JP4407698B2 - 液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドの製造方法に係り、特に、共通液体室から圧力室を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を形成する流路ユニットを備え、ノズル開口から液体を液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴として吐出させる液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられるインクジェット式記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等がある。
このような液体噴射ヘッドには種々の形式があるが、例えば、インクジェット式記録装置(以下、単にプリンタという)におけるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)は、複数のノズル開口が開設されたノズル基板、共通インク室から圧力室を通ってノズル開口に至る一連のインク流路を区画する圧力室空部や溝部などの流路部が形成された流路基板、圧力発生手段(例えば、圧電振動子)の作動に応じて圧力室に対応するダイヤフラム部が弾性変形する弾性板(流路基板の開口を封止する封止板とも言える)を積層してなる流路ユニットを備え、これをヘッドケースに固定している。流路ユニット構成部材のうち、上記流路基板は、記録画像の高密度化や記録動作の高速化に対応すべく、高い加工密度や加工精度が要求される。そのため、この流路基板の材料としては、異方性エッチング等によって微細な形状を寸法精度良く形成可能なシリコン単結晶性基材(シリコンウェハー)などの結晶性基材が好適に用いられる。
そして、この記録ヘッドにおいて、精度の高い吐出制御を行うためには、上記の複数の構成部材を正確に位置決めして組み付けることが重要となる。そのため、この種の記録ヘッドでは、流路ユニット構成部材やヘッドケースに位置決めの基準となる貫通穴を2箇所設け、この貫通穴に位置決めピンを通すことで各部材の相対位置を規定した状態で、各構成部材を積層して組み付けている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−30490号公報
ところで、流路基板が上記のように結晶性基材によって作成される場合、この流路基板の貫通穴は、圧力室空部等と同様にエッチングによって開設される。この場合において、流路基板の貫通穴同士の間隔とヘッドケースの貫通穴同士の間隔との間に誤差がある場合、この誤差によって位置決めピンを介して流路基板に対して機械的ストレスがかかり、これにより流路基板にひびや割れが生じる虞があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ひびや割れなどを防止しつつヘッド構成部材の相対位置を精度良く合わせることが可能な液体噴射ヘッドの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、圧力室となる圧力室空部を列設してなる圧力室空部列を含む流路部が形成された流路基板、複数のノズル開口が圧力室毎に対応して開設されたノズル基板、及び、流路基板の流路部の開口を封止する封止板から構成され、流路基板の一方の面にノズル基板を、他方の面に封止板をそれぞれ接合することで、共通液体室から圧力室を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を形成する流路ユニットと、
前記流路ユニットを固定するヘッドケースとを備え、
流路部形成領域よりも外側のフレーム領域において、圧力室空部列方向の一側に第1基準穴と第2基準穴を、圧力室空部列方向の他側に第3基準穴と第4基準穴を、それぞれ開設し、
前記第1基準穴、前記第2基準穴、及び前記第4基準穴の平面視における開口形状を、開口の辺の長さが等しい菱形に構成し、これらの基準穴に内接する仮想的な内接円の直径が、第1ケースピン、第2ケースピン、及び位置決めピンの直径d1となるように各辺の寸法を設定し、
前記第3基準穴の平面視における開口形状を、開口の辺の長さが異なる平行四辺形に構成し、当該第3基準穴の平行四辺形を構成する辺のうち、圧力室空部列方向において互いに向き合う二辺の寸法を他の基準穴の各辺の寸法に揃え、残りの二辺の寸法を他の基準穴の各辺の寸法よりも長くし、
