JP4407978B2 - 反応効率の良い排ガス浄化用メタル担体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排ガス浄化装置に用いられる触媒コンバータ用メタル担体及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、多数の突起と孔を有する金属平箔を巻回し、もしくはこれと突起のない平坦な金属平箔とを交互に巻回して円筒体とし、該円筒体を外筒に挿入固定してなる排ガス浄化用メタル担体及びその製造方法に係るものである。以下本発明においてメタル担体とは、このような円筒体を外筒に挿入固定したものを意味している。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排ガス浄化装置に用いられる触媒コンバータ用メタル担体は、従来、ハニカム体の形状をなし、図5に示すように、耐熱性を有する材質の平板状の金属箔(平箔)8と、同じ耐熱性を有する材質の金属箔をコルゲート加工して波形とした箔(波箔)9とを交互に巻回して製造していた。形成されたハニカム体1の平箔8と波箔9のハニカム通路表面にウォッシュコートと呼ばれるγアルミナ層と触媒を担持させて排気ガスを浄化する触媒コンバータを形成する。触媒コンバータは内燃機関の排気通路に配設され、排気ガス中のHC,CO,NO2等を浄化している。
【0003】
触媒コンバータのガス通路に流入した排気ガスは、ガス内の物質移動によって反応すべき物質が触媒表面へ移動し、触媒表面に到達して所定の化学反応が進行し、触媒から生成物質が移動し離反することで完了する。従って、触媒コンバータ内での排ガス浄化速度は、反応すべき物質の触媒表面への移動速度、触媒表面での化学反応速度、触媒表面からの生成物質の移動速度によって律速される。排ガス浄化速度が速い場合には触媒コンバータの長さ(反応距離)は短くて済み、排ガス浄化速度が遅い場合には、排気ガス中のすべての有害物質が反応を完了するに足る十分に長い触媒コンバータを準備する必要が生じる。
【0004】
一方、メタル担体が具備すべきもうひとつの特性として、エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度がある。触媒反応は触媒担体の温度が触媒活性化温度(通常約300〜350℃)以上にならないと開始しないので、エンジン始動時の触媒担体の温度が低い間は排気ガスの浄化は行われず、不純物を含んだ排気ガスが系外に排出される。そのような不都合を極力防止するためには、エンジン始動時に触媒コンバータが流入する排気ガスの熱量を吸収し、メタル担体がいかに早く触媒活性化温度に到達するかが問題となる。
【0005】
エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度を増大させるためには、ガスからメタル担体への熱伝達率が向上すること、及びメタル担体の熱容量を小さくすることが有効である。
【0006】
ガス通路内での反応物質の移動によって全反応物質が触媒表面に到達し置換されるためには、ガスと触媒表面との距離が短いほど短時間で完了することは明らかである。そのため、同一のガス通路断面形状で断面積を小さくする、あるいは断面形状を偏平にしてガス通路の両側の壁を接近させることが反応速度増大に有効である。Analytical Investigation of the Performance of Catalytic Mono-liths of Varying Channel Geometries Based on Mass Transfer Controlling Conditions, Society of Automotive Engineers, Automotive Engineering Con-gress, Feb. 25, 1974 において、ガス通路の断面形状をサイン型、円形、正方形、三角形、長方形等とし、断面積を種々変更してガス通路内での反応速度の計算を行い、反応を完了するのに必要な触媒コンバータの長さ、触媒コンバータを通過する時の圧力損失等を求めている。それによると、同一断面形状で断面積を小さくすれば反応速度が増大し、短い触媒コンバータ長さで反応が完了するという結果が当然得られている。更に、総合的に見ると、縦横比約4以上の長方形を断面形状としたものが最も優れた物質移動速度の幾何学形状であることを明らかにしている。
