得る。この第二燃料噴射モードを経ることで、予混合燃焼から通常燃焼への燃焼切替をより円滑に行うことが可能となる。
次に、図4(c)に示す第二燃料噴射モードが行われた後、図4(d)に示す通常燃焼時の燃料噴射態様へと切り替えられ、予混合燃焼から通常燃焼への燃焼切替が終了する。尚、本実施例においては、メイン噴射に加えて、該メイン噴射より早い時期のパイロット噴射が行われる。このパイロット噴射は、燃焼切替時のプレ噴射とは異なり、図5に示すメイン噴射の燃料噴射量のばらつきを可及的に抑制し得る燃料噴射間隔をメイン噴射に対して有する燃料噴射ではなく、メイン噴射による燃焼騒音を可及的に抑制し得るパイロット用燃料噴射間隔Pint0をメイン噴射に対して有する燃料噴射である。
従って、通常燃焼時は、パイロット噴射によって生じるメイン噴射の燃料噴射量のばらつき抑制より、メイン噴射の燃焼騒音の抑制を優先して、パイロット噴射とメイン噴射の燃料噴射間隔が設定される。そこで、パイロット噴射の燃料噴射開始時期Pilot_ainjは、メイン噴射の燃料噴射開始時期Main_ainjより、パイロット噴射の開弁時間τ3とパイロット用燃料噴射間隔Pint0前の時期となる。
尚、本実施例においては、通常燃焼切替直後の燃料噴射量は、パイロット噴射でQ=2、メイン噴射でQ=25となり、合計でQ=27となる。これは、予混合燃焼から通常燃焼への移行の過程で、内燃機関1の機関負荷が増加していることに対応して、燃料噴射量の合計が増加したものである。
図4に示すように、予混合燃焼から通常燃焼への切替時に、第一燃料噴射モードと第二燃料噴射モードによる燃料噴射態様を経ることで、メイン噴射の燃料噴射量のばらつきを可及的に抑制してより正確な燃料噴射を行い、以てより円滑な燃焼切替が可能となる。ここで、内燃機関1において予混合燃焼から通常燃焼への燃焼切り替えを行う際に、より円滑な燃焼切替を行うべく、図6に示す燃焼切替制御が行われる。以下に、燃焼切替制御について説明する。尚、本実施例における燃焼切替制御は、ECU20によって一定のサイクルで繰り返し実行されるルーチンである。
S101では、吸気量フィードバック制御が実行される。尚、この吸気量フィードバック制御は、本燃焼切替制御が行われるときのみならず、内燃機関1において予混合燃焼または通常燃焼が行われているときにも実行されている。その制御内容は、気筒2に供給される実際の吸気量(以下、「実吸気量」という。)が、内燃機関1で行われる燃焼に適した量の吸気量(以下、「目標吸気量」という。)になるべく、エアフローメータ9による検出値に基づいて、吸気量に関連する機関要素(例えば、吸気絞り弁10の開度や高圧側過給機16aの可変ノズル開度等)がフィードバック制御される。S101の処理が終了すると、S102へ進む。
S102では、内燃機関1の機関回転速度と機関負荷で表される運転状態が、予混合燃焼領域R1に属しているか否かが判定される。該運転状態が予混合燃焼領域R1に属していると判定されるとS103へ進み、該運転状態が予混合燃焼領域R1に属していないと判定されると本制御を終了する。
S103では、S102で予混合燃焼領域R1に属していると判定された内燃機関1の運転状態が、通常燃焼領域R2に移行したか否かが判定される。即ち、内燃機関1での燃焼を予混合燃焼から通常燃焼へと切り替える条件である燃焼領域の変更が生じたかを判定する。該運転状態が通常燃焼領域R2に移行したと判定されると、S104へ進む。該運転状態が通常燃焼領域R2に移行していないと判定されると、本制御を終了する。
S104では、吸気量フィードバック制御における吸気量に関するエラー量ΔGnが算出される。このエラー量ΔGnは、目標吸気量と実吸気量との差分で表される。このエラー量ΔGnが大きいほど、吸気量のフィードバック制御において吸気量を調整するための指令量が大きくなる。S104の処理が終了すると、S105へ進む。
S105では、S104で算出された吸気量のエラー量ΔGnが、所定吸気量K1以上であるか否かが判定される。即ち、吸気量のフィードバック制御において、実吸気量と目標吸気量との差が拡大し、実吸気量が本来あるべき目標空気量から大きく外れていないか否かが判定される。実吸気量が目標吸気量から大きく外れると、気筒2内における新気とEGRガスとの均衡が崩れ燃焼状態が悪化する虞がある。換言すると、吸気量フィードバック制御が効率的に働いていないことで、予混合燃焼から通常燃焼への切替時に、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒2内に供給されていない状態にあるか否かが判定される。従って、所定吸気量K1は、吸気量フィードバック制御の実効性を判定するための閾値である。
そして、吸気量のエラー量ΔGnが所定吸気量K1以上であると判定されると、即ち、吸気量フィードバック制御が効率的に働いていないと判定されると、S106へ進む。一方で、吸気量のエラー量ΔGnが所定吸気量K1以上でないと判定されると、即ち、吸気量フィードバック制御が効率的に働いていると判定されると、S108へ進む。
