JP3278074B2

JP3278074B2 - 金属製ハニカム担体

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Publication number: JP3278074B2
Application number: JP16676892A
Authority: JP
Inventors: 雄三月出; 治夫芹沢
Original assignee: Usui Co Ltd
Current assignee: Usui Co Ltd
Priority date: 1992-06-03
Filing date: 1992-06-03
Publication date: 2002-04-30
Anticipated expiration: 2017-04-30
Also published as: JPH05337375A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、一般に自動車の排気ガ
ス浄化装置において使用される、排気ガス浄化用触媒を
担持させるための金属製ハニカム担体に関する。更に詳
しくは、本発明は過酷な条件下で使用されるこの種の排
気ガス浄化装置において、その主要な構成要素である金
属製ハニカム担体として、熱膨脹や熱応力による変形や
破損に対する耐久性を改善したものを提供するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の排気ガス浄化装置用の触
媒担体として、コージェライトなどのセラミック材を用
いたセラミック製のモノリスタイプ（セラミックモノリ
ス）のものと、金属（メタル）製のモノリスタイプ（メ
タルモノリス）のものが知られている。特に最近におい
ては、セラミックスモノリスの欠点を改善するために、
即ち、機械的強度、耐久性、通気抵抗、浄化効率（装置
の小型化）などの観点からメタルモノリスが盛んに研究
開発されている。

【０００３】この種の金属製の排気ガス浄化装置は、一
般に耐熱性の薄肉鋼板からの平板状帯材と前記薄肉鋼板
を波板形成した波板状帯材とを、相互に当接部を有する
ように重積し、これを一括渦巻状に巻回積層するか、あ
るいは階層状に重積して製作した軸方向に排気ガス通路
のための多数の網目状通気孔路（以下、セルともい
う。）を有する金属製のハニカム状の担体（以下、金属
製ハニカム担体あるいは単にハニカム担体という。）
と、前記ハニカム担体を填装し固着するための両端が開
口した筒状の金属ケースから構成されている。そして、
前記ハニカム担体と金属ケースとは、排気ガス自体の高
温度及び排気ガスと浄化用触媒との発熱反応などによる
熱膨脹や熱的応力に耐え得るように、また自動車走行時
の振動などに耐え得るようにろう接または溶接などによ
り強固に固着される。なお、ハニカム体を構成する平板
状帯材と波板状帯材の当接部は種々の方法により固着さ
れることはいうまでもないことである。

【０００４】しかしながら、前記した従来のハニカム担
体と金属製ケースから構成される排気ガス浄化装置は、
長期の使用に耐えるものではない。これは、ハニカム担
体の軸方向（即ち、排気ガスの流入、通過方向）はもと
より、特に該軸方向に対して直角な方向（以下、ハニカ
ム担体の半径方向という。）において、前記した排気ガ
ス自体の高い温度や未燃焼ガスの触媒反応による発熱と
いう雰囲気下で生起する熱膨脹や熱的応力に基づく大き
な変形力が、ハニカム担体の中心部と外周部間の温度勾
配の差によりハニカム担体の構成部材（平板状帯材と波
板状帯材）を通じてハニカム担体の外周部近傍あるいは
ハニカム担体の外周面と金属ケースの内壁面との当接面
近傍に伝播しようとすることに基づくものである。

【０００５】即ち、この熱的変形力の伝播過程におい
て、ハニカム担体の構成部材が破損、座屈したり、更に
は該熱的変形力が特にハニカム担体の外周部近傍あるい
はハニカム担体の外周面と金属製ケースの内壁面との当
接面近傍に集中するため、当該部位においてハニカム担
体を構成する平板状帯材及び／又は波板状帯材のヒビ割
れ、破損、座屈が大きく、また各帯材間の当接部やハニ
カム担体と金属ケース間の当接部の剥離や離体が生じ
る。そして、排気ガス浄化装置が自動車、特に自動二輪
車にみられるように激しい振動のもとで使用されるため
に、これらの欠点は倍加するものである。

