JP4407790B2 - 電子装置及びその駆動方法並びに電子回路の駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は容量の高感度検出に適した電子回路の及び電子装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
指紋照合による個人識別は、犯罪捜査の手段のみならず、犯罪防止や安全性向上のために簡便で信頼性の高い手段として重要な位置を占めている。特開平8−305832号公報には、指先と電極との間に形成される静電容量値が指紋の凹凸によって変化することを利用して電気的に指紋画像パターンを得るための指紋センサが提案されている。
【0003】
一方、近年、医学の分野において、バイオインフォマティクス技術を利用したオーダーメード医療が提唱されており、このために、バイオインフォマティクス技術の要素技術として多くの検体を高速で検査することが可能なバイオチップの必要性が高まっている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−305832号公報
【発明が解決しようとする課題】
上述の指紋センサやバイオチップなどの検出装置において、高速かつ大量の処理を行うためには、当該検出装置の検出部にトランジスタを備えたものが必要となる。しかしながら、トランジスタ、特に薄膜トランジスタ(TFT)などは特性のばらつきが大きく、精密な検出が困難であった。また、微小な容量を検出することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、精密又は高感度に容量を検出する技術を提案することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の電子回路の駆動方法は、トランジスタと第1の容量素子とを備えた電子回路の駆動方法であって、前記トランジスタの第1の端子と前記トランジスタの電流制御端子とを電気的に接続する第1のステップと、前記電流制御端子と前記第1の端子との電気的接続を切断する第2のステップと、前記第1の容量素子に電圧信号を供給することにより、前記電流制御端子に印加される電圧を変化させる第3のステップを含むことを特徴とする。
【0007】
かかる方法により、トランジスタの閾値電圧等の特性のばらつきを補償するとともに、トランジスタの電流制御端子を所望の電圧値に設定することが可能となる。
【0008】
前記第3のステップにおいて、前記電流制御端子に印加される電圧を変化する方法としては、例えば、容量カップリングを用いることができる。つまり、電圧信号を前記第1の容量素子の前記電流制御端子が接続されている電極の反対側の電極に供給することにより、前記電流制御端子の電圧を変化させることができる。
【0009】
前記第3のステップにおいて、前記電圧信号は、電圧供給部から出力され、前記電圧信号の電圧値を調整することにより、前記第1の端子と前記トランジスタの第2の端子との間に流れる電流レベル又は電流量の利得を調整するようにすることが好ましい。これにより、センサ感度S/N比を適切な範囲に設定できる。
【0010】
ここで、「電子回路」とは、例えば、センシングを行うための回路をいい、本実施形態において詳述するセンサセルなどがこれに該当する。また、「電圧信号供給手段」とは、電圧を供給するための手段をいい、利得を調整するためには、少なくとも2つの電圧レベルを出力できることが好ましい。もちろん、可変電圧源であってもよい。出力電圧レベルの異なる複数の電源出力を切換出力する手段をも含んでいることが好ましい。
【0011】
また、「電流制御端子」とは、トランジスタの導通状態を制御するための端子をいい、電界効果トランジスタの場合には、ゲート端子がこれに該当する。また、「第1の端子」及び「第2の端子」とは3端子トランジスタにおける電流入力端子又は電流出力端子をいい、電界効果トランジスタの場合には、ソース端子又はドレイン端子に相当する。第1の端子、第2の端子がソース端子、ドレイン端子の何れに該当するかは、両者の相対的な電位差及びトランジスタの導電型によって決定される。例えば、P型トランジスタの場合、第1の端子及び第2の端子のうち高電位にある端子がソースとなり、N型トランジスタの場合、低電位にある端子がソースとなる。
【0012】
また、ここで「容量素子」とは、2つの電極により構成されているものばかりではなく、物質や物体等と電極とにより容量を形成するものも含んでいる。第1の容量素子の印加電圧を容量カップリングを介して電流制御端子に印加できるため、トランジスタの電流増幅率を任意の範囲に調整でき、センサとしての感度あるいはS/N比を向上することができる。
【0013】
好ましくは、前記電子回路は、一方の電極が前記電流制御端子に接続され、他方の電極が定電圧源に接続される第2の容量素子を含んでいてもよい。第2の容量素子の容量値を一定とすることで、参照キャパシタとして利用できる。
【0014】
上記の電子回路を、前記第2の容量素子の一方の電極を前記電流制御端子に接続し、他方の電極を指や被検査体としてもよい。
【0015】
好ましくは、前記第1のステップにおいて、前記第1の端子と前記第2の端子の間に電流を流すようにしてもよい。
【0016】
上記の電子回路の駆動方法において、前記第1のステップにおいて、前記トランジスタの第1の端子と第2の端子間に電流を流すことによって、前記電流制御端子の電圧が前記トランジスタの閾値電圧が加味された電圧に設定される。
【0017】
好ましくは、前記第1のステップにおいて、前記第1の端子と前記電流制御端子との間の電流経路上に設けられたスイッチング素子を開状態にすることで、前記第1の端子と前記電流制御端子とを接続する一方、前記第2のステップにおいて、前記スイッチング素子を開状態にすることで、前記第1の端子と前記電流制御端子とを電気的に分離する。前記第3のステップにおいて、容量カップリングを行う際は、特に前記第2のステップで前記電流制御端子を完全なフローティング状態としておくことが好ましい。
