JP4067447B2 - 汚染土壌の浄化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機汚染物質で汚染された土壌の浄化方法、浄化用資材および浄化材に関する。より詳細には、本発明は、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌を、簡単に且つ速やかに浄化する方法並びにそのための浄化用資材および浄化材に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素系化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌から有機汚染物質を除去する方法として、従来、物理的処理法(例えば焼却やブロアーなどによる強制通気などによる方法)、化学的処理法(例えば界面活性剤などによる洗浄、還元鉄などの還元剤の添加などによる方法)、生物的処理法(有機汚染物質の微生物分解による方法)が開発されてきた。それらの処理法のうち、生物的処理法は、低コスト、簡便性、省エネルギーなどの点で優れていることから、バイオレメディエーション技術として注目され、技術開発が進んでいる。バイオレメディエーション技術としては、(1)土着微生物の栄養となる有機物を添加したり水分や通気量を加減して微生物活性を高めて汚染物質を分解する方法(バイオスティムレーション)、(2)汚染物質を分解する微生物を添加して分解する方法(バイオオーグメンテーション)、(3)前記(1)と(2)の方法を組み合わせた方法などが開発されてきた。
【0003】
上記した(1)〜(3)に該当する従来法としては、(i)汚染土壌を掘り起こして有機廃棄物および水分調整材を混合し、それを閉鎖状態でブロアーにより酸素を強制的に供給して土壌中の有機汚染物質を分解した後、混合物を篩分けして浄化した土壌から水分調整材を分離し、それにより得られる浄化土壌を土壌を掘り起こした箇所に復土する方法(特許文献1を参照)、(ii)有機塩素化合物で汚染された土壌を、還元雰囲気状態で且つ中性条件で、従属栄養型嫌気性微生物と金属鉄の存在下で、場合により有機系コンポストまたは堆肥化有機物を加えて脱塩素して浄化する方法(特許文献2を参照)、(iii)炭化水素系化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に、発酵を終了した堆肥および/または未発酵の有機物質を添加して浄化する方法(特許文献3〜5を参照)、(iv)多環芳香族炭化水素で汚染された土壌に、草、栽培植物を用いて動物糞を発酵させた堆肥におがくずと米ぬかを加えて二次発酵させて得られた発酵物などを加えて浄化する方法(非特許文献1を参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記(i)の従来法は、汚染土壌に空気を吹き込むためのブロアー装置や、ブロアー処理によって土壌から空気中に揮散する汚染物質が周囲に拡散するのを防止するための閉鎖系施設を用いる必要があるため、装置が大規模になり経済的でない。その上、浄化処理を空気を吹き込みながら好気的条件で行うために、嫌気的条件下で分解され易い汚染物質の分解が行われにくく、汚染物質を完全に分解することが困難である。
【0005】
また、上記(ii)の従来法は、従属栄養型嫌気性微生物を増殖させるための特定の培地(例えばメタン生成微生物用培地)を用いる必要があるためコストがかかる。しかも、コンポストなどに含まれている分子量5000以下の低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物が異常に繁殖して、有機塩素化合物を資化する微生物の死滅や増殖阻害を生じ易く、そのため汚染物質の分解が速やかに行われにくく、しかも悪臭を発生する場合がある。
【0006】
上記(iii)の従来法による場合も、上記(ii)の従来法と同様に、未完熟堆肥や発酵前の有機物質が分子量5000以下の低分子量窒素含有物質を多く含んでいるために、該低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物が異常に繁殖して、炭化水素系化合物を資化する微生物の死滅や増殖阻害を生じ易く、汚染物質の分解が速やかに行われにくく、しかも悪臭を発生し易いという欠点がある。
【0007】
また、上記(iv)の従来法は、汚染土壌に添加される二次発酵物がおがくずなどの木質材料を用いて製造されていることにより、該二次発酵物は低分子量窒素含有物質の含有量が少ないために低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖が抑制でき、悪臭の発生が少ないという長所がある。しかしながら、汚染土壌中に雑菌や木質以外の有機物が多く含まれる場合は、汚染物質の分解が行われにくい。しかも、汚染土壌を浄化するための浄化用資材として、特定の発酵原料を用いて特定の方法で発酵させた発酵物(二次発酵物)を使用する必要があり、共通性および汎用性に乏しい。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−100459号公報
【特許文献2】
特開平10−216694号公報
【特許文献3】
特開平11−47727号公報
【特許文献4】
特開2000−254635号公報
【特許文献5】
特表2001−504029号公報
【非特許文献1】
「大林組技術研究所報」 2001年、第63巻、p81〜84
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌を、簡単に且つ速やかに浄化することのできる浄化方法並びにそのための浄化用資材および浄化材を提供することである。
そして、本発明の目的は、浄化処理時に、分子量5000以下の低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖や悪臭の発生を防止しながら、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌を、円滑に且つ速やかに浄化する方法並びにそのための浄化用資材および浄化材を提供することである。
