JP4419224B2 - 棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法 - Google Patents

棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲がりを有する棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法に関し、予め計測した曲がりデータを用いてその曲がりの矯正結果を計算でシュミレートし、その結果からワーク振れの値が規格値以下となるように最適矯正位置,矯正位相,矯正量を決定するものである。
【0002】
ここにいう棒材には、ねじ溝を有するねじ軸の如きものも包含される。
【0003】
【従来の技術】
長尺の棒材の曲がりの矯正は、当該棒材の曲がり部分に、曲がり方向とは反対向きの荷重(矯正荷重)をかけて押し込むことで行われている。その場合に、矯正荷重を負荷する位置,矯正すべき量等を決定する必要がある。従来は、矯正すべき棒材の両端を支持しつつ回転させたときの振れの最大となる位置又は棒材の長手方向に或るスパンで測定した曲がりの最大位置において、曲がりを0にする矯正量を求めて矯正している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数個所の曲がりを有する棒材で或る部分の矯正を行うと、その矯正が他の部分の曲がり個所における振れに影響を与える。
そのため、上述のように振れや曲がりの最大となる位置での曲がりを0にするだけではなく、その影響を受けた他の曲がり部分も矯正しなければならず、矯正に長時間を要するという問題点がある。
【0005】
また、長手方向位置により曲がりの位相が異なっているような複雑曲がりをした棒材の場合、振れを高精度に矯正することは不可能であり、安定した矯正が実現できないことから矯正の自動化が難しく、熟練技能者による手動矯正に頼らざるを得ないという問題点がある。
そこで、本発明は、このような従来技術の未解決の課題に着目してなされたもので、熟練技能者の手作業によらずに、少ない矯正回数で高い矯正精度が得られる自動化の容易な棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る棒材(ワーク)の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法は、
▲1▼ 曲がりを有する棒材(ワーク)の長手方向に複数個所の振れを所定の位相間隔で計測する。
【0007】
(B)得られた各測定個所毎の振れ量,位相データ及び測定座標から、所定のワーク位相断面における各測定個所毎の部分曲がり角θ n (Θ)を算出する。
(C)前記(A)で得られた各測定位置での振れと矯正規格とを比較し、振れ<矯正規格であるか否かの判断を行い、振れ<矯正規格であれば矯正不要として矯正を終了し、振れ≧矯正規格であれば次の工程に進む。
(D)前記(A)で得られた各測定位置での振れの最大位置、位相において、最も振れが小さくなる矯正量を予測する。
【0008】
(E)前記(D)で予測した矯正量により矯正を行った場合の予測振れと、振れ目標とを比較し、予測振れ<振れ目標であれば、予測した矯正量で矯正を行い、予測振れ≧振れ目標であれば、前記(B)で得られた各測定箇所での部分曲がり角θ (Θ)が最大となる位置、位相において、前記部分曲がり角θ(Θ)=0となる矯正量を求め、その矯正量で矯正を行う。
(F)矯正後、前記(A)の工程に戻り、矯正後のワークの振れを測定し、その結果に応じて前記(B)以降の工程を繰り返す。前記(C)の工程において振れ<矯正規格であれば、矯正を終了する。この一連の計算方法で、各矯正位相,矯正位置,矯正量のすべての組合せについて計算を行うことにより、最小の矯正回数で、振れ目標の矯正を行うための矯正位置,矯正量を求めることも可能になる。
【0009】
また、長手方向の測定位置が多く、全ての組合せについての計算に時間を要し、演算装置の性能から実用的でない場合においても、実用上十分短時間で且つ高精度な矯正を行うことが可能になる。
本発明によれば、曲がりを有する棒材を、特定位置,特定位相において特定の矯正量だけ矯正した場合の、棒材全体の振れに及ぼす影響を計算することにより、矯正前に予め、他の長手方向位置,位相に与える矯正の影響を予想する。曲がりの長手方向の位置,位相及び矯正量の組合せの全てについて計算を行うことにより、振れ規格を満たして最小の矯正回数で矯正できる最適矯正位置,矯正量を求めることができる。また、矯正前の曲がり状態に関係なく、高精度に矯正することもできる。
【0010】
かくして、従来は熟練作業とされている長尺の棒材の曲がりを高精度に矯正する矯正の自動化が実現可能となった。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法に従った曲がり矯正作業の概要を示す流れ図である。
