JP4416095B2 - 光硬化性シート状材料、積層成形材料及びそれを用いる補強方法 - Google Patents

光硬化性シート状材料、積層成形材料及びそれを用いる補強方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多種のモノマーを反応性希釈剤として使用でき、増粘時間が短く取り扱い性、光硬化性、生産性に優れた、紫外線および可視光によって硬化可能な光硬化性シート状材料、積層成形材料及びそれを用いる補強方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、不飽和ポリエステル樹脂等をシート状成形材料とする場合、樹脂組成物を増粘させてBステージ化させている。Bステージ化には、例えば、酸化マグネシウムのような金属酸化物を増粘剤として用いたり、イソシアネートによる増粘、光重合開始剤を添加して部分重合させる増粘、結晶性ポリエステルによって増粘させる方法などが知られている。
【0003】
▲1▼光硬化性材料の例として、酸化マグネシウムを用いた特開昭63−186744号公報、特開平3−106942号公報がある。
▲2▼イソシアネートを用いたシート状材料としては、特開昭60−123538号公報等が開示されている。
▲3▼紫外線照射によって一部を光重合させシート化する方法は、特公昭58−21927号公報、特開昭56−139535号公報、特開昭57−111322号公報等が開示されている。
▲4▼結晶性ポリエステルによって増粘させる方法は、特開昭58−67709号公報や特開平5−1123号公報に開示されている。
【0004】
▲5▼さらに、近年、検討されてきたアクリル樹脂微粉末を用いた増粘の具体例として、不飽和ポリエステル樹脂でアクリル微粉末による増粘性材料として、特開平5−171022号公報、特開平9−95519号公報、特開平9−174698号公報、特開平9−174781号公報、特開平9−176331号公報などが挙げられる。また、アクリル樹脂に対しては、特開平5−32720号公報、特開平5−171022号公報、特開平6−298883号公報、特開平6−313019号公報、特開平7−188505号公報、特開平8−225705号公報、特開平10−67906号公報、特開平10−265639号公報、特開平10−279765号公報、特開平10−287716号公報等が開示されている。これらには、光硬化性シート材料の記載はない。
これらは、成形性、低収縮性、成型時のクラック防止、外観、増粘安定性、混練性、取り扱い性を改善する目的で使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来用いられている増粘方法の場合、例えば、金属酸化物は、スチレンおよびアクリルモノマー等重合性モノマーに対してほとんど溶解せず、通常は分散させた状態で使用しており、樹脂組成物は濁り、透明性に劣ることから、光硬化性材料として光硬化性に劣っている。また、その増粘性はポリマー成分に活性OH基やCOOH基が必要であり、ビニルエステル樹脂等COOH基を有しない樹脂には使用できないという限界がある上、水分によって増粘性が左右され、安定なシート状材料を得るための制御が難しいという欠点を有している。
【0006】
イソシアネート増粘の場合は、溶解性は良いものの、金属酸化物以上に水分による増粘阻害を受けやすいために増粘の制御が難しい。さらには、残存のイソシアネートがある場合に、かぶれなどを起こす場合があり、取り扱い性が良好とは言えない。
【0007】
光重合による増粘の場合、最終硬化に光を用いることもあり、増粘と硬化の段階を制御することが難しく、保存安定性に劣るという欠点を有している。
【0008】
また、特開平5−171022号公報に開示されているようなアクリル樹脂粉末を用いて増粘させた場合、不溶解部分が残ることから濁りが残り、透明性に劣る為に光硬化性が低下するなどの欠点を有している。
【0009】
本発明の目的は、多種のモノマーを反応性希釈剤として使用でき、増粘時間が短く取り扱い性、光硬化性に優れたシート状材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
