JP4402309B2 - セルラーゼ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤用酵素等として有用なセルラーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは植物細胞壁の主成分であり、衣料、紙、建築材料などに有効利用されるバイオマスの代表的存在である。セルロースの構造はグルコースが直鎖状にβ−1,4結合した巨大分子であるため、分解によって燃料物質やより高付加価値の代謝物質へと変換が可能である。そのためセルロースを分解する酵素としてセルラーゼに関する研究並びにその反応産物の有効利用が、世界中の研究機関において多岐にわたり行われている。これらの研究対象となるセルラーゼは、一般的に中酸性に最適反応pHを有し、結晶性セルロースを良好に分解できる真菌類や嫌気性細菌由来の酵素が中心となっている。
【0003】
好アルカリ性バチルス属細菌がアルカリセルラーゼを生産することが見出されて(特公昭50−28515号公報)以来、セルラーゼの衣料用重質洗剤への応用が可能となりアルカリセルラーゼ(特公昭60−23158号公報、特公平6−30578号公報等)が衣料用洗剤へ配合され、セルラーゼはプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼと並ぶ洗剤用酵素としての地位を確立してきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の洗剤用セルラーゼの最適反応pHは8〜9付近のものが多く、衣料用重質洗剤のpHであるpH10以上では有効に作用しない場合が多く見受けられる。また、反応生成物の一つであるセロビオースによって酵素活性が阻害されるということもセルラーゼの一般的な特徴の一つである(例えば、Creuzetら、Biochimie,65, 149-156(1983))。セルラーゼ活性が、その反応生成物であるセロビオースによって阻害されるため、セルロースをバイオマスとして有効に利用するためのオリゴ糖にまでの完全分解には至らず有効利用が阻害されたり、繊維の精練に時間がかかる等の課題が生じている。
【0005】
従って、本発明の目的はセロビオースによって酵素活性が阻害されることがなく、さらに高アルカリ性領域に最適反応pHを有するセルラーゼを見出すことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、自然界からセルラーゼ生産菌のスクリーニングを行ったところ、セロビオースによって酵素活性が阻害されることがなく、且つ高アルカリ性領域に最適反応pHを有するセルラーゼを生産する微生物を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、セロビオースによって阻害を受けないセルラーゼ及びその製造法を提供するものである。本発明のセルラーゼとしてはpH10においてセロビオースによって阻害されず、むしろpH10においてセロビオースにより活性化されるセルラーゼ、特にアルカリ領域で最適反応pHを有するアルカリ性セルラーゼが好ましい。また本発明のセルラーゼの加水分解のタイプとしては、セルロースの非結晶領域にランダムに作用し種々のオリゴ糖を生成するエンド型が好ましい。
【0008】
また、下記の酵素学的性質を有するアルカリセルラーゼが好ましい。
1.作用:
カルボキシメチルセルロースを液化型で分解する。
反応生成物であるセロビオースによって阻害されず、pH10においてセロビオースにより活性化される。
2.基質特異性:
カルボキシメチルセルロース、リケナン、結晶性セルロース、セロトリオース以上のセロオリゴ糖を分解し、還元糖を生成する。
3.最適反応pH:
pH10付近(グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
【0009】
更に、1〜3の性質に加えて次の酵素は性質を有するアルカリセルラーゼが特に好ましい。
4.最適反応温度:
55℃付近(pH10、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
5.安定pH範囲:
pH6〜11.5(30℃、60分間)
6.耐熱性:
55℃付近まで安定(pH7.5トリス−塩酸緩衝液、15分間)
7.分子量:
約50kDa(SDS電気泳動法)
8.等電点:
約pH4.2(等電点電気泳動法)
9.アミノ末端配列:
Asp−Asn−Ser−Val−Val−Gly−Gln−Asn−Gly−Gln−Leu−Ser−Ile