さらに、本発明の目的は、ブロアーなどの空気吹き込み装置や、閉鎖系施設などのコストのかかる特別の装置や施設を使用しなくても、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌を簡単に且つ低コストで浄化することのできる方法並びにそのための浄化用資材および浄化材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を含有する浄化用資材、および小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に好気性微生物を含む微生物資材を加えた浄化用資材から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を添加して浄化処理を行うと、ブロアー装置や閉鎖系施設などの特定の装置や施設を使用することなく、低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖や悪臭の発生を防止しながら、土壌中に含まれている炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解が促進されて、土壌の浄化が円滑に行われることを見出した。
また、本発明者らは、その際に小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有量が0.5質量%以上である浄化用資材を用いることが、浄化の促進、低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖や悪臭の発生の防止により効果があることを見出した。
【0011】
さらに、本発明者らは、汚染土壌の浄化時に、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を含有する浄化用資材、および小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に好気性微生物を含む微生物資材を加えてなる浄化用資材から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材と共に、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加すると、土壌中に含まれて炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解が一層促進されて、有機汚染物質で汚染された土壌を速やかに、短期間に浄化できることを見出した。
また、本発明者らは、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を含有する浄化用資材、および/または小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に好気性微生物を含む微生物資材を加えてなる浄化用資材中に、分子量5000以下の低分子量窒素含有物質の含有量の少ない、完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸などの他の成分を含有させておくことが、浄化を促進するために好ましいことを見出した。
また、本発明者らは、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌100質量部に対して、前記した浄化用資材を0.1〜20質量部の割合で添加することが浄化促進などの点から望ましいことなどを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) 有機汚染物質で汚染された土壌100質量部に対して、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく、
(a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;および、
(b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に、好気性微生物を含む微生物資材を加えた、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有割合が0.5質量%以上である、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;
から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を0.1〜20質量部の割合で添加して浄化を行うことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌の浄化方法である。
さらに、本発明は、
(2) 有機汚染物質で汚染された土壌100質量部に対して、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく、
(a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;および、
(b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に、好気性微生物を含む微生物資材を加えた、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有割合が0.5質量%以上である、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;
から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を0.1〜20質量部の割合で添加すると共に、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を、土壌と、浄化用資材(a)および浄化用資材(b)から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材の合計質量に対して10〜100ppmの割合で添加して浄化を行うことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌の浄化方法である。
【0013】
そして、本発明は、
