JP2005112815A - 土壌充填による還元消毒法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 園芸用の培土などに適した土壌充填による還元消毒法を提供することを課題とする。
【解決手段】 消毒方法1は、易分解性のフスマを土壌に対して重量比が1.0重量%になるように混合した土壌混合物をポリエチレン袋に充填する充填工程S1と、土壌混合物に対し圃場容水量以上の水を供給し、浸潤状態にする浸潤化工程S2と、浸潤状態の土壌混合物をポリエチレン袋に密閉する密閉工程S3と、地温を20℃以上に保持し、ポリエチレン袋を3週間静置する静置工程S4と、静置されたポリエチレン袋から土壌混合物を取出し、乾燥させる乾燥工程S5とを具備する。これにより、有機物の分解に伴う土壌微生物の働きにより、土壌病虫害、雑草の防除を簡易に行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 消毒方法1は、易分解性のフスマを土壌に対して重量比が1.0重量%になるように混合した土壌混合物をポリエチレン袋に充填する充填工程S1と、土壌混合物に対し圃場容水量以上の水を供給し、浸潤状態にする浸潤化工程S2と、浸潤状態の土壌混合物をポリエチレン袋に密閉する密閉工程S3と、地温を20℃以上に保持し、ポリエチレン袋を3週間静置する静置工程S4と、静置されたポリエチレン袋から土壌混合物を取出し、乾燥させる乾燥工程S5とを具備する。これにより、有機物の分解に伴う土壌微生物の働きにより、土壌病虫害、雑草の防除を簡易に行うことができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、臭化メチルなどの土壌くん蒸剤を用いることなく、土壌中に存在する病害虫を除去し、作物等の被害を抑えることの可能な土壌充填による還元消毒法に関するものである。
従来から、種々の病害虫による作物や園芸用植物への土壌病虫害を防ぐため、物理的防除法或いは化学的防除法が主に用いられている。
物理的防除の手法としては、土壌に対し、高温の蒸気を当てることにより消毒するもの(蒸気消毒法)が知られている。土壌病害を引き起こす主な要因は、土壌中に存在する病害虫である。そこで、ボイラーにより高温の蒸気を発生させ、この蒸気を土壌中に連続的に送り込むことによって、高温耐性の乏しい土壌病原菌及び雑草の種子を死滅させるものである。
一方、化学的防除法は、例えば、クロルピクリン剤、或いは臭化メチル剤などの土壌くん蒸剤を土壌中に直接拡散させることにより、これらの薬剤の効果によって土壌病原菌や雑草の種子の死滅を図るものである。土壌くん蒸剤は、容易に気化する性状を有し、土壌孔隙を通って速やかに広範囲に拡散する。これにより、土壌中の病原菌や雑草の種子を死滅させることができるものである。
ここで、臭化メチル剤を使用した土壌のくん蒸処理の一例についてさらに具体的に示すと、予め開缶具と呼ばれる器具を装着した臭化メチル剤の充填された複数のボンベを、消毒対象となる土壌に決められた処理量に合わせて配置する。次に、土壌及びボンベの上方からポリエチレンなどのガス不透過性のフィルムによって土壌の表面全体を被覆する。さらに、開缶具を操作し、ボンベ内に充填された臭化メチル剤を被覆されたフィルムの下の土壌中に拡散させる。これにより、被覆用のフィルムによって上方への揮散が阻害された臭化メチルガスは、下方の土壌中に浸透し、土壌病原菌や雑草の種子を死滅させることができる。なお、くん蒸に要する期間は、処理時の温度に応じて適宜調整することができる。
なお、この時くん蒸に用いるクロルピクリン剤や臭化メチル剤は、土壌病原菌の殺菌のみならず、土壌中の有害線虫や土壌害虫に対しても有効である。しかし、これらの薬剤は、劇物であるために、取扱いに際しては細心の注意を要する。特に、広範囲の土壌に対して使用する場合では、処理時の風向きに注意し、風下に位置する人家等へガスが流出しないようにする必要がある。また、臭化メチルはオゾン層破壊物質に指定されている。そのため、当該臭化メチルの生産量及び消費量が厳しく制限及び管理されており、2005年1月1日をもって、その使用が全面的に禁止されることが決定されている。そのため、臭化メチル剤を用いた化学的防除に頼ることなく、土壌病原菌の消毒が可能な手法について、研究及び開発が進められている。