【0007】
また、激しく運動するガス中においては、ガス中の熱の移動は物質移動に伴って行われるので、一般にガスから担体壁面間の物質移動速度、及び熱伝達速度との間には、正の相関が見られる。すなわち、物質移動速度が速いほど熱伝達速度も速くなる。従って、触媒反応を促進するために物質移動速度の速い形状のメタル担体を選択すれば、必然的に熱伝達速度も向上することが期待できる。上記断面形状の採用により、メタル担体の触媒反応効率を増大させると同時にエンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度を向上させることが期待できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の平箔と波箔との組合わせによるメタル担体では、さらに以下のような解決すべき課題がある。すなわち
(1)触媒担体に入る排ガスの流速は一様ではない。一般には、径が約60mm以下のエギゾーストパイプや排ガスパイプから径が100mmに近い触媒担体に高速のガスが入るために、一般的に中央部の流速が大きく、周辺部で小さい。流速の小さな場所では担体の壁面の温度上昇が遅くなるので、触媒の働くまでの時間がかかりエンジン始動後比較的長い時間未浄化の排ガスの流出が続く。これを解決するために、特開平5−309277号公報等で、平箔、波箔に多数の孔を開けて排ガスを担体内で半径方向に拡散させる態様が提案されている。しかしながら、多数の孔を開けるという新たな加工コストが必要である割には性能向上代が小さく、実用に至ったものはない。
【0009】
(2)ウォッシュコート液を、浸漬法によりコートすると、表面張力により図6の斜線部分11のように不均一に付着する。角度αで鋭角的に漸近する平箔と波箔の接合部分では毛細管現象等により、付着量が多くなり、過大なウォッシュコート量による熱容量の増大、担体表面積の縮小による反応効率の低下が大きい。
【0010】
(3)平箔と波箔の組合わせによるハニカム担体は、構造的に非常に堅牢なものである。しかし、排ガス流速の場所による違いによりエンジンの始動時に温度上昇速度の違いが起こるので、熱応力により疲労破壊を起こしやすい。これを避けるため、一部平箔と波箔とを未接合とし、熱応力の緩和を図る等の工夫を生産工程でする必要がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決すると共に、前述の断面形状の反応効率に及ぼす知見を応用して、反応効率とエンジン始動時の浄化特性に優れて、かつ、生産性に優れたメタル担体の構造とその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
その第1は、多数の断面形状L型の突起と孔を有する金属平箔のみを渦巻状に巻いて円筒体とし、該渦巻状円筒体の隣接する平箔の間は、前記突起によって互いにロウ付け或いは拡散接合で連結されて間隙を有しており、その間隙を通じてガスが該円筒体を通過可能に構成したことを特徴とする排ガス浄化用メタル担体である。
【0013】
生産効率上から特に好ましくは、前記突起と孔は、金属平箔を打ち抜いて孔を形成すると同時に、この孔に相当する部分における平箔の小片の全部あるいはその一部を平箔から切断せずに連結したままで突起としたことを特徴とする排ガス浄化用メタル担体である。
【0014】
従来のメタル担体を構成するハニカム体では、図6のように、接合部は平箔8と波箔9は鋭角に漸近するので、そこにウォッシュコート11が厚く付着して量が無駄になる上に、有効に触媒反応を担う箔の面積が減少するという問題が生じていた。しかし、本発明では、平箔同士の接合は、図3の概要図に示すような形状の突起3における先端部3bを接合部とすることができるので、鋭角に板同士が接合される部分が少ないため、この問題も解決できた。
本発明において突起3とは、図3、図8、図9に示すように断面形状でL型、逆L型等の鉤型形状をいう(以下単に突起という)。
【0015】
その第2は、前記の突起と孔を打ち抜き成形する工程で、突起の高さを調整して、隣接する箔との間に必要な間隙を突起の箔表面からの高さで設定し、突起の先端を隣接する箔表面との接合面にすることを特徴とする排ガス浄化用メタル担体の製造方法である。
