JP4404029B2 - ノイズフィルタ - Google Patents
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Description
他の従来のノイズフィルタでは、ノーマルモードのノイズを3個のノーマルモード用チョークコイルと3個の線間コンデンサにより低減し、コモンモードのノイズを1個のコモンモード用チョークコイルと接地と各相の間に配置された3個のコンデンサにより低減している。
(例えば、特許文献2を参照。)
またコモンモードノイズを低減するためのコンデンサを3個接続する必要があり、ノイズフィルタの小型化が困難である。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、電力機器が発生するノイズが電力系統に伝導することを防止する小型のノイズフィルタを得ることを目的とするものである。
図1は本発明の実施の形態1によるノイズフィルタを示す図であり、電力機器の1例である電力変換装置1と電力系統2の間に、ノイズフィルタ3が設置されている。なお、電力変換装置1以外の電力機器に対しても、このノイズフィルタ3は適用できる。
ノイズフィルタ3は、同じ容量の3個の線間コンデンサ3A、3B、3Cと、チョークコイル4とから構成される。図1では、チョークコイル4は、ノーマルモード用(正相用)のインダクタンス4Aとコモンモード用(零相用)のインダクタンス4Bとを別に表示する。ここで、以下の変数を定義する。
L1:ノーマルモード用(正相用)のインダクタンス4Aのインダクタンス値。
L0:コモンモード用(零相用)のインダクタンス4Bのインダクタンス値。
フェライトコアは、50Hzまたは60Hzの商用周波数ではケイ素鋼板よりも透磁率が小さいが、例えば100kHz以上の高周波領域まで透磁率が維持され、高周波領域ではケイ素鋼板よりも透磁率が大きくなる。また、フェライトコアの方がケイ素鋼板よりも損失が少ない。ケイ素鋼板は商用周波数での透磁率が大きく、商用周波数に対して所定のインダクタンスを発生させるために必要なコイルの巻数を、他の磁性材料を使用した場合よりも小さくできる。
一般に電力変換装置1を構成するトランジスタ等の高速なスイッチング動作により、R相、S相、T相の和がゼロにならない高周波のコモンモード電流(零相電流)が発生する。コモンモード電流による磁束は、3相3脚の鉄心5だけでなく、継鉄6も通る。
まず、磁束と磁束を発生させる電流を表現する変数として以下を定義する。
φr:脚部5Aを通る磁束。
φs:脚部5Bを通る磁束。
φt:脚部5Cを通る磁束。
Ir:脚部5Aに巻くコイル7Aに流れる電流。
Is:脚部5Bに巻くコイル7Bに流れる電流。
It:脚部5Cに巻くコイル7Cに流れる電流。
Lrr:Irとφrの間の比例係数。自己インダクタンス。
Lss:Isとφsの間の比例係数。自己インダクタンス。
Ltt:Itとφtの間の比例係数。自己インダクタンス。
Msr:Irとφsの間の比例係数。相互インダクタンス。
Mtr:Irとφtの間の比例係数。相互インダクタンス。
Mrs:Isとφrの間の比例係数。相互インダクタンス。
Mts:Isとφtの間の比例係数。相互インダクタンス。
Mrt:Itとφrの間の比例係数。相互インダクタンス。
Mst:Itとφsの間の比例係数。相互インダクタンス。
φr= Lrr*Ir−Mrs*Is−Mrt*It (1)
φs=−Msr*Ir+Lss*Is−Mst*It (2)
φt=−Mtr*Ir−Mts*Is+Ltt*It (3)
R相、S相、T相が対称である方が望ましいので、以下が成立することが望ましい。
Lrr=Lss=Ltt (4)
Mrs=Mrt=Msr=Mst=Mtr=Mts (5)
(4)式と(5)式が成立する条件を以下で求める。
Rr :脚部5A及び脚部5Bまでの連結部5Dと連結部5Eの磁気抵抗。
Rs :脚部5Bの磁気抵抗。
Rst:脚部5Bと脚部5Cの間の連結部5Dと連結部5Eの磁気抵抗。
Rt :脚部5Cの磁気抵抗。
Rt0:継鉄6及び脚部5Cよりも継鉄6側の連結部5Dと連結部5Eの磁気抵抗。
N :コイル7A、7B、7Cの巻数。
Rrr:コイル7Aによる起磁力に対する合成磁気抵抗。
Rss:コイル7Bによる起磁力に対する合成磁気抵抗。
Rtt:コイル7Cによる起磁力に対する合成磁気抵抗。
自己インダクタンスと合成磁気抵抗との間には、以下の関係が有る。
Lrr=N/Rrr (6)
Lss=N/Rss (7)
Ltt=N/Rtt (8)
