JP4416397B2 - 商業的に入手可能なルテインからの希少カロテノイドを製造する方法 - Google Patents
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Description
発明の背景
発明の分野
本発明は、有機化学分野に属する。本発明は、5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む商業的に入手可能な(3R,3'R,6'R)−ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、無水ルテインI、II、およびIII(ルテインの脱水生成物)に有効に変換するプロセスならびに未反応(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む各カロテノイドを分離および精製する方法に関する。本発明はまた、(3R,3'R,6'R)−ルテインを優れた収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する2つの方法を含む。
【0002】
関連技術
(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、(3R,6'R)−無水ルテインI((3R,6'R)−3',4'−ジデヒドロ−β,γ−カロテン−3−オール)、(3R,6'R)−2',3'−無水ルテインII((3R,6'R)−2',3'−ジデヒドロ−β,ε−カロテン−3−オール)、(3R)−3',4'−無水ルテインIII((3R)−3',4'−ジデヒドロ−β,β−カロテン−3−オール)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチンは、ヒト血清、乳、主要器官、および組織中に見出される、主要な食品カロテノイドである。これらのカロテノイドの化学構造をスキーム1に示す。癌、加齢性黄斑変性、および心血管疾患などの慢性疾患の予防におけるカロテノイドの生物活性に照らして、広範な精製カロテノイドの工業生産は非常に重要である。いくつかの食品カロテノイド、すなわち、β−カロテン、(3R,3'R,6'R)−ルテイン、およびリコペンは、栄養補助食品および食品着色料として種々の処方で市販されているが、他の血清カロテノイドの生産は依然として多大な注目を受けていない。特に、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンは自然界でとりわけ稀なカロテノイドであるので、産業的な規模での天然産物からのこれらのカロテノイドの抽出および単離は経済的に実現性がない。
【0003】
スキーム1
(3R,3'R,6'R)−ルテイン、(3R,3'R)−ゼアキサンチン、無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの化学構造。カロテノイドの慣用名および正確な合成名をその構造の下に示す
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0004】
それに対して、無水ルテインI、II、およびIIIが天然に発生するかは不明である。これらのカロテノイドは、おそらくヒト消化器系において食品(3R,3'R,6'R)−ルテインの酸触媒加水分解から形成されるのであろう。
【0005】
(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンの全合成が、数名の研究者によって報告されている(Isler,O.ら, Helv. Chim. Acta, 40:456, 1957;Loeber, D.E.ら, J. Chem. Soc. (C) 404, 1971)。これらの合成法は、多数の工程を含み、したがって、非常に高価であり、且つ産業規模での実行は困難である。(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンはまた、ルテインからの部分的合成によって調製されている(Goodfellowら, Chem. Comm. 1578, 1970)。この手順によれば、ルテインを最初にピリジン−三酸化硫黄複合体で処理し、得られた硫酸モノエステルを水素化リチウムアルミニウム(LAH)で還元して(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られる;収率および反応条件の詳細は示されていなかった。この方法の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの工業生産への適用は、試薬の空気および水分に対する感受性のために容易に実行できない。カロテノイドのLAH反応は出発物質の分解および副産物の形成を回避する制御された条件下で行わなければならないという事実によっても困難である。さらに、この方法は、(3R)−β−クリプトキサンチンの調製には適切でないようである。
【0006】
(3R,3'R,6'R)−ルテインからの(3R,6'R)−無水ルテインIの部分的合成についていくつかの報告がある。1つの発表された手順は、(3R,3'R,6'R)−ルテインの融解ホウ酸−ナフタレンでの処理を含む(Zechmeister および Sease, J. Am. Chem. Soc., 65: 1951, 1943)。しかし、使用条件下では、(3R,3'R,6'R)−ルテインに基づく(3R,6'R)−無水ルテインIの全収率は、約18%であった。
【0007】
別の手順は、塩化アルミニウム/水素化リチウムアルミニウム(AlCl3/LiAlH4=3/1)(AlHCl2)複合体を使用した(3R,3'R,6'R)−ルテインのアリル基の還元に基づく(Bucheckerら, Helv. Chim. Acta 57: 631, 1974)。(3R,6'R)−無水ルテインIはこの方法により良好な収率で(3R,3'R,6'R)−ルテインから得られているが、試薬の水分および空気に対する感受性のために、この方法は工業用に規模を大きくすることは困難である。
【0008】
(3R,3'R,6'R)−ルテインからの無水ルテインI、II、およびIIIの最近の部分合成は、Khachikら (J. Chrom. Biomed. Appl., 670:219-233, 1995)によって報告されている。この方法は、2%の濃硫酸のアセトン溶液を使用して全部で92%の収率で無水ルテインI、II、およびIIIを得ている;これらのうち、(3R,6'R)−無水ルテインIが主要な生成物である。この方法は工業規模で行うことができる一方で、その範囲は無水ルテインの調製のみに限られる。
【0009】
発明の概要
本発明は、強酸および水素化物イオン供与体でのアリル基脱酸素化によって1つの合成工程において、商業的に入手しうる(3R,3'R,6'R)−ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および無水ルテインとの混合物に変換するプロセスに関する。商業的に入手しうる(3R,3'R,6'R)−ルテインは、使用される試薬と反応せず、且つ結晶化後に最終生成物中で濃縮することができる約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む。
【0010】
本発明によって開発された代替のプロセスは、酸での(3R,3'R,6'R)−ルテインの無水ルテインI、II、およびIIIへの変換、および強酸および水素化物イオン供与体での後者の生成物の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへの変換を含む。
【0011】
これらの反応から得られた無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および未反応(3R,3'R)−ゼアキサンチンの混合物を、バッチおよびカラムクロマトグラフィーに付して、個別に精製したカロテノイドを得ることができる。
【0012】
さらに別の代替方法では、本発明は、このカロテノイドとアルカリ金属のホウ化水素物、たとえばシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)または(トリフルオロアセトキシ)−水素化ホウ素ナトリウムなど、およびヨウ化亜鉛または臭化亜鉛のジクロロメタン溶液、1,2−ジクロロエタン溶液、またはtert−ブチルメチルエーテル(TBME)溶液との反応によって(3R,3'R,6'R)−ルテインのほぼ定量的収率での(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに直接的に変換するプロセスに関する。塩化アルミニウムのエーテル溶液(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン)と組み合わせた他のホウ化水素物、たとえばボラン−トリメチルアミンまたはボラン−ジメチルアミン複合体などもまた、優れた収率で(3R,3'R,6'R)−ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する。これらの水素化ホウ素複合体は、ルテインの還元的脱酸素化について有毒なシアン化水素化ホウ素ナトリウムよりも優れており、これらの試薬との反応を非塩素化溶媒で行うことができることが最も重要である。
【0013】
本発明はまた、水素化物イオン供与体の存在下、過塩素酸リチウムのエーテル溶液での処理の際のアリル基の脱酸素化によって(3R,3'R,6'R)−ルテインを無水ルテインIと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物に優れた収率で変換する方法に関する。
【0014】
本発明によれば、個別に精製したかあるいは混合したカロテノイド、たとえば無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および(3R,3'R)−ゼアキサンチンを、商業的に入手しうる(3R,3'R,6'R)−ルテインから産業規模で調製することができる。これらのカロテノイドを、栄養補助食品または食品着色料として使用することができる。(3R)−β−クリプトキサンチンはまた、ビタミンA活性カロテノイドの1つであり、レチノールの代替栄養補助食品として使用することができる。上記のカロテノイドを、既に市販されているカロテノイドと組み合わせてヒト血清中のこれらの化合物の分布に密接に類似した比のカロテノイド(マルチカロテノイド)混合物を得ることができる。得られたマルチカロテノイド栄養補助食品を、例えば臨床試験で使用して、これらの化合物の、癌、心血管疾患、および黄斑変性の予防における有効性について調査することができる。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明によれば、(3R,3'R,6'R)−ルテインを、周囲温度で、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)中、強酸および水素化物イオン供与体の存在下、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、無水ルテインI、II、およびIIIの混合物へのアリル基脱酸素化に供することができる。
【0016】
本発明の実施で使用することができる強酸には、プロトンを放出する傾向が強い酸(ローリー−ブレンステッド酸)および電子対を容易に受け取る酸(ローリー酸)が含まれる。本発明の実施で使用することができるローリー−ブレンステッド酸には、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸(TFA)などが含まれる。本発明の実施において使用することができるローリー酸の例としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、および四塩化チタンが挙げられる。
【0017】
本発明の実施において使用することができる水素化物イオン供与体は、水素化物イオンを移動させることができる化合物である。このような化合物は、一般に、主族(main group)III〜VII、特に主族IIIおよびIVの一つまたは複数の陽性元素および1つ以上の水素化物を含む。本発明の実施で使用することができる水素化物供与体の例には、水素化アンモニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素、水素化ホウ素ナトリウム、有機シラン(たとえば、トリエチルシラン(Et3SiH)、トリメチルシラン、トリフェニルシランなど)、およびシリコン−水素結合を有する有機シリコンポリマーまたはオリゴマーが含まれる。有機シリコンポリマーの例は、市販の疎水性液体シリコンHSL-94である。最も好ましい水素化物イオン供与体はEt3SiHである。他のトリアルキルシランおよびアリールシランを使用することができるが、トリエチルシランを使用して得られたものほど収率が高くない。これらの水素化物イオン供与体が酸素に感受性があるので、窒素、アルゴン、またはヘリウムなどの不活性雰囲気下で反応を行うべきである。
【0018】
スキーム2に示すように、TFAなどの強酸の存在下で、最初にルテインを酸触媒脱水に供して、無水ルテインI、II、およびIIIを形成する。これらのうち、無水ルテインIが主要な生成物である。これらのルテインの脱水生成物のプロトン付加により、多数の共鳴混成カルボカチオン中間体が形成される。共鳴混成体イオン供与体の存在下で、これらの中間体を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンに変換する。スキーム2に示すように、認められた生成物の形成に寄与する可能性が最も高いカルボカチオン中間体は、無水ルテインIIおよびIIIのプロトン付加から形成されたものである。したがって、一旦ルテインがその脱水生成物に完全に変換すると、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンに段階的に変換する。これは、ルテインの3つの脱水生成物の間の平衡に影響を与え、無水ルテインIの無水ルテインIIおよびIIIへの酸触媒異性化を促進する。種々の酸が広範な溶媒中のルテインの脱水を容易に触媒する一方で、得られた無水ルテインの(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへのイオン水素化には、塩素化溶媒、好ましくはジクロロメタン中、強酸、たとえばTFAなどが必要である。これにより、ある程度は、含まれるカロテノイドのポリエン鎖がE/Z(トランス/シス)異性化される。したがって、最終生成物中の上記のオール−E(トランス)−カロテノイドを、そのZ(シス)異性体の約15〜25%が占める。