その中の研究の一例として、土壌微生物の餌となる易分解性の有機物を、消毒対象の土壌に予め所定の比率で添加し、さらに水を加えることによって土壌全体の含水率を高くする。そして、この状態で圃場全体をビニールフィルムなどで被覆し、太陽熱による地温の上昇をさせるものが知られている。すなわち、一般に土壌病原菌は、55℃から60℃程度に高温に晒されると極めて短時間で死滅することから、太陽熱による高地温と、土壌還元状態による土壌病原菌の死滅を図る方法が既に開示されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
新村 昭憲、「土壌還元消毒の原理と実用化への道」、今月の農業、化学日報工業社、2003年5月号、p54−58
野村 康弘、峯村 晃、「土壌還元消毒法による育苗培土の活性化」、平成14年度 岐阜県中山間農業技術研究所試験研究成績概要書、2003年、p293−300
従来の土壌還元消毒法は、太陽熱による高地温と有機物還元による低酸素状態での死滅を狙ったものであるが、有機物の微生物の分解がもたらす効果(肥料、除草効果)は十分に明らかになっていない。
加えて、土壌還元消毒法は、圃場全体を対象とするものであるが、育苗作物に用いられる土壌についての消毒方法は考慮されていない。
特に近年では、家庭用菜園やガーデニングなどが流行し、多くの人々が自宅の庭やベランダなどで植物を栽培することが多く、園芸用の培土の流通量も多い。そのため、使用済の園芸用の培土などを再利用する方法が必要とされた。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、特に、園芸用の培土などに適した土壌充填による還元消毒法を提供することを課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明の土壌充填による還元消毒法は、「土壌、及び微生物による易分解性を有し、前記土壌に対して所定の混合比率で混合された有機物を含む土壌混合物を、不透水性を有する樹脂製袋の内部に充填する充填工程と、前記充填工程によって前記樹脂製袋に充填された前記土壌混合物に、圃場容水量を超える水量の水を供給し、前記土壌混合物を浸潤状態とする浸潤化工程と、前記樹脂製袋の袋口を閉塞し、前記土壌混合物と外気との通気を遮断する密閉工程と、前記土壌混合物が内部に充填及び密閉された前記樹脂製袋を、所定の温度条件下で静置する静置工程と」を具備するものである。
ここで、易分解性を有する有機物とは、例えば、フスマ、米糠、ショ糖、及び稲わらなどを含む作物残渣などを挙げることができる。また、樹脂製袋は、例えば、ポリエチレン樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂によってシート状に成型されたものを熱接着などによって袋状にしたものである。なお、これらの樹脂製袋は、透水性を有しないものであり、袋口を閉塞することにより、樹脂製袋の内部を気密状態にすることが可能である。なお、樹脂製の樹脂製袋は、園芸用の肥料や培土などが充填されたいわゆる「肥料袋」等を再利用することも可能である。
ここで、圃場容水量とは、「多量の降雨若しくは潅水し、重力による水の下降運動が非常に小さくなったときの含水量」として定義されるものであり、さらに詳細に説明すると、土壌が水によって完全に飽和した状態(φ=0kPa,pF=0)における水分保持量(最大容水量に相当)から、24時間以内で排出される水を重力水といい、このとき、重力水の排出によってできた空気の孔隙(粗孔隙)がある状態の水分保持量を圃場容水量(φ=−6kPa,pF=1.8)として定義するものである。ここで、φは土壌水における水の表面張力や土粒子の吸着力によるマトリックポテンシャルに相当し、係るマトリックポテンシャルφの負の常用対数をとったものをpF(=log(−10.2φ))として表すことが慣習的に行われている。
