JP4411880B2 - フラッシュランプ光照射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体基板もしくは液晶基板への光照射を行うフラッシュランプ光照射装置に係わり、更に詳しくは、極めて短時間で前記半導体基板もしくは液晶基板の活性化、結晶化等の光加熱処理を行うフラッシュランプ光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より半導体の集積回路の製造工程には、酸化やアニール等の熱処理を行う加熱工程が設けられる。中でも浅い拡散層であるpn接合の形成プロセスは重要な熱処理工程といわれる。pn接合を形成する場合、イオン注入によってシリコン基板中に不純物を導入し、続いて熱処理によって注入された不純物の活性化処理を行うが、かつては、活性化処理に拡散炉を使用する時代もあったが、近年ではハロゲンランプを用いて急速加熱処理が行われるようになってきた。
【0003】
しかし、より近年では一層の高集積化の進展により、pn接合深さは20nmオーダーが求められるようになり、もはやハロゲンランプによる急速加熱では薄い拡散層を制御することは困難となってきた。近年、このような要望に応える加熱手段として、点灯時間が極めて短く高い照射エネルギーが得られるフラッシュランプを用い、被処理物の大きさに応じてその配列本数を適宜設定して構成したランプ装置が用いられるようになっている。特開2002−198322号公報にはフラッシュランプを複数本使用したウエハ加熱装置が開示されている。また、特開2002−151291号公報には複数本のフラッシュランプを点灯させる点灯装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−198322号公報
【特許文献2】
特開2002−151291号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
半導体基板への光照射を行うフラッシュランプ光照射装置、特に基板の急速加熱に使用するフラッシュランプ光照射装置は、数ミリ秒以下の極短時間内に20ジュール/cmの光エネルギーをウエハ面に注入することが要求される。この光エネルギーを基板全面で得ようとすると、1本のランプではランプへの負荷が過大すぎて破裂してしまう。従って、複数本のランプを同時に点灯させて光エネルギーを得る。すなわち、1回のフラッシュ発光に対して、装置全体では膨大な充電量(例えば100キロジュール以上)となる。従って、充電を担うコンデンサは必然的に大型となり、1クーロン以上の電気容量を持ち、1本のランプ回路分で40kg以上となり装置全体では1000Kgを超える大重量のコンデンサが必要になる。
【0006】
半導体基板の急速加熱は前述のごとく、イオン注入工程後に連続する工程である。よって、フラッシュランプの発光装置は半導体仕様のクラス1000以下のクリーンルーム内に置かれる。しかし、フラッシュランプを発光させるためのエネルギーを蓄えるコンデンサが金属筐体、プラスチック絶縁材料や絶縁油をその主材料とするものにおいては、その油分や、万一絶縁不良を起こした場合の発煙などがコンデンサ周囲に漏れ、また、漏れた絶縁油が引火したりした場合にはクリーンルームが汚染する恐れがある。
【0007】
しかし、従来、フラッシュランプ光照射装置を設置するにあたり、コンデンサの油分その他による周囲の汚染についての問題につき認識がされたことはなかった。そこで、本発明の目的は、コンデンサを含めた電源部から発生する油分や発煙などがプロセス処理施設にある半導体基板やフラッシュランプへ付着する恐れがないフラッシュランプ光照射装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に発明は、複数のフラッシュランプと少なくとも1つの反射ミラーとからなる光照射部と、該複数のフラッシュランプに対して発光エネルギーを供給する複数のコンデンサを有し、該コンデンサに対して充電電流を供給する共通の充電回路を具備した給電部を有し、ランプの点灯動作を概ね全灯同じタイミングで点灯させるフラッシュランプ光照射装置であって、前記光照射部は、空調装置から供給された清浄エアが天井面からクリーンルーム内に吹き出し、クリーンルームの床面あるいは側面下方から排気する下向流型のクリーンルーム内に設置され、前記給電部は該クリーンルーム外であって、該クリーンルームから排気されるエアの下流側の階下、または前記光照射部と独立した給排気系設備内に設置されてなることを特徴とするフラッシュランプ光照射装置とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記コンデンサは、内部に油脂を含む構成であることを特徴とする請求項1に記載のフラッシュランプ光照射装置とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記コンデンサは各々1クーロン以上の電気容量を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のフラッシュランプ光照射装置とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記コンデンサと前記フラッシュランプを結ぶ一つの放電回路の給電線の総延長が10m以上60m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフラッシュランプ光照射装置とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の光照射装置の概略構成を示す。
光照射装置10は、シリコンウエハWを被処理物とするものであって、雰囲気ガス導入口11Aと、雰囲気ガス排出口11Bとを有するチャンバー11と、このチャンバー11内に配置されたシリコンウエハWを支持するためのステージ12とを備えている。チャンバー11の天井面(図1において上面)には、透光部材として石英の窓13がチャンバー内を気密を保つ構造で設けられる。
【0013】
窓13の上方には、複数のフラッシュランプ20が加熱源として設けられている。ステージ12の内部には予備加熱手段としてのヒータ30が設けられている。このヒータ30は、ステージ12に埋設されて、チャンバー制御回路31により温度制御される。このチャンバー制御回路31では、ステージ12の昇降機構14やガス導入口11A、ガス排出口11Bの開閉制御なども行なわれる。
【0014】
この光照射装置10において、チャンバー11の搬送扉15を開き、シリコンウエハWがチャンバー11内に搬送機40によって搬入されると、チャンバー11の搬送扉15を閉じて、所定の内部雰囲気のパージを行った後、ヒータ30によりシリコンウエハWを不純物の熱拡散が問題にならない所定温度まで予備加熱した後、フラッシュランプ20を発光させることでシリコンウエハWへの閃光放射による熱処理が行なわれる。
【0015】
このような熱処理により、シリコンウエハWはその表層部分が急速に高温になるよう加熱され、その後、熱拡散により表層部は急速に冷却されてほぼ予備加熱温度近傍まで温度が下がる、その後、チャンバー11から搬出される。なお、予備加熱はウエハの厚み方向の温度勾配を小さくすることと照射面の温度を必要な程度まで上昇させるために必要なランプに注入するエネルギーを最小に留めるという理由で行なうことが好ましく、加熱温度は、400〜600℃の範囲から選択され、例えば、500℃である。
【0016】
また、ヒータ30とフラッシュランプ20による熱処理中におけるウエハの表面温度は1000℃以上になり、具体的には1000℃〜1300℃の範囲で熱処理される。このように、ウエハWにおける最大温度を1000℃以上にまで加熱することにより、ウエハW表層部分に確実に不純物拡散層を形成することができる。
【0017】
フラッシュランプ20は、窓13に沿って等間隔で並行に配列されており、これらフラッシュランプ20に対して共通の反射鏡32が覆い被さり、この反射鏡32を光照射部であるケーシング33が収納する。また、各フラッシュランプ20の点灯動作は給電部34により制御される。窓13に沿って、フラッシュランプ20の光をウエハWに照射するための透光部材36が光照射部であるケーシング33のフラッシュランプ20とWが対向する部分に設けられている。
【0018】
図2は、図1の光照射装置に使用されるフラッシュランプ20の概略構成を示す説明図である。直管型の石英ガラス製の放電容器21には、例えば、キセノンガスが封入されており、両端が封止されて放電容器内部に放電空間が区画される。放電空間内には陽極22、陰極23が対向配置しており、放電容器21の外面には長手方向にトリガー電極24がトリガーバンド25に保持されて配設される。
【0019】
フラッシュランプ20について数値例をあげると、放電容器の内径はφ8〜15mmの範囲から選択され、例えば10mm、放電容器の長さは200〜550mmの範囲から選択され、例えば300mmである。
【0020】
封入ガスであるキセノンガスの封入量は2.6kPa〜20kPa(200〜1500torr)の範囲から選択され、例えば6.7kPa(500torr)である。また、主発光成分としてはキセノンガスに限らず、その代わりにアルゴンやクリプトンガスを採用することもできる。また、キセノンガスに加えて水銀など他の物質を添加することもできる。
【0021】