【０００６】前記したハニカム担体の熱変形力による、
特に半径方向の耐久性を改善する方策として、次のよう
なものが提案されている。

【０００７】(i) 特開昭６３−１８２０３８号公報に
は、相互に異なる波長（周期）λと波高（振幅）Ａを有
する第１の波形板と第２波形板からハニカム担体を製作
する技術が開示されている。即ち相対的に大きな周期と
振幅を有する第１の波形板と、相対的に小きな周期と振
幅を有する第２の波形板を用いて熱変形サイクルのもと
での半径方向の加圧と伸張力に耐えるようにしている。
しかしながら、この技術は第１と第２波形板として、波
形が正弦波曲線あるいはそれに近い曲線のもので、かつ
板厚が同一であるものを使用することを前提としている
ため、次のような欠点を有するものである。即ち、波長
（周期）λと波高（振幅）が共に小さい一方の波形板
は、波付加工が困難であるとともに波付加工により他方
の波形板より剛性が大きなものとなるため（加工による
剛性のアップ）、ハニカム担体は熱応力の吸収・緩和の
効果に乏しいものとなる。

【０００８】(ii) 特開昭６４−３０６５１号公報に
は、平板に波板の凸曲面部（波の山及び谷部）に面接触
する凹曲面部を形成した平板（従って、これも１種の波
板といえる。）と、波板とからハニカム担体を製造する
技術が開示されている。これは、直接的には、両板を夫
々の凸／凹曲面部で面接触（内／外接）させて、接合強
度の改善とウォッシュコート時の高価なγーアルミナの
使用量の節約をはかったものである。しかし、平板が前
記したように波形を有するため、この波形部で半径方向
の熱的変形力を緩和させることができるものである。し
かしながら、この発明による場合、平板と波板の当接面
が面接触のため、平板による熱的変形力の吸収・緩和特
性が低減されてしまうという欠点を有する。

【０００９】(iii) 実開平２−１５００３２号公報に
は、多数の小波を有する小波平板と波の頂部が平面形状
である平頭波板とを交互に重ね合わせた構造のメタル触
媒担体において、小波平板の小波の大きさを平頭波板の
平頭部に２個以上が当接するようにしたものが示されて
いる。この考案は、特にハニカム担体の軸方向（排気ガ
スの流れ方向）のフィルムアウト現象（スコーピング）
を防止することを目的としたものであるが、小波平板に
よるハニカム担体の半径方向の熱応力の緩和効果が期待
できるものである。しかしながら、この考案による場合
も、前記特開昭６３−１８２０３８号と同様、あるいは
それ以上に小波平板の剛性が大きくなるため、メタル触
媒担体は熱応力の吸収・緩和の効果に乏しいものとな
る。

【００１０】

【発明が解決しようとする問題点】前記したように、こ
の種の排気ガス浄化ガス装置において、特にハニカム担
体の熱的変形力に対して十分に耐えうるようにするため
には、ハニカム体を構成する平板状帯材と波板状帯材と
の間を、あるいはハニカム体の外周面と金属ケースの内
壁面との間を単に強固に固着すればよい、という考え方
を修正しなければならない。本発明者らは、前記した従
来の排気ガス浄化装置の欠点を解決すべく、鋭意検討を
加えた。その結果、ハニカム体を構成する従来の部材
（平板状帯材と波板状帯材）にかえて、平板状帯材を相
対的に小さな波形を有し（マイクロコルゲーション）か
つ肉厚の薄い第１の波形帯材とし、かつ波板状帯材を相
対的に大きな波形を有しかつ肉厚の厚い第２の波形帯材
とすることにより、第１の波形帯材の製作が容易である
こと（波付加工の容易性）という製造プロセス上の利点
のほか、波付加工後においても第１の波形帯材が可撓性
に富むことから第２の波形帯材と組合わせた場合、ハニ
カム担体の半径方向に伝達される熱膨張や熱応力に基づ
く大きな変形力を効果的に吸収、緩和しうるハニカム担
体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至っ
た。

【００１１】

【問題点を解決するための手段】本発明を概説すれば、
本発明は、薄肉金属板製のピッチ幅Ｐ₁，波高Ｈ₁，板
厚Ｔ₁の第１波形帯材、及び薄肉金属板製のピッチ幅Ｐ
₂，波高Ｈ₂，板厚Ｔ₂の第２波形帯材を相互に当接す
るようにして重積して製作した軸方向に多数の網目状通
気孔路を有する排気ガス浄化用触媒を担持させるための
金属製ハニカム担体において、前記第１及び第２波形
が、 (i) Ｐ₁≦Ｐ₂ (ii) Ｈ₁＜Ｈ₂ (iii) Ｔ₁＜Ｔ₂ の条件を満たすものであることを特徴とする排気ガス浄
化用触媒を担持させるための金属製ハニカム担体に関す
るものである。

