JP4410658B2 - ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法 - Google Patents

ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法 Download PDF

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本発明は、ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法に関する。さらに詳しくは、ポリマーの原料や各種合成中間体として有用なω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法に関する。ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの中でも特に炭素数が15又は16であるω−ヒドロキシカルボン酸のエステルは、ムスク香料素材である大環状ラクトン前駆体として非常に有用な化合物である。
α,ω−ジカルボン酸又はそのジエステルにおいて、その一方のカルボキシル基又はエステル基のみを水素化させる方法は、ω−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを製造するうえで、簡便でかつ工業的に有利な方法の1つである。
しかしながら、ω−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルを効率的に製造するには、α,ω−ジカルボン酸又はそのジエステルの転化率を50%以上にまで高めることが必要である反面、転化率が50%を超えると副生成物である両水素体、すなわちα,ω−ジオールの量が顕著に増加し、ω−ヒドロキシカルボン酸又はそのエステルの選択率及び収率が低下する。例えば、銅−クロム触媒は、エステルの水素化触媒として広く知られているが、この触媒を用いてα,ω−ジカルボン酸ジエステルを水素化させた場合、反応初期からα,ω−ジオールが副生するため、転化率の低い段階で反応を停止させたとしても、高い選択率でω−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができない。
そこで、α,ω−脂肪族ジカルボン酸誘導体の水素化反応の選択性を向上させる方法として、例えば、
(1) α,ω−脂肪族ジカルボン酸モノアルキルエステル又はその酸ハロゲン化物に、コバルト系触媒、パラジウム系触媒又はルテニウム系触媒を作用させてカルボキシル基を選択的に水素化させる方法(例えば、特許文献1〜3参照)、
(2) α,ω−脂肪族ジカルボン酸モノアルキルエステル又はその金属塩に、銅−クロム触媒を作用させてエステル基を選択的に水素化させる方法(例えば、特許文献4及び5参照)、
(3) モノエステル、酸無水物等のα,ω−脂肪族ジカルボン酸誘導体に、ジボラン等の還元剤を作用させてω−ヒドロキシカルボン酸誘導体を製造する方法(例えば、特許文献6及び非特許文献1参照)
等が提案されている。
しかしながら、前記(1) 〜(3) の方法は、α,ω−脂肪族ジカルボン酸誘導体を数工程かけて別途調製する必要があるので、煩雑な操作及び高コスト化を避けることができず、工業的に有利な方法であるとはいえない。さらに、前記(3) の方法は、高価な還元剤を当量以上必要とするので、コスト及び廃棄物量を低減させる観点から、大量に製造するのには適していない。
一方、原料としてα,ω−脂肪族ジカルボン酸ジエステルを用いてω−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法として、
(4) シュウ酸ジエステルに銅を含有する触媒を作用させることにより、グリコール酸エステルを製造する方法(例えば、特許文献7〜10参照)、
(5) 炭素数3〜14のジカルボン酸のジエステルに少なくとも銅金属および銀金属が担体に担持されている固体触媒の存在下で、前記ジカルボン酸のジエステルを気相で水素化させることにより、ラクトンを製造する方法(例えば、特許文献11参照)、
(6) 炭素数3〜20のジカルボン酸のジエステルに、銅含有率が1〜40重量%である銅系触媒を作用させることにより、ω−脂肪族カルボン酸エステルを製造する方法(例えば、特許文献12参照)
等が提案されている。
しかしながら、前記(4) の方法では、水素化される化合物が炭素数2のグリコール酸エステルに限定されており、本発明に用いられるα,ω−ジカルボン酸ジエステルへの応用は何ら開示されていない。
前記(5) の方法では、炭素数3〜14のジカルボン酸のジエステルが水素化の対象となっているが、連続気相反応で行う点、5及び6員環を形成する場合を除いては生成したω−ヒドロキシカルボン酸エステルのラクトン化は起こりにくいこと、及びその実施例において、コハク酸ジメチルからγ- ブチロラクトンへの選択率が、アジピン酸ジメチルからε−カプロラクトン及びヒドロキシカプロン酸メチルヘの選択率よりも有意に高いことから、この方法を炭素数6以上のα,ω−ジカルボン酸のジエステルに対して適用しうるかどうかが不明である。
また、前記(6) の方法では、充分に高い選択率でω−ヒドロキシカルボン酸エステルを得るためには、触媒中における銅の含有率が20重量%以下となるように調整する必要があるが、一般的な銅系触媒と対比して、単位重量あたりの水素化活性が低いため、触媒コストが大きく、生産性が低いという欠点がある。