前記ノズル基板及び前記封止板において、前記流路基板の第1基準穴、第2基準穴、第3基準穴、及び第4基準穴にそれぞれ対応する位置に、第1貫通穴、第2貫通穴、第3貫通穴、及び第4貫通穴を開設し、第2貫通穴と第4貫通穴のうちの一方の貫通穴の平面視における開口形状を、直径がd1の円形に構成し、他方の貫通穴の平面視における開口形状を、前記一方の貫通穴の開口形状を両貫通穴の並び方向に拡大した形状の長穴に構成し、第1貫通穴及び第3貫通穴の平面視における開口形状を、d1より大きい直径の円形に設定した液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記ヘッドケースの流路ユニット取付面において、流路基板の第1基準穴に対応する位置には第1ケースピンを、第3基準穴に対応する位置には第2ケースピンをそれぞれ突設し、
第2基準穴と第2貫通穴を重合すると共に第4基準穴と第4貫通穴を重合して位置決めピンをそれぞれ挿通することにより、第2基準穴と第4基準穴を基準としてノズル基板、流路基板、及び封止板の相対位置を規定し、
相対位置を規定した状態でノズル基板、流路基板、及び封止板を接合した後、位置決めピンを各穴から取り外し、第1基準穴及び第1貫通穴には第1ケースピンを、第3基準穴及び第3貫通穴には第2ケースピンをそれぞれ挿通して、相対位置を規定した状態で流路ユニットをヘッドケースの流路ユニット取付面に固定したことを特徴とする。
上記構成によれば、第2基準穴と第2貫通穴を重合すると共に第4基準穴と第4貫通穴を重合して位置決めピンをそれぞれ挿通することにより、第2基準穴と第4基準穴を基準としてノズル基板、流路基板、及び封止板の相対位置を規定してノズル基板、流路基板、及び封止板を接合した後、位置決めピンを各穴から取り外し、第1基準穴及び第1貫通穴には第1ケースピンを、第3基準穴及び第3貫通穴には第2ケースピンをそれぞれ挿通して、相対位置を規定した状態で流路ユニットをヘッドケースの流路ユニット取付面に固定することにより、流路基板に機械的ストレスを与えることなく、相対位置を精度良く規定した状態で各部材同士を組み付けることが可能となる
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式プリンタ(以下、プリンタと略記する)を例示する。
プリンタ1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2が取り付けられると共に、インクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、記録ヘッド2が搭載されたキャリッジ4を記録紙6(吐出対象物の一種)の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、紙幅方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8等を備えて概略構成されている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)であり、紙送り方向とは、副走査方向(即ち、ヘッド走査方向に直交する方向)である。なお、インクカートリッジ3としては、キャリッジ4に装着するタイプを採用しても良いし、プリンタ1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプを採用することも可能である。
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダ10によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御することができる。
また、記録ヘッド2の移動範囲内であってプラテン5よりも外側には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャッピング機構11が設けられている。このキャッピング機構11は、キャップ部材11´によって記録ヘッド2のノズル形成面を封止し、ノズル開口19(図2参照)からのインク溶媒の蒸発を防止する。また、このキャッピング機構11は、封止状態のノズル面に負圧を与えてノズル開口19からインクを強制的に吸引排出するクリーニング動作に用いられる。