【0019】
(3R,3'R,6'R)−ルテインに対する強酸(例えば、TFA)のモル当量および使用した溶媒の体積に依存して、最終生成物中の各カロテノイドの収率および相対的組成は変化し得る。TFAでのこれらの変換脱水工程はほぼ定量的であるが、得られた無水ルテインはイオン水素化工程でα−およびβ−クリプトキサンチンに完全に変換されない。したがって、反応条件に依存して、最終生成物中の約18〜34%の無水ルテインが変化しないままである。
【0020】
(3R,3'R,6'R)−ルテインとTFA/Et3SiHとの反応から得られた粗生成物を、炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル)とアセトンまたはメチルエチルケトンとの組み合わせを使用したバッチおよびカラムクロマトグラフィーに直接付すことができる。炭化水素とアセトンまたはメチルエチルケトンとの比は9/1〜4/1まで変化し得る。アセトンまたはメチルエチルケトンのかわりに、他の溶媒、たとえば酢酸エチル、テトラヒドロフラン、またはC4〜C6エーテルなどを使用しても同一の結果が得られる。C4〜C6エーテルの例は、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランである。クロマトグラフィー用吸着剤(固定相)は、n-シリカゲルが好ましい。典型的な分離では、無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの粗混合物をバッチまたはカラムクロマトグラフィーに付して、3つの主要な画分を得る。第1の画分は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンからなり、第2の画分は無水ルテインの混合物であり、第3の画分は未反応(3R,3'R)−ゼアキサンチンである。
【0021】
スキーム2
イオン水素化による、(3R,3'R,6'R)−ルテインの無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物への変換に提案される経路
【化8】
【0022】
本発明は、さらに、酸性溶液中での(3R,3'R,6'R)−ルテインの無水ルテインI、II、およびIIIへの第1の変換、生成物の単離、およびこれらの脱水生成物と強酸(たとえば、水素化物イオン供与体(たとえば、Et3SiHなどの有機シラン)の存在下でのTFA)との反応によって(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(オール-E+Z)および(3R)−β−クリプトキサンチン(オール-E+Z)ならびにいくつかの未反応無水ルテイン(オール-E+Z)の混合物が得られる代替の経路に関する。
【0023】
強酸(例えば、TFA)および水素化物イオン供与体(例えば、Et3SiH)を使用した環式および非環式オレフィンのイオン水素化は数十年前から既知であるが、カロテノイドの工業生産へのこの反応の適用は報告されていない。本発明は、このカロテノイドを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および無水ルテインの混合物に変換するために、強酸および水素化物イオン供与体を使用して環式アルコールのイオン水素化の概念を商業的に入手し得る(3R,3'R,6'R)−ルテインに適用する。これは、簡単な一工程の反応であり、室温および穏やかな反応条件下で行うことができる。
【0024】
本発明は、さらに、シアン化水素化ホウ素ナトリウムおよびヨウ化亜鉛または臭化亜鉛のジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンまたはエーテル溶媒(tert-ブチルメチルエーテル(TBME)など)との反応によって、(3R,3'R,6'R)−ルテインを最大90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに直接変換することができることを示す。この試薬は、アリールアルデヒドおよびケトンならびにベンジルアルコール、アリル型アルコール、および第三級アルコールの還元的脱酸素化を行うことが報告されている(C.K. Lau, J. Org. Chem., 51:3038-43, 1986)。この試薬の使用についての別の文献の例は、フランメタノールの脱酸素化である(Jernimo da S. Costaら, J. Braz. Chem. soc., 5:113-116, 1994)。しかし、カロテノイドの還元的脱酸素化へのこの試薬の適用は報告されていない。この還元について提案する機構を、スキーム3に示す。
【0025】
【化9】
スキーム3
アルカリ金属水素化ホウ素物およびハロゲン化亜鉛による(3R,3'R,6'R)−ルテインの(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンへの変換についての提案される機構
【0026】
シアン化水素化ホウ素ナトリウムの代わりに、(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(水素化ホウ素ナトリウムおよびトリフルオロ酢酸から生成)を使用することができる。この反応では、唯一の生成物としてほぼ定量的に(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られるが、ヨウ化亜鉛が副産物として無水ルテインが形成されるので、臭化亜鉛が好ましい。興味深いことには、ヨウ化亜鉛または臭化亜鉛の存在下での(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素リチウム(水素化ホウ素リチウムおよびトリフルオロ酢酸から生成)はルテインと反応しない。この反応のための最良の溶媒は、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンなどの塩素化溶媒である。水素化ホウ素ナトリウムおよびヨウ化亜鉛とルテインとの反応により、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと無水ルテインとの混合物が形成され、相当な量のルテインが未反応のままである。ヨウ化亜鉛を臭化亜鉛に替えると、反応は進行しない。水素化ホウ素リチウムとヨウ化亜鉛または臭化亜鉛との組み合わせもまた、ルテインのアリル基の脱酸素化に対し反応がおこらないことが認められている。
【0027】
有毒なシアン化水素化ホウ素ナトリウムおよび塩素化溶媒の使用を回避するために、本発明は、さらに、還元剤としてボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体またはボラン−ジメチルアミン(Me2NH.BH3)複合体を塩化アルミニウム(AlCl3)のエーテル溶液、好ましくはテトラヒドロフラン溶液または1,2−ジメトキシエタン溶液(エチレングリコールジメチルエーテル)と組み合わせて使用して、(3R,3'R,6'R)−ルテインを最大90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換することができることを証明する。これらの塩化アルミニウムと組み合わせた水素化ホウ素物複合体は、シアン化水素化ホウ素ナトリウム/ハロゲン化亜鉛よりも反応性がはるかに高く、通常、反応は周囲温度の不活性雰囲気下(例えば、窒素またはアルゴン)、1〜2時間以内で完了する。ルテインおよびボラン−アミン複合体のTHF溶液および1,2−ジメトキシエタン溶液の優れた溶解性により、これらの溶媒中での還元的脱酸素化は1〜2時間以内に完了する。ボラン−トリメチルアミン複合体またはボラン−ジメチルアミン複合体をヨウ化亜鉛または臭化亜鉛と組み合わせて使用する場合、ルテインは還元的脱酸素化されない。塩化アルミニウムと組み合わせたボラン−トリメチルアミン複合体またはボラン−ジメチルアミン複合体でのカロテノイドの還元的脱酸素化についての文献報告はない。
【0028】
同様に、本発明は、さらに、試薬として過塩素酸リチウム−エーテル(例えば、ジエチルエーテル中3.0M)および水素化物イオン(例えば、トリエチルシラン)の使用によるルテイン脱酸素化の代替法を証明する。この反応では、(3R,3'R,6'R)−ルテインが選択的に脱酸素化されてほとんどが無水ルテインIと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物が得られ、(3R)−β−クリプトキサンチンは得られない。トリエチルシラン還元が促進される過塩素酸リチウム(LiClO4)によるアリルアルコールおよび酢酸アリルの選択的脱酸素化は多数の環式アリルアルコールおよび酢酸アリルで報告されている(Wustrowら, Tetrahedron Lett., 35:61-64, 1994)。しかし、ルテインからのα−クリプトキサンチンの生成のためのこの試薬の適用についての報告は存在しない。文献報告によると、この試薬は求核性置換のために活性化させるアリル基の酸素結合のイオン化を誘導すると考えられる。したがって、この反応では、トリエチルシランから生成された水素化物は、ルテインのα−クリプトキサンチンへの還元的脱酸素化を促進するための求核試薬として作用することができる。この反応の副産物としての無水ルテインIの形成は、カルボカチオン中間体への関連が認められている。
【0029】
これらの反応で使用される商業的に入手可能な(3R,3'R,6'R)−ルテインを、マリゴールドの花の抽出物から単離することができ、これは約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含み得る。(3R,3'R)−ゼアキサンチンはTFA/有機シランまたは水素化ホウ素アルカリ金属/ハロゲン化亜鉛またはMe3N.BH3/AlCl3またはMe2NH.BH3/AlCl3またはLiClO4/有機シランと反応しないので、このカロテノイドを完全に回収することができ、最終生成物中のその濃度を結晶化によって増加させることができる。選択的に、純粋な(3R,3'R)−ゼアキサンチンを、カラムクロマトグラフィーによって種々の反応の粗生成物から回収することができる。
【0030】
試薬および出発物質
本発明の出発物質として2種類の(3R,3'R,6'R)−ルテインを使用することができ、これらは1)全カロテノイド純度が約85%の商業的に入手可能な(3R,3'R,6'R)−ルテイン、および2)国際公開公報第99/20587号に記載の方法によって全カロテノイド純度が97%を超える結晶ルテインである。両出発物質をマリゴールドの花の鹸化抽出物から調製し、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む。これら2つの出発物質の混合物もまた使用することができる。
【0031】
(3R,3'R,6'R)−ルテインおよびいくつかの微量カロテノイドを含むマリゴールドの花の粗鹸化抽出物を、国際公開公報第99/20587号に記載の方法にしたがって調製することができる。約5〜7%のゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全カロテノイド純度97%)を、この方法にしたがってこの抽出物から精製することもできる。商業的に入手可能な(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全カロテノイド85%)を、Kemin Industries(Des Moines, Iowa)から入手することができる。本発明で使用されるすべての試薬は市販されており(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)、さらに精製することなく使用される。85%および97%ルテインのカロテノイド組成を、表1に示す。商業的に入手可能な(3R,3'R,6'R)−ルテイン(純度85%)を使用して行った反応により、収率の至適化について純度95%の化合物よりもさらに困難であることが証明され、反応が完了するためには一定量の試薬が必要であった。したがって、85%ルテインの反応のみを本明細書においてより詳細に記載する。
【0032】
【表1】
マリゴールドの花から単離した85%および97%(3R,3'R,6'R)−ルテインのカロテノイド組成
a:85%および95%ルテインはいかなる有意な量のZ(シス)−ルテインも含まなかった。
【0033】
反応経路をモニターするための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件
高速走査UV/可視フォトダイオードアレイ検出器およびHP-1050オートサンプラーを具備したHewlett-Packard(HP)1050高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム上ですべての分離を行った。高解像度カラーディスプレイモニター、モデルMaxTech MPRIIおよびHP-Laserjet4 Plusプリンターと組み合わせたウィンドウズ97のHP Chem-Stationプログラム(バージョンA.05.02)を使用したCompaq DeskProコンピューティングシステムによってデータを保存および処理した。速度12スペクトル/分で200nmと600nmとの間のカロテノイドの吸収スペクトルを記録した。
【0034】
spheri-5-C18(粒子サイズ5μm)で充填した、Brownleeガードカートリッジ(長さ3cm×内径4.6mm)で保護したMicrosorb(長さ25cm×内径4.6mm)のC18(粒子サイズ5μm)カラム(Rainin Instrument Co., Woburn, MA)にて逆相分離を行った。この溶出液には2つのポンプ溶媒モジュールを使用した定組成HPLCおよび勾配HPLCの組み合わせを使用した。ポンプAはアセトニトリル/メタノール(9/1、v:v)をポンプし、ポンプBはヘキサン/ジクロロメタン/メタノール/DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)(4.5/4.5/0.99/0.01、v:v:v:v:v)をポンプした。時間0で、アセトニトリル(85.5%)、メタノール(9.995%)、ジクロロメタン(2.25%)、ヘキサン(2.25%)、およびDIPEA(0.005%)(95%ポンプA、5%ポンプB)を10分間ポンピングした。10分後、直線勾配を30分間行い、最終組成はアセトニトリル(40.5%)、メタノール(9.95%)、ジクロロメタン(24.75%)、ヘキサン(24.75%)、およびDIPEA(0.055%)(45%ポンプA、55%ポンプB)となった。カラム流速は、0.70mL/分であった。HPLC注入溶媒は、アセトニトリル(85%)、ジクロロメタン(2.5%)、ヘキサン(2.5%)、およびメタノール(10%)からなっていた。30分でHPLC運転を完了した。各運転の最後に、カラムを最初の低組成条件下で20分間平衡化した。HPLC運転を446nmでモニターした。水素化物イオン供与体の存在下でトリフルオロ酢酸(TFA)での(3R,3'R,6'R)−ルテインの種々の脱水およびイオン水素化反応の経路でモニターされたカロテノイドのHPLC保持時間および吸収極大を表2に示す。
