(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における評価装置の一例を示す全体構成図である。図2は、図1の評価装置を上方から下方に見た図である。評価装置は、溝302(第2溝の一例)が螺旋状に形成された測定対象物300の溝302の形状を評価する装置である。評価装置は、台座部100、ステージ110(移動部の一例)、支持部120(移動部の一例)、センサ部130、取付部140、及び天井部150を備える。
なお、図1において、Z方向は測定対象物300の長手方向を指し、+Z方向は長手方向の前方を指し、−Z方向は長手方向の後方を指す。また、Y方向は上下方向を指し、+Y方向は上方を指し、−Y方向は下方を指す。また、X方向は、Y方向及びZ方向のそれぞれと直行する左右方向を指し、+X方向は後方から前方を見て右方を指し、−X方向は後方から前方を見て左方を指す。
測定対象物300としては、例えば、スクリュー、プロペラ、ドリル等が採用される。
台座部100は、例えば、平板状であり、地上に対して固定されている。ステージ110は、台座部100に対して+Z方向、−Z方向に移動可能、つまり、測定対象物300の長手方向に対して移動可能に取り付けられている。
例えば、台座部100の上面にはZ方向に沿って案内溝(図略)が設けられ、ステージ110の底面にはこの案内溝に勘合するローラ(図略)が設けられている。これにより、ステージ110はこの案内溝に沿ってローラが案内されることで、台座部100の上をZ方向に沿って移動できる。
ステージ110のZ方向の両端には一対の支持部120が立設されている。−Z方向側の支持部120は測定対象物300の−Z方向側の端部320を支持し、+Z方向側の支持部120は測定対象物300の+Z方向側の端部320を支持する。ここで、一対の支持部120は、測定対象物300の長手方向がZ方向と平行になるように測定対象物300を支持する。
図2を参照する。測定対象物300は、螺旋状に溝302が形成された測定対象領域310と、一対の端部320とを備える。一対の端部320は、それぞれ、測定対象領域310のZ方向側の端部から中心軸CZと同心円状に延びる円柱形状の部材である。
図1を参照する。測定対象物300は、長手方向の中心軸CZを回転軸として回転可能に一対の支持部120により支持されている。具体的には、一対の支持部120は、それぞれ、端部320が挿入される軸受(図略)を備え、軸受を介して、測定対象物300を回転可能に支持する。
天井部150は、例えば平板状であり、台座部100の上側に設けられている。天井部150には、取付部140がZ方向に移動可能に取り付けられている。例えば、天井部150にはZ方向と平行に案内溝(図略)が設けられ、取付部140の上面にはこの案内溝に嵌合するローラ(図略)が設けられている。取付部140は、この案内溝にローラが案内され、天井部150に対してZ方向に移動できる。
取付部140の下面にはセンサ部130が着脱可能に取り付けられている。
センサ部130は、物体の3次元形状を非接触で測定する3次元画像センサで構成される。詳細には、センサ部130は、測定光を溝302に照射する光源と、溝302からの反射光を受光するカメラとを備える。本実施の形態では、測定光として、光切断線が採用される。但し、これは一例であり、測定光としては、光切断線に代えてスポット光が採用されてもよい。
カメラと光源とは、カメラの光軸と光源の光軸とが所定の頂角を持つように配置されている。そのため、カメラが撮影した画像内に表れる測定光の座標と頂角とを用いて三角測量の原理を適用することで、溝302の形状を測定できる。
図2を参照する。溝断面Q2は溝302の延設方向L21と直交する面で溝302を切断したときの溝302の形状を示す面である。そのため、センサ部130の光源は、延設方向L21と直交する方向(溝302の幅方向)に光切断線を照射する。
センサ部130は、取付部140によって基準測定物400の上方の所定の位置Z1(第1位置の一例)に位置決めされて、基準測定物400の溝402(第1溝の一例)の溝断面Q1の形状を非接触で計測する。
詳細には、センサ部130は、溝断面の幅方向の中心(交点P11)において、溝402の延設方向L11と直交する溝断面Q1の形状を測定する。ここで、位置Z1(図1)は、溝断面の幅方向の中心(交点P11)の真上に配置されている。また、センサ部130は、基準測定物400の幅方向の中心線L12に向けて光切断線が照射されるように光源が配置されている。そのため、位置Z1に位置決めされることで、センサ部130は、溝断面Q1の形状を測定できる。
また、センサ部130は、取付部140によって測定対象物300の上方の所定の位置Z2(第2位置の一例)に位置決めされ、測定対象物300の溝302の溝断面Q2の形状を非接触で測定する。
図2を参照する。基準測定物400の溝402は、溝断面Q2の設計値と同じ形状を持つ。基準測定物400は、上方から下方に見て、溝402の延設方向L11が溝302の延設方向L21と平行、且つ、基準測定物400の厚み方向の中心を通る中心線L12と、溝402の底部を通る溝底線L13と、の交点P11(第1交点の一例)が、中心軸CZと交わるように+Z方向側の支持部120の上面に設置されている。
また、位置Z2(図1)は、測定対象物300を上方から下方に見た場合、中心軸CZ上のある位置に配置されている。そのため、センサ部130を位置Z1に位置決めして溝断面Q1の形状を測定した後、センサ部130を−Z方向に移動させて位置Z2に位置決めするだけで、溝断面Q1と平行な溝断面Q2を測定できる。
本実施の形態では、測定対象物300はZ方向へのみ移動され、中心軸CZ回りに回転されないものとする。そのため、評価装置は、測定対象物300の溝302の全域の形状を測定できない。そこで、本実施の形態では、評価装置は、例えば、1又は数カ所の溝断面Q2の形状を測定する。例えば、P21で示される溝302のある位置(位置ZD)の溝断面Q2が測定箇所であるとすると、溝302の底部を通る溝底線L23と中心軸CZとの交点P21(溝断面Q2の幅方向の中心)が位置P2の真下に到達したときに、センサ部130は、溝断面Q2の形状を測定すればよい。
