JP4411161B2 - 土壌の還元消毒方法 - Google Patents
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Description
さらに、本発明の目的は、土壌環境による制約が少なく、例えば、低水分や高アルカリ性の土壌であっても、良好な作業性で、安全に、低コストで土壌中の有害な微生物を防除できる土壌の消毒方法、およびそのための土壌消毒材を提供することである。
さらに、本発明者らは、小麦フスマからなる造粒物の発酵に伴う前記した還元消毒は、土壌環境によってあまり左右されず、アルカリ性土壌や低水分の土壌においても、また高温下でも円滑に行われることを見出した。
また、本発明者らは、小麦フスマからなる造粒物は、造粒されていない小麦フスマに比べて、流動性および取り扱い性に優れるため、前記した土壌の消毒を極めて優れた取り扱い性および作業性で円滑に行えることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 造粒用原料として小麦フスマのみを使用し、押し出し式造粒装置、圧縮造粒装置または転動式造粒装置を用いて製造した小麦フスマからなる造粒物を土壌に混合して発酵させ、還元状態にすることにより土壌を消毒することを特徴とする土壌の還元消毒方法である。
(2) 小麦フスマからなる造粒物の最大サイズ部分の寸法が2〜25mmの範囲内で、最小サイズ部分の寸法が1〜15mmの範囲内である前記(1)の還元消毒方法;
(3) 小麦フスマからなる造粒物を、土壌の質量に基づいて0.1〜5質量%の割合で土壌に混合して発酵させる前記(1)または(2)の還元消毒方法;および、
(4) 土壌の水分含量を20質量%以上にして発酵させる前記(1)〜(3)のいずれかの還元消毒方法;
である。
(5) 造粒用原料として小麦フスマのみを使用し、押し出し式造粒装置、圧縮造粒装置または転動式造粒装置を用いて製造した小麦フスマからなる造粒物よりなることを特徴とする土壌消毒材である。
本発明の土壌消毒方法は、土壌環境によってあまり左右されず、アルカリ性土壌や低水分の土壌に対しても有効であり、しかも高温下でも円滑に実施でき、土壌中の有害な微生物などを良好に防除することができる。
本発明で用いる小麦フスマ造粒物は、造粒されていない小麦フスマに比べて、流動性および取り扱い性に優れるため、前記した土壌の消毒を極めて優れた取り扱い性および作業性で円滑に行うことができる。
本発明の消毒方法を施した土壌では、土壌中の有害な微生物、昆虫、小動物などが死滅、防除されているので、植物を健全に生育させることができる。
本発明の消毒方法は、土壌に小麦フスマ造粒物を土壌に混合するだけでよく、特別の設備や用具の使用を省略することが可能であり、そのため、土壌の種類や場所などに制約されず、任意の土壌に対して、例えば、畑、水田、公園、花壇、その他の現場の任意の土壌のある場所で、さらにはポットや苗床に充填して用いる土壌に対して、消毒処理を行うことができる。特に、本発明の消毒方法は、定期的に消毒が必要であるビニールハウスや温室中の土壌消毒に適している。
本発明は、造粒用原料として小麦フスマのみを使用し、押し出し式造粒装置、圧縮造粒装置または転動式造粒装置を用いて製造した小麦フスマからなる造粒物(小麦フスマ造粒物)を土壌に混合して発酵させ、還元状態にすることにより土壌を消毒する方法である。
ここで、本発明における「土壌の消毒」とは、土壌中の有害な微生物、昆虫、小動物などを死滅させたり、衰退させて防除することを意味する。
本発明で用いる小麦フスマ造粒物は、小麦粉を製造する際の副産物である小麦フスマのみを造粒用原料として用いて製造した造粒物である。一般に、小麦フスマの方が末粉に比べて低価格で流通量も多いため入手が容易にあり、しかも含まれるミネラル分が多い。
また、小麦フスマ造粒物の水分含量は、混合する土壌中の水分含量、混合後の給水の有無などに応じて調整することができる。但し、土壌に混合する時点での小麦フスマ造粒物の水分含量が高すぎると、土壌への混合時に小麦フスマ造粒物の崩壊が生じて土壌への混合(散布・混合)が円滑に行われなくなり、一方小麦フスマ造粒物の水分含量が少なすぎると土壌中での小麦フスマ造粒物の発酵が円滑に行われなくなる。
また、小麦フスマ造粒物は、多孔質構造を有していることが好ましく、多孔質構造であると土壌中でより速やかに発酵して、土壌の還元化(還元消毒)を促進することができる。
