JP4419719B2 - 発泡樹脂材料の3次元流動解析方法 - Google Patents

発泡樹脂材料の3次元流動解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラスチック発泡成形加工技術に係り、冷蔵庫や建設材料、自動車等に使用される断熱材、衝撃吸収材等の発泡部品を発泡成形する際の3次元発泡流動解析方法に関する。
時間を変数とする発泡材料の密度の関数を導入し、密度が時間と共に減少する発泡挙動を解析可能な解析プログラムが、特許文献1(特開2001-318909号公報)、特許文献2(特開2003-91561号公報)に記載されている。
特に、特許文献1では、発泡材料全体を均一の密度とみなし、さらに、その密度として、発泡原料を攪拌した発泡材料を出すノズルを最初に出た発泡材料のノズルを出てからの経過時間で算出した密度を用いている。
また、特許文献2では、特許文献1の技術に加え、肉厚の変動によって発泡材料の密度が変化することを考慮した関数を用いて発泡材料の発泡流動解析を行うことが記載されている。
特開2001-318909号公報 特開2003-91561号公報
実際の製造プロセスでは、ノズル近傍では実質的に一定な密度のままであり、時間とともに密度が変動することはない。
また、最初にノズルから出た発泡材料の影響により、その後にノズルから出る発泡材料の流動性が低下する。1秒程度までの発泡流動解析であれば、近似値として有用であると考えるが、それ以上の発泡流動解析では現実との差が大きくなりすぎる。
かかる理由から特許文献1及び2による解析は精度が低かった。
本発明の目的は、発泡流動解析の精度を向上することにある。
また、特許文献2には、発泡樹脂の密度を区分けして表示しようとするものが記載されているが、肉厚によって区分けしているので、肉厚一定では特許文献1と同じ出力となってしまう問題がある。
本発明の他の目的は、ノズルから出る発泡材料の密度を一定値とすることによって、肉厚一定であっても、発泡密度の大きさによる区分けが可能な発泡流動解析を実現することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、密度が注入口を通過してからの時間経過を含む関数として入力されることを特徴とし、このタイムステップ毎の密度変化を連続の式および運動方程式に代入して計算することにより、圧力、流動速度、密度分布などの結果を得ることができる3次元発泡流動解析法または発泡流動解析プログラムを提供する。なお、実際のウレタン材料などの発泡現象において、粘度も時間項を含む硬化反応を伴って変化する挙動を示すので、詳細な発泡流動解析を行うために、密度だけでなく粘度も、注入口を通過してからの時間経過を含む関数として入力し、タイムステップ毎の密度および粘度変化を連続の式、運動方程式に代入して計算することにより、圧力、流動速度、密度分布などの結果を得る3次元発泡流動解析法または発泡流動解析プログラムを提供することもできる。
本発明によれば、発泡流動解析システムの解析精度を向上することができる。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態について説明する。
まず、解析対象となる発泡成形工程を図1を用いて説明する。
発泡成形工程は、発泡材料充填装置のノズルから発泡型へ充填することにより、なされる。
発泡材料充填装置は、発泡原料を格納した複数のタンクと、そのタンクから出る原料の量を制御するバルブと、そのバルブを介して繋がって、複数のタンクから流れ込んだ発泡原料を混合した発泡材料をノズルから出すミキシングヘッドとを有している。
本実施例では、シクロペンタン(C5H10)発泡剤を充填したポリオール1を一つのタンクに格納し、イソシアネート2を他のタンクに格納し、それらの2液をミキシングヘッド3によって攪拌し、発泡型4の中に2液を攪拌することにより形成した発泡材料5を充填することにより、発泡させるものとした。
次に、この発泡製品の発泡成形工程における発泡材料の発泡流動解析システムについて説明する。
発泡流動解析システムは、図5示すハードウェア構成で後述する図3のフローを備えたソフトウェアが実行されることにより、機能する。
具体的には、計算装置6、記録装置10(ハードディスク、MOなど)を備えた計算装置7、この2つの計算装置を繋ぐLAN8、計算装置7が備える表示装置9を備えている。計算装置6で作成したCADデータをLAN8を介して計算装置7に転送するようにしておく。計算装置7に転送されたCADデータは、計算装置7の記録装置10(ハードディスク、MOなど)に記録される。計算機7は、図3で示すフローチャートに従い計算を実行し、結果を記録装置10に記録した後、表示装置9に結果を表示する。