なお、本実施の形態では、溝断面Q2はどの位置でも同じ設計値で加工されているものとする。したがって、溝302の全域の形状ではなく、1又は数カ所の溝断面Q2の形状を測定するだけでも、溝302の加工精度の評価は可能である。
評価装置は、切削加工機で構成されてもよい。この場合、評価装置は、センサ部130が加工刃に交換されることで、切削加工機になる。切削加工する際には、ステージ110上には円筒状の加工対象物が取り付けられる。そして、加工刃が取り付けられた取付部140は、位置Z2に位置決めされた後、−Y方向に移動して加工刃を加工対象物に当接させる。そして、加工対象物は、支持部120により中心軸CZを回転軸として回転されながら、ステージ110により−Z方向又は+Z方向に移動されることで、螺旋状の溝302が形成される。これにより、測定対象物300が加工される。
図3は、前方から後方に見た場合の評価装置を示す図である。左図及び右図に示すように、支持部120は、ステージ110に立設された柱部1202と、柱部1202の上側に設けられた治具1201とを備える。治具1201は、上面に基準測定物400が載置される。そのため、治具1201のX方向の幅は柱部1202の幅よりも多少広くなっている。
左図の例では、治具1201は、端部320の上半分と当接する半円筒状の孔1203を備えている。また、治具1201は、端部の320の下半分と当接する孔1204を備えている。孔1203と孔1204とは、端部320を挟持することで軸受を構成する。
右図の例では、治具1201の下面にはZ方向と平行に断面が三角形状の孔1205が形成されている。右図の柱部1202は左図の柱部1202と同じ構成である。右図の例では、柱部1202の孔1204に端部320が挿入された後、治具1201は柱部1202の上側から端部320を挟むようにして柱部1202の上側に載置される。
図4は、本発明の実施の形態1に係る評価装置の構成の一例を示すブロック図である。図4に示す評価装置は、図1で示したステージ110、支持部120、センサ部130、及び取付部140の他、制御部700、操作部720、及び表示部730を備える。
制御部700は、例えば、CPU等のプロセッサで構成され、移動制御部710、第1形状データ取得部711、第2形状データ取得部712、評価部713、及びメモリ714を備える。制御部700を構成する各ブロックは、例えばプロセッサが制御プログラムを実行することで実現される。
移動制御部710は、ステージ110、支持部120、及び取付部140を制御する。詳細には、移動制御部710は、ステージ110をZ方向に移動させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、ステージ110をZ方向に移動させる。これにより、所定の位置の溝断面Q2が、位置Z2に位置決めされたセンサ部130の真下に位置決めされる。
また、移動制御部710は、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、支持部120に、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させる。但し、実施の形態1では、測定対象物300は、中心軸CZ回りに回転されないものとする。また、移動制御部710は、取付部140をZ方向に移動させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、取付部140をZ方向に移動させる。これにより、センサ部130が位置Z1又は位置Z2に位置決めされる。
第1形状データ取得部711は、センサ部130を位置Z1に位置決めし、溝402の溝断面Q1の形状をセンサ部130に測定させて第1形状データを取得する。ここで、第1形状データは、Y方向のある位置を基準高さとしたときの、溝断面Q1の複数のサンプル点のそれぞれの高さ(深さ)を示すデータである。
第1形状データ取得部711は、センサ部130のカメラが撮影した画像を取得し、その画像に表れる光切断線の座標とカメラ及び光源の頂角とに対して三角測量の原理を適用して各サンプル点の高さデータを算出し、第1形状データを取得する。光切断線の座標としては、例えば、光切断線が画像の水平方向に延びるのであれば、垂直方向の座標が採用される。この場合、第1形状データ取得部711は、光切断線が表れた画像に対して垂直方向と平行に注目ラインを設定し、注目ラインにおいて輝度ピークが表れる座標を探索する処理を、注目ラインを水平方向にずらしながら繰り返すことで、各サンプル点の光切断線の座標を特定すればよい。
第1形状データ取得部711は、センサ部130を位置Z1に位置決めさせるコマンドを移動制御部710に出力することで、センサ部130を位置Z1に位置決めさせればよい。このコマンドを受信した移動制御部710は、取付部140を位置Z1に移動させることで、センサ部130を位置Z1に位置決めする。
第2形状データ取得部712は、センサ部130を位置Z2に位置決めし、ステージ110により中心軸CZと平行に移動される測定対象物300の溝302の溝断面Q2の形状をセンサ部130に連続的又は断続的に測定させて1又は複数の第2形状データを取得する。
「連続的に測定させる」とは、測定対象物300を停止されることなく一定の速度でZ方向に移動させてセンサ部130に溝断面Q2の形状を測定させることを指す。この場合、第2形状データ取得部712は、測定対象物300において、測定対象となる溝断面Q2が位置するZ座標を事前に記憶しておき、このZ座標が位置Z2の真下に到達したときに、センサ部130に溝断面Q2を測定させればよい。