即ち、本発明は、(a)重合体(b)と相溶或いは重合体(b)を膨潤する、モル牽引定数Gを用い式「SP=Σ(G)/分子量」で算出された相溶化パラメーター(SP)が8.1〜10.0であるアクリル系重合性モノマー、(b)乳化重合法によって得られた、10万以上の重量平均分子量と300〜5000オングストロームの粒子径とを有するポリメチルメタクリレートを含有するエマルジョンを乾燥して得られる粉末状の重合体、(c)光硬化剤、(d)繊維強化材、ならびに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなるラジカル硬化性重合体樹脂(e)からなることを特徴とする光硬化性シート状材料であること、アクリル系重合性モノマー(a)100重量部に対し、該重合体(b)を1〜100重量部含有すること、更に、熱可塑性樹脂シートと、前記の光硬化性シート状材料とを積層してなる積層成形材料、成形物の表面に前記の光硬化性シート状材料を用いることを特徴とする補強方法を提供するものである。
【0012】
次に本発明を詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル系重合性モノマー(a)は、重合体(b)と相溶或いは重合体(b)を膨潤するものである。この性質は実質的に(a)の相溶化パラメーター(以下SP、SP値と略)が、8.1〜10.0であることで得られる。相溶化パラメーター(SP値)は、下記表1、表2のモル牽引定数Gを<式1>に当てはめて、算出されたアクリル系重合性モノマー(a)単独、又は、重合性モノマー(a)の混合物の計算値である。その値の計算例を具体的に次に示した。
【0014】
<式1>
SP=Σ(G)/分子量
【0015】
【表1】
モル牽引定数G
Figure 0004416095
【0016】
【表2】
構造様式によるG
Figure 0004416095
【0017】
<SP値の計算例>
メチルメタクリレート(MMA)の場合:
Figure 0004416095
SP=Σ(G)/分子量であるから、
ΣG(MMA) = 148.3×2 ((CH3-)×2)+126.54×1 ((CH2=)×1)+84.51×1((>C=)×1)+326.58×1((-COO-)×1) =834.23
従って、SPは、
SP=ΣG(MMA)/分子量=834.23/100=8.34
【0018】
混合液の場合:
SP(MMA)=8.34
SP(NPGDMA)=8.18
SP(IBMA)=7.93
MMA/NPGDMA/IBMA=100/50/50なら
SP(混合液)=8.34×(100/200)+8.18×(50/200)+7.93×(50/200)=8.20
【0019】
本発明では、重合性モノマー(a)のSP値が、8.1〜10.0範囲であることが重要である。この範囲から外れると、材料の増粘性が十分得られない。
【0020】
アクリル系重合性モノマー(a)としては、具体例としてメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸又はアクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−、iso−、又はtert−ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、トリデシル又はステアリル、さらには脂肪族アルコール基を含有するもの)が挙げられる。
【0021】
また、ビニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート又はビニルベンゾエートなどのビニルエステルも用いることができる。
【0022】
また、α、β−不飽和ジエステルとして、例えば、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジシクロヘキシルマレエート、および同様の残基を有するフマレートを用いることもできる。
【0023】
さらに、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレンなども使用することができる。
【0024】
また、多官能重合性モノマーを併用することもでき、例えば、エチレングリコール、1,2−および1,3−プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はOH末端ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなど)のアクリル酸またはメタクリル酸のエステルやジビニルベンゼンのような芳香族系モノマーも使用できる。
【0025】
その他、好適なものとしては、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと、ジ−またはポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸、オリゴエステル、ポリエステル、ジ−又はトリイソシアネート、イソシアネート基官能性のポリウレタンプレポリマーとの反応生成物や、アクリル酸又はメタクリル酸とジ−またはポリグリシジルエーテルとの反応生成物が挙げられる。