【００１２】以下、本発明の技術的構成及び実施態様に
ついて図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は
図示のものに限定されないということはいうまでもない
ことである。

【００１３】前記したように、金属製ハニカム担体を使
用した自動車用金属製の排気ガス浄化装置において、熱
膨張や熱応力（歪）に基づく変形力に対する耐久性を十
分なものにすることが極めて重要である。即ち、この種
の金属製の排気ガス浄化装置は、運転、停止と運転再開
時にみられる加熱・冷却サイクルの熱交番負荷は勿論の
こと、走行中においても過酷な熱的環境にさられるた
め、熱に対する耐久性の問題は極めて重要な課題であ
る。

【００１４】この点、自動車の走行中の状況を考察する
と、排気ガス浄化装置は、排気ガスの流量分布の相違
（中央部と周辺部の流量の相違）、及びハニカム担体の
表面部に担持されたＰｔ，Ｐｄ，Ｒｈなどの排気ガス浄
化用触媒と排気ガスとの触媒反応（発熱反応）により、
ハニカム体の中央部は周辺部より高温にさらされる。因
みに、この種の排気ガス浄化装置の温度は、一般には５
００〜８００℃であるが、ＨＣ（炭化水素）が多く排出
される場合には１１００℃前後にもなる。

【００１５】前記したハニカム担体内部の温度勾配をさ
らに詳しくみると、ハニカム担体の外周部とそれより少
し内側の部位間における温度勾配は、中央部近傍におけ
る温度勾配より著しく大きなものとなる。このことは、
ハニカム担体の外周面が直接外気と接したり、あるいは
ハニカム体が外気や雨水などと接する筒状金属ケース内
に固着されるので、より一層、助長されることになる。

【００１６】従って、金属製ハニカム担体と金属製ケー
スとから構成される排気ガス浄化装置において、ハニカ
ム担体の高温サイドの中心部から低温サイドのハニカム
担体の外周面近傍部位へ、即ちハニカム担体の半径方向
への熱伝達に伴なって熱膨張や熱応力に基づく強い変形
力（以下、熱による変形力、熱的変形力ともいう。）も
伝播し、これら部位に集中することになる。このハニカ
ム担体の半径方向に伝播される熱による大きな変形力
は、その伝播過程においてハニカム担体の構成部材を座
屈させたり、構成部材間の当接部が強固に固着されてい
ても、経時的に剥離させたり、更には各構成部材をヒビ
割れさせたり破損させたりする。特に、この悪影響は熱
的変形力が集中するハニカム担体の外周面近傍において
大きいものである。そして、これら剥離，ヒビ割れ，破
損と連動して、金属製ハニカム担体の構成部材の表面に
担持された高価な触媒層も剥離し、排気ガスの浄化能力
を大きく低下させてしまう。

【００１７】更に、前記した熱による変形力の悪影響は
金属製のハニカム担体の部分にのみとどまらず、ハニカ
ム担体の最外周面と金属ケースの内壁面との当接面にも
及ぶものである。この場合、大きな熱的変形力によりハ
ニカム担体の外周面と金属ケースの内周面の固着状態が
打破られ、離体状態が誘発される。前記した熱による変
形力に基づく悪影響は、車種により異なり、例えば自動
二輪車のように激しい振動下で走行する車種の場合、搭
載している排気ガス浄化装置の寿命を著しく短命化させ
るものである。

【００１８】従って、前記した剥離などの欠点を解消な
いし抑制するためには、ハニカム担体の構造において、
特にハニカム担体の半径方向における熱膨張や熱応力に
基づく変形力を効果的に吸収，緩和させる手段を講じる
ことが不可欠である。

【００１９】以上の観点から、本発明において、金属製
ハニカム担体の構成部材として次のものを使用する。 (1) 第１波形帯材従来の平板状帯材にかえて、耐熱性の薄肉金属板製で、
ピッチ幅（波形の山と山または谷と谷の長さ，１波長分
の長さ）Ｐ₁，波高Ｈ₁，及び板厚Ｔ₁が以下のように
規定される相対的に小さな波（マイクロコルゲーショ
ン）を有するとともに、肉厚の薄い波形帯材を使用す
る。 (2) 第２波形帯材耐熱性の薄肉金属板製で、ピッチ幅Ｐ₂，波高Ｈ₂，及
び板厚Ｔ₂が以下のように規定される相対的に大きな波
と肉厚の厚い波形帯材を使用する。本発明において、前
記第１〜第２波形帯材は、以下の条件を満足するもので
ある。 (i) Ｐ₁≦Ｐ₂ (ii) Ｈ₁＜Ｈ₂ (iii) Ｔ₁＜Ｔ₂

