JP4414786B2 - 2,6−ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするdna及びこれを利用した多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造に有用である新規な2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするDNA、該酵素の製造方法、該酵素を用いたヒドロキシカルボン酸を製造する方法に関する。
多価アルコ−ル芳香族カルボン酸は医・農薬の中間体、液晶、感熱紙、リソグラフプレ−ト等の原料として用いられ、産業上有用な化合物である。例えば、2,6-ジヒドロキシ安息香酸は種々の医薬品や稲、トウモロコシ、小麦用の除草剤の原料として重要な物質である。
従来、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸は、工業的には主に芳香族多価アルコ−ルを原料としてコルベ−シュミット法による炭酸化反応により製造されている。則ち、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸は芳香族多価アルコ−ルの金属塩に炭酸ガスを高温高圧下で反応させる方法により製造されている。しかし、この製造方法は高温・高圧条件下で行われるために危険が伴い、しかも多価アルコ−ル芳香族カルボン酸は色々な位置にカルボン酸が付加した化合物の混合物として生成するので、該混合物から目的化合物を得るためには、別途煩雑な分離精製工程が必要となる。選択的に目的とする多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を化学合成により製造する方法が種々検討されているが、実用化するまでには至っていない。
従来、桐村らによって、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、土壌から新たに分離されたAgrobacterium tumefaciensの菌体反応による生産、酵素の部分精製、もしくは、精製され、その諸性質が報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら現在に至るまでに、その遺伝子はクローニングされておらず、異種微生物での高発現も報告されていない。
また、従来のジヒドロキシ安息香酸の合成方法では、α体やβ体の副生を伴い、γ体である2,6-ジヒドロキシ安息香酸の選択的な合成は困難であった。
また、他のジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素として、2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製と性質、活性中心残基の同定、ペプチド配列解析{Aspergillus nigerの2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製と性質(非特許文献2参照)、精製酵素のペプチド分取とプロテインシーケンシングのデータ(非特許文献3参照)、A. oryzaeの酵素を用いた2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製と性質(非特許文献4参照)、酵母にも2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は存在する(非特許文献5参照)}、4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素はClostridium hydroxybenzoicumから精製と性質、遺伝子クローニングが報告されている{精製と性質、N末端アミノ酸配列の解析、反応の可逆性(非特許文献6参照)、遺伝子クローニングと一次構造解析(非特許文献7参照)}。
また、3,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素はClostridium hydroxybenzoicumの知見{酵素の精製と性質、N末端アミノ酸配列の解析、反応の可逆性(非特許文献8参照)}、プロトカテク酸の代謝に炭酸固定活性が関与する知見(非特許文献9参照)がある。
また、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)を用いた2,6-ジヒドロキシ安息香酸の製造方法(特許文献1参照)が知られているが、反応収率は33%と低く、圧力下における反応例の記載はなされていない。
特開2001-46093号公報 桐村ら、平成15年度日本生物工学会大会要旨集、p.216 Kamath AV,外2名著、「Enzyme-catalysed non-oxidative decarboxylation of aromatic acids: I. Purification and spectroscopic properties of 2,3 dihydroxybenzoic acid decarboxylase from Aspergillus niger.」、Biochem. Biophys. Res. Commun.、1987年、Vol.145、p.586-595 Santha R,外3名著、「2,3-Dihydroxybenzoic acid decarboxylase from Aspergillus niger. A novel decarboxylase.」、Eur. J. Biochem.、1995年、Vol.230、p.104-110 Santha R, 外2名著、「Identification of the active-site peptide of 2,3-dihydroxybenzoic acid decarboxylase from Aspergillus oryzae.」、Biochim. Biophys. Acta.、1996年、Vol.1293、p.191-200 Anderson JJ,およびDagley S.著、「Catabolism of tryptophan, anthranilate, and 2,3-dihydroxybenzoate in Trichosporon cutaneum.」、J. Bacteriol.、1981年、Vol.146、p.291-297 He Z,およびWiegel J.著、「Purification and characterization of an oxygen-sensitive reversible 4-hydroxybenzoate decarboxylase from Clostridium hydroxybenzoicum.」、Eur. J. Biochem.、1995年、p.77-82 Huang J, 外2名著、「Cloning, characterization, and expression of a novel gene encoding a reversible 4-hydroxybenzoate decarboxylase from Clostridium hydroxybenzoicum.」、J. Bacteriol.、1999年、Vol.181、p.5119-5122 He Z,およびWiegel J.著、「Purification and characterization of an oxygen-sensitive, reversible 3,4-dihydroxybenzoate decarboxylase from Clostridium hydroxybenzoicum.」、J. Bacteriol.、1996年、Vol.178、p.3539-3543 Gorny N,およびSchink B.著、「Anaerobic degradation of catechol by Desulfobacterium sp. strain Cat2 proceeds via carboxylation to protocatechuate.」、Appl. Environ. Microbiol.、1994年、Vol.60、p.3396-3400