【0026】
これらアクリル系重合性モノマー(a)のうち、モル牽引定数Gから算出されたSPが8.1〜10.0であるものであれば単独で使用可能である。また、8.1より値の小さいモノマー、10.0より値の大きいモノマーでも、各モノマーの重量分率とSPの積の総和が8.1〜10.0となる条件であれば、2種以上のアクリル系重合性モノマー(a)を混合して用いることもできる。
【0027】
重合体(b)は、ポリメチルメタクリレート、又はメチルメタクリレートを主成分とする重合体の粉末状として得られるもので、好ましくは重量平均分子量10万以上、更に10万〜300万のものである。重合体(b)は、本発明の材料中の重合性モノマー(a)にゆっくり溶けることにより増粘剤として働くものである。
【0028】
重合体(b)を構成するモノマーとしてのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等があげられる。また、ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などを用いることもできる。
【0029】
また、これらと共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物、メタアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルアクリレートなども挙げることができる。
【0030】
重合体(b)には、アクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体と共にラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体を使用することもできる。架橋性単量体の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレンジメタクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレートなどが例示される。該架橋性単量体の量は、共重合体中0.5重量%を超えてはならない。なぜなら、架橋度が高すぎ、マトリックス樹脂に膨潤せず、シートの透明性を低下させることで光硬化性も低下してしまうためである。
【0031】
該重合体(b)の製造方法は、限定されるものではないが、通常は乳化重合法によりエマルジョンとして製造する。すなわち、成分となる単量体を、乳化剤の存在下に重合開始剤として過酸化物開始剤、レドックス開始剤などのラジカル重合開始剤を用いて乳化重合を行いエマルジョンを得る。このような乳化重合により粒径が、好ましくは300〜5000オングストロームの粒子状重合体を含有するエマルジョンを製造する。
【0032】
乳化重合法により得られた共重合体からなるエマルジョンを通常、多翼型回転ディスク式、円盤型回転ディスク式、ノズル式などで噴霧乾燥することにより、粉末状の重合体(b)が得られる。この乾燥の場合、一般に該重合体は噴霧液滴単位で凝集し、好ましくは20〜100μm程度の凝集粒子を形成する。凝集の程度は乾燥条件によって異なり、乾燥後に粉砕してほぐす工程をもうけることもできる。また、乳化重合後に塩析法や凍結法によりラテックス粒子を凝固分離し、脱水して調製したウェットケーキを流動床などで乾燥して、凝集粒子状として得ることもできる。
【0033】
該重合体(b)は、モノマー(a)あるいはモノマー(a)混合物100重量部に対し、1〜100重量部の範囲であることが好ましい。より好ましくは10〜50重量部の範囲である。これは、1重量部未満であれば、増粘が不足し、ベタツキなど取り扱い性に問題が生じ、また、100重量部を超える場合は、添加直後から粘度が高くなり混練困難となるか、あるいは混練できる場合でも、増粘後に不溶分として該重合体が残り、シートの透明性を損なうのみでなく、光硬化後の成型品の曲げ強度や衝撃強度が低下するといった問題が生じるためである。
【0034】
該重合体(b)は、単にアクリル系重合性モノマー(a)に溶解あるいは膨潤するだけでなく、添加し混合攪拌中および攪拌直後に固化しないものでなければならない。その25℃における増粘速度は、混合攪拌から5分以内で1000ポイズを超えてはならない。なぜなら、構成成分のひとつである繊維強化材(d)に含浸させる工程において、10分以内に1000ポイズを超えた場合、繊維強化材(d)との界面の接着力が無くなり、強度が低下する他、界面に残存する空隙のため、全体が白濁し、光の透過率が大幅に減少することで、本発明の光硬化性シート状材料の光硬化性が大幅に遅れる為である。
