図1は本発明の第1の実施の形態に係るパターン描画装置1の構成を示す図である。パターン描画装置1は、液晶表示装置用のガラス基板9(以下、単に「基板9」という。)に光を照射することにより、基板9上の感光材料(本実施の形態ではカラーレジスト)に複数のストライプ状のパターンを描画する装置である。パターンが描画された基板9は、後続の別工程を経て最終的には液晶表示装置の組立部品であるカラーフィルタとなる。
パターン描画装置1では、基台11上にステージ移動機構2が設けられ、ステージ移動機構2により基板9を保持するステージユニット3が基板9の主面に沿って主走査方向である図1中のX方向に移動可能とされる。基台11にはステージユニット3を跨ぐようにしてフレーム12が固定され、フレーム12にはヘッド部5およびマスクチェンジャ6が取り付けられる。
ステージ移動機構2は、モータ21にボールねじ22が接続され、さらに、ステージユニット3に固定されたナット23がボールねじ22に取り付けられた構造となっている。ボールねじ22の上方にはガイドレール24が固定され、モータ21が回転すると、ナット23とともにステージユニット3がガイドレール24に沿ってX方向に滑らかに移動する。
ステージユニット3は、基板9を直接保持するステージ32、基板9の主面に垂直な軸を中心にステージ32を回転するステージ回転機構33、ステージ32を回転可能に支持する支持プレート34、図1中のZ方向に支持プレート34を移動するステージ昇降機構35、および、ステージ昇降機構35を保持するベースプレート36を有し、ベースプレート36には上記のナット23が直接固定される。また、支持プレート34上には、ヘッド部5から照射される光を2次元配列された受光素子群である撮像デバイスにて受光するカメラ4が設けられる。なお、カメラ4の撮像面は基板9上の感光材料の表面と同じ高さに予め調整されている。
ヘッド部5は、ヘッド部5を支持するヘッド支持部50、ヘッド部5を副走査方向である図1中のY方向(すなわち、ヘッド部5のステージユニット3に対する相対移動方向に直交する方向)に移動するヘッド部移動機構501、基板9に向けて光を出射する光出射部51、複数の開口が配列して形成された2枚のマスク(以下、光出射部51に近い側から第1マスク53、第2マスク54と呼ぶ。)を有するマスク部52、マスク部52を通過して基板9に照射される光の照射領域を拡大または縮小する光学ユニット58、および、光学ユニット58を駆動する光学ユニット駆動部581を有する。ヘッド部移動機構501は、モータ502がボールねじ機構を駆動することによりヘッド部5をガイドレール503に沿ってY方向に移動する。
光出射部51は光ファイバ511、および、感光材料への光の照射のON/OFFを行うシャッタ512を介して水銀灯513に接続される。水銀灯513からの光は、光出射部51から出射されて光路上に配置された第1マスク53および第2マスク54(以下、第1マスクと第2マスクとを2枚1組で指す場合、「マスクセット」という。)の開口を順に通過し、光学ユニット58を介して基板9へと導かれる。
マスクチェンジャ6は、複数のマスクを格納するマスク格納部61、マスク格納部61をZ方向に移動する格納部昇降機構62、および、マスク部52に対してマスク格納部61に格納されたマスクを装着したり、マスク部52に装着されたマスクを取り外す2つの挿脱機構63を有する。
ステージ移動機構2、ステージユニット3,カメラ4、シャッタ512、ヘッド部移動機構501、マスク部52、光学ユニット58およびマスクチェンジャ6は制御部7に接続され、これらの構成が制御部7により制御されて、パターン描画装置1による基板9上へのパターンの描画が行われる。また、制御部7には入力部8が接続され、基板9上の複数の光照射領域のそれぞれのY方向の幅(すなわち、第1マスク53の開口が配列される方向の幅であり、以下、単に「幅」という。)、および、複数の光照射領域の間隔(すなわち、各光照射領域の中心から隣接する光照射領域の中心までの距離であり、以下、「ピッチ」という。)等の設定値が操作者により入力部8を介して制御部7に入力される。