【0018】
上記の電子回路の駆動方法において、第1の端子と電流制御端子間のスイッチング素子を介在させることで、両者の導通をスイッチング制御することが可能となる。
【0019】
上記の電子回路の駆動方法において、前記第1の容量素子は、物質を担持することにより容量値が変化することが好ましい。かかる構成により、第1の容量素子の容量値を測定することで、物質の有無を検出できる。
【0020】
好ましくは、前記第1の容量素子は、前記物質を担持するような受容体を含んで構成される。かかる構成により、物質と特異的に反応する受容体を第1の容量素子に固定することで、物質を高感度に検出できる。これにより、高感度なバイオチップあるいはバイオセンサを構築できる。
【0021】
なお、ここで、「受容体」は、検出すべき物質に応じて適宜選択することができる。したがって、水素結合やインターカレーション等の相互作用を利用した分子認識作用を有するものや酵素や抗原あるいは抗体等の基質特異性のあるものが好ましく、容量素子の電極表面に固定されるものも好ましい。
【0022】
上記の電子回路の駆動方法において、前記物質は有機化合物であってもよい。前記物質は、蛋白質或いは核酸であってもよい。
【0023】
また、上記の電子回路の駆動方法において、前記第1の容量素子又は前記第2の容量素子は、前記第1の容量素子又は前記第2の容量素子の、前記電流制御端子に接続する電極と物体又は物質とを含むように構成してもよい。当該電極と容量を形成するように十分近接していることが好ましい。かかる構成により、例えば、指紋センサ等の物体の形状を検出するセンサとして利用できる。
【0024】
本発明の第2の電子回路の駆動方法は、被検査体と少なくとも1つの容量検出用電極との間に生ずる容量を検出するための電子回路の駆動方法であって、前記少なくとも1つ容量検出用電極のうち一つの容量検出用電極に電流制御端子が接続されたトランジスタの前記電流制御端子とドレインとを電気的に接続することにより前記トランジスタの特性を補償し、前記電子回路を通過する電流の電流量を計測する際に、前記電流制御端子の電圧値に応じた電流レベルを有する電流を前記トランジスタに通過させることを特徴とする。
【0025】
上記の電子回路の駆動方法において、前記電流レベルの調整は、前記電流制御端子に接続された参照用容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことが好ましい。
【0026】
或いは、電子回路の駆動方法において、前記電流レベルの調整を前記被検査体と前記少なくとも1つの容量検出用電極とにより構成される容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行ようにしてもよい。
【0027】
本発明の第3の電子回路の駆動方法は、被検査体と少なくとも1つの容量検出用電極との間に生ずる容量を検出するための電子回路の駆動方法であって、前記少なくとも1つの容量検出用電極のうち一つの容量検出用電極に第1の電流制御端子が接続された第1のトランジスタの前記第1の電流制御端子と前記第1のトランジスタの第1のドレインとを電気的に接続した状態を用いることにより、当該一つの容量検出用電極に第2の電流制御端子が接続された第2のトランジスタの特性を補償し、前記電子回路を通過する電流の電流量を計測する際に、前記第2の電流制御端子の電圧値に応じた電流レベルを有する電流を前記第2のトランジスタに通過させることを特徴とする。
【0028】
上記の電子回路の駆動方法において、前記電流レベルの調整は、前記第2の電流制御端子に接続された参照用容量素子を介した容量カップリングにより前記第2の電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことが好ましい。或いは、電子回路の駆動方法において、前記被検査体と前記少なくとも1つの容量検出用電極とにより構成される容量素子を介した容量カップリングにより前記第2の電流制御端子の電圧値を設定することにより行うようにしてもよい。
【0029】
本発明の第4の電子回路の駆動方法は、被検査体と少なくとも1つの容量検出用電極との間に生ずる容量を検出するための電子回路の駆動方法であって、前記電子回路を通過する電流の電流量を計測する際に、前記少なくとも1つの容量検出用電極のうち一つの容量検出用電極に電流制御端子が接続されたトランジスタに、前記電流制御端子の電圧値に応じた電流レベルを有する電流を通過させ、前記電流レベルの調整は、前記電流制御端子に接続された参照用容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことを特徴としている。
【0030】
本発明の第5の電子回路の駆動方法は、被検査体と少なくとも1つの容量検出用電極との間に生ずる容量を検出するための電子回路の駆動方法であって、前記電子回路を通過する電流の電流量を計測する際に、前記少なくとも1つの容量検出用電極のうち一つの容量検出用電極に電流制御端子が接続されたトランジスタに、前記電流制御端子の電圧値に応じた電流レベルを有する電流を通過させ、前記電流レベルの調整は、前記被検査体と前記少なくとも1つの容量検出用電極とにより構成される容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことを特徴とする。
【0031】
本発明の第1の電子装置の駆動方法は、第1のトランジスタと前記第1のトランジスタの電流制御端子に接続された容量素子とを含む電子回路を備えた電子装置の駆動方法であって、前記第1のトランジスタの特性ばらつきを補償する補償ステップと、前記第1のトランジスタの導通状態を前記容量素子に蓄積された電荷に応じた導通状態に設定した状態で、前記第1のトランジスタの第1のソースと第1のドレインとの間に流れる電流量を計測する計測ステップと、 を含むことを特徴とする。