「断続的に測定させる」とは、一定の速度でZ方向に移動される測定対象物300を一旦停止させて、センサ部130に溝断面Q2の形状を測定させることを指す。この場合、第2形状データ取得部712は、事前に記憶するZ座標が位置Z2の真下に到達したときに、測定対象物300を一旦停止させ、センサ部130に溝断面Q2の形状を測定させればよい。以下の説明では、第2形状データ取得部712は、溝断面Q2の形状をセンサ部130に断続的に測定させるものとして説明する。
なお、第2形状データ取得部712は、移動制御部710に適宜コマンドを出力することで、ステージ110に測定対象物300を移動又は停止させればよい。また、第2形状データ取得部712は、センサ部130に適宜コマンドを出力することで、センサ部130に溝断面Q2の形状を測定させればよい。また、第2形状データ取得部712は、移動制御部710に適宜コマンドを出力することで、取付部140にセンサ部130を位置Z2に位置決めさせればよい。
第2形状データは、第1形状データと同様、Y方向のある位置を基準高さとしたときの、溝断面Q2の複数のサンプル点のそれぞれの高さ(深さ)を示すデータである。なお、第2形状データ取得部712が第2形状データを取得する処理の詳細は第1形状データ取得部711と同じであるため、説明を省く。
第2形状データ取得部712は、溝302のある位置ZDにおける溝断面Q2の形状を測定する場合、位置ZDを基準とする所定の範囲を測定対象物300が中心軸CZと平行に移動する間に、センサ部130により取得される複数の第2形状データのうち、第1形状データとの誤差が最小の第2形状データを特定する。誤差としては、最小二乗誤差が採用できる。最小二乗誤差は、式(1)で表される。
iはサンプル点を指定するインデックスであり、i=0(溝断面の一方の端を指定するインデックス)からi=max(溝断面の他方の端を指定するインデックス)までの値をとる整数である。H1(i)は第1形状データにおけるサンプル点(i)の高さデータを示し、H2(i)は第2形状データにおけるサンプル点(i)の高さデータを示す。
図2を参照する。センサ部130が溝断面Q2を測定する場合、光切断線が溝断面Q2からずれることもある。ずれとしては、例えば、光切断線の中心が溝断面Q2の幅方向からずれるケースが挙げられる。また、センサ部130が溝断面Q1を測定する場合にもこのことは起こりえる。この場合、溝断面Q1に対する光切断線のずれ量と、溝断面Q2に対する光切断線のずれ量とが異なれば、第1形状データと第2形状データとの比較を正確に行うことができない。
そこで、第2形状データ取得部712は、溝断面Q2を測定する場合、交点P21の溝302上での位置ZD(1の位置の一例)を中心とする−δ(mm)から+δ(mm)の範囲内を測定対象物300が移動する間に、一定周期で溝断面Q2を計測させ、位置ZDに対応する複数の第2形状データを取得する。そして、第2形状データ取得部712は、位置ZDに対応する複数の第2形状データのうち第1形状データとの誤差が最小の第2形状データを特定する。なお、δと一定周期とはそれぞれ測定対象物300の移動速度と必要な位置決め精度とに基づいて事前に定められた好適な値に設定される。
図5は、複数の第2形状データの中から第1形状データとの誤差が最小の第2形状データが特定される処理を説明する図である。
図5において、グラフG1は第1形状データを示し、グラフG20、G21、・・・、G2n、・・・、G2Nは第2形状データを示し、グラフG25は第1形状データと第2形状データとの最小二乗誤差を示す。グラフG1、G20、G21、・・・、G2n、・・・、G2N、G25において、縦軸は高さデータH(mm)を示し、横軸は溝断面Q1,Q2の幅方向に対する位置L(mm)を示している。
グラフG1の例では、第1形状データは、位置Lのほぼ中心に溝断面Q1の幅方向の中心が位置しており、光切断線の溝断面Q1に対するずれが少ないことが分かる。
グラフG20は、位置ZDに対して交点P21が−δ離れた位置f0に位置する場合の第2形状データを示している。グラフG21、・・・、G2nは、それぞれ、交点P21が位置f0に対して+Z方向に一定の間隔Δf離れた位置f1(mm)、f2(mm)、・・・、fn(mm)での第2形状データを示している。グラフG2Nは、位置ZDに対して交点P21が+δ離れた位置fNに位置する場合の第2形状データを示している。
第2形状データ取得部712は、グラフG1で示される第1形状データと、グラフG20、G21、・・・、G2n、・・・、G2Nで示される第2形状データとのそれぞれの最小二乗誤差を求める。グラフG25では、位置f0、f1、・・・、fn、・・・、fNでの最小二乗誤差が示されている。この例では、位置fnでの最小二乗誤差が最小であった。そのため、グラフG2nで示される位置fnでの第2形状データが第1形状データとの比較対象として決定される。グラフG2nで示される第2形状データは、位置Lのほぼ中心に溝断面Q2の幅方向の中心が位置しており、光切断線の溝断面Q2に対するずれが少なく、且つ溝断面Q1に対するずれも少ないことが分かる。これにより、第1形状データと第2形状データとの形状を正しく評価できる。
ここでは、最小二乗誤差が最小の第2形状データを特定したが、本発明はこれに限定されず。第1形状データに対して溝底部の位置が最も一致する第2形状データが特定されてもよい。
図4を参照する。評価部713は、第2形状データ取得部712で特定された第2形状データと第1形状データとの差分に基づいて位置ZDの溝断面の形状を評価する。ここで、評価部713は、第1形状データと第2形状データとにおいてサンプル点が対応する高さデータ同士の差分を求め、その差分の統計値(例えば、平均値)を算出するることで、第1形状データと第2形状データとの差分の評価値を算出すればよい。そして、評価部713は、評価値が所定の評価基準値以下であれば、位置ZDの溝断面Q2は正常と判定し、評価値が評価基準値を超えいていれば、位置ZDの溝断面Q2は異常と判定すればよい。なお、評価対象となる溝断面Q2の位置ZDが複数あれば、評価部713は、複数の位置ZDのそれぞれに対する評価値を求める。そして、評価部713は、例えば、全ての評価値が評価基準値以下であれば、測定対象物300の溝302の形状は正常と判定すればよい。