特開昭63−301845号公報 特許第2582612号明細書 特許第2891430号明細書 特許第1947913号明細書 特許第2543395号明細書 特開平1−172359号公報 特開昭57−180432号公報 特開昭58−207945号公報 特公昭62−37030号公報 特開平9−87233号公報 特許第3132532号明細書 特開2001−348363号公報 ジャーナル・オブ・ケミカル・エジュケーション(Journal of Ch emical Education), 1977 年, 54巻, 12号, p.778-779
本発明は、容易に入手しうる汎用銅系触媒及びエステル交換触媒を用いて、簡便に、高選択率及び高収率でω−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造しうる方法を提供することを課題とする。
本発明は、銅系触媒を用いてα,ω−ジカルボン酸ジエステルを水素化させる際に、エステル交換触媒を共存させるω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法に関する。
本発明の製造法によれば、容易に入手することができ、汎用されている銅系触媒と、特定のエステル交換触媒が用いられているので、ω−ヒドロキシエステルを高選択性及び高収率で簡便に製造することができるという効果が奏される。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの代表例としては、式(I):
Figure 0004410658
(式中、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、nは4〜18の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。α,ω−ジカルボン酸ジエステルとして、式(I) で表される化合物を用いた場合には、ω−ヒドロキシカルボン酸エステルとして、式(II):
Figure 0004410658
(式中、R及びnは前記と同じ)
で表される化合物が得られる。
式(I) において、2つのRは、それぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい炭素数1〜24の炭化水素基である。炭化水素基の中では、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、及び炭素数6〜24のアルキルアリール基又はアリールアルキル基が好ましい。
炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基又はアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基が好ましい。また、水素化反応の際の反応速度を高める観点から、立体障害が小さい直鎖アルキル基が好ましく、安価なアルコールから容易に調製することができることから、炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましい。
炭素数6〜24のアルキルアリール基又はアリールアルキル基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。これらの中では、水素化反応の反応速度を高める観点から、直鎖アリールアルキル基が好ましく、またその調整の簡便性の観点から、ベンジル基が好ましい。
nは、1〜18の整数であるが、13又は14であることが、ムスク香料素材としての価値が高いシクロペンタデカノリド及びシクロヘキサデカノリド中間体として、そのω−ヒドロキシカルボン酸エステルが有用であることから好ましい。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルは、酸等の触媒の存在下で、α,ω−ジカルボン酸とアルコールとを反応させることによって製造することができる。α,ω−ジカルボン酸ジエステルは、触媒や触媒を中和させる際に副生する無機塩等を濾別すれば、そのまま水素化反応に用いることができるが、反応活性を高め、触媒寿命を長くする観点から、銅系触媒を被毒する微量の無機塩等の不純物をあらかじめ蒸留精製や吸着処理によって除去することが好ましい。
銅系触媒における酸化銅の含有率及び銅系触媒に用いられる担体の種類には、特に制限がない。
銅系触媒における酸化銅の含有率は、銅系触媒の単位重量あたりの水素化活性を高める観点から、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、銅成分の凝集による失活を抑制する観点から、好ましくは75重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。これらの観点から、銅系触媒における酸化銅の含有率は、好ましくは10〜75重量%、より好ましくは20〜50重量%である。
銅系触媒に用いられる担体の種類としては、例えば、活性炭、ゼオライト、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の触媒担体を用いることができるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
銅系触媒の代表例としては、銅−クロム系触媒、銅−鉄系触媒、銅−亜鉛系触媒、銅と銀、白金等の貴金属との混合触媒等が挙げられる。