【0035】
【表2】
(3R,3'R,6'R)−ルテインの脱水およびイオン水素化経路でモニターされたカロテノイドのHPLC保持時間およびUV-可視吸収極大
1:無水ルテインI、II、III、α−クリプトキサンチン、およびβ−クリプトキサンチン中のZ(シス)結合の位置は不明である。2:HPLC溶媒中のUV−可視スペクトルをフォトダイオードアレイ検出器によって得た。3:括弧内の値は、変曲点を示す。
【0036】
(3R,3'R,6'R)−ルテインのTFA/Et3SiHとの反応
典型的な実験では、不活性雰囲気(すなわち、窒素またはアルゴン)を保持しながらトリエチルシラン(0.94mmol)(2.1モル当量のルテイン)を市販の85%(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの85%、0.255g、0.448mmol)の25ml塩素化溶媒(ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン)に加える。その後、トリフルオロ酢酸(TFA、0.12ml、0.178g、1.56mmol)(3.5モル当量のルテイン)を周囲温度で一度に加える。この急速な添加の結果として発熱しない。あるいは、少量(5ml)の溶媒中にTFAを数分以内に加えても同一の結果を得ることができる。その直後に反応混合物は暗赤色に変化する。混合物を室温で撹拌し、反応経路をHPLCで追跡する。TFAの濃度に依存して、溶媒の性質およびトリエチルシランの純度が変化し、反応時間は6〜8時間に変化し得る。反応経路のHPLC試験により、これらの条件下で、ルテインは最初の2時間で定量的に脱水して無水ルテインI、II、およびIIIを形成することが明らかとなった。得られたカロテノイドをイオン水素化に付してα−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンを形成させる。イオン水素化工程の速度は、TFA濃度およびトリエチルシランの純度に大きく依存する。トリエチルシランは空気に感受性を示すが、不活性雰囲気下(窒素またはアルゴン)で保存されているので、長期保存の間に段階的に喪失する。したがって、新たに蒸留するか窒素下で密封および保存した市販のトリエチルシランを使用すべきである。所与の体積の溶媒中のTFA濃度もまた、反応の結果に重要な役割を果たす。上記の濃度よりもTFA濃度が高いほど反応は早く進行し、ルテインのα−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンへの変換が完了するが、相当量のカロテノイドの分解および(E/Z)異性化が観察される。反応終了時に、約18〜34%の無水ルテインが未反応のままであり得る。仕上げ(work-up)は、TFAを中和するための5%重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムでの粗生成物の処理からなる。この処理の後、大気圧での蒸留によって塩素化溶媒(ジクロロメタン(沸点40℃)または1,2−ジクロロエタン(沸点83℃))を高沸点アルコール、好ましくは2-プロパノール(沸点82.4℃)に段階的に置換する。一旦塩素化溶媒を除去すると、カロテノイドがアルコール水溶液から結晶化されるまでほとんどのアルコールを減圧下で蒸留する。遠心分離または濾過によって結晶を取り出し、固体生成物を少量のアセトン(10ml)で洗浄して、水を除去する。濾過後、固体を60℃の高真空下で乾燥させて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(オール-E+Z),(3R)−β−クリプトキサンチン(オール-E+Z)、および無水ルテイン(オール-E+Z)の混合物223mg、ならびに回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチン(オール-E+9Z+13Z)が得られる。出発ルテインの純度および重量に基づいて、混合物中のカロテノイドの全収率は、80〜90%の範囲である。この反応の間に(3R,3'R,6'R)−ルテインは完全に消費されるが、(3R,3'R)−ゼアキサンチンはTFA/Et3SiHと反応せず、最終生成物中で完全に回収される。(3R,3'R,6'R)−ルテインと、塩素化溶媒中TFA/Et3SiHとの最終生成物中のカロテノイドの総重量(mg)および相対的分布をHPLCで測定し、これを表3に示す。
【0037】
【表3】
市販の(3R,3'R,6'R)−ルテインと、塩素化溶媒中トリフルオロ酢酸(TFA)およびトリエチルシラン(Et3SiH)との反応生成物中のカロテノイドの相対的分布
*:全実験において、TFAを周囲温度の窒素雰囲気下で、塩素化溶媒25ml中の(3R,3'R,6'R)−ルテインおよびトリエチルシランの溶液に加え、反応経路をHPLCで追跡した。
【0038】
最後に、生成物を0℃またはそれ以下の温度(0℃〜-20℃)の炭化水素溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル)で洗浄して、対応するオール−E(トランス)−カロテノイドからカロテノイドのZ(シス)異性体を溶解分離することができる。この炭化水素洗浄からの固体は、主にカロテノイドのオール−E(トランス)異性体からなり、特にゼアキサンチンに富む。TFA/Et3SiHでのルテインのイオン水素化および0℃でのヘキサン処理によるオール−E(トランス)−カロテノイドのその対応するZ(シス)異性体の分離からの典型的な粗生成物中のカロテノイドの相対的分布を表4に示す。
【0039】
【表4】
ルテインのTFA/Et3SiHとの反応からの典型的な粗生成物中のオール−E(トランス)−カロテノイドおよびそのZ(シス)幾何異性体の相対的分布ならびにヘキサン可溶性および不溶性画分中の異性体の分布
a:カロテノイドをHPLCによって分離した。bオール−E(トランス)異性体のHPLCピークは、そのZ(シス)異性体から十分に分離されなかった。
【0040】
表3に列挙したすべての実験では、反応の完了のために、ルテインに対してより高いモル当量のトリエチルシラン(2.1:1)が必要であった。これはおそらく純度85%のルテイン中の不純物(ほとんどが脂肪酸)の存在による。さらに、トリエチルシランは空気に感受性があり、不活性雰囲気下(窒素)で保存されているにもかかわらず、長期保存中、その有効性が徐々に喪失する。
【0041】
(3R,3'R,6'R)−ルテインに対するTFAのモル当量は、α−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンの比に影響を与え得る。例えば、ルテインに対するTFAのモル当量は3.5から5に増加し、β−クリプトキサンチンに対してα−クリプトキサンチンの収率がより高く、通常、反応は数時間以内に完了する。しかし、これらの条件下では、カロテノイドの分解により、収率が低下する。ジクロロメタン中の高濃度のTFAは、中間体無水ルテインのα−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンへの完全な変換が生じるが、カロテノイドの全収率が非常に低下する。6〜8時間より長い反応時間により、α−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンの異性化を生じるが、カロテノイドの喪失も伴う。
【0042】
この反応においてジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンのみしか有効であることが見出されていないので、ルテインのTFA/Et3SiHとの反応における塩素化溶媒の選択もまた制限される。クロロホルムではルテインの脱水生成物のみが得られる。同様に、アルコール、炭化水素、およびエーテルなどの他の非塩素化溶媒では無水ルテインのみが得られ、これらのカロテノイドのα−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンへのイオン水素化を進行させなかった。ルテインと、トルエン中のTFA/Et3SiHとの反応でも所望の生成物が得られるが、ジクロロメタンでの反応と対照的に、ルテインに対してより高いモル当量のTFAが必要であった。これらの条件下では、ほとんどのカロテノイドが破壊され、結果として、α−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンへの収率が低くなった。
【0043】
上記の反応からの各カロテノイドを、フラッシュカラムクロマトグラフィーおよびその後の分取用HPLCによって粗混合物から単離および精製し、その同一性をUV−可視分光分析、質量分析、および1H核磁気共鳴(1H-NMR)分析法によって確立した。
【0044】
任意選択で、ルテインとTFA/Et3SiHとの反応からの粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製して、目的のカロテノイドを分離および精製することができる。典型的な実験では、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(オール-E+Z)、(3R)−β−クリプトキサンチン(オール-E+Z)、および無水ルテイン(オール-E+Z)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(オール-E+9Z+13Z)からなる生成物の粗混合物0.3gを、溶出液としてヘキサン/アセトン(9/1)の混合物を使用したn-シリカゲル(50g)を充填したフラッシュカラム(長さ20cm×内径3.5cm)で精製する。溶出順に、1)(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(オール-E+Z)および(3R)−β−クリプトキサンチン(オール-E+Z)の純粋な混合物、2)無水ルテインの純粋な混合物、および3)未反応ゼアキサンチンを含む3つの主要な画分を集収する。アセトンと共に他の炭化水素溶媒、たとえばシクロヘキサン、ヘプタン、ペンタン、または石油エーテルも使用することができる。炭化水素溶媒:アセトン比は9/1〜4/1で変化し得る。アセトンの代わりに、他の溶媒、たとえばメチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、またはC4〜C6エーテルも使用することができる。
【0045】
仕上げ中にイオン水素化の副産物としてトリエチルシラノール(沸点158℃/760mmHg)およびヘキサエチルジシロキサン(沸点233〜236℃/760mmHg)が段階的に生成する。これらの比較的沸点の高い副産物を結晶化によって最終生成物から除去することができる。
【0046】
特に、本発明は、(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインの混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および無水ルテインの混合物への変換方法であって、以下の
a)適切な体積の塩素化溶媒中に、(3R,3'R,6'R)−ルテインと(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物を溶解し、不活性雰囲気下、水素化物イオン供与体を加えて混合物を得る工程と、
b)イオン水素化反応を促進する条件下で周囲温度で混合物に強酸を加えて粗生成物を得る工程と、
c)塩基を加えて粗生成物中の酸を中和する工程と、
d)塩素化溶媒の除去により結晶化カロテノイドを得る工程と、
e)結晶を集収する工程と、
f)最終生成物を乾燥させる工程と、
g)選択的に粗生成物をカラムクロマトグラフィーに付してそれぞれ精製されたカロテノイドを得る工程、とを含む方法に関する。
【0047】
好ましくは、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む混合物は85%の市販の(3R,3'R,6'R)−ルテインまたは高度に精製された(3R,3'R,6'R)−ルテインである。好ましくは、塩素化溶媒は、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンである。また、好ましくは、水素化物イオン供与体はトリエチルシランであり、強酸はTFAであり、ルテインに対して2.1モル当量のトリエチルシランもまた好ましい。3.5モル当量のルテインに1当量の酸を加えることもまた好ましい。最も好ましくは、塩素化溶媒中、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の(3R,3'R,6'R)−ルテインを、周囲温度で不活性雰囲気下、約2〜3当量のEt3SiHおよび約3.0〜3.5当量のTFAと共に約5〜10時間撹拌する。
【0048】
好ましくは、塩基は、炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムまたはトリエチルアミンなどの有機塩基である。
【0049】
好ましくは、塩素化溶媒を、減圧下、塩素化溶媒の蒸留によって除去し、これを高沸点アルコール、好ましくは2−プロパノールで段階的に置換することによって除去し、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化するまでアルコールを減圧蒸発させる。
【0050】
好ましくは、結晶を濾過または遠心分離で集収し、結晶を少量のアセトンまたはアルコールで洗浄する。
【0051】
最終生成物を真空で、好ましくは、約40〜60℃で高真空下で乾燥させて、カロテノイドの混合物を得ることができる。
【0052】
本発明は、さらに、0℃またはより低い温度(0℃〜-20℃)でのC5〜C7炭化水素または石油エーテルでの結晶生成物の洗浄によってZ異性体を除去して主に(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、無水ルテインのオール−E異性体、ならびに高濃度の未反応ゼアキサンチンを含む結晶生成物を得る、カロテノイドのZ(シス)異性体のそのオールE(トランス)化合物からの分離する方法に関する。C5〜C7炭化水素の例としては、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、およびトルエンが含まれる。
