JP4405603B2 - 研磨材、研磨工具及び研磨方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板、木材板、プラスチック板などの板材の窪み部を補修する際に用いる研磨材と研磨工具、及び研磨方法に係り、特に、例えば、自動車車体外板などの金属板の補修作業において、補修部に充填された充填材の表面を仕上げ加工するために、好適に使用することができる研磨材と研磨工具、及び研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車車体外板などの金属板の補修作業において、他物体との衝突や腐食によって金属板に生じた穴や窪みに、パテ等の補修用充填材を充填する補修方法が知られている。このような充填材を用いた補修方法においては、充填材をペースト状態で補修部にやや過剰に肉盛りした後、半固化もしくは固化状態下、金属板表面から突出した充填材を研磨作業により除去する。
【0003】
この研磨作業においては、多様な立体的広がりを有する金属板表面の所望の補修個所を所望粗さに研磨するため、従来から、各種の研磨手工具や研磨装置が提案されているが、パテ等の補修用充填材の削り過ぎが一方で問題になっていた。
図8(a)は、従来の研磨材の一例を示す斜視図であり、基材1の一表面側の全面に、研磨砥粒がバインダーにより固着された研磨面2が形成されている。このような研磨材を用いて補修部に肉盛りされた充填材を研磨しようとすると、研磨作業の全工程を通し、図8(b)及び図8(c)のように、程度の多少はあるにしても、金属板5の基準面6が同時に研磨されて凹部7となって、補修部研磨面が凹凸に形成されがちであった。
【0004】
そこで、この問題の解決のために、特開平7−314317号公報に記載の研磨装置や特開平9−225841号公報に記載の研磨手工具を用いて、補修個所に肉盛りした充填材の表面を、慎重に時間をかけて仕上げ加工することが行われている。従って、研磨の際、より簡便に、かつ作業者が特別の注意を払うことなく、充填材表面を研磨するための研磨材、研磨工具などが強く要請されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の熟練を要さず、また作業者が特別の注意を払わず、充填材の削り過ぎを防止しつつ、通常の作業手順で短時間に研磨を行うことができる研磨材、研磨工具、さらには研磨方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、研磨材として、基材と、基材の一面側を研磨作用面としたものからなり、研磨作用面の内側部に研磨砥粒を固着した研磨作用部を設け、かつ研磨作用面の外周部に、研磨作用を有しない非研磨作用部を設け、さらに、研磨作用部と非研磨作用部が別体として形成されたものを用い、板材の補修部に充填材を過剰に充填した後、研磨材の研磨作用面と非研磨作用部をそれぞれ充填材の凸部の表面と板材の表面(基準面)に接触させて研磨を開始し、充填材の凸部が小さくなり充填材の余剰部分が板材の表面(基準面)と略同一面となったときに研磨を終了することを特徴とする研磨方法が提供される
【0007】
発明の研磨方法は、自動車車体外板の補修部に充填される充填材の研磨に、特に好ましく使用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る研磨材とそれを用いて板材を補修する研磨工程を示す説明図である。
図1(a)において、研磨材10は、基材11と、基材11の一面側を研磨作用面13としたものからなっており、研磨作用面13は、研磨砥粒をバインダにより固着して形成した研磨作用部12を有している。
そして、本発明の研磨材においては、研磨作用部12の外周部に、研磨作用を有しない非研磨作用部14を設けている。
【0009】
このような構成の研磨材を用いて金属板などの補修個所に充填された充填材を研磨すると、研磨初期においては、図1(b)のように、充填材17の表面を研磨材10で研磨しても、金属板15の基準面16に対して、研磨材10の非研磨作用部14が接触するため、基準面16が保護され、研磨が防止される。また、研磨終期においては、図1(c)に示すように、充填材17の凸部が小さくなった段階で、研磨材10の研磨作用部12と非研磨作用部14の全体が接触することになる。言い換えると、充填材17の凸部を研磨する際、金属板15の基準面16に対して、研磨材10の研磨作用面13がほぼ平行に摺動する。したがって、金属板15の基準面16が研磨されることがほとんど生じないのである。
【0010】
本発明の研磨材は、自動車車体外板などの金属板の補修作業に好ましく適用されるが、これに限られず、木材板やプラスチック板、セラミック板などの補修に対しても、適用することができる。また、研磨対象たる板材の表面が、平坦及び曲面のいずれであっても使用することができるが、特に、板材の凸面の補修に対して好適である。
