JP4415137B2 - 水素透過膜利用装置の保護方法および保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素透過膜を用いて水素を含む気体より水素を分離する装置の保護方法及び保護装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ある種の金属膜は水素のみを通して他の物質を全く通さないことから、水素製造への応用に期待が寄せられている。しかしながら、このような水素透過性金属膜には一般にそれぞれの膜によって異なる使用限界温度 (Tc)があり、この温度以下で水素雰囲気にさらすと強度の低下、割れ、崩壊等を生じる可能性がある。したがって、水素透過膜はTc以上の温度で使用し、装置を停止する際には水素を除去してから膜の温度を下げなければならない。
一般には、水素透過膜の温度がTc以上のうちにアルゴンや窒素といった不活性ガスを導入して、水素透過膜の水素供給側および水素透過側の水素をこれらのガスとともに外部に排出して除去し、その後で温度を下げることにより装置の停止を行う。
特開2001-118594号公報には、停止の際に水素透過膜の水素供給側に空気を導入して水素を追い出すとともに、水素透過側の水素も水素透過膜を通して除去する方法が開示されている。また、特開2001-229951号公報には、水蒸気を導入して水素を追い出し、これを燃料電池発電ユニットで消費して除去する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、不活性ガスを用いる方法ではそのためのガスボンベを準備する必要があり、家庭用、自動車用の燃料電池システムのような設置スペースが限られている利用分野では用いることができない。
また、装置の停止時に空気を導入する方法では、水素透過膜ユニット内において空気中の酸素と水素が反応するため、反応熱により水素透過膜の温度が大きく上昇し、膜の崩壊や水素透過性能の低下をもたらすおそれがある。さらに、いずれの方法も、空気や水蒸気等を流すための動力を必要とするため、エネルギー効率が低下するばかりか、電気系統や制御系のトラブルがあった場合には対処できないといった問題がある。これらの欠点は、燃料電池システムにおいて致命的であった。
【0004】
【課題を解決する手段】
ところで、気体が水素吸蔵合金などの物体に吸着または溶解する量は一般に温度によって変化することが知られている。そこで、この性質を最大限に活用する方法を検討し、本質的に電力に頼ることなく、水素透過膜を損傷することなく容易に停止することができる水素透過膜利用装置の保護方法及び保護装置を完成させるに至った。
本発明者は、水素透過能を発現する金属又は合金からなる水素透過膜を用い、水素透過膜に連通する空間内に、気体吸着媒体からなる水素吸蔵体を設置し、水素透過膜の使用開始時あるいは使用中に水素吸蔵体を加熱して、吸着している気体を放出させ、水素透過膜使用終了時には、水素透過膜と水素吸蔵体を含む空間をバルブ等を用いて閉鎖し、その上でこの水素吸蔵体を用いて残留ガスの一部または全てを吸着することにより水素を除去する水素透過膜利用装置において、空間を外部から隔離するためのバルブのうち少なくとも1つが感温式バルブである水素透過膜利用装置保護方法及びこれを具体化した保護装置とすることにより、目的を達成できることを見出した。
すなわち、水素透過膜につながる空間内に気体吸着媒体からなる水素吸蔵体を配置し、水素透過膜の使用開始時あるいは使用中に吸着あるいは吸蔵している気体を放出させておき、水素透過膜使用終了時には、まず、水素透過膜および気体吸着媒体を含む空間をバルブ等を用いて外部から隔離し、気体吸着媒体を用いて残留する水素およびその他のガスを吸着あるいは吸蔵することにより除去し、その後で水素透過膜を冷まして装置の停止動作を完了する。こうすることにより、Tc以下の温度で水素透過膜を水素にさらさずにすむため、膜の崩壊を防ぐことができる。
ここで用いられる水素透過膜としては、優れた水素選択性と透過速度を有するパラジウム系合金膜、パラジウム膜、アモルファスパラジウム-シリコン系合金膜、バナジウム系合金膜、バナジウム膜、アモルファスジルコニウム-ニッケル系合金膜、ジルコニウム膜、アモルファスハフニウム-ニッケル系合金膜、ニオビウム系合金膜、ニオビウム膜、タンタル膜、アモルファスチタン-鉄合金膜、チタン-ニッケル合金膜、チタン-銀合金膜、アモルファス希土類-ニッケル系合金膜、ジルコニウム-鉄系合金膜等があげられる。これらはそれぞれ単独で用いられることもあるが、バナジウム-ニッケル合金膜をはじめとするいくつかの合金膜は、表面にパラジウムや白金などといった他の金属を被覆した形で用いられることがある。
また、水素透過速度の向上を目指して、アルミナ等からなる多孔質体を支持体とし、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等をその表面に被覆、あるいはその細孔内に充填または担持させたものも水素透過膜として用いられる。このような水素透過能を発現する金属または合金を利用した水素透過膜は、膜によって使用限界温度Tcやその時の許容水素分圧は異なるが、いずれも室温付近の低温で水素雰囲気にさらすと膜が崩壊する可能性があるため、何らかの対処法が熱望されていたものである。なお、水素透過性金属膜を室温付近で水素にさらすことができないのは一般的な現象であり、したがって、上記の水素透過膜に限らず、今後開発されるものも含め、あらゆる水素透過性金属膜に対して本発明の保護方法及び保護装置は有効である。
【0005】
【本発明の実施の形態】
本発明において、装置の停止時に必ず除去しなければならないのが水素であるから、気体吸着媒体としては水素の吸着量あるいは吸蔵量の多いものを用いる必要がある。この観点から、本発明の実施には水素吸蔵合金として知られる一連の合金が特に有用である。