また、ホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面を払拭するためのワイピング機構12が配設されている。このワイピング機構12は、例えばエラストマーなどの弾性を有する素材からなるワイパーブレード12′を備え、記録ヘッド2がワイピング機構12の上方を通過する際にワイパーブレード12′の上端部が記録ヘッド2のノズル形成面に接触可能な位置(ワイピング位置)に移動するように構成されている。そして、ワイパーブレード12′の上端部が記録ヘッド2のノズル形成面に接触した状態で記録ヘッド2が移動すると、ワイパーブレード12′によって記録ヘッド2のノズル形成面が払拭(ワイピング)される。これにより、例えばクリーニング処理後にノズル形成面に付着した余分なインク滴を取り除くことができる。
図2は、記録ヘッド2の構成を説明する要部断面図、図3は、流路ユニット18とヘッドケース24の分解斜視図である。本実施形態における記録ヘッド2は、複数の圧電振動子15を備えたアクチュエータユニット16、共通インク室20(共通液体室)からインク供給口21及び圧力室22を通ってノズル開口19に至る一連のインク流路(液体流路の一種)を形成する流路ユニット18、及び、ヘッドケース24などを備えて概略構成されている。
ヘッドケース24は中空箱体状のケーシングであり、その内部には、インクカートリッジ3からのインクを共通インク室20側に導入するための流路であるケース流路31と、各アクチュエータユニット16を個別に収容する収容室32とが形成されている。このヘッドケース24は、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂によって成型されており、流路取付面(本発明における流路ユニット取付面に相当)に流路ユニット18が固定される。また、ヘッドケース24の内部には、図3に示すように、ピン保持部34a,34bがケースの高さ方向を貫通して合計2箇所形成されている。これらの第1ピン保持部34a,第2ピン保持部34bは、それぞれ第1ケースピン35a,第2ケースピン35bを保持するための空部であり、ケースピン35の直径より極く僅かに大きい内径に設定された円筒形状に形成されている。本実施形態においては、第1ピン保持部34aは流路基板40に開設された第1基準穴52a(図4参照)に対応する位置に、他方の第2ピン保持部34bは流路基板40に開設された第3基準穴52cに対応する位置に、それぞれ設けられている。各ケースピン35a,35bは、先端部を流路取付面から突出させた状態でピン保持部34a,34bに植設されて保持される。各ケースピン35a,35の直径は、後述する基準穴52a,52b,52dの内接円Cvの直径d1に揃えられている(図6)。なお、流路ユニット18とヘッドケース24との位置決めについては後述する。
上記のアクチュエータユニット16は、圧力発生手段としての圧電振動子15と、この圧電振動子15が接合される固定板37と、圧電振動子15に配線基板(図示せず)からの駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル38等から構成される。各圧電振動子15は、自由端部が固定板37の先端面よりも外側に突出した所謂片持ち梁の状態で、ステンレス鋼などの金属製板材からなる固定板37上に取り付けられている。なお、圧力発生手段としては、上記圧電振動子以外にも、静電アクチュエータ、磁歪素子、発熱素子等を用いることができる。
流路ユニット18は、振動板39、流路基板40、及びノズル基板41からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接合して一体化することにより作製されている。この流路ユニット18における圧力室22は、ノズル開口19の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室20は、インク導入針13側からのインクが導入される室である。そして、この共通インク室20に導入されたインクは、インク供給口21を通じて各圧力室22に分配供給されるようになっている。
流路ユニット18の底部に配置されるノズル基板41は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口19を、副走査方向に列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板41は、ステンレス鋼の板材によって作製され、ノズル開口19の列(ノズル列)が、記録ヘッド1の走査方向(主走査方向)に複数並べて設けられている。そして、1つのノズル列は、例えば180個のノズル開口19によって構成される。