操作部720は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置で構成され、オペレータから種々の操作を受け付ける。種々の操作としては、測定開始の指示等が含まれる。
表示部730は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、評価部713の評価結果等を表示する。また、表示部730は、図5に示す各種グラフを表示してもよい。
図6は、本発明の実施の形態1に係る評価装置の処理を示すフローチャートである。S601では、第1形状データ取得部711は、センサ部130を位置Z1へ移動させるコマンドを移動制御部710に出力する。これにより、移動制御部710は、取付部140を位置Z1に位置決めし、センサ部130を位置Z1に位置決めする。
S602では、第1形状データ取得部711は、センサ部130に基準測定物400を測定させ、第1形状データを取得する。
S603では、第2形状データ取得部712は、センサ部130を位置Z2へ移動させるコマンドを移動制御部710に出力する。これにより、移動制御部710は、取付部140を位置Z2に位置決めし、センサ部130を位置Z2に位置決めする。ここでは、位置Z2は、真下に測定対象となる位置ZD(図2)が位置するように、事前に定められているとする。
S604では、第2形状データ取得部712は、位置ZDを中心に+δから−δの範囲で測定対象物300を+Z方向又は−Z方向に一定速度で移動させながら、センサ部130に一定周期で溝断面Q2を測定させ、位置ZDに対応する複数の第2形状データを取得する。
ここで、S604の態様としては、まず、位置ZDを位置Z2の真下に位置決めしてから、測定対象物300を−δから+δの範囲で移動する態様が採用されてもよい。或いは、位置Z2の真下に位置:ZD−δが位置するように位置Z2が定められているのであれば、測定対象物300は、位置:ZD−δから位置:ZD+δまで+Z方向に移動される態様が採用されてもよい。或いは、位置Z2の真下に位置:ZD+δが位置するように位置Z2が定められているのであれば、測定対象物300は、位置:ZD+δから位置:ZD−δまで−Z方向に移動される態様が採用されてもよい。
S605では、第2形状データ取得部712は、第1形状データと位置ZDに対応する複数の第2形状データとをそれぞれ比較する。
S606では、第2形状データ取得部712は、位置ZDに対応する複数の第2形状データのうち、第1形状データの誤差が最小の第2形状データを特定する。
S607では、評価部713は、第1形状データと、S606で特定した第2形状データとの差分を算出する。そして、評価部713は、算出した差分に基づいて評価値を算出し、溝断面Q2の形状を評価する。
このように、実施の形態1に係る評価装置では、周囲環境によるセンサ部130の測定誤差やセンサ部130が原理的に持つ測定誤差があったとしても、これらの測定誤差は第1、第2形状データとの両方に含まれているので、第1、第2形状データの差分を求めることで、これらの測定誤差が相殺され、第2溝の加工精度を正確に評価できる。
また、熱膨張や熱収縮により測定対象物300に形状変化があった場合、基準測定物400も測定対象物と同様に形状変化しているので、第1、第2形状データの差分を求めることで、この形状変化の成分が相殺され、第2溝の加工精度を正確に評価できる。
なお、図6において、S604〜S606の処理は省かれても良い。また、図6において、複数の位置ZDの溝断面Q2を測定する場合、1つの位置ZDに対するS603〜S607の処理が終了すると、第2形状データ取得部712は、位置Z2の真下に次の測定位置である位置ZDを到達するように測定対象物300をZ方向に移動させるコマンドを移動制御部710に出力すればよい。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る評価装置は、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させながら、Z方向に移動させることで、溝302の全域の溝断面Q2の形状を評価するものである。本実施の形態において、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
図1を参照する。測定対象物300をZ方向に移動させることなく、中心転軸CZ回りに回転させると、センサ部130からは、溝断面Q2はZ方向に移動するように見える。図1の例では、測定対象物300は延設方向L21が左斜め上方向を向いているため、測定対象物300を+Z方向に見て矢印で示す反時計回りに回転させると、センサ部130からは、溝断面Q2は+Z方向に移動するように見える。また、測定対象物300を+Z方向に見て矢印とは逆の時計回りに回転させると、溝断面Q2は−Z方向に移動するように見える。
そこで、この溝断面Q2の移動を打ち消すように、測定対象物300をZ方向に移動させると、センサ部130からは、溝断面Q2は静止して見える。例えば、測定対象物300を矢印で示す反時計回りに回転させた場合、センサ部130から見て、溝断面Q2は+Z方向に移動速度Vで移動するため、測定対象物300を−Z方向に移動速度Vで移動させると、センサ部130から見て、溝断面Q2は静止して見える。一方、測定対象物300を時計回りに回転させた場合、溝断面Q2は、センサ部130から見て、−Z方向に移動速度Vで移動するため、測定対象物300を+Z方向に移動速度Vで移動させると、センサ部130から見て、溝断面Q2は静止して見える。
