そこで、基板を異なる処理槽に順番に導入していく従来の複数処理槽設置方式や、基板に処理液を噴霧する処理液噴霧方式に代えて液回収型ノズル装置を採用すれば、基板の前後に対する処理液の飛散が少ないため、一つの処理室内に搬送方向に沿って直列に異なる処理を行う複数の液回収型ノズル装置を配設して小型化することが期待され得る。
しかしながら、たとえ処理液の飛散が少ない液回収型ノズル装置であっても、処理液から蒸気が揮散することを避けることはできない。したがって、1つの処理槽内に異なる種類の処理液を使用する複数の液回収型ノズル装置を設けると、処理液の種類等によっては、他の処理乃至は処理液に対して好ましくない蒸気が処理室内に全体的に充満してしまい、この蒸気によって他の処理に悪影響を与えるという不都合の生じることがあるため、複数の液回収型ノズル装置を単に1つの処理室内に並設することができないというのが実情であった。
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、一つの処理室内に複数の液回収型ノズル装置を配設しても、一の液回収型ノズル装置の処理液から揮散した蒸気が他の液回収型ノズル装置による基板処理に悪影響を及ぼすことがなく、これによって一つの処理室内に異なる種類の処理液を供給する複数の液回収型ノズル装置を配設することができる基板処理装置を提供することを目的としている。
請求項1記載の発明は、一の処理室内で搬送手段によって基板を実質的に水平方向に搬送しつつ該基板に所定の表面処理を順次施すようにした基板処理装置であって、前記処理室内に前記搬送路に沿って配設されるとともに、搬送される基板の処理面に微小隙間を有して対向配置され、この微小隙間に搬送方向に沿ってそれぞれ異なる種類の処理液を供給する複数の処理部と、前記各処理部に対応して設けられ、フィルタを介して清浄気体を前記処理室に導く気体導入部と、導入された清浄気体を処理室外へ排気する気体排出部とを備え、前記気体導入部は、各処理部の上流側および下流側の双方に清浄気体を供給するものであることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、基板に処理液を供給する処理部は、搬送される基板の処理面に対向配置されることによって形成された微小隙間に処理液を供給するようにしているため、処理液を噴霧状で基板に供給する従来の噴霧ノズルを採用した場合に比較し、基板に対し従来より少ない量で処理液が無駄なく供給されるとともに、処理液の飛散を少なく抑えられる。したがって、一つの処理室内で搬送中の基板に対し異なる種類の処理液を用いた基板に対する複数工程の処理を実行することが可能になる。
そして、一つの処理室内で複数設けられた各処理部に対応して、フィルタを介して清浄気体を前記処理室に導く気体導入部と、導入された清浄気体を処理室外へ排気する気体排出部とがそれぞれ設けられているため、各処理部において処理液から揮散した蒸気が他の処理部に到達することなく、専用の気体導入部を介し当該処理部に導入された清浄気流に同伴して専用の気体排出部から系外に排出されることになり、各処理部の周りの空間に他の処理部で揮散した蒸気が侵入することが有効に防止される。
さらに、かかる構成によれば、各処理部が占める空間は、その上流側および下流側の双方、すなわち隣設された他の処理部が占める空間との境界位置に清浄気体の気流カーテンが形成された状態になるため、各処理部で生じた処理液からの蒸気は、この気流カーテンに阻止されて他の処理部の空間に移ることが阻止されつつ、清浄気体の気流に同伴して系外に排出される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記フィルタは、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなるものであることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、処理室に導入される気体は、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなるフィルタによって濾過され、清浄な気体となって処理室に供給される。そして、フィルタに供給される気体中の粉塵は、フィルタ内でフィルタ濾材との衝突によって効率的に除去される。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記気体排出部は、各処理部に対応して設けられていることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、各処理部に対して設けられた気体導入部からの気体であって、基板処理位置を通過した気体が他の基板処理位置へ向うことがなくなり、各処理位置での基板処理が好適に行われる。