JP4407105B2 - 画像形成方法、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワックスを含有するトナー像を記録媒体に転写した後、記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱・加圧し、冷却した後に記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を記録媒体に転写及び定着させる定着方式を適用した画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスに用いるトナーは、一般的に、各種樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂等に、着色剤や帯電制御剤や離型剤を加えて溶融混練し、均一に分散せしめた後所定の粒度に粉砕して、更に、過剰な粗粉、微粉を分級機を用いて取り除く粉砕/分級法により製造されているが、最近の更なる高画質化の要求に伴い、トナーを更に小粒径化することが必要になってきた。これらに対応するため、樹脂の原料となる単量体と着色剤からなる油相を水相中に分散し、直接重合してトナー粒子を製造する方法も取られるようになった。また、省エネルギー化の要請から、より低温で定着できるように、樹脂もよりガラス転移点が低く、軟化点が低いものが使用されるようになってきた。
【0003】
フルカラー複写機、プリンターに搭載されるカラートナーは、定着工程で多色トナーが十分混合することが必要であり、色再現性やOHP画像の透明性が重要である。この混色性を高めるために、カラートナーは、一般的には、黒トナーと比べてシャープメルト性の低分子量樹脂で形成されている。このためオフセットが起こり易いという問題がある。従来、黒トナーにおいては、定着の耐オフセット性を得る為に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性が高く、比較的融点の高いワックスが使われているが、フルカラー用のカラートナーにおいては、OHP画像の透明性が損なわれるという理由からワックスを含まず、オフセットを防止するために、加熱定着ローラー表面をトナーに対する離型性に優れたシリコンゴムやフッ素樹脂で形成し、更にその表面にシリコーンオイル等の離型性液体を供給する方法がとられている。
【0004】
この方法はトナーのオフセット現象を防止する点では極めて有効であるが、オフセット防止液を供給するための装置が必要になる、出力された画像の加筆性が劣る、付箋紙や、粘着テープが着かない等の問題が発生する。また、オフセット防止液が加熱されて蒸発し不快臭を与えることや、機内の汚染を生じるといった問題もある。このため、トナー、特に、フルカラー用のカラートナーについては、低温定着性、シャープメルト性、小粒径などのカラートナーに求められる特性を損なうことなく、オイルレス化を図るため、低融点ワックスを含有するトナーが用いられている。
【0005】
ベルト状定着部材を用いる画像形成方法は、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写した後、前記ベルト状定着部材に記録媒体を重ねて加熱・加圧し、冷却した後、前記ベルト状定着部材から記録媒体を剥離して前記トナー像を記録媒体上に定着する方法であり、表面材料として、一般に弾性、耐熱性、トナーとの離型性等に優れたシリコーンゴムを用いたものが公知である。
【0006】
前記した画像形成方法では、一度溶融したトナー像を溶融点以下まで冷却してから剥離するため、記録媒体上のトナー像は、ベルト状定着部材の表面形状に習う。即ち、トナー像の表面は、型をとるように、ベルト状定着部材の表面形状を概略写し取ることになり、ベルト状定着部材表面が平滑ならば、トナー画像は非常に高光沢、即ちグロスが高くなり、一方、ベルト状定着部材表面が荒れていたり曇っていると、トナー画像のグロスは低くなる特性を有する。
【0007】
しかしながら、ワックスを含有するトナーと上記したベルト状定着部材を組合せた画像形成方法では、定着と剥離を繰り返すと供に、ベルト状定着部材上にワックスが残留し、残留したワックスに紙粉、トナーの外添剤などが、付着、混入し、ベルト状定着部材の表面性が変化し、出力された画像のグロスが変化し、欠陥として認識される問題が生ずる。
【0008】
表面にシリコーンゴム層を形成したものをベルト状定着部材として用いた場合、初期においては、問題の無い離型性が得られるものであったとしても、熱履歴、放電耐性、ワックスの残留、紙粉の付着等、理由は明確ではないが、離型性に経時変化が見られ、初期画質を維持したまま、所望の寿命を得るには、シリコーンゴムの特性だけで獲得することは困難であることが判明した。
【0009】
ところで、特許公報第2906972号は、定着ベルト(ベルト状定着部材)へのフルオロカーボンシロキサンゴムの使用を提案しているが、特定の現像剤(トナー)との組合せ関しては、何ら記述されておらず、また、記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体を定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させ加熱後冷却剥離型定着方式を適用した画像形成方法についても、何ら記述されていない。
【0010】
【特許文献1】
特許公報第2906972号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、ワックスを含有するオイルレストナーを使用して加熱後冷却剥離型定着方式で定着を行なった場合にも、ベルト状定着部材のワックスによる汚染を防止して、画像グロスの低下を抑制して画質の劣化を抑制し、長期間にわたって、高画質で、定着性に優れた画像が得られる画像形成方法及び画像形成装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、ワックスを含有するオイルレストナーを用い、ベルト型加熱後冷却剥離型定着方式で定着を行なうシステムについて鋭意研究した結果、ベルト状定着部材表面に対するワックスの付着状態が重要であることが見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、
【0013】
(1) トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記ベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmである
【0014】
(2) トナー像が転写された記録媒体を第一の定着部材により加熱及び加圧し、トナー像を定着させた前記記録媒体と第二のベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体を第二のベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記第二のベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0020】