図4は、流路基板40の構成を説明する平面図、図5は、流路基板40の基材であるシリコンウェハーの平面図である。本実施形態における流路基板40は、インク流路となる流路部43、具体的には、共通インク室20となる開口部44、インク供給口21となる溝部、及び、圧力室22となる圧力室空部45が区画形成された板状の部材である。この流路基板40は、図5に示すように結晶性基材の一種であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。
上記シリコンウェハーは、例えば、表面が結晶方位面(110)面に設定されたシリコン単結晶基板である。このシリコンウェハーの表面上には、流路基板40となる基板領域40´が、切断予定線によって複数(本実施形態では12箇所)区画されており、各基板領域40´には、上記流路部43(図5では省略)と後述する基準穴が異方性エッチングによって形成されている。また、切断予定線上には、同じく異方性エッチングによって小さな貫通孔が複数穿設されてブレイクパターンが形成されている。このブレイクパターンが形成されている部分は他の部分よりも脆弱となっており、シリコンウェハーに外力を加えるとブレイクパターンの形成部分が破断し、個々の流路板40に分割されるようになっている。
流路基板40は一側の長辺(図4において右側の長辺)の隅角部を切り欠いた略矩形状に設計されている。そして、図5に示すようにシリコンウェハーにおいて最も外側に位置する基板領域40′は、切り欠き部分Cがシリコンウェハーの円周に沿うような姿勢で配置され、1つのシリコンウェハーから流路基板40をできるだけ多く切り出せるようなレイアウトとなっている。また、流路基板40の(110)面(表面)上であって、この(110)面に直交する第1(111)面(本発明における第1結晶方位面に相当)の垂直軸方向に圧力室空部45を列設して圧力室空部列46が形成されている。各圧力室空部45は、ノズル基板41の各ノズル開口19にそれぞれ対応している。また、圧力室空部列46は、第1(111)面方向にノズル列毎に対応して複数(図4の例では2列)並設されている。
上記の振動板39は、図2に示すように、ステンレス鋼等の金属製の支持板39a上にPPS樹脂等の弾性フィルム39bをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板39において圧力室22に対応する部分には、圧電振動子15の自由端部の先端を接合するための島部48が形成されており、この部分がダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板39は、圧電振動子15の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。また、振動板39は、流路基板40の共通インク室20の開口部分を封止してコンプライアンス部49としても機能する。このコンプライアンス部49に相当する部分については支持板39aを除去して弾性フィルム39bだけにしている。なお、この振動板39は、流路基板40に形成された流路部43の開口面を封止する封止板と言うこともできる。
ここで、上記の流路基板40において、流路部43の形成領域(流路部形成領域)よりも外側の領域であるフレーム領域51には、図4に示すように、振動板39及びノズル基板42やヘッドケース24との相対位置を規定するための基準穴52が合計4箇所開設されている。具体的には、図4においてフレーム領域51の左上に配置された第1基準穴52aと、フレーム領域51の右上に配置された第2基準穴52bと、フレーム領域51の左下に配置された第3基準穴52cと、フレーム領域51の右下に配置された第4基準穴52dとが開設されている。即ち、圧力室空部列方向の一側には第1基準穴52aと第2基準穴52bが、圧力室空部列方向の他側には第3基準穴52cと第4基準穴52dが、それぞれ開設されている。
なお、第2基準穴52bと第4基準穴52dは、右上と右下の隅角部が切り欠かれているため切り欠き部分Cを避けるようにして圧力室空部列設方向のやや内側寄りに形成されている。そのため、第1基準穴52aの中心と第3基準穴52cの中心との間の穴間距離L1が、第2基準穴52bの中心と第4基準穴の中心52dとの間の穴間距離L2よりも長くなっている。これらの穴間距離L1,L2は、圧力室空部列46の全長以上に設定されていることが望ましい。これは、位置決めする際に基準となる穴同士の穴間距離が長いほど位置決め精度が向上するからである。