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記処理室は、隣設する処理部との間を仕切る隔壁を備えていることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、各処理室の占める空間を他の処理室と隔絶した状態で確実に確保することが可能になる。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、基板に対して薬液処理を施す薬液処理部と、薬液処理後の基板に対して洗浄処理を施す洗浄処理部と、洗浄処理後の基板に対して乾燥処理を施す乾燥部とが搬送方向上流側から下流側に向けて直列で前記処理室内に配設されていることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、基板は、搬送路に沿って搬送されつつ薬液処理部で所定の薬液処理が施され、引き続き洗浄処理部で洗浄処理が施され、最後に乾燥部で乾燥処理が施された後、製品となって処理室から系外に排出される。
請求項6記載の発明は、一の処理室内で搬送手段によって基板を実質的に水平方向に搬送しつつ該基板に所定の表面処理を順次施すようにした基板処理装置であって、前記処理室内に前記搬送路に沿って配設されるとともに、搬送される基板の処理面に微小隙間を有して対向配置され、この微小隙間に搬送方向に沿ってそれぞれ異なる種類の処理液を供給する複数の液回収型ノズル装置と、前記各液回収型ノズル装置に対応して設けられ、フィルタを介して清浄気体を前記処理室に導く気体導入部と、導入された清浄気体を処理室外へ排気する気体排出部とを備え、前記処理室は、隣設する液回収型ノズル装置同士の間を仕切る隔壁を備え、前記気体導入部は、各液回収型ノズル装置の上流側および下流側の双方に、前記隔壁に沿うように清浄気体を供給するものであり、前記気体排出部は、各液回収型ノズル装置に対応して設けられていることを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、一つの処理室内で複数設けられた各処理部に対応して、フィルタを介して清浄気体を前記処理室に導く気体導入部と、導入された清浄気体を処理室外へ排気する気体排出部とがそれぞれ設けられているため、各処理部において処理液から揮散した蒸気が他の処理部に到達することなく、専用の気体導入部を介し当該処理部に導入された清浄気流に同伴して専用の気体排出部から系外に排出されることになり、これによって各処理部の周りの空間に他の処理部で揮散した蒸気が侵入することを有効に防止することができる。
したがって、一つの処理室内に複数の処理部を基板搬送方向に直列に並設しても、一の処理部で生じた、他の処理部での基板処理に有害な処理液の蒸気が他の処理部に到達することを確実に防止することができる。したがって、異なる種類の処理液で基板処理する処理部を一つの処理室内に複数配設することができないとされていた従来の技術常識を覆すことができ、基板処理装置のコンパクト化による設備コストおよび運転コストの低減化に貢献することができる。
さらに、請求項1記載の発明によれば、各処理部が占める空間は、その上流側および下流側の双方、すなわち隣設された他の処理部が占める空間との境界位置に清浄気体の気流カーテンが形成された状態になり、これによって各処理部で生じた処理液からの蒸気は、この気流カーテンに阻止されて他の処理部の空間に移ることが阻止されつつ、清浄気体の気流に同伴して系外に排出されるため、処理室内の基板処理空間を全体的に常に清浄に維持することができる。
請求項2記載の発明によれば、処理室に導入される気体は、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなるフィルタによって濾過され、清浄な気体となって処理室に供給されるため、フィルタに供給される気体中の粉塵を、フィルタ内でのフィルタ濾材との衝突によって効率的に除去することができる。
請求項3記載の発明によれば、気体排出部が各処理部に対応して設けられているため、各処理部に対して設けられた気体導入部からの気体であって、基板処理位置を通過した気体が他の基板処理位置へ向うことがなくなり、これによって各処理位置での基板処理を好適に実行することができる。
請求項4記載の発明によれば、処理室には隣設する処理部との間を仕切る隔壁が設けられているため、各処理室の占める空間を他の処理室と隔絶した状態で確実に確保することが可能になり、これによって他の処理室の雰囲気が当該処理室に持ち込まれることを有効に防止することができる。