【００２０】本発明において、前記第１〜第２波形帯材
は、例えばクロム鋼（クロム１３〜２５％）、Ｆｅ−Ｃ
ｒ２０％−Ａｌ５％などの耐熱性のステンレス鋼ある
いはこれに耐熱酸化性を改善するために希土類を加えた
耐熱性のステンレス鋼などの厚さ０．０２mm〜０．１mm
の帯材を所望の条件に適合するように加工して製造され
る。なお、第１〜第２波形帯材として、帯材中にＡｌを
含有したステンレス鋼を用いると耐熱酸化性が向上し、
また、熱処理により帯材表面にウィスカー状ないしマッ
シュルーム状など種々の形状のα−Ａｌ₂Ｏ₃が析出
し、これ排気ガス浄化用触媒を担持するためのウォッシ
ュコートを強固に固着するので好ましいものである。

【００２１】本発明において、前記した各帯材（第１波
形帯材と第２波形帯材）は、次のような理由から使用さ
れるものである。即ち、相対的に小さな波形と肉厚を有
する第１波形帯材は、その小さな波形（マイクロコルゲ
ーション）と薄肉により可撓性に富むものとなり、ハニ
カム体の半径方向の熱的変形力を効果的に吸収・緩和す
ることができる。なお、マイクロコルゲーションを有す
る第１波形帯材は、その板厚（Ｔ₁）が第２波形帯材の
板厚（Ｔ₂）より薄肉であるため、マイクロコルゲーシ
ョンの加工（波付加工）時に帯材に付与される加工剛性
があっても、その可撓性を十分に維持することができ
る。また、第１波形帯材は、板厚（Ｔ₁）が薄肉であっ
ても加工剛性により、マイクロコルゲーションの保形性
が改善されるため、ハニカム担体の成形時（例えば第１
波形帯材と第２波形帯材の巻回成形時）に波形が保持さ
れること、更には、ハニカム担体の使用時にマイクロコ
ルゲーション部分に熱応力の集中を受けても熱応力を吸
収・緩和させながら十分な耐久性を有する。

【００２２】一方、相対的に大きな波形と肉厚を有する
第２波形帯材は、その板厚（Ｔ₂）が厚肉であるためハ
ニカム担体の全体的な強度、及び耐高温酸化性を向上さ
せるうえで不可欠のものである。本発明は上述した理由
により、第１波形帯材と第２波形帯材を選択し、ハニカ
ム担体の耐久性を改善しようとするものである。本発明
において、前記した第１〜第２波形帯材の波形として
は、波付加工の態様や波形帯材のハニカム担体へ成形時
にみられる波形の変形（加工圧の印加）などにより種々
の波形状のものとなるが、主として略正弦波形、略台形
波形、略短形波形などの波形をとり得るものである。以
下、図面を参照して、本発明の金属製ハニカム担体を構
成する第１波形帯材と第２波形帯材について説明する。

【００２３】本発明の金属製ハニカム担体(1) は、図５
〜図８に示される排気ガス浄化装置(A) の主要な構成要
素である。図示されるように排気ガス浄化装置(A) は、
金属製のハニカム担体(1) と該ハニカム担体(1) を内部
に収納、固定する両端部が開口した金属製のケース(2)
から構成されるものである。なお、図５〜図８に示され
る排気ガス浄化装置(A) の詳細は、後述される。そし
て、本発明は、ハニカム体(1) の構成部材に最大の特徴
を有するものである。

【００２４】図１は、図５で示されるハニカム体(1) の
一部拡大図であり、ハニカム体(1)が、(1) ピッチ幅
（Ｐ₁），波高（Ｈ₁），板厚（Ｔ₁）の第１波形帯材
（Ｂ₁）、(2) ピッチ幅（Ｐ₂），波高（Ｈ₂），板厚
（Ｔ₂）の第２波形帯材（Ｂ₂）、から構成されている
ことを示している。図２は、図１の点線サークル部を拡
大した図であり、第１波形帯材（Ｂ₁）の板厚（Ｔ₁）
と、第２波形帯材（Ｂ₂）の板厚（Ｔ₂）の関係が、Ｔ
₁＜Ｔ₂であることを示している。なお、図３〜図８に
おいて、第１波形帯材（Ｂ₁）と第２波形帯材（Ｂ₂）
の板厚において、必ずしもＴ₁＜Ｔ₂の関係が正確に表
現されていない。しかし、これは作図上の都合であっ
て、両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の板厚において、Ｔ₁＜Ｔ₂
の関係があることに留意しなければならない。

