JP3899378B2 - 反応効率の良い排ガス浄化用メタル担体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に用いられる触媒コンバータ用メタル担体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排ガス浄化装置に用いられる触媒コンバータ用メタル担体は、従来、ハニカム体の形状をなし、図3に示すように、耐熱性を有する材質の平板状の金属箔(平箔)と、同じ耐熱性を有する材質の金属箔をコルゲート加工して波形とした箔(波箔)とを交互に巻回して製造していた。形成されたハニカム体の平箔と波箔のハニカム通路表面に触媒を担持させて排気ガスを浄化する触媒コンバータを形成する。触媒コンバータは内燃機関の排気通路に配設され、排気ガス中のHC、CO、NO2 等を浄化している。
【0003】
触媒コンバータのガス通路に流入した排気ガスは、ガス内の物質移動によって反応すべき物質が触媒表面へ移動し、触媒表面に到達して所定の化学反応が進行し、触媒から生成物質が移動し離反することで完了する。従って、触媒コンバータ内での排ガス浄化速度は、反応すべき物質の触媒表面への移動速度、触媒表面での化学反応速度、触媒表面からの生成物質の移動速度によって律速される。排ガス浄化速度が速い場合には触媒コンバータの長さ(反応距離)は短くて済み、排ガス浄化速度が遅い場合には、排気ガス中のすべての有害物質が反応を完了するに足る十分に長い触媒コンバータを準備する必要が生じる。
【0004】
触媒表面での化学反応速度は温度に非常に影響を受け、十分に高い温度では触媒表面での化学反応速度は非常に高く、そのような場合の触媒コンバータ全体の排ガス浄化速度はガス通路内での反応物質の移動速度によって決定される。
【0005】
一方、メタル担体が具備すべきもうひとつの特性として、エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度がある。触媒反応は触媒担体の温度が約300℃以上にならないと開始しないので、エンジン始動時の触媒担体の温度が低い間は排気ガスの浄化は行われず、不純物を含んだ排気ガスが系外に排出される。そのような不都合を極力防止するためには、エンジン始動時に触媒コンバータに流入する排気ガスの顕熱を吸収し、メタル担体がいかに早く触媒反応が進行する温度に到達するかが問題となる。
【0006】
エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度を増大させるためには、ガスからメタル担体への熱伝達率が向上すること、及びメタル担体の熱容量を小さくすることが有効である。
【0007】
ガス通路内での反応物質の移動によって全反応物質が触媒表面に到達し置換されるためには、ガスと触媒表面との距離が短いほど短時間で完了することは明らかである。そのため、同一のガス通路断面形状で断面積を小さくする、あるいは断面形状を偏平にしてガス通路の両側の壁を接近させることが反応速度増大に有効である。Analytical Investigation of the Performance of Catalytic Monoliths of Varying Channel Geometries Based on Mass Transfer Controlling Conditions, Society of Automotive Engineers, Automotive Engineering Congress, Feb. 25, 1974 において、ガス通路の断面形状を波箔・平箔巻き回し型、円形、正方形、三角形、長方形等とし、断面積を種々変更してガス通路内での反応速度の計算を行い、反応を完了するのに必要な触媒コンバータの長さ、触媒コンバータを通過するときの圧力損失等を求めている。それによると、同一断面形状で断面積を小さくすれば反応速度が増大し、短い触媒コンバータ長さで反応が完了するという結果が当然得られている。更に、総合的にみると、縦横比4の長方形を断面形状としたものが、触媒コンバータでの圧力損失の少なさを含め総合的に最も優れていることを明らかにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の平箔と波箔との組合わせにより、メタル担体のガス通路の断面形状を長方形とすることはもちろん可能である。ただし、その場合、図4に示すように長方形の長辺において平箔と波箔が接する部分が長く、この部分においては実質的に箔の厚みが倍増することとなり、メタル担体全体の重量増大の原因となる。メタル担体の重量の増大はメタル担体の熱容量の増大につながるため、エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度が遅くなるという弊害を招来する。