本発明は、多価アルコールに炭酸を付加して、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を生成する2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードする新規なDNAを提供することを課題とする。さらに、本発明は、該DNAを含むベクターで形質転換された形質転換体を利用して、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を製造する方法の提供を課題とする。
本発明者らは、多価アルコ−ルに広く作用し、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を生成する高活性な酵素をスクリーニングした結果、Agrobacterium tumefaciens IAM12048がこのような特徴を持つ2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を生産することを見いだした。
本発明者らは、この2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードする遺伝子を大腸菌にクローニングし、その塩基配列を解析した結果、驚くべき事に、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードする遺伝子は、これまでに報告されている4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質、3,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードする遺伝子との相同性の低い、全く新規なDNAであることが分かった。
すなわち本発明は、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造に有用な新規な2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするDNA、該酵素をコードするDNAを含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を用いる該酵素並びに多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を製造する方法に関する。
本発明は、より詳細には、
〔1〕 下記(a)から(c)のいずれかに記載の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
〔2〕 〔1〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、
〔3〕 〔1〕に記載のポリヌクレオチドが挿入された組換えベクター、
〔4〕 更に可逆的脱炭酸反応を触媒することができる脱炭酸酵素をコードするポリヌクレオチドが挿入された、〔3〕に記載の組換えベクター、
〔5〕 〔1〕に記載のポリヌクレオチド、または〔3〕もしくは〔4〕に記載の組換えベクターを発現可能に保持した形質転換体、
〔6〕 〔5〕に記載の形質転換体を培養する工程を含む、〔1〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の製造方法、
〔7〕 〔1〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、〔5〕に記載の形質転換体、もしくはその処理物をアルコールに作用させ、該アルコールに炭酸を付加して多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を製造することを特徴とする、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造方法、
〔8〕 2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素、または2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有する微生物菌株を加圧反応条件下、炭酸付加反応を行わせる2,6-ジヒドロキシ安息香酸の製造方法、
〔9〕 加圧反応条件が0.14 MPa以上である、〔8〕に記載の製造方法、を提供するものである。
上記の如く本発明者らは、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造に有用である新規な2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするDNAを見出した。また、該酵素タンパク質をコードするDNAを含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を用いる該酵素並びに多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を製造する方法を見出した。
すなわち、本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、炭酸付加反応の選択性が高く、該酵素を用いることによって選択的な2,6-ジヒドロキシ安息香酸合成が可能になるため、工業的な利用において有利である。また従来の製造方法は、高温・高圧条件下で実施されていたため危険性が伴っていたが、本発明の製造方法はそのような危険性を伴わず安全である。また従来の製造方法では反応収率が33%程度であったが、本発明の製造方法は50−60%と反応収率が良く、工業的な利用において有利である。
本発明における「脱炭酸酵素」とは、脱炭酸反応、すなわちカルボン酸から炭酸が除去される脱炭酸反応を触媒する酵素を意味する。さらに該酵素は、アルコールに対する炭酸付加活性を有し、炭酸過剰条件下においては、脱炭酸反応の逆反応を触媒することができる。従って本発明における「脱炭酸酵素」は、前記脱炭酸反応の逆反応である炭酸を付加する炭酸付加反応を触媒する作用を有する。
2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の活性測定のための基本反応液体積は1 mlとし、20 mMの2,6-ジヒドロキシ安息香酸、100 mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)および酵素液を入れた。反応を30℃で15分間行い、0.1 mlの2 N塩酸を添加して反応を停止させ、HPLC分析した。酵素の1ユニットは1分間で1μmolの1,3-ジヒドロキシベンゼンの生成を触媒する酵素量と定義した。また、タンパク質の定量は、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行うことができる。