【００２５】図１は、ピッチ幅Ｐ₁，波高Ｈ₁の略正弦
波形を有する第１波形帯材Ｂ₁と、ピッチ幅Ｐ₂，波高
Ｈ₂の略台形波を有する第２波形帯材Ｂ₂が重積された
状態を示す。図１において、第１波形帯材Ｂ₁と第２波
形帯材Ｂ₂のピッチ幅が同一であることが示されている
（Ｐ₁＝Ｐ₂）。第１波形帯材Ｂ₁の部分で主として熱
応力による変形力を吸収・緩和しようとするならば、Ｐ
₁≦Ｐ₂であることが好ましいことがわかる。即ち、第
２波形帯材Ｂ₂のピッチ幅Ｐ₂より第１波形帯材Ｂ₁の
ピッチ幅Ｐ₁を小さくすれば小さくするほど、第１波形
帯材Ｂ₁は、可撓性に富む小さな波形（マイクロコルゲ
ーション）部分で熱応力による変形力を吸収・緩和する
ことができる。

【００２６】図３は、第１波形帯材Ｂ₁のピッチ幅Ｐ₁
と第２波形帯材Ｂ₂のピッチ幅Ｐ₂の関係が、２Ｐ₁＝
Ｐ₂のものである。このような関係の場合、図示される
ように隣接する台形波を有する第２波形帯材Ｂ₂の上辺
部間に、一周期分Ｐ₁の第１波形帯材Ｂ₁の正弦波が存
在することになり、該部分で十分な可撓性（柔軟性）を
発現させることができる。また、両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）
の当接部をろう結合により固着するとき、図示の状態で
両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）は強固に固着される。即ち、２Ｐ
₁＝Ｐ₂のとき、第２波形帯材Ｂ₂の上辺部に第１波形
帯材Ｂ₁の１つの波形が載る状態となるため、両帯材の
当接部は強固に固着される。しかしながら、図示される
ように、両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の間で形成される空間部
(S) の大きさに留意しなければならない。空間部(S) の
大きさが極端に小さくなる場合（別言すれば、Ｐ₁が小
さくなる場合）、小さな空間部(S) の存在それ自体によ
り、あるいはろう接合時に該空間部(S) にろう材が入り
こんだりして排気ガスの背圧が大きくなり（圧力損失が
大）エンジン効率を低下させてしまうことになる。

【００２７】図４は、第１波形帯材Ｂ₁のピッチＰ
₁が、図３のものよりもさらに小さくしたときの状態を
みたものである。この場合、台形波を有する第２波形帯
材Ｂ₂の隣接する上辺部間には図３より多くの第１波形
帯材Ｂ₁の正弦波が介在する（図３のものは１個、図４
のものは２個）ことになり、更に可撓性（柔軟性）が確
保される。しかしながら、両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の当接
部で形成される空間部(S) のろう材による目詰り、ろう
材の浪費、波付加工の困難性、波付加工による加工剛性
による可撓性の欠如などの欠点が生じてくる。以上のこ
とから、本発明において両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）のピッチ
幅（Ｐ₁，Ｐ₂）の好ましい条件として、０．１Ｐ₂≦
Ｐ₁≦Ｐ₂を設定することができる。

【００２８】また、本発明において、両帯材（Ｂ₁，Ｂ
₂）の波高（振幅）（Ｈ₁，Ｈ₂）に関しては、Ｈ₁＜
Ｈ₂の条件が満足されておれば特に問題がない。しか
し、前述のろう材による目詰り、ろう材の浪費、波付加
工の困難性、波付加工により、付与される加工剛性によ
る可撓性の欠如などの欠点を回避するためには、第１波
形帯材（Ｂ₁）の波形状を第２波形帯材（Ｂ₂）の波形
状より緩かにすることが効果的である。このことから、
両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の波高（Ｈ₁，Ｈ₂）の好ましい
条件として、Ｈ₁／Ｐ₁≦Ｈ₂／Ｐ₂を設定することが
できる。