S106では、所定期間TD1の算出が行われる。この所定期間TD1は、後述するS107での吸気量フィードバック制御の変更が行われる期間である。所定期間TD1の算出については、図7のモデル図を示す。図7は、横軸に吸気量エラー量ΔGnをとり、縦軸に所定時間TD1をとる。そして、エラー量ΔGnと所定時間TD1との関係は、エラー量ΔGnが所定吸気量K1以上となってその値が大きくなるに従い、所定時間TD1も長くなる。S106の処理が終了すると、S107へ進む。
S107では、S101で実行されている吸気量フィードバック制御の一部または全部が変更される。このとき、この吸気量フィードバック制御の変更は、S106で算出され
た所定期間TD1に限って行われる。以下に、吸気量フィードバック制御の変更の例を示す。
<吸気量フィードバック制御変更の例1>
第一に、S101で実行されている吸気量フィードバック制御を中断する。それとともに、EGR弁24を全閉とする。このようにすることで、気筒2内に供給されるEGRガス量が低減する。この一連の処理は、上述したように所定期間TD1の間だけ行われ、この期間が経過した後は、EGR弁24の開度が当初の開度に戻されるとともに、再び当初の吸気量フィードバック制御が実行される。このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD1に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
<吸気量フィードバック制御変更の例2>
第二に、S101で実行されている吸気量フィードバック制御における制御パラメータである目標吸気量の値を変更する。具体的には、本来あるべき目標吸気量の値に変えて、それより大きい値を目標吸気量に設定する。この新しい目標吸気量の値は、吸気量エラー量ΔGnが大きくなるに従い、大きく設定される。そして、この目標吸気量の値の変更も、上述の変更例1と同様に所定期間TD1に限定して行われる。従って、この期間が経過した後は、再び当初の吸気量フィードバック制御が実行される。
目標吸気量が一時的に増加されることで、吸気量フィードバック制御におけるエラー量が増え、最終的には吸気量調整のための指令量が増えることになる。従って、このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD1に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
<吸気量フィードバック制御変更の例3>
第三に、S101で実行されている吸気量フィードバック制御における制御パラメータであるゲインの値を変更する。具体的には、本来あるべきゲインの値に変えて、それより大きい値に変更する。この新しいゲインの値は、吸気量エラー量ΔGnが大きくなるに従い、大きく設定される。そして、このゲインの値の変更も、上述の変更例1と同様に所定期間TD1に限定して行われる。従って、この期間が経過した後は、再び当初の吸気量フィードバック制御が実行される。
ゲインが一時的に増加されることで、最終的な吸気量調整のための指令量が増えることになる。従って、このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD1に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
これら吸気量フィードバック制御変更の例のうち何れか一つが行われることが、S107の処理となる。S107の処理後、本制御を終了する。
次に、S108では、吸気量フィードバック制御が効率的に働いていると判定されているため、S101で実行されている吸気量フィードバック制御が引き続き継続して行われ
る。S108の処理後、本制御を終了する。
本制御によると、予混合燃焼から通常燃焼への切替が行われるとき、吸気量フィードバック制御が効率的に働いていないと判定されると、該吸気量フィードバック制御の全部または一部が変更されることで、移行後の通常燃焼に応じた量のEGRガスや新気が気筒内に速やかに供給され得る。
また、上述した吸気量フィードバック制御において目標吸気量の調整を、図8に示す制御マップに基づいて行ってもよい。図8(a)は、第一燃料噴射モードおよび第二燃料噴射モードが行われるとき、即ち燃焼が遷移状態にあるときの目標吸気量に関する制御マップであり、アクセル開度をパラメータとして燃焼に適した目標吸気量を算出するための制御マップである。図8(b)は、予混合燃焼または通常燃焼が行われるとき、即ち燃焼が遷移状態にないときの目標吸気量に関する制御マップであり、燃料噴射弁3からの燃料噴射量をパラメータとして燃焼に適した目標吸気量を算出するための制御マップである。