この場合、突起先端は平面となっているので、対向して接する平箔との接触部は拡散接合することが可能である。ロウ材等の接合促進材を用いるロウ付等より、熱容量が小さくなるため、拡散接合の方が有利である。
【0016】
かかる構造のメタル担体は、円筒体での接合面積が小さく柔構造となっているので、従来の構造のメタル担体が持っていた前述の熱疲労の問題は解決できる。しかし、本発明の平箔のみを巻いて担体とする構造のものでは、排ガスの入り側端部で接合点密度が少ないので、高速のガス流れにより箔が振動を起こして疲労破壊を起こす危険があるのも確かである。これを防ぐために、排ガスの入側は堅牢な構造にすることが好ましい。
【0017】
その方策として、
(1)メタル担体の排ガス入り側端部から10mm以内となる部分の平箔では、突起の箔長手方向の密度を他の部分よりも高くして隣接する箔との接合点密度をあげて剛性を大きくする。もしくは
(2)メタル担体の排ガス入側端部の平箔には、突起を設けずに、従来技術と同様に波箔を巻込んで、これによって隣接平箔との接合をする。
構成を採用することができる。
これにより、エンジン始動時に早期に温度上昇して触媒機能を発揮でき、かつ、反応効率が優れて担体の長さを短くできるメタル担体を提供できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
従来のように平箔と波箔との組合わせによって長方形の断面形状を得ようとすると、図7で模式的に示すように、必然的に箔同士8,9が長い距離にわたって接する部分が生じてしまうので、本発明では図1のように突起3付き平箔2のみを巻回して形成する円筒体1でメタル担体を構成する、もしくは図2のように突起3付き平箔2と突起のない平坦な平箔8を交互に巻回して形成する円筒体でメタル担体を構成する。このとき、断面形状として縦横比の大きな長方形は、長辺とガスとの反応が支配的で短辺の存在は影響が少ないので、本発明では長方形という形状にはとらわれず、巻き回しの結果できる渦巻構造の隣接する平箔同士の間隔を狭く調整することで長方形と同様の効果を実現することができた。
【0019】
相接する平箔同士の間隔を狭く保つためのスペーサとして、本発明では平箔に配設した突起を用いた。突起の高さ(例えば図8におけるh)が、すなわち隣り合う平箔間の間隔となる。突起は、円筒体の径方向で隣接する平箔と平箔との間隔が渦巻体の全周・全長にわたって概略平行になるのに必要な間隔で配置する必要がある。
【0020】
一方、突起は平箔と平箔の間隔のガス通過の抵抗となるので、必要以上に多くを設置することは好ましくない。かかる理由から平均的には、ガス流れに対して直角方向の突起間の間隔(例えば図8のc)は隣り合う箔間の間隔(すなわち、突起高さ:例えば図3,図8のh)の2倍以上で20倍以下が望ましい。2倍以下では、セルの形状が正方形に近くなり、反応効率が低下する。また20倍以上では、突起の間隔が開き過ぎて強度不足となり、平箔間のギャップを維持することが困難となる。
【0021】
また、これらの突起や孔は、排ガス流れの川上から川下に亘って連続して続いているのではなく、不連続に配置されているので、ガス流はその箔断面にぶつかってその流れを乱されて層流から乱流になる。これが排ガス流と担体壁面間の物質移動と熱伝達をいっそう促進する効果を生み出し、層流を前提にした前記の断面形状のものよりも一層性能の良いメタル担体を生み出す効果を持っている。
【0022】
前述のごとく、流速の小さな場所ではエンジン始動後の担体の壁面の温度上昇が遅いので、エンジン始動後比較的長い時間未浄化排ガスの流出が続く。一方、平箔に開けた孔は担体内で流速の大きな部分から流速の小さな場所へガスの流れを可能にするので、このガス流れにより流速の小さな場所の温度上昇が一層促進されて、浄化性能の早期発揮が可能になった。
【0023】
かかる機能を持つ突起と孔を平箔に多数設ける方法について述べる。
平箔へ形成する突起は、一般にはパーカッション溶接(スポット溶接)等により同種金属の粒を接合するとか、線材を接合して後に所定の高さに切断すれば生成する方法がある。また、ポンチとダイスでエンボス加工してもよい。平箔への孔の生成方法は、コスト、精度面から打ち抜き加工が好ましい。
【0024】
削除
【0025】
また本発明では、前記突起と孔を形成するにあたり、金属平箔の打ち抜いた孔に当る箔片の一部を平箔に連結したままにして折り曲げて突起とすることができるならば、突起を効率良く生産することができる。