【0053】
本発明は、さらに、アセトンまたはメチルケトンまたは酢酸エチルまたはTHFまたはC4〜C6エーテルと組み合わせたC5〜C7炭化水素または石油エーテルを使用したn-シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによる各カロテノイドの分離および精製法に関する。
【0054】
(3R,3'R,6'R)−ルテインの酸触媒脱水
上記のように、本発明の代替のアプローチは、(3R,3'R,6'R)−ルテインを無水ルテインI、II、およびIIIの混合物に定量的に変換し、次の工程でこれらのカロテノイドをEt3SiH/TFAと反応させて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R)−β−クリプトキサンチンとの混合物を得ることである。
【0055】
典型的な実験では、種々の溶媒中のTFAまたは酸水溶液、たとえば硫酸、塩酸、またはリン酸などの存在下で、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む市販(全カロテノイド85%)または高度に精製された(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全カロテノイド97%)を脱水して、(3R,6'R)−無水ルテインI、(3R,6'R)−2',3'−無水ルテインII、および(3R)−3',4'−無水ルテインIII、ならびにこれらの幾何異性体の混合物が得られる。種々の脱水反応からの粗生成物中の無水ルテインの相対的組成をHPLCによって測定した。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
(3R,3'R,6'R)−ルテインの酸触媒脱水生成物*
*:すべての実験を、周囲温度、窒素雰囲気下で行った。
【0057】
したがって、本発明は、さらに、種々の溶媒(テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、C1〜C4アルコール、C4〜C6エーテル、および塩素化溶媒が含まれるが、これらに限定されない)中のTFAまたは酸水溶液(硫酸、塩酸、またはリン酸など)の存在下で、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む市販(全カロテノイド85%)または高度に精製された(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全カロテノイド97%)の(3R,6'R)−無水ルテインI、(3R,6'R)−2',3'−無水ルテインII、および(3R)−3',4'−無水ルテインIII、ならびにこれらのモノZ幾何異性体の混合物に変換して粗生成物を得て、
a)粗生成物中の酸を中和する工程と、
b)溶媒を除去する工程と、
c)結晶を集収する工程と、
d)最終生成物を乾燥させる工程と、
e)乾燥生成物を直接使用してこれらのカロテノイドをα−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンに変換する工程とを含む方法に関する。
【0058】
C1〜C4アルコールの例には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、およびブタノールが含まれる。C4〜C6エーテルの例には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、および1,2−ジメトキシエタン(エチレングリコールジメチルエーテル)が含まれる。
【0059】
好ましくは、酸を、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムまたは有機塩基の溶液を加えて中和する。
【0060】
溶媒を高沸点C5〜C7炭化水素溶媒またはアルコールで段階的に置換することによって除去し、溶媒を無水ルテインが結晶化するまで減圧下で除去することもまた好ましい。
【0061】
結晶を、濾過または遠心分離によって集収し、結晶を少量の溶媒またはアセトンで洗浄することもまた好ましい。
【0062】
生成物を60℃の高真空下で乾燥させて無水ルテインの混合物を得ることもまた好ましい。
【0063】
無水ルテインI、II、およびIIIのTFA/Et3SiHとの反応
周囲温度の窒素雰囲気下で塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)またはトルエン中での無水ルテインI、II、およびIIIの混合物とEt3SiH/TFAとの反応により、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチン(オール-E+Z)ならびにいくつかの未反応無水ルテイン(オール-E+Z)の混合物が得られる。出発物質中に少量存在する(3R,3'R)−ゼアキサンチンは、試薬と反応せず、除去することができる。通常、反応は約2.5〜6時間以内に完了する。
【0064】
好ましい態様では、6〜10%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の無水ルテインI、II、およびIIIの塩素化溶媒またはトルエンを、周囲温度で約2.5〜6時間不活性雰囲気下にて約2.8〜3当量のEt3SiHおよび約3.8〜12当量のTFAと撹拌して未反応無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物が得られる。生成物の混合物を、水溶液または有機塩基による酸の中和およびアルコール水溶液からカロテノイドが結晶化するまでの減圧下での蒸留による塩素化溶媒またはトルエンを高沸点アルコールと置換して仕上げることができる。次いで、結晶カロテノイドを、アセトンまたはアルコールで洗浄し、約40〜60℃で高真空下にて乾燥することができる。
【0065】
ジクロロメタンおよびトルエン中の典型的な実験からの粗生成物中のカロテノイド組成を表6に示す。
【0066】
ジクロロメタン中での反応により、高濃度のTFAおよびより長い反応時間が必要なトルエン中での反応と対照的に比較的良好な収率で生成物が得られる。より高濃度のTFAのトルエン溶液では反応時間が短縮されるが、これらの条件下では、α−クリプトキサンチンおよびβ−クリプトキサンチンの有意な分解およびE/Z異性化が認められる。この反応からのそれぞれ単離したカロテノイドの同一性を、これらのUV可視、MS、および1H-NMRから確立した。
【0067】
【表6】
種々の溶媒中での無水ルテインと、トリフルオロ酢酸(TFA)およびトリエチルシラン(Et3SiH)との反応による生成物中のカロテノイドの相対的組成*
*:全実験において、周囲温度の窒素雰囲気下でTFAを無水ルテインおよびトリエチルシランの20ml溶媒溶液に加え、反応経路をHPLCで追跡した。
【0068】
したがって、好ましい態様では、本発明は、有機溶媒中、強酸および水素化物イオン供与体の存在下で約6〜10%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む無水ルテインI、II、およびIIIの混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R)−β−クリプトキサンチンとの混合物に変換する方法であって、以下の;
a)約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを塩素化溶媒(ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン)またはトルエン中に溶解し、不活性雰囲気下でトリエチルシラン(好ましくは2.76当量)を加えて混合物を得る工程と、
b)溶媒の性質に依存して、周囲温度で適量のTFAを混合物に加えてイオン水素化反応を促進して粗生成物を得る工程と、
c)例えば炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムの無機または有機塩基溶液の添加によって粗生成物中の酸を中和する工程と、
d)例えば、高沸点アルコール、好ましくは2−プロパノールとの段階的置換を使用して減圧下で塩素化溶媒を蒸留し、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化されるまで減圧下でほとんどのアルコールを蒸発させる工程と、
e)例えば、濾過または遠心分離によって結晶を集収し、結晶生成物を少量のアセトンで洗浄する工程と、
f)例えば、60℃の高真空下で最終生成物を乾燥させてカロテノイドの混合物を得る工程とを含む、方法に関する。
【0069】
本発明は、さらに、0℃またはそれ以下(0℃〜-20℃)での上記のカロテノイドの乾燥混合物のC5〜C7炭化水素または石油エーテルでの洗浄によってZ異性体を除去し、主に(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、無水ルテインのオール−E異性体、ならびに高濃度の未反応(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む結晶生成物を得る、カロテノイドのZ(シス)異性体をそのオールE(トランス)化合物から分離する方法に関する。
【0070】
(3R,3'R,6'R)−ルテインのNaCNBH3/ハロゲン化亜鉛(ZnBr2またはZnI2)との反応
室温でのジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタン中で(3R,3'R,6'R)−ルテインのシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)/ハロゲン化亜鉛(ZnI2)との反応が円滑に進行して、1〜2時間以内に約90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが選択的に得られる。この反応により、有意なE/Z立体異性体化を伴うTFA/トリエチルシランとのルテインの反応と対照的に主に(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンのオールE異性体が得られる。tert-ブチルメチルエーテル(TBME)中での反応によっても約90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られるが、5時間までのより長い反応時間が必要である。テトラヒドロフラン(THF)またはエチルエーテル中では、反応は進行しない。同様に、メタノールでは反応は認められなかった。臭化亜鉛もまたジクロロメタン中のルテインおよびNaCNBH3と反応して、約75%の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られる。しかし、塩化亜鉛およびNaCNBH3との反応では、24時間後の収率は低い。出発材料中に存在する5〜7%のゼアキサンチンは、NaCNBH3/ZnI2またはNaCNBH3/ZnBr2と反応せずに生成物中で完全に回収することができる。
【0071】
これらの反応のまとめを表7に示す。これらの反応から得た単離された(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの同一性を、UV−可視、MS、および1H-NMRスペクトルから確立した。
【0072】
【表7】
種々の溶媒中でのルテイン(5〜7%のゼアキサンチンを含む)のシアン化水素化ホウ素ナトリウムおよびヨウ化亜鉛との反応のまとめ*
*:全実験において、シアン化水素化ホウ素ナトリウムを(3R,3'R,6'R)−ルテインの溶媒20ml中の溶液に加え、その後ヨウ化亜鉛を加えた。全ての反応を周囲温度の窒素雰囲気下で行い、反応経路をTLCおよびHPLCで追跡した。
【0073】
この反応の仕上げは非常に簡単であり、セライト(濾過助剤)での生成物の濾過および大気圧での高沸点アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)との同時置換を用いた溶媒の蒸発、アルコール水溶液から生成物が結晶化するまでの減圧下でのほとんどのアルコールの除去から構成される。したがって、本発明は、(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する方法であって、以下の;
a)塩素化溶媒中で(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを溶解し、有効量のハロゲン化金属を加え、その後有効量のハロゲン化亜鉛を加えて混合物を得る工程と、
b)混合物を撹拌する工程と、
c)混合物を濾過する工程と、
d)溶媒を蒸発させて結晶生成物を得る工程と、
e)結晶生成物を集収する工程、とを含む方法に関する。
【0074】
好ましい態様では、本発明は、5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する方法であって、以下の:
a)不活性雰囲気下、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを一定量(例えば、6.7mlの溶媒/100mgのルテイン)のジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン、またはエーテル(TBME)に溶解し、7.5当量の水素化金属(例えば、シアン化水素化ホウ素ナトリウム)を加え、その後4当量のヨウ化亜鉛を加えて混合物を得る工程と、
b)周囲温度で、好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下、上記混合物を約1〜5時間撹拌して、粗生成物を得る工程と、
c)粗生成物を例えばセライト(濾過助剤)にて濾過し、全てが脱色されるまでさらなる溶媒で濾過物を洗浄する工程と、
d)生成物が結晶化するまで高沸点アルコール(メタノール、エタノール、または2−プロパノール)との置換を使用した大気圧下または減圧下で合わせた溶媒を蒸発させる工程と、
e)結晶を濾過または遠心分離によって集収し、結晶をアルコールまたはアセトンで洗浄する工程と、
f)結晶を例えば60℃の高真空下で乾燥させて、回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチンと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得る工程、とを含む方法に関する。
【0075】