ここで、小麦フスマ造粒物において、「最大サイズ部分」とは1個の小麦フスマ造粒物における最もサイズの大きな部分(例えば造粒物の長さ、径、辺などのうちのサイズの最も大きな部分)をいい、また「最小サイズ部分」とは1個の小麦フスマ造粒物における最もサイズの小さな部分(例えば造粒物の長さ、径、辺などのうちのサイズの最も小さな部分)をいう。例えば、小麦フスマ造粒物が円柱形のペレットであるときに、ペレットの直径の方が長さよりも小さい場合は、「最大サイズ部分」はペレットの長さを、「最小サイズ部分」はペレットの直径を意味し、逆にペレットの直径の方が長さよりも大きい場合は、「最大サイズ部分」はペレットの直径を、「最小サイズ部分」はペレットの長さを意味する。
小麦フスマ造粒物の混合量が少なすぎると、小麦フスマ造粒物の土壌中での発酵の程度が低く、土壌の消毒が十分に行われにくい。一方、小麦フスマ造粒物の混合量が多くなり過ぎると、コストの上昇などを招き、場合によっては発酵不良を生ずることがある。
かかる点から、本発明の消毒方法を実施するに当たっては、土壌の水分含量を20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上にするのがよい。
土壌の水分含量が元々多い場合は、水を加えずに、小麦フスマ造粒物だけを混合するか、または小麦フスマ造粒物と他の成分を混合して消毒処理を行うことができる。
また、土壌に水を加えて消毒を行う場合には、水分の供給は、小麦フスマ造粒物を土壌に混合する前、混合と同時、または混合した直後のいずれの時点で行ってもよい。
なお、本明細書でいう「土壌の水分含量」とは、土壌の質量(元々の土壌の質量または給水後の土壌の質量)をW1、前記土壌を105℃で5時間乾燥したときの質量をW0としたときに、下記の数式(i)から求めた値をいう。
土壌の水分含量(質量%)={(W1−W0)/W1}×100 (i)
その場合には、本発明の方法で消毒した土壌は、土壌中に含まれていた有害な微生物、昆虫類などの生物が死滅したり低減していて、植物の生育用土壌として有効に使用することができるので、有害生物の防除済みの土壌として、適当な容器に充填して流通、販売することもできる。
土壌温度が40℃以上であると、本発明による土壌消毒をより効果的に行うことができる。
市販の精選小麦フスマ(日清製粉株式会社製)200kgに、飽和水蒸気を5kg/hrの割合で吹き込みながら混合したものをペレットマシーン(上田鉄鋼株式会社製「PM−200」)に供給し、孔径3mmのダイスからストランド状に押し出した後、長さ約10mmに切断して、直径約3.2mm、長さ約10mmの円柱形の小麦フスマ造粒物(ペレット)にし、これを乾燥して小麦フスマペレット(水分含量13.4質量%)を製造した。
(1) 上記の製造例1で製造した小麦フスマペレットおよび製造例1で用いた市販の精選小麦フスマ(日清製粉株式会社製)(未造粒)のそれぞれを約5gずつ採取し、それぞれを、下部に穴(孔径1mm)が約2mm間隔であいた容器(直径60mm)に入れ、容器の下に水分を含ませた布または紙を敷き、容器の穴を通して小麦フスマペレットおよび小麦フスマのそれぞれに吸水させた。十分に吸水させた後、下記の数式(ii)により吸水直後の水分含量を測定した。その結果を下記の表1に示す。
吸水直後の水分含量(質量%)={(Wa−Wb)/Wa}×100 (ii)
[式中、Waは上記した吸水直後の試料の質量(g)、Wbは吸水直後の試料を105℃で5時間乾燥させた時の質量(g)を示す。]
(2) 上記(1)で吸水させた試料を、25℃で48時間風乾させた後(非吸水性のプラスチックシート上に5〜10mmの厚さに広げた状態で風乾)、下記の数式(iii)により風乾直後の水分含量を測定した。その結果を下記の表1に示す。
風乾直後の水分含量(質量%)={(Wc−Wd)/Wc}×100 (iii)
[式中、Wcは25℃で48時間風乾させた試料の質量(g)、Wdは前記風乾させた試料を105℃で5時間乾燥させた時の質量(g)を示す。]
(1)一般生菌数の測定:
(i) 製造例1で製造した小麦フスマペレット2gを採取し、滅菌水18mlで混釈した後、微生物菌数に応じて1万倍まで希釈した(平板希釈法)。次いで、希釈液を細菌数測定用培地[3M製「Petrifilm」(登録商標)]に塗沫し、30℃の恒温槽内で2日間培養し、培地上のコロニー数を数えて、小麦フスマペレット1g当たりの一般生菌数とした。その結果を下記の表2に示す。