【0009】
本発明は、メタル担体の重量を増大させずに反応効率の良い断面形状を有するメタル担体を提供することを目的とする。
【0010】
また、エンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度を増大させるため、ガスからメタル担体への熱伝達率の向上、及びメタル担体の熱容量を小さくすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。その第1は、全面に突起を有するステンレス平箔を渦巻状に巻き回して円筒体とし、該渦巻状円筒体の隣接するステンレス箔の間は、前記突起によって互いに間隙を有してガスが該円筒体を通過可能であり、平箔の長手方向の突起の間隔が、平箔表面からの突起の高さの4倍以上であり、前記突起先端と対向する平箔との接触部が、高温高真空中で拡散接合によって一体化されてなることを特徴する排ガス浄化用メタル担体である。この場合、全面に突起を有するステンレス平箔を渦巻状に巻き回して円筒体とし、巻き回しの張力による突起先端と対向する平箔との間の押し付け力が解除されないように保持したままで、真空炉中での拡散接合で一体化することが好ましい。また、前記突起は平箔をエンボス加工されてなることが好ましい。
【0012】
その第2は、平箔の突起は、平箔にダイスとポンチとを用いたエンボス加工を施すことによって形成することを特徴とする上記第1の排ガス浄化用メタル担体の製造方法である。
【0013】
これにより、メタル担体の重量を増大させずに反応効率の良い断面形状を有するメタル担体を提供することができる。
【0014】
また、激しく運動するガス中においては、ガス中の熱の移動は物質移動に伴って行われるので、一般にガス〜接触表面間の物質移動速度、及びガス〜接触表面間の熱伝達速度との間には、正の相関が見られる。即ち、物質移動速度が速いほど熱伝達速度も速くなる。従って、触媒反応を促進するために物質移動速度の早い形状のメタル担体を選択すれば、必然的に熱伝達速度も向上することが期待できる。更に、物質移動速度の速い形状のメタル担体は、結果としてメタル担体の長さを短くすることができるため、メタル担体の重量が軽減し、熱容量も軽減する。即ち、物質移動速度の優れたメタル担体の採用は、エンジン始動時のメタル担体内の速やかな温度上昇が期待できることとなる。そのため、上記手段の採用により、メタル担体の触媒反応効率を増大させると同時にエンジン始動時のメタル担体の温度上昇速度を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
従来のように平箔と波箔との組合わせによって長方形の断面形状を得ようとすると必然的に箔同士が長い距離にわたって接する部分が生じてしまうので、本発明では平箔のみを用いてメタル担体を構成する。また、断面形状として長方形が良好であるとの結果が従来得られているのは、断面が偏平であることで相接する長辺同士が接近し、ガス通路内での物質移動速度が速くなったことが原因であると考えられることから、本発明では長方形という形状にはとらわれず、巻き回しの結果できる渦巻構造の相接する平箔同士の間隔を狭くすることで長方形と同様の効果を実現することができた。
【0016】
相接する平箔同士の間隔を狭く保つためのスペーサとして、本発明では平箔に配置した突起を用いた。突起の高さが即ち平箔と平箔との間隔となる。突起は、平箔と平箔との間隔が渦巻体の全周・全長にわたって概略平行になるのに必要な間隔で配置する必要がある。一方、突起は平箔と平箔の間隔のガス通過の抵抗となるので、必要以上に多くを設置することは好ましくない。また、断面積の大きな突起を設置することも、ガスに対する抵抗を増大することとなるので好ましくない。
【0017】
平箔の長手方向の突起の間隔は、好ましくは突起の高さの4倍以上とする。これにより、通過するガスの抵抗を減少し、圧力損失の少ないメタル担体を構成することができる。ただし、平箔の長手方向の突起の間隔が突起の高さの20倍を超えると、平箔同士を平行に保つことが難しくなる。
【0018】
