JP4416062B2 - ベルト検尺装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝動用ベルトのライドアウト(RO)を測定するためのベルト検尺装置に関するものであって、詳しくは、プーリに巻き付けられたベルトのプーリ外周面からの突出し高さを測定する検尺装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ベルトのライドアウト(RO)を測定する技術としては、ノギス或はダイヤルゲージを用いて、作業者が、逐一、その突出し高さを手作業で測定する方法が広く用いられていた。
【0003】
すなわち、プーリに巻き付けられたベルトの背面とプーリ外周面との段差を測定することによって、ライドアウト(RO)を得る方法である。以下、この方法を、図面を用いて説明する。
【0004】
図5は従来例に係るライドアウト測定方法を示す概略図であるが、図5において、ライドアウト(RO)は、斜線部で示したベルト2の背面から駆動プーリ3の外周面までの長さで定義される寸法値である。
【0005】
故、このライドアウト(RO)寸法値はダイヤルデプスゲージ50をベルト2の背面に当てがうことによって測定できる。
【0006】
その他、例えば特公平2−56620号にライドアウト(RO)を測定する装置が開示されている。この方法は制御可能な円弧運動を行うアームの端部にローラーを配し、このローラーを図5に示したベルト2の背面に接触させて位置決めし、このときのローラーの移動距離に比例するアームの回転をパルス発信機等により検出し、最終的にライドアウト(RO)を測定しようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ダイヤルデプスゲージ50を用いる方法は、作業者のスキルに負うところが大きく、当然の事としてこのライドアウト(RO)の測定精度には人、および測定器による誤差分散が関与する。
【0008】
又、特公平2−56620号に記載された方法は、機械化による自動測定方法であり、人、および測定器による誤差分散を排除できるメリットはあるものの、その検出方法はローラーとベルト2の接触方式であることからローラーの押圧力の制御に課題があること、また、アームの回転連結部、ギヤーの噛合い部、シリンダーロッドの往復移動部等の可動部が多用されているため、機械的な精度の維持に難点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を克服するため、本発明者等は人手に依らず、且つ、非接触での測定を可能にする新規なライドアウト(RO)演算手段を有するベルト検尺装置を発明した。
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、駆動プーリと移動プーリにベルトを巻きかけて、所定の荷重を付与し、ベルトを走行させてベルトの各部の寸法を測定するベルト検尺装置において、スポットレーザーを目標とするベルトの測定点に照射するレーザーマーカーと、駆動プーリを両側から挟み込むように配置した1対の投受光部からなるレーザービーム投受光器と、前記レーザービームが駆動プーリの最外径部によって遮光される暗部長さを検出し、更に前記駆動プーリに巻き付けられたベルトの最外径部によって遮光される他の暗部長さを検出し、両暗部長さの差を検出するライドアウト演算手段と、で構成したベルト検尺装置である。
【0011】
請求項2の発明は、投光器から照射されるレーザービームのラインを駆動プーリの軸方向に任意にシフトさせる移動手段を有する請求項1記載のベルト検尺装置である。
【0012】
また、請求項3の発明は、前記ライドアウト演算手段を用いて所定のサンプリング時間内に所定個数のデータを取り込み、ライドアウトの平均値と誤差分散を算出し、更にこの取り込みをN回繰返して平均値と誤差分散を算出する演算手段を有する請求項1乃至請求項2記載のベルト検尺装置である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明に係る実施例を詳細に説明する。図1は実施例に係るベルト検尺装置の正面図であり、図2はその側面図である。図3は実施例に係るライドアウト(RO)の測定方法を示す正面図であり、図4はその側面図である。又、図6(a)、図6(b)はベルトを示す概略図である。