したがって、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させながら、溝断面Q2の移動が打ち消されるように測定対象物300をZ方向に移動させる。これにより、静止状態のセンサ部130は、常に溝断面Q2に光切断線を照射でき、光切断線を連続的に撮影することで、任意の位置の溝断面Q2の形状を測定できる。
なお、本実施の形態では、測定対象物300のZ方向に対する角速度及び移動速度としては、測定対象物300の加工時における角速度及び移動速度と同じ値が採用される。
図7は、本発明の実施の形態2に係る評価装置の処理を示すフローチャートである。S701〜S703は、図6のS601〜S603と同じである。
S704では、第2形状データ取得部712は、位置Z2の真下に、測定対象の溝断面Q2のある位置ZDが到達するように、移動制御部710にコマンドを出力する。このコマンドを受けた移動制御部710は、測定対象物300を中心軸CZ回りに所定角度回転させ、且つ、Z方向に所定距離移動させて、位置Z2の真下に位置ZDを到達させる。
S705〜S708は図6のS604〜S607と同じである。S709では、溝302の全域の測定が終了したか否かが判定され、全域の測定が終了していれば、処理は終了する。一方、溝302の全域の測定が終了していなければ、処理はS704に戻される。
すなわち、S704〜S709のループを繰り返すことで、測定対象物300の一方の端部320側の最も近くに位置する位置ZDから、他方の端部320側の最も近くに位置する位置ZDまで、測定対象物300が中心軸CZ回りに所定角度回転されると共にZ方向に所定距離移動されて、位置Z2の真下に位置ZDが断続的に位置決めされる。また、位置Z2の真下に位置ZDが位置決めされる都度、測定対象物300は、−δから+δの範囲でZ方向に移動されて、第1形状データとの誤差が最小の第2形状データが特定される。以上により、溝302の全域での複数の位置ZDの溝断面Q2の形状が評価される。その結果、本実施の形態では、溝302の形状をより正確に評価できる。
なお、図7のフローチャートでは、測定対象物300は中心軸CZ回りの回転及びZ軸への移動が断続的に行われているが、連続的に行われてもよい。この場合、S706、S707の処理は省略されればよい。また、S705では、測定対象物300を−δから+δまでの範囲をZ方向に移動させずに位置ZDに対応する1つの第2形状データを測定すればよい。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る評価装置は、延設方向に向けて溝302の深さが一定の割合Uで変化する測定対象物300において、溝302の形状を評価するものである。
図4を参照する。メモリ714は、溝302の1又は複数の位置ZDと割合Uとに基づいて算出される1又は複数の第2形状データのそれぞれの第1形状データに対する深さの変化量を記憶する。本実施の形態では、基準測定物400と溝302の深さに差がない測定対象物300の位置ZD0と、基準測定物400と溝302の深さに差がある測定対象物300の1又は複数の位置ZD1とを測定するものとする。したがって、メモリ714は、位置ZD1における、溝402に対する溝302の変化量を記憶する。例えば、割合Uが溝302の延設方向L21の単位長さあたりの深さの変化量を示すとする。この場合、メモリ714は、位置ZD0から位置ZD1までの延設方向L21に沿った溝302の距離に割合Uを乗じることで事前に算出された位置ZD1での深さの変化量を、位置ZD1と対応付けて記憶すればよい。また、本実施の形態では、基準測定物400は中心軸CZ回りに回転されず、Z方向に移動のみされるとする。
図8は、本発明の実施の形態3に係る評価装置の処理を示すフローチャートである。S801〜S807は、図6のS601〜S607と同じである。但し、S803では、位置Z2は、真下に位置ZD0が位置するように、事前に定められているとする。これにより、S801〜S807では、基準測定物400に対して深さの変化量が0である位置ZD0での溝断面Q2の形状が評価される。
S808では、第2形状データ取得部712は、位置Z2の真下に位置ZD1が位置するように、測定対象物300をZ方向に移動させるコマンドを移動制御部710に出力する。このコマンドを受けた移動制御部710は、位置Z2の真下に位置ZD1が位置するようにステージ110を移動させる。
S809では、第2形状データ取得部712は、位置ZD1を中心に+δから−δの範囲で測定対象物300を+Z方向又は−Z方向に一定速度で移動させながら、センサ部130に一定周期で溝断面Q2を測定させ、位置ZD1に対応する複数の第2形状データを取得する。
S810では、第2形状データ取得部712は、位置ZD1に対応する深さの変化量をメモリ714から読み出し、S809で取得された複数の第2形状データのそれぞれについて、深さの変化量を除去することで第2形状データを補正する。例えば、位置ZD1の溝断面Q2が溝断面Q1に対して変化量dだけ深いとするならば、第2形状データ取得部712は、第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)に変化量dを加算することで、第2形状データを補正すればよい。一方、位置ZD1の溝断面Q2が溝断面Q1に対して変化量dだけ高いとするならば、第2形状データ取得部712は、第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)から変化量dを減じればよい。これにより、第2形状データにおいて第1形状データに対する深さの変化量が除去され、第2形状データの形状と第1形状データの形状とを対等に評価できるようになる。
S811では、第2形状データ取得部712は、補正後の複数の第2形状データと、第1形状データとをそれぞれ比較する。
S812では、第2形状データ取得部712は、複数の第2形状データのうち、第1形状データに対する誤差が最小の第2形状データを特定する。ここでは、実施の形態1で説明したように、誤差としては、最小二乗誤差が用いられる。