水素吸蔵合金の中でも、単位体積・重量あたりの吸蔵量が大きく、室温から数100 ℃の範囲内で吸蔵・放出が行え、その反応速度が速く、そのヒステリシスが小さく、プラトー圧の傾斜が小さく、耐久性に優れたものが好ましい。また、Tcにおいて、水素透過膜が崩壊しないよう、大気圧より十分低い圧力まで水素を吸蔵できるものでなければならない。最後の条件は従来の水素吸蔵合金の開発目標にはなかったものであり、したがって、現時点で本発明に最適なものを決定することはできない。それでも、十分使用可能な水素吸蔵合金として、Mg2Ni合金、Mg0.833Ni0.66Cu0.095Mm0.06合金、Mg2Cu合金、TiCo合金、TiCo0.5Mn0.5Zr0.05合金、V49.0Ti43.5Fe0.75合金、V1.1Ti0.9Mn1.0合金、ZrMn2合金、ZrFeV合金、ZrMn1.5Cr0.5合金、LaNi4.3Al0.7合金、LaNi4.6Sn0.4合金、CeMnAl合金等があげられる。ところで、水素吸蔵合金は共存する不純物ガスによっては水素吸蔵特性が大きく低下する場合がある。この場合は水素透過膜の水素透過側に配置するのがよい。水素透過側の水素はこの水素吸蔵合金によりもちろん除去されるが、水素供給側の水素も水素透過膜を通して水素透過側に移動し除去することができるからである。あるいは、適切な表面処理を行うことによって不純物ガスに対する性能低下を抑えた水素吸蔵合金であれば、水素供給側に配置することも可能である。
【0006】
水素吸蔵体に用いられる気体吸着媒体としては、水素吸蔵合金の他、活性炭、フラーレンやカーボンナノチューブ等の炭素材料、ゼオライト、バイコールガラス(Vycor glassコーニング社商標)、エアロゲル等といった材料を用いることもできる。
もとより、これらを水素透過側に配置することも可能であるが、特に、水素供給側に配置することにより本発明をさらに効果的に実施することができる。すなわち、こうすることにより水素はもちろん、水素供給側の他のガスも除去できるので、膜両側の圧力がいずれもほとんど真空となり、装置の停止時に気体の圧力差にともなう力が膜に加わらず、膜の寿命を延ばすことができる。
本発明においては、膜の両側にこのような気体吸着媒体からなる水素吸蔵体を配置することにより、より早く水素等の気体を除去することができる。
ところで、水素製造装置等において水素透過膜ユニットに供給されるガス中の主な不純物は、通常、二酸化炭素および水である。したがって、水素供給側に配置するのに適した気体吸着媒体としては、二酸化炭素および水に対して高い吸着能を持つ、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、活性アルミナ、ゼオライト、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を選ぶのが良い。なお、炭酸カリウム以下は化学反応により二酸化炭素および水を取り込む化学物質である。
【0007】
言うまでもなく、これら気体吸着媒体からなる水素吸蔵体は、ガスを吸着あるいは吸蔵しさえすればいいので、その形状は一切問わない。また、ガスを速やかに吸着あるいは吸蔵するように、それぞれの材料に適した活性化処理を必要に応じて予め施しておくことが望ましい。
気体吸着媒体からなる水素吸蔵体を配置する場所は水素透過膜につながっている空間内ならどこでもよい。水素透過膜モジュール内でも、そこに接続されている配管内でも、気体吸着媒体からなる水素吸蔵体を容器内に納めてこれを配管で水素透過膜モジュールと接続しても構わない。もちろん、そういった様々な場所に分散して配置することもできる。
気体吸着媒体からなる水素吸蔵体の加熱・冷却はどんな方法で行っても構わないが、電気的に加熱するのであれば、構造が単純でかつ安価な電気抵抗加熱が便利である。気体吸着媒体が水素吸蔵合金や活性炭のような導電性のものなら、それらに直接通電して加熱することもできる。このような場合、冷却は外気により自然に冷めるのを待つことにより行う。
また、装置を起動した後、短時間で停止する可能性がある場合は、気体吸着媒体からなる水素吸蔵体の冷却も速やかに行う必要がある。その場合には加熱ばかりでなく冷却も電気的に行うことのできる熱電素子を用いるのがよい。
これら電気的に加熱を行う装置では、水素透過膜ユニットと気体吸着媒体を入れた容器を、バルブ等を介して接続し、バルブを開いた状態で水素吸蔵体を加熱して吸着あるいは吸蔵していた気体を放出してから水素透過膜ユニットとの間をバルブで断絶し、その後、水素吸蔵体を冷やしておき、必要な時にそのバルブを開くことにより残留ガスを除去する方法も有効である。
【0008】
しかしながら、燃料電池システムのように小型・軽量・高効率が要求される利用分野では、装置の持つ熱をそのまま使用するのがもっとも効果的である。たとえば、水素吸蔵体を入れた容器と水素透過膜ユニットを熱的に接続することにより、水素透過膜が使用中で温度が高いときには水素吸蔵体も高温となり水素等のガスを放出し、停止の際には水素透過膜の温度が低下し、それと同時に水素吸蔵体の温度も低下するので残留ガスを吸着あるいは吸蔵して除去できる。
さらに、本発明では、空間を外部から隔離するためのバルブのうち少なくとも1つが感温式バルブであり、バルブとして熱で動作する感温式バルブを用いることにより、水素透過膜の起動・停止のために特別な電気エネルギーを消費せず、かつ電子制御も必要としないシステムを完成させることができる。
感温式バルブは感温部の熱を検知し、バルブに固有のある温度T0を境に動作するもので、T0以上では開きT0以下では閉じる開閉バルブ、T0以上では閉じT0以下では開く開閉バルブ、T0の前後で流路を切り替える3方バルブなど様々なものを用いることができる。
感温式バルブの動作原理としては、たとえばバイメタルや形状記憶合金が熱とともに変形する性質を利用したものや、熱電対を用いて発生した電力で電磁バルブを動かすもの等があり、もちろんこれらを用いることができる。しかしながら、以下に説明するように、磁石を用いたものおよび気体吸着媒体を用いたものは特に有効である。