【0011】
次に、研磨材を構成する各部材について説明する。
基材の表面に固着する研磨砥粒としては、従来公知のものを用いることができ、一般に、ダイヤモンド、シリコンカーバイド(SiC)、アルミナ等からなる材質のものが用いられる。また、研磨砥粒は、通常、粒度が#36〜#4000の範囲のものが使用されるが、自動車用のパテ研ぎ作用としては、#60〜#240の粒度のものが好ましい。
【0012】
基材としては、各種の材質からなる紙、布、皮、フィルム等を用いることができる。基材の厚さについては特に制限はなく、研磨対象となる板材の種類、表面状態などに応じて適宜選択できるが、通常0.01〜0.5mm程度である。
また、基材の一面側における研磨作用面と非研磨作用部との比率については、本発明者が種々の角度から検討したところ、
非研磨作用部/研磨作用面=0.3〜0.7(面積比)
の範囲が好ましいことが判明した。
上記の比率は、パテなど充填材が金属板表面から突出する余剰部分の膨らみ程度から、研磨作業時の研磨対象物たる板材の基準面に対する研磨によるダメージの軽減、充填材表面の研磨作業の効率などを考慮して設定されたものである。
【0013】
研磨材は、図2(b)、図3(b)に示すように、基材11(非研磨作用部14)と研磨作用部12が、別体として形成されていてもよい。
【0014】
また、研磨作用部と非研磨作用部とは、段差のない同一平面となるように形成するか、研磨作用部が非研磨作用部より少し高くなるように形成することが、充填材に対する研磨性、また板材の基準面に対する研磨防止の観点から、好ましい。
【0015】
次に、本発明の研磨工具について説明する。本発明は、手工具と駆動工具(例えば、電動工具、エア工具)のそれぞれに適用することができる。本発明に係る手工具は、上記した研磨材と、それを支持するための支持部材と、さらに支持部材に取り付けられた握持部材とから構成される。
具体的には、例えば、特開平9−225841号公報に記載された研磨手工具と同様の構成を有する。
図4は、本発明に係る手工具の一例を示す斜視図であり、研磨手工具20は、研磨材21と、該研磨材21における基材の研磨作用面と反対側面に配設され、研磨材21を支持する支持部材22と、この支持部材22に配設され、作業者が握持するための握持部材23とを備える。なお、研磨材21の支持部材22への取付け、及び支持部材22と握持部材23との接合は、接着剤、粘着テープ、あるいはメカニカルファスナーなどの固着手段を用いて行うことができる。
なお、支持部材22及び握持部材23は、作業者の手の力を正確に研磨作用面に伝えるために、堅固で軽量な材料からなるものが好ましく、例えば、木材、プラスチック、アルミニウム等の金属から形成される。
また、駆動工具については、例えば、特開平7−314317号公報に記載されており、駆動源により、電動式、エア式のものがある。
【0016】
次に、本発明の研磨材を、電動工具に取り付けて金属板を補修する作業(研磨方法)に基づき、図5(a)(b)を用いて説明する。
まず、図5(a)(b)に示すように、平坦な、あるいは曲面状の金属板30の補修部31に充填材32をやや過剰に肉盛りする。
次いで、充填材32が半固化状態、あるいは固化状態になった後、その周囲の金属板30の表面(基準面)33から突出している余剰部分を、基準面33と略同一面となるまで研磨する。
【0017】
余剰部分を粗仕上加工する時には、まず、所望粗さの研磨砥粒を用いた研磨材40を、電動工具50の支持部51に固定し、この研磨材40の研磨作用面を充填材32の余剰部分表面に適当な押圧力で押し付けながら、当該余剰部分を研磨除去する。
次いで、仕上げ加工する時には、粗仕上加工時より粒度の小さい研磨砥粒を用いた研磨材40を、電動工具50の支持部51に交換して固定し、この研磨材40の研磨作用面を充填材32の表面と金属板30の基準面33の双方に適当な押圧力で押し付けながら、当該部分を仕上げ研磨する。
なお、具体的には、研磨材の研磨砥粒として、粗仕上加工時は粒度が#80程度の粗粒研磨砥粒を用い、順次、粒度の小さい研磨砥粒(例えば、#120、#180)を用いて仕上げ加工を施すことが好ましい。
【0018】
また、補修作業の条件、効率が向上するように、粗仕上加工時においては、一般に、研磨材40がオービタル動作(研磨材の公転運動)を施し、仕上げ加工時においては、研磨材40がダブルアクション動作(研磨材の自公転運動)を施すことが、好ましい。
すなわち、オービタル動作は、研磨を迅速に行うことができることから、粗仕上加工に適し、又面取り作業等を行うこともできる。一方、ダブルアクション動作は、研磨量は少ないが、充填材表面をきめ細かく研磨できるため、仕上げ加工に適している。
【0019】