【0035】
さらには、上記条件に加え、25℃における粘度が24時間以内に1000ポイズを超えるような重合体でなければならない。なぜなら、繊維強化材(d)に含浸させた後、シート状に保持する場合に、繊維強化材(d)含有率や単位重量を制御できず、所望の性能を得ることができなくなる。
【0036】
光硬化剤(c)は、紫外部から可視部領域の特定波長の光によって分解し、ラジカルを発生し得る化合物で、例えばジアセチル、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジクロルフェノキシアセトフェノン、ヒドロキシルイソブチルケトン、ベンジルジメチルケタール、クロルチオキサントン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ケタール、オニウム塩などに分類される有機化合物の1種或いは混合物、および必要に応じてアミン等の助触媒を配合したものが用いられる。その添加量は、モノマー(a)と重合体(b)との合計量に対して、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0037】
繊維強化材(d)としては、通常強化(補強)材として用いられるものでよく、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維が挙げられる。これらの形態としては、例えば、チョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービング、織物状などが挙げられる。これらの繊維強化材(d)は樹脂組成物の粘度や得られる成形品の強度などを考慮して選ばれる。繊維強化材(d)の使用量は、モノマー(a)と重合体(b)の合計100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部である。
【0038】
本発明では、更に成形品とした際の物性を考慮すれば、ラジカル硬化性重合体樹脂(e)を添加するのが好ましい。重合体樹脂(e)としては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。これらの樹脂(e)は、通常重合性不飽和モノマー(a)を含む組成物で、その混合割合は、好ましくは重合体樹脂:重合性単量体=30〜80重量%:70〜20重量%である。その添加量は、モノマー(a)と重合体粉末(b)との合計100重量部に対して、好ましくは0〜80重量部である。その際、SP値が8.1〜10の範囲となるようにしなければならない。
【0041】
更に、本発明のビニルエステル樹脂とは、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とも言われる、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂単独又はビスフェノールタイプのエポキシ樹脂とノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒の存在下で反応して得られるものをいう。
【0043】
本発明のアクリル系重合性モノマー(a)と重合体(b)との組成比は、好ましくは(a):(b)=95〜10重量%:5〜90重量%である。より好ましくは95〜50重量%:5〜50重量%である。光硬化剤(c)は、これら(a)と(b)合計量に対して好ましくは0.001〜1重量%、繊維強化材(d)は、これら(a)と(b)合計100重量部に対して、好ましくは10〜100重量部である。重合体樹脂(e)は、(a)と(b)合計100重量部に対して好ましくは0〜80重量部である。
【0044】
上記組成物の粘度が高い場合には、減粘剤を使用することもできる。減粘剤としては、得られる組成物の粘度を低下させることができるものであれば、特に限定されるものではない。このような減粘剤としては、具体的には、例えば、飽和ポリエステル系化合物、BYK(BYKケミー社製品、品名W900、W905、W960、W965、W980、W990、W995、W996、W9010)等が挙げられる。これらの減粘剤は一種類のみを用いても良く、二種類以上を混合して用いても良い。
【0045】
