JP4409783B2 - シリンダーヘッドの冷却構造 - Google Patents

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  • Ignition Installations For Internal Combustion Engines (AREA)
  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
請求項に係る発明は、自動二輪車用をはじめとする各種エンジンにおけるシリンダーヘッドの冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのシリンダーヘッドにおける点火プラグの取付け部付近は、十分な冷却を行うことが一般的には難しい部分である。シリンダーヘッドの概ね中央部に位置するために冷却水による冷却も空気流による冷却も容易でないうえ、点火プラグ自体も発熱するからである。とくに、イグニッションコイルを内蔵する形式のプラグキャップ(「スティックコイル」などと呼ばれるもの)を使用する場合には、点火プラグとそのプラグキャップとの双方が発熱をするため、当該取付け部付近ではとくに温度が上昇しやすくなる。
【0003】
特開平11−22604号公報に記載された自動二輪車用エンジンでは、そのような点を考慮して、点火プラグ等を収容すべくシリンダーヘッドに設けた円筒状のプラグホールの前方に、プラグホールからシリンダーヘッドを貫通して外部に連通する通風孔を形成している。自動二輪車の走行時に、前方からの空気をこの通風孔を通じてプラグホール内へ導入し、さらに点火プラグ等とプラグホールとの間の空間を上向きに流すことによって、点火プラグやその取付け部の付近を冷却するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような通風孔を設けるだけでは、その開口面積(通風孔の断面積)が小さいことなどから、空気導入が必ずしもスムーズにはならない。そのため、従来は、点火プラグ付近の温度上昇傾向が十分には抑制されない場合もあった。
【0005】
前掲の公報(特開平11−22604号)に示された通風孔に限らず、プラグホールに入った雨水等を外部へ排出するための水抜き孔(たとえば特開平7−259641号公報に記載されたもの)についても、自動二輪車の前方に向けて形成されたものは上記と同様の通風機能を果たし得るものと考えられる。しかし、そのような水抜き孔についても、開口面積が小さい等の理由で、点火プラグ付近をつねに十分に冷却できるとは限らない。
【0006】
請求項の発明は、上記のような点を考慮してなしたもので、プラグホール内に十分な量の空気(冷却風)を通すことができて、点火プラグの取付け部付近を効果的に冷却できるシリンダーヘッドの冷却構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載したシリンダーヘッドの冷却構造は、
・ プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を二つ以上設定して、いずれかを空気導入穴とし他のいずれかを空気排出穴とし、
・ 外部から空気を押し込む空気押し込み手段を上記の空気導入穴に接続し、または、外部へ向けて空気を引き出す空気引き出し手段を上記の空気排出穴に接続した(これら二種類の接続について一方または双方を実施する)こと、
プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を、プラグホールの底部付近とシリンダーヘッドの側壁との間に形成した通孔、および、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に形成した通孔によって、上記のとおり二つ以上設定したこと
・ プラグキャップとしてイグニッションコイルを内蔵したものを使用すること、
・ ならびに、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に形成した上記通孔の、プラグホールの内周面における開口よりも上部で、プラグキャップとプラグホールとの間に防水用のシール部を設けたこと
を特徴とする。
【0008】