【0032】
これにより、電流が通過するトランジスタの閾値電圧等の特性ばらつきを補償した上で電流検出を行うため、高精度に電流量を検出することができる。ここで、「電子装置」の例としては、例えば、センシングを行うための検出回路を備えた検出装置をいい、例えば、本実施形態において詳述するバイオセンサや指紋センサ等などがこれに該当する。
【0033】
上記の電子装置の駆動方法において、前記補償ステップは前記第1のドレインと前記第1のトランジスタの第1の電流制御端子とを電気的に接続した状態で行うことが好ましい。
【0034】
上記の電子装置の駆動方法において、前記補償ステップは、前記容量素子に第2の電流制御端子が接続された第2のトランジスタの第2のドレインと前記第2の電流制御端子とを電気的に接続した状態で行ってもよい。具体的には、例えば、後述する図14に示したカレントミラー型回路の例が挙げられる。
【0035】
上記の電子装置の駆動方法において、前記計測ステップを行う際、あるいは前記計測ステップを行う前に電圧信号を前記容量素子に供給し、容量カップリングにより前記第1の電流制御端子の電圧値を変化させることにより前記第1のソースと前記第1のドレインとの間に流れる電流量を調整することが好ましい。
【0036】
本発明の第2の電子装置の駆動方法は、一方の電極がトランジスタの電流制御端子に接続し、他方の電極が電圧信号供給手段に接続する第1の容量素子を含む電子装置の駆動方法であって、前記トランジスタを通過する電流量を計測する計測ステップを含み、前記計測ステップを行う際、あるいは前記計測ステップを行う前に前記電圧信号供給手段から出力される出力電圧の電圧値を変化させることにより、前記電流制御端子の電圧値を変化さること、を特徴とする。これにより、トランジスタを通過する電流の利得を調整できるため、高感度な計測が可能となる。
【0037】
上記の電子装置の駆動方法において、複数の出力電圧により、前記電流制御端子の電圧値を複数設定し、それぞれの条件で、前記電流量と、を計測することが好ましい。これにより、容量値を算出することが可能となる。より多くの出力電圧に対して前記トランジスタを通過する電流量を測定すれば、より精度良く、容量値を算出することが可能となる。
【0038】
本発明の第1の電子装置は、容量素子を構成する電極のうち少なくとも1つの電極に、電流制御端子が接続されたトランジスタと、前記トランジスタを通過する電流の電流量を計測する電流検出回路と、前記トランジスタの特性ばらつきを補償する補償手段と、を備えたこと、を特徴とする。上記の電子装置は、トランジスタの閾値電圧等、利得係数等の特性のバラツキを補償する手段を備えているので、正確な電流量を検出することができる。
【0039】
上記の電子装置において、前記容量素子を介して前記電流制御端子の電圧を調整するための電圧信号を出力する電圧信号供給手段を備えていることが好ましい。
これにより、出力電流の利得を調整できるため、センサ感度やS/N比の良好な範囲を設定できる。
【0040】
本発明の第2の電子装置は、容量素子を構成する電極のうち少なくとも1つの電極に、電流制御端子が接続されたトランジスタと、前記トランジスタを通過する電流の電流量を計測する電流検出回路と、前記容量素子を介して前記電流制御端子の電圧を調整するための電圧信号を出力する電圧信号供給手段と、を備えたこと、を特徴とする。これにより、出力電流の利得を調整できるため、センサ感度やS/N比の良好な範囲を設定できる。
【0041】
上記の電子装置において、前記トランジスタの特性バラツキを補償する補償手段をさらに備えていることが好ましい。
【0042】
上記の電子装置において、前記補償手段は、前記トランジスタを含む電子回路であってもよい。後述するように前記トランジスタのドレインと電流制御端子とを電気的に接続した状態で行ってもよいし、又は、前記トランジスタとミラーをなすトランジスタ、あるいは、同一の容量を構成する電極に、電流制御端子が接続されたトランジスタのドレインと当該電流制御端子を電気的に接続した状態で行ってもよい。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、各図を参照して本実施の形態について説明する。
<発明の実施の形態1>
図1は本実施形態に係わるバイオセンサのブロック図である。同センサは、基板11上に半導体製造プロセスを利用して形成された複数のセンサセル10と、センサセル10における生化学反応を電流レベルの変化量として検出するXドライバ20と、センサセル10を構成するFETのスイッチング制御を行うYドライバ30とを備えて構成されている。センサセル10は生化学反応に起因して容量が変化するキャパシタを含む容量型センサであり、基板11上にてN行M列のマトリクス状に配置されることにより、マルチセンサアレイを構成している。Xドライバ20からは各々のセル10に接続するM本のデータ線X1,X2,…,XMが基板11上に形成される一方、Yドライバ30からは各々のセル10に接続するN本の走査線Y1,Y2,…,YNが基板11上に形成されている。各々のデータ線Xm(1≦m≦M)は単位ドライバ21によって制御されている。
【0044】
図3は基板11上において、n行m列(1≦n≦N,1≦m≦M)の位置に配置されているセンサセル10と、当該センサセル10に接続する単位ドライバ21の回路構成図である。センサセル10は生化学反応によって容量が変化するキャパシタCsと、スイッチングトランジスタTr1〜Tr3と、キャパシタCsの容量変化を検出するセンシング用のトランジスタTr4と、一定の容量値を保持する参照キャパシタCrとを含んで構成されている。走査線YNはサブ走査線S1〜S3から構成されている。単位ドライバ21はデータ線Xmを介してセンサセル10から出力される出力電流Ioutの値を検出する電流検出回路22と、を備えて構成されている。
【0045】