本発明の光硬化性シート状材料の製造法は、常温で好ましくはSP値が8.1〜10であるアクリル系重合性モノマー(a)あるいはモノマー混合物(a)に、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダーなどの公知の混合機を用いて、光硬化剤(c)を混合溶解させる。最後に増粘剤としてポリメチルメタクリレート又はメチルメタクリレートを主成分とする粉末状の重合体(b)を加え混合撹拌することでコンパウンドを製造する。
【0046】
この混合機で調製されたコンパウンドは、2枚の離型フィルム(遮光性離型フィルムでも良い)の一方または双方にフローコーターまたはドクターナイフによって好ましくは0.3〜5mmの一定の厚さに塗布し、好ましくは、その上に繊維強化材(d)をチョッパーにより切断して散布するか、チョップドストランドマットを挟み込むようにしてから塗布面を内にして貼合わせ、好ましくは圧延機によって圧延し、好ましくは厚さ0.5〜7mmのシート状材料を得る。離型フィルムが遮光性でない場合には、暗箱に収納するか、該材料の両面を遮光性フィルムで被覆する工程を必要とする。最終的に該材料は、両面を離型フィルムで被覆した状態でローラーによって巻きとるか、折り畳む。また、特にSMCマシンを使用しない場合として、例えば、チョップドストランドマットに上記混合物をロール等で含浸させても良い。
【0047】
増粘工程は、増粘剤としての重合体(b)の種類および量によって温度が異なるが、通常、常温(25℃)で1時間、45℃の加熱によって30分程度行う。得られた光硬化性シート状材料の離型フィルムの剥離性は良好である。
【0048】
本発明のシート状材料の使用方法としては、屋外、屋内等で該材料の遮光性フィルム及び/又は離型性フィルムをはがし、被覆対象物の形状に合わせて賦形した後、1〜3時間程度放置すれば、成形品或いは対象物を被覆可能である。このシート状材料の用途は、管の更正保護材、被覆材、ライニング材、固定材料等が挙げられる。
【0049】
本発明のシート状材料の使用方法としては、熱可塑性樹脂シートとの積層成形材料として成形物の製造方法、既存成形物の補強層とした積層成形物が挙げられる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂シートとは、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその共重合体、アクリル(PMMAその他)樹脂、ABS、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、アクリル/塩化ビニル共重合体等から得られるもので、その厚みは、好ましくは0.1〜5mmである。
【0051】
本発明の光硬化性シート状材料は、好ましくは80℃以下の温度でBステージ化(プリプレグ化)し、好ましくは常温〜50℃までの加温、より好ましくは30℃〜45℃によって増粘し、液状分のないプリプレグ化した光硬化性繊維強化樹脂シート状材料(以下繊維強化樹脂シート状材料という)となる。該増粘後の繊維強化樹脂シート状材料の積層成形にあたって、予め軟化温度まで加熱された熱可塑性樹脂シートの裏面に、場合によってはプライマーを塗布した後に、片面の固定用フィルムを剥ぎ取って露出した本発明の光硬化性繊維強化樹脂シート状材料面を押圧密着し、あるいは、常温で熱可塑性樹脂シートと繊維強化樹脂シート状材料とを同様に押圧密着した積層成形材を熱可塑性樹脂シートの軟化温度まで加熱し、このものを真空成形用型に熱可塑性樹脂シートの表面を型面に対向させて固定して、減圧・吸引することにより、あるいは補助的に積層材背面の繊維強化樹脂シート状材料面から圧空・加圧することにより、積層材を型面の形状に賦形する。賦形後、繊維強化樹脂シート状材料面に紫外線または可視光を照射して、該シートを硬化させる。
【0052】
この場合、光の照射は、積層材が真空成形型についたままで、行っても良いし、積層材を型からはずして、熱可塑性樹脂の冷却固化の後に行っても良い。繊維強化樹脂シート状材料裏面に残したフィルムは、光透過を妨げず、かつ軟質の薄い透明フィルムであれば、この操作が終了するまでつけておいて差し支えない。
【0053】
また、加圧とは、好ましくは0.1〜10kg/cm2の圧力による賦形である。同様に増粘後のプリプレグ化した該シート状材料の積層成形にあたって、予め軟化温度まで加熱された熱可塑性樹脂シートの裏面に、場合によってはプライマーを塗布した後に、片面の固定用フィルムを剥ぎ取って露出したプリプレグ化した繊維強化樹脂シート状材料面を押圧密着し、あるいは、常温で熱可塑性樹脂シートと繊維強化樹脂シート状材料とを同様に押圧密着した積層材を熱可塑性樹脂シートの軟化温度まで加熱した後、FRP型、金型などの成形用型に熱可塑性樹脂シートの表面を型面に対向させて固定して、加熱圧縮によって賦形する。賦形後、型の片側を外し、その面より紫外線または可視光を照射して繊維強化樹脂シート状材料を硬化させる。この場合も、光の照射は、積層材が成形型についたままで、行っても良いし、積層材を型からはずして、熱可塑性樹脂シートの冷却固化の後に行っても良い。