磁石を用いたものは、たとえば特開平8-270935号公報に開示されているものを用いることができる。これは、ガスの流路内に配置した弁体にT0をキュリー点とする温度感知用強磁性体を設け、これと対向して別の強磁性体を配置したものである。こうすることにより、低温時には2つの磁石が磁力により弁体を開位置に保持し、温度が上昇すると、T0付近で温度感知用磁性体の飽和磁化が急激に低下してもう一方の強磁性体から離れ、バネ等の力により弁体が閉位置に移動する。すなわち、バルブの開閉をT0の前後で熱のみによって行うことができる。このような磁石を用いた感温式バルブは温度に対して極めて敏感に、かつ長期にわたって繰り返し動作でき、しかも、動作温度T0は磁石の性質で決まるので、装置組立後の動作温度調整が不要なこと等から、本発明には特に適している。なお、特開平8-270935号公報には高温で閉じ、低温で開くバルブについて示されているが、簡単な改良により、高温で開き低温で閉じるバルブや、温度によって流路を変える3方バルブ等にすることができ、本発明がそれらすべてのバルブを対象としていることは言うまでもない。
また、磁石を用いた感温式バルブはそれ以外にも様々な改良が提案されており(たとえば、特開平10-300078号公報)、それらは本発明において有効に生かされるべきである。
気体吸着媒体を用いたものとしては、特開昭61-270505号公報に開示された原理に基づくものが数多く提案されている。これは、ピストンを内蔵するシリンダー内に水素吸蔵合金と水素を封入し、水素吸蔵合金を加熱することにより吸蔵していた水素を放出させ、その水素圧でピストンを押し出し、逆に水素吸蔵合金を冷却することにより水素を吸蔵させ、それによる水素圧の低下やピストンの自重等によりピストンを引き戻すアクチュエータである。このように熱により伸縮動作をおこなうアクチュエータを用いることにより、磁石を用いた感温式バルブと同様、開閉バルブ、3方バルブ等様々なものを作製することができる。この種のバルブが良いのは、水素吸蔵合金を入れた容器(感温部)とシリンダー(動作部)を配管で接続することにより、装置の定常状態を検知するのに最も好ましい位置に感温部を配置し、これとは離れた自由な位置に動作部を設けることができることである。その上、配管を分岐して、1つの感温部に対して複数の動作部を接続すれば、それら複数の動作部を一斉に動かすことも可能となる。さらに、感温部を熱電素子を用いて加熱することにより、熱のみでなく電気的なバルブ制御も平行して行えるようなシステムにすることも容易であり、非常に便利である。なお、特開昭61-270505号公報は水素吸蔵合金と水素を用いているが、かならずしもこの組み合わせでなければならないわけではない。実際、他の気体吸着媒体と気体の組み合わせがこれまでにも提案されている。本発明は、これから開発されるものも含め、様々な気体吸着媒体を利用した感温式バルブをも対象にすることができる。
【0009】
水素透過膜及び気体吸着媒体につながる空間を外部から隔離するためのバルブは、必ずしも開閉バルブとは限らない。たとえば、燃料電池システムでは水素透過膜がまだ暖まっていない間、水素透過膜ユニットへ供給されるガスをバイパスして、燃焼室でこのガスを燃焼しなければならない場合がある。このような時は、3方バルブやその他の切替バルブ等を用いてガスの流路を切り替えることにより、本発明を有効に活用することができる。
また、本発明におけるバルブの開閉は、気体吸着媒体がガスを吸着あるいは吸蔵する際に外部からガスが際限なく流入するのを防ぐためである。したがって、外部から隔離されるのが水素透過膜ユニットのみである必要はない。
たとえば、改質器、気体吸着媒体、水素透過膜ユニットおよびそれらをつなぐ配管を、バルブ等を用いて外部から隔離し、改質器内も含めた空間内の残留ガスを除去しても構わない。改質器は、その停止中に燃料であるメタノールや水等が残留していると、改質触媒の表面に付着して触媒の性能が低下する。したがって、本発明を用いて改質器内の気体も除去することにより、改質器停止時の問題をも同時に解決し得る。同様に、膜反応器では、水素透過膜使用終了時に水素透過膜、膜反応器の触媒および気体吸着媒体を含む空間をバルブ等を用いて外部から隔離した後、気体吸着媒体を用いて残留ガスを除去するとよい。
【0010】
水素透過膜を用いる装置としては、水素分離装置、水素同位体分離装置、膜反応器等があげられ、本発明はこのいずれにも適用可能である。水素分離装置としては、メタン、メタノール、ガソリン等から水蒸気改質により得られた二酸化炭素等を含む混合ガスから水素を取り出す水素製造装置、化学プラントのオフガスに含まれる水素を回収するための水素分離装置、粗製水素に含まれる不純物を除去する水素精製装置等があげられる。
水素同位体分離装置は水素透過速度が水素同位体によって異なることを利用して、たとえば重水素と軽水素を分離するものである。
膜反応器は触媒と分離膜を1つの反応器内に配置したものであるが、この分離膜として水素透過膜を用いることができる。膜反応器を用いて化学反応を行うことにより、反応生成物のうちの水素のみを反応領域から除去したり、膜を通して水素を反応領域に供給したりすることによって、反応の促進や制御が期待できる。
また、一口に膜反応器と言っても様々なものがあり、たとえば、敢えて触媒を反応器内に充填するのではなく水素透過膜自体が持つ触媒活性を利用したものなどもあるが、本発明がこのような様々な膜反応器に対しても有効であり、応用できることは言うまでもない。
また、水素分離装置や膜反応器は燃料電池システムに組み込むことが広く検討されている。燃料電池システムは家庭や自動車での応用が期待されているが、この場合、起動・停止の頻度は高く、緊急停止も多い。しかも軽くて小さいことが求められていることから、本発明が最も効力を発揮する応用分野と考えられる。
これら様々な水素透過膜利用装置へ本発明を適用する場合、それぞれに応じて様々な実施形態をとることができる。
たとえば、水素精製装置では膜の水素供給側と水素透過側の両方に水素吸蔵合金を配置することにより、装置を停止する際に一層速やかに水素を除去することができる。もちろん、水素供給側のみ、水素透過側のみに配置しても構わない。一方、燃料電池システムでは一酸化炭素、二酸化炭素等を含む混合ガスが供給されるため、それらによって吸蔵特性が低下する可能性のある水素吸蔵合金を水素供給側に配置するのは適当ではない。
また、水素精製装置においてはバルブの一部を電磁バルブにせざるを得ない状況が生じるが、燃料電池システムでは全てのバルブを感温式にすることにより、装置の簡素化、小型化、軽量化を実現することが可能である。