図6(a)に示すように、第1基準穴52a、第2基準穴52b、及び第4基準穴52dは、第1(111)面と、この第1(111)面に70.53°で斜めに交差すると共にシリコンウェハー表面(流路基板40の表面)に直交する第2(111)面(本発明における第2結晶方位面に相当)とにより、辺の長さが等しい多角形、本実施形態においては4辺の長さが等しい菱形状に構成されている。これらの基準穴52a,52b,52dの寸法に関し、向かい合う辺同士の垂直距離がd1となるように定められている。換言すると、基準穴52a,52b,52dに内接する仮想的な内接円Cvの直径がd1となるように穴の寸法が定められている。この内接円Cvの直径d1は、後述する治具56の位置決めピン57の直径、及び、上記のケースピン35の直径に揃えられている。
また、図6(b)に示すように、第3基準穴52cは基準穴52a,52b,52dとは形状が異なっており、辺の長さが異なる多角形、本実施形態においては、第1(111)面を短辺とし、第2(111)面を長辺とする平行四辺形状の長穴に構成されている。この第3基準穴52cの短辺の寸法は、基準穴52a,52b,52dの各辺の寸法に揃えられている。詳しくは、向かい合う長辺同士の垂直距離がd1となっている。一方、向かい合う短辺同士の垂直距離は、d1よりも長いd2に設定されている。このように、流路基板40の4つの基準穴52のうち、第3基準穴52cのみが、第2(111)面方向に長尺な長穴となっている。そして、第1基準穴52aと第3基準穴52cは、流路ユニット18とヘッドケース24の位置決めをする際に用いられる基準穴であり、また、第2基準穴52bと第4基準穴52dは、流路ユニット18の各構成部材間の位置決めに用いられる基準穴である。
一方、図3に示すように、振動板39及びノズル基板41において流路基板40の各基準穴52に対応する位置には、それぞれ貫通穴53,54が開設されている。即ち、振動板39において、流路基板40の第1基準穴52aに対応する位置には第1貫通穴53aが、第2基準穴52bに対応する位置には第2貫通穴53bが、第3基準穴52cに対応する位置には第3貫通穴53cが、第4基準穴52dに対応する位置には第4貫通穴53dが開設されている。同様に、ノズル基板41において、第1基準穴52aに対応する位置には第1貫通穴54aが、第2基準穴52bに対応する位置には第2貫通穴54bが、第3基準穴52cに対応する位置には第3貫通穴54cが、第4基準穴52dに対応する位置には第4貫通穴54dが開設されている。
各貫通穴53,54のうち、第2貫通穴53b,54bは、直径がd1に設定された真円の穴に構成されている。また、第4貫通穴53d,54dは、直径d1の真円を第2貫通穴と第4貫通穴の並び方向に拡大したような形状の長穴に構成されている。即ち、第4貫通穴53d,54dにおける第2貫通穴53b,54bとの並び方向の内寸は、上記内接円Cvの直径d1よりも長く設定されている。なお、第4貫通穴53d,54dを真円形状とし、第2貫通穴53b,54bを長穴形状とすることもできる。さらに、第1貫通穴53a,54aと、第3貫通穴53c,54cは、図6に示すように、内接円Cvの直径d1よりも大きい直径に設定されている。
これらの流路ユニット構成部材を接合する際には、図7に示すように、治具56上に各構成部材を順次積層するようになっている。この治具56の流路ユニット載置面56′において、上記の第2基準穴52b及び第2貫通穴53b,54bに対応する位置には第1位置決めピン57aが、第4基準穴52d及び第4貫通穴53d,54dに対応する位置には第2位置決めピン57bが、それぞれ立設されている。この位置決めピン57は、例えばステンレス鋼などの金属によって作製されており、その直径dpは、基準穴52a,52bの内接円Cvの直径d1に揃えられている(正確には、d1よりも僅かに(基準穴・貫通穴への挿入が容易で、尚且つ、これらの穴との間でガタツキが生じ難い程度に)小さく設定されている)。また、この位置決めピン57は、基端部分にフランジ部58を側方(ピン直径方向)に向けて延出している。そして、治具56には保持空部59が形成されており、位置決めピン57の本体部分を流路ユニット載置面56′に対して垂直に突出する状態で保持空部内にフランジ部58を保持している。この保持空部59の深さの寸法は、フランジ部58の厚さと同程度に揃えられているのに対し、保持空部59の幅は、保持状態における位置決めピン57の本体根本部分とフランジ部58の側方に若干のクリアランスを形成するような寸法に定められている。これにより、位置決めピン57は、流路ユニット載置面56′に対する垂直姿勢を保ったまま側方にスライドすることができるようになっている。