したがって、本発明の土壌充填による還元消毒法によれば、還元消毒を行う対象となる土壌と、微生物によって易分解可能なフスマなどの有機物とを混合した土壌混合物が樹脂製袋からなる樹脂製袋に充填され、さらにpF=1.8の圃場容水量を超える水量の水が樹脂製袋の内部の土壌混合物に与えられる。これにより樹脂製袋の内部の土壌混合物は、含水率が非常に高い状態となる。ここで樹脂製袋はポリエチレン樹脂などの不透水性の素材で形成されているため、圃場容水量以上の水量の水が与えられた樹脂製袋内部から、係る水が外部に漏出することがない。
そして、密閉工程において樹脂製袋の袋口を閉塞することにより、樹脂製袋の内部の気密状態が保たれる。さらに、土壌混合物の含水率の変化がなくなる。その結果、樹脂製袋の内部において、高含水率の状態で所定の温度条件下(例えば、地温が20℃以上になるような条件で約3週間)で静置することにより、土壌中の土壌病原菌を死滅させ、土壌の消毒の処理が簡易に行えるようになる。すなわち、圃場全体を還元消毒させる必要がなく、所望の量の土壌のみを土壌還元消毒することができる。これにより、小規模の農業或いは家庭菜園などに利用する土壌を、簡易にかつ、手軽に処理することが可能となる。
ここで、土壌混合物に対する水量が圃場容水量未満であると、土壌に混合された有機物の分解反応が十分に行われない。そこで、本発明においては、少なくとも圃場容水量以上の水を土壌混合物に対して供給する必要がある。また、密閉された樹脂製袋を静置する静置工程は、上述した20℃以上で約3週間の静置期間に限らず、さらに高温(例えば、30℃以上)で静置することにより、期間の短縮を図ることが可能である。
さらに、本発明の土壌充填による還元消毒法は、上記構成に加え、「前記土壌混合物の前記混合比率は、前記土壌に対する前記有機物の重量比が、0.5重量%以上、10.0重量%以下の範囲に設定されている」ものであっても構わない。
したがって、本発明の土壌充填による還元消毒法によれば、土壌混合物における土壌に対する有機物の重量比が0.5重量%以上、10.0重量%以下の範囲に調整して混合される。ここで、有機物の重量比が0.5重量%よりも低いと、土壌微生物による有機物分解に伴う効果が十分に得られず、一方、10.0重量%よりも高い場合、混合する有機物の種類によっては多くのコストがかかることがあった。そこで、有機物の重量比を0.5重量%以上、10.0重量%以下、さらに好ましくは、フスマを用いて1.0重量%以上2.0重量%以下に設定することにより、上述の還元処理の効率及び処理コストの問題を解消して、土壌消毒を行うことが可能となる。
さらに、本発明の土壌充填による還元消毒法は、上記構成に加え、「前記有機物は、フスマ、米糠、及び作物残渣のいずれか一つが利用される」ものであっても構わない。
したがって、本発明の土壌充填による還元消毒法によれば、フスマ及び米糠が有機物として選択され、利用されている。ここで、フスマは、小麦を粉に挽くときに出る皮のカスであり、主に家畜の飼料や肥料として使用されているものである。そのため、比較的安価に、かつ大量に入手することが容易であり、多くの園芸用培土に対する還元消毒を行う場合であってもコストが嵩むことが少ない。一方、米糠は、玄米を精米する際に外皮の一部がすりつぶれて出る薄黄色の粉末であり、同様に家畜の飼料、肥料などの使われている。また、米糠は、油を精製したり、野菜などを漬物とする際の糠床に利用されるものである。さらに、作物残渣とは、例えば、キャベツやトマトなどの収穫物を収穫した後に残る葉や茎などのことである。したがって、これらの有機物として比較的容易に入手することが可能なこれら資材を利用することにより、土壌充填による還元消毒法を行う際に特に困難性を生じることがない。また、係る有機物には、窒素分が多く含まれており、改めて化学肥料などの基肥を土壌に投入することを省略することができる。
さらに、本発明の土壌充填による還元消毒法は、上記構成に加え、「前記樹脂製袋は、光透過性素材によって形成され、前記静置工程は、前記樹脂製袋の内部に充填された前記土壌混合物に対し、前記樹脂製袋を通して太陽光が照射され、地温を20℃以上、60℃以下に保持する」ものであっても構わない。