【0011】
【実施例】
以下に本発明について具体的に記述する。もとより、これらは本発明の実施形態の一部であり、本発明がこれらに限定されるわけではない。
(参考例1)
図2は本発明を適用した水素精製装置である。恒温槽5の中に配置された水素透過膜ユニット1の内部は水素透過膜2で水素供給室3と水素透過室4に分断されている。
粗製水素は配管8、開閉バルブ7および配管6を通して水素供給室3に供給され、必要に応じて配管9、開閉バルブ10および配管11を通して排出される。一方、水素透過室4には配管12が取り付けられており、ここからさらに開閉バルブ13および配管14を通して精製された水素を取り出す。本実施例においては、気体吸着媒体として水素吸蔵合金を用いた。
水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18の入った容器19は配管17、開閉バルブ16および配管15を通して水素透過室4と接続されている。フィルター20は粉末状の水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が配管17へ流出するのを防止するものであり、水素はこれを自由に通り抜けることができる。21は水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18を加熱するためのヒーターである。
ここで用いた水素透過膜は、パラジウム91原子%、ルテニウム6原子%、インジウム3原子%の組成を持つ合金からなる外径7 mm、肉厚0.2 mmの管状膜であり、水素透過の有効膜面積は45 cm2である。この膜は200 ℃以下では膜崩壊の原因となるα-β相転移が起こるため、これが使用限界温度Tcとなる。
水素供給室3に配管6および配管9を加えた容積は120 cm3であり、水素透過室4に配管12および配管15を加えた容積は20 cm3である。また、水素透過膜の体積は0.90 cm3である。
また、配管17と容器19の容積の和から水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18およびフィルター20の体積を差し引いた容積は10 cm3である。
水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18としては1 cm3のTiCo合金を用いた。これは、速やかに水素を吸蔵放出するように予め活性化処理されている。
【0012】
次に操作方法について説明する。装置起動時にはバルブ7、10、13は閉じており、16のみ開いている。水素透過膜ユニット1を恒温槽5を用いて加熱し水素透過膜2の温度がTcを越えた後、ヒーター21を用いて水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18を150 ℃まで加熱し、吸蔵していた水素を放出する。放出された水素が水素透過膜ユニット1全体に広がった頃、バルブ7を開き、配管6を通して若干量の不純物ガスを含む粗製水素を0.2 MPaで導入するとともに、バルブ13も開放し、水素透過室4を0.1 MPa (大気圧)とする。水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が水素を十分放出した後、すみやかにバルブ16を閉じ、ヒーター21による加熱を停止し、放冷しておく。こうして起動操作を完了する。
水素透過膜ユニット1を300 ℃に保って水素精製を行えば、この温度におけるこの合金の水素透過係数は8×10-9 mol/m s Pa1/2であるので、配管14より35 cm3 H2 (25 ℃、1 atm)/minの高純度水素が得られる。なお、粗製水素を処理するにつれて不純物ガスが水素供給室3に蓄積されるので、バルブ10を開いて連続的または間欠的に水素供給室3内のガスを排出する。こうすることにより多量の粗製水素を長時間にわたって処理することができる。
装置を停止する際には、バルブ7、10、13を閉じバルブ16を開く。後で詳しく述べるように、この時、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が十分冷めていれば、水素透過膜2につながる空間内の水素は水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18に吸収され、除去される。水素供給側の水素も水素透過膜2を通して水素透過室4に移動し、これも水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18により除去される。また、この時、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18がまだ熱ければ、十分冷めるまで待てばよい。
水素吸蔵体として用いたTiCo合金は図1に示される水素吸蔵特性を示す。起動の最中、バルブ16を閉じた際には水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18は150 ℃、0.1 MPaの水素雰囲気にさらされている(図1のA)。しかし、この状態では図1が示すとおり水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18には水素はほとんど溶解しない。この時、バルブ16から容器19までの領域に残った水素は、10 cm3 (150 ℃、0.1 MPa)、すなわち0.00028 mol H2である。また、装置停止の直前には、水素供給側に120 cm3 (300 ℃、0.2 MPa)すなわち0.0050 mol H2、水素透過側に20 cm3 (300 ℃、0.1 MPa)すなわち0.00042 mol H2の水素がある。さらに、水素透過膜2に溶解している水素も除去する必要があるが、膜全体にわたって平均でH / M = 0.2の水素が溶解しているとすれば、これは0.010 mol H2に相当する。したがって、停止時に除去すべき水素量は、これらを加えて合計0.016 mol H2となる。