粗仕上加工時及び中・最終仕上げ加工時のいずれの段階においても、余剰の充填材を研磨除去するため、電動工具や研磨工具を、一方向往復運動(図6参照)や、充填材の肉盛り部頂点Aを中心として放射方向運動(図7参照)、あるいはこれらを組合せた運動を行うようにして使用する。
【0020】
上記のように、本発明の研磨材を電動工具等に取り付けて金属板を研磨することにより、金属板の基準面を過剰に研磨する、いわゆる削り過ぎの状態を引き起こすことなく研磨することができ、しかも、作業者に熟練は必要なく、通常の作業手順で短時間に研磨を行うことができる。
【0021】
【実施例】
(実施例、比較例)
研磨材として、図2(b)のような非研磨作用部と研磨砥粒を固着した研磨作用部が別体に形成されたタイプを使用した。研磨作用部は、3M社製の研磨素材(商品名:パテ研ぎディスク)で、直径100mmの砥粒番手(粒度)が#80、#120、#180の3種を準備した。一方、非研磨作用部については、中央部に上記研磨砥粒固着部の形状に一致する貫通孔を有し、外周部に幅25mmのリング状縁枠部を形成したドーナツリンク状体を用い、この基材の中央凹部に研磨砥粒を固着した研磨作用部を取り付けて、研磨材とした。
【0022】
これら3種の研磨材を、電動工具の研磨部に接着剤にて順次貼りつけた後、取り換えて使用した。また、比較のために、図8(a)に示す態様の従来の研磨材であって、上記と同様の3種の研磨砥粒を固着したものも使用した。
なお、電動工具としては、オービタル動作およびダブルアクション動作を切り換えることができる特開平7−314317号公報に記載のものを用いた。
【0023】
上記の研磨材と電動工具を用いて、金属板の補修作業を行った。
即ち、金属板の補修個所にパテをやや過剰に肉盛りし、次いでパテが固化状態になった後、その周囲の金属板基準面から突出している余剰部分を、基準面と略同一面となるまで研磨した。
具体的な研磨作業条件は、次の表1の通りであった。
【0024】
【表1】
Figure 0004405603
【0025】
以上のようにパテの研磨を行ったところ、各加工時において、金属板の基準面には損傷を与えることなく、また、図8(a)に示す従来の研磨材を用いた場合に比して約50%作業時間を短縮して、研磨作業を終了することができた。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の研磨材、研磨工具及び研磨方法は、金属板等の補修に際して、作業者の熟練を要さず、また特別の注意を払わずとも、充填材の削り過ぎを防止しつつ、通常の作業手順で短時間に研磨を行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る研磨材とそれを用いて板材を補修する研磨工程を示す説明図で、(a)は研磨材、(b)(c)は研磨工程をそれぞれ示す。
【図2】 本発明に係る研磨材の一実施例を示す斜視図で、(b)は別体として形成された場合を示す。(a)は一体形成された場合の斜視図であって参考図を示す。
【図3】 本発明に係る研磨材の他の実施例を示す斜視図で、(b)は別体として形成された場合を示す。(a)は一体形成された場合の斜視図であって参考図を示す。
【図4】 本発明に係る手工具の一例を示す斜視図である。
【図5】 本発明の研磨材を電動工具に取り付けて研磨する例を示す説明図で、(a)は平坦面の研磨作業、(b)は曲面部の研磨作業を示す。
【図6】 研磨工具の運動方向の一例を示す平面説明図である。
【図7】 研磨工具の運動方向の他の例を示す平面説明図である。
【図8】 従来の研磨材とそれを用いて板材を補修する研磨工程を示す説明図で、(a)は研磨材、(b)(c)は研磨工程をそれぞれ示す。
【符号の説明】
10…研磨材、11…基材、12…研磨砥粒を固着した研磨作用部、13…研磨作用面、14…非研磨作用部、15…金属板、16…基準面、17…充填材、20…研磨手工具、21…研磨材、22…支持部材、23…握持部材、30…金属板、31…補修部、32…充填材、33…基準面、40…研磨材、50…研磨電動工具、51…支持部。

Claims (2)

  1. 研磨材として、基材と、基材の一面側を研磨作用面としたものからなり、研磨作用面の内側部に研磨砥粒を固着した研磨作用部を設け、かつ研磨作用面の外周部に、研磨作用を有しない非研磨作用部を設け、さらに、研磨作用部と非研磨作用部が別体として形成されたものを用い、
    板材の補修部に充填材を過剰に充填した後、研磨材の研磨作用面と非研磨作用部をそれぞれ充填材の凸部の表面と板材の表面(基準面)に接触させて研磨を開始し、充填材の凸部が小さくなり充填材の余剰部分が板材の表面(基準面)と略同一面となったときに研磨を終了することを特徴とする研磨方法。
  2. 自動車車体外板の補修部に充填される充填材を研磨する請求項1記載の研磨方法。
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