S813では、評価部713は、S812で特定された第2形状データと第1形状データとの差分に基づいて評価値を算出し、位置ZD1の溝断面Q2の形状を評価する。
このように、実施の形態3に係る評価装置では、溝302の位置ZD1に応じた深さの変化量が第2形状データから除去されるように第2形状データが補正されている。これにより、補正後の第2形状データの形状と第1形状データの形状とを対等に評価することができ、第2溝の加工精度を正確に評価できる。
なお、図8において複数の位置ZD1の第2形状データを取得する場合は、S813の処理の終了後、処理をS808に戻し、位置Z2の真下に次の測定対象の位置ZD1が位置するように測定対象物300をZ方向に移動させればよい。そして、S809〜S813の処理が実行されればよい。
(実施の形態4)
実施の形態4は、センサ部130が複数のセンサ要素で構成されており、複数のセンサ要素のうち少なくとも1つのセンサ要素は、光軸が溝302の溝底部からずれているものとする。また、実施の形態4は、実施の形態3と同様、延設方向L21に向けて一定の割合Uで深さが変化する溝302を備える測定対象物300を評価対象とする。そして、実施の形態4は、光軸がずれたセンサ要素が測定対象物300を測定することで得られた第2形状データにおいて、深さの変化量を正確に除去するものである。
図9は、本発明の実施の形態4に係るセンサ部130の構成を示す図である。図9では、溝302の延設方向L21と直交する方向からセンサ部130を見たときのセンサ部130の構成が示されている。センサ部130は、3つのセンサ要素131,132,133を備える。なお、センサ要素131,133は、第1センサ要素の一例である。センサ要素131,132,133は、それぞれ、溝302のある位置ZDの溝断面Q2の領域R91,R92,R93を測定する。センサ要素131〜133は、それぞれ、カメラ91及び光源92を備える。カメラ91及び光源92は光軸同士が一定の頂角を有するように配置されている。光源92は、光切断線を照射する。カメラ91は、溝断面Q2に向けて光切断線が照射された溝302の画像を撮影する。
センサ要素131,132,133は、それぞれ、光切断線の放射面S91,S92,S93が連なり、且つ、溝断面Q2の全幅に光切断線を照射するように光源92が配置されている。これにより、センサ要素131〜133は、同一の位置ZDにおける溝断面Q2の形状を同時に測定できる。
センサ要素131,132,133の光軸L91,L92,L93は、それぞれ、放射面S91,S92,S93を2等分する線である。センサ要素132は、光軸L92がY方向と平行であり、溝断面Q2の幅方向の中心O9と交差している。光軸L91〜L93は、光軸L92上の交点CPで交差している。交点CPにおいて、光軸L91及び光軸L92のなす角と、光軸L93及び光軸L92のなす角とは等しくなるように、センサ要素131〜133は配置されている。また、光源92から溝断面Q2までの光軸L91〜L93の長さはそれぞれ実質的に等しくなるようにセンサ要素131〜133は配置されている。よって、領域R91,R92,R93は溝断面Q2を3等分する。
ここで、センサ要素132は、光軸L92が中心O9と交差するので、実施の形態3で説明した手法をそのまま適用しても、第2形状データから変化量dを除去できる。
しかし、センサ要素131,133は、光軸L91,L93が中心O9からずれているので(Y方向に対して傾斜しているので)、実施の形態3で説明した手法をそのまま適用すると、第2形状データから変化量dを除去できない。
図10を参照する。図10は、本発明の実施の形態4に係る処理を説明するためのグラフである。図10において、f1(x)は第1形状データの近似関数であり(第1近似関数の一例)、f2(x)はf1(x)から変化量dを減じた近似関数であり(第2近似関数の一例)、一次関数f3(x)はセンサ要素131の光軸L91を示す一次関数である。図10において、縦軸(y軸)は光軸L92と平行な方向を示し、横軸(x軸)は溝断面Q1の幅方向を示す。x=0の位置は溝断面Q1の溝底部を示す。
センサ要素132は、光軸L92(図9)がy軸と平行なので、変化量dの方向がy軸と平行である。そのため、第1形状データに対する深さの変化量dを第2形状データに加えれば、第2形状データから変化量dが除去される。
しかし、センサ要素131は、光軸L91がy軸に対して傾斜している。そのため、第2形状データにおいて、光軸L91上での深さの変化量を除去するためには、変化量dではなく、光軸L91と平行な交点Aと交点Bとの距離を減じる必要がある。なお、交点Aは近似関数f1(x)及び光軸L91の交点であり、交点Bは近似関数f2(x)及び光軸L91の交点である。上述したことは、センサ要素133も同じである。
そこで、本実施の形態では、下記の処理を行う。以下の説明では、光軸L91を例に挙げて説明するが、光軸L93も同じである。
(1)センサ要素131の配置から、光軸L91を表す一次関数:f3(x)=a・x+bが計算される。ここで、光軸L91を表す一次関数は事前に計算可能であるため、メモリ714に事前に計算された一次関数を記憶させておき、第2形状データ取得部712は一次関数をメモリ714から取得すればよい。
(2)第2形状データ取得部712は、基準測定物400を測定して第1形状データを取得し、第1形状データから領域R91の範囲を抜き出し、抜き出した第1形状データの近似関数f1(x)を算出する。ここでは、f1(x)の近似関数として、f1(x)=α・x2+β・x+γの2次関数を採用する。
(3)第2形状データ取得部712は、(2)で算出した近似関数f1(x)から測定対象の位置ZDでの深さの変化量dを減じ、近似関数f2(x)=f1(x)−dを算出する。例えば、近似関数f2(x)は、f2(x)=α・x2+β・x+γ−dで表される。なお、位置ZD1が位置ZD0よりも深さの変化量dだけ高ければ、第2形状データ取得部712は、近似関数f2(x)を、f2(x)=f1(x)+d、すなわち、f2(x)=α・x2+β・x+γ+dにより算出すればよい。