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のセルラーゼはその生産菌を培養し、その培養物から採取することにより製造される。かかるセルラーゼ生産菌としては、バチルス属に属する細菌、例えば下記の菌学的性質を有するバチルス エスピー KSM−N252株が挙げられる。
【0011】
(バチルス エスピー KSM−N252株の菌学的性質)
A 形態学的性質
(a)細胞の形及び大きさ:桿菌(0.4〜0.6×3.2〜9.6μm)
(b)多形性:無し
(c)運動性:有り
(d)胞子の形、大きさ、位置、膨潤の有無:楕円形、0.6〜1.0×0.8〜1.4μm、準端位、膨潤有り
(e)グラム染色:不定、但し炭酸ナトリウム0.1重量%(以下、単に%と記載する)を含むクリスタルバイオレット(CVT)寒天培地には生育しない。
(f)抗酸性:陰性
【0012】
B 培養学的性質
(a)一般細菌用液体培地(pH5.7、培地1):生育せず
(b)一般細菌用液体培地(pH6.8、培地1):生育せず
(c)一般細菌用寒天培地(pH6.5、培地2):生育せず
(d)一般細菌用寒天培地(pH8.5、培地2):生育する
なお、培地1はニュートリエントブロス(ディフコ)培地2はニュートリエントアガー(ディフコ)で、指示量添加し、培地1は希塩酸及び培地2は炭酸ナトリウムで所定pHに調整した。
【0013】
C 生理学的性質
(a)硝酸塩の還元:陽性
(b)脱窒反応:陰性
(c)VPテスト:陰性
(d)インドールの生成:陰性
(e)硫化水素の生成:陰性
(f)デンプンの加水分解:陽性
(g)カゼインの加水分解:陰性
(h)ゼラチンの液化:陽性
(i)クエン酸の利用:陽性
(j)カタラーゼ:陽性
(k)オキシダーゼ:陽性
(l)生育の温度範囲:11〜44℃
(m)生育のpH範囲:pH7.6〜10.5
(n)生育における酵素の影響:嫌気条件下で生育する。
(o)グルコースからのガス産生:陰性
(p)塩化ナトリウム耐性:7%塩化ナトリウム存在下で生育する。
(q)馬尿酸の加水分解:陰性
(r)4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニド(MUG)の加水分解:陰性
(s)糖の利用性:グルコース、アラビノース、キシロース、マンニトール、ガラクトース、シュークロース、マンノース、マルトース、ラクトース、トレハロース、フラクトース、メリビオース、リボース、サリシン等を炭素源として生育が認められる。グリセロール、ラムノース、イノシトール、ソルビトールを炭素源として利用できない。
【0014】
以上、バチルス エスピー KSM−N252株は中性培地に生育しない好アルカリ性細菌であり、且つカタラーゼ陽性の有胞子桿菌であることから好アルカリ性バチルス属細菌であると判断された。そこで本菌株の形態学、生理学的性質についてNielsenらが新たに分類した好アルカリ性バチルス属細菌の記載(Microbiology、141、1745-1761、1995)に準じ比較検討した結果、本菌株はバチルスシュウドアルカロフィルスに近縁な菌種であると考えられた。しかし、その性質は既知のバチルス シュウドアルカロフィルスとは完全には一致せず、他のバチルス属菌の諸性質とも一致しないため、新規なバチルス属細菌として本菌株を工業技術院生命工学研究所へバチルス エスピー KSM−N252(FERM P−17474)として寄託した。
【0015】
バチルス エスピー KSM−N252株等のセルラーゼ生産菌を用いて本発明のセルラーゼを生産するには、菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い振盪培養あるいは通気攪拌培養すれば良い。なお、培地のpHは、本発明のセルラーゼ生産に適したpHに炭酸ナトリウム等を用いて調整すれば良い。
【0016】
かくして得られた培養物中からのセルラーゼの採取及び精製は、一般の方法に準じて行うことができる。すなわち、培養物から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段、例えば塩析法、溶剤沈殿法、限外濃縮等により目的酵素を濃縮することができる。塩析法の例として硫酸アンモニウム(30〜90%飽和画分)、溶剤沈殿の例として冷アセトン(50%以上)等の条件下において酵素を沈殿させた後、遠心分離、脱塩処理を行い凍結乾燥粉末や噴霧乾燥粉末を得ることができる。脱塩方法としては透析、セファデックスG−10等を用いるゲル濾過、限外濾過等が用いられる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるがさらに公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0017】
本発明のセルラーゼの一例であるバチルス エスピー KSM−N252株由来のアルカリセルラーゼは、以下のような性質を有する。尚、酵素活性の測定は以下のように行った。