(3R,3'R,6'R)−ルテインと(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムNa[BH3(OCOCF3)]/ハロゲン化亜鉛(ZnBr2またはZnI2)との反応
(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムは、0〜5℃で塩素化溶媒(ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン)中、臭化亜鉛の存在下でルテインと反応して、ほぼ定量的に(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られる。典型的な実験では、窒素下で0℃に維持したルテイン(0.45mmol)のジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン溶液(20ml)を、臭化亜鉛(0.58mol)で処理し、その後(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(1.82mmol)で処理する。(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムを、10〜15℃で不活性雰囲気下(窒素またはアルゴンなど)での水素化ホウ素ナトリウム(1.90mmol)のTHF(2ml)懸濁液へトリフルオロ酢酸(1.82mmol)をゆっくりと加えることによって調製する。次いで、混合物を、室温で20分間撹拌する。(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムの調製では、ルテインが脱水し得る生成物中の未反応TFAの存在を回避するために、出発物質(TFAおよび水素化ホウ素ナトリウム)を正確に秤量すべきである。ルテインを(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに完全に変換させるために、0〜5℃で約4〜5時間反応させる。仕上げは、過剰な水素化ホウ素物を破壊するための2%重炭酸ナトリウム溶液(10ml)を加えることを含む。有機層の分離、乾燥、および濾過後、大気圧で高沸点アルコール(メタノール、エタノール、2−プロパノール)で同時置換を行って、溶媒を蒸発させる。その後、アルコールから生成物が結晶化されるまで減圧下でほとんどのアルコールを除去する。この反応はまた、正確に同一の条件下でヨウ化亜鉛を使用しても行われる;しかし、生成物は、約57%の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび副産物として形成される43%の無水ルテインからなる。非塩素化溶媒(例えば、tert-ブチルメチルエーテル、ジグライム、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、THF、DMF)中での(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムおよびハロゲン化亜鉛(臭化亜鉛またはヨウ化亜鉛)ルテインのアリル基の脱酸素化は起こらなかった。
【0076】
したがって、本発明は、好ましくは0〜5℃の塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン)中で(3R,3'R,6'R)−ルテイン、(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム、およびハロゲン化亜鉛(好ましくは、臭化亜鉛またはヨウ化亜鉛)を反応させる工程を含む、(3R,3'R,6'R)−ルテイン(例えば、5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む)を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する方法に関する。好ましい態様では、反応は、
a)適切な体積(約6.7ml溶媒/100mgルテイン)の塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン)中で約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを溶解し、混合物を約0℃に冷却する工程と、
b)不活性雰囲気下、1.3当量の臭化亜鉛またはヨウ化亜鉛を加え、その後約4当量の新たに調製した(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウムを加えて混合物を得る工程と、
c)0℃で、窒素またはアルゴン雰囲気下、約5時間まで混合物を撹拌して粗生成物を得る工程と、
d)塩基水溶液(例えば、重炭酸ナトリウム水溶液)を加えて過剰な水素化ホウ素物を破壊し、有機層を分離し、乾燥する(例えば、硫酸ナトリウムで)工程と、
e)高沸点アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または2−プロパノール)で段階的に置換することによって例えば大気圧で有機溶媒を蒸発させ、生成物が結晶化するまで減圧下でアルコールを蒸発させる工程と、
f)結晶を例えば濾過または遠心分離によって集収し、アルコールまたはアセトンで洗浄する工程と、
g)結晶を例えば60℃で、高真空下で乾燥させて、回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチンと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得る工程とを含む。
【0077】
非塩素化溶媒中での(3R,3'R,6'R)−ルテインと、Me3N.BH3/AlCl3またはMe2NH.BH3/AlCl3との反応
(3R,3'R,6'R)−ルテインは、室温で、テトラヒドロフラン(THF)またはエチレングリコールジメチルエーテル中、塩化アルミニウムの存在下でボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体またはボラン−ジメチルアミン(Me2NH.BH3)複合体と反応して、1〜2時間以内に約90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが得られる。出発物質中に存在する5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンはMe3N.BH3/AlCl3またはMe2NH.BH3/AlCl3と反応せず、生成物中で完全に回収することができる。典型的な実験では、ルテイン(0.448mmol)のTHFまたはエチレングリコールジメチルエーテル溶液(30ml)を最初に2.69mmolのMe3N.BH3またはMe2NH.BH3で処理し、その後、AlCl3(1.03mmol)を加える。次いで、混合物を周囲温度の不活性雰囲気下(例えば、窒素またはアルゴン)で1〜2時間撹拌する。
【0078】
仕上げは、2%重炭酸ナトリウム溶液(10ml)および10mlの酢酸エチルまたはC4〜C6エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、TBME、1,2−ジメトキシエタン)などの第2の溶媒(THFの場合のみ)を加えることから構成される。エチレングリコールジメチルエーテルを反応溶媒として使用する場合、仕上げの間の第2の溶媒の使用を省略することができる。ほとんどの有機相を減圧下で除去し、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンをアルコールから結晶化させる。したがって、本発明は、周囲温度で、エーテル、好ましくはTHFまたはエチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン)中で(3R,3'R,6'R)−ルテイン、Me3N.BH3またはMe2NH.BH3、および塩化アルミニウムを反応させる工程を含む、(3R,3'R,6'R)−ルテイン(例えば、(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む)を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換する方法に関する。好ましい態様では、反応は、
a)適切な体積(約10ml溶媒/100mgルテイン)のTHFまたはエチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン)中で(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを溶解し、6モル当量のMe3N.BH3またはMe2NH.BH3を加え、2.3モル当量の塩化アルミニウムを加えて、混合物を得る工程と、
b)不活性雰囲気下(窒素またはアルゴン)、周囲温度で1〜2時間混合物を撹拌する工程と、
c)塩基水溶液(例えば、重炭酸ナトリウム水溶液)および酢酸エチルまたはエーテルなどの第2の溶媒(THFの場合のみ)を加え、有機相を分離し、乾燥する(例えば、硫酸ナトリウムで)工程と、
d)ほとんどの有機溶媒を減圧下で蒸発させ、アルコールから残渣を結晶化させる工程と、
e)結晶を例えば濾過または遠心分離によって集収し、アルコールまたはアセトンで洗浄する工程と、
f)結晶を例えば60℃の高真空下で乾燥させて、回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチンと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得る工程とを含む。
【0079】
(3R,3'R,6'R)−ルテインとLiClO4/Et3SiHとの反応
別のアプローチでは、本発明は、LiClO4/水素化物イオン供与体のエーテル溶液の存在下で(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む85%の市販もしくは高度に精製された(3R,3'R,6'R)−ルテインまたはその混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R,6'R)−無水ルテインIとの混合物に変換する方法に関する。好ましい態様では、この方法は、
a)室温の不活性雰囲気下(窒素またはアルゴン)でのトリエチルシランの存在下、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む(3R,3'R,6'R)−ルテインを過塩素酸リチウムのエーテル溶液と反応させて粗生成物を得る工程と、
b)粗生成物を水に分配して有機層および水層を得る工程と、
c)有機相を分離し、エーテルを蒸留によって高沸点アルコールまたはC5〜C7炭化水素を含む第2の溶媒と置換し、無水ルテインIおよび(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが結晶化するまで減圧下で第2の溶媒を蒸発させる工程と、
d)結晶を例えば濾過または遠心分離によって集収する工程と、
e)結晶を例えば少量のアセトンで洗浄する工程と、
f)結晶を例えば60℃の高真空下で乾燥させて、無水ルテインIと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得る工程とを含む。
【0080】
好ましい態様では、約3Mのジエチルエーテル溶液として過塩素酸リチウムを加える。好ましい態様ではまた、アルコールまたは炭化水素の添加および大気圧での蒸留によってエーテルを置換する。
【0081】
本明細書で使用される、用語「約」は、「約」の使用により引用した数±10%までの数を含むような数を意味する。例えば、「約5時間」には、4.5〜5.5時間が含まれる。「約0℃」には、-10℃、0℃、および+10℃が含まれる。
【0082】
本明細書に記載の方法および適用に対する適切な変更および適用が自明であり、本発明またはその任意の実施形態の範囲を逸脱することなくこれを行うことができることが関連分野の当業者に容易に明らかであろう。本発明を詳述してきたが、以下の実施例を参照してより明白になるであろう。しかし、以下の実施例は、本発明の例示のみを目的とし、本発明の制限を意図しない。
【0083】
実施例1
ジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸(TFA)およびトリエチルシラン(Et3SiH)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへの変換
ジクロロメタン(25ml)中、(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%(約0.255g、0.448mmol)を、最初にトリエチルシラン(0.150ml、0.109g、0.94mmol)で処理し、その後トリフルオロ酢酸(0.12ml、0.178g、1.56mmol)で処理した。混合物を周囲温度で、窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCで追跡した。8時間後、生成物を5%重炭酸ナトリウム溶液(15ml)で処理し、5分間撹拌した。混合物を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去されたとき、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化し始めるまでアルコールを減圧下で蒸留した。混合物を室温まで冷却し、遠心分離によって結晶を取り出した。水層を除去し、残存する結晶を10mlのアセトンで処理し、数分間撹拌した。遠心分離によって溶媒を除去し、結晶生成物を60℃の高真空下で乾燥させて赤色固体(0.263g)を得た。HPLCによって、この生成物は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(25.2%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(39.1%)、未反応(3R,6'R)−無水ルテイン(18.7%)、(オール-E, 3R,3'R)−ゼアキサンチン(10.5%)、(9Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(3%)、および(13Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(3.5%)の混合物からなる223mg(収率90%)の全カロテノイドを含むことが示された。粗生成物を低温(0℃〜-20℃)でヘキサン(6ml)で結晶化させて、カロテノイドの混合物からなる橙色の結晶を得た。結晶化からの母液中のカロテノイドの相対的組成は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(32%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(51.6%)、無水ルテイン(14.4%)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(2%)であった。橙色結晶を遠心分離によって取り出し、60℃の高真空下で乾燥させた。固体中のカロテノイドの相対的分布は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(18.5%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(26.5%)、無水ルテイン(11.4%)、(オール-E, 3R,3'R)−ゼアキサンチン(33.5%)、(9Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(4.3%)、および(13Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(5.8%)であった。