図2は第1マスク53を、図3は第2マスク54をそれぞれ示す図である。第1マスク53には、光が通過する同一形状の複数の光通過領域である第1開口531が図2中のY方向に配列して形成される。複数の第1開口531のY方向の両側には開口を有しない長い遮光部532が設けられる(実際には、図2に示す長さよりも長い遮光部532が設けられる)。第2マスク54には、複数の第1開口531にそれぞれが対応する同一形状の複数の光通過領域である第2開口541が配列して形成される。第1開口531および第2開口541の形状は矩形であり、開口の長さ(すなわち、第1開口531および第2開口541の配列方向に直交する方向の寸法)および幅(すなわち、第1開口531および第2開口541が配列される方向の幅)は、第2開口541に比べて第1開口531の方が大きい。また、第1開口531のピッチ(すなわち、各第1開口531の中心から隣接する第1開口531の中心までの距離)および第2開口541のピッチは一定であり、第2開口541のピッチは第1開口531のピッチに等しい。第2マスク54においても複数の第2開口531のY方向の両側に開口を有しない長い遮光部542が設けられる。
図4は、マスク部52の構成を示す図である。マスク部52は、第1マスク53を保持する第1マスク保持部55、第2マスク54を保持する第2マスク保持部56(第1マスク保持部55と重なっている。)、および、図4中のY方向(すなわち、第1開口531および第2開口541が配列される方向)へと第1マスク53を移動するマスクスライド機構57を有する。なお、図4では第1マスク保持部55および第1開口531を太線にて示している。
第1マスク53および第2マスク54は、挿脱機構63(図1参照)により、それぞれ第1マスク保持部55および第2マスク保持部56に対して、図4中に示す(+X)側から(−X)方向に向かって装着される。
図4に示す状態では、第2マスク54は、各第2開口541が対応する第1開口531と重なるように第1マスク53に対して当接する。これにより、第1開口531と第2開口541との重なり合う領域(平行斜線を付して示す。)520は同一の幅となり、第1開口531および第2開口541に等しい一定のピッチにて、第1開口531および第2開口541と同じ数だけ配列される。光出射部51(図1参照)からの光は、第1開口531および第2開口541を順に通過して基板9上の感光材料へと導かれ、領域520に対応する形状およびピッチを有する複数の光照射領域に照射される。以下の説明において、実際の光の通過領域である領域520を「マスクセット開口」という。
なお、第2マスク54は第1マスク53に対して必ずしも物理的に当接する必要はなく、光学的に重ね合わされるのみでよい。例えば、第1マスク53と第2マスク54とは、焦点深度を考慮した分(例えば、数μm程度)だけ離れていてもよく、光学的に共役な位置に個別に配置されてもよい。
マスクスライド機構57は、第1マスク保持部55を保持するスライド枠571、スライド用モータ572、および、スライド用モータ572に接続されたボールねじ機構573を有し、制御部7の制御によりスライド用モータ572がボールねじ機構573を駆動すると第1マスク保持部55がスライド枠571に沿ってY方向に移動する。その結果、第1マスク保持部55に保持された第1マスク53もY方向に移動し、第1開口531と第2開口541との重なる状態が変化してマスクセット開口520の幅が変化し、基板9上の光照射領域の幅も変化する。このとき、マスクセット開口520のピッチは変化しないため、マスクセット開口520の間の(光が通過しない領域の)幅に対するマスクセット開口520の幅の比のみが変化する。
図示を省略しているが、第1マスク保持部55と第2マスク保持部56との間には離合機構が設けられており、第1マスク保持部55が移動する間は第2マスク保持部56がわずかに下降し、第1マスク53と第2マスク54とが離間する。これにより、第1マスク53と第2マスク54との間における損傷や発塵が防止される。
図5は、マスクスライド機構57により第1マスク53が(−Y)方向にさらに移動したマスク部52の状態(第1開口531のピッチ以上の距離を移動した状態)を示す図である。図5では、第1マスク53の(−Y)側の2つの第1開口531が、第2マスク54の遮光部542により塞がれ、第2マスク54の(+Y)側の2つの第2開口541が第1マスク53の遮光部532により塞がれる。その結果、マスクセット開口520の数は、図4の場合に比べて4個減少する。なお、実際には十分に長い遮光部532,542が設けられ、マスクセット開口20の減少可能な数は十分に多くされる。このように、パターン描画装置1では、第2マスク54に対する第1マスク53の移動量を開口のピッチ以上とし、複数の第1開口531の一部を第2マスク54で塞ぎ、複数の第2開口541の一部を第1マスク53で塞ぐことにより、マスクセット開口520の数を最大数から偶数個だけ減少させることが可能とされている。そして、複数の第1開口531の少なくとも一部および複数の第2開口54の少なくとも一部を順に通過した光が感光材料上の複数の光照射領域(原則として複数であるが、1個とすることも可能である。)へと照射される。