【0018】
(酵素活性測定法)
試験管に0.1mLの0.5Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)、0.4mLの2.5%(w/v)カルボキシメチルセルロース(A01MC;日本製紙)、0.4mLの脱イオン水、0.1mLの適当に希釈した酵素液(希釈は10mMトリス塩酸緩衝液、pH7.5で行った)を加え20分間反応させた後、1mLのジニトロサリチル酸試薬(0.5%ジニトロサリチル酸、30%ロッシェル塩、1.6%水酸化ナトリウム水溶液)を添加し、沸水浴中で5分間還元糖の発色を行った。氷水浴中で急冷し、4mLの脱イオン水を加え535nmにおける吸光度を測定し還元糖の生成量を求めた。尚、ブランクは酵素液を加えずに処理した反応液にジニトロサリチル酸試薬を加えた後、酵素液を添加し、同様に発色させたものを用意した。酵素1単位(1U)は、上記反応条件下において1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する量とした。
【0019】
(1)分子量(SDS電気泳動法)
SDS処理(100℃、3分間)した酵素液について12.5%アクリルアミドゲルを用いSDS電気泳動を行った。標準タンパク質としてホスホリラーゼb(97.4kDa)、血清アルブミン(67kDa)、卵白アルブミン(45kDa)、カルボニックアンヒドロラーゼ(31kDa)、トリプシンインヒビター(21.5kDa)、α−ラクトアルブミン(14.4kDa)を用い、それぞれの移動度と分子量から検量線を作製し、本酵素の分子量を求めたところ約50kDaと推定された。
【0020】
(2)等電点
マルチフォーII電気泳動システム(ファルマシア)を用いpH3.5〜9.5のPAGプレート(ファルマシア)上で本酵素の等電点電気泳動を行った。泳動したゲルをクマーシブリリアントブルーG−250により染色した後、標準タンパク質の等電点と移動度から得た検量線より本酵素の等電点を求めたところ、pH4.2付近であると決定された。
【0021】
(3)アミノ末端配列
本酵素をプロソルブフィルターに吸着させた後、プロテインシークエンサー(476A;アプライドバイオシステム)によりアミノ末端から13番目までのアミノ酸配列を調べた結果、Asp−Asn−Ser−Val−Val−Gly−Gln−Asn−Gly−Gln−Leu−Ser−Ileであった。
【0022】
(4)最適反応pH
酢酸緩衝液(pH4〜6)、リン酸緩衝液(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11)、炭酸緩衝液(pH9〜11)、リン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12.5)の各緩衝液(50mM)を用いて最適反応pHを調べた結果、本酵素はpH10のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中で最も高い反応速度を示した。また、pH8から11の間で最大活性の80%以上の活性を有していた(図1)。
【0023】
(5)最適反応温度
50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)中、30℃〜80℃の各温度で酵素反応を行い、最適反応温度を調べた。その結果、本酵素は55℃付近に最適反応温度を示し、それ以上の温度では失活した(図2)。
【0024】
(6)安定pH範囲
酢酸緩衝液(pH4〜6)、MOPS緩衝液(pH6〜8)、リン酸緩衝液(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8〜11)、炭酸緩衝液(pH9〜11)、ホウ酸緩衝液(pH9〜11)、リン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(pH11〜12.5)の各緩衝液(50mM)中に酵素を加え、30℃、30分間恒温した後、残存活性を測定した。その結果、本酵素は処理前の活性を100%とした場合、pH6〜11.5の範囲で極めて安定であった(図3)。
【0025】
(7)耐熱性
50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)中に酵素を添加し、30℃〜70℃の各温度で15分間恒温した後の残存活性を測定した。本酵素は、この条件下において55℃まで安定であった(図4)。
【0026】
(8)基質特異性