上記の構成において、サブ走査線S1〜S3の各々はスイッチングトランジスタTr1〜Tr3のゲート端子に接続しており、Yドライバ30から出力される信号のHレベル/Lレベルに対応してスイッチングトランジスタTr1〜Tr3のオン/オフ制御を行う。スイッチングトランジスタTr1〜Tr3はnチャンネル型FETから構成されており、Hレベルの信号によりオン状態となる。スイッチングトランジスタTr1はサブ走査線S1からの信号に対応して、可変電圧源Vatからの電圧をキャパシタCsに供給するためのスイッチング素子であり、その一端は可変電圧源Vatに接続される一方、他端はキャパシタCsに接続している。スイッチングトランジスタTr2、Tr3はサブ走査線S2、S3からのHレベルの信号によりオン状態となるスイッチング素子である。スイッチングトランジスタTr2の一端はキャパシタCs、参照電極Cr、及びトランジスタTr4のゲート端子に接続される一方、その他端はスイッチングトランジスタTr3のドレイン端子に接続されている。
【0046】
スイッチングトランジスタTr3はサブ走査線S3からのHレベルの信号によりオン状態となり、トランジスタTr4のチャネルを流れるドレイン電流を出力電流Ioutとしてデータ線Xm上に出力するためのスイッチング素子であり、その一端はトランジスタTr4のドレイン端子に接続される一方、他端はデータ線Xm上を介して電流検出回路22に接続している。トランジスタTr4はpチャンネル型FETから構成され、そのソース端子は定電圧電源Vddに接続されている。また、トランジスタTr4のゲート端子は参照キャパシタに接続されており、参照キャパシタCrのトランジスタTr4のゲート端子に接続された電極と対向する電極には定電圧電源Vddに接続されている。定電圧電源Vddの出力電圧値はトランジスタTr4をピンチオフ領域で動作させるために必要かつ十分なバイアス電圧に設定されている。トランジスタTr4のゲート電圧は可変電圧源Vatから供給される電圧をキャパシタCsと参照キャパシタCrとで容量分割した値で定まるため、生化学反応に起因するキャパシタCsの容量変化はトランジスタTr5の相互コンダクタンスの変化、つまり、ドレイン電流の変化として検出することができる。
【0047】
図2はキャパシタCsの説明図である。同図に示すように、同キャパシタは反応ウェル40内に形成された一対の電極41,42間の静電容量として構成されている。反応ウェル40は基板11を凹状にエッチング加工等することによりセンサセル10毎に形成されたマイクロウェルであり、遺伝子解析に必要なDNA断片を含むサンプル溶液を所定量だけ充填できる容積が確保されている。サンプルとなるDNA断片としては、生物材料から抽出したDNA鎖を遺伝子分解酵素若しくは超音波処理で分解したもの、又は特定のDNA鎖からPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって増幅させた一本鎖DNA等を用いることができる。電極42は金電極から構成されており、プローブ43のDNA末端に導入されたチオール基との金−硫黄配位結合を介して結合している。オリゴヌクレオチドにチオール基を導入する手法は、Chemistry Letters 1805-1808 (1994)又はNucleic Acids Res.,13,4484(1985)にて詳細に開示さている。隣接するセンサセル10内に固定されるプローブ43の塩基配列はわずかに異なるように設定すれば、ハイブリダイゼーションを高精度に検出することができる。
【0048】
プローブ43となるDNA鎖としては、生体試料から抽出したDNA鎖を制限酵素で切断し、電気泳動により精製したDNA鎖、若しくは生化学的に合成したオリゴヌクレオチドなどを用いることができ、予め塩基配列を決定しておくことが望ましい。プローブ43と相補的な塩基配列を有するサンプル溶液中のDNA鎖とプローブ43とがハイブリダイズすると、一対の電極41,42間の誘電率が変化するため、これに伴いキャパシタCsの容量も変化する。上述したように、キャパシタCsの容量変化はトランジスタTr5のドレイン電流の変化として検出できる。
【0049】
図4はセンサセルを駆動するための各種信号のタイミングチャートである。同図において、TpはトランジスタTr4の閾値電圧のばらつきを補償するための補償ステージ、Tsはセンサ出力を検出するためのセンシングステージである。補償ステージTpは4つのサブステージTp1〜Tp4から構成されている。サブステージTp1においては、サブ走査線S1,S2をLレベルに立ち下げた状態で、サブ走査線S3をHレベルに立ち上げる。図5はこのときの等価回路図である。同図において、ゲート/ソース間の電圧Vgsは負にバイアスされるため、トランジスタTr4はオン状態となる。
【0050】
続いて、サブステージTp2に移行し、サブ走査線S3をHレベルに保持しつつ、サブ走査線S1、S2をLレベルからHレベルに立ち上げる。図6はこのときの等価回路図である。キャパシタCrの電圧Vr及びキャパシタCsの電圧Vsを同図に示す向きに定めると、Vr=Vgs,Vs=Vat−Vdd+Vgsとなる。続いて、サブステージTp3に移行し、サブ走査線S1,S2をHレベルに保持しつつ、サブ走査線S3をHレベルからLレベルに立ち下げる。図7はこのときの回路図である。スイッチングトランジスタTr3がオフになったことにより、トランジスタTr4のチャネルを流れるドレイン電流は全てゲート端子側に回り込み、ゲート端子の電位を上昇させ、Vgsが閾値電圧Vthと等しくなった時点でトランジスタTr4はオフとなる。このとき、Vr=Vth,Vs=Vat−Vdd+Vthである。
【0051】