) 浄化用資材(a)が小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有し、浄化用資材(b)が小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方並びに好気性微生物を含む微生物資材と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有する前記(1)または(2)の浄化方法;および、
) 有機汚染物質で汚染された土壌が、炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌である前記(1)〜(3)のいずれかの浄化方法;
である。
【0014】
また、本発明は、
) (a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;或いは
(b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有すると共に好気性微生物を含む微生物資材を含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材
からなることを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌を、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく浄化するのに用いる浄化用資材である。
そして、本発明は、
6) 小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有するか、或いは小麦フスマおよびふすまの少なくとも一方並びに好気性微生物を含む微生物資材と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有する前記(5)の浄化用資材;および、
) 炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するための浄化用資材である前記(5)または(6)の浄化用資材;
である。
【0015】
さらに、本発明は、
8) 前記(5)〜(7)のいずれかの浄化用資材に、浄化用資材の質量に対して酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を60ppm以上の量で添加したことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌を、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく浄化するのに用いる浄化材である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の浄化方法、浄化用資材および浄化材は、有機汚染物質で汚染された土壌のいずれに対しても適用でき、そのうちでも炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌の浄化に適している。
本発明の浄化方法および浄化材で浄化する炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌としては、例えば、原油、重油、軽油、灯油などの油類、機械加工や装置類などに用いられる潤滑油、切削油、電子機械金属部品の脱脂、洗浄、ドライクリーニングなどに用いられ有機塩素化合物などで汚染された土壌を挙げることができる。
前記した汚染土壌には、有機汚染物質の種類に応じて、例えば、パラフィン系やオレフィン系の脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの単環式芳香族炭化水素、フェナントレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、フルオランテン、ピレン、クリセン、ベンゾフルオランテン、ベンゾピレンなどの多環式芳香族炭化水素、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロルダン、ジエルドリン、トキサフェン、アルドリン、エントリン、ヘプタクロルエポキシド、メトキシクロル、ベンゼンヘキサクロリドなどの有機塩素化合物などの汚染化合物の1種または2種以上が含まれている。
そのうちでも、本発明の浄化方法および浄化材は、共有二重結合を持つ有機塩素系化合物で汚染された土壌を浄化するのに適している。
【0017】
浄化対象である汚染土壌中での有機汚染物質の濃度は特に制限されないが、土壌中での有機汚染物質の濃度が高すぎると有機汚染物質の分解が円滑に進行しにくくなり、浄化に時間がかかるようになる。かかる点から、本発明の浄化方法、浄化用資材および浄化材は、有機汚染物質の濃度が土壌1kg中10g以下(10000ppm以下)である汚染土壌の浄化に適している。土壌中の有機汚染物質の濃度が前記10000ppm以下の場合には、本発明の浄化方法、浄化用資材および浄化材によって、土壌中に含まれる有機汚染物質が短期間で完全にまたはほぼ完全に分解されて、良好な浄化結果を速やかに達成することができる。
【0018】
本発明の浄化方法では、汚染土壌における水分含量は、土壌の種類、土壌中に含まれる有機汚染物質の種類や濃度、土壌中に含まれる他の成分の種類や濃度などに応じて異なり得るが、一般には、汚染土壌の水分含量が30〜90質量%、特に50〜70質量%の範囲内であるときに、有機汚染物質の分解がより促進されて、良好な浄化結果を速やかに達成することができる。そのため、汚染土壌の水分含量が30質量%よりも低い場合は土壌に加水し、また汚染土壌の水分含量が90質量%よりも高い場合は土壌を乾燥して、汚染土壌の水分含量を30〜90質量%に調整して本発明の浄化処理を行うことが好ましい。
【0019】