したがって、本発明の土壌充填による還元消毒法によれば、土壌混合物を充填する樹脂製袋として、光透過性の素材、換言すれば、透明或いは半透明な素材が利用されている。そのため、樹脂製袋の内部に密閉された状態の土壌混合物は、樹脂製袋に対して照射された太陽光を、樹脂製袋を通して浴びることができる。これにより、太陽光の照射によって土壌の地温を、例えば、20℃以上に確保し、維持することができる。その結果、静置工程における静置条件を安定させられる。なお、前述したポリエステル樹脂やポリ塩化ビニル樹脂は、透明或いは半透明の性状を呈するものが大部分であり、光透過性を有するこれらの樹脂製袋を入手することに、特に困難性を伴うことはない。なお、太陽光によって地温を上昇させるものであるため、地温が60℃以上になることは一般的には想定されない。また、60℃以上の高温条件では有機物の分解を担う土壌微生物の働きが大きく異なるため、十分な還元効果を得ることができないと考えられる。そのため、保持する地温の上限を60℃以下に本発明においては設定している。
本発明の効果として、小規模の農家や一般家庭などの家庭菜園で使用する土壌を容易に還元消毒することができ、特に、園芸用植物等の育苗ポットに使用する土壌に適したものとして使用することができる。
次に、本発明の一実施形態の土壌充填による還元消毒法1(以下、単に「消毒方法1」と称する)について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の消毒方法1の各工程の流れを示すフローチャートであり、図2は消毒方法1に使用する(a)ポリエチレン袋2、(b)閉塞具3の構成を示す説明図であり、図3及び図4は消毒方法1の各工程の流れを模式的に示す説明図である。
本実施形態の消毒方法1は、図1乃至図4に示すように、土壌4に含まれる土壌病原菌(図示しない)を低酸素状態に置くとともに、土壌微生物による有機物の分解によって消毒対象となる土壌4と、土壌4に対して所定の混合比率によって混合されるフスマ5と、土壌4及びフスマ5が混合された土壌混合物6に対して与えられる十分な水量の水7とを主に利用して行われる。また、本発明の消毒方法1に使用する機材としては、不透水性の厚手のポリエチレン樹脂製のシートを袋状にしたポリエチレン袋2と、ポリエチレン袋2に開口した袋口8を縛り、ポリエチレン袋2の内部を密閉状態にすることが可能な紐状の閉塞具3とを主に用いて行われる。ここで、ポリエチレン袋2が本発明における樹脂製袋に相当し、フスマ5が易分解性の有機物に相当する。
さらに、詳しく説明すると、図2に示すように、ポリエチレン袋2は、園芸用植物に施肥される肥料などが充填された、いわゆる「肥料袋」を再利用したものである。なお、このポリエチレン袋2は、肥料等を収容し、さらに搬送や積替え時に加えられる可能性のある衝撃に抗するために比較的肉厚の素材が用いられ、さらに熱接合部分も強固なものとなっている。そのため、ポリエチレン袋2が破れ、容易に孔が穿くようなことはほとんどない。加えて、ポリエチレン袋2は、水分及び空気を透過することのない不透水性及び光透過性のポリエチレン樹脂からなっているため、水密性及び気密性を保持することができるとともに、ポリエチレン袋2の内部に太陽光Sを取り込むことのできる光透過性の性状を併せて有している。また、前述したように、ポリエチレン袋2の一部には、開口した袋口8が設けられ、係る袋口8から土壌混合部6の充填や水7の供給を行うことができる。なお、ポリエチレン袋2として用いられる肥料袋は、一般に容量が約20リットル程度のものが利用されていることが多く、本実施形態の消毒方法1においても係る程度の容量のものが準備されている。なお、後述する土壌混合物6のポリエチレン袋2の充填及び水7の供給によって、土壌混合物6及び水7が密閉された状態のポリエチレン袋2の重量は増加することが予想されるものの、その後の静置する際の運搬作業に支障を来すほどではない。