(4)第2形状データ取得部712は、(2)で算出した近似関数f1(x)と一次関数f3(x)との交点Aと、(3)で算出した近似関数f2(x)と一次関数f3(x)との交点Bとを算出する。そして、第2形状データ取得部712は、交点Aと交点Bとの距離を算出する。交点A,B間の距離は光軸L91と平行な距離を表しており、光軸L91上での誤差そのものを表すことになる。
(5)第2形状データ取得部712は、領域R91全体での距離を算出するために、図11に示すように、(1)で取得した一次関数f3(x)のy切片を領域R91の全域が含まれるように変化させながら、(4)の処理を行う。
図11は、図10において、一次関数f3(x)を平行移動させながら、交点Aと交点Bとの距離d(w)を求める処理を示す図である。平行移動される一次関数f3(x)はf3(x)=a・x+b+wとおく。ここで、wは−u以上、+u以下の値をとる。−uは領域R91の左端に一次関数f3(x)を平行移動させたときのbに対するy切片のオフセットを示し、+uは領域R91の右端に一次関数f3(x)を平行移動させたときのbに対するy切片のオフセットを示す。
第2形状データ取得部712は、f3(x)=a・x+b+wとf1(x)との交点A(w)と、f3(x)=a・x+b+wとf2(x)と交点B(w)との距離d(w)の計算を、一次関数f3(x)の傾きを維持した状態で一次関数f(x)を平行移動させながら繰り返すことで、複数の距離d(w)を算出する。
なお、交点A(w)は、f1(x)−a・x−b−w=0の方程式の解により得られ、交点B(w)は、f2(x)−a・x−b−w=0の方程式の解により得られる。また、距離d(w)は、交点Aをxa,ya、交点Bをxb,ybとすると、交点A(w),B(w)のユークリッド距離、すなわち、d(w)=((xa−xb)2+(ya−yb)2)1/2より算出される。
(6)第2形状データ取得部712は、第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)に距離d(w)を加算又は減算することで第2形状データを補正する。例えば、位置ZDの溝断面Q2が溝断面Q1に対して変化量dだけ深いとするならば、第2形状データ取得部712は、領域R91の第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)に距離d(w)を加算することで、第2形状データを補正すればよい。一方、位置ZDの溝断面Q2が溝断面Q1に対して距離d(w)だけ高いとするならば、第2形状データ取得部712は、領域R91の第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)から距離d(w)を減じるこで、第2形状データを補正すればよい。これにより、第2形状データから深さの変化量の影響が取り除かれた正しい溝断面Q2の形状データが得られる。
なお、処理(1)、(2)は第1処理の一例に相当し、処理(3)は第2処理の一例に相当し、処理(4)、(5)は第3処理の一例に相当し、処理(6)は第4処理の一例に相当する。
評価部713は、補正後の第2形状データと第1形状データとを比較して溝断面Q2の形状を評価する。
但し、溝断面Q1,Q2の形状が複雑な場合、処理(2)の際に、領域R91の全域を1つの近似関数を用いて第1形状データを表すと大きな誤差が発生する可能性がある。そこで、本実施の形態では、第2形状データ取得部712は、処理(2)において、近似関数f1(x)と設計値との誤差が閾値範囲を以下となるように領域R91を1又は複数の区間に区画し、各区間の形状を近似する1又は複数の近似関数f1(x)を算出し、各区間のそれぞれに対して処理(3)〜(6)を実行する。
図12は、近似関数f1(x)と設計値との誤差が閾値範囲以下となるように領域R91を複数の区間に分ける処理を説明する図である。
図12のグラフG1201は、図8で示す領域R91の第1形状データを1つの近似関数f1(x)で近似した場合の近似関数f1(x)と領域R91の設計値との誤差を示している。グラフG1201において、曲線g1は設計値を示し、曲線g2は近似関数f1(x)と設計値との誤差を示し、曲線g3は領域R91の第1形状データの測定値を示す。グラフG1201において、左側の縦軸は高さを示し、右側の縦軸は近似関数f1(x)と設計値との誤差を示し、横軸は領域R91の各位置を示す。
グラフG1201では、曲線g2が閾値範囲Thからはみ出しており、近似関数f1の設計値に対する誤差が大きいことが分かる。閾値範囲Thは、予め定められた誤差の許容範囲であり、0を中心に上下に一定の値を持ち、要求される測定精度から好適な値が採用される。
グラフG1202では、領域R91の右端の位置x0から位置x1までの区間R11において、1つの近似関数f11(x)を用いて、誤差を閾値範囲Th内に収めることができたので、第2形状データ取得部712は、領域R91から区間R11を取り出し、区間R11に対する近似関数f1(x)として近似関数f11(x)を採用する。すなわち、第2形状データ取得部712は、位置x1を超えると、誤差が閾値範囲Thを超えたので、区間R11を近似関数f11(x)の適用範囲として決定したのである。
グラフG1203では、位置x1から位置x2までの区間R12において、1つの近似関数f12(x)を用いて、誤差を閾値範囲Th内に収めることができたので、第2形状データ取得部712は、領域R91から区間R12を取り出し、区間R12に対する近似関数f1(x)として近似関数f12(x)を採用する。すなわち、第2形状データ取得部712は、位置x2を超えると、誤差が閾値範囲Thを超えたので、区間R12を近似関数f12(x)の適用範囲として決定したのである。