(ii) 製造例1で使用したのと同じ市販の精選小麦フスマ(未造粒)2gを採取し、滅菌水18mlで混釈した後、微生物菌数に応じて上記(i)と同じようにして1000倍まで希釈した。次いで、希釈液を上記(i)と同様に2日間培養し、培地上のコロニー数を数えて、小麦フスマ1g当たりの一般生菌数とした。その結果を下記の表2に示す。
(i) 製造例1で製造した小麦フスマペレット2gを採取し、滅菌水18mlで混釈した後、微生物菌数に応じて100倍まで希釈した(平板希釈法)。次いで、希釈液を80℃で20分間加熱処理した後、細菌数測定用培地[3M製「Petrifilm」(登録商標)]に塗沫し、30℃の恒温槽内で2日間培養し、培地上のコロニー数を数えて、小麦フスマペレット1g当たりの耐熱性菌数とした。その結果を下記の表2に示す。
(ii) 製造例1で使用したのと同じ市販の精選小麦フスマ2gを採取し、滅菌水18mlで混釈した後、微生物菌数に応じて上記(i)と同じようにして100倍まで希釈した。次いで、希釈液を80℃で20分間加熱処理した後、細菌数測定用培地[3M製「Petrifilm」(登録商標)]に塗沫し、30℃の恒温槽内で2日間培養し、培地上のコロニー数を数えて、小麦フスマ1g当たりの耐熱性菌数とした。その結果を下記の表2に示す。
(1)(i) 蓋付きのプラスチック容器(容量250ml)に、黒土100gを入れ、そこに製造例1の小麦フスマペレット1g(1質量%)を添加して均一に混合した後、加水して、水分含量が38.0質量%(ビニールハウス内の土壌の通常の水分含量に相当)である小麦フスマペレット含有加水黒土混合物(以下単に「黒土混合物」ということがある)を調製した。
(ii) 上記(i)調製した黒土混合物をプラスチック容器ごと温度50℃のインキュベーターに入れて(夏期に閉め切ったビニールハウス内の温度に相当)、16日間にわたって発酵させた。前記発酵中にプラスチック容器内の黒土混合物を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後、8日後および16日後に採取)、採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を以下の方法で測定した。その結果を下記の表3に示す。
(2) 小麦フスマペレットの代わりに製造例1で使用したのと同じ市販の精選小麦フスマ(未造粒)を使用した以外は、上記(1)の(i)と同様にして小麦フスマ含有加水黒土混合物を調製し、それを上記(1)の(ii)と同様にして発酵させ、発酵中に黒土混合物の一部を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後、8日後および16日後に採取)、採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を以下の方法で測定した。その結果を下記の表3に示す。
採取した黒土混合物はそのままでは酸化還元電位(Eh)の測定が困難であったので、採取した黒土混合物1質量部に対して水1.6質量部を混合し、その混合物の酸化還元電位(Eh)をpH測定装置(東亜ディーケーケー株式会社製「pHメーターHM−50S」)と「酸化還元電極」(東亜ディーケーケー株式会社製「PTS−5011C」)を用いて測定した。
(1)(i) 蓋付きのプラスチック容器(容量250ml)に、黒土100gを入れ、そこに製造例1の小麦フスマペレット1g(1質量%)を添加して均一に混合した後、加水して、水分含量が26.8質量%の小麦フスマペレット含有加水黒土混合物(黒土混合物)を調製した。
(ii) 上記(i)調製した黒土混合物をプラスチック容器ごと温度50℃のインキュベーターに入れて8日間にわたって発酵させた。前記発酵中に黒土混合物を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後および8日後に採取)、実施例1と同様にして採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