α=Rst/Rr (9)
Lrr=Lss=Ltt=4*((1+α)/(3+2*α))*(N/Rr) (10)
Mrs=Msr=((1+2*α)/(3+2*α))*Lrr (11)
Mrt=Mtr=Mst=Mts=(1/(3+2*α))*Lrr (12)
L1=(4/3)*Lrr (13)
L0=(1/3)*Lrr (14)
L1=(3/2)*Lrr (15)
L0=0 (16)
高周波領域まで透磁率が維持され損失が少ないフェライトコアにより継鉄を製作しているので、継鉄をケイ素鋼板で製作する場合よりもノイズ低減効果が大きい。
鉄心の脚部を直線状としたが、曲線や折れ曲がった線のような形状でもよい。図2における上下の水平な部分にコイルを巻くなどしてもよい。その場合には、コイルを巻いた部分は脚部であり連結部ではない。
鉄心の連結部の横に伸ばした部分を継鉄でつないだが、鉄心の構造は従来のままで、継鉄を「コ」の字状にしてもよい。
コイルの巻数を各相で同じとしたが、相によりコイルの巻数を変えてもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
この実施の形態2は、チョークコイル4の構造を変更した場合である。図5に、実施の形態2でのチョークコイル4の構造を説明する正面図を示す。実施の形態1では、鉄心5の連結部5Dと連結部5Eの片端を継鉄6がつないだのに対して、鉄心5全体を取り囲むように継鉄6を配置している。なお、ノイズフィルタ3の構成は、実施の形態1と同じ図1である。
この実施の形態2における磁気回路の等価回路を図6に示す。なお、図6では脚部5Aの磁気抵抗に対する比で磁気抵抗の大きさを表現する。
まず、図6で大きさβの磁気抵抗が接続する端子から大きさαの磁気抵抗の側を見た合成磁気抵抗として、以下を定義する。
Δ=α+γ/(1+γ) (17)
すると、Mrs=Msr=Mst=Mtsが成立する条件は、以下のようになる。
(γ/(γ+α+β*Δ/(β+Δ)))*(Δ/(β+Δ))
=(1/2)*(γ/(1+γ)) (18)
(18)式を変形して、以下となる。
β=(Δ*(2+γ−α))/(α+γ+Δ) (19)
Lrr=Lss=Ltt=(Δ*(4+3*γ−α+Δ))/(2*(α+γ+Δ)) (20)
相互インダクタンスは、以下のようになる。
Mrs=Msr=Mst=Mts=(1/2)*(γ/(1+γ))*Lrr (21)
Mrt=Mtr
=(1/2)*((γ2+(2−α)*γ)/(γ2+2*(1+α)*γ+2*α))
*(γ/(1+γ))*Lrr (22)
ε=((γ2+(2+α)*γ+(4/3)*α)/(γ2+2*(1+α)*γ+2*α))
*(1/2)*(γ/(1+γ)) (23)
このεを用いると、図6の磁気回路でのチョークコイル4のL1とL0は以下となる。
L1=(1+ε)*Lrr (24)
L0=(1−2*ε)*Lrr (25)
(23)式より、γを調整することにより、相互インダクタンスの平均値εを0から1/2の間で調整できることが分かる。
この実施の形態では、3相3脚の鉄心を囲むように継鉄を設けるので、継鉄による磁気シールド効果が発生して、チョークコイルが外界に発生する漏洩磁束を低減できる。
この実施の形態では、3相3脚鉄心の連結部をつなぐ継鉄の磁気抵抗を調整することにより、チョークコイルのインダクタンス値の調整がしやすという効果が有る。
この実施の形態3は、3相3脚の鉄心の一部にもフェライトコアを使用するように実施の形態1を変更した場合である。図7に、実施の形態3での鉄心と継鉄の構造を説明する斜視図を示す。図7では、フェライトコアの部分にハッチングを施す。なお、ノイズフィルタ3の構成は、実施の形態1と同じ図1である。
鉄心5の図における前面と後面について全面の所定の厚さは第2の材料であるフェライトコアとし、その他の部分を第1の材料であるケイ素鋼板にする。その他の構造は、実施の形態1と同じである。
さらに、この実施の形態3では、高周波領域でもノーマルモードとコモンモードのインダクタンスを所定の大きさにできるという効果が有る。その理由は、図7の構造のチョークコイル4では、フェライトコアだけによるノーマルモードとコモンモードの両方の磁路が構成できるからである。
ケイ素鋼板とフェライトコア以外でも、商用周波数での透磁率が所定値以上の第1の材料と、高周波領域での透磁率が第1の材料よりも大きい第2の材料を組合せて鉄心を構成すれば同様の効果が有る。継鉄を第2の材料だけとしたが、第1の材料など他の材料も使用してもよい。また、鉄心に第1の材料と第2の材料以外の材料も使用してもよい。