請求項5記載の発明によれば、基板は、一つの処理室内で搬送路に沿って搬送されつつ薬液処理部で所定の薬液処理が施され、引き続き洗浄処理部で洗浄処理が施され、最後に乾燥部で乾燥処理が施された後、製品となって処理室から系外に排出されるため、従来のように薬液処理、洗浄処理および乾燥処理のためにそれぞれ専用の処理槽を設ける必要がなく、その分基板に対するエッチング処理用の設備コストの大幅な削減を達成することができる。
図1は、本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す断面視の説明図であり、図2は、その平面視の説明図である。この実施形態においては、基板処理装置10として基板Bにエッチング処理を施すエッチング処理装置を例に挙げている。図1に示すように、基板処理装置10は、直方体状を呈した処理装置本体11内に、基板Bに対してエッチング処理を施すエッチング部12と、このエッチング部12から導出された基板Bに対して洗浄処理を施す洗浄部13と、この洗浄部13から導出された基板Bに対して乾燥処理を施す乾燥部14とを備えて構成されている。
前記処理装置本体11内の空間によって本発明に係る一つの処理室が形成されているとともに、エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14のそれぞれが本発明に係る処理部が占める処理空間である。
前記処理装置本体11の上流側壁111(図1における右方)には、基板搬入口15が開口されているとともに、下流側壁112には、前記基板搬入口15と対向した位置に基板搬出口16が開口されている。そして、これら基板搬入口15と基板搬出口16との間には、基板搬送方向(図1において左方へ向う方向)に等ピッチで複数の搬送ローラ(搬送手段)17が並設され、これら複数の搬送ローラ17上に処理装置本体11内で基板Bを搬送するための搬送路171が形成されている。各搬送ローラ17は、図略の駆動モータの駆動で図1における反時計方向に駆動回転するようになっている。
したがって、系外から基板搬入口15を介して処理装置本体11内に導入された基板Bは、各搬送ローラ17の駆動回転により搬送路171を下流側へ向けて搬送され、エッチング部12でエッチング処理が施された後、洗浄部13で洗浄処理が施され、最後に乾燥部14で乾燥処理が施された後、基板搬出口16を介して系外に排出されるようになっている。
前記洗浄部13は、上流側(図1の右方)の第1洗浄部130と、下流側で第1洗浄部130に隣設された第2洗浄部130′とからなっている。第1洗浄部130は、エッチング部12から導出された基板Bに対して通常の洗浄処理を施すものであるのに対し、第2洗浄部130′は、さらに高度の仕上げ洗浄処理を基板Bに施すものである。
前記処理装置本体11内におけるエッチング部12の下方位置には第1ホッパ121が設けられ、同第1洗浄部130の下方位置には第2ホッパ131が設けられ、同第2洗浄部130′の下方位置には第3ホッパ132が設けられ、同乾燥部14の下方位置には第4ホッパ141が設けられている。そして、搬送路171に沿って搬送中の基板Bから滴り落ちた処理液がこれら第1〜第4ホッパ121,131,132,141によって受けられた後、底部の開口を通って適宜排出されるようになっている。
また、後述する液回収型ノズル装置20の前端と後端、およびエアナイフ30の上部には、処理装置本体11の天板113から垂下された上部仕切り壁(隔壁)114が設けられ、これらの上部仕切り壁114によって各部の雰囲気が他の部に侵入するのを防止するようになされている。かかる上部仕切り壁114の下縁部と第1〜第4ホッパ121,131,132,141の上縁部とは、搬送路171と干渉しないように位置設定され、これによって処理装置本体11内に導入された基板Bは,上部仕切り壁114等と干渉することなく下流側に向けて搬送され得るようになっている。
また、第2洗浄部130′は、基板搬送方向の長さ寸法が第1洗浄部130の長さ寸法より長尺に設定されている。このようにされるのは、最終的な洗浄処理が施された後の基板Bに対しさらに後述の液保持用ノズル装置40による乾燥防止処置を施すための空間を確保するためである。
そして、処理装置本体11内に導入された基板Bに対し、前記エッチング部12においてエッチング液によるエッチング処理が施され、第1洗浄部130において第1段階の洗浄処理が施され、第2洗浄部130′において仕上げの洗浄処理が施された後、乾燥部14において洗浄処理済の基板Bに対し乾燥処理が施されるようになっている。