このように、燃焼が遷移状態にあるときはアクセル開度に基づいて目標吸気量を算出することで、内燃機関の運転状態の変動を直ちに反映させることが可能となり、以て燃焼状態の悪化を抑制しながらより円滑な燃焼の切替を行い得る。また、燃焼が遷移状態にないときは燃料噴射量に基づいて目標吸気量を算出することで、内燃機関の燃焼状態を反映させ該燃焼状態に応じた量の吸気を供給することが可能となる。
予混合燃焼から通常燃焼への燃焼切替時に行われる燃焼切替制御の第二の実施例について、図9に基づいて説明する。図9には、燃焼切替制御に関するフローチャートを示す。図9に示す燃焼切替制御において、図6に示す燃焼切替制御の処理と同一の処理については、同一の参照番号を付することで、その詳細な説明を省略する。また、この燃焼切替制御は、ECU20によって行われる制御である。
S201では、吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が実行される。尚、この吸気絞り弁10の開度フィードバック制御は、本燃焼切替制御が行われるときのみならず、内燃機関1において予混合燃焼または通常燃焼が行われているときにも実行されている。その制御内容は、吸気絞り弁10の実際の開度(以下、「実開度」という。)が、内燃機関1で行われる燃焼に適した目標とする開度(以下、「目標開度」という。)になるべく行われるフィードバック制御である。S201の処理が終了すると、S102へ進む。
S102の処理後、S103において、内燃機関1の運転状態が通常燃焼領域R2に移行したと判定されると、S202へ進む。
S202では、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御における開度に関するエラー量ΔPluが算出される。このエラー量ΔPluは、目標開度と実開度との差分で表される。このエラー量ΔPluが大きいほど、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御において開度を調整するための指令量が大きくなる。S202の処理が終了すると、S203へ進む。
S203では、S202で算出された開度のエラー量ΔPluが、所定開度K2以上であるか否かが判定される。即ち、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御において、実開度と目標開度との差が拡大し、実開度が本来あるべき目標開度から大きく外れていないか否かが判定される。実開度が目標開度から大きく外れると、気筒2内における新気とEGRガスとの均衡が崩れエミッションが悪化する虞がある。換言すると、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御が効率的に働いていないことで、予混合燃焼から通常燃焼
への切替時に、燃焼に応じた量のEGRガスが気筒2内に供給されていない状態にあるか否かが判定される。従って、所定開度K2は、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御の実効性を判定するための閾値である。
そして、開度のエラー量ΔPluが所定開度K2以上であると判定されると、即ち、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御が効率的に働いていないと判定されると、S204へ進む。一方で、開度のエラー量ΔPluが所定開度K2以上でないと判定されると、即ち、吸気絞り弁の開度のフィードバック制御が効率的に働いていると判定されると、S206へ進む。
S204では、所定期間TD2の算出が行われる。この所定期間TD2は、後述するS205での吸気絞り弁10の開度フィードバック制御の変更が行われる期間である。所定期間TD2の算出については、図10のモデル図を示す。図10は、横軸に開度エラー量ΔPluをとり、縦軸に所定時間TD2をとる。そして、エラー量ΔPluと所定時間TD2との関係は、エラー量ΔPluが所定開度K2以上となってその値が大きくなるに従い、所定時間TD2も長くなる。S204の処理が終了すると、S205へ進む。
S205では、S201で実行されている吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御の一部または全部が変更される。このとき、この吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御の変更は、S204で算出された所定期間TD2に限って行われる。以下に、吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御の変更の例を示す。
<吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御変更の例1>