(3) 前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層は、前記ベース層表面にシリコーンゴムの前駆体組成物を塗布し、硬化させることにより形成されてなり、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層は、前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層表面に、フルオロカーボンシロキサンゴムの前駆体組成物を塗布し、硬化させることにより形成されてなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の画像形成方法。
【0021】
(4) 前記フルオロカーボンシロキサンゴムが、主鎖にパーフルオロアルキルエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の画像形成方法。
【0022】
(5) 前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含むゴム層が、下記(A)〜(D)成分を有する前駆体組成物の硬化物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の画像形成方法。
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するフルオロカーボンシロキサンを主成分とし、脂肪族不飽和基を有するフルオロカーボンポリマー、
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、R10は、非置換又は置換の一価炭化水素基、xは1以上の整数、a,eはそれぞれ0又は1、b,dはそれぞれ1〜4の整数、cは0〜8の整数である。)
(B)1分子中に2個以上の≡SiH基を含有し、上記フルオロカーボンシロキサンゴム組成物中の脂肪族不飽和基量に対して上記≡SiH基の含有量が1〜4倍モル量であるオルガノポリシロキサン及び/又はフルオロカーボンシロキサン、
(C)充填剤、
(D)有効量の触媒。
【0025】
(6)トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段を有する画像形成装置において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記ベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmであることを特徴とする画像形成装置。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有したトナーを用い、トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、トナー像を記録媒体に定着させる定着工程を有し、この加熱後冷却剥離方式の定着工程で用いるベルト状定着部材として、前記トナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示す表面層(以下、「前進接触角が50度以上の表面層」ということがある)を有するものを用いることを特徴とする。
【0027】
このような加熱後冷却剥離方式の定着工程においては、トナーに含まれるワックスは、加熱されることでトナーの結着樹脂より先に溶融し、ベルト状定着部材表面に付着する。そして、冷却されると、溶融して付着した当該ワックスは固化される。この際、ワックスが溶融して、濡れ性よくベルト状定着部材表面に付着してしまうと、ワックスは固化した後、ベルト状定着部材表面から剥離され難くなり残留することとなり、一方、ワックスが溶融して、濡れ性が悪くベルト状定着部材表面に付着すると、ワックスは固化した後、ベルト状定着部材表面から容易に剥離され残留しなくなると考えられる。そこで、本発明では、ワックスを含むトナーを用い、且つ上述の加熱後冷却剥離方式の定着工程のようなベルト状定着部材の表面でワックスが溶融・固化されるシステムにおいても、前進接触角が50度以上の表面層を有するベルト状定着部材を用いることで、ベルト状定着部材表面に溶融したワックスを濡れ性が良く付着させることなく、ワックスが固化した後、ベルト状定着部材表面に残留させることなく綺麗に剥離させて、長期に渡り、紙粉、トナーの外添剤などのが付着せず、ベルト状定着部材の表面性の変化を防止する。
【0028】
ベルト状定着部材は、その表面(表面層)がとして、前記トナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示すが、好ましくは、55度以上であり、より好ましくは60度以上である。この前進接触角が、50度を下回ると、ワックスが溶融したときに、濡れ性よくベルト状定着部材表面に付着してしまい、ワックスが固化した後、ベルト状部材表面から剥離され難く残留することとなり、紙粉、トナーの外添剤などが、付着、混入し、ベルト状定着部材の表面性が経時的に変化してしまう。
【0029】
ここで、前進接触角の測定方法を次に記載する。評価用のワックスの塊は、ワックスの粉体をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)板上に散布し、140℃で30分、加熱、冷却後に半球状となった1個の重量が5±2mgのものを選別。アルミニウムの平板に表面層材料を30〜200μm形成した評価サンプルを準備。前記評価サンプルの表面に前記ワックスの塊の半球状の面が評価サンプルの表面に向くように置く。恒温槽に入れ、室温から140℃まで1時間程度で昇温。当該温度で1時間保持。加熱源を切り、当該温度より室温まで2時間程度で降温。評価サンプルに対する前進接触角を残した半球状のワックスの塊を得る。これを接触角計(FACE CA−X型:協和界面科学株式会社製)により、5つの評価サンプルで接触角を測定し、得られる5点の平均値を、評価サンプルとワックスの示す前進接触角の値として用いている。なお、室温固化後と140℃での前進接触角は、大差無く、傾向も変わらないことを確認している。下記表1に、代表的な表面層構成材料種とワックス種との前進接触角の値を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
―ベルト状定着部材―
ベルト状定着部材は、例えば、ベース層と、ベース層上に形成される一定の層厚を有する表面層と、からなる。また、ベース層と表面層の間に接着層を設けてもよい。ベルト状定着部材の形態は、画像形成装置に適したベルト形状であればよく、特に無端ベルトが好適である。
【0032】
ベース層は、耐熱性及び機械的強度が要求され、ニッケル、アルミニウム、ステンレス等の金属シートや、PET、PBT、ポリイミド、ポリイミドアミド等の樹脂フィルムを用いることができる。前記樹脂は導電性粉体などを添加分散して、体積抵抗率を制御されていてもよく、カーボンブラックを添加分散して、体積抵抗率を制御した無端ベルト状のポリイミドベルトを使用することもできる。さらに、長尺のポリイミドシートの両端部をパズル上に組合せ、熱圧着部材を用いて熱圧着し、無端ベルト状に仕立てたものを使用することもできる。