本実施形態においては、まず、第1位置決めピン57aを第2貫通穴54bに、第2位置決めピン57bを第4貫通穴54dにそれぞれ挿通した状態で、治具56の流路ユニット載置面56′上にノズル基板41を積層する。次に、第1位置決めピン57aを第2基準穴52bに、第2位置決めピン57bを第4基準穴52dにそれぞれ挿通し、接着剤を間に介在させた状態でノズル基板41の上に流路基板40を載置する。そして、第1位置決めピン57aを第2貫通穴53bに、第2位置決めピン57bを第4貫通穴53dにそれぞれ挿通し、接着剤を間に介在させた状態で流路基板40上に振動板39を載置する。
このようにして、ノズル基板41、流路基板40、及び振動板39の相対位置が規定された状態で相互を接合して流路ユニット18がアセンブリ化される。この際、第2基準穴52bと第4基準穴52dとの間隔に応じて位置決めピン57がスライドするので、流路基板40に対して機械的ストレスを与えることなく位置決めを行うことができる。また、本実施形態においては、振動板39の第4貫通穴53dと、ノズル基板41の第4貫通穴54dをそれぞれ長穴としているので、流路基板40における第2基準穴52bと第4基準穴52dとの穴間距離に対して、振動板39における第2貫通穴53bと第4貫通穴53dとの穴間距離、或いは、ノズル基板41における第2貫通穴54bと第4貫通穴54dとの穴間距離に誤差がある場合には、位置決めピン57の間隔を第2基準穴52bと第2基準穴52dの間隔に合わせた上で、長穴と第2位置決めピン57bとの間に形成される隙間によって上記の誤差を吸収することができる。したがって、流路ユニット構成部材の相対位置は、流路基板40の第2基準穴52bと第4基準穴52dを基準として定められる。
このように、第2基準穴52bと第2貫通穴53b,54bを重合すると共に第4基準穴52dと第4貫通穴53d,54dを重合して位置決めピン57をそれぞれ挿通することにより、第2基準穴52bと第4基準穴52dを基準として流路ユニット18の各構成部材の相対位置を規定するので、流路基板40に対して機械ストレスを与えることなく精度良く位置決めを行うことが可能となる。
治具56上で各構成部材を積層し、部材間の接着剤を硬化させたならば、次に、各位置決めピン57を流路ユニット構成部材の各穴52b,52d,53b,53d,54b,54dから取り外し(即ち、流路ユニット18を治具56から取り外し)、振動板側をヘッドケース24に向けた姿勢で、流路ユニット18をヘッドケース24の流路取付面に接合する。この際、第1基準穴52a及び第1貫通穴53a,54aに第1ケースピン35aを挿入し、第3基準穴52c及び第3貫通穴53c、54cに第2ケースピン35bをそれぞれ挿通することにより、流路ユニット18とヘッドケース24の相対位置を規定した状態で流路ユニット18を流路取付面(図示せず)に固定する。
ヘッドケース24と流路ユニット18との位置決めでは、第3基準穴52cを長穴とし、第3貫通穴53c、54cの直径をケースピン35の直径(内接円Cvの直径)よりも大きく設定して第3基準穴52c及び第3貫通穴53c、54cと第2ケースピン35bとの間に間隙が形成されるようにしているので、第1基準穴52a,52cの穴間距離と位置決めピン57a,35bのピン間距離(ヘッドケース24のピン保持部34a,34bの距離)との間に誤差がある場合においても、この間隙によって誤差を吸収することができる。これにより、流路基板40にひびや割れを生じさせることなく、精度良く位置決めした状態で流路ユニット18をヘッドケース24に接合することが可能となる。
ここで、本実施形態では、長穴である第3基準穴52cが第1基準穴52aとの並び方向に対して斜め(第2(111)面方向)に長尺となっているため、この第3基準穴52cの中心と位置決め状態における第2ケースピン35bの中心軸とがずれた場合、流路ユニット18がヘッドケース24に対して第1ケースピン35aを中心とした回転方向に位置ずれする可能性がある。しかしながら、流路ユニット18とヘッドケース24との間で求められる位置精度は、流路ユニット構成部材間で求められる位置精度ほど高くないため上記の位置ずれは許容される。また、図4に例示した流路基板40の形状において、第1基準穴52aと第3基準穴52cとの穴間距離L1が、第2基準穴52bと第4基準穴の中心52dとの穴間距離L2よりも長くなるように各基準穴をレイアウトしているため、上記の位置ずれによる悪影響を最小限に抑えることができる。