図示してはいないが、計算装置6及び7には、当然キーボードやマウス等の入力デバイスを備えている。
次に、図3のフローチャートに沿って発泡流動解析プログラムの処理を説明する。
まず、モデル形状作成ステップ501では、オペレータによって入力装置を介して特定された解析対象モデル、つまり、発泡材料が充填される空間の形状データを記憶装置10から読み出す。具体的には、発泡材料の流動部分の初期設計モデルのCADデータを記憶装置から読み込む。
次に、3次元ソリッド要素作成のステップ502では、モデル形状作成ステップ501で読み込んだデータを用いて、発泡材料が充填される断熱部分の形状を複数の特定空間(3次元ソリッドの有限要素)に分解し、各有限要素の形状データを作成する。
次に、流体の物性値入力ステップ503では、解析を行う発泡材料の物性値である密度式(5)、粘度式(6)を入力するように、オペレータに催促する表示を行い、入力装置からこれらのデータを受け付ける。
次に、境界条件、成形条件入力ステップ504において、オペレータに対して3次元ソリッド要素内に流体が注入する際の初期速度、初期密度、初期粘度、注入場所、肉厚の入力をするように、オペレータに催促する表示を行い、入力装置からこれらのデータを受け付ける。受け付けた注入場所のデータとモデル形状作成ステップ501で読み込んだ形状データから、注入口の断面積を算出する。
次に、オペレータからの解析開始の指示と初期時間増分Δt1を受け付ける。
ステップ505として、この指示に基づいて、記録装置に格納された連続の式(1)および運動方程式(2)〜(4)を呼び出し、これまで入力を受け付けた、初期時間増分Δt1、初期速度、初期密度、初期粘度、粘度式(6)、密度式(5)を代入し、発泡材料が流動していく、速度、圧力、密度および粘度を計算する。この計算結果と、初期時間増分Δt1と、注入口に最も近い有限要素の位置と対応つけて記憶装置に保存する。
次にステップ506で、ステップ505の計算を繰り返し行うとともに、代入していった時間増分(初期時間増分Δt1を含む)を加算していく。つまり、注入口を発泡材料が通過してからその3次元ソリッド要素に到達する経過時間を算出する。なお、初期時間増分Δt1は最初の計算にのみ使用し、2回目の計算からは収束安定性を確保できる時間増分を適宜算出し、初期時間増分Δt1の代わりに代入するようにする。
また、2回目の計算からは、注入口に最も近い有限要素(第1の有限要素)だけでなく、発泡材料が流動していく方向(速度で示される方向)に隣接する有限要素群(第2の有限要素、例えばB〜F)に対してもおこなう。例えば、2回目の計算において、第1の有限要素に対して計算する場合には、計算で新たに求めた第2の時間増分Δt2を用いる。第2の有限要素に対して計算をする場合には、第1の有限要素の出力である、速度、密度、粘度を、第2の有限要素における入力値として用いる。但し、密度と粘度を計算するときには、注入口を発泡材料が通過してからその有限要素に到達する経過時間(初期時間増分Δt1第2の時間増分Δt2)を用いて計算する。
2回目の出力としては、有限要素の位置(第1の有限要素と第2の有限要素)、注入口を発泡材料が通過してからその有限要素に到達する経過時間(第1の有限要素にとっては計算で求めた時間増分Δt2であり、第2の有限要素にとっては初期時間増分Δt1と計算で求めた時間増分Δt2の和)、速度、密度、粘度を対応付けて記憶しておく。1回目の出力と2回目の出力として保存しているデータテーブルを図4として示す。ここで、要素Aが第1の有限要素を示しており、初期時間増分Δt1を用いて速度VA1、密度ρ1、粘度η1計算される。第2の有限要素B〜Fは、これらの値を初期値として、第2回目の計算を行う。ここで、第2の有限要素B〜Fの速度は各要素によって異なるが、入り口を通過してからの時間はΔt1+Δt2で等しいので、式(5)(6)により、肉厚値が等しい場合には第2の有限要素B〜Fの密度ρ3および粘度η3は等しくなる。
この繰り返しは、各有限要素の体積をあらかじめ記憶しておき、計算に用いた有限要素の体積の和を求め、形状データから求めたモデルの発泡体積と一致したときに終了する。
ステップ507で、収束の判定を行う。収束の判定手法は、圧力とあらかじめ定めておいた圧力範囲とを対比し、範囲内にある場合を収束として判定する。収束しない場合には、ステップ501〜504のいづれかに戻る。この際、オペレータに入力を促し、どのステップに戻るかを決める。
計算が収束したと判断された場合、ステップ508では、注入口を発泡材料が通過してからその有限要素に到達する経過時間と、密度、粘度を用いて表示を行う。表示の例を図6〜9に示す。