【0033】
ベース層の厚みは、20〜200μmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜150μmの範囲、さらに好ましくは40〜130μmの範囲が適している。ベース層の厚みが20μmより薄いと、加熱冷却時の寸法安定性や、強度が不足する。200μmを越えると、ベルト状定着部材の比熱が増大して熱移動量が低下し、転写速度やサイクルタイムの低下につながる。
【0034】
接着層としては、シリコーンゴムの接着に通常使用されるプライマー類などを適用できる。プライマー類としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、クロロメチルシラン系カップリング剤、シアノシラン系カップリング剤、チタン酸エステル系カップリング剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、アミノシラン系カップリング剤及びチタン酸エステル系カップリング剤が好ましく用いられる。さらには、フルオロカーボンシロキサンゴムのように設計されたプライマーも好ましく用いられる。
【0035】
表面層としては、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層(以下、シリコーンゴム層ということがある)と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、の構成である。
【0036】
フルオロカーボンシロキサンゴム層を構成するフルオロカーボンシロキサンゴムは、主鎖にパーフルオロアルキルエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0037】
特に、フルオロカーボンシロキサンゴム層としては、(A)下記一般式(1)のフルオロカーボンシロキサンを主成分とし、脂肪族不飽和基を有するフルオロカーボンポリマー、(B)1分子中に2個以上の≡SiH基を含有し、上記フルオロカーボンシロキサンゴム組成物中の脂肪族不飽和基量に対して上記≡SiH基の含有量が1〜4倍モル量であるオルガノポリシロキサン及び/又はフルオロカーボンシロキサン、(C)充填剤、(D)有効量の触媒を含有するフルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物の硬化物で構成されてなることが好ましい。
【0038】
この場合、(A)成分のフルオロカーボンポリマーは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するフルオロカーボンシロキサンを主成分とし、脂肪族不飽和基を有するものである。この脂肪族不飽和基は、一価の脂肪族不飽和炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜3であり、具体的にはビニル基、アリル基、エチニル基等の炭素数2〜3のアルケニル基が例示され、特にビニル基が好適である。この場合、脂肪族不飽和基は分子鎖末端にあることが好ましく、例えばビニルジアルキルシリル基、ジビニルアルキルシリル基、トリビニルシリル基を主鎖に有することが好ましい。なお、この場合のアルキル基は炭素数1〜8、特にメチル基が好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
ここで、上記式(1)において、R10は非置換又は置換の好ましくは炭素数1〜8の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜3のアルケニル基であり、特にメチル基であることが好ましい。a,eはそれぞれ0又は1、b,dはそれぞれ1〜4の整数、cは0〜8の整数である。また、xは1以上の整数、好ましくは10〜30である。このような(A)成分としては、下記式(2)で示すものを挙げることができる。
【0041】
【化4】
【0042】
(B)成分は、1分子中に2個以上の≡SiH基を含有し、この≡SiH基がフルオロカーボンシロキサン組成物中の脂肪族不飽和基量の1〜4倍モル量であるオルガノポリシロキサン及び/又はフルオロカーボンである。
【0043】
ここで、≡SiH基を有するオルガノポリシロキサンとしては、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを挙げることができる。
【0044】
また、本発明で用いるフルオロカーボンシロキサンゴム組成物においては、(A)成分のフルオロカーボンポリマーが脂肪族不飽和基を有するものであるときには、硬化剤として上述したオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。即ち、この場合には、フルオロカーボンシロキサン中の脂肪族不飽和基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子との間で生ずる付加反応によって硬化物が形成されるものである。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、付加硬化型のシリコーンゴム組成物に使用される種々のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができるが、本発明においては特に下記(α)、(β)のものが好適に使用される。
(α)下記式(3)〜(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【0045】
【化5】
【0046】
上記式中、s及びtは0以上の整数、uは2以上の整数である。また、R2は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素数が1〜12、より望ましくは1〜8のものが好ましく、具体的にはメチル基,エチル基,イソプロピル基,ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基,シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基,トリル基,キシリル基等のアリール基、ベンジル基,フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基,クロロプロピル基,クロロシクロヘキシル基,3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基、2−シアノエチル基等のシアノ炭化水素基等が例示される。このうち特に好ましいのは、メチル基、エチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。R4はケイ素原子と含フッ素有機基Rfとの間に介在する二価の基であり、脂肪族不飽和結合を有しない二価の炭化水素基又は一般式−R5−O−R6−(但し、R5及びR6は脂肪族不飽和結合を有しない二価の炭化水素基である)で表されるエーテル基を有する二価の炭化水素基であり、これらは炭素数1〜8のものが好ましい。具体的には下記に示すものが挙げられる。