すなわち、図8、図9に示すように、平箔をコの字状、もしくはUの字状に打ち抜き、打ち抜き部分が切り離れた切片(突起となる部分)を折り曲げることで平箔より立ち上げ(3a)、さらにこの切片を折り曲げることで接合部(3b)とし突起3を形成する。打ち抜きの際、ポンチの一部(一辺)を剪断せずに、打ち抜いた切片と平箔の連結部としたままで、ポンチとダイスで突起3を一気に形成することが生産上効率が良い。
【0026】
この方法についてさらに詳述する。図4に示すように、隣接する箔との間隔に等しい高さhに見合う深さの孔を持つダイス7に、箔上からポンチ6を挿入することにより接続部5を残して三辺を打ち抜き、打ち抜かれた突起は高さhのところで曲げられて平坦部3aと接合部3bを成形し、突起3を形成する。接合部3bは円筒体に巻かれた時に隣接する平箔との接触部となって接合される。この場合には、hより大きな径の(すなわち、太く折れにくく丈夫な)ポンチ6を使用できて、かつ、隣接する箔との接合部3bは平面で隣接する箔の表面に接するので、ロウ材を使わずとも拡散接合が可能である。
【0027】
なお、平箔との連結部(突起の立ち上がり部)の方向はガス流れとほぼ平行にして、ガス流れに対する抵抗を少なくすることが一般的である。しかしながら、図10に示すように、ガス流れに対して角度θを持つように突起を形成するとガス流れを阻害するが、ガスが角度θをもつ突起群によってスパイラル状に流れるため、反応効率を一層高めることができる。ただし、このθには適正範囲があり、あまり大きすぎると担体の圧力損失が増大するため、θ=60度程度が上限である。
【0028】
また、前記平箔を巻き取るとき、図10に示すc(=Lsin θ)が約5mm以下であることが必要である。そのために、θ<60度、c=Lsin θ<5mmの両方を満足するθとLの組み合わせとすることが好ましい。
【0029】
一方、平箔に前述した突起を形成するとき、一方向にのみ突起を形成するのではなく、図12に示すように、平箔の表面・裏面交互に突起を形成することも可能である。このようにして形成した突起付き平箔2は、図2に示すように、平箔8と交互に巻回することで図1と同じ構造の担体を構成することができる。
【0030】
メタル担体への排ガスの入側は、高速のガス流があたるので、構造体として剛性が必要である。従来の平箔と波箔を交互に巻回したハニカム構造のものでは約2mmから3mmの間隔で平箔上に存在する波箔との接触部で接合されているので、十分な剛性を有する。それに対して、本発明の構造の担体では、排ガスの入側端部で箔間接合点密度が少ないので、ガス量により箔が振動を起こして疲労破壊を起こすケースも考えられる。そのためには前述のごとく、特に厚みの薄い箔を用いた場合においては排ガス入側端部から10mm以内において、箔長手方向の突起密度を他の場所よりも多くすることにより剛性を高くすることできる。そのとき必要以上に突起の密度を多くしない限り、全体としてはあまりガス流にたいする抵抗を上げずに排ガス入側端部の剛性を確保できる。
【0031】
ハニカム体の排ガスの入側端部の剛性を確保するもう一つの方法として、該端部に限って平箔と波箔を重ね合わせて巻き込んだ従来の担体と同様のハニカム構造とすることが可能である。図11は実施態様の一例を示す概略図である。この場合、波箔9を重ねる平箔2aの部分には、孔を設けてもよいが突起は設けない。波箔の幅は、端部剛性を上げる目的に必要十分な幅であればよい。したがって、製作上、端部から2mm以上となり、熱容量の観点から、最大でも40mm以下であることが望ましい。
【0032】
本発明において、前記平箔を中心から巻き取ることも可能だが、中心軸に平箔と波箔を巻回したハニカム構造体を巻芯として用いてもよく、その周辺に前記平箔を巻回すると、より担体の製作が容易になる。このとき巻芯の直径が大きいほど製作の容易さは増して行くが、巻芯が大きくなるにつれて本発明の効果が薄らぐので、巻芯の直径は最大で40mm程度が妥当である。
【0033】