1,3-ジヒドロキシベンゼンへの炭酸固定反応は文献(Wieser et al., Carbon dioxide fixation of reversible pyrrole-2-carboxylate decarboxylase from Bacillus megaterium PYR2910, Eur. J. Biochem., 257, 495-499 (1998))にしたがって、気密密閉容器内で行った。反応液体積は2 mlとし、15 mMの1,3-ジヒドロキシベンゼン、3 Mの炭酸水素カリウム、100 mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、および酵素液を入れた。炭酸固定反応は1,3-ジヒドロキシベンゼンの添加で開始し、20℃に加温した。2 mlのメタノールの添加で反応を停止させ、12,000 x gで10分間遠心分離した後、上清をHPLC分析した。
本発明は、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびそのホモログに関する。本発明において、ポリヌクレオチドは、DNAやRNAのような天然に存在するポリヌクレオチドであることもできるし、人工的に合成されたヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオチドであっても良い。また本発明のポリヌクレオチドは、DNA-RNAのキメラ分子であってもよい。
本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、たとえば配列番号:1に示す塩基配列を含む。配列番号:1に示す塩基配列は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしており、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明による2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の好ましい態様を構成する。
本発明のポリヌクレオチドとして、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。当業者であれば、配列番号:1記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982) , Methods in Enzymol.100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1991))などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することが可能である。
本発明において、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有するタンパク質をコードするこれらのポリヌクレオチドは、特に配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対するホモログと言う。ホモログは、変異の導入の他、配列番号:1に記載された塩基配列に基づいて他の生物からPCRクローニングやハイブリダイズによって単離することもできる。たとえば配列番号:1に記載の塩基配列は、Agrobacterium tumefaciens IAM12048より単離された遺伝子の塩基配列である。
また、本発明のポリヌクレオチドには、配列番号:1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドが含まれる。ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号:1に記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば40、60または100個の連続した配列を一つまたは複数選択したDNAをプローブDNAとし、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system (Amersham Pharmaica Biotech社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、wash:42℃、0.5x SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。より具体的な「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1%SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%以上のホモロジーを有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。タンパク質のホモロジー検索は、例えばSWISS-PROT, PIR,DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベースや DDBJ、EMBL、あるいはGene-BankなどのDNA配列に関するデータベース、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の遺伝子工学的な製造に有用である。あるいは本発明のポリヌクレオチドによって、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造に有用な2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性を有する微生物を遺伝子工学的に作り出すことができる。
本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、たとえば、Agrobacterium tumefaciens IAM12048より2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を精製し、その部分アミノ酸配列を明らかにして、PCR、ハイブリダイゼーションなどの手法により単離することも可能である。例えば、下記実施例に記載するように、Agrobacterium tumefaciens IAM12048より得られた2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製酵素のN末端アミノ酸配列を決定した。