【0047】
【化6】
【0048】
なお、R4のうちで特に好適な基は、−CH2CH2−,−CH2CH2CH2−,−CH2CH2CH2−O−CH2−である。Rfはパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基である。パーフルオロアルキル基としては式CpF2p+1(但し、pは4〜10の整数である)で表されるものが例示され、特に好適な基はC6F13−,C8F17−,C10F21−である。パーフルオロアルキルエーテル基としては特に炭素数が5〜15のものが好ましく、具体的には下記のものが例示される。
【0049】
【化7】
【0050】
(β)下記式(6)で示される(CH3)2HSiO0.5単位とSiO2単位とからなる共重合体。
【0051】
【化8】
【0052】
なお、これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、通常、1,000cSt以下であることが好ましい。上述したオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一般にその≡SiH基の数が、(A)成分のフルオロカーボンシロキサン中の脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して、少なくとも1個、特に1〜5個となるような割合で配合することが好適である。
【0053】
また、≡SiH基を有するフルオロカーボンとしては、上記式(1)の単位又は式(1)においてR10がジアルキルハイドロジェンシロキシ基であり、かつ末端がジアルキルハイドロジェンシロキシ基又はシリル基等のSiH基であるものが好ましく、下記式(7)で示すものを挙げることができる。
【0054】
【化9】
【0055】
(C)成分の充填剤としては、一般的なシリコーンゴム組成物に使用されている種々の充填剤を用いることができる。例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボン粉末、二酸化チタン、酸化アルミニウム、石英粉末、タルク、セリサイト及びベントナイト等の補強性充填剤、アスベスト、ガラス繊維、有機繊維等の繊維質充填剤などを例示することができる。
【0056】
これらの充填剤は、(A)成分100部(重量部、以下同じ)に対して0.1〜300部、特に1〜200部の割合で配合されることが好適である。この充填剤の配合量が0.1部未満の場合には、十分な補強効果を得ることができず、また300部を超える割合で配合された場合には、硬化物の機械的強度が低下するという不都合を生じるおそれがある。
【0057】
(D)成分の触媒としては、付加反応用触媒として公知とされている塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、白金黒又はパラジウムをアルミナ、シリカ、カーボンなどの担体に担持したもの、ロジウムとオレフィンとの錯体、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、ロジウム(III)アセチルアセトネートなどのような周期律表第VIII族元素又はその化合物が例示されるが、これらの錯体はアルコール系、エーテル系、炭化水素などの溶剤に溶解して用いることが好ましい。これらの白金族金属系触媒の配合量は、触媒の有効量であればよいが、通常、(A)成分100部に対して、白金族金属換算で1〜500ppm、特に5〜20ppmの割合で使用することが好ましい。
【0058】
フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物においては、耐溶剤性を向上させるという本発明の目的を損なわない範囲において、種々の配合剤を添加することができる。例えば、ジフェニルシランジオール、低重合度の分子鎖末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等の分散剤、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、顔料等の着色剤等を必要に応じて配合することができる。
【0059】
シリコーンゴム層を構成するシリコーンゴムとしては、特に制限はないが、例えば、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、等が挙げられる。これらのシリコーンゴムは、加熱加硫(HTV)ものであってもよいし、室温硬化(RTV)であってもよい。また、重合形態は付加型、縮合型のどちらであってもよい。
【0060】
ベルト状定着部材は、耐熱性樹脂製及び金属製のチューブ状ベルト本体(ベース層)の外表面に、構成に応じて、シリコンゴム前駆体組成物で塗布、硬化後、上記フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物で塗布、硬化することによって得られるが、塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤ一バーコーティング法、リングコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、フローコーティング法、ビードコ一ティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。これらの中でも、浸漬コーティング法が、表面層のシームレス塗布、量産性、コスト、膜厚の均一性等の点で有利であり、特に好ましい。フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物に対しては、必要に応じてm−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ベンゾトリフロライド等の溶剤で希釈して適当な粘度の塗工液とし、塗布することができる。シリコンゴム前駆体組成物に対しては、必要に応じてヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の溶剤で希釈して適当な粘度の塗工液とし、塗布することができる。
【0061】
これらゴム層を構成する材料の前駆体組成物は、供給形態が一液型、二液型、重合形態が付加型、縮合型などを任意に選択しうる。
【0062】
表面層の厚さ(複数層で構成される場合総厚)は、10〜100μmの範囲である。1μmより薄いと、弾性が不足してゴム層を加える効果がなくなり、定着性に問題が生じたり、耐久性が不足したりする。300μmを越えると、ベルト状定着部材の比熱が増大して熱移動量が低下し、転写速度やサイクルタイムの低下につながる。
但し、表面層が複数層で構成される場合、下層(最表面層に対しベース層側の層)の膜厚が、上層(最表面層側の層)の膜厚よりも厚いことが、強度や耐熱性などの観点から好ましい。したがって、シリコーンゴムゴム層の膜厚は、フルオロカーボンシロキサンゴム層の膜厚よりも厚くしている。