突起付き平箔を巻回する場合と、突起付き平箔と突起のない平箔を交互に巻回する場合の両方において、突起先端部と対向する平箔の当接部を接合する必要がある。接合方法としては、ロウ付け、拡散接合等がある。拡散接合の場合には以下の利点がある。すなわち、平箔を巻き回して円筒体を構成した後、巻き回しの張力による突起先端と対向する平箔との間の押し付け力が解除されないように保持したまま外筒に挿入した後真空炉に装入し、高温高真空の中で拡散接合を行う。この場合、接触部が面であれば接合が容易になり、より低い温度と短時間で接合することができる。拡散接合で接合されたメタル担体は、従来のろう付け法に比較して、ロウ材が不要となることから、ロウ材の影響による材質劣化のない低廉で高強度の担体を製造することができる。しかもロウ材を用いないことにより、熱容量低減の面からも有利である。
【0034】
【実施例】
(1)本発明例1
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔に対してポンチとダイスで図8に示す突起を以下のように形成した。
突起高さh:0.9mm
突起先端幅d:0.4mm
平箔長手方向の突起間隔c:5mm
突起長さa:2mm
平箔幅方向の突起間隔b:8mm
【0035】
なお、突起の形成については、図4のように太さ1.4mm、長さ2mmの四角柱形のポンチを用いて平箔に孔を打ち抜き、四辺のうち三辺ではダイスとの間で剪断切断をして、排ガス流に平行の方向の一辺(箔の幅方向で長辺にあたる)はダイスとポンチの間の隙間を板厚より大きい40ミクロン程にとって切断せずに折り曲げて、この打ち抜いた部分を突起となした。突起の先端(接合部3b)は平箔に平行になるように、ポンチとダイスの間に挟んで再度折り曲げて平箔に平行な約0.4mm幅dの平坦部を形成した。
この平箔をバックテンション2kgf のもと巻き回し、直径100mmの円筒形とした。
【0036】
さらにこの円筒体を外筒に挿入し、真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、突起の先端部と対向する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体とした。重量を測定したところ、482gであった。
【0037】
(2)本発明例2
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔に対してポンチとダイスで図10に示す突起を以下のように形成した。
突起高さh:0.9mm
突起先端幅d:0.4mm
平箔長手方向の突起間隔c:5mm
突起長さ:9.2mm
突起の箔幅方向の正射影の幅a:8mm
突起と箔幅方向のなす角:30deg
平箔幅方向の突起間隔b:4mm
【0038】
なお、突起の形成については、図4のように太さ1.4mm、長さ9.2mmの四角柱形のポンチを用いて平箔に孔を打ち抜き、四辺のうち三辺ではダイスとの間で剪断切断をして、排ガス流に平行の方向の一辺(箔の幅方向で長辺にあたる)はダイスとポンチの間の隙間を板厚より大きい40ミクロン程にとって切断せずに折り曲げて、この打ち抜いた部分を突起となした。突起の先端は平箔に平行になるように、ポンチとダイスの間に挟んで再度折り曲げて平箔に平行な約0.4mm幅dの平坦部を形成した。
この平箔をバックテンション2kgf のもと巻き回し、直径100mmの円筒形とした。
【0039】
さらにこの円筒体を外筒に挿入し真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、突起の先端部と対抗する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体とした。重量を測定したところ482gであった。
【0040】
(3)本発明例3
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔に対してポンチとダイスで図12に示すように、以下の形状を有する突起を隣り合う突起が表裏に突出するように千鳥状に形成した。
突起高さh:0.9mm
突起先端幅d:0.4mm
平箔長手方向の突起間隔c:5mm
突起長さa:2mm
平箔幅方向の突起間隔b:8mm
【0041】
なお、突起の形成については図4のように太さ1.4mm、長さ2mmの四角柱形のポンチ6を用いて平箔に孔を打ち抜き、四辺のうち三辺では、ダイス7との間で剪断加工をして、排ガス流に平行の方向の一辺(箔の幅方向で長辺にあたる)はダイスとポンチとの間の隙間を板厚より大きい40ミクロン程にとって切断せずに折り曲げて、この打ち抜いた部分を突起となした。突起の先端は平箔に平行になるように、ポンチとダイスの間に挟んで再度折り曲げて平箔に平行な約0.4mm幅dの平坦部を形成した。