前記洗浄等の処理のために、エッチング部12、第1洗浄部130および第2洗浄部130′には、搬送路171を挟むように上下で対向した一対の液回収型ノズル装置(処理部)20がそれぞれ設けられているとともに、エッチング部12および第1洗浄部130には、液回収型ノズル装置20の直下流側に搬送路171を挟んで上下一対のエアナイフ30がそれぞれ設けられている。これに対し、第2洗浄部130′においては液回収型ノズル装置20の下流側に搬送路171を挟んだ状態で上下一対の液保持用ノズル装置40が設けられている。
第2洗浄部130′に液保持用ノズル装置40が設けられているのは、エアナイフ30による本格的な乾燥処理は、乾燥部14によって行われるため、第2洗浄部130′では基板Bを乾燥させる必要はなく、液の持ち出しを低減するため、エアナイフ30による液切りを行う程度でよいことによる。
また、第2洗浄部130′に液保持用ノズル装置40が設けられるのは、液回収型ノズル装置20により最終的な洗浄処理が施された基板Bは、乾燥部14に到達するまでの間に自然乾燥してしまうことがあり、そうなると、基板Bの表裏面にパーティクルが固着したり、ウォータマークが付いた状態になる場合があるため、これを防止するべくさらなる最終的な洗浄処理として液保持用ノズル装置40が設けられているのである。この液保持用ノズル装置40から超純水が基板Bの表裏面に向けて吐出されることによって、乾燥部14における乾燥処理で基板B上にパーティクルやウォータマークが生じないようにすることができる。
そして、基板処理装置10の近傍には液回収型ノズル装置20および液保持用ノズル装置40に処理液を供給するための処理液供給源50が設置されている。この処理液供給源50は、エッチング部12の液回収型ノズル装置20にフッ酸を主成分とするエッチング液を供給するエッチング液供給源51と、第1洗浄部130の液回収型ノズル装置20に洗浄水を供給する第1洗浄水供給源52と、第2洗浄部130′の液回収型ノズル装置20に超純水を供給する第2洗浄水供給源53とからなっている。
前記乾燥部14には、搬送路171を挟むように配設された上下一対のエアナイフ30が上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。かかる各エアナイフ30は、その吐出口が搬送路171に向うように上流側に向けて斜めに配設されている。かかるエアナイフ30に清浄化処理された加圧エアを供給するエア供給装置60が装置本体11の近傍に設けられている。このエア供給装置60からの加圧エアは、エッチング部12および洗浄部13のエアナイフ30へも供給されるようになっている。
そして、乾燥部14に導入された基板Bは、上流側のエアナイフ30によってまず液切りが行われ、引き続き下流側のエアナイフ30によって十分な乾燥処理が施されるようになっている。ここでは、エアナイフ30を斜めに配置することによって、液切りと乾燥とが効果的に行われる。かかる乾燥部14での乾燥処理が完了した基板Bは、基板搬出口16を通って系外に排出され、つぎの工程へ向わせられることになる。なお、この乾燥部14でのエアナイフ30は、上流側の上下一対のものだけで十分に乾燥することができる場合には、下流側のエアナイフ30は設けなくてもよい。
図3は、液回収型ノズル装置20、エアナイフ30および液保持用ノズル装置40を説明するための斜視図であり、液回収型ノズル装置20、エアナイフ30および液保持用ノズル装置40が第2洗浄部130′に設けられた状態を示している。図3に示すように、液回収型ノズル装置20は、搬送路171の上方側に設けられる上部ノズル装置201と、同下方側に上部ノズル装置201と対向配置された下部ノズル装置202とからなっている。
かかる液回収型ノズル装置20は、図4に示すように、基板搬送方向に直交する幅方向(図4の紙面に直交する方向)に長尺の直方体状を呈した上下一対のノズル本体21と、各ノズル本体21の基板搬送方向下流側の端部に接続された導入管22と、同基板搬送方向上流側の端部に接続された導出管23と、上下一対のノズル本体21の各対向面に導入管22と連通するように形成された基板搬送方向に細長い液導入口24と、同導出管23と連通するように形成された液導出口25とを備えて構成されている。
一方、第2洗浄水供給源53の下流側には、図3に示すように、この第2洗浄水供給源53の超純水を送出する送出ポンプ531が設けられている。この送出ポンプ531は前記各導入管22に接続されているとともに、前記各導出管23は処理装置本体11の近傍に設けられた吸引ポンプ532に接続されている。したがって、送出ポンプ531の駆動で第2洗浄水供給源53からの超純水が各導入管22へ導入されると、この超純水は、上下のノズル装置201,202間に挟持された状態の基板Bの表裏面と上下のノズル本体21の対向面との間に液導入口24を介して供給され、毛細管現象によって基板Bとノズル本体21の隙間から外部に漏洩することなく液導出口25の方向へ向って移動することになる。そして、液導出口25に到達した超純水は、吸引ポンプ532の駆動で導出管23を介して吸引され、系外へ排出される。