なお、空気導入穴や空気排出穴の数は単数でも複数でもよく、両者の数が一致しなくてもよい。また、空気導入穴や空気排出穴を設ける位置は、プラグホール内にスムーズな空気の流れを形成できればどこでもよい。自動二輪車等のエンジンについてなら、空気押し込み手段として走行風などを利用するのが効率的であるから、たとえば空気導入穴を走行方向にいう前側部分に設け、空気排出穴を後側や上側の部分に設けるのがよい。
【0009】
シリンダーヘッドの冷却構造をこのようにすれば、プラグホール内において空気導入穴から空気排出穴へ向けて空気の流れを積極的に生じさせることができ、もって点火プラグの取付け部付近を効果的に冷却することができる。空気押し込み手段を空気導入穴に接続した場合には、当該空気導入穴に対して外部から空気が押し込まれ、その空気がプラグホール内を通って空気排出穴から外部に排出される。また、空気引き出し手段を空気排出穴に接続した場合には、空気排出穴から空気が外部に引き出されるのに連れて、空気導入穴を通じて新しい空気が導入されプラグホール内を流れる。そして、空気押し込み手段を空気導入穴に接続するとともに空気引き出し手段を空気排出穴に接続した場合には、双方の手段が同時に機能してとくに多量の空気がプラグホール内に流れる。このようにしてプラグホール内に積極的な空気流が形成されることにより、点火プラグの取付け部付近が効果的に冷却されるわけである。
【0010】
発明によるシリンダーヘッドの冷却構造は、とくに、上記の空気押し込み手段として、入口部が拡大した開口端(いわゆるラッパ状のもの)を有する空気収集部材を空気導入穴に接続するとよい。
【0011】
この冷却構造では、ラッパ状に先の方が拡大した開口端を有する空気収集部材を空気導入穴に接続しているので、当該部材によって空気を収集したうえ、空気導入穴からプラグホール内へとその空気を押し込むことができる。このようにすれば、プラグホール内を流れる空気について流量を多くし流速を高めることができるので、点火プラグの取付け部付近に対して十分な冷却効果を得ることが可能である。なお、上記した空気収集部材は、エンジンが自動二輪車等の移動型のものであれば開口端を進行方向の前方を向けて走行風を収集するものとし、移動型でない場合には、冷却用ファン(ラジエータファンなど)の後方(空気流について下流側)に配置して開口端をファンに向けるのがよい。過給機などによる過給圧を利用することもできる。
【0012】
発明によるシリンダーヘッドの冷却構造はさらに、上記のシリンダーヘッドが、カウルパネルを有する自動二輪車用エンジンにおけるものであり、当該カウルパネルに、またはカウルパネルの開口部の後方に、上記の空気収集部材を設けたものであるとよい。
【0013】
自動二輪車においては、空気抵抗を小さくするため車体前部にカウルパネル(通常はアルミ合金やFRP製)を設ける場合がある。そのような場合、シリンダヘッド上に設けた空気導入穴に空気収集部材を直接取り付けると、カウルパネルの後ろ側にその空気収集部材がかくれることとなって空気(走行風)の導入が妨げられる。よって、自動二輪車がカウルパネルを有する場合には、空気収集部材を上記のとおりカウルパネル(またはカウルパネルの開口部の後方)に設け、同部材から空気導入穴までを何らかの管(連通パイプ)により接続するのがよい。そうすれば、収集部材によって空気(走行風)が多量に集められ、空気導入穴からプラグホールにかけて空気がスムーズに導入されることとなる。なお、空気収集部材は、カウルパネルに対し別体で構成して取り付けるのもよいが、カウルパネルと一体に成形するのもよい。
【0014】
発明によるシリンダーヘッドの冷却構造はとくに、上記の空気引き出し手段として、吸気系における負圧発生部分に通じる連通パイプを上記の空気排出穴に接続するとよい。吸気系における負圧発生部分としては、エアクリーナや吸気通路などがあげられる。連通パイプをエアクリーナに接続する場合、同パイプの接続先は、ケーシングに内蔵されるエレメントの上流側でも下流側でもよい。
【0015】
この冷却構造は、吸気系に発生する負圧を利用してプラグホール内の空気を空気排出穴から引き出し、もって空気導入穴からプラグホールにかけて冷却風を流すものである。エンジンが運転されている間、吸気系ではつねに負圧が発生しているので、このようにすれば、自動二輪車が走行状態にないときや冷却用ファンが回転していないとき等を含めて継続的に、点火プラグの取付け部付近を冷却することが可能である。なお、空気排出穴から引き出される空気は、吸気とともに吸気系を経由して燃焼室内に供給される。
【0016】
