JP4416314B2 - ソレノイド - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は可動子の動作ストロークが増大しても、推力が大きく低下せずに一定の推力を維持できるソレノイドを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のロングストロークに使用するソレノイドの例としては、実開昭61-112608(以下、文献1という)に開示されているようなものがある。図8に文献1のソレノイドの縦断面図、図9に文献1のソレノイドの吸引特性図を示す。
構成としては、固定鉄芯とその内部を貫通する可動鉄芯と、それらの鉄芯を取巻くように設けられた励磁コイルと、閉磁路を形成するための継鉄とから成るソレノイド形電磁石において、前記固定鉄芯の横断面における断面積が、固定鉄芯の長手方向において可動鉄芯を吸引する方向と反対方向に漸減していることを特徴とする。
【0003】
文献1のソレノイドは、固定鉄芯の先端が細く作られているので、磁気飽和のために、通る磁束の量は制限されている。固定鉄芯は長手方向において可動鉄芯を吸引する方向と反対方向に漸減しているので、可動鉄芯のストロークの変化によって、固定鉄芯から継鉄に流れる磁束を変化させることができ、所望の吸引特性を得られる。
【0004】
また、従来のソレノイドの一例を図10に示す。図10において、1はケース、3はボビン、4はコイル、5は可動子、6はベース、7はシャフトである。
コイル4に通電を行うと、コイル4に磁力が発生し、ケース1とベース6に磁気回路が構成される。そして、可動子5はベース6に引き付けられて移動する。
この際に、図10のソレノイドの可動子の後方部に装置部を接続して引く機能(プル)は単独でも有するが、装置を推す働き(プッシュ)を有させるためには、可動子の先端部にシャフト7を接続して、ケース1にシャフト7を貫通させなければならなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
文献1のソレノイドでは、図9の吸引特性を見ると、ストロークのごく初期では充分な推力を有さない。
本発明は、初期状態から十分な推力を有し、可動子が移動しても推力を広い範囲で一定に維持し続け、ソレノイド単独でも引く機能と推す機能の両方を有する(プッシュプル)ソレノイドを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を前記ボビン3と可動子5との間に折り込み、この折り込んだ部分に磁束誘導部1bが一体成形され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形したことで可動子の動作ストロークが広範囲に及んでも、可動子の推力を維持し続けることを可能にした。請求項2の発明は、ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を可動子5の側面に向かい合うようにし、前記ボビン3と前記可動子5との間に有するように、前記ケース1の先端部分に、磁性材料からなるスリーブ2が固定され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形することで、可動子の動作ストロークが広範囲に及んでも、可動子の推力を維持し続けることを可能にした。請求項3の発明は、可動子5のテーパ状に成形された先端部の長さを調整することで、所望の吸引特性を得ることを可能にした。請求項4の発明は、ケース1には孔1aが設けられ、孔1aには可動子5が貫通され、ケース1から可動子5の先端が突出していることで、プッシュプルの機能を有することを可能にした。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基いて説明する。
図1は本発明の請求項1の発明の縦断面図、図7は本発明の請求項2の発明の縦断面図である。図1又は図7において、1はケース、2はスリーブ、3はボビン、4はコイル、5は可動子である。
【0008】
請求項1の発明では、ケース1は磁性材料からなり有底で底部には孔1aが設けられ、前記孔1aに外周に直立するごとく、磁束誘導部1bが一体成形されている。
磁束誘導部1bを囲むごとく、コイル4が巻回されたボビン3が配置されている。
ボビン3の中空部には、可動子5が貫通されている。可動子5は磁性材料からなり、先端がテーパ形状に成形されている。
【0009】
請求項2の発明では、ケース1は磁性材料からなり有底で底部には孔1aが設けられ、前記孔1aに外周に直立するごとく、磁束誘導部1bが設けられ、ケース1に接続されている。
磁束誘導部1bを囲むごとく、コイル4が巻回されたボビン3が配置されている。
ボビン3の中空部には、可動子5が貫通されている。可動子5は磁性材料からなり、先端がテーパ形状に成形されている。
【0010】