本発明では、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌の浄化に当たって、浄化用資材として、(a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を含有する有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材[「浄化用資材(a)」ということがある];および(b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に好気性微生物を含む微生物資材を加えた有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材[浄化用資材(b)」ということがある]から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を用いる。
浄化用資材(a)および浄化用資材(b)は、いずれも、浄化用資材の質量に対して、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上(小麦フスマと末粉の両方を含有する場合は両者の合計質量;以下同様)の割合で含有することが好ましく、2質量%以上の割合で含有することがより好ましく、5〜100質量%の割合で含有することが更に好ましい。
浄化用資材(a)および浄化用資材(b)における小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有量が0.5質量%未満であると、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌を短期間に浄化しにくくなる[以下浄化用資材(a)および浄化用資材(b)を総称して単に浄化用資材ということがある]。
【0020】
本発明で用いる小麦フスマは、周知のように小麦粒の外皮であり、また末粉(すえこ)は小麦粒外皮に付着する胚乳部(小麦粉)と小麦フスマを含む粉状物であり、いずれも小麦製粉時の副産物として得られる。
小麦フスマおよび/または末粉が、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質を含有する土壌の浄化促進作用を有する理由は明確ではないが次のように推測される。
すなわち、小麦フスマおよび末粉は、ヘミセルロース成分を高含量(35質量%程度)で含んでおり、該ヘミセルロースはアラビノース側鎖を多く有するアラビノキシランを含んでいる。また、小麦粉および末粉は、C/N比が15付近であり且つ含水率が低く(15重量%以下)且つ土壌中で酸素の存在する空隙をつくりやすい形状をしている。そのため、小麦フスマおよび末粉を含有する浄化用資材を有機汚染物質で汚染された土壌に添加すると、アラビノキシランを分解できる微生物が土壌中で選択的に増殖され、該微生物が炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解を促進するものと推測される。
【0021】
また、浄化用資材(b)で用いる好気性微生物を含む微生物資材としては、小麦フスマおよび/または末粉を資化することができ且つ80℃の温度で10分間処理した後でも55℃の温度で生存可能な好気性の耐熱性菌を含む資材が好ましく用いられる。そのような耐熱性菌の例としては、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などのバチルス属微生物、サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)、サーモモノスポーラ・カーバラ(Thermomonospora curvara)などの好温・好熱性の放線菌、フミコーラ・インソレンス(Humicola insokens)、タラロマイセス・デユポンティ(Talaromyces dupontii)などの好熱性の糸状菌などを挙げることができる。本発明で用いる浄化用資材(b)は、これらの耐熱性菌の1種または2種以上を含有することができる。前記した耐熱性菌は、微生物製剤等として市販されており、市販のものをそのまま用いてもよい。また、場合によっては、前記した耐熱性菌を培養増殖して用いてもよい。これらの耐熱性菌の多くは、小麦フスマまたは末粉を分解する能力が高く、且つ有機物を高温で分解する能力に優れている。好気性微生物を含む微生物資材を含有する浄化用資材(b)では、上記浄化用資材(b)1g当たり、好気性微生物を105CFU(Colony Forming Unit)以上の割合で含有することが好ましい。
好気性微生物を含む微生物資材中に好気性微生物を活性化する活性剤を含有させておくと、好気性微生物の増殖が一層促進され、汚染土壌の浄化がより促進されるので好ましい。好気性微生物の活性剤としては、例えば、後記する腐植酸、浄化用資材(b)のpHを好気性微生物の増殖に適したものに調整し得るアルカリなどのpH調整剤などを挙げることができる。
【0022】
本発明で用いる浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)は、小麦フスマ、末粉、好気性微生物を含む微生物資材以外に、必要に応じて他の成分を含有することができる(但し有機溶媒は含まない)。浄化促進剤中に含有させる他の成分としては、微生物により容易に分解される低分子量の窒素含有化合物(一般に分子量5000以下の窒素含有化合物)の含有割合が1質量%以下である高分子量有機物が好ましく用いられる。該他の成分が低分子量の窒素含有化合物(一般に分子量5000以下の窒素含有化合物)を多く含有していると、土壌の浄化時に、低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖や悪臭の発生が生じ易くなり、好ましくない。
小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方、好気性微生物を含む微生物資材と共に用い得る低分子量の窒素含有化合物の含有量の少ない他の成分としては、特に、完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種が好ましく、浄化促進剤は前記した他の成分の1種または2種以上を含有することができる。
浄化用資材中に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸などの他の成分を含有させる場合は、該他の成分の含有量は、浄化用資材の質量に対して、99.5質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい
【0023】
本発明において、浄化用資材中に含有させることのできる完熟堆肥としては、例えば、鶏、牛、豚、馬などの家畜類の糞尿、食品残渣(例えば食品の製造・加工場、卸売場などから排出される各種食品残渣、飲食店、ホテル、学校、家庭などから排出される各種食品残渣など)、植物発生材(例えば植物に由来する葉、茎、根、果実、実の外殻、木質系建築廃材など)、活性汚泥などの有機質材料を発酵原料として用いて微生物によって完全に分解させた堆肥を挙げることができる。
また、本発明において、浄化用資材中に含有させることのできる消化汚泥は、下水処理場などで発生する汚泥を消化槽により完全に分解することによって得られた汚泥である。
【0024】
本発明において、浄化用資材中に含有させることのできる腐植酸としては、石炭化度の低い泥炭、亜炭などの若年炭類に含まれるアルカリ可溶の不定形高分子有機酸、および該不定形高分子有機酸を硝酸で酸化分解して得られるニトロフミン酸およびその塩類などが挙げられる。また、浄化用資材は、フミン酸の代わりに、泥炭、亜炭等の若年炭などのフミン酸を含有する物質を腐植酸として含有してもよい。そのうちでも、泥炭、亜炭などの若年炭類をそのまま使用せずに、それらから分離されたフミン酸や、ニトロフミン酸、またはその塩類を用いることが、少量の使用量で、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解に有用な微生物の増殖を行うことができるので望ましい。
【0025】
本発明で用いる浄化用資材のpHは、浄化用資材を添加する土壌の種類、土壌中に含まれる有機汚染物質の種類などに応じて異なり得るが、一般的には3〜8.5の範囲であることが好ましく、4〜7の範囲であることがより好ましい。浄化用資材のpHが3よりも低い場合および8.5よりも高い場合は、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に添加したときに、有機汚染物質を分解する微生物が土壌中で増殖しにくくなり、土壌を短期間に浄化しにくくなる。
浄化用資材の元のpHや土壌のpHに応じて、アルカリおよび/または酸をpH調整剤として用いて、浄化用資材のpHを前記した範囲にすることが好ましい。pHの調整に用いるアルカリとしては、例えば、炭酸カルシウム;石灰や消石灰;アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩;石炭、汚泥、家畜糞等の焼成灰などを用いることができ、また酸としては、種々の無機酸や有機酸を用いることができる。
【0026】
汚染土壌に対する浄化用資材(a)および浄化用資材(b)から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材の添加量は、浄化用資材中の小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有量、好気性微生物を含む微生物資材の含有量、浄化用資材に含まれる前記以外の他の成分の種類や含有量、処理対象である土壌の種類、土壌に含まれる有機汚染物質の種類および濃度、土壌に含まれる他の成分の種類や濃度などに応じて異なり得るが、一般には、汚染土壌100質量部に対して浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種(複数の浄化用資材を用いる場合はその合計量)を0.1〜20質量部、特に1〜5質量部の割合で添加することが、浄化処理時に有機汚染物質の分解が良好に行われ、分子量5000以下の低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖が防止され、悪臭の発生を防止でき、しかも混合作業が容易であることから好ましい。
汚染土壌100質量部に対して浄化用資材の添加量が0.1質量部未満であると、有機汚染物質を分解する微生物が土壌中で増殖しにくくなり、汚染土壌の浄化に長い時間を要するようになり、一方20質量部を超すと分子量5000以下の低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖、悪臭などが生じ易くなる。
【0027】
本発明では、有機汚染物質で汚染された土壌に浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種を添加して浄化を行うに当たって、浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種と共に、更に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することが好ましい。酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を汚染土壌に更に添加することによって、短期間のうちに有機汚染物質を分解する微生物が土壌中で大幅に増殖されて、有害ガスの発生を抑えながら、土壌中の有機汚染物質が短期間で無害な物質へと分解されるようになり、土壌の浄化が速やかに行われるようになる。
汚染土壌の浄化に当たっては、浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種と共に、酢酸および乳酸から選ばれる化合物のうちの1種のみを含有させてもよいし、2種を含有させてもよい
【0028】
酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物の添加量は、土壌の種類、土壌に含まれる有機汚染物質の種類や濃度、浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)の内容などに応じて調整し得るが、一般的には汚染土壌および浄化用資材の合計質量に対して酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種を10ppm以上の割合で添加することが好ましく、20ppm以上の割合で添加することがより好ましく、20〜50ppmの割合で添加することが更に好ましい。
酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物の添加量が、汚染土壌および浄化促進剤の合計質量に対して10ppm未満であると、有機汚染物質を分解する微生物が土壌中で短期間に増殖されなくなったり、悪臭や有害ガスの発生を抑えながら土壌中の有機汚染物質を無害な物質へと速やかに分解することができなくなることがある。
一方、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物の添加量が、汚染土壌および浄化促進剤の合計質量に対して100ppmを超えて高くなり過ぎると、微生物による有機汚染物質の分解活性を低下させることになり好ましくない。
【0029】
汚染された土壌への、浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)の添加方法、または浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)と酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物の添加方法は、特に制限されず、浄化用資材(a)および/または浄化促進剤(b)や、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物が土壌中に均一に混合され得る方法であればいずれの方法で行ってもよい。
汚染土壌に浄化促進剤(a)および/または(b)と共に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加する場合は、浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)と前記化合物を汚染土壌に同時に添加してよいし、逐次に添加してもよい。また、浄化促進剤(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を予め混合しておき、その混合物を汚染土壌に添加してもよい。
浄化用資材に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を予め混合しておく場合は、浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)に対して酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を60ppm以上の割合で混合しておくことが好ましい。
【0030】
小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と場合により更に他の成分(完熟堆肥、消化汚泥、腐植酸など)を含有する浄化用資材(a)或いは小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方並びに好気性微生物を含む微生物資材と場合により更に他の成分(完熟堆肥、消化汚泥、腐植酸など)を含有する浄化用資材(b)に、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を混合してなる前記混合物は、いずれも、浄化材(浄化促進剤)として独自に貯蔵、流通、販売が可能であり、したがって本発明はそのような浄化材(浄化促進剤)を本発明の範囲に包含する。
本発明の上記した浄化材を、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に添加することによって、極めて簡単な操作で、土壌の浄化を行うことができる。
【0031】
炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に、浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種を添加するか、または浄化用資材(a)および浄化用資材(b)の少なくとも1種と共に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加して浄化を行うに当たっては、浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)を添加した汚染土壌混合物、または浄化用資材(a)および/または浄化用資材(b)と共に酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加した汚染土壌混合物を、堆積状態にし、堆積物全体で有機汚染物質の分解が均一に行われるようにするために2カ月に1回〜2回程度の割合で撹拌や切り返しを行うことによって土壌の浄化を円滑に行うことができる。
浄化処理時の汚染土壌混合物のpHは一般に4〜9、特に5〜8であるのが、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解が良好になり、浄化を短期間で行える点から好ましい。
【0032】
浄化に要する期間は、汚染土壌中に含まれている有機汚染物質の種類や濃度、汚染土壌の水分含量、浄化時の温度などの条件に応じて異なるが、一般には、土壌中の有機汚染物質の濃度が環境基準以下(例えばトリクロロエチレンでは0.03ppm以下)になった時点で浄化が終了したとみなすことができる。
本発明の浄化方法または浄化材を採用して浄化した後の土壌は、土壌中の有機汚染物質がほぼ完全に分解除去されていて無毒化されているので、そのまま自然環境に戻すことができ、また園芸用土壌や他の用途に用いることもできる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。
【0034】
《参考例1》[木質堆肥の製造]
森林伐採材の粉砕チップに水を加えて均一に混合して水分含量60質量%に調整して堆積した。これを、1カ月ごとに撹拌、切り返しを行って発酵させ、6カ月後に発酵を終了して木質堆肥を製造した。
【0035】
《参考例2》[消化汚泥の製造]
埼玉県の下水処理場で発生した消化汚泥に等質量の水道水を加えて十分に撹拌した後、3000Gで10分間遠心分離し、それにより得た沈殿物に等質量の水道水を加えて3000Gで10分間遠心分離して生成した沈殿物を回収するという洗浄処理を更に5回繰り返し、それにより得られた沈殿物を消化汚泥として用いた。
【0036】
《実施例1》
(1) 小麦フスマと、上記の参考例1で調製した木質堆肥または参考例2で調製した消化汚泥を下記の表1に示す割合で混合して浄化用資材A〜Gをそれぞれ調製した。