【0084】
実施例2
1,2−ジクロロエタン中、トリフルオロ酢酸(TFA)およびトリエチルシラン(Et3SiH)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへの変換
1,2−ジクロロエタン(25ml)中、(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300g、純度85%、約0.255g、0.448mmol)の溶液を、最初にトリエチルシラン(0.150ml、0.109g、0.94mmol)で処理し、その後トリフルオロ酢酸(0.12ml、0.178g、1.56mmol)で処理した。混合物を周囲温度で窒素雰囲気下、撹拌し、反応経路をHPLCで追跡した。8時間後、生成物を5%重炭酸ナトリウム溶液(15ml)で処理し、5分間撹拌した。減圧下で大部分の1,2−ジクロロエタン(沸点83℃)が除去された。2−プロパノール(20ml)を加え、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化し始めるまで蒸留を継続した。混合物を室温まで冷却し、遠心分離によって結晶を取り出した。水層を除去し、残存する結晶を10mlのアセトンで処理し、数分間撹拌した。遠心分離によって溶媒を除去し、結晶生成物を60℃の減圧下で乾燥させて赤色固体(0.250g)を得た。HPLCによって、この生成物は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(28.2%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(26.8%)、未反応(3R,6'R)−無水ルテイン(30.8%)、および回収した(オール-E+Z 3R,3'R)−ゼアキサンチン(14.2%)の混合物からなる216mg(収率87%)の全カロテノイドを含むことが示された。
【0085】
実施例3
カラムクロマトグラフィーによる(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、無水ルテイン、および(3R,3'R)−ゼアキサンチンの混合物からのカロテノイドの分離および精製
ヘキサン(90%)およびアセトン(10%)を使用して、フラッシュカラム(長さ20cm×内径3.5cm)に、n-シリカゲル(粒子サイズ40μm)を軽い圧力下で充填した。(3R,3'R,6'R)−ルテインのTFA/Et3SiHとの反応から得られた0.3gの(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、無水ルテイン、および(3R,3'R)−ゼアキサンチンの粗混合物(実施例1または2)を、ヘキサンとアセトンとの1/1混合物を使用してカラムにロードした。カロテノイドの混合物を、ヘキサン/アセトン(9/1)で溶出した。3つの主要な有色バンドを集収した。溶出順に、これらは、1)(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R)−β−クリプトキサンチンの純粋な混合物、2)無水ルテインI、II、およびIIIの混合物、および3)(3R,3'R)−ゼアキサンチンであった。溶媒を減圧蒸発させ、純粋なカロテノイドを60℃の高真空下で乾燥させた。
【0086】
実施例4
テトラヒドロフラン中、硫酸を使用した(3R,3'R,6'R)−ルテイン(純度85%)の無水ルテインI、II、およびIIIへの変換
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(3.36gの純度85%、約2.86g、5.03mmol)の150mlのテトラヒドロフラン(THF)溶液を、室温の窒素下で50%(v/v)硫酸(10ml)と4時間反応させた。約pH5〜6になるまで、生成物を4M水酸化カリウム(50ml)でゆっくり処理した。混合物を5%重炭酸ナトリウム溶液(5ml)およびトリエチルアミン(1ml)で処理して残存する酸を中和した。減圧下でほとんどのTHFが蒸発した。2−プロパノール(50ml)を加え、アルコール水溶液から無水ルテインが結晶化し始めるまで蒸留を継続した。結晶を遠心分離によって取り出し、30mlのアセトンで洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて3.18gの橙色生成物が得られ、HPLCによって、無水ルテイン(収率92%)と回収したゼアキサンチンとの2.54gの混合物を含むことが示された。この生成物中のカロテノイドの相対的分布は、(3R,6'R)−無水ルテインI(58%)、無水ルテインII(8.8%)、オール-E無水ルテインIII(18.4%)、Z−無水ルテインIII(7.9%)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(6.9%)であった。混合物を、さらに精製せずに次のTFA/Et3SiHとの反応に使用した。
【0087】
実施例5
トリフルオロ酢酸を使用した(3R,3'R,6'R)−ルテイン(純度85%)の無水ルテインI、II、およびIIIへの変換
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(1gの純度85%、約0.85g、1.49mmol)の150mlのクロロホルム溶液を、室温のトリフルオロ酢酸(0.2ml)と一晩(21時間)反応させた。生成物を5%重炭酸ナトリウム溶液(50ml)およびトリエチルアミン(0.2ml)で処理した。減圧下でほとんどのクロロホルムが蒸発した。2−プロパノールを加え、アルコール水溶液から無水ルテインが結晶化し始めるまで蒸留を継続した。結晶を遠心分離によって取り出し、15mlのアセトンで洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.96gの橙色生成物が得られ、HPLCによって、無水ルテイン(収率94%)と回収したゼアキサンチンとの0.77gの混合物を含むことが示された。この生成物中のカロテノイドの相対的分布は、(3R,6'R)−無水ルテインI(74.9%)、無水ルテインII(9%)、オール-E無水ルテインIII(5.3%)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(10.8%)であった。
【0088】
実施例6
ジクロロメタン中、無水ルテインI、II、およびIIIの(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへの変換
無水ルテインI、II、およびIII(0.234g、80%、約0.187g、0.34mmol)のジクロロメタン溶液(20ml)を、最初にトリエチルシラン(0.150ml、0.109g、0.94mmol)で処理し、その後トリフルオロ酢酸(0.100ml、0.148g、1.30mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCで追跡した。2.5時間後、生成物を5%重炭酸ナトリウム溶液(15ml)で処理し、5分間撹拌した。混合物を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去された場合、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化し始めるまでアルコールを減圧下で蒸留した。混合物を室温まで冷却し、遠心分離によって結晶を取り出した。水層を除去し、残存する結晶を10mlのアセトンで処理し、数分間撹拌した。遠心分離によって溶媒を除去し、結晶生成物を60℃の減圧下で乾燥させて赤色固体(0.188g)を得た。HPLCによって、この生成物は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(16.8%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(40.8%)、未反応(3R,6'R)−無水ルテイン(27.1%)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(15.3%)の混合物からなる132mg(収率70%)の全カロテノイドを含むことが示された。
【0089】
実施例7
トルエン中、無水ルテインI、II、およびIIIの(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンへの変換
無水ルテインI、II、およびIII(0.234g、80%、約0.187g、0.34mmol)のトルエン溶液(20ml)を、最初にトリエチルシラン(0.150ml、0.109g、0.94mmol)で処理し、その後トリフルオロ酢酸(0.200ml、0.296g、2.60mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCで追跡した。6時間後、生成物を5%重炭酸ナトリウム溶液(15ml)で処理し、5分間撹拌した。減圧での蒸留によってほとんどのトルエンが除去された。2−プロパノール(20ml)を加え、アルコール水溶液からカロテノイドが結晶化し始めるまで蒸留を継続した。混合物を室温まで冷却し、遠心分離によって結晶を取り出した。水相を除去し、残存する結晶を10mlのアセトンで処理し、数分間撹拌した。遠心分離によって溶媒を除去し、結晶生成物を60℃の減圧下で乾燥させて赤色固体(0.188g)を得た。HPLCによって、この生成物は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(35.5%)、(3R)−β−クリプトキサンチン(41.7%)、未反応(3R,6'R)−無水ルテイン(10.3%)、および(3R,3'R)−ゼアキサンチン(12.5%)の混合物からなる113mg(収率60%)の全カロテノイドを含むことが示された。
【0090】
実施例8
ジクロロメタン中でのシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)およびヨウ化亜鉛(ZnI2)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)のジクロロメタン溶液(20ml)を、シアン化水素化ホウ素ナトリウム(0.211g、3.36mmol)およびヨウ化亜鉛(0.575g、1.80mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。1時間後、生成物をセライト(濾過助剤)にて濾過し、セライトを脱色されるまでジクロロメタンで洗浄した。溶媒を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去された場合、α−クリプトキサンチンが結晶化するまでほとんどのアルコールを減圧蒸発させた。遠心分離によって結晶を取り出し、アルコール(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体が得られ、HPLCによって、α−クリプトキサンチン(0.222g、0.39mmol、90%)および回収されたゼアキサンチン(0.015g、オール-E(73%)、9Z(6%)、13Z(21%))の混合物からなることが示された。ヘキサン中での分光高度測定(λmax=444nmでE1%=2636)によって同定されたα−クリプトキサンチン濃度もHPLCデータと密接に一致していた。
【0091】
実施例9
1,2−ジクロロエタン中でのシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)およびヨウ化亜鉛(ZnI2)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)の1,2−ジクロロエタン溶液(20ml)を、シアン化水素化ホウ素ナトリウム(0.211g、3.36mmol)およびヨウ化亜鉛(0.575g、1.80mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。1時間後、生成物をセライト(濾過助剤)を通して濾過し、脱色されるまでセライトを1,2−ジクロロエタンで洗浄した。溶媒を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去された場合、α−クリプトキサンチンが結晶化するまでほとんどのアルコールを減圧蒸発させた。遠心分離によって結晶を取り出し、アルコール(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体が得られ、HPLCによって、α−クリプトキサンチン(0.222g、0.39mmol、90%)および回収されたゼアキサンチン(0.015g、オール-E(92%)、9Z(2%)、13Z(6%))の混合物からなることが示された。ヘキサン中での分光高度測定(λmax=444nmでE1%=2636)によって同定されたα−クリプトキサンチン濃度もHPLCデータと密接に一致していた。
【0092】
実施例10