発明による冷却構造はとくに、上記の空気引き出し手段として、二次空気の供給系における負圧発生部分から分岐する連通パイプを上記の空気排出穴に接続するのもよい。二次空気の供給系における負圧発生部分には、通路となっているパイプ部分だけでなく、エアカットバルブ(エアサクションバルブ)やリード弁の内部空間等も含まれる。
【0017】
吸気系と同じように負圧が発生する箇所として二次空気の供給系がある。二次空気の供給系は、燃え残りの燃料を燃焼させて排気ガスを浄化すべく、排気系に空気を供給する系統である。たとえば図8に示すように、エンジン101において、エアクリーナ103のクリーン側から排気ポート102の排気口102a付近にかけて二次空気供給通路105を設け、クリーンエアをいわゆる二次空気として排気ポート102に供給する。二次空気の供給系においても負圧が発生しているので、この発明では、その負圧を利用してプラグホール内に空気流れを形成する。つまり、二次空気の供給系に空気排出穴を接続することにより、空気排出穴からプラグホール内の空気が積極的に引き抜かれるようになり、その結果、空気導入穴からプラグホールを経て空気排出穴へ至る空気の流れが形成される。二次空気の供給系における負圧もエンジンの運転中はつねに生じているので、上記のような空気流れによって点火プラグの取付け部付近が継続的に冷却されることとなる。なお、空気排出穴から引き出される空気は、二次空気と混じって排気系に供給されるが、空気排出穴から引き出された空気のみが二次空気として排気系に供給されるようにすることもできる。
【0018】
上記の冷却構造は、とくに、プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を、
a) プラグホールの底部付近とシリンダーヘッドの側壁との間に形成した通孔(たとえば図1の通孔36または36’)、
b) プラグホールの内周面よりも内側の隙間(点火プラグまたはプラグキャップとプラグホールとの間の隙間)もしくは通孔(プラグキャップの一部に設ける通孔)、または
c) プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面もしくはそれより上の部位との間に形成した通孔(たとえば図1の通孔26や図6の通孔61)
のうちa)およびc)から、上記(請求項1)のとおり二つ以上設定するとよい。
【0019】
このように設定する経路は、いずれも容易に形成することができ、空気導入穴または空気排出穴として円滑に機能させることが可能である。つまり、まず上記a)の通孔は、自動二輪車用エンジン等において従来(特開平7−259641号公報等を参照)水抜き孔とされているもので形成容易であるうえ、自動二輪車用エンジンにおいては進行方向前方または後方向きに形成されやすいため、走行風を利用して空気を導入しまたは排出するうえでとくに好適である。上記b)にいう隙間もしくは通孔は、点火プラグやプラグキャップが十分に細いものである場合には容易に形成されるうえ、一般的にはエンジンの上部にある吸気系または二次空気の供給系(の各負圧発生部分)に接続するうえで有利であり、短い連通パイプによって空気が効果的に引き出される。またc)の通孔は、プラグキャップが太い等の理由でプラグホールの内周面よりも内側に何らの隙間も通孔も形成できないときにもエンジン(の肉部等)に形成することが可能であるほか、エンジンの上部または後部に至るものであるため、やはり、吸気系または二次空気の供給系(の各負圧発生部分)に接続しやすく、空気の引き出しを円滑に行える。
【0020】
請求項に記載した冷却構造は、とくに、プラグキャップとしてイグニッションコイルを内蔵したもの(「スティックコイル」などと呼ばれるもの)を使用することを特徴とする。
【0021】
イグニッションコイルを内蔵したプラグキャップを使用すると、そのイグニッションコイルからの発熱があるため、とくに冷却することが重要になってくる。したがって、この発明に基づいてプラグホール内に空気の流れを形成して冷却作用を得ることは、そのようなプラグキャップの使用時における熱関連の課題を解決するという格別の効果をもたらすことになる。
【0022】
発明の冷却構造は、上記の構造においてさらに、プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路の一つとして、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に(したがってエンジン本体の肉部を経由して)通孔(前記c)のもの)を形成し、プラグホールの内周面よりも内側には、外部へ延びた隙間も通孔も設けないようにするのもよい。