【0054】
光照射ランプは、特に制限はないが、市販の高圧水銀灯が好適である。
【0055】
本発明の光硬化性繊維強化樹脂シート状材料は、適度の粘着性を持ち、加熱すると粘度が低下し、低圧下での流動が容易となる。さらに、常温下でも柔軟性を有し、熱可塑性樹脂シートに対する追従性は極めて良好である。該粘着性は、熱可塑性樹脂シートとの密着性が容易で、熱可塑性樹脂シートとの一体化が容易である。このような粘着性があるにもかかわらず、該シート状材料保持フィルムは剥ぎ取る際、まったくそのフィルムへの樹脂分の付着がなく、作業性に富み、経済性の面でも優位となる。
【0056】
さらに、該シート状材料は、フィルムに挟まれた形で提供されるので、成形前の裁断や積み重ね等の取り扱いを容易にし、しかも、紫外線照射もあまり阻害しないので好都合である。
【0057】
繊維強化樹脂シート状材料は、樹脂や添加剤、あるいは繊維強化材(d)の種類、またはこれらの含量、また全体の厚さを変えた多種類のものが製造できるので熱可塑性樹脂シートあるいは製品の強化複合材の厚さ、剛性、感触性等に適した繊維強化樹脂シート状材料を選ぶことができる。また、該シートの製造の際、増粘剤としての重合体(b)の添加量を変更することによって、増粘の程度を変更することができ、粘着性、取り扱い性を変更できる。
【0058】
既存成形物の補強層として本発明のシート状材料を使用した積層成形物を製造するには、成形物の表面(裏面)に、本発明の繊維強化樹脂シート状材料を積層圧着し、次いで繊維強化樹脂シート状材料表面に紫外線もしくは可視光を照射して、該繊維強化樹脂シート状材料を補強層として硬化させることによる。
【0059】
この成形物とは、移動可能な形のあるものであり、その材質は、熱可塑性樹脂製、熱硬化性樹脂製(不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等、そのFRP等)、金属製(例えば、圧延鋼板、ED鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛鋼板、アルミ鋼板等)、無機材(例えば、コンクリート、ガラス、セラミック、大理石等の天然石材等)、紙製、木製品等のいずれでも良い。
【0060】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、文中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
【0061】
(実施合成例:重合体粉末の合成)
メチルメタクリレート80部を、撹拌機を備えた反応機に仕込み、乳化剤としてメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体からなる高分子乳化剤1部、触媒として過硫酸カリウム0.1部を添加し、水150重量部中で重合温度80℃にて180分間撹拌した後、重合転化率98%になるまで重合を行った。得られたラテックスの平均粒子径はいずれも0.2〜0.5μmの範囲内であった。得られたラテックスをスプレードライによって150℃で噴霧乾燥し、重合体粉末を得た。重量平均分子量は40万であった。
【0065】
比較例:プリプレグ)スチレン80gを含む不飽和ポリエステル樹脂(ポリライトFR−200:大日本インキ化学工業(株)製品)200gとメチルメタクリレート20gとを混合した混合物(SP値 8.4)製造後、紫外線硬化剤(イルガキュア651、チバ・スペシャリティーケミカルズ製品)を0.5g加え、攪拌溶解させる。その後、実施合成例で作成したアクリル重合体粉末40gを添加攪拌する。これを、450g/mのチョップドストランドマット50cm×30cmに含浸させる。該増粘性コンパウンドは25℃で30分以内に1000ポイスを超える速増粘性を示した。得られた成形材料を遮光性フィルムで覆い保存した。
【0066】
該プリプレグは紫外線ランプを10秒照射させるだけで硬化可能であった。
【0067】