次に請求項1の発明のソレノイドの動作を図2と図3に基いて説明する。
図2(A)は、請求項1の発明の部分拡大図である。図2(B)は請求項1の発明のストロークと推力特性の関係を表わす推力特性図であり縦軸に推力、横軸にストロークを示す。図2(B)のS軸上のS1〜S3はそれぞれ図2(A)に示すストロークの変化に対応している。図2(C)は図2(B)の拡大図である。
図3は、請求項1の発明のソレノイドの磁束の流れを表わしたものである。図3(A)〜図3(C)はそれぞれ図2(A)、図2(B)のS1〜S3に対応している。
【0011】
コイル4に通電することにより、コイル4は電磁力を発生する。この電磁力によってケース1、磁束誘導部1bは磁気回路を形成し、可動子5の先端部と磁束誘導部1bの間に推力が働く。
初期状態において、可動子5はS1の位置にあり、動作が進むに従って可動子5はS2〜S3へと移動する。
【0012】
可動子がS1の位置にあるとき、可動子5の先端が磁束誘導部1bの直前に位置しているので、可動子5と磁束誘導部1bの間に作用する磁束はわずかであるが、磁束誘導部1bの厚さが薄く形成されているので、生成した磁束はほぼ完全に磁束誘導部1bからケース1に流れる。
【0013】
その後、可動子がS2の位置まで吸引されたときは、可動子5の先端が磁束誘導部1bの中空部に入り込んでいる。磁束誘導部1bの中空部の磁束密度はほぼ均一になっているので、磁束誘導部1bの内部では均一な磁力が作用する。
一方、可動子5の先端部はテーパ形状で細く成形されているため、可動子5を通る磁束の量は制限されている。
【0014】
更に、可動子5がS3の位置まで吸引されると、可動子5の磁束誘導部1bに入り込んでいる部分の径は徐々に太くなるので、可動子5に働く磁束も漸増する。そのため、吸引特性も徐々に上昇する。
【0015】
しかし、磁束誘導部1bの厚さは薄く形成されているので、通すことのできる磁束の量は制限されている。そのために、可動子5から流れる磁束の量が増えても、ある一定量以上の磁束は流れないので、磁束誘導部1bは磁気飽和を起こし、通る磁束の量は一定に保たれている。その様子は図3(A)〜図3(C)をみると明らかである。
そのために、ストロークが長いときでも、本発明はほぼ一定の推力をフラットに保っている。
【0016】
また、請求項2の発明のように、磁束誘導部1bは、スリーブ2としてケース1とは別に形成した後に、ケース1に設けられた孔1aの外周部に直立するごとく接続しても、請求項1と同様の吸引特性が得られる。
【0017】
また、請求項3の発明によれば、可動子5の先端のテーパの形状によって、所望の吸引特性を得ることができる。その実施の形態を図4、図5に基いて説明する。
【0018】
図4は本発明の請求項3の発明の縦断面図である。図4において、1はケース、3はボビン、4はコイル、5は可動子である。
ケース1は磁性材料からなり、有底で底部には孔1aが設けられ、前記孔1aの外周に直立するごとく、磁束誘導部1bが一体成形されている。
磁束誘導部1bを囲むごとく、コイル4が巻回されたボビン3が配置されている。
ボビン3の中空部には、可動子5が貫通されている。可動子5は磁性材料からなり、先端がテーパ形状に成形されている。図4の実施例では、図1の実施例と比べて可動子5の先端のテーパ形状の部分は短く形成されている。
【0019】
次に請求項3の発明のソレノイドの動作を図5と図6に基いて説明する。
図5(A)は、請求項3の発明の部分拡大図である。図5(B)は請求項3の発明のストロークと推力特性の関係を表わす推力特性図であり縦軸に推力、横軸にストロークを示す。図5(B)のS軸上のS1〜S2はそれぞれ図5(A)におけるストロークの変化S1〜S2に対応している。
図6は、請求項3の発明のソレノイドの磁束の流れを表わしたものである。図6(A)〜図6(B)はそれぞれ図5(A)、図5(B)のS1〜S2に対応している。
【0020】
コイル4に通電することにより、コイル4は電磁力を発生する。この電磁力によってケース1、磁束誘導部1bは磁気回路を形成し、可動子5の先端部と磁束誘導部1bの間に推力が働く。
初期状態において、可動子5はS1の位置にあり、動作が進むに従って可動子5はS1〜S2へと移動する。
【0021】
可動子がS1の位置にあるとき、可動子5の先端が磁束誘導部1bの直前に位置しているので、可動子5と磁束誘導部1bの間に作用する磁束はわずかであるが、磁束誘導部1bの厚さが薄く形成されているので、生成した磁束はほぼ完全に磁束誘導部1bからケース1に流れる。
【0022】
その後、可動子がS2の位置まで吸引されたときは、可動子5の先端が磁束誘導部1bの中空部に入り込み、かつ磁束誘導部1bに入り込んでいる部分の径は徐々に太くなるので、可動子5に働く磁束も漸増する。磁束誘導部1bの中空部の磁束密度はほぼ均一になっているので、磁束誘導部1bの内部では均一な磁力が作用する。一方、可動子5の先端部はテーパ形状で細く成形されているため、可動子5を通る磁束の量は制限されている。