続いて、サブステージTp4に移行しサブ走査線S1をHレベルに保持し、サブ走査線S3をLレベルに保持しつつ、サブ走査線S2をHレベルからLレベルに立ち下げる。図8はこのときの等価回路図である。同図において、CgはトランジスタTr4のゲート端子とシリコン基板との間に形成されるMOSキャパシタを表している。Vbは同トランジスタのソース端子に対する基板バイアス電圧であり、Vb=Vddの関係を満たしている。つまり、参照キャパシタCrとキャパシタCgとは並列接続の関係にあり、その合成容量は(Cr+Cg)である。また、サブ走査線S2の信号を立ち下げることによって、図中のA点を電気的に浮遊状態とした後、同信号の立ち下がりエッジよりもやや遅れて可変電圧源Vatの出力電圧をΔVatだけ変化させると、容量カップリングによって、キャパシタCrの電圧Vrは下式のように変化する。
Vr=−CsΔVat/(Cs+Cr+Cg)−Vth …(1)
続いて、センシングステージTsに移行し、サブ走査線S2の信号をLレベルに保持しつつ、サブ走査線S1の信号をHレベルからLレベルに立ち下げ、サブ走査線S3の信号をLレベルからHレベルに立ち上げる。また、サブ走査線S3の信号の立ち上がりエッジよりもやや遅れて可変電圧源Vatの出力電圧をもとの電圧可Vatに戻す。このときの等価回路図は図5と同じであり、トランジスタTr4のドレイン端子から電流検出回路22に出力される出力電流Ioutの値は下式のように記述できることが知られている。
Iout=α(Vgs−Vth)2 …(2)
ここで、α=(WμCox)/(2L)であり、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、μは移動度、Coxは単位面積当たりのゲート酸化膜容量である。Vr=−Vgsであるから、(2)式においてVgsを消去し、β=Cs/(Cs+Cr+Cg)とすれば、下式が得られる。
Iout=αβ2(ΔVat)2 …(3)
(3)式に示すように、出力電流Ioutは閾値電圧Vthに関係なく、可変電圧源Vatの電圧変化量ΔVatの2乗に比例する。つまり、トランジスタTr4の閾値電圧Vthは参照キャパシタCr及びキャパシタCsに記憶された電圧により補償され、同トランジスタのチャネルを流れる出力電流Ioutは閾値電圧Vthの大きさに関係なく決定されるため、トランジスタTr4の特性のばらつきを補償することができる。さらに、出力電流Ioutの値を測定することにより、(3)式よりβの値を求めることができる。ここで、β=Cs/(Cs+Cr+Cg)であるから、Cr及びCgを既知とすれば、βの値からCsの値を求めることができる。
【0052】
また、上記の構成において、マトリクス状に配列された個々のセンサセル10にわずかに異なる塩基配列を有するプローブDNAを高密度にスポットし、個々の単位ドライバ21からの出力信号をコンピュータ装置に取り込み、当該コンピュータ装置において前記出力信号を数値化してデータ解析することにより、遺伝子解析をリアルタイムに行うことができる。通常、ハイブリダイゼーションは塩基配列が完全に一致していなくても生じ得るため、ターゲットDNAは複数のセンサセル10にある程度の分布をもって相補結合する。ターゲットDNAの塩基配列は、出力電流の変化量が一番大きいセンサセル10に固定されているプローブDNAとの相同性(遺伝的な類似性)が一番高いと予測できる。本実施形態のバイオセンサを利用した遺伝子解析技術は、遺伝子疾患の検査や、法医学的な鑑定などに応用できる。また、センサセル10は容量型センサとして機能するため、反応ウェルでのDNAハイブリダイゼーションを敏感に検出することができ、シグナル検出の即時性に優れている。
【0053】
尚、上記の例ではDNA鎖のハイブリダイゼーションによるキャパシタCsの容量変化を測定する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば、抗原を受容体とすることで抗原抗体反応を検出したり、酵素を受容体とすることで酵素基質反応を検出することもできる。つまり、受容体の種類によって、酵素センサ、免疫センサ、微生物センサ、オルガネラセンサ、組織センサ、レセプタセンサなどに分類し、用途別に使い分けることができる。このように、バイオセンサの用途に応じて分子認識作用のある生体分子を受容体として適宜選択することにより、各種の生化学物質のセンシングを行うことができる。このようなバイオセンサは医療現場や個人で用いられるポイントオブケアデバイスや、ヘルスケアデバイスに応用することが可能である。
【0054】
また、各々のセルアレイ10について、トランジスタTr4のゲート端子に接続するとともに、基板11の表面に露出する電極を形成し、当該電極と被験者の指先との間の静電容量をキャパシタCsとしてその容量変化を求めれば、指紋センサとしても利用できる。また、トランジスタTr1〜Tr5の全部又は一部について、FETに替えてバイポーラトランジスタや、他のスイッチング素子で代用してもよい。
【0055】
<発明の実施の形態2>
上記の第1の実施形態では、トランジスタの閾値電圧を補償することにより精度良く、電流量を検出する例について述べたが、トランジスタの閾値電圧のばらつきに加えて利得係数等のその他の特性のばらつきを補償するためには、参照電流を利用してトランジスタの特性のばらつきを補償することが好ましい。以下、具体的に述べる。
【0056】
図9は第2の実施形態に係わるセンサセル10の回路構成図である。センサセル10はn行m列(1≦n≦N,1≦m≦M)の位置に配置されているセルである。センサセル10は生化学反応によって容量が変化するキャパシタCsと、スイッチングトランジスタTr1〜Tr4と、キャパシタCsの容量変化を検出するセンシング用のトランジスタTr5と、参照キャパシタCrとを含んで構成されている。データ線Xmはサブデータ線D1,D2から構成されており、走査線YNはサブ走査線S1〜S4から構成されている。単位ドライバ21はサブデータ線D1に参照電流Irefを供給する定電流電源23と、サブデータ線D2を介してセンサセル10から出力される出力電流Ioutの値を検出する電流検出回路22とを備えて構成されている。
【0057】