【0063】
表面層(ゴム層)を構成する材料の硬度(JISK6301「加流ゴム物性試験方法」で測定)は、5〜80の範囲が好ましく、より好ましくは10〜70の範囲、さらに好ましくは20〜60の範囲が適している。JIS A 5 未満のものでは、強度が低下し耐久性に問題がある。また、JISA80を超えると、表面層の膜厚に係らず剛性が大きくなり、ベルト状定着部材と記録媒体との密着性が低下して、冷却が不完全な時に剥離が起こるようになり、画質上の欠陥となって顕れる問題が生ずる。
【0064】
ここで、図1〜図4に、ベルト状定着部材の一例を示す断面概略図を示す。図1のベルト状定着部材1は、ベース層2上にフルオロカーボンシロキサンゴム層3を積層したものである。図2ではベース層2上にシリコーンゴム層4を設け、フルオロカーボンシロキサンゴム層3を積層したものである。ここでは、ベース層2と自己接着性に優れた材料を用いている。図3のベルト状定着部材1は、図1のベース層2上に接着層5を介してフルオロカーボンシロキサンゴム層3を積層したものである。ここでは、ゴム層3が自己接着性の劣る材料を用いている。図4のベルト状定着部材1は、図2のベース層2上に接着層5を介してシリコーンゴム層4を設け、フルオロカーボンシロキサンゴム層3を積層したものである。ここでは、ゴム層4が自己接着性の劣る材料を用いている。但し、本発明は、図2、及び図4が該当する。
【0065】
―画像形成方法―
本発明の画像形成方法では、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有したトナーを用い、静電潜像担持体上に形成したトナー像を記録媒体上に転写(或いは中間転写体などを介して記録媒体上に転写)する工程と、記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、トナー像を記録媒体に定着させる定着工程とを経て、記録媒体上に画像が形成される。なお、定着工程は、複数回行なっても良く、この複数回の定着工程のうち、上記ベルト状定着ベルトを用いた加熱後冷却剥離方式の定着工程を少なくとも一回含む。
【0066】
本発明の画像形成方法において、トナーを構成する材料は特に制限はないが、ワックスは、示唆走査熱量計により測定されるDSC曲線で吸熱開始温度が40℃以上、より好ましくは50℃以上のものを使用する。DSC曲線での吸熱開始温度が40℃より低いと、複写機内やトナーボトル内でトナーの凝集が発生してしまう。吸熱開始温度は、ワックスを構成する分子量分布のうち低分子量成分の含有量、ワックスがその構造中にもつ極性基の種類、量に左右される。一般に、高分子量化すれば融点とともに吸熱開始温度も上昇するが、ワックス本来の低溶融温度と低粘度を損なってしまう。このため、ワックスの分子量分布のうち、これら低分子量のものだけを、分子蒸留、溶剤分別、ガスクロマトグラフ分別等の方法で、選別して除くことが有効である。
【0067】
ワックスは、融点が80〜120℃の範囲にあり、かつ、120℃において1〜200センチポアズ、より好ましくは1〜100センチポアズの溶融粘度を示すことが望ましい。融点が80℃未満では、ワックスの相変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、複写機内温度が高くなった時に現像性が悪化したりする。融点が120℃を超える場合には、ワックスの相変化温度が高すぎ、省エネルギーの観点で望ましくない。また、200センチポアズより高い溶融粘度ではトナーからの溶出が弱く、定着剥離性が不十分となってしまう。
【0068】
本ワックスは、次のようなワックスから得られるものである。パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体等である。誘導体には、酸化物、ビニルモノマーとの重合体、グラフト変性物が含まれる。この他に、アルコール、脂肪酸、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、エステルワックス、酸アミド等も利用できる。
【0069】
ワックスのトナーに対する添加量は、1〜15重量%、より好ましくは3〜13重量%である。ワックスが1重量%より少ないと、十分な定着ラチチュード(トナーのオフセットなしに定着できる定着ロールの温度範囲)が得られない。一方、10重量%より多いと、トナーから脱離して遊離しているワックス量が増えて、現像剤担持体への汚染が生じ易くなる。また、トナーの粉体流動性が悪化し、静電潜像を形成する感光体表面に遊離ワックスが付着して、静電潜像が正確に形成できなくなる。さらに、ワックスは結着樹脂と比較して透明性が劣るため、OHP等の画像の透明性が低下して、黒ずんだ投影像となってしまう。
【0070】
以下、本発明の画像形成方法に好適に適用される画像形成装置(本発明の画像形成装置)をついて説明する。
【0071】
図5に示す画像形成装置は、ベルト式定着装置25を内蔵した画像形成装置本体20からなる。なお、図中、その他、主要部は省略する。
【0072】
図5に示す画像形成装置における画像形成装置本体20では、潜像担持体に潜像を形成する潜像形成され、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、潜像担持体担持体上にトナー画像を得て、トナー画像が中間転写体を介して記録媒体上に転写される。その後、ベルト式定着装置25において、定着が行なわれ、トナー画像が記録媒体上に形成される。
【0073】
図6に示す画像形成装置は、ロール式定着装置25aを内蔵した画像形成装置本体20と、ベルト式定着装置58を内蔵した二次定着ユニット50とからなる。なお、図中、その他、主要部は省略する。
【0074】
図6に示す画像形成装置では、画像形成装置本体20に内蔵されたロール式定着装置25aにより一次定着と、二次定着ユニット50に内蔵されたベルト式定着装置58による二次定着を行なう構成となっている。
【0075】
図6に示す画像形成装置における画像形成装置本体20では、潜像担持体に潜像を形成する潜像形成され、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、潜像担持体担持体上にトナー画像を得て、トナー画像が中間転写体を介して記録媒体上に転写される。その後、ロール式定着装置25aにおいて、一次定着が行なわれ、記録媒体は二次定着ユニット50に搬送される。
【0076】
二次定着ユニット50は、画像形成装置本体20から排出される記録媒体が導入される導入口51を備えており、この導入口51の内部には、記録媒体の搬送路を切り替える切り替えゲート52が設けられている。画像形成装置本体20から排出される記録媒体に対して、二次定着を施さず、そのまま外部の第1排出トレイ55上に排出する場合には、切り替えゲート52によって搬送路が上方の第1の搬送路53に切り替えられ、排出ロール54によって第1排出トレイ55上に排出される。