なお、銅系触媒は、α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応に用いる前に、あらかじめ水素、一酸化炭素、アンモニア、低級アルコール等の適当な還元剤を用いて処理しておくことが好ましい。
エステル交換触媒として、一般に知られている酸、塩基又は中性に近い種々の触媒で、水素化反応の反応条件下で安定なものであればよい。また、エステル交換触媒は、固体及び液体のいずれであってもよい。
エステル交換触媒の活性パラメーターは、ヒドロキシカルボン酸の選択性を高める観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.05〜2000、さらに好ましくは0.1 〜1000、特に好ましくは0.5 〜700 である。
本発明においては、二塩基酸のジエステルであるα,ω−ジカルボン酸ジジエステルのエステル交換反応が複雑であるので、エステル交換触媒の活性パラメーターを求めるのが困難である。
したがって、エステル交換反応の反応メカニズムが単純な一塩基酸を用いて、活性パラメーターを算出する。
なお、本明細書における「活性パラメーター」とは、n-オクタン酸メチル、n-オクタン酸メチルに対して10モル倍の1-オクタノール及びn-オクタン酸メチルに対して10モル%のエステル交換触媒からなる混合物を180 ℃に加熱しながら攪拌するエステル交換反応において、n-オクタン酸メチルの残存重量の自然対数を反応時間に対してプロットし、さらに最小二乗法による線形近似曲線によって得られる直線の傾きの絶対値を意味する。
本発明においては、エステル交換反応がそれぞれ同じ炭素数を有するエステルとアルコールとの反応であるため、一塩基酸のエステルとしてオクタン酸メチル及び1価アルコールとして1−オクタノールを用い、さらに、本発明のエステル化合物のアルキル鎖長にかかわらず、炭素数8の前記化合物を用いて、活性パラメーターを算出する。なお、エステルに対して大過剰のアルコールを用いることにより、反応速度が低減する可能性を排除している。
活性パラメーターが0.1 以上であるエステル交換触媒の中では、高いエステル交換活性のみならず、ω−ヒドロキシカルボン酸エステルとα,ω−ジオールとの脱水酸基体(ω−ヒドロキシカルボン酸エステル及びα,ω−ジオールから、脱水反応及び二重結合の水添反応を経て生成するエステル、アルコール及び炭化水素を意味する。例えば、 15-ヒドロキシペンタデカン酸メチルの脱水酸基体はペンタデカン酸メチルである。以下、単に「脱水酸基体」という)の副生成量が少なく、高選択的にω−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができることから、(a) 周期表第1族元素のアルコキシド、同第2族元素のアルコキシド及び同第4族元素のアルコキシド、(b) 周期表第2族元素の酸化物、同第4族元素の酸化物及び同第14族元素の酸化物、並びに(c) オキソ酸金属塩からなる群より選ばれた1種以上が好ましい。
(a) 周期表第1族元素のアルコキシド、同第2族元素のアルコキシド及び同第4族元素のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。アルコキシドの中では、分子量が小さく、使用量を低減させることができ、コストの削減を図る観点から、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド等の炭素数1〜4のアルコキシドが好ましく、中性でエステル交換反応以外の副反応を抑制することができることから、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラn-ブトキシドが好ましい。
(b) 周期表第2族元素の酸化物及び第14族元素の酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化スズ(II)等が挙げられる。これらの中では、コスト面から、酸化マグネシウムが好ましい。
(c) オキソ酸としては、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。また、オキソ酸金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの中では、成分元素の溶出量の抑制し、反応装置の汎用性の観点から、リン酸アルミニウムが好ましい。
前記(a) 〜(c) のエステル交換触媒の中では、脱水酸基体の副生成量が少なく、水素化反応物との分離が容易であるとともに、耐久性に優れていることから、酸化マグネシウム及びリン酸アルミニウムが好ましい。
本発明においては、エステル交換触媒を用いることにより、水素化反応中にα,ω−ジカルボン酸ジエステルとω−ヒドロキシカルボン酸エステルとのエステル交換反応によって生成するエステルダイマーの生成量が増加するので、高選択的にω−ヒドロキシカルボン酸エステルを得ることができるものと考えられる。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応の際には、懸濁床反応方式及び固定床反応方式等のいずれの方式を採用することができる。