次に、本実施形態の消毒方法1の使用の一例について、図1、図3、及び図4を特に用いて説明を行う。まず、予め準備されたポリエチレン袋2の中に、消毒対象となる土壌4及び土壌4に対して重量比が約1.0重量%になるように調整されたフスマ5を混合し、土壌混合物6を形成しておく。そして、混合された土壌混合物6をポリエチレン袋2の袋口8から充填する(充填工程S1:図3(a)参照)。なお、ポリエチレン袋2に充填される土壌混合物6の量は、次工程以降で行われる水7の供給及び閉塞具3の閉塞作業の容易さを考慮して、若干の隙間を有する状態、換言すれば、ポリエチレン袋2の最大容量よりも少ない量が充填されている。
その後、ポリエチレン袋2に所定量が充填された土壌混合物6に対し、十分な水量の水7が供給される(浸潤化工程S2:図3(b)参照)。このとき、供給される水7は、土壌混合物6に対し、圃場容水量以上(pF>1.8に相当)の水量が供給される。なお、圃場容水量については、既に説明を述べたため、ここでは詳細な説明は省略する。その結果、pF=1.8以上に相当する状態となり、高含水率の浸潤状態にある土壌混合物6にすることができる。
その後、ポリエチレン袋2の袋口8を紐状の閉塞具3によって縛ることで閉塞し、袋内外の通気を遮断して、さらに土壌混合物6に与えられた水7が外部に漏出しないよう密閉する(密閉工程S3:図3(c)参照)。これにより、ポリエチレン袋2の内部が、外部から水密及び気密となった状態で遮断される。
それから、土壌混合物6が内部に充填されたポリエチレン袋2を、所定の温度条件の環境下で静置する(静置工程S4:図4(a)参照)。このとき、土壌混合物6に対しては、ポリエチレン袋2が前述したように光透過性の素材によって形成されているため、静置された状態で太陽光Sを浴びることができる。これにより、土壌混合物6の地温を20℃以上に確保し、土壌微生物による有機物の分解が進みやすい環境を創出することができる。なお、静置工程S4では、約3週間程度、地温を20℃以上に確保した状態を継続する条件が、本実施形態の消毒方法1においては採用されている。
このとき、ポリエチレン袋2の内部では、有機物として混合されたフスマ5が、高含水率の嫌気状態に置かれ、さらに一定以上の温度に保たれることにより土壌微生物(図示しない)による急激な分解が行われる。
そして、静置工程S4を3週間継続して、土壌微生物による有機物の分解が終わった後に、閉塞具3によって密閉されていたポリエチレン袋2の袋口8を開放し、土壌混合物6をポリエチレン袋2の内部から取出す。このとき、還元消毒後の土壌混合物6は未だ含水率が高い状態にあるため、このままでは園芸用等の土壌として使用することが困難である。そこで、取出した土壌混合物6を、天日などに晒して乾燥させる(乾燥工程S5:図4(b)参照)。
なお、乾燥工程S5の完了時期の目安は、土壌混合物6に含まれる硫化水素や硫化鉄に起因する臭い(「ドブ臭」と呼称されることもある)の消失した時期をもって嗅覚などにより判断することができる。そして、係る処理済み土壌9をプランターや育苗ポットの培土として利用することができる。特に、ポリエチレン袋2に収容した状態で、少量ずつ還元消毒の処理を行うことができるため、小規模の農場や家庭菜園用に適するものである。また、本実施形態の消毒方法1を行うための機材として、ポリエチレン袋2や閉塞具3などの比較的簡易で、かつ入手が容易なものが用いられるため、消毒方法1の実施が非常に楽に行え、かつコストもほとんど必要とならない。さらに、従来の臭化メチル剤を利用するくん蒸のように、人体や地球環境に対する影響がほとんどなく、いわば自然に優しい土壌消毒の手法であると、本発明の消毒方法1は言うことができる。
また、本発明の消毒方法1によれば、静置工程S4において、ポリエチレン袋2の内部で行われる有機物の分解等の作用により、土壌中の土壌病原菌等の駆除とともに、雑草の種子などを同時に死滅させることができる。その結果、処理済みの土壌9を培土として用いた場合、生育のよい作物を育てることができる。加えて、土壌4に対して有機物として加えられるフスマ5は、窒素分を多量に含有していることが知られ、係るフスマ5の使用により処理済みの土壌9には、予め植物の生育に不可欠な窒素分が含まれていることになる。その結果、従来のように、基肥として化学肥料を施肥する必要がない。