また、下部のノズル本体21の上面側には、基板Bを支持する複数の支持コロ26が設けられ、基板Bがこれらの支持コロ26に支持されることにより、当該基板Bと下部のノズル本体21の上面との間に超純水を通過させる通路が形成されるようになっている。
このような液回収型ノズル装置20を採用することにより、基板Bには必要最小限の超純水を供給することで確実な洗浄処理が実現するため、高価な超純水を用いた基板洗浄処理のランニングコストの低減化に貢献することができる。
前記エアナイフ30は、側面視で五角形状を呈した基板幅方向に長尺のエアナイフ本体31と、このエアナイフ本体31の先端側に形成された先細りのノズル部32と、エアナイフ本体31の基端側に接続されたエア導入管33とを備えている。ノズル部32の先端には、基板幅方向に長尺のエア吹付けスリット321が設けられ、エア供給装置60の駆動で送出された加圧エアは、エア導入管33を介してエアナイフ本体31内に導入されたのちエア吹付けスリット321から基板Bへ向けて吹き付けられ、これによる加圧気流で基板Bの表裏面に付着している超純水が吹き飛ばされるようにしている。
かかるエアナイフ30は、基板Bの搬送方向に対して斜めになるように姿勢設定されている。こうすることでエア吹付けスリット321から吐出された吹き付けエアは、その押圧力が基板Bに付着した洗浄水に対して基板幅方向に向かう分力として作用するため、エア吹付けスリット321が基板搬送方向に対して直交している場合に比較し、基板Bに付着した洗浄水の除去が効率的に行われる。
前記液保持用ノズル装置40は、液回収型ノズル装置20とエアナイフ30との間にあって搬送路171を挟むように上下一対で設けられるものであり、円筒状のノズル管41と、このノズル管41の一端部に接続され、前記送出ポンプ531の駆動で第2洗浄水供給源53からの超純水が導入される導入管42と、各ノズル管41における基板Bに対向した面に長手方向の略全長に亘って等ピッチで穿設された複数のノズル孔43とを備えて構成されている。
そして、搬送路171を挟んで上下一対で設けられたかかる液保持用ノズル装置40のノズル孔43から超純水が基板Bの表裏面に噴霧されることにより、液回収型ノズル装置20によって洗浄処理された基板Bは、エアナイフ30に到達するまでに乾燥することが防止されるとともに、液保持用ノズル装置40からの噴霧水によってさらに最終段階の洗浄処理が施されるため、エアナイフ30による基板Bの乾燥処理が実行された状態で、基板Bの表裏面にパーティクルが固着するような不都合の発生が確実に防止される。
かかる液保持用ノズル装置40は、本実施形態においては、液回収型ノズル装置20とエアナイフ30との間の中間位置より液回収型ノズル装置20寄りの位置であって、可能な限り液回収型ノズル装置20に接近した位置に設けられている。このようにされるのは、液回収型ノズル装置20では必要最小限の超純水しか基板Bに接触しないため付着水の量が少なく、したがって、基板Bの洗浄されていた部分が液回収型ノズル装置20から外れた瞬間から速やかに自然乾燥が進行してしまうため、これを避けるべく液保持用ノズル装置40は可能な限り液回収型ノズル装置20に近づけて設置されるのである。
このように構成された基板処理装置10において、本発明では、図1および図2に示すように、処理装置本体11の天板113上にフィルタ装置(気体導入部)70が配設され、このフィルタ装置70によって清浄化された清浄空気が各処理部の処理空間内に導入され、これによって各処理部の処理空間内の雰囲気が常に清浄に維持されるようになっている。
かかるフィルタ装置70は、若干厚めのシート状のフィルタ71と、このフィルタ71を内装する箱形のケーシング72とを備えて構成されている。ケーシング72の上面の略全面には外気を取り入れるための外気取入れ口が形成され、この外気取入れ口にメッシュ状の編部材が張設されている一方、処理装置本体11の天板113の所定の位置には、フィルタ71によって清浄化された清浄空気を処理装置本体11内へ吹き込むための吹き込み口が開口されている。したがって、外気取入れ口を介してケーシング72内に導入された外気は、フィルタ71によって清浄化されたのち清浄空気となって処理装置本体11内に導入されることになる。