懸濁床反応方式で水素化反応を行う場合には、粉末状の銅系触媒と、粉末状又は液状のエステル交換触媒とを用いることが好ましい。この場合、銅系触媒及びエステル交換触媒の量は、反応圧力及び反応温度に応じて実用的な反応速度が得られるように調整すればよいが、いずれも、濾過回収設備の負荷を低減させる観点から、α,ω−ジカルボン酸ジエステルに対して、それぞれ好ましくは0.1 〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。これらの触媒は、濾過によって容易に回収し、再利用しうるようにする観点から、5 μm以上の粒径を有する粉末であることが好ましい。
なお、液状のエステル交換触媒は、水素化反応物とともに濾過母液側に含まれるため、その回収及び再使用を行わずに、バッチごとに新たな触媒を用いることが好ましい。
固定床反応方式を採用する場合、触媒として、反応条件や反応装置に適した形状、例えば、ペレット状、球状等に成形された銅系触媒及びエステル交換触媒を用いることが好ましい。
また、反応条件下で銅系触媒を被毒して水素化活性を低下させる傾向があるエステル交換触媒を用いる場合には、充分なエステル交換活性が発現する範囲内で、できるだけエステル交換触媒の量を低減させることが、高い水素化活性と選択性を両立させる観点から好ましい。この場合、銅系触媒に対するエステル交換触媒の量は、好ましくは10〜100 重量%、より好ましくは20〜50重量%である。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応は、水素ガスを用いて行う。水素化反応時の水素ガスの圧力は、充分な反応速度と設備負荷の低減を両立する観点から、好ましくは1〜40MPa 、より好ましくは3〜20MPa である。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応時の反応温度は、脱水酸基体の副生成量を低減させる観点から、好ましくは100 〜350 ℃、より好ましくは100 〜250 ℃である。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応は、反応系内で同時に進行するエステル交換反応によって副生成するアルコールが系外に流出しないようにするために、密閉系で行うことが好ましい。アルコールが系外に流出した場合、エステルトリマー等のオリゴマーの生成量が増加し、最終的に副生成物であるジオールの副生成率が高くなる傾向がある。
α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応は、無溶媒で行うことが生産性を高めるうえで好ましい。しかし、生成した水素化反応物の粘度や融点が高くなり、撹拌時及び取り出し時の操作性に支障をきたす場合には、銅系触媒及びエステル交換触媒の反応活性やω−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択性に悪影響を与えないアルコール、エーテル、炭化水素等の溶媒を用いてα,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応を行うことが好ましい。
目的化合物であるω−ヒドロキシカルボン酸エステルの収率を高めるために、α,ω−ジカルボン酸ジエステルの水素化反応の終点は、後述する方法により求められるα,ω−ジカルボン酸ジエステルの転化率が50〜80%となる時点とすることが好ましい。
水素化反応終了後、水素化反応物中に含まれるエステルダイマーを、式:ROH(式中、Rは前記と同じ)で表されるアルコール等でエステル交換をし、ω−ヒドロキシカルボン酸エステルに変換してもよいが、引き続いてω−ヒドロキシカルボン酸エステルの分子内環化反応を行う場合には、エステルダイマーがそのまま水素化反応物に含まれていてもよい。
各実施例及び比較例における物性の測定方法は、以下のとおりである。
(1) α,ω−ジカルボン酸ジエステルの転化率及びω−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率の測定
冷却管を取り付けた50mL容のナス型フラスコに、α,ω−ジカルボン酸メチルエステルの水素化反応物から触媒を濾別した後のサンプル1.0g、硫酸等の酸触媒0.1g及び前記サンプルに対して過剰量のメタノール(約30mL)を加え、65℃で加熱還流させる。得られたメタノールとの反応生成物を採取し、炭酸水素ナトリウムで酸触媒を中和した後、ガスクロマトグラフィー測定を行い、すべてのエステルダイマー及びエステルオリゴマーのピークの消失により、すべてα,ω−ジカルボン酸メチルエステルとω−ヒドロキシカルボン酸メチルエステルに変換されたことを確認する。
すべてのエステルダイマー及びエステルオリゴマーがω−ヒドロキシカルボン酸メチルエステルに変換されたことを確認した後、そのサンプルに含まれている、α,ω−ジカルボン酸ジメチルとα,ω−ジオールと脱水酸基体とのモル比を、内部標準物質としてω−ヒドロキシカルボン酸メチルを用いてガスクロマトグラフィーによって求める。
脱水酸基体以外の反応副生成物の量は、微量であることから、前記ガス・クロマトグラフィーによって求められた各成分のモル比から、以下の式により、転化率、選択率及び収率が求められる。
〔α,ω−ジカルボン酸ジエステルの転化率(%)〕
=100 −〔(α,ω−ジカルボン酸ジエステルのモル比)÷((α,ω−ジカルボン酸ジエステルのモル比)+(ω−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル比)+(α,ω−ジオールのモル比)+(脱水酸基体のモル比))〕