電極は、タングステンを主成分とする焼結型電極であって、大きさは外径が4〜10mmの範囲から選択され、例えば5mm、長さが5〜9mmの範囲から選択され、例えば7mmである。電極間距離は160〜500mmの範囲から選択され、例えば280mmである。また、陰極にはエミッターとして酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、アルミナ(Al)などが混入されている。さらに、トリガー電極は、ニッケルやタングステンで形成されるワイヤ状のものであり放電容器に接触される。
【0022】
図3は、図1に示す給電部34であって、フラッシュランプ20の点灯回路を示すもので、特に、複数のフラッシュランプ20に対して共通の充電回路Sと各フラッシュランプに対応する発光回路Hを有している。
【0023】
充電回路Sは、交流電源ACに接続され、スイッチングインバータ回路、トランスT、整流回路、およびインバータ回路の制御回路から構成される。
【0024】
整流回路の後段には、フラッシュランプごとに設けられた発光回路H(H1、H2・・・Hn)が接続される。各発光回路Hは、逆流防止ダイオードD、電圧検出用抵抗回路R、コンデンサC、チョークコイルLなどから構成され、この発光回路Hにフラッシュランプ20が接続される。
【0025】
また、各フラッシュランプ20には、トリガー電極24が併設され、このトリガ電極24はトリガー回路26に接続される。なお、フラッシュランプ20と発光装置Hは、実際には20〜30個接続されている。
【0026】
このような給電部において、インバータ回路を経て各発光回路Hの主コンデンサCにエネルギーが充電される。コンデンサCに十分なエネルギーが充電されると、トリガー電極24の印加によって、石英ガラスからなる放電容器を誘電体として電界を誘発するとともに、それにつれてコンデンサCのエネルギーが一騎に放電してフラッシュ発光(閃光発光)をする。
【0027】
ここで、各発光回路HではコンデンサCの充電電圧を検知するとともに、全ての発光回路のコンデンサCが充電を完了したら、全てのトリガー電極に同時に電圧を印加させて、フラッシュランプを同じタイミングで一斉に発光させなければならない。
【0028】
このような給電部によるフラッシュランプの発光について、数値例をあげると、コンデンサCの充放電は、例えば1分間に0.5〜2回、具体的には1回の割合で繰り返され、コンデンサCには、例えば、2000〜5000Vの範囲から選択され、例えば4500V、エネルギーで表現すると1200〜7500Jの範囲から選択され、例えば6000Jものエネルギーを各フラッシュランプに供給する。
【0029】
フラッシュランプの本数は、前記のように5〜30本から選択されて、例えば、30本である。そして、照射面における光強度は、フラッシュランプの総本数が5〜30の範囲の場合に、10〜50J/cm範囲から選択され、例えば20J/cmとなる。
【0030】
前述の給電部34には、ランプにエネルギーを供給するコンデンサが30個、ランプと同数具備され、その重さは1500kgであり、また、エネルギーの総和は150KJである。また、充電部や制御部などを含めた給電部34の総重量は3800kgである。
【0031】
また、設置されるクリーンルームは図4のような構造となっている。床51は格子状のグレーティング床となっており、クリーンルームの天井52から濾過された清浄エア53がクリーンルーム内を略垂直に降り注ぎ、エアの流れ57となって、グレーティングの床51を通って階下室54へ流入する。階下室54では排気用取り入れ口55が設けられ、階下室54から外部へ排出される。ウエハWはパーティクルを極端にきらうため、ウエハWを処理するチャンバー11およびウエハWに照射光を供給する光照射部であるケーシング33は清浄エア53が流出する天井52に近いクリーンルーム56で処理される。なお、エアの流れ57はクリーンルームの構造によってはクリーンルームの側面下方から排気することもある(不図示)。
【0032】
給電部34は、階下室54に設置され、ランプへのエネルギーの供給や各制御信号、安全上のインターロックなどのケーブル群35(追加)により接続されている。ケーブル群35の長さは、実施例では20mである。ここで、万一給電部内のコンデンサ38が製造不具合などにより油漏れを起こしたとすると、油もしくは油の蒸気37が給電部34の換気口34aなどの開口部から漏れ、エア中に混入する。しかしながら、前述のようなエアの流れ57が存在するため、ウエハWを処理しているクリーンルーム56内には混入せず、排気用取り入れ口55に向かって油もしくは油の蒸気37は進行する。図示していないが、給電部34は、光照射部と独立した給排気系設備内に設置してもよい。
【0033】