【0023】
しかし、磁束誘導部1bの厚さは薄く形成されているので、通すことのできる磁束の量は制限されている。そのために、可動子5から流れる磁束の量が増えても、ある一定量以上の磁束は流れないので、磁束誘導部1bは磁気飽和を起こし、通る磁束の量は一定に保たれている。その様子は図6(A)〜図6(B)をみると明らかである。
そのために、ストロークが長いときでも、本発明はほぼ一定の推力をフラットに保っている。
【0024】
請求項3の発明の可動子5は、請求項1の発明と比べて先端のテーパ形状に加工された部分が短くなっている。そのために、請求項1の発明よりも、短いストロークで用いられることに適している。
更に、可動子5のテーパの長さや、テーパの形状を調節することで、所望の吸引特性を得ることが可能である。
【0025】
請求項4の発明について、図1に基いて説明する。ケース1には孔1aが開口するごとく設けられ、ストロークがゼロのときには、可動子5がケース1から突出するように形成されているので、可動子5にシャフトを接続しなくても、プッシュプルの機能を有する。
【0026】
【発明の効果】
請求項1の発明により、ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を前記ボビン3と可動子5との間に折り込み、この折り込んだ部分に磁束誘導部1bが一体成形され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形したことで可動子の動作ストロークが広範囲に及んでも、可動子の推力を維持し続けることが可能になった。請求項2の発明により、ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を可動子5の側面に向かい合うようにし、前記ボビン3と前記可動子5との間に有するように、前記ケース1の先端部分に、磁性材料からなるスリーブ2が固定され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形することで、可動子の動作ストロークが広範囲に及んでも、可動子の推力を維持し続けることを可能になった。請求項3の発明により、可動子5のテーパ状に成形された先端部の長さを調整することで、所望の吸引特性を得ることを可能になった。請求項4の発明により、本発明のソレノイド単独でもプッシュプルの機能を有することを実現した。また、構造がとてもシンプルなので、製造が容易で安価なソレノイドを提供することができ、産業上の利用可能性大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の縦断面図
【図2】請求項1の発明の部分拡大図及び推力特性図
【図3】請求項1の発明の磁束の流れ
【図4】請求項3の発明の縦断面図
【図5】請求項3の発明の部分拡大図及び推力特性図
【図6】請求項3の発明の磁束の流れ
【図7】請求項2の発明の縦断面図
【図8】文献1のソレノイドの縦断面図
【図9】文献1のソレノイドの推力特性図
【図10】従来のソレノイドの縦断面図
【符号の簡単な説明】
1.ケース
2.スリーブ
3.ボビン
4.コイル
5.可動子
6.ベース
7.シャフト
Claims (4)
- ボビン3に巻回されたコイル4に通電することにより可動子5が可動するソレノイドにおいて、前記ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を前記ボビン3と前記可動子5との間に折り込み、この折り込んだ部分に磁束誘導部1bが一体成形され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形され、前記磁束誘導部1bが前記可動子5のテーパ部分に当接可能に構成してあることを特徴とするソレノイド。
- ボビン3に巻回されたコイル4に通電することにより可動子5が可動するソレノイドにおいて、前記ボビン3の外部を覆うケース1の先端部分を前記可動子5の側面に向かい合うようにし、前記ボビン3と前記可動子5との間に位置し、前記ケース1の先端部分の内面に磁性材料からなるスリーブ2が固定され、前記可動子5の先端部はテーパ形状に成形され、前記スリーブ2が前記可動子5のテーパ部分に当接可能に構成してあることを特徴とするソレノイド。
- 前記可動子5のテーパ状に成形された先端部の長さを調整することで、所望の吸引特性を得ることを特徴とした請求項1又は請求項2記載のソレノイド。
- 前記ケース1には孔1aが設けられ、該孔1aには前記可動子5が貫通され、前記ケース1から前記可動子5の先端が突出していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のソレノイド。
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