tert-ブチルメチルエーテル(TBME)中でのシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)およびヨウ化亜鉛(ZnI2)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)のTBME溶液(20ml)を、シアン化水素化ホウ素ナトリウム(0.211g、3.36mmol)およびヨウ化亜鉛(0.575g、1.80mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。5時間後、生成物をセライト(濾過助剤)にて濾過し、セライトを脱色されるまでTBMEで洗浄した。TBME(沸点55〜56℃)の体積は、減圧下の蒸留によって10mlに減少した。2−プロパノールを加え、残りのTBMEが2−プロパノール(沸点82.4℃)と置換されるまで減圧下で蒸留を継続した。α−クリプトキサンチンが結晶化するまでアルコールの減圧蒸留を継続した。遠心分離によって結晶を取り出し、アルコールで洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体が得られ、HPLCによって、α−クリプトキサンチン(0.222g、0.39mmol、90%)および回収されたゼアキサンチン(0.015g、オール-E(96%)、9Z(1%)、13Z(3%))の混合物からなることが示された。ヘキサン中での分光高度測定(λmax=444nmでE1%=2636)によって同定されたα−クリプトキサンチン濃度もHPLCデータと密接に一致していた。
【0093】
実施例11
ジクロロメタン中での(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(Na(BH3(OCOCF3))および臭化亜鉛(ZnBr2)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
Na(BH3(OCOCF3)の調製。トリフルオロ酢酸(0.14ml、0.207g、1.82mmol)を、密封シリンジで10〜15℃に冷却した水素化ホウ素ナトリウム(0.072g、1.90mmol)のTHF懸濁液に滴下し、窒素雰囲気下に維持した。混合物を室温で10分間撹拌して、透明溶液を得た。
【0094】
温度計、窒素インレット、およびアウトレットを備えた三口フラスコ中で(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、溶液を氷浴中にて窒素雰囲気下で0℃に冷却した。0〜5℃の窒素下で混合物を臭化亜鉛(0.130g、0.577mol)で処理し、その後上記の(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(1.82mmol)を一度に加えた。混合物をこの温度で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。5時間後、氷浴を除去し、生成物を10mlの2%の重炭酸ナトリウムで処理し、周囲温度で10分間撹拌した。有機相を取り出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去された後、α−クリプトキサンチンが結晶化するまでほとんどのアルコールを減圧蒸発させた。遠心分離によって結晶を取り出し、アルコール(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体が得られ、HPLCによって、α−クリプトキサンチン(0.234g、0.39mmol、95%)および回収されたゼアキサンチン(0.018g、オール-E(80%)、9Z(5%)、13Z(15%))の混合物からなることが示された。
【0095】
実施例12
ジクロロメタン中での(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(Na(BH3(OCOCF3))およびヨウ化亜鉛(ZnI2)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
Na(BH3(OCOCF3)の調製
トリフルオロ酢酸(0.14ml、0.207g、1.82mmol)を、密封シリンジで10〜15℃に冷却した水素化ホウ素ナトリウム(0.072g、1.90mmol)のTHF(2ml)に滴下し、窒素雰囲気下に維持した。混合物を室温で10分間撹拌して、透明溶液を得た。
【0096】
温度計、窒素インレット、およびアウトレットを備えた三口フラスコ中で(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、溶液を氷浴中にて窒素雰囲気下で0℃に冷却した。0〜5℃の窒素下で混合物をヨウ化亜鉛(0.186g、0.583mol)で処理し、その後上記の(トリフルオロアセトキシ)水素化ホウ素ナトリウム(1.82mmol)を一度に加えた。混合物をこの温度で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。5時間後、氷浴を除去し、生成物を10mlの2%の重炭酸ナトリウムで処理し、周囲温度で10分間撹拌した。有機相を取り出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を、ジクロロメタン(沸点40℃)の2−プロパノール(沸点82.4℃)で段階的に置換することによって大気圧で蒸留した。ほぼ全部のジクロロメタンが除去された場合、α−クリプトキサンチンが結晶化するまでほとんどのアルコールを減圧蒸発させた。遠心分離によって結晶を取り出し、アルコール(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体が得られ、HPLCによって、無水ルテイン(0.100g、0.18mmol、43%)およびα−クリプトキサンチン(0.134g、0.243mmol、57%)ならびに回収されたゼアキサンチン(0.015g)の混合物からなることが示された。
【0097】
実施例13
テトラヒドロフラン中でのボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体および塩化アルミニウム(AlCl3)を使用した(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol))のTHF(30ml)を、最初にボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体(0.196g、2.69mmol)で処理し、その後塩化アルミニウム(0.317g、1.03mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。90分後、生成物を15mlの重炭酸ナトリウム水溶液および30mlの酢酸エチルで処理した。有機相を取り出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物が結晶化されるまでほとんどの有機溶媒を減圧蒸留した。エタノール(10ml)を加え、α−クリプトキサンチンの結晶を遠心分離によって取り出し、少量のアセトン(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体を得た。HPLCによって、この生成物は、α−クリプトキサンチン(0.222g、0.39mmol、90%)および回収されたゼアキサンチン(0.015g、オール-E(73%)、9Z(6%)、13Z(21%))の混合物からなることが示された。
【0098】
実施例14
エチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン)中でのボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体および塩化アルミニウム(AlCl3)を使用した(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの選択的脱酸素化
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)の1,2−ジメトキシエタン(30ml)溶液を、最初にボラン−トリメチルアミン(Me3N.BH3)複合体(0.196g、2.69mol)で処理し、その後塩化アルミニウム(0.137g、1.03mmol)で処理した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、反応経路をHPLCおよびTLCで追跡した(ヘキサン/アセトン=4/1;ルテイン(Rf=0.18)、α−クリプトキサンチン(Rf=0.51))。90分後、生成物を15mlの重炭酸ナトリウム水溶液で処理した。有機相を取り出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物が結晶化されるまでほとんどの1,2−ジメトキシエタンを減圧蒸留した。エタノール(10ml)を加え、α−クリプトキサンチンの結晶を遠心分離によって取り出し、少量のアセトン(10ml)で洗浄し、60℃の高真空下で乾燥させて0.3gの橙色固体を得た。HPLCによって、この生成物は、α−クリプトキサンチン(0.222g、0.39mmol、90%)および回収されたゼアキサンチン(0.015g、オール-E(73%)、9Z(6%)、13Z(21%))の混合物からなることが示された。
【0099】
実施例15
過塩素酸リチウム(LiClO4)およびトリエチルシラン(Et3SiH)での(3R,3'R,6'R)−ルテイン(85%)の(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび無水ルテインIへの変換
(3R,3'R,6'R)−ルテイン(0.300gの純度85%、約0.255g、0.448mmol)のエーテル(25ml)溶液を、最初にトリエチルシラン(0.300ml、0.218g、1.87mmol)で処理し、その後過塩素酸リチウム(8.00g、75.2mmol)を加えた。溶液は即座に暗赤色に変化し、溶液の温度は5℃まで増加した。混合物を周囲温度の窒素雰囲気下で撹拌し、その後HPLCを行った。24時間後、水(30ml)を加え、有機相を取り出した。混合物を、エーテル(沸点37℃)のヘキサン(沸点68℃)への段階的置換によって大気圧で蒸留した。全てのエーテルが除去された場合、ヘキサンからカロテノイドが結晶化し始めるまで減圧蒸留した。混合物を室温まで冷却し、結晶を遠心分離によって取り出した。結晶生成物を60℃の高真空下で乾燥させて赤色固体(0.6g)を得た。HPLCによって、この生成物は、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン(45%)、オール-E無水ルテインI(38.0%)、Z-無水ルテインI(8.4%)、(オール-E,3R,3'R)−ゼアキサンチン(5.5%)、(9Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(1.5%)、および(13Z,3R,3'R)−ゼアキサンチン(1.6%)の混合物からなる210mgの全カロテノイドを含むことが示された。
【0100】
概要
無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および(3R,3'R)−ゼアキサンチンは、ヒト血清、ミルク、主要器官、および組織中で認められる12種の主要な食品カロテノイドである。癌、加齢性黄斑変性、および心血管疾患などの慢性疾患の予防におけるカロテノイドの生物活性に照らして、広範な精製カロテノイドの工業生産は非常に重要である。いくつかの食品カロテノイド(すなわち、β−カロテン、ルテイン、およびリコペン)は、栄養補助食品および食品着色料として市販されている一方で、広範な他の血清カロテノイドの生産は依然としてあまり注目されていない。特に、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンは自然界でとりわけ稀なカロテノイドであり、結果として産業規模での天然産物からのこれらのカロテノイドの抽出および単離は経済的に実現性がない。
【0101】
本発明の好ましい態様によれば、周囲温度の塩素化溶媒(ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)中でのトリフルオロ酢酸(TFA)およびトリエチルシラン(Et3SiH)での処理により市販の(3R,3'R,6'R)−ルテインが選択的アリル基脱酸素化に供されて、無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物が良好な収率で得られる。この反応では、最初にルテインが定量的に無水ルテインに変換されて、その後イオン水素化を受けて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物が得られる。実験条件に依存して、18〜34%の無水ルテインが未反応のままである。本発明はまた、これらのカロテノイドの代替経路は、最初に酸で(3R,3'R,6'R)−ルテインを無水ルテインに変換し、その後の工程で得られた生成物がTFA/Et3SiHと反応して(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンが得られることを証明する。本発明はまた、これらの反応から得られたカロテノイドの混合物をカラムクロマトグラフィーに供して1)(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R)−β−クリプトキサンチンとの混合物、2)無水ルテインの混合物、および3)(3R,3'R)−ゼアキサンチンからなる3つの主要な画分に分離および精製することができることを証明する。
【0102】
本発明は、さらに、周囲温度で1〜5時間ハロゲン化溶媒(ジクロロメタン、1,2−ジクロロメタン)またはtert-ブチルメチルエーテル中でのシアン化水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)およびヨウ化亜鉛(ZnI2)または臭化亜鉛(ZnBr2)によって、(3R,3'R,6'R)−ルテインを最大90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに選択的に変換することができることを証明する。
【0103】
有毒な水素化ホウ素ナトリウムおよび塩素化溶媒の使用を回避するために、本発明は、さらに、周囲温度で1〜2時間、THFまたは1,2−ジメトキシエタン中での塩化アルミニウムの存在下で、ボラン−トリメチルアミン複合体またはボラン−ジメチルアミン複合体によって、(3R,3'R,6'R)−ルテインを最大90%の収率で(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに選択的に変換することができることを証明する。
【0104】
あるいは、本発明は、好ましい態様では、周囲温度の3.0M過塩素酸リチウム−ジエチルエーテル溶液での処理によってルテインをアリル基脱酸素化してほとんど無水ルテインIおよび(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンの混合物が得られることを証明する。