上記の構成において、サブ走査線S1〜S4の各々はスイッチングトランジスタTr1〜Tr4のゲート電極に接続しており、Yドライバ30から出力される信号のHレベル/Lレベルに対応してスイッチングトランジスタTr1〜Tr4のオン/オフ制御を行う。スイッチングトランジスタTr1〜Tr4はnチャンネル型FETから構成されており、Hレベルの信号によりオン状態となる。スイッチングトランジスタTr1はサブ走査線S1からの信号に対応して、可変電圧源Vatからの電圧をキャパシタCsに供給するためのスイッチング素子であり、そのドレイン端子は可変電圧源Vatに接続される一方、そのソース端子はキャパシタCsに接続している。スイッチングトランジスタTr2、Tr4はサブ走査線S2、S4からのHレベルの信号によりオン状態となり、サブデータ線D1を介して定電流電源23から供給される参照電流Irefの値に対応した電荷を参照キャパシタCrに蓄積するためのスイッチング素子である。スイッチングトランジスタTr2のドレイン端子はキャパシタCs、参照電極Cr、及びトランジスタTr5のゲート端子に接続される一方、そのソース端子はスイッチングトランジスタTr4及びTr3のドレイン端子に接続されている。
【0058】
スイッチングトランジスタTr3はサブ走査線S3からのHレベルの信号によりオン状態となり、トランジスタTr5のチャネルを流れるドレイン電流を出力電流Ioutとしてサブデータ線D2上に出力するためのスイッチング素子であり、そのドレイン端子はトランジスタTr5のドレイン端子に接続される一方、そのソース端子はサブデータ線D2を介して電流検出回路22に接続している。トランジスタTr5はpチャンネル型FETから構成され、そのソース端子は定電圧電源Vddに接続されている。また、トランジスタTr5のゲート端子は参照キャパシタCrに接続されており、参照キャパシタCrのトランジスタTr5のゲート端子に接続された電極と対向する電極は定電源Vddに接続している。
【0059】
定電圧電源Vddの電圧値はトランジスタTr5をピンチオフ領域で動作させるために必要かつ十分なバイアス電圧に設定されている。トランジスタTr5のゲート電圧は可変電圧源Vatから供給される電圧をキャパシタCsと参照キャパシタCrとで容量分割した値で定まるため、生化学反応に起因するキャパシタCsの容量変化はトランジスタTr5の相互コンダクタンスの変化、つまり、ドレイン電流の変化として検出することができる。
【0060】
図10はセンサセルを駆動するための各種信号のタイミングチャートである。センサセル10における生化学反応を検出するための一連の手順は、トランジスタTr5の閾値等の特性のばらつきを補償するための補償ステージTpと、センシングの前準備段階におけるプレセンシングステージTs1と、生化学反応によって生じたキャパシタCsの容量変化を電流変化として検出するセンシングステージTs2とを含む。補償ステージTpにおいては、サブ走査線S3の信号をLレベルに設定する一方で、サブ走査線S1,S2,S4の信号をHレベルに立ち上げる。これにより、スイッチングトランジスタTr3はオフ状態になる一方、スイッチングトランジスタTr1,Tr2,及びTr4はオン状態となる。また、同ステージにおいて、定電流電源23からはセンサセル10に対して参照電流Irefを供給する。このときのセンサセル10における等価回路は図11のようになる。同図において、トランジスタTr5はオン状態となり、キャパシタCrとキャパシタCsには参照電流Irefに応じた電圧が記憶される。この状態において、ゲート/ソース間の電圧Vgsと、ドレイン/ソース間の電圧Vdsは等しい。参照キャパシタCrに記憶される電圧をVgsとすれば、キャパシタCsに記憶される電圧はVat−Vdd+Vgsとなる。
【0061】
続いて、プレセンシングステージTs1に移行する。同ステージにおいて、サブ走査線S1の信号をHレベルに保持しつつ、サブ走査線S2,S4の信号をHレベルからLレベルに立ち下げ、サブ走査線S3の信号をLレベルからHレベルに立ち上げる。これにより、スイッチングトランジスタTr3はオフ状態からオン状態に遷移する一方、スイッチングトランジスタTr2,Tr4はオン状態からオフ状態へ遷移する。また、同ステージにおいて定電流電源23からセンサセル10に供給される参照電流Irefは0に停止され、可変電圧源Vatの出力電圧は一定のまま保持される。このときのセンサセル10における等価回路は図12のようになる。同図において、補償ステージTpにおいて参照キャパシタCr及びキャパシタCsに記憶された電圧がトランジスタTr5のゲート端子に印加され、Vgsが負にバイアスされることによって、トランジスタTr5がオン状態となり、同トランジスタからドレイン電流が出力される。このときのドレイン電流の値は参照電流Irefにほぼ等しい。従って、プレセンシング期間Ts1において得られる出力電流Ioutの値は参照電流Irefに等しくなり、キャパシタCsの値に依存しない一定値となる。
【0062】
続いて、センシングステージTs2に移行する。可変電圧源Vatの電圧をΔVatだけ変化させる一方で、サブ走査線S1〜S4に出力される各々の信号のオン/オフ状態を維持したままにする。可変電圧源Vatの電圧をΔVatだけ変化させると、容量カップリングによりトランジスタTr5のゲート電位が変化する。このときに同トランジスタのドレイン端子から出力される出力電流Ioutの値は(3)式と同じになる。従って、参照電流Irefの値と出力電流Ioutの値とを比較すれば、DNAハイブリダイゼーションを検出できる。さらに、(3)式の値からβの値を求めれば、β=Cs/(Cs+Cr+Cg)であるから、βの値からCsの値を求めることができる。ように、キャパシタCsの値が極微小であったとしても、ΔVatの値を適当な値に調整することで、出力電流Ioutの利得を適度な範囲に調整することができ、高精度なセンシングを可能にできる。
【0063】