先ず、曲がりを有する棒材(ワーク)の振れを、ワーク長手方向の複数個所に設定した測定位置において測定する(ステップ1)。
【0012】
測定した振れと矯正規格とを比較し、振れ<矯正規格であるか否かを判断する振れ<矯正規格であれば矯正不要であるからそのまま終了する。一方、振れが矯正規格より大きければステップ3に進む(ステップ2)。
振れ最大位置,位相において最も振れが小さくなる矯正量を予測する(ステップ3)。
【0013】
予測した振れと振れ目標とを比較し、予測振れ<振れ目標か否かを判断する(ステップ4)。
予測振れ<振れ目標であればステップ6にジャンプして矯正を実行する。
一方、予測振れが振れ目標より大きければ、部分曲がり最大位置,位相において部分曲がり=0となる矯正量を求める(ステップ5)。
【0014】
その矯正量に従い、矯正を実行する(ステップ6)。
ステップ1に戻り、矯正後のワークの振れを測定し、その結果に応じてステップ2以降を繰り返す。
続いて、上記の各ステップにおける測定・計算の詳細を説明する。
(1)ワークの振れを測定し、振れ量,位相を求める工程。
【0015】
曲がり矯正精度を高めるには、ワークの振れを正確に把握する必要がある。そこで本実施の形態では、図2に示すように、ワークWの両端を支持して軸回転させながら、長手方向の複数個所に設定した測定位置(P1 ,P2 ,P3 等)における振れを、例えば電気マイクロの如き測定手段Gを用いて所定の位相間隔(例えば0〜360度にわたり1度間隔)で測定する。この場合、振れ,位相の実測データを三角関数等で近似させて近似曲線を求め、その近似曲線の振れ量,位相を算出するようにすると、ワークWの非真円成分や傷等の影響が除去できてより精度が向上する。
【0016】
例えば、図3は、ワークWを1回転させつつ、測定位置P1 において所定の位相間隔(測定ポイント)で測定した振れを、三角関数で近似して得た近似曲線の例である。この近似曲線の各測定ポイント(位相)毎の振れ量Rrを次の演算に利用する。
(2)上記の振れ量及び位相のデータより、ワークの各位相断面における振れ及び部分曲がりを算出する工程。
【0017】
図4は、曲がりを有するワークWを、或る位相Θ(図ではΘ=90度)で長手方向に切断した位相断面S(Θ)における振れ,部分曲がりの状態を模式的に表示した2次元イメージ図、図5はその位相断面S(Θ)における振れR1 (Θ)及び部分曲がり量θ1 (Θ)を、前記近似曲線の振れ量Rr,位相のデータに基づき算出する手法を説明する図である。
【0018】
すなわち、ワーク長手方向にn個所の測定位置P1 ,P2 ,P3,…Pn を設定し、0〜360度の全周を例えば位相角1度間隔として振れを測定して得た測定値のうちの、或る位相Θ(例えばΘ=90度)の位相断面S(Θ)における各測定位置Pn 毎の振れRn (Θ)、及び部分曲がりθn (Θ)は、前記近似曲線の振れ量Rr(Θ),振れ位相を利用して次のように計算する。
【0019】
振れ,位相の測定値を解析して、ワーク位相断面S(Θ)における振れデータ,部分曲がりデータに変換する。例えば、
▲1▼測定位置P1 における振れR1 (Θ)は、次式(1)による。
1 (Θ)=(振れ量Rr1 ×1/2)×Cos(振れ位相−Θ)……(1)
各測定位置P2 ,P3 …Pn における振れR2 (Θ),R3 (Θ),……Rn (Θ)も同様にして変換する。
【0020】
▲2▼また、測定位置P1 における部分曲がり量θ1 (Θ)は、次式(2)による。
θ1 (Θ)=tan-1{(R0 (Θ)−R1 (Θ))/X1 }+
tan-1{(R2 (Θ)−R1 (Θ))/X2 } ……(2)
各測定位置P2 ,P3 …Pn における部分曲がり量θ2 (Θ),θ3 (Θ),……θn (Θ)も同様にして変換する。
【0021】
但し、R0(Θ)=0,Rn+1(Θ)=0図6は、このようにして求めた位相断面Θの振れ,部分曲がりの状態及び各測定位置1,P2,P3で測定した振れ─位相近似曲線を模式的に表示した3次元イメージ図である。
(3)部分曲がりのデータを元に振れのデータを作成する。
【0022】
(A)先ず、図7に示すように、各測定位置P 1 〜P n 毎に得られた位相Θの部分曲がり量θ1(Θ),θ2(Θ),θ3(Θ)及び各測定位置P1,P2,P3,P4の間隔(長手方向座標)X1,X2,X3,X4の値より、逆算した変位R’1(Θ),R’2(Θ),R’3(Θ),R’4(Θ)を求める。
【0023】
(B)次に、図8に示すように、前記逆算した変位のうちの最後の値が0となるように、即ちR’4(Θ)=0になるように累積振れ線を傾けて、新たな振れR”1(Θ),R”2(Θ),R”3(Θ)を求める。このように、ある位相Θにおける部分曲がりデータθn(Θ)から、当該位相において測定した振れRn(Θ)を逆算することができる。同様に、各位相(例えば0〜359度にわたり1度間隔)で行うことで、ワークWの振れ全体を示すデータを逆算できる。