油漏れは漏油センサー(不図示)などにより検知し対策することになるが、漏油は微量であり、漏れを直ちに検出することは非常に困難である。本発明のように、給電部をウエハを処理するクリーンルーム外であって、クリーンルームから排気されるエアの下流側の階下、または光照射部と独立した給排気系設備内に設置することで、クリーンルーム内がコンデンサからの油により汚染されることを確実に抑止することができる。
【0034】
ケーブル群35の長さは、光照射部であるケーシング33と給電部34との設置場所の関係できまる。しかしながら、前述のように照射部に150KJものエネルギーをわずか数ミリ秒で送り込むためには配線の抵抗はできるだけ低く押さえなければならない。このため、本実施例ではAWG12規格(電線断面積3.5mm)であり、抵抗値は5Ω/1000mである。電線は行きと戻りがあるので、ケーブル長の2倍強となる。電線の抵抗が増えるに従い、電線でのエネルギーロスが問題となってくる。
【0035】
エネルギーロスは、抵抗に比例し、電流の2乗に比例する。上記ウエハWの処理は短時間に処理を行う必要があるため、大電流を流すことになる。ウエハWの処理に十分なエネルギーを送り込むにはコンデンサとフラッシュランプを結ぶ給電線の長さは+側−側の対で考えた場合、一つの放電回路の給電線の総延長は長くても60mまでとするのがエネルギー効率の面からは望ましい。また、給電部をクリーンルームの下流側に配置することから、一つの放電回路の給電線の総延長は短くとも10mは必要である。
【0036】
【発明の効果】
本発明のフラッシュランプ光照射装置によれば、万一、給電部内のコンデンサが製造不具合などにより油漏れを起こし、給電部内照射部の換気口などの開口部から油が漏れたり、エア中に油の微粒子となって混入したとしても排気口に向かうエアの流れが存在することになり、シリコンウエハを処理しているクリーンルーム56内には混入せず、所定の処理を不具合なく、行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光照射装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の光照射装置のフラッシュランプの概略構成を示す説明図である。
【図3】図1に示す給電部の回路構成を示す説明図である。
【図4】本発明が適用される熱処理装置の各要素の配置を示す説明図である。
【符号の説明】
10 光照射装置
11 チャンバー
11A 雰囲気ガス導入口
11B 雰囲気ガス排出口
12 ステージ
13 窓
14 昇降機構
15 搬送扉
20 フラッシュランプ
21 放電容器
22 陽極
23 陰極
24 トリガー電極
25 トリガーバンド
26 トリガー回路
30 ヒータ
31 チャンバー制御回路
32 反射鏡
33 照射部
34 給電部
34a 換気口
35 ケーブル群
36 透光部材
37 油もしくは油の蒸気
38 コンデンサ
40 搬送機
51 床
52 クリーンルームの天井
53 清浄エア
54 階下室
55 排気用取り入れ口
56 クリーンルーム
57 エアの流れ
S 充電回路
AC 交流電源
H 発光回路
T トランス
D 逆流防止ダイオード
C コンデンサ
R 電圧検出用抵抗回路
L チョークコイル
W シリコンウエハ

Claims (4)

  1. 複数のフラッシュランプと少なくとも1つの反射ミラーとからなる光照射部と、
    該複数のフラッシュランプに対して発光エネルギーを供給する複数のコンデンサを有し、該コンデンサに対して充電電流を供給する共通の充電回路を具備した給電部を有するフラッシュランプ光照射装置であって、
    前記光照射部は、空調装置から供給された清浄エアが天井面からクリーンルーム内に吹き出し、クリーンルームの床面あるいは側面下方から排気する下向流型のクリーンルーム内に設置され、
    前記給電部は該クリーンルーム外であって、該クリーンルームから排気されるエアの下流側の階下、または前記光照射部と独立した給排気系設備内に設置されてなることを特徴とするフラッシュランプ光照射装置。
  2. 前記コンデンサは、内部に油脂を含む構成であることを特徴とする請求項1に記載のフラッシュランプ光照射装置。
  3. 前記コンデンサは各々1クーロン以上の電気容量を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のフラッシュランプ光照射装置。
  4. 前記コンデンサと前記フラッシュランプを結ぶ一つの放電回路の給電線の総延長が10m以上60m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフラッシュランプ光照射装置。
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