図1によれば、TiCo合金は102 ℃においてH / (Ti + Co) = 0.6の水素を溶解して0.04 MPaにする能力があるが、この水素溶解量は0.035 mol H2/cm3 TiCoに相当する。これは除去すべき水素量0.0057 mol H2に比べて遙かに大きい。したがって、1 cm3 のTiCoは水素透過膜2につながる空間内の水素を除去するのに十分な量であって、そのプラトー圧 (0.03 MPa)まで水素を吸蔵することができる(図1のB)。プラトー圧は温度とともに低下するので、この水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18を室温付近まで冷ませば、さらに多くの水素を吸収し、ほとんど真空にすることができる(図1のC)。したがって、その後で水素透過膜ユニット1を冷却すれば、低温で水素雰囲気にさらすことがなく、水素透過膜2の崩壊等を防ぐこと ができる。以上をもって停止操作を完了する。
このように参考例の発明では、停止時に不活性ガス等を準備する必要がなくなるため、従来のシステムに比べて装置を小型化できるばかりか、メンテナンスも容易になる。
【0013】
(参考例2)
図3は本発明を適用した水素精製装置であり、参考例1に改良を加えたものである。
参考例1と違うのは、まず、配管15から容器19にいたる部分がなく、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が水素透過室4内に置かれていることである。これにともない、フィルター20が水素透過室4と配管12の間に設けられている。ここでは水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18として1 cm3のMg2Ni合金を用いる。これは、速やかに水素を吸蔵放出するように予め活性化処理されている。
さらに、バルブ7’および13’を恒温槽5の中に入れ、280 ℃以上では開き、それ以下で閉じる感温式開閉バルブとする。この感温式バルブは、永久磁石がキュリー温度を越えると磁石につかなくなる性質を利用して動作するものであり、その開閉動作には本質的に電力を必要としない。
ここで用いた水素透過膜は、参考例1と同じものであり、Tcは200 ℃である。
水素供給室3に配管6および配管9を加えた容積は120 cm3であり、水素透過室4と配管12の容積の和から水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18およびフィルター20の体積を差し引いた容積は16 cm3である。
次に操作方法について説明する。装置起動時にはバルブ7’、10、13’は閉じている。水素透過膜ユニット1を恒温槽5を用いて加熱し、恒温槽内の温度がTcを越えた後、加熱された水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18は吸蔵していた水素を放出し、放出された水素は水素透過膜ユニット1内全体に広がる。恒温槽の温度が280 ℃に達すると感温式バルブ7’および13’は自動的に開き、予め圧力制御されていた若干量の不純物ガスを含む粗製水素が配管6を通して0.2 MPaで導入されるとともに、精製された水素が配管12を通して0.1 MPa (大気圧)である装置外へと導かれる。こうして起動操作は自動的に完了する。
水素透過膜ユニット1を300 ℃に保って水素精製を行えば、参考例1と同じ水素精製能力が得られるのは言うまでもない。バルブ10を開いて連続的または間欠的に水素供給室3内のガスを排出するのが有効であることも、参考例1と同じである。
装置を停止する際には、バルブ10を閉じた状態で恒温槽5の加熱を停止すればよい。恒温槽内が280 ℃まで下がったところで、感温式バルブ7’および13’は自動的に閉じ、水素透過膜2につながる領域は外部から隔離される。この時、水素供給側に残された水素は120 cm3 (280 ℃、0.2 MPa)すなわち0.0052 mol H2で、水素透過側が16 cm3 (280 ℃、0.1 MPa)すなわち0.00035 mol H2であり、水素透過膜2に溶解している水素が0.010 mol H2であるとすれば、合計0.016 mol H2となる。
Mg2Ni合金は250 ℃で0.1 MPaにプラトー圧を持つので、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18は250 ℃以上の間はほとんど水素を溶解せず、250 ℃まで下がった時点で水素を吸収し始める。Mg2Niの水素吸蔵量は3.6重量%、すなわち0.055 mol H2 / cm3 Mg2Niであるから、1 cm3 のMg2Niは水素透過膜2につながる空間の水素を除去するのに十分な量である。参考例1と同様、温度の低下とともにプラトー圧は低下するので、温度が下がってTcになるまでに大量の水素を溶解し、ほとんど真空にすることができる。したがって、低温で水素雰囲気にさらすことがないので、水素透過膜の崩壊を防ぐことができる。以上をもって停止操作は自動的に完了する。
なお、恒温槽5の温度分布は必ずしも一様ではないので、装置の停止動作中に水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18の温度が250 ℃に達した際、水素透過膜2が部分的にでもTcを下回っていると、その部分の水素透過膜2が崩壊してしまうおそれがある。したがって、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18は恒温槽5内でも最も早く温度が下がるところに配置すべきである。このような場所は、通常、起動時の温度上昇が遅く、したがって水素透過膜2が十分暖まってから水素を放出するので、起動時に水素透過膜2を崩壊させることもない。
以上のように、本発明を参考例2で示されたような形で用いることにより、恒温槽2の加熱開始・停止のみによって水素精製装置の起動・停止を行うことができる。したがって、電力系統や電子制御系のトラブルがあっても、安全に停止することができる。しかも、参考例1と同様、不活性ガスを用いないため、小型にすることができ、かつメンテナンスもほとんど必要ない。