尚、プレセンシングステージTs1は必ずしも必須ではなく、補償ステージTp終了後、直ちにセンシングステージTs2に移行してもよい。
【0064】
<発明の実施の形態3>
図13は第3実施形態におけるセンサセル10の回路構成図である。同図において、トランジスタTr5及びTr6は各々のゲート電極同士及びソース電極同士が接続しており、カレントミラー回路を構成している。カレントミラー回路においては、ミラーをなす一対のトランジスタを流れる電流比は利得係数の比に等しい。このため、トランジスタTr5及びTr6のチャネル長、チャネル幅、ゲート酸化膜容量等のデバイスパラメータを適当に設計することで、両者の電流比をk:1とすることができる。図中、スイッチングトランジスタTr1〜Tr4、キャパシタCs、及び参照キャパシタCrの各々の動作は実施形態2と同じであり、詳細な説明は省略する。また、トランジスタTr5及びTr6はpチャンネル型FETである。
【0065】
上記の構成において、補償ステージTpにおけるセンサセル10の等価回路は図11と同じ構成になり、プレセンシングステージTs1及びセンシングステージTs2におけるセンサセル10の等価回路は図12と同じ構成になる(但し、本実施形態においては、図12に記載のトランジスタTr5をトランジスタTr6に置き換えた構成となる。)。ここで、k>1となるようにトランジスタTr5及びTr6の利得係数を設定すれば、補償期間におけるトランジスタTr5による参照キャパシタCrへの電荷の蓄積を高速に行うことができ、補償期間を短縮することができる。つまり、高精度なセンシングを高速に行うことが可能となる。これとは逆にk<1とすれば、トランジスタTr6から出力される出力電流Ioutの値を増幅できるため、キャパシタCsの高感度検出が可能となる。
【0066】
<発明の実施の形態4>
これまで、トランジスタの特性ばらつきの補償を行う実施形態について述べたが、トランジスタの特性ばらつきが無視できるような測定、あるいは、トランジスタの特性ばらつきが十分小さい場合は、図14に示したような回路を用いることができる。以下、具体的に述べる。
【0067】
センサセル10は、スイッチングトランジスタTr1及びTr2と、センシング用のトランジスタTr3と、DNAハイブリダイズに起因して容量値が変化するキャパシタCsと、一定の容量値を有する参照キャパシタCrとを備えて構成されている。一方、単位ドライバ21は、電流検出回路22と電圧源24とを備えて構成されている。トランジスタTr3のソース端子には同トランジスタがピンチオフ領域で動作するために必要かつ十分な電圧が定電圧源Vddから供給されている。
【0068】
参照キャパシタCrはトランジスタTr3のゲート端子とソース端子間に介在しているが、トランジスタTr3のMOSキャパシタ容量が十分な大きさである場合には、参照キャパシタCrは必ずしも必須ではない。キャパシタCsの一方の電極は、複数の出力端子、すなわち、低電圧出力端子Lと高電圧出力端子Hとの間で切り換え接続可能であり、他方の電極はトランジスタTr3のゲート端子及びトランジスタTr1のドレイン端子に接続している。スイッチングトランジスタTr1は電圧源24からの電圧信号をキャパシタCsと参照キャパシタCrとの各々に書き込むためのスイッチング素子であり、スイッチングトランジスタTr2はトランジスタTr3の出力電流を電流検出回路22に出力するためのスイッチング素子である。
【0069】
図15はセンサセル10を駆動するための各種信号のタイミングチャートである。同図において、TDは参照キャパシタCr及びキャパシタCsに所定の信号を書き込むための信号書き込みステージ、TsはキャパシタCsの容量を検出するためのセンシングステージである。信号書き込みステージTDにおいて、サブ走査線S1,S2の信号をHレベルに立ち上げる一方、キャパシタCsを高電圧出力端子Hに接続し、電圧源24からの出力電圧VintをキャパシタCs及び参照キャパシタCrに印加する。これにより、参照キャパシタCr及びキャパシタCsには所定の電圧が書き込まれ、トランジスタTr3のチャネルにはゲート電位に対応したドレイン電流が出力される。
【0070】
続いて、センシングステージTsに移行し、サブ走査線S1の信号のHレベルからLレベルに立ち下げ、トランジスタTr1をオンからオフに遷移させる一方、電圧源24の出力を停止する。さらに、キャパシタCsを低電圧出力端子Lに接続することによって、トランジスタTr3のゲート電位を下げる。このときのゲート電位の変化量ΔVgsは、高電圧出力端子Hと低電圧出力端子Lとの電位差をΔVdifとし、トランジスタTr3のMOSキャパシタ容量を無視すれば、容量分割により、ΔVgsは下式のようになる。
ΔVgs=CsΔVdif/(Cs+Cr) …(4)
トランジスタTr3がピンチオフ領域で動作する場合には、ドレイン電流とゲート電位とは1対1の関係にあるため、トランジスタTr3の出力電流を測定すすることにより、(4)式からキャパシタCsの容量値を求めることができる。このように、本実施形態によれば、トランジスタのゲート電位を容量カップリングにより調整することで、センサの検出感度を高めることができるとともに、回路構成を比較的簡単にすることができるため、低コストでバイオチップを作製することができる。
【0071】
上述の実施形態において、上記の容量素子やキャパシタを圧電素子としてもよい。この場合、例えば、容量素子を構成する2つの電極の間に圧電薄膜を形成すればよい。圧電素子を用いれば、例えば、物体の形状や指紋等の認識装置として利用できる。上述の実施形態において、参照キャパシタCrと測定用容量素子Csとの接続関係を逆にしてもよい。つまり、参照キャパシタCrを介して電流の利得を調整してもよい。さらに、図16に示したように、被検査体50と容量検出用電極51との間に測定用容量素子Csを構成してもよい。例えば、指紋認識などに用いる場合、被検査体50は指先ということになる。このような場合、参照キャパシタCrを介して、電流の利得を調整することが望ましい。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、可変電圧源の電圧変化量を基に出力電流レベルの利得を調整できるため、微量な生化学反応を高精度に検出することができる。つまり、可変電圧を所望の電圧に調整することで、センサの検出感度を好適な範囲に設定できるため、感度調整が可能となる。また、本発明によれば、FETの閾値電圧のばらつきを補償することができるため、センサセル毎にばらつきのない高精度なセンシングを可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバイオセンサの回路構成図である。