なお、本実施形態においては、フレーム領域51のスペースの関係やキャッピング機構によってノズル形成面を封止したときの密閉性を考慮して、各基準穴52を流路基板40の4隅に配置しているが、フレーム領域51が十分に広くキャッピング時の密閉性が確保できる場合には第1基準穴52aと第3基準穴52cを第2(111)面方向に沿って配置することにより、流路ユニット18の第1ケースピン35aを中心とした回転方向の位置ずれを防止することができる。
以上のように、上記記録ヘッド2では、流路基板40の第2基準穴52b及び第4基準穴52dを基準としてノズル基板39、流路基板40、及び封止板41の位置決めをし、また、第1基準穴52a及び第1貫通穴53a,54aに第1ケースピン35aを、第3基準穴52c及び第3貫通穴53a,54aに第2ケースピン35bをそれぞれ挿通し、各ケースピン35を基準として流路ユニット18とヘッドケース24の位置決めを行うので、流路基板40に機械的ストレスを与えることなく、相対位置を精度良く規定した状態で各部材同士を組み付けることが可能となる。
また、ヘッドケース24との位置決め用の穴を、流路ユニット構成部材間の位置決め用の穴とは別個独立させたので、第1貫通穴53a,54aおよび第3貫通穴53c,54cの直径を上記内接円Cvよりも大きく設定することができ、基準穴52a,52cの開口部における振動板39又はノズル基板41のはみ出し部分を小さくすることができる。これにより、ケースピン35の挿通性を向上させることができる。また、ケースピン35を挿通させる際に、ケースピン35がはみ出し部分に接触して、このはみ出し部分が欠けたりする等の不具合を防止することができる。
上記のようにして組み上がった状態の記録ヘッド2において、第1基準穴52a(第1貫通穴53a,54a)と第3基準穴52d(第3貫通穴53c,54c)の開口内にはケースピン35が挿入されているのに対し、第2基準穴52b(第2貫通穴53b,54b)と第4基準穴52d(第4貫通穴53d,54d)の開口内は空部となっているため、この空部内にインクなどが入り込みやすい。このため、この記録ヘッド2をプリンタ1に取り付ける際に、ワイピング機構12によるワイピング方向の上流側に第2基準穴52bと第4基準穴52dが配置されると、ワイピング時のワイパーブレード12′が空部内に溜まっていたインクをノズル形成面側に引き延ばしてしまい、余計にノズル形成面が汚れてしまう虞がある。この点を考慮し、記録ヘッド2は、ワイピング機構12によるノズル形成面に対するワイピング方向の下流側に第2基準穴52bと第4基準穴52dが配置されるような姿勢でプリンタ1に搭載される。これにより、ワイピング時にワイパーブレード12′が開口内に溜まっていたインクをノズル形成面側に引き延ばしてノズル形成面を汚してしまうことを防止することができる。
また、上記プリンタ1は、構成部材を精度良く位置決めした状態で組み付けられた記録ヘッド2を搭載しているので、この記録ヘッド2による吐出動作(記録動作)時においては、ノズル開口19から規定量のインク滴を規定の速度で吐出することができ、吐出したインク滴を記録紙6に対してより高精度に着弾させることが可能となる。これにより、記録画像の品質を向上させることができる。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
例えば、流路基板40における各基準穴の形状に関し、上記実施形態では、第1(111)面と第2(111)面によって平行四辺形(菱形)状に構成した例を示したが、これには限らない。例えば、エッチング残りを利用して、六角形の穴に構成することもできる。
また、上記実施形態では、第2基準穴52bと第4基準穴52dを流路ユニット構成部材間の位置決め用の穴とし、第1基準穴52aと第3基準穴52cを流路ユニット18とヘッドケース24との間の位置決め用の穴とした例を示したが、これには限らない。例えば、第1基準穴52aと第4基準穴52dを流路ユニット構成部材間の位置決め用の穴とし、第2基準穴52bと第3基準穴52cを流路ユニット18とヘッドケース24との間の位置決め用の穴とする構成を採用することもできる。この構成によれば、位置決めする際の穴間距離をより長く確保することができるので、位置決め精度をより向上させることができる。要は、少なくとも長穴である第3基準穴52cを、流路ユニット18とヘッドケース24の位置決め用の穴のうちの一方とすれば良い。