【0023】
上記冷却構造のようにイグニッションコイル内蔵型のプラグキャップを使用する場合、同キャップには内部にコイルなどが詰まっていて外径も大きいため、それ自体に通孔を設けたり、プラグホールとの間に隙間を確保したりすることが容易でないことが多い。もし、そのようにしてプラグホールの内周面より内側に通孔や隙間を設けるとしたら、プラグキャップ自体(またはその外部に付属させる部品)の寸法を変更するなどとともに、プラグホールを大きくしなければならず、シリンダーヘッドが大型化してエンジンの全体が大きくなる不都合をまねく。その点、この冷却構造によれば、プラグホールの内周面よりも内側には隙間も通孔も設けず、空気導入穴または空気排出穴とする通孔をエンジン本体の肉部を経由してプラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面(またはそれより上の部位)との間に形成するので、シリンダーヘッドの全体寸法が大きくなるのが適切に防止される。
あるいは、上記請求項のように、プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路の一つとして、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に通孔を形成し、プラグホールの内周面における当該通孔の開口よりも上部で、プラグキャップとプラグホールとの間に防水用のシール部を設けるのも好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いながら、発明の実施について幾つかの形態を紹介する。
【0025】
まず図1は、自動二輪車用エンジン1についてシリンダーヘッド10とその冷却構造等を示す縦断面図であり、図2は、図1のエンジン1を搭載した自動二輪車の側面図である。エンジン1は多気筒直列型の4サイクルエンジンで、1気筒あたり2つの排気弁を有する高速型のものである。
【0026】
図1のように、エンジン1における燃焼室11の上部には、シリンダーヘッド10からシリンダーヘッドカバー20にかけてプラグホール13が形成されている。プラグホール13は点火プラグ31等を取り付けるための穴であって、シリンダーヘッド10の一部である円筒部10aと、シリンダーヘッドカバー20の一部である円筒部20aとの内側にある。点火プラグ31は、先端の電極を燃焼室11内に臨ませるようにプラグホール13内に装着される。そして点火プラグ31の上部には、イグニッションコイル(図示せず)を内蔵したプラグキャップ32が装着される。
【0027】
プラグキャップ32とプラグホール13との間には、プラグホール13内に雨水などの水が入るのを防ぐため、簡易なシール部33を設けている。このシール部33は、ゴム等でできた環状の弾性体からなるシールを、プラグキャップ32のうち上方ほどやや拡径した円柱状部分の側面に形成された複数の環状溝に嵌めることで構成される。シールを嵌めた状態でプラグキャップ32をプラグホール13に挿入・固定すると、プラグホール13とプラグキャップ32との間にシールがはさまれて、シール部33から内側への水の浸入が概ね防止される。
【0028】
シリンダーヘッド10において、プラグホール13の底部には、1気筒あたり2つある排気ポート(図示せず)の間を通じて前方に延びる通孔36を形成し、これを空気導入穴として、プラグホール13内で上記シール部33より下にある空間が外部に通じるようにしている。この通孔36は、前方斜め下方に傾斜するように形成され、水抜き孔としても機能するようになっている。
【0029】
また、上記通孔36には、連通パイプ(例えばゴムチューブ)37を通じて、ラッパ形状に先端の開いた開口部38aを有する空気収集部材38が接続されている。この空気収集部材38によって走行風が集められ、通孔36を通じてプラグホール13内に押し込まれるようになっている。走行風を積極的に集めやすいよう、空気収集部材38は、自動二輪車の前部に設けられるカウルパネル6に取り付けられている。一端部に空気収集部材38が設けられる連通パイプ37の他端部(通孔36側)には、通孔36に挿入するために接続具39が設けられている。なお、4気筒エンジンの場合、連通パイプ37を4本使用し、それぞれの端部に前述した接続具39を設けて気筒毎の各空気導入穴に接続するのもよいが、たとえば図1(a)に二点鎖線で示すように、4つの接続部39aを有する分岐形の接続具39’を1本の連通パイプ37の端部に設け、各接続部39a(またはそれらに通じるパイプ)を気筒毎の各空気導入穴に挿入するようにすることもできる。