この配列をFASTAプログラムにてデータベースサーチを行なったところ、A. tumefaciens C58のconserved hypothetical protein Atu2529(accession No. AF2887)のN末端アミノ酸配列と完全に一致した。accession No. AF2887の上下流塩基配列からプライマーを作成し、A. tumefaciens IAM12048の染色体DNAを鋳型としてPCRを行ない、約1.1 kbpの増幅断片を得た。この増幅断片をpT7Blue vectorへサブクローニングし、DNAシーケンシングを行い、N末端アミノ酸配列27残基の一致を確認した。終止コドンTGAまでに327アミノ酸残基がコードされ、サブユニット分子量は37492 Daと算出され、精製酵素のSDS-PAGEによるサブユニット分子量38 kDaと一致した。A. tumefaciens IAM12048からクローニングした遺伝子の機能確認のため、大腸菌において遺伝子を発現させ、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性を評価した。ゲノムDNAを鋳型としたPCRによって酵素遺伝子を増幅させ、増幅断片をサブクローニングした後、発現用プラスミドを作成した。
該発現プラスミドを大腸菌に形質転換し、1 mMのIPTGと50μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地で、28℃で28時間振とう培養した。培養菌体を超音波破砕し、遠心分離して得られた上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液から2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性が検出され、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするDNAを含む形質転換体あるいは形質転換株を得ることが出来た。
また本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を提供する。本発明のタンパク質としては、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、および、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のホモログが挙げられる。
本発明の2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のホモログとは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を意味する。本発明において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等とは、当該タンパク質が2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有することを意味する。当業者であれば、配列番号:1記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982) , Methods in Enzymol.100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のホモログをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。該2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のホモログをコードするポリヌクレオチドを宿主に導入して発現させることにより、配列番号:2に記載の2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のホモログを得ることが可能である。
さらに、本発明の2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のホモログとは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%以上のホモロジーを有するタンパク質をいう。
本発明の2,6-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素をコードするポリヌクレオチドは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。
配列番号:1に記載の塩基配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより本発明のDNAを得ることができる。
さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のポリヌクレオチドを得ることも可能である。
なお本発明のポリヌクレオチドは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
また本発明は、本発明のポリヌクレオチドが挿入された組換えベクター、さらに可逆的に脱炭酸反応を触媒することができる脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入した組換えベクターを提供する。例えば、上記のようにして単離された、本発明による2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを公知の発現ベクターに挿入することにより、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素発現ベクターが提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を形質転換体より得ることができる。
本発明において2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターにより形質転換され、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性を発現することができる微生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、たとえば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。微生物中などにおいて、本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素遺伝子を発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中に、本発明のDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネータ−などに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992)などに詳細に記述されている。
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc(lac、trpの融合)、λファージPL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。これらの中で、市販のpSE420(Invitrogen製)のマルチクローニングサイトを一部改変したベクターpSE420D(特開2000-189170に記載)が好適に利用できる。
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)などが利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子などが利用できる。