【0014】
始めに図1、図2を用いて本発明に係るベルト検尺装置1の概要を説明する。図1においてベルト検尺装置1はその上部に駆動プーリ3が、その下部に従動プーリ4が配されており、この1対のプーリには無端状のベルト2が巻き付けられる。このベルト2には従動プーリ4を介して重錘6が吊下げられ、所定の検尺荷重がベルト2に付与される。
【0015】
本発明は、この検尺荷重の条件下にプーリセンタ間距離(CL)をリニアスケール5によって測定し、POC(プーリ外周長)=π×D(プーリ外径)+2×CL、あるいはBOC(ベルト外周長)=π×(D(プーリ外径)+2×RO(ライドアウト))+2×CLを演算によって算出するように構成されている。
【0016】
次に図5、図6(a)、図6(b)を用いて、本発明の使用目的を補足説明する。図5はベルト2が駆動プーリ3に巻き付けられている様子を拡大表示した1部断面図である。
【0017】
又、図6(a)は、断面V形状のベルト2の代表として変速用のベルト2を例示したものであり、図6(b)はそのA−A断面図である。
【0018】
前記ベルト2は、心線2b、ゴム層2c、補強用の上布2a、下布2dで構成されているが、本発明はこの構成に限られることはなく、要は断面がV形状であるベルトをその測定対象とするものである。
【0019】
上記のベルトは、楔効果を利用した摩擦伝動ベルトであるから、ベルト2の駆動プーリ3のV溝部への落込み量は製造寸法によって微妙に変化する。
【0020】
しかし、この落込み量はベルト2の製造寸法、すなわち、幅、高さ、角度の微妙な組合せによる相乗効果によって変化するものであり、いずれか一つにその影響を特定することはできない。
【0021】
そこで、当業者等は前記ベルト2の製造寸法、すなわち、幅、高さ、角度のいずれをも特定することなく、且つ、その影響を網羅した有効な測定寸法として、ライドアウト(RO)寸法を実用的に使用している。
【0022】
このライドアウト(RO)寸法は、これにより、下記式に示した換算式から、夫々、ベルト外周長BOC、或は公称値である上幅を算出することができる。
【0023】
すなわち、ベルト外周長BOCは、下記式にライドアウト(RO)測定寸法を代入することにより容易に算出することができる。
【0024】
BOC(ベルト外周長)=π×(D(プーリ径)+2×RO(ライドアウト))+2×CL
また、公称値の上幅についても、ライドアウト(RO)測定寸法を代入することにより容易に算出することができる。
【0025】
BW(ベルト上幅)=2×RO×tan(α/2)+PW(プーリ上幅)
尚、上記の検尺プーリには、精密加工のプーリが使用されることから、上記式中のプーリの各部寸法は正確な寸法として取り扱える。
【0026】
次に本発明の要部である新規なライドアウト(RO)演算手段を、図3、図4を用いて詳細に説明する。図3において、レーザービーム投受光器はレーザービーム12を投光する投光器10と反対側でこれを受光する受光器11からなるユニットであり、前記レーザービーム12は、半導体レーザー発光素子から放射されたレーザー光がレンズを透過してライン状の平行ビームに変換されたものである。このレーザービーム12は、受光器11に内蔵されている所定の平行幅を有するCCDイメージセンサーによって、しかるべく、受光される。
【0027】
物体がこのレーザービーム12を遮ると、その大きさに比例した暗部が受光部11のCCDイメージセンサーに発生する。CCDイメージセンサーは所定の走査時間で、この暗部の大きさと位置を正確に測定し、図示しないコントローラーにその信号を出力する。
【0028】
この信号を受けてコントローラーは、物体に遮断された暗部長さを検出し、しかるべく、ライドアウト(RO)を演算する。
【0029】
ここで、前記レーザービーム投受光器の移動手段を、図3、図4を用いて詳細に説明する。すなわち、レーザーマーカー20は可視光線を照射する汎用レーザー投光器であり、このレーザーマーカー20は、投光器10および受光器11と一体に移動するように移動台22に配されている。
【0030】
尚、このレーザーマーカー20から照射されるスポットレーザー21を、目標とする測定点に照射することによって、容易に前記レーザービーム12の照準を合わせることができる。
【0031】