【0030】
ここで、空気収集部材38は、必ずしもカウルパネル6に取り付けなければならないものではなく、図7(a)・(b)に示すように、カウルパネル6の開口6aより後方に距離をおいて自動二輪車の車体等に取り付けることもできる。使用する空気収集部材38は円形断面のものに限定されることはなく、たとえば図7(c)(カウルパネル6のうち下部の開口6bの後方に空気収集部材38”を設ける例)のように、開口の形に沿いやすい四角形の開口部38a”を有する空気収集部材38”を使用するなど、適切な形状のものを選択するとよい。その一方、空気収集部材38等はカウルパネル6と別体にする必要はなく、カウルパネルのうち走行風を受けやすい部位に空気収集部として一体に成形するようにしてもよい。また、カウルパネルを備えていない自動二輪車においては、図1(b)に示す、やはり前方の開いた開口部38a’を有する空気収集部材38’をエンジン1の前向きの各通孔36に直接挿入して設けるようにしてもよい。空気収集部材38’と類似の形状をもつ部分をシリンダーヘッド10またはシリンダーに形成するのもよい。また、収集部材38から通孔36までの間に、空気のフィルタを設けるのもよい。
【0031】
プラグホール13内のうち上記のシール部33より下にある空間から外部(大気中)に通じるように、シリンダーヘッドカバー20に通孔26を設け、これを空気排出穴としている。通孔26には、エアクリーナ7に一端部が接続された連通パイプ27(たとえばゴムチューブ)の他方の端部が接続されている。すなわち、連通パイプ27の他端部は、エアクリーナ7のケーシング7aであってエレメント7bの上流側に設けられた開口部7cに接続し、エンジン1の作動時には通孔26に、プラグホール13内の空気を引き出すべく負圧が作用するようにしている。それによってプラグホール13内の空気を積極的に引き出し、通孔36から導入された空気がプラグホール13内を通って、通孔26から引き出されるようになっている。走行していない場合においても、エンジンが運転されていればエアクリーナ7内には負圧が発生して通孔26から空気を引き出すので、走行直後の温度が上昇している場合等にも通孔36から空気を導入してプラグホール13内に流すことができ、冷却効果を得ることができる。
【0032】
また、通孔26は、蒸気抜きのための穴としても機能するようになっている。すなわち、自動二輪車の運転中などに雨が降ったり、温度変化によるプラグホール13内の空気の膨張・収縮があったりして、シール部33の存在にもかかわらず水がプラグホール13内に入ることがあっても、その水は、エンジン1の温度上昇時等に水蒸気に変わり、通孔26を通って外部(大気中)へ排出される。
【0033】
通孔26は、シリンダーヘッドカバー20に設けた金属厚肉部24のうちに機械加工することにより形成している。つまり、シリンダーヘッドカバー20のうちプラグホール13をなす円筒部20aの外側一箇所に金属厚肉部24と上向き突出部25とを一体に形成(シリンダーヘッドカバー20の鋳造時に成型)し、通孔26は、それらの部分にドリル加工(鋳造後の機械加工)をして形成している。具体的には、円筒部20aのうちシール部33と接する部分の下になる箇所から上記の厚肉部24にかけてドリル穴26aをあける一方、上記の突出部25から厚肉部24にかけて同様にドリル穴26bをあけて、両者を連通させる。突出部25の上端は大気に接する箇所であるから、ドリル穴26a・26bにて形成される通孔26は、プラグホール13内の空間と外部とをつなぐ穴となる。
【0034】
このエンジン1においては、走行中、空気収集部材38によって走行風が集められ、通孔36を通じてプラグホール13内にその空気が押し込まれ、さらに、エアクリーナ7において発生する負圧により通孔26を通じて引き出される。よって、冷却風となる空気がプラグホール13内をスムーズに流れるようになり、点火プラグ31やプラグキャップ32、およびその周囲の壁などが効果的に冷却される。
【0035】