【００２９】本発明者らにおいて、多くの実験の結果、
両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の板厚（Ｔ₁，Ｔ₂）の関係は、
次の関係式で便宜的に決定しうることが見い出された。Ｒ≦Ｔ₁／Ｔ₂≦１０Ｒ，Ｒ＝ルート（Ｐ₁／Ｐ₂・Ｈ₁／Ｈ₂）なお、上記関係式は、第２波形帯材（Ｂ₂）のＰ₂，Ｈ
₂，Ｔ₂を一定としたとき、第１波形帯材の板厚Ｔ
₁は、第１波形帯材のＰ₁とＨ₁の積の平方根に比例す
ることを意味しており、定性的に前記関係式の妥当性を
評価できる。従って、両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の板厚（Ｔ
₁，Ｔ₂）の決定に際しては、上記関係式を使用する
か、あるいはＴ₁＜Ｔ₂の関係で適宜に決定すればよ
い。

【００３０】本発明において、第２波形帯材Ｂ₂に対し
て、一般に採用されるピッチ幅Ｐ₂，波高Ｈ₂，板厚Ｔ
₂は、以下の通りである。Ｐ₂＝２．０mm〜８．０mm，Ｈ₂＝１．０mm〜４．０mm，Ｔ₂＝０．０４mm〜０．１mm，従って、第１波形帯材Ｂ₁のＰ₁，Ｈ₁，Ｔ₁は、前記
した関係のもとで所望の値を設定すればよい。

【００３１】次に、前記した第１波形帯材Ｂ₁と第２波
形帯材Ｂ₂から構成される金属製ハニカム担体(A) 、特
にその重要な構成要素であるハニカム担体(1) の構造に
ついて説明する。本発明の金属製ハニカム担体(A) は、
例えば図５〜図８で示されるものである。図５で示され
る金属製ハニカム担体(A) のハニカム担体(1) は、第１
波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材Ｂ₂を相互に当接部を有す
るように重積し、これを一括渦巻状に巻回成形して製作
した巻回タイプのものである。なお、両帯材（Ｂ₁，Ｂ
₂）の巻回積層により排気ガスの通路となる多数の網目
状通気孔路（セル）(C) が自動的に形成される。

【００３２】図６で示される金属製ハニカム担体(A) の
ハニカム担体(1) は、第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材
Ｂ₂を交互に当接させるように重積し、即ち階層状に積
層して製作した階層タイプのものである。

【００３３】図７で示される金属製ハニカム担体(A) の
ハニカム担体(1) は、図５で示される巻回タイプのもの
の一変形例で、断面レーストラック（長円形）形状のも
のである。これは両帯材（Ｂ₁，Ｂ₂）の巻回成形後に
巻回中心部に大径の空洞が形成されるように巻回成形
し、次いで該空洞部を圧潰し断面形状をレーストラック
形状にしたものである。

【００３４】図８で示される金属製ハニカム担体(A) の
ハニカム担体(1) は、第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材
Ｂ₂を重積して所望の相互に隣接した層を有する浄化エ
レメント(E) とし、該浄化エレメント(E) の４個を中心
部に配設された保持具により各浄化エレメント（Ｅ₁〜
Ｅ₄）の一端部を相互に対向させるように保持し、これ
を該保持具を中心にして同一方向に巻回成形して製作し
たものである。図８には、１つの浄化エレメント(E) の
構成が詳しく図示されている。なお、この種のハニカム
担体(1) は、中心部において各浄化エレメント（Ｅ₁〜
Ｅ_n）（ｎは、任意のエレメントの数）が十字状、Ｘ字
状、卍形状に重なり合っている（オーバラップ）ので、
Ｘ−ラップ形状のハニカム担体と俗称されている。前記
Ｘ−ラップタイプのハニカム担体の正面形状は、各浄化
エレメント（Ｅ₁〜Ｅ_n）の形状により種々のものがあ
りうる。例えば、各浄化エレメント（Ｅ₁〜Ｅ_n）の側
面からみた形状が長方形、台形、あるいは平行四辺形に
より、Ｘ−ラップタイプのハニカム体の正面形状は略円
形、略正方形、略楕円形状となる。