【0077】
一方、画像形成装置本体20から排出される記録媒体に対して、二次定着処理を施す場合には、切り替えゲート52によって搬送路が下方の第2の搬送路56に切り替えられ、搬送ベルト57によって、ベルト式定着装置58に搬送され、当該ベルト式定着装置58により定着処理を受けて、排出ロール59によって第2の排出トレイ60に排出される。
【0078】
以下、ベルト式定着装置25(58)について説明する。
ベルト式定着装置25(58)は、図7に示すように、加熱ロール61と、剥離ロール62とウォーク制御ロール63とからなる3つのロールにより回動可能に張架された定着ベルト64(ベルト状定着部材)、及び定着ベルト64を介して加熱ロール61に圧接する加圧ロール65とを備えている。
【0079】
ベルト式定着装置58による定着処理は、定着ベルト64と加圧ロール65との圧接部72を、定着ベルト64側にトナー像が位置するように記録媒体を通過させて、トナー像を加熱加圧することにより定着し、前記定着ベルト64がある程度冷却された状態で、当該定着ベルト64から記録媒体10を剥離されるように構成されているものである。
【0080】
加熱ロール61は、例えば、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コアの表面に、JIS K6253に基づき測定されるゴム硬度が、好ましくは20〜60°の範囲であるシリコーンゴム等からなる弾性体層を、好ましくは1mm〜3mmの範囲の厚さで被覆し、さらに、弾性体層の表面にPFAチューブ等からなる離型層を被覆して、所定の外径に形成したものが用いられる。
【0081】
加熱ロール61の内部には、加熱源として、発熱量が、好ましくは300〜350Wの範囲であるハロゲンランプが配設されている。ハロゲンランプ69により、加熱ロール61の表面温度が所定の温度(好ましくは130〜195℃の範囲)となるように加熱する。
【0082】
また、加圧ロール65としては、例えば、加熱ロール61と同様に構成したものが用いられ、アルミニウムやステンレス等からなる金属製コアの表面に、JIS K6253に基づき測定されるゴム硬度が、好ましくは20°〜60°の範囲であるシリコーンゴム等からなる弾性体層67を、厚さが好ましくは1mm〜3mmの範囲で被覆し、更に、弾性体層の表面にPFAチューブ等からなる離型層を被覆して、所定の外径に形成したものが用いられる。
【0083】
加圧ロール65の内部には、加熱源として、発熱量が、好ましくは、300W〜350Wの範囲であるハロゲンランプが配設されている。ハロゲンランプ69により、加圧ロール65の表面温度が所定の温度(好ましくは85℃〜155℃の範囲)となるように内部から加熱される。尚、加圧ロール65においては、加熱源を省略してもよい。
【0084】
加熱ロール61と加圧ロール65とは、定着ベルト64を介して、図示しない加圧手段により、好ましくはニップ圧が100kPa〜200kPaの範囲で互いに圧接するように構成されている。
【0085】
定着ベルト64は、既述の如く、加熱ロール61と、剥離ロール62と、ウォーク制御ロール63と、からなる3つのロールにより周動可能に張架されており、図示しない駆動源により回転駆動される加熱ロール61により、所定の移動速度で周動される。定着ベルト64としては、上述のベルト状定着ベルトが用いられる。
【0086】
また、定着ベルト64の内面側には、加熱ロール61と剥離ロール62との間に、定着ベルト64を強制的に冷却する冷却用ヒートシンク70が配設されている。冷却用ヒートシンク70により、定着ベルト64に密着している定着後の記録媒体が冷却される。この際、定着ベルト64は、剥離ロール62付近において、50℃〜80℃の範囲に冷却される。
なお、定着ベルト64には、冷却用ヒートシンク70と加熱ロール61との間に、定着ベルト64に一定のテンションを付与する小径のテンションロール71が配設されている。
【0087】
ベルト式定着装置25(58)では、トナー画像Tが転写された記録媒体10(或いは一次定着された記録媒体10)が、圧接部72を図7の左から右方向へ通過する。この時、記録媒体10はトナー画像Tが加熱ロール61側に位置するようにして圧接部72に導入される。記録媒体10は、圧接部72を通過する間に、トナー画像Tが記録媒体10表面で加熱溶融されて定着される。
【0088】
その後、定着ベルト64の表面に密着した記録媒体10は、密着した状態で、定着ベルト64と共に搬送される。その間、定着ベルト64は冷却用のヒートシンク70によって強制的に冷却されるため、トナー画像Tが定着されたトナー画像Tも冷却されて固化する。この際、冷却により記録媒体10のコシが回復する。定着ベルト64に密着している記録媒体10は、そのコシが回復したため、剥離ロール62により、定着ベルト64から剥離される。記録媒体10が剥離された定着ベルト64の表面は、クリーナ73によって残留トナー等が除去され、次の定着処理に備える。
【0089】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0090】
(参考例1)
ベルト状基材として周長527.8mm×幅420mm×厚さ75μmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベース層上に、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物であるSIFEL610(信越化学工業社製):100重量部とフッ素系溶媒(m−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の混合溶剤):10重量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成後、120℃:10分の一次加硫、180℃:4時間の二次加硫を行い、表面層としてフルオロカーボンシロキサンゴム層(40μmの膜厚)を有するベルト状定着部材を得た。
【0091】
このベルト状定着部材を、図5に示す画像形成装置とほぼ同様な構成の富士ゼロックス社製 DocuCenterColor500(DCC500)[但し、定着装置を図7に示したベルト式定着装置に改造したもの]に装着し、DCC500用の4色の現像剤(トナーに含まれるワックス種はPW725)を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は65±2度である。
【0092】
(参考例2)
参考例1で得たベルト状定着部材を、図6に示す画像形成装置とほぼ同様な構成の富士ゼロックス社製 DCC500[但し、図7に示したベルト式定着装置を内蔵した二次定着ユニットを装着させたもの]に装着し、DCC500用の4色の現像剤(トナーに含まれるワックス種はPW725)を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。
なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は65±2度である。
【0093】