また、以上では、本発明は、上記プリンタに限らず、他の液体噴射ヘッド及び液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置等にも適用することができる。
プリンタの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。 流路ユニットとヘッドケースの分解斜視図である。 流路基板の構成の一例を説明する平面図である。 シリコンウェハー上の基板領域のレイアウトの一例を説明する平面図である。 (a)は、第1基準、第2基準穴、及び第4基準穴の構成を説明する図、(b)は、第3基準穴の構成を説明する図である。 治具を用いて流路ユニット構成部材を積層する状態を説明する断面図である。
符号の説明
1…プリンタ,2…記録ヘッド,12…ワイピング機構,15…圧電振動子,16…アクチュエータユニット,18…流路ユニット,19…ノズル開口,22…圧力室,24…ヘッドケース,35a…第1ケースピン,35b…第2ケースピン,39…振動板,40…流路基板,41…ノズル基板,43…流路部,45…圧力室空部,46…圧力室空部列,51…フレーム領域,52a…第1基準穴,52b…第2基準穴,52c…第3基準穴,52d…第4基準穴,53a,54a…第1貫通穴,53b,54b…第2貫通穴,53c,54c…第3貫通穴,53d,54d…第4貫通穴,56…治具,57a…第1位置決めピン,57b…第2位置決めピン

Claims (1)

  1. 圧力室となる圧力室空部を列設してなる圧力室空部列を含む流路部が形成された流路基板、複数のノズル開口が圧力室毎に対応して開設されたノズル基板、及び、流路基板の流路部の開口を封止する封止板から構成され、流路基板の一方の面にノズル基板を、他方の面に封止板をそれぞれ接合することで、共通液体室から圧力室を通ってノズル開口に至る一連の液体流路を形成する流路ユニットと、
    前記流路ユニットを固定するヘッドケースとを備え、
    流路部形成領域よりも外側のフレーム領域において、圧力室空部列方向の一側に第1基準穴と第2基準穴を、圧力室空部列方向の他側に第3基準穴と第4基準穴を、それぞれ開設し、
    前記第1基準穴、前記第2基準穴、及び前記第4基準穴の平面視における開口形状を、開口の辺の長さが等しい菱形に構成し、これらの基準穴に内接する仮想的な内接円の直径が、第1ケースピン、第2ケースピン、及び位置決めピンの直径d1となるように各辺の寸法を設定し、
    前記第3基準穴の平面視における開口形状を、開口の辺の長さが異なる平行四辺形に構成し、当該第3基準穴の平行四辺形を構成する辺のうち、圧力室空部列方向において互いに向き合う二辺の寸法を他の基準穴の各辺の寸法に揃え、残りの二辺の寸法を他の基準穴の各辺の寸法よりも長くし、
    前記ノズル基板及び前記封止板において、前記流路基板の第1基準穴、第2基準穴、第3基準穴、及び第4基準穴にそれぞれ対応する位置に、第1貫通穴、第2貫通穴、第3貫通穴、及び第4貫通穴を開設し、第2貫通穴と第4貫通穴のうちの一方の貫通穴の平面視における開口形状を、直径がd1の円形に構成し、他方の貫通穴の平面視における開口形状を、前記一方の貫通穴の開口形状を両貫通穴の並び方向に拡大した形状の長穴に構成し、第1貫通穴及び第3貫通穴の平面視における開口形状を、d1より大きい直径の円形に設定した液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    前記ヘッドケースの流路ユニット取付面において、流路基板の第1基準穴に対応する位置には第1ケースピンを、第3基準穴に対応する位置には第2ケースピンをそれぞれ突設し、
    第2基準穴と第2貫通穴を重合すると共に第4基準穴と第4貫通穴を重合して位置決めピンをそれぞれ挿通することにより、第2基準穴と第4基準穴を基準としてノズル基板、流路基板、及び封止板の相対位置を規定し、
    相対位置を規定した状態でノズル基板、流路基板、及び封止板を接合した後、位置決めピンを各穴から取り外し、第1基準穴及び第1貫通穴には第1ケースピンを、第3基準穴及び第3貫通穴には第2ケースピンをそれぞれ挿通して、相対位置を規定した状態で流路ユニットをヘッドケースの流路ユニット取付面に固定したことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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