本実施形態においては、フィルタ71として、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなる、いわゆるULPAフィルタ(ultra low particle filter)が採用されている。かかるULPAフィルタが採用されることにより、処理装置本体11内に導入された外気中の粉塵は、フィルタ71内でのフィルタ濾材との衝突によって効率的に除去される。
また、本実施形態においては、フィルタ装置70として、エッチング部12の最上流側に設けられた第1フィルタ装置701と、エッチング部12の最下流側と第1洗浄部130の最上流側とに架橋された第2フィルタ装置702と、第1洗浄部130の最下流側と第2洗浄部130′の最上流側とに架橋された第3フィルタ装置703と、第2洗浄部130′の最下流側と乾燥部14の略中央部との間に架橋された第4フィルタ装置704と、乾燥部14の最下流側に設けられた第5フィルタ装置705とが採用されている。
これら第1〜第5フィルタ装置701,702,703,704,705の内の第1〜第4フィルタ装置701,702,703,704については、処理装置本体11内が負圧に設定されることによる通気で外気がフィルタ71に供給されるようになっているのに対し、第5フィルタ装置705については、押込みブロア73の駆動による強制的な吸引で外気を取り入れるようになされている。
一方、第1〜第4ホッパ121,131,132,141の低部には、処理装置本体11内の気液の導出を案内する案内管18が設けられている。各案内管18は、図略の廃液管に接続されているとともに、案内管18の途中には排気管(気体排出部)19が分岐されている。案内管18の排気管19に対する分岐位置には、所定の気液分離器181が設けられ、案内管18に集められた清浄空気および処理液は、これらの気液分離器181によって分離された後、処理液は廃液管に導出される一方、エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14を通過した用済み空気(フィルタ装置70からの清浄空気およびエアナイフ30からの加圧エアの用済みのもの)は排気管19へ向わせられるようになっている。
前記各排気管19は、その下流端が基板処理装置10の近傍に配設された、工場内各所の排気を吸引するための集中排気管74に接続されている。したがって、気液分離器181で分離された排気管19内の用済み空気は集中排気管74へ集められ、工場内に設置された図略の集塵装置で所定の集塵処理が施された後、系外に排出されることになる。
そして、各排気管19内には、吸引風量を調節するための調節ダンパー191がそれぞれ設けられている。この調節ダンパー191は、エッチング部12、第1洗浄部130、第2洗浄部130′および乾燥部14においてエアナイフ30から加圧エアが吐出されている場合と吐出されていない場合とで開度を調節するものであり、これによって処理装置本体11内の圧力を常に予め設定された負圧環境にすることができる。
すなわち、エアナイフ30から加圧エアが吐出される場合には、このことが所定のセンサによって検出され、この検出信号が図略の制御装置に入力されることにより、当該制御装置からの制御信号が調節ダンパー191へ向けて出力され、この制御信号に基づく調節ダンパー191の開度増大で調節ダンパー191への用済み空気の吸引量が増加される一方、エアナイフ30からの加圧エアの吐出が停止されると、このことが所定のセンサによって検出され、この検出信号に基づく制御装置からの制御信号によって調節ダンパー191の開度が小さくされ、用済み空気の吸引量が減少されるようになっている。
かかる調節ダンパー191の開度制御によって、エアナイフ30からの加圧エアの吐出および吐出停止に拘らず、エッチング部12、洗浄部13および乾燥部14内の圧力を常に一定に制御するようにしている。
以上詳述したように、本発明に係る基板処理装置10は、一の処理装置本体11内で搬送ローラ17によって基板Bを実質的に水平方向に搬送しつつ該基板Bに所定の表面処理(本実施形態ではエッチング処理およびこれに続く洗浄処理)を順次施すようにしたものであり、処理装置本体11内に搬送路171に沿い、かつ、搬送される基板Bの処理面に微小隙間を有して対向配置される複数の液回収型ノズル装置20と、各液回収型ノズル装置20に対応して設けられ、フィルタ71を介して清浄空気を処理装置本体11に導くフィルタ装置70と、導入された清浄空気を処理装置本体11外へ排気する排気管19とを備えて構成されている。
かかる構成によれば、各液回収型ノズル装置20において処理液から揮散した蒸気が他の液回収型ノズル装置20に到達することなく、専用のフィルタ装置70を介し当該液回収型ノズル装置20に導入された清浄気流に同伴して専用の排気管19から系外に排出されることになり、これによって各液回収型ノズル装置20の周りの空間に他の液回収型ノズル装置20で揮散した蒸気が侵入することを有効に防止することができる。