なお、空気収集部材38による空気の導入圧力が十分に高い場合には、吸気系の負圧を利用して空気を引き出す必要がないこともある。そのような場合、図1に仮想線で示すように、通孔36と反対の側(進行方向後方)にも対称的に通孔36’を設けておけば、自動二輪車の走行中はそこから空気が排出されて、点火プラグ31の周辺がよく冷却されるようになる。逆に、吸気系への引き出し効果が十分であるなら、空気収集部材38を設けなくても足りる場合がある。その場合には、空気導入穴として前向きの通孔36を使用してもよく、後ろ向きの通孔36’を使用してもよい。
【0036】
プラグホール13からの空気の引き出しは、吸気系の作用ではなく、二次空気を排気ポートに供給する二次空気供給系の作用によって行うこともできる。すなわち、図3に示すように、通孔26’を、二次空気の供給系42に連通パイプ41を介して接続し、二次空気の負圧を通孔26’に作用させる。
【0037】
図3に示すエンジン2において、二次空気の供給系42には、上流側からリードバルブ43、エアカットバルブ(エアサンクションバルブ)44およびサイレンサ45が順に配設されている。そのサイレンサ45の下流側に、連通パイプ41を接続し、二次空気の供給系42において発生する負圧が通孔26’に作用するようにした。このようにすれば、二次空気の供給系42に発生する負圧を利用して、通孔36および通孔26に空気を通し、プラグホール13内を効果的に冷却することが可能になる。
【0038】
なお、図3中に仮想線で示す連通パイプ27は、上記の通孔26’をエアクリーナ7に接続するものである。上記の連通パイプ41とこの連通パイプ27との双方を用い、二次空気による負圧だけでなく吸気負圧を併せて作用させるようにすることも、場合によっては好ましい。このようにすれば、通孔26’に作用する負圧がより一層大きくなり、空気を引き出す効果が高まるからである。なお、図3に示す形態は、点火プラグ31自体に直接にスティック型のイグニッションコイルを配設するものではないが、図1に示すものと同様のシール部33’がプラグホール13’の上部に設けられている。
【0039】
また、図4に示すエンジン3のように、二次空気の供給系42’における接続パイプ51(二次空気供給通路)の途中から連通パイプ41’を分岐させ、その連通パイプ41’をプラグホール(図示せず。図1・図3の例と同様に空気導入穴を有する)の出口である空気排出穴(図示せず)に接続することもできる。図4の例でも、プラグホールからの空気排出穴を、二次空気の供給系42’とエアクリーナ7との双方に接続してもよく、いずれか一方のみに接続してもよい。なお、図4中、12は排気ポート、14は吸気ポートであり、15は、ブローバイガス(エンジンオイルを含む)をクランク室16からエアクリーナ7のエレメント7bの下流側に供給するブローバイガス通路である。
【0040】
図5は、エアクリーナ7’がシリンダーヘッド10の上部から離れた位置にあるエンジン4を示している。このようにエアクリーナ7’が離れてある場合は、プラグホール(図示せず)からの空気の引き出し手段として、エンジン4の上方に位置する二次空気の供給系42’を利用するのが好ましい。このようにすれば、空気の引き出し手段の一部として使用する連通パイプの長さが、エアクリーナ7’に接続する場合よりも短くてすむからである。なお、この例でも、プラグホールには、空気導入穴とする他の穴が連通されていることは言うまでもない。また、図5中の符号12・14・15・16は、この例でもそれぞれ排気ポート、吸気ポート、ブローバイガス通路、およびクランク室である。
【0041】
また、空気導入穴や空気排出穴は、すべての部分をシリンダーヘッドやシリンダーヘッドカバーに形成する必要はなく、たとえば図6に示すように、空気排出穴61を、シリンダーヘッド10’の上部に取り付けるカムブラケット62に形成することもできる。具体的には、空気排出穴61を、シリンダーヘッド10’の金属厚肉部からカムブラケット62の軸受け部62A、62Bにかけて形成する。シリンダーヘッド10’に対しては,上部の接合面からプラグホール13’の内面にかけてドリル加工をすることにより第1のドリル穴61aをあけ、一方のカムブラケット62については上部の突出部62aから下部の接合面へ貫通して第1のドリル穴61aにつながるように第2のドリル穴61bをあけ、双方のドリル穴61a・61bによって空気排出穴61を構成するのである。
【0042】