【００３５】本発明において、金属製ハニカム担体(A)
のハニカム担体(1) としては、図示されていないが、他
の態様のものであってもよい。例えば、第１波形帯材Ｂ
₁と第２波形帯材Ｂ₂を相互に当接させて浄化エレメン
トとし、該浄化エレメントの所望の数を固定軸を起点と
して外延させて製作した放射状タイプのものであっても
よい。また、第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材Ｂ₂を相
互に当接させて浄化エレメントとし、該浄化エレメント
を最外面が平板状帯材となるように所望の段数に階層状
に重積し、上下最外面に設定した二つの固定点を逆方向
に押圧成形して製作した各浄化エレメントの形状がＳ字
状であるＳ字状タイプのものであってもよい。

【００３６】前記金属製ハニカム担体(A) において、ハ
ニカム担体(1) を内部に填装し、固着するための金属ケ
ース(2) としては、両端が開口していれば、その形状に
何らの制限を受けるものではない。図５〜図８には、断
面円形状のものと、断面レーストラック形状（長円形
状）のものが示されているが、これに制限されない。例
えば、車体下部のスペースに適合させるため、断面略三
角形の金属ケースを用いて排気ガス浄化装置を構成して
もよい。金属ケースの素材として、前記ハニカム体と同
種の耐熱鋼を用いてもよいし、耐熱耐食性の富むものを
用いてもよい。また、外側部分の金属材料を内側部分よ
り耐熱耐食性の富むものとした二重構造のもの、具体的
には内側部分にフュライト系ステンレス鋼を外側部分に
オーステナイト系ステンレス鋼を用いたクラッド鋼など
を用いても良い。

【００３７】

【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく
説明するが、本発明は実施例のものに限定されるもので
はない。 (1) 第１波形帯材／第２波形帯材Ｆｅ−Ｃｒ２０％−Ａｌ５％−Ｃｅ０．０２％の
耐熱鋼製の第１〜第２波形帯材を使用した。第１波形帯
材Ｂ₁は、ピッチ幅Ｐ₁＝１．０mm，波高Ｈ₁＝０．２
５mm，板厚Ｔ₁＝０．０５mmであり、第２波形帯材Ｂ₂
は、ピッチ幅Ｐ₂＝２．５mm，波高Ｈ₂＝５．０mm，板
厚Ｔ₂＝０．１mmのものである。 (2) ハニカム担体の製作次いで、前記第１波形帯材（Ｂ₁）と第２波形帯材（Ｂ
₂）を図５に示されるように相互に重積し、これを一括
巻回積層して、軸方向に多数の網目状通気孔路（セル密
度１００cpsi）を有する外径７０mmのハニカム担体を製
作した。なお、巻回操作によるハニカム体の製作時に、
両帯材の波形状は形くずれせず、所定のセル密度のもの
に効率よく巻回積層することができた。次に、前記ハニ
カム体を内径約７０mmの耐熱鋼（ＪＩＳＧ４３１２
ＳＵＨ３１０Ｓ）製の金属ケース内に填装し、ハニカム
体の両端部及びその近傍部位（端部より１０mmの領域）
をニッケル系ろう材のスラリーに浸漬し、乾燥後真空炉
により熱処理して両帯材の当接部及びハニカム体と金属
ケースの当接部をろう付により固着した。次に、以上の
ようにして製作した排気ガス浄化装置に触媒担持層を次
のようにして形成させた。即ち、ハニカム体を構成する
各帯材の表面に活性アルミナ（γ−Ａｌ₂Ｏ₃）粉末と
アルミナゾルを配合したスラリーを塗布し、これを６０
０℃に加熱処理して触媒担持層を形成した。 (3) （性能評価）前記した触媒担持層を有する排気ガス浄化装置を、常温
〜９００℃間の１００サイクルの急熱急冷試験（バーナ
ースポーリング試験）、及び振動試験を行なったとこ
ろ、ハニカム体の構成部材はどの部位においても座屈、
亀裂、破損がみられず、また当接部の剥離や離体も観察
されなかった。更に、触媒担持層の落下、剥離も観察さ
れなかった。

【００３８】

【発明の効果】本発明の排気ガス浄化装置の主要な構成
要素である金属製ハニカム担体は、その部材として、相
対的に小さな波形と薄い肉厚を有する第１波形帯材と相
対的に大きな波形と厚い肉厚を有する第２波形帯材を用
いることによって製作される。これにより、本発明の金
属製ハニカム担体は、熱による変形力、特にハニカム担
体の半径方向に負荷される大きな熱による変形力を該第
１及び第２波形帯材との共同作業のもとで効果的に吸収
・緩和することができる。これは、ハニカム担体の構成
部材を特定の関係を有する第１及び第２波形帯材で構成
することによって、熱膨張，収縮に対する追随性を大幅
に向上させることができるためであって、これによりハ
ニカム担体の構成部材の座屈、亀裂、破損、及び部材間
の当接部の離体を効果的に防止することができる。