以下、上記レーザービーム12の照射方向をスポットレーザー21の視認誘導によって設定する手順を説明する。図3、図4において、移動台22はその上部に位置する本体フレーム構造に設けられた2本のレール7に吊下げ状態に係止されており、前記移動台22は駆動プーリの軸方向に移動することができる。
【0032】
この移動台22の移動手段は上記本体フレーム構造に固定されたブラケット24に内蔵されたスラスト軸受に、一方の側にネジ部を有する回転ハンドル軸23を挿入し、このネジ部に嵌合される移動台22を前記回転ハンドルの操作により、駆動プーリ3の軸方向に自在にシフトさせる手段である。
【0033】
以下、順を追って、本発明が特徴とするライドアウト(RO)演算手段を説明する。
【0034】
先ず、レーザーマーカー20から照射されたスポットレーザー21を視認しつつ、回転ハンドル軸23を微動回転し、照射点が駆動プーリ3の外周面、略中央部に位置するように誘導する。
【0035】
この位置でレーザー投光器10からレーザービーム12を投光し、反対側の受光器11で受光する。このとき、駆動プーリ3に依って遮られたレーザービーム12の暗部は図示の通り、暗部長さ1として測定される。同時にこの暗部長さ1はライドアウト(RO)測定の原点としてコントローラーに記録される。
【0036】
次に再度、前記回転ハンドル軸23を微動回転し、照射点が駆動プーリ3に巻き付けられたベルト2の背面、略中央部に位置するように誘導する。この位置でレーザー投光器10からレーザービーム12を投光し、反対側の受光器11で受光する。
【0037】
このとき、駆動プーリ3及びベルト2によって遮られたレーザービーム12の暗部は図示の通り、暗部長さ2として測定され、コントローラーに記録される。この暗部長さ2から前記暗部長さ1を減算すると図示の通り、ライドアウト(RO)が求まる。
【0038】
尚、この測定は全て非接触で行うことから、測定精度は飛躍的に向上する。又、この測定はベルト2の走行、停止に拘わらず可能であるが、実用上はベルト2を走行させて、所定のサンプリング時間内に所定個数のデータを自動的に取り込む方法を用いている。
【0039】
以上の方法によって得られたライドアウト(RO)の測定寸法は、図示しないパーソナルコンピューターに逐次、入力され、公称値である上幅、或はベルト外周長(BOC)に換算され、所定のプリンター、記録媒体に出力される。
【0040】
尚、ベルト外周長(BOC)の算出には、駆動プーリ3と従動プーリ4の軸間距離(CL)の測定が必要であるが、本発明に係る実施例では、ベルト2を走行させて、ライドアウト(RO)を測定すると同時に、従動プーリ4の位置を図1および図2で示したリニアスケールで測定し、軸間距離(CL)を測定する構成となっている。
【0041】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例を詳細に説明する。実施例のベルト検尺装置1は、一対の駆動プーリ3と従動プーリ4を垂直方向に配し、上部に配した駆動プーリ3はモーター40に連結されて約210rpmの回転数で駆動される。
【0042】
又、下部に配した従動プーリ4は移動台31に取付けられ、移動台31はLMガイド8に案内されて垂直方向に移動する。この移動台31はその下部に重錘6を連結して所定荷重のウエイトをベルト2に付加する機能と、従動プーリ4を移動台31の所定の位置に固定する機能、すなわち、軸間距離(CL)を変更する機能を有している。
【0043】
ここで、ベルト2の取付け手順を、図1を用いて説明する。先ず、中央のエヤ−シリンダー41のロッドを下降させ、両側のエヤ−シリンダー42を上昇させて、このエヤ−シリンダー41で移動台31の重量を支える。しかるのち、従動プーリ4を移動台31の上方に移動させて仮固定し、軸間距離(CL)を短縮した状態でベルト2を駆動プーリ3と従動プーリ4に巻き付ける。
【0044】
巻き付けたベルト2の弛みが無くなるように従動プーリ4を押し下げて、移動台31上に固定する。この状態でエヤ−シリンダー42のロッドを下降させると、前記ベルト2には所定の荷重が付加される。
【0045】
以下、ベルト2を走行させて、ライドアウト(RO)と軸間距離(CL)を測定する。1回の測定が終了すると中央のエヤ−シリンダー41を上昇させて従動プーリ4を上昇させる。この上昇位置は前記エヤ−シリンダー42のロッド上昇位置より高くなるように設定されているから、ベルト2の取り外し及び取付けは容易に行える。以降、これの繰り返しとなる。