平箔の横方向の突起の間隔は、突起の高さの5倍から15倍の間が好ましい。理由は長手方向の突起間隔についてと同様である。平箔の横方向の突起の配置は、できるかぎり一直線上に並べることが好ましい。これにより、突起に起因するガスの受ける抵抗を最少にすることができる。
【0019】
平箔への突起の生成の方法は、図5に示すようなポンチ12とダイス11を用いたエンボス加工が適しているが、これに限定することなく、同様の形状の突起が得られるものであればどのような方法でも構わない。
【0020】
突起の形状は、図6(a)〜(c)に示すような同心円状の突起のほか、図6(d)〜(f)に示すような長さをもった突起としてもよい。長さをもった突起とすると、突起先端と対向する平箔との接合長さの増大により、接合強度を向上できるという効果がある。長さをもった突起とする場合は、突起の長手方向とガス流の方向とを平行に配置することが必要である。
【0021】
平箔同士の間隔はできるだけ狭くすることが好ましい。その理由は、熱伝達物質伝達を極限まで高めることができるからである。しかしながら、ガス通路の間隔を狭くするほど流路の抵抗が増大する。一方、ガス通路の間隔を狭くすると排気ガス反応速度が増大するので、メタル担体の長さを短くすることができる。その結果、ガス通路の間隔を変更しても、メタル担体トータルとしての圧力損失は大きくは変化しないという結果が得られた。ただし、使用する平箔の厚さを一定とすると、ガス通路の間隔が狭いほど全体の平箔使用量が増大し、メタル担体の重量が増大して熱容量が増大するという弊害が生じるので注意が必要である。
【0022】
突起先端と対向する平箔との接触部は通常は接合する。接合には従来からメタル担体の箔の接合に用いられているろう付けを用いることもできるが、拡散接合とすることがより好ましい。平箔を巻き回してハニカム体を構成した後、巻き回しの張力による突起先端と対向する平箔との間の押し付け力が解除されないように保持したままで真空炉に装入し、高温高真空の中で拡散接合を行う。拡散接合で接合されたメタル担体は、従来のろう付け法に比較して、ろう材が不要となることから、ろう材の影響による酸化劣化のない低廉で高強度の担体を製造することができる。
【0023】
メタル担体の円筒体の長さ(平箔の横方向の幅)は、メタル担体を通過する排気ガスの反応成分が必要なだけ反応を終了するに必要な長さとする。通常は上述のように平箔同士の間隔を狭くするほどメタル担体円筒体の必要長さは短くなる。
【0024】
上記のように、平箔同士の間隔とメタル担体円筒体の長さとの組合わせによってメタル担体の特性、即ちメタル担体の重量(熱容量)、圧力損失を適切に定めることができる。
【0025】
【実施例】
本発明例として、箔の厚み50μmの20Cr−5Alステンレス鋼平箔を用い、突起高さ0.7mm、平箔長手方向の突起間隔10mm、平箔幅方向の突起間隔10mmの突起を形成した。メタル担体形成に際しては、まず中心部に従来タイプの平箔と波箔を交互に巻回したハニカム体を形成し、これをコア部としてその外周に前記突起を形成した平箔を渦巻状に巻き回してメタル担体を形成した。突起はエンボス加工方法で形成した。
【0026】
比較材として、本発明と同じ箔の厚み50μmの20Cr−5Alステンレス鋼平箔を準備し、この平箔と、該平箔をコルゲート加工して波形とした波箔とを交互に巻き回し、ハニカム状のメタル担体を形成した。ハニカムはセル高さを1.25mm、ピッチを2.54mmとした。
【0027】
メタル担体の外径は本発明例、比較例とも90mmとした。メタル担体の長さは、比較例は120mmである。排気ガスの浄化を十分に行うために必要な長さである。本発明例においては、比較例と同じ120mmの長さのもの(No.1)、及び比較例より短い100mmの長さのもの(No.2)を製作した。メタル担体の重量は、本発明例No.1が514g、本発明例No.2が428g、比較例が458gとなった。
【0028】
メタル担体に触媒を担持させないままでエンジンに装着し、エンジン停止状態からエンジンを始動したときのメタル担体の温度上昇速度を比較した。メタル担体内の温度測定箇所は、図2(b)に示すように、メタル担体後端から10mmの位置において、メタル担体の中央部、R/2部、外周部の3箇所とした。メタル担体入り側のガス温度推移は図2(a)に示す通りである。メタル担体各箇所の温度の推移をそれぞれ図2(c)(d)(e)に示す。本発明例No.2は、比較例よりも重いので熱容量は不利であるにもかかわらず、温度上昇は比較例よりも速い。これは、本発明例No.1の方が流入した排気ガスからメタル担体への熱伝達効率が優れているということであり、本発明例No.1の熱伝達速度が比較例よりも優れていることの証左である。本発明例No.2は重量が軽いので熱容量が小さく、熱伝達速度は本発明例No.1と同等であるから、当然のことながら極めて速くメタル担体の温度が上昇している。エンジン始動から触媒に着火するまでの時間は、本発明例No.2では比較例の60%に短縮された。