〔ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率(%)〕
=〔(ω−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル比)÷((α,ω−ジカルボン酸ジエステルのモル比)+(α,ω−ジオールのモル比)+(脱水酸基体のモル比))〕
〔ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの収率(%)〕
=〔α,ω−ジカルボン酸ジエステルの転化率(%)〕
×〔ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率(%)〕
〔ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの収率(%)〕
=〔α,ω−ジカルボン酸ジメチルの転化率(%)〕
×〔ω−ヒドロキシカルボン酸エステルの選択率(%)〕
÷100
(2) エステル交換触媒の活性パラメーター測定
温度計、冷却管及びサンプリング用のゴム栓を取り付けた50mL容の3つ口丸底フラスコに、n-オクタン酸メチル3.16g(20.0ミリモル) 、1-オクタノール26.0g (200 ミリモル)、エステル交換触媒(2.0 ミリモル)及びガスクロマトグラフィー内部標準物質としてn-ヘキサデカン1.13g(5.0 ミリモル)を加え、窒素雰囲気下で加熱した。フラスコ内の温度が180 ℃に到達した時点を0時間とし、経時的にサンプル約0.1mL を採取した。サンプル中の触媒を濾別し、イソプロピルアルコール等の溶媒で希釈後に、ガスクロマトグラフィー測定を行い、n-オクタン酸メチルの残存量(重量)を定量した。
n-オクタン酸メチルの残存量の自然対数を反応時間(単位は時間)に対してプロットし、さらに最小二乗法により線形近似曲線を引いた。線形近似曲線の傾きの絶対値をそのエステル交換触媒の活性パラメーターと定義する。
各実施例及び各比較例で用いるエステル交換触媒の活性パラメーターを表1に示す。
Figure 0004410658
調製例1
硝酸アルミニウム・九水和物375g(1.0 モル)を水3000g に溶解し、85%オルトリン酸水溶液115g(1.0 モル)を加えた。得られた混合液に10%アンモニア水を25℃で滴下することにより、そのpHを7とし、リン酸アルミニウムの沈澱を得た。これを濾別し、続いて水洗し、110 ℃で12時間乾燥した後、さらに400 ℃で3時間焼成することにより、リン酸アルミニウム触媒を得た。
実施例1
500mL 容のオートクレーブ反応装置に 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル150g(499ミリモル)と未還元処理の銅−クロム触媒[日揮化学(株)製、銅含有率35重量%]0.8 g (対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル0.5 重量%)、及び調製例1で得られたリン酸アルミニウム150mg(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル0.1 重量%)を加え、1MPaの圧力となるまで水素ガスで加圧した。
反応系内を密閉し、回転数800Rpmで撹拌しながら280 ℃まで昇温した。系内がこの温度に到達した後、水素ガスで系内を20MPa まで加圧して水素化反応を開始し、系内圧力が20MPa に保たれるように適宜水素ガスを補充しながら、9時間反応を行い、 15-ヒドロキシペンタデカン酸メチルを含有する水素化反応物を得た。反応条件と水素化反応物の分析結果から求めた 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチルの転化率、 15-ヒドロキシペンタデカン酸メチルの選択率及び収率を表2に示す。
比較例1
実施例1において、エステル交換触媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作で水素化反応を2時間行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004410658
実施例2
銅触媒として未還元処理の銅−鉄−アルミニウム触媒[日揮化学(株)製、銅含有率28重量%]15g(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル10重量%)、及びエステル交換触媒として調製例1で得られたリン酸アルミニウム7.5g(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル5重量%)を用い、実施例1と同様の操作で水素圧5MPa、反応温度250 ℃、11時間水素化反応を行った。反応条件及び得られた水素化反応物の分析結果を表3に示す。
実施例3〜5
実施例2において、エステル交換触媒として、チタンテトライソプロポキシド[和光純薬工業(株)製、一級試薬、実施例3で使用]、ナトリウムメトキシド[関東化学(株)製、実施例4で使用]、酸化マグネシウム[片山化学工業(株)製、特級試薬、実施例5で使用]を用いた以外は、実施例2と同様の操作で水素化反応を行った。水素化反応は、実施例3では14時間、実施例4では16時間、実施例5では8時間で行った。その結果を表3に示す。
比較例2