第一に、S201で実行されている吸気絞り弁10の開度フィードバック制御を中断する。それとともに、吸気絞り弁10の開度を全開とする。このようにすることで、気筒2内に供給されるEGRガス量が低減する。この一連の処理は、上述したように所定期間TD2の間だけ行われ、この期間が経過した後は、吸気絞り弁10の開度が当初の開度に戻されるとともに、再び当初の吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が実行される。このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD2に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
<吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御変更の例2>
第二に、S201で実行されている吸気絞り弁10の開度フィードバック制御における制御パラメータである目標開度の値を変更する。具体的には、本来あるべき目標開度の値に変えて、それより大きい値を目標開度に設定する。この新しい目標開度の値は、開度エラー量ΔPluが大きくなるに従い、大きく設定される。そして、この目標開度の値の変更も、上述の変更例1と同様に所定期間TD2に限定して行われる。従って、この期間が経過した後は、再び当初の吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が実行される。
目標開度が一時的に増加されることで、吸気絞り弁10の開度フィードバック制御におけるエラー量が増え、最終的には開度調整のための指令量が増えることになる。従って、このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD2に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
<吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御変更の例3>
第三に、S201で実行されている吸気絞り弁10の開度フィードバック制御における制御パラメータであるゲインの値を変更する。具体的には、本来あるべきゲインの値に変えて、それより大きい値に変更する。この新しいゲインの値は、開度エラー量ΔPluが大きくなるに従い、大きく設定される。そして、このゲインの値の変更も、上述の変更例1と同様に所定期間TD2に限定して行われる。従って、この期間が経過した後は、再び当初の吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が実行される。
ゲインが一時的に増加されることで、最終的な開度調整のための指令量が増えることになる。従って、このようなフィードバック制御の変更が行われることで、気筒2内に残留するEGRガスを追い出し、その環境を予混合燃焼に適した環境から通常燃焼に適した環境に速やかに移行させるとともに、該フィードバック制御の変更を所定期間TD2に限って行うことで、気筒2内に供給される新気量が過多となって移行後の通常燃焼時に空燃比が過度にリーンになることを回避することが可能となる。
これら吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御変更の例のうち何れか一つが行われることが、S205の処理となる。S205の処理後、本制御を終了する。
次に、S206では、吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が効率的に働いていると判定されているため、S201で実行されている吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が引き続き継続して行われる。S206の処理後、本制御を終了する。
本制御によると、予混合燃焼から通常燃焼への切替が行われるとき、吸気絞り弁10の開度フィードバック制御が効率的に働いていないと判定されると、該吸気絞り弁10の開度フィードバック制御の全部または一部が変更されることで、移行後の通常燃焼に応じた量のEGRガスや新気が気筒内に速やかに供給され得る。
また、上述した吸気絞り弁10の開度のフィードバック制御において目標開度の調整を、上述した図8に示す制御マップに基づいた目標吸気量の場合と同様に行ってもよい。即ち、燃焼が遷移状態にあるときはアクセル開度に基づいて目標開度を算出することで、内燃機関の運転状態の変動を直ちに反映させることが可能となり、以て燃焼状態の悪化を抑制しながらより円滑な燃焼の切替を行い得る。また、燃焼が遷移状態にないときは燃料噴射量に基づいて目標開度を算出することで、内燃機関の燃焼状態を反映させ該燃焼状態に応じた量の吸気を供給することが可能となる。