この突起付き平箔と平箔を、平箔にバックテンション2kgf をかけた状態で交互に巻き回し直径100mmの円筒体とした。
【0042】
さらにこの円筒体を外筒に挿入し真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、突起の先端部と対抗する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体とした。重量を測定したところ482gであった。
【0043】
(4)本発明例4
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔に対してポンチとダイスで図8に示す突起を以下のように形成した。
突起高さh:0.9mm
突起先端幅d:0.4mm
平箔長手方向の突起間隔c:5mm
突起長さa:2mm
平箔幅方向の突起間隔b:8mm
排ガス入側にあたる端部は、端部より3mm中に入った所に、突起を箔長手方向に3.3mm間隔に形成した。
【0044】
なお、突起の形成については、図4のように太さ1.4mm、長さ2mmの四角柱形のポンチ6を用いて平箔に孔を打ち抜き、四辺のうち三辺では、ダイス7との間で剪断加工をして、排ガス流に平行の方向の一辺(箔の幅方向で長辺にあたる)はダイスとポンチとの間の隙間を板厚より大きい40ミクロン程にとって切断せずに折り曲げて、この打ち抜いた部分を突起となした。突起の先端は平箔に平行になるように、ポンチとダイスの間に挟んで再度折り曲げて平箔に平行な約0.4mm幅dの平坦部を形成した。
この平箔をバックテンション2kgf のもと巻き回し、直径100mmの円筒形とした。
【0045】
さらにこの円筒体を外筒に挿入し真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、突起の先端部と対抗する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体とした。重量を測定したところ484gであった。
【0046】
(5)本発明例5
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔に対してポンチとダイスで図8に示す突起を以下のように形成した。
突起高さh:0.9mm
突起先端幅d:0.4mm
平箔長手方向の突起間隔c:5mm
突起長さa:2mm
平箔幅方向の突起間隔b:8mm
ただし、平箔の排ガス入側にあたる端部から10mmの幅には突起を設けずに、他の幅110mmの場所に、突起を同じ間隔で打ち抜きにより形成した。
【0047】
なお、突起の形成については、図4のように太さ1.4mm、長さ2mmの四角柱形のポンチ6を用いて平箔に孔を打ち抜き、四辺のうち三辺では、ダイス7との間で剪断加工をして、排ガス流に平行の方向の一辺(箔の幅方向で長辺にあたる)はダイスとポンチとの間の隙間を板厚より大きい40ミクロン程にとって切断せずに折り曲げて、この打ち抜いた部分を突起となした。突起の先端は平箔に平行になるように、ポンチとダイスの間に挟んで再度折り曲げて平箔に平行な約0.4mm幅d長の平坦部を形成した。
【0048】
この平箔をバックテンション2kgf のもと、別途作成した厚さ20ミクロン、幅10mmの波箔(振幅約1mmで波長は2.5mm)を、端部だけ重ねて巻き回し、直径100mmの円筒形とした。隣接する箔の間隙は、波箔に張力をかけながら巻き込んで幅方向全体に渡って0.9mmになるように調整した。
【0049】
さらにこの円筒体を外筒に挿入し真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、突起の先端部と対抗する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体とした。重量を測定したところ490gであった。
【0050】
(6)従来例
箔 材質:20%Cr、5%Alの耐熱性フェライト系ステンレス鋼
厚さ:30ミクロン
幅 :120mm
この箔を用いて、ピッチ2.54mm、高さ1.25mmの波箔を形成した。
この平箔と波箔をバックテンション2kgf のもと交互に巻き回して直径100mmのハニカム体を形成した。