【0014】
(実施例1)
図4は本発明を適用した燃料電池システムの水素供給ラインの一部である。
構造は参考例2とほとんど同じである。異なるのは、バルブ10’をバルブ7’およびバルブ13’と同じ感温式バルブとして恒温槽5内に置いたこと、水素供給室3内に活性炭からなる気体吸着媒体22を置いたことである。本実施例では用いていないが、活性炭からなる気体吸着媒体22の流出を防ぐためのフィルターを水素供給室3と配管9の間に設けてもよい。
なお、23は燃料電池の発電ユニットで、24はメタン、メタノール、ガソリン等から水蒸気改質反応等により水素を含む混合ガスを生成する改質器である。
次に操作方法について説明する。装置起動時にはバルブ7’、10’、13’は閉じている。水素透過膜ユニット1を恒温槽5を用いて加熱すると、加熱された活性炭からなる気体吸着媒体22は吸着していた二酸化炭素を中心とするガスを放出する。恒温槽5内の温度がTcを越えた後、今度は、加熱された水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が吸蔵していた水素を放出し、放出された水素は水素透過膜ユニット1内全体に広がる。恒温槽5内の温度が280 ℃に達すると感温式バルブ7’、10’、13’は自動的に開く。これによって、改質器24から送られる混合ガスが配管6を通して導入され、この中に含まれていた水素の大半は水素透過膜2を通して分離され、配管12、バルブ13’および配管14を通して燃料電池発電ユニット23へ送られる。未透過の水素および二酸化炭素等のガスは配管9を通して排出される。その後、恒温槽5の温度を300 ℃に保ち、定常運転へと移行する。
装置を停止する際には、恒温槽5の加熱操作を停止すればよい。恒温槽5内が280 ℃まで下がったところで、感温式バルブ7’、10’、13’は自動的に閉じ、水素透過膜2につながる領域は外部から隔離される。Mg2Ni合金は250 ℃で0.1 MPaにプラトー圧を持つので、この水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18は250 ℃以上の間はほとんど水素を溶解せず、250 ℃まで下がったところから水素を吸収し始める。水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18を十分な量用意しておけば、温度の低下とともにプラトー圧は低下するので、Tcまで温度が下がるまでに大量の水素を溶解し、水素透過膜2につながる領域内の水素をほとんど吸蔵して除去することができる。さらに、これと同時に、活性炭からなる気体吸着媒体22もある程度の水素を吸着するので、一層速やかに水素を除去することができる。したがって、低温で水素雰囲気にさらすことがないので、水素透過膜の崩壊を防ぐことができる。
さらに温度が下がると活性炭からなる気体吸着媒体22が水素供給側に残留していた二酸化炭素や水を中心としたガスを吸着する。こうすることにより、装置が停止しているときに膜の両側をいずれも真空にしておくことができ、不必要な応力が水素透過膜2に加わるのを防ぐことができる。以上をもって停止操作が自動的に完了する。
以上のように、本発明を実施例1で示されたような形で燃料電池システムに応用することにより、燃料電池システム内の水素透過膜に関わる部分の起動・停止を恒温槽5の加熱開始・停止操作のみで自動的に行うことができる。したがって、電力系統や電子制御系のトラブルがあっても、安全に停止することができる。しかも、参考例2と同様、不活性ガスを用いないため、コンパクトでかつメンテナンスもほとんど必要ない。さらに、起動・停止のための部品を著しく減らすことができるため、簡素化、小型化、軽量化が実現でき、燃料電池システムを家庭や自動車で利用するのが著しく容易になる。
【0015】
(実施例2)
図5は実施例1のシステムを若干変更したものである。
実施例1と異なるのは、まず、配管11を分岐して、一方は恒温槽5を加熱するための燃焼室29に、他方は改質器24を加熱するための燃焼室30に接続したことである。
さらに、バルブ7’’、10’’、13’’を気体吸着媒体28を用いた感温式バルブの動作部とした。これは、感温部27内に配置した気体吸着媒体28を高温にすることによりそれまで吸着あるいは吸蔵していた気体を放出し、この気体の圧力を配管26を通してそれぞれの動作部に伝え、バルブを動かすものである。なお、この場合、圧力の伝達を有効に行うため、いったん油圧に変換し、これを配管26を通して動作部に伝える方法を用いても構わない。これらのバルブは感温部の温度に対して、T0を境に動作する。すなわち、バルブ7’’はT0以下では配管8とバイパス配管25がつながるとともに配管6のバルブ7''側が閉じられ、T0以上では配管8と配管6がつながるとともにバイパス配管25のバルブ7''側が閉じられる3方バルブであり、バルブ10’’はT0以下ではバイパス配管25が配管11とつながるとともに配管9のバルブ10''側が閉じられ、T0以上では配管9が配管11とつながるとともにバイパス配管25のバルブ10''側が閉じられる3方バルブである。バルブ13’’はT0以下で閉じ、T0以上で開く開閉バルブである。感温部27は燃焼室29付近に設けられており、定常運転時の感温部27の温度はT0より若干大きい。また、これにともなって、感温式バルブの動作部7’’、10’’、13’’を恒温槽5の外に出した。