発泡解析の表示例を図6に示す。これは、図2に示した形状を用いて、前記した密度式(5)および粘度式(6)を、連続の式(1)、運動方程式(2)〜(4)と連動させることにより発泡流動解析を行った肉厚中心部分のYZ平面における結果である。発泡領域12の寸法は、高さ500(mm)、幅250(mm)、肉厚40(mm)とし、注入場所11から初期密度ρ=1000(kg/m3)の発泡材料5をZ軸のプラス方向に流量0.2(kg/s)で注入し続け、式(5)におけるA=1とし、式(6)における初期粘度η0を1(Pa・s)、材料固有の定数F=1.2、te=60とし、重力はZ軸のマイナス方向に加えた。ここでは、時間変化に伴う材料の発泡流動過程を示しており、10(s)、20(s)、30(s)における発泡材料5の充填量を示している。このように、発泡領域12に注入された発泡材料5が、Z方向のプラス方向に発泡流動している過程が解析できている。
また、この解析による出力結果の一例として、30(s)後における注入口を通過してからの経過時間の分布を図7に示す。図中の線が、経過時間が等しい位置を示しており、入り口を通過している流体の経過時間が0(s)、Z軸プラス方向の最初に注入された流体の経過時間が30(s)の値を示している。更に、30(s)後における発泡密度の分布を図8に示す。発泡密度は式(5)に示すように、注入口を通過してからの経過時間の関数となっている。ここで、密度が等しい位置を図中の線で示しており、入り口における密度が初期密度1000(kg/m3)で最も高く、最初に注入された発泡材料の先端(Z軸プラス方向)の密度が最も低くなる分布を示している。また、30(s)後における粘度の分布を図9に示す。粘度は式(6)に示すように、注入口を通過してからの経過時間の関数となっている。ここで、粘度が等しい位置を図中の線で示しており、入り口における粘度が初期粘度1(Pa・s)で最も低く、最初に注入された発泡材料の先端(Z軸プラス方向)の粘度が最も高くなる分布を示している。
また、以上示した解析により、発泡材料5のやわらかさを評価するため、弾性率を密度の式として入力し、求められた弾性率から発泡材料5のやわらかさを求めることもできる。
また、上述した、ステップ503で入力する粘度に関して、式(6)で示した時間の関数の他に、式(5)で示す密度式において、発泡後の最終密度をρminとし、この最終密度を密度の最小値とすると、粘度は式(7)で表すことが出来る。ここで、η0:初期温度、γ:せん断速度、c、n:材料固有の係数を示す。
η=(η0 (ρ(t)/ρmin)C )/γ (7)
このように、粘度は発泡後の最終密度を基準とした発泡の進行率と、せん断速度の関係として表すことが出来る。但し、本解析に用いる粘度は式(7)で示される関数だけではなく、時間項を含む関数など任意の値を用いることが出来る。
ここで、上述した式1から式6について説明する。
一般的に、ウレタン発泡成形における初期密度から発泡後の最終密度との倍率を示す発泡倍率に影響を与える主因子は治具温度と肉厚であることが知られており、この治具温度と肉厚を考慮した発泡挙動を解析するためには、解析モデルを3次元ソリッド要素に分割し、連続の式(1)、運動方程式(2)〜(4)によって、流動速度、圧力、温度を求める手法を用いる。ここで、ρ;密度、u;x方向速度、υ;y方向速度、ω;z方向速度、P;圧力、t;時間、η;粘度、を示している。
これらの式をソフトウェア上で実現した場合には、「ρの時間変化を含む関数」、「粘度η」は入力値として使用される。
Figure 0004419719
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ここで、密度変化のない液体を扱う場合には、∂ρ/∂t=0となる。しかし、冷蔵庫ウレタン材料等の発泡材料を扱う場合には、∂ρ/∂t≠0となり、前記した発泡倍率に影響を与える主因子である治具温度と肉厚を考慮した発泡材料の密度変化を別途求めることが必要となる。
このとき、一つの治具の場所による温度バラツキおよび発泡成形毎の治具温度のバラツキを無視すると、可視化実験などの結果を用いて、ある治具温度における密度の変化を数式化することにより、密度が時間項および肉厚項を含む関数として表記できる。図2に発泡型4に囲まれた発泡領域12の断面図を示す。ここで、注入口11から流量Qで初期密度ρ、初期粘度η0の発泡材料5を一定時間流入した場合の密度変化関数を式(5)として、粘度変化関数を式(6)として示す。ここで、t:発泡材料が入り口を通過してからの経過時間、H;製品肉厚、ρ0;初期密度、η0;初期粘度、A、F、te;材料固有の定数とする。