上記に説明したように、本発明の消毒方法1によれば、フスマ5などの有機物、圃場容水量以上の水7、及びポリエチレン袋2の密閉による低酸素状態の条件を、簡易な基材で揃えることにより、特に、小規模の園芸用培土の再生を容易に行うことができる。加えて、土壌病原菌による土壌病害の被害の抑制に加え、土壌4の中の雑草の生育を抑えることができ、雑草の除去などの手間のかかる作業の労力を軽減することができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
すなわち、本実施形態の消毒方法1において、土壌4に対して加える有機物として小麦の皮のカスからなるフスマ5を用いるものを示したが、勿論これに限定されるものではなく、土壌微生物による易分解性を要するものであれば構わない。例えば、フスマ、米糠、ショ糖、及び稲わらなどを含む作物残渣などを使用することができる。このとき、係る有機物のC/N比(炭素/窒素比)に応じて、土壌4に対する重量比や静置工程S4における静置条件を変更することが可能である。一般に、C/N比が高い、すなわち、炭素の比率が高い有機物は、土壌微生物による分解が緩やかであり、そのため、本発明の消毒方法1においても、十分な肥料効果を得ようとする場合、添加量を増やしたりする必要があると想定される。そのため、C/Nの高い有機物は、消毒及び肥料効果を得ようとする場合はあまり向いていないと考えられる。
また、土壌4に対するフスマ5の重量比を1.0重量%にするものを示したが、勿論、これに限定されるものではない。しかしながら、有機物の占める比率が低いと、適切な消毒効果を得ることができない。一方、有機物の占める比率が高いと、土壌4に混合する有機物の量が増加し、コストの増加や適切な肥料効果を得ることができない。そこで、土壌4に対する混合比率を0.5重量%以上、10.0重量%以下、さらに好ましくは、1.0重量%以上、2.0重量%以下の範囲に設定することにより、上述の問題をほぼ解消することができるようになる。
1 消毒方法(土壌充填による還元消毒法)
2 ポリエチレン袋(樹脂製袋)
4 土壌
5 フスマ(有機物)
6 土壌混合物
7 水
8 袋口
9 処理済みの土壌
S 太陽光
S1 充填工程
S2 浸潤化工程
S3 密閉工程
S4 静置工程
2 ポリエチレン袋(樹脂製袋)
4 土壌
5 フスマ(有機物)
6 土壌混合物
7 水
8 袋口
9 処理済みの土壌
S 太陽光
S1 充填工程
S2 浸潤化工程
S3 密閉工程
S4 静置工程
Claims (4)
- 土壌、及び微生物による易分解性を有し、前記土壌に対して所定の混合比率で混合された有機物を含む土壌混合物を、不透水性を有する樹脂製袋の内部に充填する充填工程と、
前記充填工程によって前記樹脂製袋に充填された前記土壌混合物に、圃場容水量を超える水量の水を供給し、前記土壌混合物を浸潤状態とする浸潤化工程と、
前記樹脂製袋の袋口を閉塞し、前記土壌混合物と外気との通気を遮断する密閉工程と、
前記土壌混合物が内部に充填及び密閉された前記樹脂製袋を、所定の温度条件下で静置する静置工程と
を具備することを特徴とする土壌充填による還元消毒法。 - 前記土壌混合物の前記混合比率は、
前記土壌に対する前記有機物の重量比が、0.5重量%以上、10.0重量%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌充填による還元消毒法。 - 前記有機物は、
フスマ、米糠、及び作物残渣のいずれか一つが利用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の土壌充填による還元消毒法。 - 前記樹脂製袋は、
光透過性素材によって形成され、
前記静置工程は、
前記樹脂製袋の内部に充填された前記土壌混合物に対し、前記樹脂製袋を通して太陽光が照射され、地温を20℃以上、60℃以下に保持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の土壌充填による還元消毒法。
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