鉄心を第2の材料で第1の材料を挟む構造としたが、第1の材料で第2の材料を挟んだり、それぞれ1個の第1の材料と第2の材料を重ねたり、4層以上に第1の材料と第2の材料を交互に重ね合わせたりしてもよい。
鉄心と継鉄の構造は、この実施の形態の構造に限定されるものではなく、鉄心だけでノーマルモードの磁路が構成でき、鉄心と継鉄とによりコモンモードの磁路が構成できれば、どのような構成でもよい。
以上のことは、他の実施の形態にもあてはまる。
図8は、この実施の形態4によるノイズフィルタを示す図である。ノイズフィルタ3が電力変換装置1と電力系統2の間に配置される。ノイズフィルタ3は、同じ容量Cnの3個の線間コンデンサ3A、3B、3Cと、T相と接地の間に設けられたコモンモード用コンデンサ3Dと、ノーマルモード用のチョークコイル3Eと、コモンモード用のチョークコイル3Fとから構成される。コモンモード用コンデンサ3Dの容量Ccは、Cnの100分の1程度以下とする。
Ic:コモンモードのノイズ電流。
ω :コモンモードのノイズの周波数。
Cc:コモンモード用コンデンサ3Dの容量。
Cn:線間コンデンサ3A、3B、3Cの容量。
Vr:Icにより誘起されるR相のノイズ電圧。
Vs:Icにより誘起されるS相のノイズ電圧。
Vt:Icにより誘起されるT相のノイズ電圧。
Vt=Ic/(j*ω*(Cc/3)) (26)
Vr−Vt=Vs−Vt=Ic/(j*ω*Cn) (27)
(26)式を(27)式に代入して、以下となる。
Vr=Vs=(Ic/(j*ω))*(1/(Cc/3)+1/Cn) (28)
この実施の形態ではコモンモード用のコンデンサは1個なので、部品数を低減できる。また、ノイズフィルタの小型化が可能である。
この実施の形態5は、実施の形態1〜3の何れかに実施の形態4の特徴を付加した実施の形態である。この実施の形態4によるノイズフィルタを示す図を、図10に示す。実施の形態1〜3での構成である図1と比較して、T相と接地との間に設けられたコモンモード用コンデンサ3Dが追加されている。
2 :電力系統
3 :ノイズフィルタ
3A:線間コンデンサ
3B:線間コンデンサ
3C:線間コンデンサ
3D:コモンモード用コンデンサ
3E:ノーマルモード用チョークコイル
3F:コモンモード用チョークコイル
4 :チョークコイル
4A:ノーマルモード用のインダクタンス
4B:コモンモード用のインダクタンス
5 :鉄心
5A:脚部
5B:脚部
5C:脚部
5D:連結部
5E:連結部
6 :継鉄
7A:コイル(巻線)
7B:コイル(巻線)
7C:コイル(巻線)
Claims (5)
- 3個の脚部、これらの脚部の1端をそれぞれつなぐ2個の連結部を有する鉄心と、3個の前記脚部のそれぞれに巻かれた3個の巻線と、2個の前記連結部をつなぐ継鉄とを備え、該継鉄が前記鉄心よりも低損失であり、前記巻線に3相交流の各相の電流を流すことを特徴とするノイズフィルタ。
- 3個の脚部、これらの脚部の1端をそれぞれつなぐ2個の連結部を有する鉄心と、3個の前記脚部のそれぞれに巻かれた3個の巻線と、2個の前記連結部をつなぐ継鉄とを備え、商用周波数での透磁率が所定値以上の第1の材料と該第1の材料よりも高周波領域での透磁率が高い第2の材料とを用いて前記鉄心を構成し、前記継鉄の少なくとも1部を前記第2の材料で構成し、少なくとも1個の前記脚部と前記継鉄を通る前記第2の材料だけからなる磁路が構成でき、前記巻線に3相交流の各相の電流を流すことを特徴とするノイズフィルタ。
- 3個の脚部、これらの脚部の1端をそれぞれつなぐ2個の連結部を有する鉄心と、3個の前記脚部のそれぞれに巻かれた3個の巻線と、2個の前記連結部と接触し前記鉄心を囲む継鉄とを備え、該継鉄が前記鉄心よりも低損失であり、前記巻線に3相交流の各相の電流を流すことを特徴とするノイズフィルタ。
- 前記継鉄の少なくとも1部を前記鉄心よりも高周波領域での透磁率が高い材料製とすることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のノイズフィルタ。
- 3相交流の各相間にそれぞれ1個配置された3個の線間コンデンサと、接地と1相の間に配置された前記線間コンデンサよりも容量が小さい1個のコンデンサとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のノイズフィルタ。
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