(参考例3)
参考例1で得たベルト状定着部材を、図5に示す画像形成装置とほぼ同様な富士ゼロックス社製 DCC500[但し、定着装置を図7に示したベルト式定着装置に改造したもの]に装着し、富士ゼロックス社製 DocuPrintC620用の4色の現像剤(トナーに含まれるワックス種はカルバナワックス)を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。
なお、トナーに含まれるワックスとしてカルバナワックスを用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は60±2度である。
【0094】
(参考例4)
参考例1で得たベルト状定着部材を、図5に示す画像形成装置とほぼ同様な富士ゼロックス社製 DCC500[但し、定着装置を図7に示したベルト式定着装置に改造したもの]に装着し、富士ゼロックス社製 DocuPrint C1616用の4色の現像剤(トナーに含まれるワックス種はカルバナワックス)を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。
なお、トナーに含まれるワックスとしてカルバナワックスを用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は60±2度である。
【0095】
(参考例5)
参考例1のベルト状定着部材における表面層形成材料として、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物であるSIFEL611(信越化学工業社製)を使用した以外は、参考例1と同様にしてベルト状定着部材を製造し、繰り返し評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。
なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は63±2度である。
【0096】
(参考例6)
参考例1のベルト状定着部材における表面層形成材料として、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物であるSIFEL650(信越化学工業社製)を使用した以外は、参考例1と同様にしてベルト状定着部材を製造し、繰り返し評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。
なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は65±2度である。
【0097】
(実施例7)
ベルト状基材として周長527.8mm×幅420mm×厚さ75μmの大きさであり、カーボンブラックを添加して体積抵抗率をRv=1012Ω・cmに調整したポリイミド製のベース層上に、シリコーンゴム用プライマーであるDY39−115(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)をウェスに含浸し塗布後、風乾30分の後、シリコーンゴム前駆体組成物であるDY35−796AB(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製):100重量部とn−ヘキサン:30重量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成、120℃:10分の一次加硫を行い、シリコーンゴム層(膜厚40μm)を得た。このシリコーンゴム層上に、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物であるSIFEL610(信越化学工業社製):100重量部とフッ素系溶媒(m−キシレンヘキサフロライド、パーフロロアルカン、パーフロロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)の混合溶剤):20重量部により調整した塗布液を浸漬塗布により塗膜を形成後、120℃:10分の一次加硫、180℃:4時間の二次加硫を行い、フルオロカーボンシロキサンゴム層(膜厚20μm)を有するベルト状定着部材を得た。
【0098】
このベルト状定着部材を、図5に示す画像形成装置とほぼ同様な構成の富士ゼロックス社製 DocuCenterColor500(DCC500)[但し、定着装置を図7に示したベルト式定着装置に改造したもの]に装着し、DCC500用の4色の現像剤(トナーに含まれるワックス種はPW725)を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行ったところ、初期と変わらない画像を得ることができた。なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は65±2度である。
【0099】
(比較例1)
参考例1のベルト状定着部材における表面層形成材料として、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物の代わりに、シリコーンゴム前駆体組成物であるDY35−796AB(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を使用した以外は参考例1と同様にしてベルト状定着部材を得た。参考例1と同様の繰り返し評価を行ったところ、100kpv後では、シリコーンゴム表面にワックスや現像剤と紙粉を含んだ物質が固着するところが現われ、均一画像を取ると、部分的に光沢が異なるところが目視で確認できるようになり、使用に耐えない画像となった。
なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は45±2度である。
【0100】
(比較例2)
参考例1のベルト状定着部材における表面層形成材料として、フルオロカーボンシロキサンゴム前駆体組成物の代わりに、シリコーンゴム前駆体組成物であるDY35−7002AB(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を使用した以外は参考例1と同様にしてベルト状定着部材を得た。参考例1と同様の繰り返し評価を行ったところ、100kpv後では、シリコーンゴム層表面にワックスや現像剤と紙粉を含んだ物質が固着するところが現われ、均一画像を取ると、部分的に光沢が異なるところが目視で確認できるようになり、使用に耐えない画像となった。
なお、トナーに含まれるワックスとしてPW725を用いた場合、ベルト状定着部材表面の前進接触角は47±2度である。
【0101】
(比較例3)
参考例1で得たベルト状定着部材を、図5に示す画像形成装置とほぼ同様な富士ゼロックス社製 DCC500[但し、定着装置を図7に示したベルト式定着装置に改造したもの]に装着し、ワックスを含有しないトナーである、富士ゼロックス社製 DocuColor 1255CP用の4色の現像剤を使用してフルカラー画像の形成し、ベルト状定着部材の表面がA4換算で10kpvの繰り返しの評価を行ったところ、フロロカーボンシロキサンゴム表面に現像剤と紙粉を含んだ物質が固着するところが現われ、均一画像を取ると、部分的に光沢が異なるところが目視で確認できるようになり、使用に耐えない画像となった。