【図2】 DNAハイブリダイゼーションを検出する反応ウェルの説明図である。
【図3】 実施形態1におけるセンサセルの回路構成図である。
【図4】 実施形態1におけるセンサセルの各種制御信号のタイミングチャートである。
【図5】 センサセルの等価回路図である。
【図6】 センサセルの等価回路図である。
【図7】 センサセルの等価回路図である。
【図8】 センサセルの等価回路図である。
【図9】 実施形態2におけるセンサセルの回路構成図である。
【図10】 実施形態2におけるセンサセルの各種制御信号のタイミングチャートである。
【図11】 センサセルの等価回路図である。
【図12】 センサセルの等価回路図である。
【図13】 実施形態3におけるセンサセルの回路構成図である。
【図14】 実施形態4におけるセンサセルの回路構成図である。
【図15】 実施形態4におけるセンサセルの各種制御信号のタイミングチャートである。
【図16】 他の実施形態におけるセンサセルの回路構成図である。
【符号の説明】
10…センサセル 11…アレイ基板 20…Xドライバ 21…単一ドライバ22…電流検出回路 23…定電流源 24…電圧源 30…Yドライバ 40…反応ウェル 41,42…電極 43…プローブ
Claims (10)
- トランジスタと前記トランジスタの電流制御端子に接続された第1の容量素子とを備えた電子回路の駆動方法であって、
前記トランジスタの第1の端子と前記トランジスタの電流制御端子とを電気的に接続した状態で、前記トランジスタのチャネルに流れる電流を前記電流制御端子に供給して前記トランジスタをオフ状態とする第1のステップと、
前記電流制御端子と前記第1の端子との電気的接続を切断する第2のステップと、を含み
前記第1のステップの後に前記第2のステップは行われ、
前記第2のステップにより前記電流制御端子と前記第1の端子との電気的接続を切断した状態で、前記第1の容量素子に電圧レベルが第1の電圧レベルから第2の電圧レベルに変化する電圧信号を供給することにより、前記トランジスタの前記第1の端子と第2の端子との間にチャネルを介して電流を流すこと、
を特徴とする電子回路の駆動方法。 - トランジスタと前記トランジスタの電流制御端子に接続された第1の容量素子とを備えた電子回路の駆動方法であって、
前記トランジスタの第1の端子と前記トランジスタの電流制御端子とを電気的に接続した状態で、前記トランジスタのチャネルに流れる電流を前記電流制御端子に供給して前記トランジスタをオフ状態とする第1のステップと、
前記電流制御端子と前記第1の端子との電気的接続を切断する第2のステップと、を含み
前記第1のステップの後に前記第2のステップは行われ、
前記第2のステップにより前記電流制御端子と前記第1の端子との電気的接続を切断した状態で、前記第1の容量素子に電圧レベルが第1の電圧レベルから第2の電圧レベルに変化する電圧信号を供給することにより、前記トランジスタの前記第1の端子と第2の端子との間にチャネルを介して流れる電流を出力電流として検出すること、
を特徴とする電子回路の駆動方法。 - 前記第1の電圧レベルと前記第2の電圧レベルとの差を調整することにより、前記出力電流の電流レベル又は電流量の利得を調整する、請求項2に記載の電子回路の駆動方法。
- 前記第1の容量素子は、物質を担持することにより容量値が変化する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子回路の駆動方法。
- 前記第1の容量素子は、前記物質を担持する受容体を含んで構成される、請求項4に記載の電子回路の駆動方法。
- 前記物質は蛋白質或いは核酸である、請求項4又は請求項5に記載の電子回路の駆動方法。
- 前記第1の容量素子又は前記第2の容量素子は、前記第1の容量素子又は前記第2の容量素子の、前記電流制御端子に接続する電極と物体又は物質とから構成される、請求項4に記載の電子回路の駆動方法。
- 被検査体と少なくとも1つの容量検出用電極との間に生ずる容量を検出するための電子回路の駆動方法であって、
前記少なくとも1つ容量検出用電極のうち一つの容量検出用電極に電流制御端子が接続されたトランジスタの前記電流制御端子とドレインとを電気的に接続することにより前記トランジスタの特性を補償し、
前記トランジスタの前記電流制御端子と前記ドレインとを電気的に切り離した状態で、前記電子回路を通過する電流の電流量を計測する際に、前記電流制御端子の電圧値に応じた電流レベルを有する電流を前記トランジスタに通過させることを特徴とする、電子回路の駆動方法。 - 請求項8に記載の電子回路の駆動方法において、
前記電流レベルの調整は、前記電流制御端子に接続された参照用容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことを特徴とする、電子回路の駆動方法。 - 請求項8に記載の電子回路の駆動方法において、
前記被検査体と前記少なくとも1つの容量検出用電極とにより構成される容量素子を介した容量カップリングにより前記電流制御端子の電圧値を設定することにより行うことを特徴とする、電子回路の駆動方法。
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