(2) 市販の黒土(水分含量51.3質量%)250gに、上記(1)で調製したそれぞれの浄化用資材5gを添加し、さらに酢酸を下記の表2に示す量で混合して黒土混合物を調製した。黒土混合物のpHを測定したところ、下記の表2に示す通りであった。
また、対照として、浄化用資材、酢酸を添加しない黒土を準備し、そのpHを測定したところ、下記の表2に示す通りであった。
(3) 上記(2)で調製した黒土混合物および対照用の黒土をそれぞれのフラスコ(760ml容)に入れ、そこにトリクロロエチレン2.5mgを添加し(トリクロロエチレンの濃度:黒土の質量に対して10ppm、黒土と浄化用資材の合計質量に対して9.8ppm)、添加後にテフロン(デュポン社の登録商標)加工したブチルゴム栓をして、25℃の恒温槽内に3週間静置した。その間、栓をしたままの状態で1週間に1回の割合で軽く撹拌した。
(4) 3週間後に黒土混合物および黒土(対照用)中のトリクロロエチレンの濃度を下記の方法で測定したところ下記の表2に示すとおりであった。
【0037】
[浄化処理後の土壌中のトリクロロエチレン含有量(濃度)の測定]
上記3週間の試験後に、ブチルゴム栓付きの試験フラスコのヘッドスペース部の気体をシリンジで採取し、GC−MSで該気体中のトリクロロエチレン濃度を分析し、気体中のトリクロロエチレン濃度をもって土壌中のトリクロロエチレン濃度と見做した(ヘッドスペース部の気体中のトリクロロエチレン濃度は土壌中のトリクロロエチレン濃度に比例する)。GC−MS分析の条件は、JIS K 0125(用水・廃水中の揮発性有機化合物試験方法)によった。
【0038】
【表1】
Figure 0004067447
【0039】
【表2】
Figure 0004067447
【0040】
上記の表2の結果にみるように、実験番号1(対照例)では、トリクロロエチレンで汚染された土壌(黒土)に浄化用資材および酢酸いずれも添加せずに浄化処理を行ったために、3週間後の土壌中のトリクロロエチレンの含有量は8.8ppmであり、浄化の程度が低いものであった。
これに対して、実験番号2〜6では、トリクロロエチレンで汚染された土壌に、小麦フスマを含有する浄化用資材を添加して浄化を行ったことにより、3週間後の土壌中のトリクロロエチレンの含有量が実験番号1に比べて大幅に低下しており、良好な浄化結果が得られた。
さらに、実験番号7〜では、トリクロロエチレンで汚染された土壌に、小麦フスマを含有する浄化用資材と共に酢酸を添加して浄化を行ったことにより、3週間後の土壌中のトリクロロエチレンの含有量が一層大きく低減しており、極めて良好な浄化結果が得られた。
【0041】
《実施例2》
(1) 市販の黒土を1kgずつ5区分準備し、それぞれにA重油10g(黒土の重量に対して外割で1質量%)を添加して、温度25℃の室内に1カ月放置して重油汚染土壌をそれぞれ調製した。それぞれの重油汚染土壌中の油分濃度を以下の方法で測定したところ、下記の表4に示すように2500ppm前後であった。
【0042】
[土壌中の重油濃度の測定]
試料土壌5gに対して、スポイトで1N塩酸3滴を滴下すると共に飽和食塩水5mlおよび抽出溶媒(トリクロロトリフルオロエチレン)10mlを加えて、室温(25℃)で5時間にわたって振とう処理を行い、土壌中の油分(重油)をトリクロロトリフルオロエチレン中に抽出した。抽出後、トリクロロトリフルオロエチレン層を分取し、そこに含まれる油分(重油)の濃度を油分濃度計(株式会社堀場製作所製「OCMA−350」)を使用して測定し、その油分濃度から、試料土壌中に含まれていた重油の濃度を求めた。
【0043】
(2) 小麦フスマ、腐植酸(株式会社テルナイト製「HA−01」)、石灰質肥料(村樫石灰工業株式会社製「くみあい炭酸カルシウム肥料」;pH調整用)および好気性微生物資材(日清製粉株式会社製「アクセルコンポ」)を用いて、下記の表3に示す浄化用資材a〜cをそれぞれ調製した。
(3) 上記(1)で調製したそれぞれの重油汚染土壌1000gに対して、上記(2)で調製した浄化用資材a〜cのそれぞれを下記の表4に示す量で添加し、それぞれを小型発酵リアクターに充填して、外気温度20℃で、14日間静置した(発酵リアクター内の土壌温度:約25〜30℃)。14日後に、土壌を発酵リアクターから取り出して、土壌中の油分(重油)濃度を上記した方法で測定し、その測定値から油分(重油)濃度の減少率を求めたところ、下記の表4に示すとおりであった。
(4) また、対照として、浄化用資材を添加せずに、上記(1)で調製した重油汚染土壌をそのまま小型発酵リアクターに充填して、上記(3)と同様にして14日間静置し、14日後に発酵リアクターから土壌を取り出して、土壌中の油分(重油)濃度を上記した方法で測定し、その測定値から油分(重油)濃度の減少率を求めたところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0044】
【表3】
Figure 0004067447
【0045】
【表4】
Figure 0004067447
【0046】
上記の表4の結果にみるように、実験番号11(対照例)では、重油で汚染された土壌(黒土)に浄化用資材を添加せずに浄化処理を行ったために、14日後の土壌の油分(重油)濃度の減少率は8.7%と低いものであった。
それに対して、実験番号1215では、重油で汚染された土壌に、小麦フスマを含有する浄化用資材を添加して浄化を行ったことにより、14日後の土壌中の重油濃度が実験番号12に比べて大幅に低下していて、油分濃度の減少率がいずれも50%を超えていて、良好な浄化結果が得られた。
特に、小麦フスマと共に腐植酸および好気性微生物資材を含有する浄化用資材cを重油汚染土壌に添加した実験番号15では、油分濃度の減少率が極めて高く、非常に良好な浄化結果が得られた。
【0047】
【発明の効果】
本発明による場合は、土壌中に含まれる炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質の分解が従来よりも促進されて、該有機汚染物質で汚染された土壌を短期間で円滑に浄化することができる。