グラフG1204では、位置x2から位置x3までの区間R13において、1つの近似関数f13(x)を用いて、誤差を閾値範囲Th内に収めることができたので、第2形状データ取得部712は、領域R91から区間R13を取り出し、区間R13に対する近似関数f1(x)として近似関数f13(x)を採用する。すなわち、第2形状データ取得部712は、位置x3を超えると、誤差が閾値範囲Thを超えたので、区間R13を近似関数f13(x)の適用範囲として決定したのである。
グラフG1205では、位置x3から領域R91の左端である位置x4までの区間R14において、1つの近似関数f14(x)を用いて、誤差を閾値範囲Th内に収めることができたので、第2形状データ取得部712は、領域R91から区間R14を取り出し、区間R14に対する近似関数f1(x)として近似関数f14(x)を採用する。
そして、第2形状データ取得部712は、区間R11〜R14のそれぞれにおいて上記の処理(3)〜(5)を行い、区間R11〜R14の各サンプル点に対する距離d(w)を求める。そして、第2形状データ取得部712は、領域R91の第2形状データの各サンプル点の高さデータH(i)に対して対応する距離d(w)を加算又は減算することで第2形状データから距離d(w)の影響を除去する(処理(6))。これにより、評価部713は、深さの変化量dの影響が除去された第2形状データを用いて第1形状データとの比較が行える。
なお、図12では、領域R91に対する例が示されたが、図9に示す領域R93についても同じ処理が適用される。また、本実施の形態では、光軸が溝断面Q2の中心O9からずれているセンサ要素が2つであったので、2つの第1形状データに対して図12に示す処理が適用されたが、これは一例である。すなわち、図12に示す処理は、光軸が溝断面Q2の中心O9からずれるセンサ要素が1つ、又は3つ以上であれば、各センサ要素に対して適用される。
以上の方法により、複雑な曲面形状を有する物体に対しても、深さ方向の変化の影響を高精度に除去することが可能である。
図13は、実施の形態4に係る評価装置において、ある位置ZDでの第2形状データの測定値と、その位置ZDに対する補正後の第1形状データとを示すグラフである。上段のグラフは、センサ要素131におけるグラフであり、中段のグラフはセンサ要素132におけるグラフであり、下段のグラフはセンサ要素133におけるグラフである。
図13の各グラフにおいて、縦軸は高さを示し、横軸は溝断面Q2の各位置を示している。ひし形の点でプロットされた点群g11は、補正後の第1形状データを示し、四角形の点でプロットされた点群g12は第2形状データの測定値を示す。
中段のグラフは、光軸が溝断面Q2の中心O9がずれていないので、点群g11,g12はほぼ水平方向に延びている。上段のグラフは、光軸が溝断面Q2に対して右方(図9)にずれているので、点群g11,g12は右斜め上方に延びている。下段のグラフは、光軸が溝断面Q2に対して左方(図9)にずれているので、点群g11,g12は右斜め下方に延びている。
いずれのグラフにおいても、点群11と点群12とのずれは僅かであり、実施の形態4の手法により、位置ZDに対応する距離d(w)を減じることで得られた補正後の第1形状データは、位置ZDにおける第2形状データの測定値と同等な値になっていることが分かる。
実施の形態4に係るフローチャートは実施の形態3で説明した図8と同じフローチャートを採用すればよい。この場合、実施の形態4で説明した処理(1)〜(6)は図8のS810、すなわち、第2形状データの補正のステップで実行されればよい。詳細には、第2形状データ取得部712は、位置ZDにおける第2形状データを取得する場合、位置ZDを中心に測定対象物300を−δから+δの範囲でZ方向に移動させることで得られた複数の第2測定データのそれぞれに対して、上述の処理(1)〜(6)を適用すればよい。
このように、実施の形態4に係る評価装置によれば、センサ部130の光軸が溝断面Q2の中心O9からずれていても、溝302の加工精度を正確に評価できる。
(実施の形態5)
実施の形態5は、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させながら、Z方向に移動させることで、溝302の全域の溝断面Q2の形状を評価する実施の形態2の態様に実施の形態3又は実施の形態4の手法を適用したものである。
図14は、本発明の実施の形態5に係る評価装置の処理を示すフローチャートである。図14において図7との差分は、S1306にある。S1306では、実施の形態3又は実施の形態4に示した手法を用いて、S1305で取得された複数の第2形状データのそれぞれが補正される。それ以外の、S1301〜S1304は、図7のS701〜S704と同じであり、S1307〜S1310は、図7のS706〜S709と同じである。なお、S1304において、最初に位置決めされる位置ZDは上述の位置ZD0とすればよく、以降、位置決めされる位置ZDは、上述の位置ZD1とすればよい。
このように、実施の形態5に係る評価装置によれば、センサ部130の光軸が溝断面Q2の中心O9からずれている場合においても、溝302の全域の形状を評価することができる。その結果、溝の加工精度をより正確に評価できる。なお、図14のフローチャートでは、測定対象物300は中心軸CZ回りの回転及びZ軸への移動が断続的に行われているが、連続的に行われてもよい。この場合、S1307、S1308の処理は省略されればよい。また、S1305では、測定対象物300を−δから+δまでの範囲をZ方向に移動させずに位置ZD1に対応する1つの第2形状データを測定すればよい。また、S1306では、1つの第2形状データに対して上述した処理(1)〜(6)を適用して第2形状データを補正すればよい。
また、実施の形態5において、割合Dが中心軸CZ回りの測定対象物300の単位回転角度に対する深さの変化量が規定されてもよい。この場合、メモリ714が記憶する位置ZD1に対する変化量dは、位置Z2の真下に位置ZD0が位置する状態から、位置Z2に位置ZD1が到達するまでの回転角度に、割合Dを乗じることで算出されればよい。