ρ(t)=ρ0/(A×t2/H+1) (5)
η = η0 ( ( 1+t/te )/( 1-t/te ) )F (6)
この式(5)、(6)によって求められる各タイムステップにおける密度および粘度を、式(1)〜(4)に代入することにより、発泡時の流動速度、圧力、温度などの結果を求めることができる。この密度式(5)を用いると、材料が流動しながら発泡する過程を解析できる。
ここで、肉厚Hは、肉厚を構成するある壁面からもう一面の壁面への垂線として計算されるか、もしくは座標ごとの肉厚値として任意に入力することが出来るものとする。また、肉厚の入力方法として、他のCADソフトなどで算出された値を、各要素ごとの肉厚値に変換して入力することもできる。
なお、式(5)(6)において、密度および粘度は時間の関数として表したが、本発明は、これだけに限定するものではなく、使用する発泡材料の特性に応じて、時間項および肉厚項を含む任意の関数(圧力、粘度などの変数も考慮に入れた関数としても表すことができるものとする。) に対応した式で表すことができるものとする。
ポリオールとイソシアネートの2液混合による発泡過程 解析検討に用いた発泡型に囲まれた発泡領域の断面図 発泡材料の注入口を通過してからの経過時間項および肉厚項を含む関数を入力する場合の発泡流動解析フローチャート 時間増分ごとの各要素における計算項目 発泡解析を行うハードウェア構成図 発泡解析結果(時間変化に伴う材料の発泡流動過程) 発泡解析結果(発泡材料の注入口を通過してからの経過時間分布) 発泡解析結果(密度分布) 発泡解析結果(粘度分布)
符号の説明
1…ポリオール 2…イソシアネート 3…ミキシングヘッド 4…発泡型
5…発泡材料 6…計算装置 7…計算装置 8…LAN
9…表示装置 10…記録装置 11…注入口 12…発泡領域

Claims (3)

  1. 注入口から所定の空間へ注入される発泡樹脂材料の3次元流動解析方法であって、
    (a)前記空間の形状データを記憶装置から計算装置に取り込み、前記発泡樹脂材料の流動を解析するためのモデル空間を作成する、
    (b)前記モデル空間を複数の特定空間である3次元ソリッド有限要素領域に分割し、有限要素領域からなる空間を複数作成する、
    (c)注入口から前記有限要素空間へ注入される発泡樹脂材料の少なくとも初期注入速度、初期密度、初期粘度、注入口の位置情報、初期時間増分、及び予め計算装置に取り込まれた前記発泡樹脂材料の密度及び粘度の変化関数式、それらの連続の式及び3次元運動方程式とを用いて、前記初期時間増分が経過した後の第1の有限要素空間内における発泡樹脂材料の流動速度、流動圧力、密度及び粘度を計算する、
    (d)前記ステップ(c)における計算結果を、前記注入口に最も近い第1の有限要素空間と前記初期時間増分とを対応させて記録装置に記憶させる、
    (e)予め定められた第2の時間増分が経過した後に前記第1の有限要素空間内における発泡樹脂材料の流動速度、流動圧力、密度及び粘度を計算する、
    (f)前記第1の有限要素空間における出力値を入力値として用い、そして初期時間増分と発泡樹脂材料が注入口を通過して第2の有限要素空間に到達するまでの経過時間である第2の時間増分との合計を用いて、前記第1の有限要素空間に隣接する第2の有限要素空間内における発泡樹脂材料の流動速度、流動圧力、密度及び粘度を計算する、
    (g)有限要素空間の位置及び前記発泡樹脂材料が前記注入口を通過してから第2の有限要素空間に到達するまでの経過時間とを対応させて、ステップ(e)と(f)における計算結果を前記記録装置に記憶させる、
    (h)前記有限要素空間の体積の総和が前記モデル空間の体積と等しくなるまで、前記ステップ(e)から前記ステップ(g)を繰り返す、
    (i)前記発泡樹脂材料が前記注入口を通過してから前記有限要素空間に到達するまでの経過時間の関数として、前記発泡樹脂材料の充填量、密度または粘度を等高線表示させる、
    ことを特徴とする発泡樹脂材料の3次元流動解析方法。
  2. 前記発泡樹脂材料が予め2液を攪拌して形成した発泡樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂材料の3次元流動解析方法。
  3. 前記発泡樹脂材料がシクロペンタン発泡剤を含有したポリオールとイソシアネートとを攪拌して形成した発泡樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂材料の3次元流動解析方法。
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