さらにこのハニカム体を外筒に挿入し真空熱処理炉に入れて、10−4torr、1250℃、90分の条件で真空熱処理することにより、波箔と対抗する平箔の当接面とを拡散接合して、メタル担体6とした。重量を測定したところ、478gであった。
【0051】
以上の各メタル担体に触媒を担持させないままでエンジンに装着し、エンジン停止状態からエンジンを始動したときのメタル担体の温度上昇速度を比較した。メタル担体内の温度測定位置は、メタル担体後端から10mmの深さで、メタル担体の外周部とした。
本発明例1〜5と従来例の温度推移をそれぞれ図13に示す。なおエンジンは2000cc4気筒のものを使用し、停止状態から2000rpm まで立ち上げたときに測定した。本発明例1〜5と従来例はほぼ同じ重量であるにもかかわらず本発明例が従来例より昇温速度が速い。これは本発明例の熱伝達速度が従来例よりも優れていることを示している。
【0052】
各メタル担体に触媒を担持させ、エンジンに装着して触媒コンバーターにおけるCOガスの浄化状況を、ライトオフタイム(50%CO浄化に至るまでの時間)で比較した。その比較例を表1に示す。なおエンジンは2000cc4気筒のものを使用し、停止状態から2000rpm まで立ち上げたときに測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から分かるように、本発明が従来例に対してメタル担体内での化学反応速度が向上していることを示している。
【0055】
また、図14は前記6つの担体に同一のウォッシュコート、同一の触媒金属を担持したときのバージン状態でのエミッション評価結果である。エミッションはLA#4モードで走行したときの従来例のHCエミッションを100%とする基準化したHC放出量で評価した。図に見られるように、表1の結果とほぼ同様の結果が得られており、本発明例が従来例に比較してメタル担体内での触媒化学反応速度が向上していることを示している。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した通り、突起を有する平箔を用いて構成したメタル担体により、排ガス浄化速度、熱伝達速度が速く、軽量で熱容量が小さく、エンジン始動時の温度上昇速度が極めて速い触媒コンバータが製造でき、エンジン始動時の有害排気ガス排出が少なく、軽量で安価な触媒コンバータを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の突起を有する平箔を巻き回してメタル担体を形成する様子を示す斜視図である。
【図2】 本発明の突起を有する平箔と平箔を交互に巻き回してメタル担体を形成する様子を示す斜視図である。
【図3】 本発明の突起の一例を示す図である。
【図4】 本発明の突起をダイスとポンチで形成する状況を示す図である。
【図5】 従来の平箔と波箔とを交互に巻き回してハニカム状のメタル担体を形成する様子を示す斜視図である。
【図6】 従来の方法で作成したメタル担体にウォッシュコートを塗布したときのセルの断面状況を示す図である。
【図7】 従来の方法で長方形セル形状を実現するときの波箔、平箔の接触状況を示す図である。
【図8】 本発明の突起と孔を有する平箔の概略図である。
【図9】 本発明の突起と孔を有する平箔の概略図である。
【図10】 本発明の突起と孔を有する平箔の概略図である。
【図11】 本発明の平箔を用いて入側に波箔を併用した担体の概略図である。
【図12】 本発明の突起と孔を有する平箔の概略図である。
【図13】 エンジン始動時のメタル担体の温度上昇特性を比較する図である。
【図14】 エミッション結果を比較する図である。
【符号の説明】
1 メタル担体
2 平箔
3 突起
4 孔
5 突起連結部
6 ポンチ
7 ダイス
8 平箔
9 波箔
10 ガス通路
11 ウォッシュコート
a 突起長さ
b 箔幅方向突起間隔
c 箔長手方向突起間隔
d 突起先端幅
h 突起高さ
θ 突起長手方向と箔幅方向のなす角
α 平箔と波箔の接触角
Claims (12)
- 多数の断面形状L型の突起と孔を有する金属平箔のみを渦巻状に巻いて円筒体とし、該渦巻状円筒体の隣接する平箔の間は、前記突起によって互いにロウ付け或いは拡散接合で連結されて間隙を有しており、その間隙を通じてガスが該円筒体を通過可能に構成したことを特徴とする排ガス浄化用メタル担体。