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984))などのプラスミドベクターが利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985))、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614 (1979))などが利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である(J. Gen. Microbiol. 138,1003 (1992))。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486(Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991))、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995))が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997))。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS(自律複製に関与する遺伝子)及びサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ(Zygosaccharomyces rouxii)由来のpSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))などが利用可能である。
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子(PARS1、PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能なAOXなど強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859 (1987))。また、ピキア・アンガスタ(Pichia angusta、旧名ハンゼヌラ・ポリモルファ Hansenula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導されるAOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス(Candida utilis)などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平08-173170)。
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー(Aspergillus oryzae)などが、カビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。
本発明において使用する2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有する微生物は、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有する属に属するすべての菌株、突然変異株、変種、遺伝子操作技術の利用により作成された本発明の酵素活性を獲得した形質転換株を含む。
すなわち本発明は、本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を発現する形質転換体を利用したアルコールの炭酸付加による多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造方法に関する。本発明には、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターにより形質転換された形質転換体を培養する工程も含まれる。本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は、炭酸付加反応の選択性が高いところから、工業的な利用において有利である。本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体、形質転換体を含む培養物、その処理物を反応溶液と接触させることにより、目的とする酵素反応を行わせることができる。なお、酵素と反応溶液の接触形態は、これらの具体例に限定されるものではない。反応溶液は、基質を酵素活性の発現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したものである。本発明における2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を含む微生物の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したものなどが含まれる。
本発明による多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の製造方法において、原料となるアルコールとしては、例えばレソルシノール、カテコール、ハイドロキノンなどをあげることができる。
また本発明は、本発明の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体を用いて、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸の炭酸付加による芳香族アルコールの製造方法に関する。本発明において基質とすることができる多価アルコ−ル芳香族カルボン酸としては例えば、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
本発明の形質転換体並びにその処理物を用いた炭酸付加反応もしくは脱炭酸反応は、水中もしくは水に溶解しにくい有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルt-ブチルエーテルなどの有機溶媒中、もしくは、エタノールやアセトン、ジメチルスルホキシド等の水性媒体との2相混合系、或るいは、超臨界炭酸ガス中において行うことができる。
本発明の炭酸付加反応もしくは脱炭酸反応は、固定化酵素、膜リアクター等を利用して行うことも可能である。
本発明のアルコールの炭酸付加により生成する多価アルコ−ル芳香族カルボン酸、脱炭酸反応により生成する芳香族アルコールの精製は、菌体、タンパク質の遠心分離、膜処理等による分離、溶媒抽出、蒸留、イオン交換クロマトグラフィー、晶析等を適当に組み合わせることにより行うことができる。反応液をろ過、遠心分離等により処理して固形物を除去した後、得られた溶液に塩酸や硫酸等の酸溶液を加えて酸性化することにより、多価アルコ−ル芳香族カルボン酸を回収することができる。例えば、2,6-ジヒドロキシ安息香酸では、微生物菌体を含む反応液を遠心分離し、微生物菌体をのぞいた後、その上清に酸を添加することによりpHを2以下にし、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルt-ブチルエーテルなどの溶媒を添加して、2,6-ジヒドロキシ安息香酸を溶媒層に抽出する。これを相分離後、エバポレーターにより濃縮し、結晶化することにより、純度の高い2,6-ジヒドロキシ安息香酸を精製することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、本発明者らの研究室保存菌株において2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を有していたAgrobacterium tumefaciens IAM12048の精製酵素N末端アミノ酸配列を解析し、酵素遺伝子のクローニング、一次構造解析、大腸菌における発現を行った。具体的な方法は以下に示すとおりである。