(実施例4:ビニルエステルプリプレグ)ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂1モル、メタクリル酸2モルから合成されるビニルエステル樹脂を不飽和ポリエステル樹脂の代わりに使用する以外は、実施例3と同様に光硬化性シート状材料を作成した。該コンパウンドの増粘は1分間の攪拌中は100ポイズ以下であり、10分で1000ポイズとなる。得られたシートは遮光性アルミ蒸着フィルムに包み、40℃で5分加熱することによって取り扱い性の良好なプリプレグシートとなる。得られたシート状材料は透明であり、紫外線ランプを8秒照射することで硬化した。
【0068】
(比較例1:プリプレグ)
モル牽引定数から算出されるSP値が7.9であるイソボルニルメタクリレート200gに紫外線硬化剤(イルガキュア651)0.5gを加え攪拌溶解させる。その後、実施合成例で作成したアクリル重合体粉末40gを添加攪拌する。これを、450g/m2のチョップドストランドマット50cm×30cmに含浸させるも、該コンパウンドは45℃でもほとんど増粘せず、プリプレグとして使用できなかった。
【0069】
比較例)実施例3で得られたシート状材料(プリプレグ)を厚さ3mmのポリメチルメタクリレート製シートに重ね、ローラーで圧着した後、所定の面積に切り取った。この積層材料を150℃の空気浴の中に5分間放置して加熱した後、FRP製型の上にポリメチルメタクリレート面を型に対向するように置き、型の孔から30mmHgの減圧で吸引した。積層材料の賦形を充分にするため、型の上に、中央部に孔を設けた鉄製の蓋をかぶせ、5kg/cmで圧空した。完全に賦形した後、蓋を取り去り、離型フィルムをつけたまま、シート状材料(プリプレグ)面にサンランプSSL250A(スタンレー電気製)を20分間照射して、硬化した積層品を型からはずした。硬化および層間の接着は充分であった。
【0070】
(実施例6)
ポリエステル樹脂(プロピレングリコール/フマール酸)100重量部、炭酸カルシウム200重量部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛2重量部、酸化マグネシウム2重量部、繊維強化材として1/2インチのガラス繊維を5重量部、パーブチルO(日本油脂(株)製硬化剤)2重量部からなるコンパウンドを増粘して得たバルクモールディングコンパウンドを、125℃で10分、80kg/cm2で加熱圧縮成形して5mm厚さの浴槽成形品を得た。
浴槽の底部およびコーナー部にプライマーとしてディオバ−CP−700(ビニルエステル樹脂、大日本インキ化学工業製品)を塗布した後、実施例4で得られたシート状材料(プリプレグ)を片面のみ離型フィルムを剥がし、ロールによって圧着させた。次いで、片面の離型フィルムをつけたまま、プリプレグ面にサンランプSSL250A(スタンレー電気製)を20分間照射して、補強層を有する浴槽成形品を得た。硬化および層間の接着は充分であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明は、(a)、(b)、(c)、(d)成分からなることで、多種のモノマーを反応性希釈剤として使用でき、増粘時間が短く取り扱い性、光硬化性、生産性に優れた光硬化性シート状材料を得ることができる。このシート状材料は、積層成形物の製造や成形物のバックアップ層(補強層)の形成に使用でき、管の更正保護材、被覆材、ライニング材、固定材料等への使用に対し有用な材料となる。

Claims (4)

  1. (a)重合体(b)と相溶或いは重合体(b)を膨潤する、モル牽引定数Gを用い式「SP=Σ(G)/分子量」で算出された相溶化パラメーター(SP)が8.1〜10.0であるアクリル系重合性モノマー、
    (b)乳化重合法によって得られた、10万以上の重量平均分子量と300〜5000オングストロームの粒子径とを有するポリメチルメタクリレートを含有するエマルジョンを乾燥して得られる粉末状の重合体、
    (c)光硬化剤、
    (d)繊維強化材、
    ならびに、
    エポキシ(メタ)アクリレート樹脂からなるラジカル硬化性重合体樹脂(e)からなることを特徴とする光硬化性シート状材料。
  2. アクリル系重合性モノマー(a)100重量部に対し、該重合体(b)を1〜100重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化性シート状材料。
  3. 熱可塑性樹脂シートと、請求項1または2に記載の光硬化性シート状材料とを積層してなる積層成形材料。
  4. 成形物の表面に請求項1〜3のいずれか記載の光硬化性シート状材料を用いることを特徴とする補強方法。
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