図6は、基板9の感光材料上に形成される複数の光照射領域90の一部を示す図である。複数の光照射領域90はそれぞれマスクセット開口520(図4参照)に対応しており、複数の光照射領域90の幅は同一となり、かつ、ピッチも一定となる。
既述のように、光照射領域90の幅およびピッチは、図1中に示す第2マスク54とステージユニット3との間に配置される倍率変更機構である光学ユニット58により拡大および縮小可能とされる。例えば、制御部7が光学ユニット駆動部581を制御して光学ユニット58の倍率が増加すると、図6中に実線にて示す状態から2点鎖線にて示す状態へと光照射領域90が変化する。また、既述のようにマスクスライド機構57によりマスクセット開口520の数が変更されることにより、光照射領域90の数も変更可能とされる。
図7は、制御部7の構成、および、制御に関する情報の流れを示すブロック図である。制御部7中の各種構成は機能を示しており、実際にはプログラムに従って演算処理を行うCPU、メモリ、専用の演算回路、インタフェース等により実現される。制御部7は主たる構成として、光照射領域90の幅およびピッチを制御する照射領域制御部71、および、基板9上の感光材料に対する光照射領域90の走査を制御する走査制御部72を有する。
照射領域制御部71は、カメラ4からの画像信号に基づいて複数の光照射領域90のそれぞれの幅を検出する幅検出部711、および、ピッチを検出するピッチ検出部712、光照射領域90の幅を制御する幅制御部713a、ピッチを制御するピッチ制御部714、光照射領域90の数を決定する光照射領域数決定部713b、並びに、光照射領域90の幅およびピッチの調整に必要な情報を記憶する記憶部715を有する。
記憶部715には、マスク部52に装着されるマスクセットと、そのマスクセットおよび光学ユニット58によって実現可能な光照射領域90の幅およびピッチとの対応関係を示すマスクテーブル716が、予め作成されて記憶されている。また、記憶部715には、光学ユニット58の倍率と合焦位置との対応関係を示すフォーカステーブル717、入力部8から入力された光照射領域90の幅の設定値(以下、「設定幅」という。)718a、ピッチの設定値(以下、「設定ピッチ」という。)718b、および、感光材料上に描画されるストライプ状の全パターンの数である設定ストライプ数718cが記憶される。
照射領域制御部71には、ステージ移動機構2、ステージ昇降機構35、カメラ4、シャッタ512、マスクスライド機構57、光学ユニット駆動部581、マスクチェンジャ6および入力部8が接続され、カメラ4および入力部8からの情報に基づき照射領域制御部71がこれらの構成を制御することにより光照射領域90の幅およびピッチが調整され、必要に応じて光照射領域90の数が変更される。
走査制御部72には、ステージ移動機構2、ステージ回転機構33、ヘッド部移動機構501およびシャッタ512が接続され、走査制御部72がこれらの構成を制御することにより、感光材料に対する光の照射および光照射領域90の走査が行われる。
図8は、パターン描画装置1による感光材料へのパターンの描画動作の流れを示す図である。まず、設定幅718a、設定ピッチ718bおよび設定ストライプ数718cが操作者により入力部8から入力され、照射領域制御部71により受け付けられて記憶部715に記憶される(ステップS11)。続いて、制御部7の制御により、光照射領域90の幅およびピッチが設定幅718aおよび設定ピッチ718bに等しくなるように調整される(ステップS12)。なお、最終の描画走査時以外は、マスクセット開口520の数の数は最大とされる。