2,6-ジヒドロキシ安息香酸分解活性を有する微生物のスクリーニング
2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の分解活性を有する微生物のスクリーニングは静置培養で行い、以下に示す培地20 mlを含む試験管中で28℃で6日間行った。培地組成:2,6-ジヒドロキシ安息香酸 1 g、酵母エキス1 g、リン酸水素二アンモニウム 2 g、硫酸マグネシウム七水和物0.5 g、金属溶液 5 ml(吉田ら、Novel reversible indole-3-carboxylate decarboxylase catalyzing nonoxidative decarboxylation, Biosci. Biotechnol. Biochem., 66, 2388-2394 (2002))およびビタミン溶液5 mlを1 Lの水道水に溶解し、pHを7.0に調製した。ビタミン溶液には100 ml中にビオチン10 mg、パントテン酸カルシウム 2 mg、イノシトール10 mg、ニコチン酸2 mg、ピリドキシン塩酸塩2 mg、4-アミノ安息香酸1 mg、リボフラビン1 mg、葉酸0.05 mgが含まれている。
Agrobacterium tumefaciens IAM12048菌体を用いた反応
前培養を28℃で2日間、4 mlの培地を試験管に入れ、115 strokes/minの振とう培養で行った。前培養用培地は、1 Lあたり酵母エキス5 g、肉エキス5 g、塩化ナトリウム2 gを含み、pHを7.0に調整した。前培養の培養液はスクリーニング時に用いた培地組成30 ml(500 ml振とうフラスコ中)にスケールアップし、28℃で1日間培養した。生育菌体は12,000 x g、15分間の遠心分離で集菌し、0.15 M 塩化ナトリウム溶液に懸濁して、菌体反応に用いた。
反応液体積2 mlとし、50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)中で、培養液12 ml分の菌体を20 mM の2,6-ジヒドロキシ安息香酸に作用させた。温度30℃で10分間反応させ、0.2 mlの2 N塩酸の添加で反応を停止させた。12,000 x gで10分間遠心した後、上清をHPLC分析した。この菌体を用いた反応における全活性は、1 mlの培養液から得られた菌体を用いて、1分間あたりに生成した1,3-ジヒドロキシベンゼンの量と定義した。
培地組成の最適化
培地組成を最適化するために、以下の炭素源を検討した:グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、マルトース、ソルビトール、クエン酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリセロール。
窒素源については以下の化合物を検討した:酵母エキス、肉エキス、ポリペプトン、カザミノ酸、大豆加水分解物、コーンスティープリカー、NZアミン、グルタミン酸ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、硝酸ナトリウム。
酵素の誘導効果の検討には以下の化合物を用いた:2,6-ジヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシベンザミド、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2-メチルレゾルシノール、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、3,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、3-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸、1,3-ジヒドロキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシピリジン。
酵素活性測定
2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の活性測定のための基本反応液体積は1 mlとし、20 mMの2,6-ジヒドロキシ安息香酸、100 mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)および酵素液を入れた。反応を30℃で15分間行い、0.1 ml の2 N塩酸を添加して反応を停止させ、HPLC分析した。酵素の1ユニットは1分間で1μmolの1,3-ジヒドロキシベンゼンの生成を触媒する酵素量と定義した。
炭酸固定反応
1,3-ジヒドロキシベンゼンへの炭酸固定反応は文献(Wieser et al., Carbon dioxide fixation of reversible pyrrole-2-carboxylate decarboxylase from Bacillus megaterium PYR2910, Eur. J. Biochem., 257, 495-499 (1998))にしたがって、気密密閉容器内で行った。反応液体積は2 mlとし、15 mMの1,3-ジヒドロキシベンゼン、3 Mの炭酸水素カリウム、100 mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、および酵素液を入れた。反応は1,3-ジヒドロキシベンゼンの添加で開始し、20℃に加温した。2 mlのメタノールの添加で反応を停止させ、12,000 x gで10分間遠心分離した後、上清をHPLC分析した。
2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製
2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製の全ステップは4℃で行い、特記しない場合は1 mMジチオスレイトースを含むリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を標準緩衝液として用いた。540mlの培養液から得た乾燥菌体重量15 g分に相当するA. tumefaciens IAM12048の菌体を100 mM緩衝液50 mlに懸濁し、超音波破砕機(Insonator 201M, 久保田社製)を用いて100 Wで20分間破砕した。細胞残渣を12000 x gで20分間の遠心分離によって除去して無細胞抽出液を得た。硫安分画で30−60%飽和画分を得た。その沈殿を10 mM緩衝液に溶解し、10 mM緩衝液を用いて透析した後、10 mM緩衝液で平衡化したDEAE-セファセルカラム(18 x 80 mm)に供した。0.1 Mの塩化カリウムを含む100 mM緩衝液で洗浄した後、0.2 M塩化カリウムを含む100 mM緩衝液で酵素活性画分が溶出した。活性画分を回収し、20%飽和の硫酸アンモニウムを含む10 mM緩衝液に対して透析した。この酵素液を20%飽和で硫酸アンモニウムを含む10 mM緩衝液で平衡化したフェニルセファロースCL-4Bカラム(10 x 130 mm)に供した。カラムを5%飽和濃度で硫酸アンモニウムを含む10 mM緩衝液で洗浄した後、酵素活性画分は10 mM緩衝液で溶出した。