(2) 小麦フスマペレットの代わりに製造例1で使用した市販の精選小麦フスマ(未造粒)を使用した以外は、上記(1)の(i)と同様にして小麦フスマ含有加水黒土混合物を調製し、それを上記(1)の(ii)と同様にして発酵させ、発酵中に黒土混合物を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後および8日後に採取)、採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
それに対して、小麦フスマペレットを用いた場合は、土壌の水分含量が低い場合であっても、土壌の酸化還元電位(Eh)がより早い時期に低下している。
かかる結果から、小麦フスマ造粒物(小麦フスマペレットなど)を土壌に混合して土壌の消毒を行う本発明の方法による場合は、土壌中の水分が少ない場合であっても、土壌中で発酵が早期に進行して、土壌の還元消毒がなされることがわかる。
(1)(i) 蓋付きのプラスチック容器(容量250ml)に、黒土100gを入れた後、消石灰を添加して土壌をアルカリ性(pH10.3)にし、そこに製造例1の小麦フスマペレット1g(1質量%)を添加して均一に混合した後、加水して、水分含量が38.0質量%である小麦フスマペレット含有加水黒土混合物(黒土混合物)を調製した。なお、土壌のpHは、前記黒土混合物の一部を採取し、該採取した土壌1質量部に対して水1.6質量部を混合し、その混合物のpHを前記したpH測定装置(東亜ディーケーケー株式会社製「pHメーターHM−50S」)を用いて測定した。
(ii) 上記(i)調製した黒土混合物をプラスチック容器ごと温度50℃のインキュベーターに入れて8日間にわたって発酵させた。前記発酵中に黒土混合物を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後および8日後に採取)、実施例1と同様にして採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
(2) 小麦フスマペレットの代わりに製造例1で使用した市販の精選小麦フスマ(未造粒)を使用した以外は、上記(1)の(i)と同様にして小麦フスマ含有加水黒土混合物を調製し(土壌のpH10.3)、それを上記(1)の(ii)と同様にして発酵させ、発酵中に黒土混合物を経時的に採取し(当初、1日後、3日後、5日後および8日後に採取)、採取した黒土混合物の酸化還元電位(Eh)を実施例1と同様にして測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
それに対して、小麦フスマペレットを用いる本発明の方法による場合は、高アルカリ性の土壌においても、土壌の酸化還元電位(Eh)が速やかに低下している。
かかる結果から、小麦フスマ造粒物を用いる本発明の土壌の消毒方法による場合は、土壌が高アルカリ性であっても、発酵が早期に円滑に行われて、土壌の還元消毒がなされることがわかる。
本発明の土壌の消毒方法は、土壌環境に左右されることが少なく、例えば、水分含量の少ない土壌、アルカリ性土壌などにおいても適用できるので、汎用性に優れる土壌の消毒方法として有用である。
本発明の消毒方法は、流動性および取り扱い性に優れる小麦フスマ造粒物を土壌に単に混合して発酵させるだけでよく、特別の設備や用具の使用を省略でき、しかも土壌の種類や広さ、土壌の量、被処理土壌のある場所などを問わないため、かかる点からも汎用性および簡便性に優れる土壌の消毒方法として有用である。
Claims (5)
- 造粒用原料として小麦フスマのみを使用し、押し出し式造粒装置、圧縮造粒装置または転動式造粒装置を用いて製造した小麦フスマからなる造粒物を土壌に混合して発酵させ、還元状態にすることにより土壌を消毒することを特徴とする土壌の還元消毒方法。
- 小麦フスマからなる造粒物の最大サイズ部分の寸法が2〜25mmの範囲内で、最小サイズ部分の寸法が1〜15mmの範囲内である請求項1に記載の還元消毒方法。
- 小麦フスマからなる造粒物を、土壌の質量に基づいて0.1〜5質量%の割合で土壌に混合して発酵させる請求項1または2に記載の還元消毒方法。
- 土壌の水分含量を20質量%以上にして発酵させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の還元消毒方法。
- 造粒用原料として小麦フスマのみを使用し、押し出し式造粒装置、圧縮造粒装置または転動式造粒装置を用いて製造した小麦フスマからなる造粒物よりなることを特徴とする土壌消毒材。
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