【0102】
(結果)
これら参考例の結果から、参考例1〜6、及び実施例7はベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpv(プリントボリューム)の繰り返しの評価を行ったところ、画質評価もいずれも良好であった。
これに対し、比較例1、2は、100kpv後では、シリコーンゴム表面にワックスや現像剤と紙粉を含んだ物質が固着するところが現われ、均一画像を取ると、部分的に光沢が異なるところが目視で確認できるようになり、使用に耐えない画像となった。比較例3は、ワックスを含有しないトナーを使用すると10kpv後では、フロロカーボンシロキサンゴム表面に現像剤と紙粉を含んだ物質が固着するところが現われ、均一画像を取ると、部分的に光沢が異なるところが目視で確認できるようになり、使用に耐えない画像となった。
このように、ワックスを含むトナー(現像剤)を用い、加熱後冷却剥離定着方式を行なうシステムにおいて、トナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が、50度以上を示す表面層を有するベルト状定着部材を用いることで、ベルト状定着部材の表面がA4換算で100kpvの繰り返しの評価を行った後でも、画質の劣化を防止することが可能であることがわかる。
【0103】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ワックスを含有するオイルレストナーを使用して加熱後冷却剥離型定着方式で定着を行なった場合にも、ベルト状定着部材のワックスによる汚染を防止して、画像グロスの低下を抑制して画質の劣化を抑制し、長期間にわたって、高画質で、定着性に優れた画像が得られる画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられるベルト状定着部材の一例を示す概略構成断面図である。
【図2】 本発明に用いられるベルト状定着部材の他の一例を示す概略構成断面図である。
【図3】 本発明に用いられるベルト状定着部材の他の一例を示す概略構成断面図である。
【図4】 本発明に用いられるベルト状定着部材の他の一例を示す概略構成断面図である。
【図5】 本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】 本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図7】 本発明の画像形成装置に内蔵されるベルト式定着装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 ベルト状定着部材
2 ベース層
3 フルオロカーボンシロキサンゴム層(ゴム層(1))
4 シリコーンゴム層(ゴム層(2))
5 接着層
20 画像形成装置本体
25、58 ベルト式定着装置
25a ロール式定着装置
50 二次定着ユニット
64 定着ベルト(ベルト状定着部材)
Claims (6)
- トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記ベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmであることを特徴とする画像形成方法。 - トナー像が転写された記録媒体を第一の定着部材により加熱及び加圧し、トナー像を定着させた前記記録媒体と第二のベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体を第二のベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記第二のベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmであることを特徴とする画像形成方法。 - 前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層は、前記ベース層表面にシリコーンゴムの前駆体組成物を塗布し、硬化させることにより形成されてなり、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層は、前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層表面に、フルオロカーボンシロキサンゴムの前駆体組成物を塗布し、硬化させることにより形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
- 前記フルオロカーボンシロキサンゴムが、主鎖にパーフルオロアルキルエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成方法。
- 前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含むゴム層が、下記(A)〜(D)成分を有する前駆体組成物の硬化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成方法。
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するフルオロカーボンシロキサンを主成分とし、脂肪族不飽和基を有するフルオロカーボンポリマー、
(B)1分子中に2個以上の≡SiH基を含有し、上記フルオロカーボンシロキサンゴム組成物中の脂肪族不飽和基量に対して上記≡SiH基の含有量が1〜4倍モル量であるオルガノポリシロキサン及び/又はフルオロカーボンシロキサン、
(C)充填剤、
(D)有効量の触媒。 - トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段を有する画像形成装置において、
前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、
前記ベルト状定着部材は、ベース層上に表面層を有してなり、
前記表面層は、シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層と、当該ゴム層上に設けられるフルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層と、で構成されてなり、且つトナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示し、
前記シリコーンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚は、前記フルオロカーボンシロキサンゴムを含んで構成されるゴム層の膜厚よりも厚く、且つゴム層全体の膜厚が10μm〜100μmであることを特徴とする画像形成装置。
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