分析方法
反応液のHPLC分析にはShimadzu社製LC-10A・SPD-10Aシステムを用い、Waters社製Spherisorb OS2カラム(4.6 x 150 mm)を用いた。50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 2.8)とアセトニトリルを9:1の比で混合し、分析用溶媒として用いた。流速は1.0 ml/minとし、278 nmの吸光度で検出した。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動は12%(w/v)ポリアクリルアミド濃度のスラブゲルで行い、クマシーブリリアントブルーR-250で染色した。
タンパク質濃度はBradfordの方法に従って定量し、牛血清アルブミンを標準タンパク質として検量線を作成した。
精製酵素の分子量はTSG G-3000 SWカラム(0.75 x 60 cm)を用いたHPLC分析から算出した。この時の分析では、流速を0.7 ml/minとし、0.2 M塩化ナトリウムを含むリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を溶媒として用いた。酵素分子量は以下のタンパク質を用いた検量線から算出した:グルタミン酸脱水素酵素(290 kDa)、乳酸脱水素酵素(142 kDa)、エノラーゼ(67 kDa)、アデニル酸キナーゼ(32 kDa)、チトクロームc(12.4 kDa)。
NMR分析には溶媒としてアセトン-d6を用い、Jeol KNM-400 F17システムで行った。
試薬
2,6-ジヒドロキシ安息香酸は和光純薬社製を用いた。酵母エキス、HPLC用の分子マーカータンパク質はオリエンタル酵母社製を用いた。DEAE-セファセル、フェニルセファロースCL-4B、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動用の低分子量マーカーはアマシャムファルマシア社製を用いた。
〔実施例1〕酵素精製とN末端アミノ酸配列解析
A. tumefaciens IAM12048より2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を上記「2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の精製」に示したステップで単一にまで精製した。精製酵素のSDS-PAGEを行い、PVDF膜にブロッテインングした後、気相プロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列を決定した。
N末端アミノ酸配列は、MQGKVALEEHFAIPETLQDSAGFVPGD(配列番号:3)(27アミノ酸)であった。この配列をFASTAプログラムにてデータベースサーチを実行した結果、A. tumefaciens C58のconserved hypothetical protein Atu2529(accession No. AF2887)のN末端アミノ酸配列と完全に一致した。この配列はC58株のゲノム解析により得られている(Science (2001) 294, 2317-2323)。
〔実施例2〕A. tumefaciens IAM12048の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素遺伝子のクローニング
上述のaccession No. AF2887の一次構造を、可逆的脱炭酸酵素である4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素、ピロール-2-カルボン酸脱炭酸酵素、インドール-3-カルボン酸脱炭酸酵素とアライメント解析した。
その結果、相同領域を見いだすことは困難であり、また、既知の可逆的脱炭酸酵素群で保存性が認められた配列(E-G-P-F/M-P-G)が存在しなかった。そこで、遺伝子の塩基配列の解析はaccession No. AF2887の塩基配列に基づいて行った。
ORF全領域をPCRによって増幅させるために、accession No. AF2887の上下流塩基配列からプライマーを作成し、A. tumefaciens IAM12048のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行ない、約1.1 kbpの増幅断片を得た。この増幅断片をpT7Blue vectorへサブクローニングし、DNAシーケンシングを行った。なお、PCR用プライマーは数種作成したが、増幅が認められないものも多くあった。このことから、IAM12048株とC58株で塩基配列で相違があることが示唆された。
〔実施例3〕塩基配列および一次構造
DNAシーケンシングにより決定した塩基配列と推定される一次構造を図1に示した。PCRに用いたプライマー配列(ATGATTGGCCAGAGCATGC/配列番号:4、CAGCCTTTCGTCTATATGGC/配列番号:5)には誤りがある可能性があるため、これを除外した1065 bpを配列と決定した。開始コドンATG以下にプロテインシーケンシングで得られたN末端アミノ酸配列27残基の一致を確認した。終止コドンTGAまでに327アミノ酸残基がコードされ、サブユニット分子量は37492 Daと算出された。精製酵素のSDS-PAGEによるサブユニット分子量は38 kDaと推定され、この値と一致した。
A. tumefaciens C58のconserved hypothetical protein Atu2529との相同性は96%で、アミノ酸327残基の中で12残基が異なっていた。データベースへのホモロジーサーチの結果では、その他にはBordetella bronchisepticaのhypothetical protein(46%)、Bordetella parapertussisのhypothetical protein(46%)、Synechocystis sp. PCC6803のhypothetical protein(38%)、Sphingomonas paucimobilisの5-カルボキシバニリン酸脱炭酸酵素(34%)、Staphylococcus aureusのORF(35%)、Neurospora crassaのhypothetical protein(33%)が30%程度の相同性を示したに過ぎず、機能未知タンパク質は何らかの脱炭酸酵素の可能性が示唆される程度であった。
〔実施例4〕活性中心残基の推定
Aspergillus属の2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素ではシステイン残基が活性中心に存在することが推定され、Cysが修飾されたペプチド断片のアミノ酸配列がLLGLAETCK(配列番号:10)と決定されている(Santha et al, Eur J Biochem (1995) 230, 104-110)。また、精製酵素のアミノ酸配列データが2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素と類似である(図2)。