【００３９】また、本発明においてハニカム担体を構成
する第１及び第２波形帯材の当接部は強固に接合される
ため、耐振性，耐久性に優れたハニカム担体となる。更
に、前記した効果と関連してハニカム担体の壁面に形成
される排気ガス浄化用触媒を担持するための触媒担持層
の落下，剥離も効果的に防止される。このほか、更に、
本発明においては、製造面のメリットとして、相対的に
小さな波形と薄い肉厚を有する第１波形帯材の製作が薄
肉であるために容易であり、かつ第１及び第２波形帯材
からハニカム担体を製造するときに、第１波形帯材は波
付加工時に付与される加工剛性により、波形の保持性が
優れているため、均一なセル形状とセル密度のハニカム
担体が製造されるという利点もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材Ｂ₂との第
一の当接関係を示す図である。

【図２】図１の点線サークル部の拡大図である。

【図３】第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材Ｂ₂との第
二の当接関係を示す図である。

【図４】第１波形帯材Ｂ₁と第２波形帯材Ｂ₂との第
三の当接関係を示す図である。

【図５】本発明のハニカム担体（巻回タイプ）を円筒
状金属ケース内に固着して製作した第一態様の排気ガス
浄化装置の斜視図である。

【図６】本発明のハニカム担体（階層タイプ）をレー
ストラック形状の金属ケース内に固着して製作した第二
態様の排気ガス浄化装置の斜視図である。

【図７】本発明のハニカム担体（巻回タイプ）をレー
ストラック形状の金属ケース内に固着して製作した第三
態様の排気ガス浄化装置の正面図である。

【図８】本発明のハニカム担体（Ｘ−ラップタイプ）
を円筒状金属ケース内に固着して製作した第四態様の排
気ガス浄化装置の正面図である。

【符号の説明】

Ａ……………………排気ガス浄化装置１……………………ハニカム担体Ｂ₁…………………第１波形帯材Ｂ₂…………………第２波形帯材Ｃ……………………網目状通気孔路（セル）２……………………金属ケースＰ₁，Ｐ₂…………ピッチ幅Ｈ₁，Ｈ₂…………波高Ｔ₁，Ｔ₂…………板厚Ｅ……………………浄化エレメント

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B01J 21/00 - 37/36 B01D 53/86 F01N 3/20,3/28

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】薄肉金属板製のピッチ幅Ｐ₁ ，波高Ｈ
₁ ，板厚Ｔ₁ の第１波形帯材、及び薄肉金属製のピッチ
幅Ｐ₂ ，波高Ｈ₂ ，板厚Ｔ₂ の第２波形帯材を相互に当
接するようにして重積して製作した軸方向に多数の網目
状通気孔路を有する排気ガス浄化用触媒を担持させるた
めの金属製ハニカム担体において、前記第１及び第２波
形が、 (i) Ｐ₁ ≦Ｐ₂ (ii) Ｈ₁ ＜Ｈ₂ (iii) Ｔ₁ ＜Ｔ₂ の条件を満たすものであることを特徴とする排気ガス浄
化用触媒を担持させるための金属製ハニカム担体。
【請求項２】Ｐ₁ とＰ₂ が、０．１Ｐ₂ ≦Ｐ₁ ≦Ｐ₂
の条件を満たすものである請求項１に記載の金属製ハニ
カム担体。
【請求項３】Ｐ₁ ，Ｐ₂ ，Ｈ₁ ，Ｈ₂ が、Ｈ₁ ／Ｐ₁
≦Ｈ₂ ／Ｐ₂ の条件を満たすものである請求項１に記載
の金属製ハニカム担体。
【請求項４】Ｔ₁ とＴ₂ が、Ｒ≦Ｔ₁ ／Ｔ ₂ ≦１０
Ｒ，但し、Ｒ＝ルート（Ｐ₁ ／Ｐ₂ ・Ｈ₁ ／Ｈ₂ ）の条
件を満たすものである請求項１に記載の金属製ハニカム
担体。