【0029】
各メタル担体に触媒を担持させ、エンジンに装着して触媒コンバータにおけるCOガスの燃焼状況を比較した。触媒コンバータ入口において排気ガス中に存在したCOガスが触媒コンバータ中で燃焼する燃焼率は、本発明例No.1が99%、本発明例No.2が99%、比較例が99%と、差が生じなかった。比較例のメタル担体長さ120mmはもともと比較例において十分に排気ガスが燃焼するに必要な長さであるから、比較例、及び比較例と同じ長さの本発明例No.1の燃焼率が高いのは当然である。本発明例No.2は、比較例よりも長さが短いが、比較例と同等の燃焼率を実現している。本発明例は比較例に対してメタル担体内での化学反応速度が向上している証左であり、このため本発明例は従来例に比較して短いメタル担体で十分な排気ガス浄化を実現することができた。
【0030】
【発明の効果】
突起を有する平箔を用いた縦横比の大きいガス流路のメタル担体により、排ガス浄化速度、熱伝達速度が速く、軽量で熱容量が小さく、エンジン始動時の温度上昇速度が極めて速い触媒コンバータが製造でき、エンジン始動時の有害排気ガス排出が少なく、軽量で安価な触媒コンバータを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の突起を有する平箔を巻き回してメタル担体を形成する様子を示す斜視図である。
【図2】エンジン始動時のメタル担体の温度上昇の状況を比較する図であり、(a)はメタル担体入り側のガス温度の推移を示し、(b)はメタル担体温度測定箇所を示し、(c)はメタル担体の中央部の温度推移を示し、(d)はメタル担体のR/2部の温度推移を示し、(d)はメタル担体の外周部の温度推移を示す。
【図3】従来の平箔と波箔を交互に巻き回してハニカム状のメタル担体を形成する様子を示す斜視図である。
【図4】従来の平箔と波箔との組合わせによりガス通路断面を長方形としたメタル担体のガス通路を垂直に見た詳細図である。
【図5】突起をエンボス加工法で形成する状況を示す図であり、(a)は加工前、(b)は加工中、(c)は加工後の状況を示す図である。
【図6】本発明の突起の構造を示す図であり、(a)は同心円状の突起の平面図であり、(b)は(a)の突起の断面図であり、(c)は(b)と直角方向の断面図であり、(d)は長さをもった突起の平面図であり、(e)は(d)の突起の長手方向の断面図であり、(f)は(e)と直角方向の断面図である。
【符号の説明】
1 メタル担体
2 平箔
3 突起
4 温度側定位置
5 本発明例No.1
6 本発明例No.2
7 比較例
8 平箔
9 波箔
10 ガス通路
11 ダイス
12 ポンチ
Claims (4)
- 全面に突起を有するステンレス平箔を渦巻状に巻き回して円筒体とし、該渦巻状円筒体の隣接するステンレス箔の間は、前記突起によって互いに 間隙を有してガスが該円筒体を通過可能であり、平箔の長手方向の突起の間隔が、平箔表面からの突起の高さの4倍以上であり、前記突起先端と対向する平箔との接触部が、高温高真空中での拡散接合によって一体化されてなることを特徴とする排気ガス浄化用メタル担体。
- 全面に突起を有するステンレス平箔を渦巻状に巻き回して円筒体とし、巻き回しの張力による突起先端と対向する平箔との間の押し付け力が解除されないように保持したままで、真空炉中での拡散接合で一体化したことを特徴とする、請求項1記載の排気ガス浄化用メタル担体。
- 前記突起は平箔をエンボス加工されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス浄化用メタル担体。
- 平箔の突起は、平箔にダイスとポンチとを用いたエンボス加工を施すことによって形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の排ガス浄化用メタル担体の製造方法。
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