- 前記突起と孔は、金属平箔を打ち抜いて孔とすると同時に、孔に相当する平箔の小片もしくはその一部分を平箔から完全に切断せずに連結したまま変形させて突起とすることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 前記断面形状L型の突起を、0.2〜2.0mmの突起高さと、1.0〜30mmの突起長さと、そして0.3〜3mmの突起先端幅を有する突起とし、平箔の幅方向にそれぞれ突起長さの1/5以上の間隔をおいて配列し、この突起列の間隔が突起高さの2倍以上20倍以下である平箔を用いることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 突起長手方向と平箔の幅方向のなす角度が、0〜60度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 突起長さをL、突起長手方向と平箔の幅方向のなす角度をθとするとき、L×sinθが5mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 前記メタル担体の排ガス入り側端部から10mm以内では突起の箔長手方向の密度を他の部分よりも高くして隣接する箔との接合点密度をあげていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 前記メタル担体の排ガス入り側端部から40mm以下の平箔部分では、突起を設けずに、波箔を配置して隣接平箔との間隙と接合強度を確保していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- メタル担体の中心軸に、直径40mm以下の平箔と波箔を巻回して構成したハニカム構造を巻芯として用い、前記突起付き平箔をその周囲に巻回することで構成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 多数の断面形状L型の突起と孔を有する金属平箔を渦巻状に巻いて円筒体とし、該渦巻状円筒体の隣接する箔の間は、前記突起によって互いにロウ付け或いは拡散接合で連結されて間隙を有し、その間隙を通じてガスが該円筒体を通過可能である排ガス浄化用メタル担体の製造方法であって、前記断面形状L型の突起と孔は、金属平箔を打ち抜いて孔とすると同時に、孔に相当する平箔の小片もしくはその一部分を平箔から完全に切断せずに連結したまま変形させて突起とし、前記の突起と孔を成形する工程で、隣接する箔との間に必要な間隙を突起の箔表面からの高さで設定し、隣接する箔との接合に必要な接触面を突起先端部で設定するように形成することを特徴とする排ガス浄化用メタル担体の製造方法。
- 多数の断面形状L型の突起と孔を有する金属平箔と、突起のない金属平箔とを交互に巻回して円筒体とし、該円筒体の隣接する箔の間は、前記突起によって互いにロウ付け或いは拡散接合で連結されて間隙を有しており、その間隙を通じてガスが該円筒体を通過可能に構成してなることを特徴とする排ガス浄化用メタル担体。
- 前記突起と孔は、金属平箔を打ち抜いて孔とすると同時に、孔に相当する平箔の小片もしくはその一部分を平箔から完全には切断せずに連結したまま変形させて突起とし、かつ隣り合う突起が金属平箔の表と裏に互い違いに突出させてなることを特徴とする請求項10に記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 多数の断面形状L型の突起と孔を有する金属平箔と、突起のない平坦な金属平箔を交互に巻回して円筒体とし、該円筒体の隣接する箔の間は、前記突起によって互いにロウ付け或いは拡散接合で連結されて間隙を有し、その間隙を通じてガスが該円筒体を通過可能である排ガス浄化用メタル担体の製造方法であって、前記断面形状L型の突起と孔は、金属平箔を打ち抜いて孔とすると同時に、孔に相当する平箔の小片もしくはその一部分を平箔から完全には切断せずに連結したまま変形させて突起とし、かつ隣り合う突起を金属平箔の表と裏に互い違いに突出させ、前記の突起と孔を成形する工程で、隣接する箔との間に必要な間隙を突起の箔表面からの高さで設定し、隣接する箔との接合に必要な接触面を突起先端部で設定するように形成することを特徴とする排ガス浄化用メタル担体の製造方法。
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