実施例2において、エステル交換触媒を用いなかった以外は、実施例2と同様の操作で7時間水素化反応を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0004410658
実施例6〜7
銅触媒として未還元処理の銅−亜鉛触媒[日揮化学(株)製、銅含有率38重量%]15g(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル10重量%)、及びエステル交換触媒として調製例1で得られたリン酸アルミニウムを表4に示す量で用い、実施例1と同様の操作で水素圧5MPa、反応温度250 ℃にて、反応時間を実施例6では12時間、実施例7では11時間に調整して水素化反応を行った。反応条件と得られた水素化反応物の分析結果を表4に示す。
比較例3
実施例6において、エステル交換触媒を用いなかった以外は、実施例6と同様の操作で7時間水素化反応を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0004410658
調製例2
酸化チタン39.3g(0.49モル)を分散させたイオン交換水3500g を95℃に加熱した。この水溶液に、硝酸銅三水和物104g(0.43 モル)、硝酸亜鉛六水和物6.62g(22ミリモル)、及び硝酸バリウム5.52g(21ミリモル)の混合水溶液と10重量%の炭酸ナトリウム水溶液660g(0.62 モル)を同時に滴下した。最終的にpHが9となったスラリーをさらに95℃で1時間撹拌した。冷却後、このスラリーを濾別し、続いて水洗し、110 ℃で12時間乾燥し、次いで400 ℃で2時間焼成することにより、酸化チタン担持酸化銅−酸化亜鉛−酸化バリウムの複合酸化物触媒を得た。
得られた複合酸化物触媒の銅含有率は29重量%であり、その組成の重量比は、CuO:ZnO:BaO:TiO2=44:2.3:4.1:50 であった。
実施例8
銅触媒として、調製例2で得られた未還元処理の酸化チタン担持銅−亜鉛触媒3g(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル2重量%)、及びエステル交換触媒として調製例1で得られたリン酸アルミニウム1.5g(対 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチル1重量%)を用い、実施例1と同様にして水素ガス圧20MPa 、及び反応温度250 ℃で水素化反応を12時間行った。反応条件と得られた水素化混合物の分析結果を表5に示す。
実施例9〜10(但し、実施例10は参考例)
実施例8において、エステル交換触媒として、実施例5で用いたのと同じ酸化マグネシウム(実施例9)、酸化ジルコニウム〔第一稀元素化学工業(株)製の水酸化ジルコニウムを300 ℃で3時間焼成したもの〕(実施例10) を用いた以外は、実施例8と同様の操作で2時間水素化反応を行った。その結果を表5に示す。
比較例4
実施例8において、エステル交換触媒を用いなかった以外は、実施例8と同様の操作で2時間水素化反応を行った。その結果を表5に示す。
Figure 0004410658
また、実施例9と比較例4の反応における、 1,15-ペンタデカンニ酸ジメチルの転化率に対する 15-ヒドロキシペンタデカン酸メチルの選択率の経時変化を図1に示す。
図1に示された結果から、水素化反応の系内にエステル交換触媒(酸化マグネシウム)を共存させておくと、 15-ヒドロキシペンタデカン酸メチルが反応初期から後期まで常に高選択的に生成することがわかる。
本発明の製造法によって得られたω−ヒドロキシカルボン酸エステルは、ポリマーの原料や各種合成中間体として有用であり、特に炭素数が15又は16であるω−ヒドロキシカルボン酸のエステルは、ムスク香料素材である大環状ラクトン前駆体として非常に有用である。
図1は、実施例9と比較例4の反応における、ジエステルの転化率に対するヒドロキシエステルの選択率の経時変化を示す図である。

Claims (3)

  1. 銅系触媒を用いてα,ω−ジカルボン酸ジエステルを水素化させる際に、エステル交換触媒を共存させるω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法であって、前記エステル交換触媒が、(a) 周期表第1族元素のアルコキシド、同第2族元素のアルコキシド及び同第4族元素のアルコキシド、(b) 周期表第2族元素の酸化物、並びに(c) オキソ酸金属塩からなる群より選ばれた1種以上であるω−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造法。
  2. エステル交換触媒が、酸化マグネシウム及び/又はリン酸アルミニウムである請求項1記載の製造法。
  3. α,ω−ジカルボン酸ジエステルが式(I):
    Figure 0004410658
    (式中、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、nは4〜18の整数を示す)
    で表される化合物であり、ω−ヒドロキシカルボン酸エステルが式(II):
    Figure 0004410658
    (式中、R及びnは前記と同じ)
    で表される化合物である請求項1又は2記載の製造法。
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