図9および図10は、光照射領域90の幅およびピッチを調整する動作(ステップS12)の流れの詳細を示す図である。設定幅718aおよび設定ピッチ718bが受け付けられると、まず、照射領域制御部71が、マスクテーブル716に基づいて、マスク部52に装着されているマスクセットが設定幅718aおよび設定ピッチ718bに対応可能かどうかを判断し(ステップS120)、対応不可能な場合は、照射領域制御部71の制御により、第1マスク53および第2マスク54の少なくともいずれか一方が他のマスクと交換される(ステップS1201)。
マスクが交換される際には、まず、図1中に示すマスク部52に装着されている第1マスク53、第2マスク54、および、マスクチェンジャ6のマスク格納部61に格納されるマスクのうち、設定幅718aおよび設定ピッチ718bに対応可能なマスクの組み合わせが、マスクテーブル716に基づいて選択される。
この選択の結果、例えば、第1マスク53のみが他のマスクに交換される場合は、照射領域制御部71の制御により図1中に示す格納部昇降機構62が駆動されて、マスク格納部61の空きスペースが第1マスク保持部55と同じ高さになるようにマスク格納部61がZ方向に移動される。続いて、挿脱機構63により第1マスク保持部55から第1マスク53が取り外されてマスク格納部61の空きスペースに格納される。次に、格納部昇降機構62が制御されて選択されたマスクが第1マスク保持部55に対向する高さまで移動され、挿脱機構63によりこのマスクが第1マスク保持部55に装着される。
第2マスク54のみの交換が行われる場合も格納部昇降機構62および挿脱機構63により第1マスク53の場合と同様に行われる。第1マスク53および第2マスク54の双方の交換が行われる場合は、これらのマスクの交換が順番に行われる。なお、第1マスク53または第2マスク54のみの交換は、マスクセット開口520の幅の調整範囲を変更する場合に行われ、第1マスク53および第2マスク54の交換は、マスクセット開口520のピッチを変更する場合に行われる。
マスクセットの準備が完了すると、照射領域制御部71によりステージ移動機構2が制御されて、支持プレート34上に設けられたカメラ4がヘッド部5の真下に位置するまでステージユニット3が移動され(移動後のカメラ4およびステージ32を図1中に2点鎖線にて示す。)(ステップS121)、シャッタ512が開かれてカメラ4への光の照射が開始される(ステップS122)。これにより、感光材料に代えてカメラ4の撮像面上の光照射領域(図6と同様に「光照射領域90」と呼ぶ。)に光が照射される。
次に、カメラ4が撮像を行うことにより、複数の光照射領域90の状態を示す画像が取得され(ステップS123)、カメラ4から照射領域制御部71へと画像データが送信され、ピッチ検出部712における演算処理により複数の光照射領域90のピッチが検出される(ステップS124)。なお、本実施の形態ではピッチは一定であるため、全ての光照射領域90がカメラ4により検出される必要はない。検出結果であるピッチ(以下、「検出ピッチ」という。)は、記憶部715に記憶される設定ピッチ718bと比較され(ステップS125)、設定ピッチ718bと検出ピッチとが等しくない場合は、ピッチ制御部714により、設定ピッチ718bと検出ピッチとに基づいて光学ユニット駆動部581が制御され、光学ユニット58の倍率が変更されて光照射領域90のピッチが変更される(ステップS1251)。
ピッチの調整が完了すると、光学ユニット58の倍率およびフォーカステーブル717に基づき光学ユニット58の合焦位置がカメラ4の撮像面に一致しているか(すなわち、合焦位置が基板9上の感光材料に一致しているか)が判断され(ステップS126)、一致していない場合は、制御部7によりステージ昇降機構35が制御され、支持プレート34がZ方向に移動してステージ32と光学ユニット58との間の距離が変更される(ステップS1261)。これにより、光学ユニット58と感光材料との間の距離が変更され、光学ユニット58の合焦位置と感光材料の表面とが一致する。なお、光学ユニット58のカメラ4側のテレセントリック性は倍率が変更されても維持されており、ステージ32の昇降により光照射領域90のピッチは変化しない。また、フォーカステーブル717を用いずに、撮像およびステージ32の昇降を繰り返してフォーカス調整が行われてもよい。
ピッチ調整およびフォーカス調整の終了後、幅検出部711が光照射領域90の画像から複数の光照射領域90のそれぞれの幅を検出する(ステップS127)。なお、本実施の形態のように各光照射領域90の幅が一定である場合は、1つの光照射領域90の幅を検出することにより全ての光照射領域90の幅を取得することができる。