したがって、一つの処理装置本体11内に複数の液回収型ノズル装置20を基板搬送方向に直列に並設しても、一の液回収型ノズル装置20で生じた、他の液回収型ノズル装置20での基板処理に有害な処理液の蒸気が他の液回収型ノズル装置20に到達することを確実に防止することができる。したがって、異なる種類の処理液で基板処理する液回収型ノズル装置20を一つの処理装置本体11内に複数配設することができないとされていた従来の技術常識を覆すことができ、基板処理装置のコンパクト化による設備コストおよび運転コストの低減化に貢献することができる。
また、フィルタ装置70は、各液回収型ノズル装置20の上流側および下流側の双方清浄空気を供給するものであるため(すなわち、処理装置本体11内において上流側壁111、各上部仕切り壁114および下流側壁112に沿うように清浄空気を供給するように配置設定されているため)、エッチング部12、第1洗浄部130、第2洗浄部130′および乾燥部14内で各液回収型ノズル装置20が占める空間は、その上流側および下流側の双方、すなわち隣設された他の液回収型ノズル装置20が占める空間との境界位置に清浄空気の気流カーテンが形成された状態になり、各液回収型ノズル装置20で生じた処理液からの蒸気は、この気流カーテンに阻止されて他の液回収型ノズル装置20の空間に移ることが阻止され、これによって処理装置本体11内の基板処理空間を全体的に常に清浄に維持することができる。
また、フィルタ71として、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなるものが採用されているため、処理装置本体11に導入される気体は、繊維の集合体内に微粒子状のフィルタ濾材が分散されてなるフィルタ71によって濾過され、清浄な気体となって処理装置本体11に供給される。そして、フィルタ71に供給される気体中の粉塵は、フィルタ71内でフィルタ濾材との衝突によって効率的に除去される。
また、排気管19は、エッチング部12、第1洗浄部130、第2洗浄部130′および乾燥部14に対応してそれぞれの案内管18から分岐されているため、各部を通過したフィルタ装置70からの気体が通過した部と異なる部に導入されてしまうような不都合が確実に回避され、これにより各部において好適な環境で基板処理を行うことができる。
また、処理装置本体11内において、エッチング部12と第1洗浄部130との間、第1洗浄部130と第2洗浄部130′との間および第2洗浄部130′と乾燥部14との間にそれぞれ上部仕切り壁114を備えているため、各部の占める空間を他の部の空間と隔絶した状態にすることができ、これによって他の処理装置本体11の雰囲気が当該処理装置本体11に持ち込まれることを有効に防止することができる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、基板処理装置10として基板Bにエッチング処理を施すものが採用されているが、本発明は、基板処理装置10がエッチング処理用であることに限定されるものではなく、基板Bに対して水洗処理のみを施すものであってもよいし、基板Bに対して剥離処理を施すもの等、エッチング処理以外の処理にも適用可能である。
(2)上記の実施形態においては、処理装置本体11内で基板Bを搬送する搬送手段として搬送ローラ17が採用されているが、本発明は、搬送手段が搬送ローラ17であることに限定されるものではなく、基板Bを配置した状態で搬送する搬送ベルト等の他の搬送方式を採用してもよい。
(3)上記の実施形態においては、第2洗浄部130′に液保持用ノズル装置40が設けられているが、本発明は、液保持用ノズル装置40を採用することに限定されるものではなく、状況によっては、液保持用ノズル装置40の設置を省略してもよい。
(4)上記の実施形態においては、各排気管19の下流端を、工場内に配設された集中排気管74に接続されているが、こうする代わりに各排気管19専用の吸引ブロワを設置してもよい。
(5)上記の実施形態においては、第1洗浄水供給源52と第2洗浄水供給源53とは別の系統の源水が用いられているが、こうする代わりに第2洗浄部130′の排水を第1洗浄部130の源水として利用してもよい。こうすることによって第2洗浄水供給源53の高価な超純水の有効利用を図ることができる。
(6)上記の実施形態においては、フィルタ装置70を介して処理装置本体11内に供給される気体として空気が採用されているが、本発明は、処理装置本体11内に供給される気体が空気であることに限定されるものではなく、窒素等の他の気体であってもよい。