【0046】
尚、レーザービームの投受光器には、レーザーラインゲージVGシリーズ(キーエンス社)を使用し、レーザーマーカーには、レンズ可動式可視光レーザーユニット(オーディオテクニカ社)を使用した。
【0047】
以上の構成による実施例の検尺装置1を用いて、ベルト2のライドアウト(RO)を測定した結果、非接触であることから、接触圧力を制御する必要もなく、又、従来のダイヤルデプスゲージ50を使用する際に必要な作業者のスキルも不要となり、結果、極めて再現性に優れたベルト検尺装置を得ることができた。
【0048】
尚、実施例に係るベルト検尺装置1の測定範囲は下記の通りであった。すなわち、ベルト外周長(BOC)は、635mm〜1524mm、ベルト厚みは、7〜16mm、ベルト上幅は、12〜36mm、ベルト角度は、20度〜40度であった。又、検尺プーリにはプーリ外径95.5mm、およびプーリ外径140mmの精密加工プーリを夫々、1対作成し、これを用いた。
【0049】
【発明の効果】
請求項1の発明は、先ずレーザーマーカーによりスポットレーザーを目標とするベルトの測定点に照射することで、レーザービームの照準を合わせることができ、そしてベルトを走行させながら、非接触でライドアウト(RO)を測定可能にすることから、接触方式に特有の測定圧力の制御、或いは可動部の経年変化等の問題が解消されて、結果、人及び測定器によるバラツキはなくなり測定値の再現性が大幅に向上する。
【0050】
請求項2の発明は、これによってレーザービームの照準作業を容易にする優れた効果がある。
【0051】
請求項3の発明は、これによってベルトのライドアウト(RO)を全周に渡って偏りなくデータを採取することができ、且つ、リアルタイムの統計処理ができることから検査時間を大幅に短縮することができる。
又、測定したベルトのライドアウト(RO)と換算式を用いて、より精度の高いベルト外周長(BOC)及び上幅を算出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るベルト検尺装置の正面図
【図2】図1の側面図
【図3】実施例に係るライドアウト測定方法を示す概略図
【図4】図3の側面図
【図5】従来例に係るライドアウト測定方法を示す概略図
【図6】ベルトを示す概略図であり、図6(a)は正面図、図6(b)はそのA−A断面図を示している。
【符号の説明】
1 ベルト検尺装置
2 ベルト
3 駆動プーリ
4 従動プーリ
5 リニアスケール
6 重錘
7、8 LMガイド
10 投光器
11 受光器
12 レーザービーム
20 レーザーマーカー
21 スポットレーザー
22 移動台
23 回転ハンドル軸
31 移動台
40 モーター
41、42 エヤーシリンダー
Claims (3)
- 駆動プーリと従動プーリにベルトを巻きかけて、所定の荷重を付与し、ベルトを走行させてベルトの各部の寸法を測定するベルト検尺装置において、
スポットレーザーを目標とするベルトの測定点に照射するレーザーマーカーと、
駆動プーリの両側に配されて、駆動プーリ及びこれに巻き付けられたベルトに向かってライン状のレーザービームを投光する投光器と反対側にあってこれを受光する受光器からなるレーザービーム投受光器と、
前記レーザービームが駆動プーリによって遮光される暗部長さと、前記駆動プーリに巻き付けられたベルトによって遮光される他の暗部長さを検出し、両暗部長さの差を検出するライドアウト演算手段と、
からなることを特徴とするベルト検尺装置。 - 前記駆動プーリの両側に配されたレーザービーム投受光器が、前記レーザービームを駆動プーリの軸方向に任意にシフトさせる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のベルト検尺装置。
- 前記ライドアウト演算手段を用いて所定のサンプリング時間内に所定個数のデータを取り込み、ライドアウトの平均値と誤差分散を算出し、更にこの取り込みをN回繰返して、平均値と誤差分散を算出する演算手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のベルト検尺装置。
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