続いて、記憶部715に記憶される設定幅718aと、幅検出部711による検出結果である各光照射領域90の幅(以下、「検出幅」という。)とが比較される(ステップS128)。設定幅718aと検出幅とが等しくない場合は、幅制御部713aの制御により、設定幅718aと検出幅とに基づいてマスクスライド機構57が駆動されて第1マスク53を移動し、マスクセット開口520の幅が変更されて光照射領域90の幅が調整される(ステップS1281)。設定幅718aと検出幅とが等しくされると、シャッタ512が閉じられて光の照射が停止する(ステップS129)。
光照射領域90の幅およびピッチの調整が終了すると、走査制御部72によりステージ移動機構2およびヘッド部移動機構501が制御されてステージ32に対してヘッド部5が所定の描画開始位置へと移動する(図8:ステップS13)。具体的には、ステージ32が(+X)側へと移動し、ヘッド部5が(−Y)側へと移動する。ヘッド部5からは光の出射が開始され(ステップS14)、基板9の感光材料上の光照射領域90に光が照射される。
その後、図1中の(−X)方向へとステージ32の移動が開始され(ステップS15)、光照射領域90が図1中の(+X)方向に感光材料に対して相対的に一定速度にて走査(主走査)されることにより、設定幅および設定ピッチを有するストライプ状の複数のパターンが基板9上の感光材料に描画される。光照射領域90の走査が所定の終了位置に到達すると、ステージ32の移動が停止し(ステップS16)、光の照射が停止する(ステップS17)。
なお、光の照射の開始(ステップS14)とステージ32の移動の開始(ステップS15)とを同時に行うと、パターンの始点近傍の部位において露光量が不足してパターンのエッジの精度が低下する場合は、ステップS14とステップS15との間で適当なインターバルが設けられ、走査を停止した状態で光の照射が行われる。また、パターンの終点近傍についても同様に、ステージ32の移動の停止(ステップS16)と、光の照射の停止(ステップS17)との間で適当なインターバルを設けることにより、終点近傍のエッジの精度を向上することができる。
感光材料に対する1回目の主走査が終了すると、基板9に対して同方向に伸びるストライプ状のパターンの描画が繰り返されるか否か(すなわち、次の走査の有無)が確認され、次の主走査が有る場合にはステップS13へと戻ってステージ32が次の描画開始位置へと移動し(すなわち、副走査され)、光の照射およびステージ32の移動(ステップS13〜S17)が繰り返される(ステップS18)。光照射領域90の主走査時のステージ32の移動は(+X)方向と(−X)方向とに交互に行われ、2回目以降のステップS13では、ヘッド部移動機構501がヘッド部5を所定の距離だけ(+Y)方向へと移動するのみでヘッド部5が描画開始位置へと移動する。
最大数のマスクセット開口520による描画が繰り返され、最後の描画に移行する際には、光照射領域数決定部713bにより光照射領域90の数を変更する必要があるか否かが確認される(ステップS181)。すなわち、描画すべき全ストライプ数である設定ストライプ数718cをマスクセット開口520の最大の個数で除算し、商の数だけ主走査方向へのパターン描画が繰り返された後、剰余が存在する場合は、光照射領域90の数を変更した最後の描画が必要であると判断され、剰余がない場合は既に全ての主走査が完了したものと判断される。そして、図5に示すようにマスクスライド機構57が第1マスク53を開口のピッチ以上の距離だけ移動することにより、マスクセット開口520の数が減らされる(ステップS182)。なお、マスクセット開口520の数は偶数個だけ減少するが、最後の描画における光照射領域90の数が偶数であるか奇数であるかに合わせて、マスクセット開口520の最大個数が偶数または奇数となるマスクセットの選択が予め行われている(図9:ステップS1201)。
第1マスク53を大きくスライドさせる動作が完了すると、ステップS12に戻って光照射領域90の幅およびピッチの再調整が行われる。その後、ステップS13〜S17の動作が行われ、必要数のストライプ状のパターンが描画される。基板9上の感光材料全体にストライプ状のパターンが描画されるとパターン描画装置1による描画動作が終了する。なお、感光材料がカラーレジストである場合は、図8中のステップS19は実行されない。