なお、上記した実施の形態においては、前側に位置する通孔を空気導入穴、後側や上側に位置する通孔を空気排出穴としているが、発明の実施はそれに限定されるものではなく、プラグホールに連通するいずれの穴を空気導入穴または空気排出穴としてもよい。たとえば図1に示す場合においては、空気を押し込む側の連通パイプ37をシリンダーヘッド10の上部の通孔26に接続し、空気を引き出す側の連通パイプ27を前部の通孔36にそれぞれ接続するというように、連通パイプ37・27の接続を逆にして、通孔36を空気排出穴とし通孔26を空気導入穴として機能させることも可能である。プラグホール13内において空気がいずれの方向に流れても、冷却性能に大きな差はないからである。
【0043】
【発明の効果】
請求項1に記載したシリンダーヘッドの冷却構造によれば、プラグホール内において空気導入穴から空気排出穴へ向けて空気の流れを積極的に生じさせることができるので、点火プラグの取付け部付近を効果的に冷却することができる。
【0046】
上記請求項1に記載した冷却構造によれば、プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を容易に形成することができ、それらを空気導入穴または空気排出穴として円滑に機能させることができる。
【0047】
請求項1に記載した冷却構造では、イグニッションコイルを内蔵したプラグキャップが使用されるにもかかわらず、点火プラグやプラグキャップの付近が冷却されてその付近の熱的な課題が解決される。これに関し、シリンダーヘッドの全体寸法が拡大するのを防止してエンジンのコンパクト化をはかることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施に関する一形態を示すもので、自動二輪車用エンジン1についてシリンダーヘッド10とその冷却構造等を示す縦断面図である。
【図2】図1のエンジン1を搭載した自動二輪車の側面図である。
【図3】発明の実施について他の形態を示す図であり、エンジン2におけるシリンダーヘッド10とその冷却構造等を示す縦断面図である。
【図4】発明の実施についてさらに他の形態を示す図であり、エンジン3について二次空気の供給系42’とともにシリンダーヘッド10等を示す縦断面図である。
【図5】エアクリーナ7’が離れて位置するエンジン4について実施の形態を示す縦断面図である。
【図6】発明の実施についてさらに別の形態を示す図であり、シリンダーヘッド10’上のカムブラケット62内に空気排出穴61を形成した構造を示す縦断面図である。
【図7】発明の実施についてさらに別の形態を示す図であり、図7(a)はカウルパネル6の正面図、同(b)は同(a)におけるb−b断面図、同(c)は同(a)におけるc−c断面図である。
【図8】エンジンにおける一般的な二次空気の供給系(通路105など)を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1・2・3・4 エンジン
6 カウルパネル
7・7’ エアクリーナ
10・10’ シリンダーヘッド
13・13’ プラグホール
20 シリンダーヘッドカバー
26・26’・61 通孔(空気排出穴)
27・37・41 連通パイプ
31 点火プラグ
32 プラグキャップ
36・36’ 通孔(空気導入穴)
38・38’ 空気収集部材
42・42’・42” 二次空気の供給系

Claims (1)

  1. プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を二つ以上設定して、いずれかを空気導入穴とし他のいずれかを空気排出穴とし、外部から空気を押し込む空気押し込み手段を上記の空気導入穴に接続し、または、外部へ向けて空気を引き出す空気引き出し手段を上記の空気排出穴に接続したこと、
    プラグホール内の空間と外部とをつなぐ経路を、プラグホールの底部付近とシリンダーヘッドの側壁との間に形成した通孔、および、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に形成した通孔によって、上記のとおり二つ以上設定したこと
    プラグキャップとしてイグニッションコイルを内蔵したものを使用すること、
    ならびに、プラグホールの内周面とシリンダーヘッドの上端面またはそれより上の部位との間に形成した上記通孔の、プラグホールの内周面における開口よりも上部で、プラグキャップとプラグホールとの間に防水用のシール部を設けたこと
    を特徴とするシリンダーヘッドの冷却構造。
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