次に操作方法について説明する。装置起動時には感温部27が十分低温であるため、配管8はバイパス配管25に、さらには配管11につながっている。さらに、バルブ13''が閉じているため水素透過膜につながっている空間は外部から隔離されている。装置の起動とともに改質器24から可燃性ガスを含む混合ガスが供給され、これはバイパス配管25を通して燃焼室29および30に導かれ、恒温槽5および改質器24を加熱する。これにより加熱された活性炭からなる気体吸着媒体22は吸着していた二酸化炭素を中心とするガスを放出する。恒温槽5内の温度がTcを越えた後、今度は、加熱された水素吸蔵合金からなる水素吸蔵体18が吸蔵していた水素を放出し、放出された水素が水素透過膜ユニット1内全体に広がる。その後、燃焼室29が十分暖まり、したがって恒温槽5も十分暖まって定常運転に近づいた頃、感温部27の温度はT0を上回り、バルブ7’’、10’’および13’’が動作する。その結果、改質器24を出た水素を含むガスは配管8、バルブ7’’および配管6を通して水素供給室3に供給され、水素の大半は水素透過膜2を通して水素透過室4へと移動し、未透過の水素およびその他のガスは配管9、バルブ10’’および配管11を通して燃焼室29および30に導かれ、ここで燃焼される。一方、水素透過室4の水素は配管12、バルブ13’’および配管14を通して、燃料電池発電ユニット23へ供給される。その後、恒温槽5の温度を300 ℃に保ち、定常運転へと移行する。
装置を停止する際には、燃焼室29の燃焼を停止すればよい。感温部27が燃焼室29の温度低下を検知してバルブ7’’、10’’、13’’を自動的に動かす。その結果、水素透過膜2につながる領域は外部から隔離される。後は実施例1と全く同じである。
水素透過膜を利用した燃料電池システムでは、水素透過膜ユニット1から配管9を通して排出されるガスは水素を中心とした可燃性ガスを含む。これは通常、恒温槽5すなわち水素透過膜2や改質器24を暖めるために用いられる。したがって、装置の起動時にこれらを暖めるためには、水素透過膜2の温度がたとえTcに満たないときにでもこの可燃性ガスを燃焼室29および30に供給する必要がある。実施例2は、このことを考慮したものである。
また、水素透過膜2の使用温度と使用限界温度Tcの差が大きくない場合、装置停止時のバルブ操作をできるだけ速やかに行う必要が生じる。実施例2のように感温部27を装置内の適切な場所に置くことによって、装置の停止をいち早く察知してバルブ操作を行うことができる。
【0016】
(実施例3)
図6は実施例2のシステムを若干変更したもので、感温式バルブの動作部7''を改質器へ燃料を供給する配管31の途中に設けたものである。操作方法は実施例2と同様である。このようなシステムにすることにより、装置の停止の際に改質器内のメタノールや水等の残留ガスも気体吸着媒体22が吸着して除去できるので、改質触媒の表面に付着して触媒の性能が低下することがない。
【0017】
【本発明の効果】
本発明は、水素透過膜利用装置において、水素透過膜を保護する方法及び装置を提供することができ、しかも電力や電気的な制御を本質的に必要としない装置の停止機構を提供することができる。これは電気的なトラブルを含む様々な緊急停止を容易にする。しかも、構造は単純でかつ自由度も広いため、システムの簡素化、小型化、軽量化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 TiCoのPCT
【図2】 参考例1の水素精製装置の略図
【図3】 参考例2の水素精製装置の略図
【図4】 実施例1の水素精製装置の略図
【図5】 実施例2の燃料電池の略図
【図6】 実施例3の燃料電池の略図
【符号の説明】
1 水素透過膜ユニット
2 水素透過膜
3 水素供給室
4 水素透過室
5 恒温槽
6 配管
7 開閉バルブ
7' 感温式開閉バルブ
7'' 感温式3方バルブの動作部
8 配管
9 配管
10 開閉バルブ
10' 感温式開閉バルブ
10'' 感温式3方バルブの動作部
11 配管
12 配管
13 開閉バルブ
13' 感温式開閉バルブ
13'' 感温式開閉バルブの動作部
14 配管
15 配管
16 開閉バルブ
17 配管
18 水素吸蔵体 (水素吸蔵合金)
19 容器
20 フィルター
21 ヒーター
22 気体吸着媒体 (活性炭)
23 燃料電池発電ユニット
24 改質器
25 バイパス配管
26 配管
27 感温式バルブの感温部
28 気体吸着媒体
29 燃焼室
30 燃焼室
31 配管
Claims (28)
- 水素透過能を発現する金属又は合金からなる水素透過膜を用い、水素透過膜の下流側の水素透過膜に連通する空間内に水素吸蔵体を設置し、水素透過膜の上流側の水素透過膜に連通する空間内に、水素のほかに他のガスも吸着できる、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブ、ゼオライト、エアロゲルから選ばれる気体吸着媒体を設置し、水素透過膜の使用開始時あるいは使用中に水素吸蔵体と気体吸着媒体を加熱して、吸着している気体を放出させ、水素透過膜使用終了時に、水素透過膜と水素吸蔵体と気体吸着媒体を含む空間を、バルブを用いて閉鎖し、その上でこの水素吸蔵体と気体吸着媒体を用いて残留ガスの一部または全てを吸着することにより水素と他のガスを除去する水素透過膜利用装置であって、空間を外部から隔離するためのバルブのうち少なくとも1つが感温式バルブである水素透過膜利用装置保護方法。
- 水素透過膜がパラジウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、マグネシウム、カルシウム、ランタン、からなる群れより選ばれる金属又は合金の1種又は2種以上である請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過膜利用装置が水素分離装置、水素同位体分離装置あるいは膜反応器である請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過膜利用装置が燃料電池システムである請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素吸蔵体の一部又は全てがマグネシウム系合金、チタン系合金、バナジウム系合金、ジルコニウム系合金、あるいは希土類系合金から選ばれる水素吸蔵合金である請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過膜ユニットの温度上昇にともなって水素吸蔵体と気体吸着媒体の温度も上昇し、水素透過膜ユニットの温度低下にともなって水素吸蔵体と気体吸着媒体の温度も低下する機構を有する請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素吸蔵体あるいは気体吸着媒体の温度制御を装置自身が持つ熱により行う請求項6に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素吸蔵体あるいは気体吸着媒体の一部あるいは全てを水素透過膜ユニットの中に配置した請求項6または7に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 