パターンが描画された基板9はパターン描画装置1から搬出され、別途現像されて基板9上に残存した感光材料はカラーフィルタのサブ画素とされる。この場合、感光材料は現像時に露光部分(すなわち、光が照射された部分)が残るネガ型のカラーレジストが一般的に用いられる。その後、カラーレジストの塗布、パターン描画装置1による描画、および、現像が繰り返され、基板9上にR(赤)、G(緑)、B(青)の3色のサブ画素が形成される。さらに、透明電極の形成等の工程を経て基板9が液晶表示装置に用いられるカラーフィルタとなる。
図8中のステップS19は、格子状のパターンを基板9上に描画する際に実行される。具体例としては、パターン描画装置1がカラーフィルタのブラックマトリックスの描画に使用される際に実行される。
格子状のパターンが描画される場合、ステップS11〜S18により1方向のストライプ状のパターンの描画が完了すると、描画済みのパターンと直交する方向のパターンの描画の有無が確認され(ステップS19)、制御部7によりステージ回転機構33が駆動されて、ステージユニット3に保持された基板9の主面に垂直な軸を中心にステージ32が90°回転する(ステップS191)。これにより、基板9上の感光材料に対して光照射領域90の主走査方向が相対的に90°変更される。
走査方向変更後は、ステージユニット3を撮像位置へと移動して光照射領域90の幅およびピッチを調整し(ステップS12)、以下、ステージ32を描画開始位置へと移動してストライプ状のパターンを描画する動作が必要な回数だけ繰り返される(ステップS13〜S18)。また、最後の描画時には必要に応じて光照射領域90の数が変更される(ステップS181,S182)。以上のように、パターン描画装置1では、ステージ32を回転することにより、基板9上の感光材料に格子状のパターンを描画することも可能とされている。
以上、パターン描画装置1について説明してきたが、パターン描画装置1では、従来のラスタ方式に比べて面積が大きい複数の光照射領域90に光を照射するため、描画を高速に行うことができる。また、第1マスク53と第2マスク54とにより形成されるマスクセット開口520の幅を変更し、光学ユニット58により光照射領域90を拡大または縮小することにより、描画されるパターンの幅およびピッチを容易に変更することができる。これにより、高分解能にてストライプ状(または、格子状)のパターンを高速に(すなわち、短時間で)描画することができる。
例えば、幅が20ないし30μm、ピッチが300ないし1500μmのストライプ状のパターンを、1μmの分解能にて1辺が1mの正方形の基板上に描画する場合、ラスタ方式にて1つの光ビームを走査するのみでは光ビームの変調速度の制限により描画に長時間を要することとなり、多数のヘッドを配列しようとしても十分なスペースを確保することができない。本実施の形態に係るパターン描画装置1では、例えば、複数の光照射領域90を100mm幅の範囲内に配列することにより、上記条件のパターンを数十秒で描画することが可能となる。
また、パターン描画装置1では光照射領域90を撮像して得られたデータと、予め入力された設定幅718aおよび設定ピッチ718bとに基づいて、光照射領域90の幅およびピッチ(すなわち、描画されるパターンの幅およびピッチ)を自動的に調整することができる。さらに、マスクチェンジャ6によりマスクを交換することにより、描画できるパターンの幅およびピッチの範囲を拡大して描画の自由度を向上することも実現される。
また、パターン描画装置1では、ヘッド部5が副走査されることにより大型の基板9に対して容易に描画を行うことができる。さらに、第1マスク53を第2マスク54に対して相対的に開口のピッチ以上の距離だけ移動することにより、他の遮光部材を利用することなくマスクセットのみでマスクセット開口520の数を減少させることができる。その結果、簡素化された構造で高分解能にてパターンを高速で描画することができる。
次に、第2の実施の形態に係るパターン描画装置について説明する。第2の実施の形態に係るパターン描画装置は、図1に示すパターン描画装置1において水銀灯513およびシャッタ512に代えてパルスレーザが使用され、ステージ回転機構33が省略されたものとなっている。その他の基本構成は図1と同様であり、以下の説明において同符号を付す。第2の実施の形態では、ステージユニット3にレーザ測長等の高精度のステージ位置測定機構が設けられ、制御部7がステージ位置測定機構からの信号を受けてパルスレーザを制御することにより、ステージ32の移動と光照射のON/OFFとが同期される。