また、本発明による場合は、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌の浄化の際に、低分子量窒素含有物質を好んで資化する微生物の異常繁殖や悪臭の発生を防止しながら、前記汚染土壌を短期間で円滑に浄化することができる。
さらに、本発明による場合は、ブロアー装置や閉鎖系施設などの特定の装置や施設を使用することなく、有機汚染物質で汚染された土壌を、簡単に、速やかに且つ低コストで浄化することができる。
本発明において、炭化水素系化合物や有機ハロゲン化合物などの有機汚染物質で汚染された土壌に、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を含有する浄化用資材(a)並びに小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と好気性微生物を含む微生物資材を含有する浄化用資材(b)から選ばれる少なくとも1種と共に、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加して浄化を行う場合に、土壌の有機汚染物質が一層短期間に分解され、極めて良好な浄化結果を得ることができる。

Claims (8)

  1. 有機汚染物質で汚染された土壌100質量部に対して、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく、
    (a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;および、
    (b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に、好気性微生物を含む微生物資材を加えた、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有割合が0.5質量%以上である、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;
    から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を0.1〜20質量部の割合で添加して浄化を行うことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌の浄化方法。
  2. 有機汚染物質で汚染された土壌100質量部に対して、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく、
    (a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;および、
    (b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方に、好気性微生物を含む微生物資材を加えた、小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方の含有割合が0.5質量%以上である、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;
    から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材を0.1〜20質量部の割合で添加すると共に、酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を、土壌と、浄化用資材(a)および浄化用資材(b)から選ばれる少なくとも1種の浄化用資材の合計質量に対して10〜100ppmの割合で添加して浄化を行うことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌の浄化方法。
  3. 浄化用資材(a)が小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有し、浄化用資材(b)が小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方並びに好気性微生物を含む微生物資材と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の浄化方法。
  4. 有機汚染物質で汚染された土壌が、炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌である請求項1〜のいずれか1項に記載の浄化方法。
  5. (a)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材;或いは
    (b)小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方を0.5質量%以上の割合で含有すると共に好気性微生物を含む微生物資材を含有する、有機溶媒を含まず且つ滅菌処理しない浄化用資材
    からなることを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌を、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく浄化するのに用いる浄化用資材。
  6. 小麦フスマおよび末粉の少なくとも一方と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有するか、或いは小麦フスマおよびふすまの少なくとも一方並びに好気性微生物を含む微生物資材と共に完熟堆肥、消化汚泥および腐植酸の少なくとも1種を含有する請求項に記載の浄化用資材。
  7. 炭化水素系化合物および/または有機ハロゲン化合物で汚染された土壌を浄化するための浄化用資材である請求項5または6に記載の浄化用資材。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の浄化用資材に、浄化用資材の質量に対して酢酸および乳酸から選ばれる少なくとも1種の化合物を60ppm以上の量で添加したことを特徴とする有機汚染物質で汚染された土壌を、有機汚染物質溶出用の有機溶媒を加えることなく浄化するのに用いる浄化材。
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