感温式バルブのうち少なくとも1つが磁石式である請求項1〜8のいずれかに記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 感温式バルブのうち少なくとも1つが気体吸着媒体を用いたものである請求項1〜8のいずれかに記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 感温式バルブに用いられている気体吸着媒体の一部または全てに水素吸蔵合金が用いられている請求項10に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 感温部1つに対して2つ以上の動作部を持つ感温式バルブを有する請求項1〜8のいずれかに記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過膜、水素吸蔵体および気体吸着媒体を含む空間がバルブ等を用いて外部から隔離されている間、水素透過膜ユニットに供給されるガスをバイパスするようにした請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過膜利用装置が、水素透過膜ユニットに供給するガスを生成する改質器を有している装置において、水素透過膜使用終了時に水素透過膜、水素吸蔵体、気体吸着媒体および改質触媒を含む空間を、バルブ等を用いて外部から隔離する請求項1に記載した水素透過膜利用装置の保護方法。
- 水素透過能を発現する金属又は合金からなる水素透過膜、水素透過膜の下流側の水素透過膜に連通する空間内に設置された水素吸蔵体、水素透過膜の上流側の水素透過膜に連通する空間内に設置された、水素のほかに他のガスも吸着できる、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブ、ゼオライト、エアロゲルから選ばれる気体吸着媒体、水素透過膜の使用開始時あるいは使用中に水素吸蔵体と気体吸着媒体を加熱する加熱手段、水素透過膜使用終了時に水素透過膜と水素吸蔵体と気体吸着媒体を含む空間を閉鎖するバルブ手段を有する水素吸蔵体と気体吸着媒体を用いて残留ガスの一部または全てを吸着して水素透過膜を保護する水素透過膜利用装置であって、空間を外部から隔離するためのバルブのうち少なくとも1つが感温式バルブである水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜がパラジウム、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、白金、ルテニウム、ニオブ、タンタル、マグネシウム、カルシウム、ランタン、からなる群れより選ばれる金属又は合金の1種又は2種以上である請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜利用装置が水素分離装置、水素同位体分離装置あるいは膜反応器である請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜利用装置が燃料電池システムである請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素吸蔵体の一部または全てがマグネシウム系合金、チタン系合金、バナジウム系合金、ジルコニウム系合金、あるいは希土類系合金から選ばれる水素吸蔵合金である請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜ユニットの温度上昇にともなって水素吸蔵合金と気体吸着媒体の温度も上昇し、水素透過膜ユニットの温度低下にともなって水素吸蔵合金と気体吸着媒体の温度も低下する機構を有する請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素吸蔵体あるいは気体吸着媒体の温度制御を装置自身が持つ熱により行う請求項20に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素吸蔵体あるいは気体吸着媒体の一部あるいは全てを水素透過膜ユニットの中に配置した請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 感温式バルブのうち少なくとも1つが磁石式である請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 感温式バルブのうち少なくとも1つが水素吸蔵合金を用いたものである請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 感温部1つに対して2つ以上の動作部を持つ感温式バルブを有する請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜と水素吸蔵体と気体吸着媒体を含む空間がバルブ等を用いて外部から隔離されている間、水素透過膜ユニットに供給されるガスをバイパスするようにした請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜利用装置が、水素透過膜ユニットに供給するガスを生成する改質器を有している装置において、水素透過膜使用終了時に水素透過膜、水素吸蔵体、気体吸着媒体および改質触媒を含む空間を、バルブ等を用いて外部から隔離する請求項15に記載した水素透過膜利用装置。
- 水素透過膜使用終了時に水素透過膜、膜反応器の触媒、水素吸蔵体および気体吸着媒体を含む空間を、バルブ等を用いて外部から隔離する請求項17に記載した水素透過膜利用装置。
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