パルスレーザとしては、エキシマレーザであって波長が308nmまたは351nmのレジストの分光感度が高いものが使用される。これにより、レーザの可干渉性により発生するムラや粒状パターン(いわゆる、スペックルパターン)を軽減することができる。
パルスレーザを光源として利用することにより、パターン描画装置では短時間(20〜30ナノ秒)だけ光を感光材料に照射することが可能となる。基板9上のパターンを描画すべき位置を光照射領域が通過する際には、制御部7から信号がパルスレーザの駆動回路に送信され、これにより、図11に例示するように光照射領域の形状に合わせた複数の矩形のパターン91の描画が実現される。なお、ストライプ状のパターンを描画する際には、ステージ32を移動しつつパルスレーザからのパルス光の出射が連続的に繰り返し行われる。
このとき、第1の実施の形態と同様に第1マスク53を第2マスク54に対して相対的に開口のピッチ以上の距離だけ移動することにより、最後の描画の際の光照射領域90の数が変更される。これにより、簡素化された構造で高分解能にてパターンを高速で描画することができる。
パルスレーザが用いられる場合は、第1マスク53および第2マスク54に代えて主走査方向に垂直な方向に長いスリット状のマスクを準備し、ステージ32の移動に同期してパルスレーザを瞬間的にONとすることにより、基板9上の感光材料に主走査方向に垂直な方向に伸びるストライプ状のパターンを描画することも可能となる。その結果、主走査方向(X方向)に伸びるストライプ状の複数のパターンの描画、矩形パターン描画、および、主走査方向に垂直な方向(Y方向)に伸びるストライプ状の複数のパターンの描画をステージ32のX方向への移動(およびヘッド部5のY方向の移動)を繰り返しつつ行うことにより、感光材料上に多様なパターンを描画することが可能となる。例えば、図12に示す複雑な形状のブラックマトリクス92の描画も可能となる。
また、パルスレーザを用いる場合は、マスクセット開口の形状を長方形以外の形状とすることにより、さらに多彩なパターンを描画することができる。例えば、1つのマスクセット開口の形状を副走査方向に頂部を向ける略V字状(ただし、V字の2辺が開く角度は原則として鈍角であるものとする。)とし、横向きの略V字状の形状を縦方向(主走査方向)に繰り返し描画することにより、主走査方向に伸びるジグザグのパターンを描画することもできる。そして、この場合も、2つのマスクの重なりを開口のピッチ以上の距離だけ変更することにより、マスクセット開口の数を変更することができる。
以上のように、第2の実施の形態に係るパターン描画装置では、光の照射を高速にON/OFFする光源が設けられ、光源がステージ32の移動に同期して制御されるため、様々な規則的なパターンを高速に描画することができる。また、第1の実施の形態と同様に、2つのマスクを利用して複数の光照射領域の幅およびピッチを容易かつ高精度に変更することができ、光照射領域の数も容易に変更することができるため、描画すべきパターンの幅やピッチ、さらに、パターンの数(ストライプ数)が変更された場合であっても容易に対応することができる。
第1および第2の実施の形態では、カラーフィルタの製造の際に行われるパターン描画を例示したが、本発明に係るパターン描画装置は、ストライプ状または規則的な様々なパターンを高速に描画することができるため、このようなパターンの描画が求められる各種フラットパネル表示装置の製造の他の様々な工程にも適している。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、第1の実施の形態に係るマスク部52では、マスクセット開口520がY方向に一列だけ設けられたが、ピッチや開口のY方向の長さが互いに異なる複数列のマスクセット開口520が設けられてもよい。この場合、例えば、それぞれがY方向に伸びる複数列のマスクセット開口520はX方向に並べられ、マスクセットが光源部に対してX方向に移動されることにより、使用されるマスクセット開口520の列が切り替えられる。これにより、第1マスク53および/または第2マスク54を他のマスクと交換する回数を低減することができ、多種類のパターンの描画に迅速に対応することができる。