【0105】
市販のルテインを、マリゴールドの抽出物から単離し、これは約5〜7%のゼアキサンチンを含む。ゼアキサンチンがTFA/Et3SiH、NaCNBH3/ZnI2、NaCNBH3/ZnBr2、Me3N.BH3/AlCl3、またはMe2NH.BH3/AlCl3、過塩素酸リチウム−ジエチルエーテルのいずれとも反応しないので、最終生成物中で完全に回収することができる。
【0106】
上記から、当業者は本発明の本質的特徴を容易に確認することができ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、過度の実験を行わずに種々の用途および条件に本発明を適用するために、本発明の種々の変更および修正を行うことができる。本明細書で引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
Claims (40)
- (3R,3'R,6'R)−ルテインを無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物に変換するプロセスであって、不活性雰囲気下、塩素化溶媒またはトルエン中、強酸および水素化物イオン供与体の存在下、(3R,3'R,6'R)−ルテインを反応させて、無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物を得ることを特徴とする、変換するプロセス。
- 前記(3R,3'R,6'R)−ルテインが全部で85%のカロテノイドを含む、請求項1記載の方法。
- 前記(3R,3'R,6'R)−ルテインが全部で97%のカロテノイドを含む、請求項1記載の方法。
- 前記(3R,3'R,6'R)−ルテインが約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む、請求項1記載の方法。
- 強酸がトリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項1記載の方法。
- 水素化物イオン供与体がトリエチルシラン(Et3SiH)である、請求項1記載の方法。
- 塩素化溶媒がジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンである、請求項1記載の方法。
- 塩素化溶媒中、約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の(3R,3'R,6'R)−ルテインを、約2〜3当量の(Et3SiH)および約3.0〜3.5当量のTFAと、周囲温度で約5〜10時間、不活性雰囲気下で撹拌する、請求項1記載の方法。
- 無水ルテインI、II、III、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、および(3R)−β−クリプトキサンチンの混合物を、塩基を用いての強酸の中和およびアルコール水溶液からカロテノイドが結晶化するまで蒸留により塩素化溶媒を高沸点アルコールで置換することによって単離する、請求項8記載の方法。
- 結晶カロテノイドを集収する工程と、アセトンまたはアルコールで洗浄する工程と、高真空下にて約40〜60℃で乾燥させる工程とをさらに含む、請求項9記載の方法。
- 結晶カロテノイドを周囲温度または0〜-20℃でC5〜C7炭化水素溶媒または石油エーテルで洗浄してZ(シス)−カロテノイドを除去し、回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチン中のオールE−(トランス)−カロテノイド富化結晶混合物を得る、請求項10記載の方法。
- 結晶カロテノイドをアセトンまたはメチルエチルケトン、酢酸エチル、C4〜C6エーテル、またはその混合物と組み合わせた炭化水素溶媒を使用したカラムクロマトグラフィーに付して(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと(3R)−β−クリプトキサンチンとの純粋な混合物、無水ルテインI、II、III、および純粋な(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの個別の混合物を得る、請求項10記載の方法。
- 炭化水素溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、または石油エーテルであり、C4〜C6エーテルがジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、またはTHFである、請求項12記載の方法。
- (a)(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全部で85%のカロテノイド)、(b)約5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む精製ルテイン(全部で97%のカロテノイド)、または(a)と(b)との混合物を最初に無水ルテインの混合物に変換し、その後この生成物を塩素化溶媒またはトルエン中、不活性雰囲気下、強酸および水素化物イオン供与体と反応させて未反応無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物を得る、請求項1記載の方法。
- (a)(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全部で85%のカロテノイド)、(b)5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む精製ルテイン(全部で97%のカロテノイド)、または(a)と(b)との混合物を無水ルテインI、II、IIIの混合物に変換するプロセスであって、(3R,3'R,6'R)−ルテインを、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、トルエン、またはC 1 〜C 4 アルコール中、TFA、三フッ化ホウ素または塩酸水溶液と周囲温度で反応させて無水ルテインと回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物を得ることを特徴とする、変換するプロセス。
- 塩素化溶媒またはトルエン中の6〜10%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の無水ルテインI、II、およびIIIを、周囲温度で約2.5〜6時間不活性雰囲気下にて約2.8〜3当量のEt3SiHおよび約3.8〜12当量のTFAと撹拌して、未反応無水ルテイン、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチン、(3R)−β−クリプトキサンチン、および回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物を得る、請求項15記載の方法。
- 生成物の混合物を、酸を水性または有機塩基で中和し、そしてアルコール水溶液からカロテノイドが結晶化するまで減圧下蒸留することにより、塩素化溶媒またはトルエンを高沸点アルコールで置換することによって生成する、請求項16記載の方法。
- 結晶カロテノイドを集収し、アセトンまたはアルコールで洗浄し、約40〜60℃で高真空下にて乾燥する、請求項17記載の方法。
- 結晶生成物を周囲温度または0〜-20℃でC5〜C7炭化水素溶媒または石油エーテルで洗浄してZ(シス)−カロテノイドを除去し、回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチン中にオールE−(トランス)−カロテノイド富化結晶混合物を得る、請求項17記載の方法。
- (a)(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全部で85%のカロテノイド)、(b)5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む精製ルテイン(全部で97%のカロテノイド)、またはその混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換するプロセスであって、不活性雰囲気下、周囲温度で、塩素化溶媒またはエーテル中、(3R,3'R,6'R)−ルテインをハロゲン化亜鉛およびシアン化水素化ホウ素ナトリウムと反応させて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンを得る、変換するプロセス。
- 塩素化溶媒がジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンであり、エーテルがtert−ブチルメチルエーテル(TBME)である、請求項20記載の方法。
- 塩素化溶媒またはTBME中、5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の(3R,3'R,6'R)−ルテインを7.5当量のNaCNBH3および4.0当量のヨウ化亜鉛または臭化亜鉛と周囲温度で約1〜5時間不活性雰囲気下で撹拌して(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収された(3R,3'R)−ゼアキサンチンを得る、請求項20記載の方法。
- 生成物を、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの粗混合物の濾過およびカロテノイドが結晶化するまで減圧下での高沸点アルコールとの置換による前記塩素化溶媒またはTBMEの蒸発によって生成する、請求項22記載の方法。
- 結晶化カロテノイドを遠心分離もしくは濾過によって集収し、そしてアルコールもしくはアセトンで洗浄する、請求項23記載の方法。
- 結晶を60℃の高真空下でさらに乾燥させて回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得る、請求項24記載の方法。
- (a)(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全部で85%のカロテノイド)または(b)5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む精製ルテイン(全部で97%のカロテノイド)、またはその混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換するプロセスであって、塩化アルミニウムの存在下、第1の溶媒中、周囲温度、不活性雰囲気下(3R,3'R,6'R)−ルテインとボラン−トリメチルアミンまたはボラン−ジメチルアミン複合体とを反応させて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンを得、ここで前記第1の溶媒がエーテルである、変換するプロセス。
- 前記エーテルがテトラヒドロフランまたは1,2−ジメトキシエタンである、請求項26記載の方法。
- 約2.3モル当量の塩化アルミニウムの存在下、エーテル中、5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む1モル当量の(3R,3'R,6'R)−ルテインを約6モル当量のボラン−トリメチルアミンまたはボラン−ジメチルアミン複合体と周囲温度、不活性雰囲気下で約1〜2時間撹拌して(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンを得る、請求項26記載の方法。
- (3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンを、重炭酸ナトリウム水溶液への分配、得られた有機層の分離、および(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンと未反応(3R,3'R)−ゼアキサンチンとの混合物が結晶化するまで溶媒の蒸発によって単離する、請求項28記載の方法。
- 第1の溶媒がTHFであり、酢酸エチルおよびC4〜C6エーテルからなる群より選択される第2の溶媒を重炭酸ナトリウム水溶液と共に加え、その後有機層を分離する、請求項29記載の方法。
- 結晶化混合物を、遠心分離または濾過によって集収し、アルコールまたはアセトンで洗浄する、請求項29記載の方法。
- 回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンと(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンとの混合物を得るために、洗浄した前記結晶化混合物を60℃の高真空下で乾燥させる工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
- (a)(3R,3'R,6'R)−ルテイン(全部で85%のカロテノイド)または(b)5〜7%の(3R,3'R)−ゼアキサンチンを含む精製ルテイン(全部で97%のカロテノイド)、またはその混合物を(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンに変換するプロセスであって、(3R,3'R,6'R)−ルテインと臭化亜鉛またはヨウ化亜鉛および(トリフルオロアセトキシ)−水素化ホウ素ナトリウムを塩素化溶媒中、不活性雰囲気下で反応させて(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンおよび回収した(3R,3'R)−ゼアキサンチンを得る工程を含む、プロセス。
- 塩素化溶媒がジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンである、請求項33記載の方法。
- 反応を約0〜5℃で行う、請求項33記載の方法。
- 約1.3モル当量の臭化亜鉛またはヨウ化亜鉛および約4モル当量の(トリフルオロアセトキシ)−水素化ホウ素ナトリウムを0℃で約5時間まで反応させて粗生成物を得る、請求項33記載の方法。
- 重炭酸ナトリウム水溶液を粗生成物に加え、得られた有機層を分離し、その後乾燥する、請求項36記載の方法。
- 乾燥した有機層を、(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンが結晶化するまで、高沸点アルコールで段階的置換することによって蒸発させる、請求項37記載の方法。
- 結晶化(3R,6'R)−α−クリプトキサンチンを集収し、結晶をアルコールまたはアセトンで洗浄する、請求項38記載の方法。
- 洗浄した結晶を減圧下で乾燥させる、請求項39記載の方法。
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