(4)計算で再現した部分曲がりのデータを、その部分曲がりが矯正されるように変更し、その変更後のデータを長手方向に再計算することにより、当該変更を加えた後のワークの振れを予測する。例えば図9(a)に示すように、計算された部分曲がりのデータを累積して再現された位相Θにおけるワーク長手方向の曲がり線Lの最大部分曲がり位置P1に矯正負荷Fを加えた後の振れを計算して、そのデータを元に逆算することにより、図10(a)に示すような矯正後後の曲がり線L’を得る。図9(b)は矯正前の、図10(b)は矯正予測後の、それぞれの曲がりの3次元イメージの図である。
【0024】
実際に特定位置n,位相Θ’での曲がり矯正を行うと、その影響を受けて同じ矯正位置nにおける別の位相Θの部分曲がり値が変化するから、この影響分を修正しなければならない。この矯正予測後の曲がり線を求める修正式は、修正個所の位相Θにおいて次式(3)となる。
新部分曲がり(θ n (Θ))=旧部分曲がり(θ’ n (Θ))−部分曲がり矯正量×Cos(ΘΘ’(矯正した位相))……(3)
これにより、各位相における部分曲がり量の修正を行い、その結果を元に計算すれば、部分曲がりを矯正した場合のワーク全体の振れを計算で予測できる。
【0025】
しかるに本発明では、計算で再現した部分曲がりのデータを用いて、矯正後の各測定個所の振れ量,振れ位相を予測し、振れ最大位置,位相において最も小さい振れとなる矯正量を見極め、その予測値が振れ目標値(規格値)以下となるように、最適な矯正個所,矯正位置,矯正量(部分曲がり量)を計算で求めて、その結果に基づき実際の矯正作業を行うから、少ない矯正回数で高い矯正精度が得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定を、振れの測定値から計算でシュミレートして予測し、得られた最適値に基づいて実際の矯正作業を行うため、高効率,高精度の曲がり矯正を自動化でき、熟練者の手作業の廃止に大きく貢献できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法に従った曲がり矯正作業の概要を示す流れ図である。
【図2】ワークの振れ測定方法を説明する斜視図である。
【図3】測定位置P1 において所定の位相間隔(測定ポイント)で測定した振れを、三角関数で近似して得た近似曲線の例である。
【図4】ワークWを長手方向に切断した位相断面S(Θ)における振れ,部分曲がりの状態を模式的に表示した2次元イメージ図である。
【図5】位相断面S(Θ)における振れR1 (Θ)及び部分曲がり量θ1 (Θ)を、前記近似曲線の振れ量,位相のデータに基づき算出する手法を説明する図である。
【図6】位相断面Θの振れ,部分曲がりの状態及び各測定位置P1 ,P2 ,P3 で測定した振れ──位相近似曲線を模式的に表示した3次元イメージ図である。
【図7】実測したワークWの振れを、演算で再現する手法を説明する図である。
【図8】実測したワークWの振れを、演算で再現する手法を説明する図である。
【図9】(a)は演算で再現された矯正前のワーク長手方向の曲がり線Lを示す2次元イメージ図、(b)はその3次元イメージ図である。
【図10】(a)は演算で予測した矯正後のワーク長手方向の曲がり線L’を示す2次元イメージ図、(b)はその3次元イメージ図である。

Claims (1)

  1. 次の(A)〜(F)の工程を包含することを特徴とする棒材の曲がり矯正位置,矯正量の決定方法。
    (A)ワークの長手方向に複数個所の振れを所定の位相間隔で計測する。
    (B)得られた各測定個所毎の振れ量,位相データ及び測定座標から、所定のワーク位相断面における各測定個所毎の部分曲がり角θ(Θ)を算出する。
    (C)前記(A)で得られた各測定位置での振れと矯正規格とを比較し、振れ<矯正規格であるか否かの判断を行い、振れ<矯正規格であれば矯正不要として矯正を終了し、振れ≧矯正規格であれば次の工程に進む。
    (D)前記(A)で得られた各測定位置での振れの最大位置、位相において、最も振れが小さくなる矯正量を予測する。
    (E)前記(D)で予測した矯正量により矯正を行った場合の予測振れと、振れ目標とを比較し、予測振れ<振れ目標であれば、予測した矯正量で矯正を行い、予測振れ≧振れ目標であれば、前記(B)で得られた各測定箇所での部分曲がり角θ (Θ)が最大となる位置、位相において、前記部分曲がり角θ(Θ)=0となる矯正量を求め、その矯正量で矯正を行う。
    (F)矯正後、前記(A)の工程に戻り、矯正後のワークの振れを測定し、その結果に応じて前記(B)以降の工程を繰り返す。前記(C)の工程において振れ<矯正規格であれば、矯正を終了する。
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