また、第1マスク53の移動によるマスクセット開口520の数の変更範囲は、1個から最大数とされる必要ななく、2以上の所定の最小数から最大数の間とされてもよい。この場合、最後の描画時の光照射領域90の数が最小数を下回らないように、第1マスク53および第2マスク54の開口の数がマスクの設計時に調整されたり、あるいは、最後の描画のみならず、複数回の描画において最大数でない個数のマスクセット開口520を用いることにより、適切に描画を行うことができる。
第1マスクおよび第2マスクの第1開口と第2開口との幅および長さは図4に例示したものには限定されず、第2開口の方が大きくてもよく、第1開口と第2開口とで等しくてもよい。また、各マスクの開口形状は矩形に限定されるわけではなく、第1の実施の形態の場合は光照射領域の主走査方向に沿うエッジが互いに平行な開口であればストライプ状のパターンを適切に描画することができ、第2の実施の形態の場合はさらに様々な形状の開口が利用可能である。
図13は、パターン描画装置1に用いられるマスクの他の好ましい例を示す図である。第1マスク53aおよび第2マスク54aは櫛状であり、図13中に示すY方向(副走査方向)に配列形成された櫛歯の間隙に相当する光通過領域を重ね合わせることにより、平行斜線を付して示すマスクセット開口520が形成されてもよい。この場合、第1マスク53a、第2マスク54aの両端部に切り欠きを有しない遮光部532,542が設けられ、第1マスク53aが第2マスク54aに対して相対的に開口のピッチ(すなわち、切り欠きのピッチであり、櫛歯のピッチに等しい。)以上の距離だけ移動することにより、遮光部532,542が第1マスク53a、第2マスク54aの切り欠きを塞いでマスクセット開口520の数が変更される。
また、図14に示すように、第1マスク53b(太線にて図示)および第2マスク54bは、光通過領域となる間隙を設けてY方向に配列された複数の矩形の板を配列したものであってもよい。なお、第1マスク53bの間隙と第2マスク54bの間隙とが重なり合うマスクセット開口520(図14中に平行斜線を付す。)がX方向に長すぎる場合には、光出射部51から出射される光は光束断面がY方向に長い線状光とされる。図14の場合も、第1マスク53b、第2マスク54bの両端部にY方向に長い板状の遮光部532,542が設けられ、第1マスク53aが第2マスク54に対して大きく移動することにより、遮光部532,542が第1マスク53b、第2マスク54bの隙間を塞いでマスクセット開口520の数が変更される。
第2マスクに対する第1マスクの移動は相対的であればよく、第1マスクに代えて第2マスクが移動してもよく、両マスクが移動してもよい。また、第1マスクと第2マスクとの相対移動は、カメラ4が取得した画像をモニタに映し出して作業者により手動で行われてもよい。
カメラ4は必ずしも支持プレート34上に設けられる必要はなく、ステージユニット3の外部に固定されてヘッド部5がカメラ4の上方まで移動してもよい。また、光照射領域の撮像は、CCD等の撮像デバイスに直接光を照射するのではなく、所定の照射範囲を間接的に撮像することにより行われてもよい。さらに、光照射領域の幅やピッチの検出は、副走査方向に配列された1次元の受光素子配列により行われてもよい。
入力部8に入力される設定幅および設定ピッチは、光照射領域の幅およびピッチを実質的に表現するものであればよく、例えば、幅またはピッチと、ピッチに対する幅の比とが入力されてもよい。あるいは、基板9の型式が入力されることにより制御部7にて幅およびピッチが特定されてもよい。
第1の実施の形態では、ステージ32を90°回転することにより格子状のパターンの描画が可能とされるが、ヘッド部5を2組設けて互いに直交する方向にストライプ状のパターンの描画が行われてもよい。この場合、ステージ回転機構33は不要となる。
上記実施の形態ではネガ型の感光材料に言及したが、現像時に露光部分が除去されるポジ型の感光材料が用いられてもよい。さらに、感光材料は現像工程を伴わない他の種類のものであってもよい。
また、既述のように、本発明に係るパターン描画装置はフラットパネル表示装置(液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置等)に係る様々なパネルの製造に特に適しているが、半導体基板やプリント配線基板、あるいは、フォトマスク用のガラス基板等への規則的な微細パターンの描画にも適している。