そこで、一次構造を解析した結果、LLGLAETCKに相当する配列LAEECA(配列番号:11)が認められた。このCys88が活性中心に存在する可能性が示唆される。
〔実施例5〕大腸菌における2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素遺伝子の発現
A. tumefaciens IAM12048からクローニングした遺伝子の機能確認のため、大腸菌において遺伝子を発現させ、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性を評価した。発現用ベクターpKK223-3のEcoRI/HindIIIギャップに酵素遺伝子を組込むために、それぞれのリンカー配列を持つプライマー(P1: GAATTCCATGCAAGGCAAGGTCGCT(配列番号:6); P2:AAGCTTGCCATATAGACGAAAGGCTG(配列番号:7)、下線部はリンカー配列)を用いてゲノムDNAを鋳型としたPCRによって酵素遺伝子を増幅させた。増幅断片をpT7 Blueにサブクローニングした後、EcoRIとHindIIIで消化し、得られたDNAフラグメントをpKK223-3のEcoRI/HindIIIギャップにライゲーションし、発現用プラスミドpK26AT(FERM P-19657)を作成した。
宿主E. coli JM109にpK26ATを形質転換し、1 mMのIPTGと50μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地で、28℃で28時間振とう培養した。培養菌体を超音波破砕し、遠心分離して得られた上清を無細胞抽出液とした。また、コントロールとしてpKK223-3を形質転換した株では脱炭酸酵素活性は検出されなかった。pK26ATを形質転換したE. coli JM109では2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素活性が0.0073 units/mgの比活性で検出され、クローニングした遺伝子が2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素をコードすることを確証した。
A. tumefaciens IAM12048から調製した無細胞抽出液での酵素比活性は0.0211 units/mgで、精製後の酵素標品の比活性が0.374 units/mgである。よって、A. tumefaciens IAM12048では可溶性タンパク質の約6%を2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素が占めると算出される。
〔実施例6〕形質転換体を用いた炭酸固定反応
E. coli JM109にpK26ATを形質転換し、1 mMのIPTGと50μg/mlのアンピシリンを添加したLB培地(酵母エキス5 g、肉エキス10g、塩化ナトリウム10 g、蒸留水1L、pH7.0)で、28℃で28時間振とう培養した。生育菌体は12,000 x g、15分間の遠心分離で集菌し、0.15 M 塩化ナトリウム溶液に懸濁して、菌体反応に用いた。反応は気密密閉容器内で行った。反応液体積は2 mlとし、15 mMの1,3-ジヒドロキシベンゼン、3 Mの炭酸水素カリウム、100 mMのリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)、および菌体懸濁液を入れた。炭酸固定反応は1,3-ジヒドロキシベンゼンの添加で開始し、20℃に加温し、24時間反応を行った。2 mlのメタノールの添加で反応を停止させ、12,000 x gで10分間遠心分離した後、上清をHPLC分析したところ、2mMの2,6-ジヒドロキシ安息香酸が生成していた。
〔実施例7〕圧力下での反応
Agrobacterium tumefaciens IAM12048の休止菌体を用いて2,6-ジヒドロキシ安息香酸生成反応を行った。反応液組成にはm-ジヒドロキシベンゼン12.5 mM、リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)50 mM、炭酸水素カリウム3 Mを入れ、密閉容器内で35℃で反応を行った。35℃で検討した理由は、二酸化炭素の臨界点は31℃で73気圧であるためである。
反応の継時変化を2 mlの反応溶液に20 ml分の培養菌体を入れて検討した。密閉容器内は炭酸水素カリウムから発生するCO2ガスによって約0.14 MPaの圧力となる。
結果、反応は開始後6時間で平衡に達し、変換率44%で5.5 mMの2,6-ジヒドロキシ安息香酸が生成した(図3左)。
次に、液体および超臨界状態の二酸化炭素を用いた炭酸固定反応を日本分光社製の反応システムを用いて検討した。反応液体積は5 mlとし、75 ml培養液分の菌体を用いた。反応容器内を4 MPaから10MPaとなるように液体二酸化炭素を入れ、反応容器を35℃に保って24時間の炭酸固定反応を行った。二酸化炭素のみの場合、4 MPa、6MPaでは液体、8 MPaは亜臨界〜超臨界、10 MPaで超臨界状態に相当するものとして反応系を設定した。
結果、いずれの場合も図3に示すように、炭酸固定反応は進行し、24時間後の変換率50-60%であった。一方、圧力が0の場合の変換率は30%であった。
図1は、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素遺伝子の決定された塩基配列および一次構造について示す図である。上段の配列は塩基配列を示す。下線部はPCRに用いたプライマー領域、四角で囲んだ領域は開始および終止コドンを示す。下段の配列は、一次構造を示す。下線部は確認したN末端アミノ酸配列を示す。 図2は、2,6-および2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素のN末端アミノ酸配列を比較した図である。各配列を配列番号:8および9に示す。 図3の左図は、35℃、約0.14Paの圧力における2,6-ヒドロキシ安息香酸の生成反応の経時変化を示すグラフである。右図は、35℃24時間で、圧力を4MPa〜10MPaまで変化させた場合の炭酸固定反応の変化を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素、または2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸活性を有する微生物菌株を加圧反応条件下、炭酸付加反応を行わせる2,6-ジヒドロキシ安息香酸の製造方法であって、該加圧反応条件が6〜8 MPaであることを特徴とする方法
  2. 前記微生物がAgrobacterium属の微生物である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記微生物がAgrobacterium tumefaciens IAM12048株である、請求項1に記載の製造方法。
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