標準活性測定条件下でカルボキシメチルセルロースに対する分解速度を100%とした場合、リケナンに対して368%と高い分解速度を示し、リン酸膨潤アビセルに対し91%、キシランに対し20%の分解速度であった。しかし、カードラン、ラミナリンについては全く分解しなかった。パラニトロフェニル基誘導体のグルコシドからセロテトラオシドについての分解反応は50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.0)中において行った。その結果、本酵素はパラニトロフェニルセロビオシド以上の基質を分解することができ、パラニトロフェニルセロビオシドでは44%、パラニトロフェニルセロトリオシドでは117%、パラニトロフェニルテトラオシドでは110%の相対速度(pH8.0におけるカルボキシメチルセルロースに対する分解速度を100%とした場合)で分解した。また、不溶性セルロースであるシグマセル101(シグマ)又はアビセルSF(フナコシ)を基質とし、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)中で1時間分解させた結果、2%及び0.58%の相対速度で分解した(pH6.0におけるカルボキシメチルセルロースに対する分解速度を100%とした場合)。
【0027】
(9)基質の分解様式
50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)、1.0%カルボキシメチルセルロース(A10MC;日本製紙)から成る反応液をオストワルド粘度計(No.3;柴田科学工業)に入れ、30℃で10分間恒温した後、酵素を添加し全量を10mLとした。5から30分後に粘度を測定し、また各時間で反応液を抜き取り還元糖の生成量をジニトロサリチル酸法により調べ切断量を算出した。その結果、図5に示したように本酵素はカルボキシメチルセルロースをエンド形式で分解した。
次にセロオリゴ糖(G1−G6)を基質として50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.0)中で30℃、2時間分解反応を行った。その後、一定量を薄層クロマトプレートにスポットし、ブタノール/エタノール/脱イオン水=5/3/1(v/v)の溶媒系にて展開を行った。糖スポットの検出にはアニスアルデヒド−硫酸溶液を用いた。その結果、セロトリオース(G3)からわずかであるがG2のスポットが、セロテトラオシド(G4)からG3、G2及びG1のスポットが、セロペンタオシド(G5)からG3とG2のスポットが、セロヘキサオキドからG5、G4、G3、G2及びG1のスポットがそれぞれ検出された。従って、本酵素はG3以上のセロオリゴ糖を分解しうることが判った。
【0028】
(10)セロビオースの影響
50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)、1.0%カルボキシメチルセルロース(A10MC;日本製紙)、50〜100mMセロビオースから成る反応液をオストワルド粘度計(No.3)に入れ、30℃で10分間恒温した後、本酵素を添加し全量を10mLとした。5から30分後に粘度を測定した結果、図6に示したように本酵素は高濃度のセロビオース存在下において全く阻害されることなく、むしろ酵素活性が促進されていた。一方、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9)、1.0%カルボキシメチルセルロース、100mMセロビオースを添加した反応液に市販セルラーゼA、Bを添加した場合は、両セルラーゼ共に酵素活性は阻害された(図7)。
【0029】
(11)界面活性剤の影響
各種界面活性剤を0.05%(w/v)になるように添加した反応系において、酵素の活性を測定した。その結果、それぞれの界面活性剤の存在下において本酵素は極めて安定に活性を発現しうることが判った(表1)。
【0030】
【表1】
Figure 0004402309
【0031】
(12)キレート剤の影響
本酵素を5mM EDTA、EGTA、オルトフェナントリンを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)中で30℃、30分間恒温した後、10倍に希釈し残存活性を測定した。その後、標準活性測定法により残存活性を調べた。その結果、本酵素はいずれのキレート剤に対しても極めて安定であった。
【0032】
(13)金属塩の影響
標準活性測定条件に0.5mMの各金属塩を加えて酵素反応を行った。その結果、本酵素は塩化コバルト及び塩化第二鉄により10%程度活性化されることが判った。また塩化水銀により約20%、塩化銅及び塩化カドミウムにより約10%阻害された。その他のマンガン、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、ストロンチウム、バリウム、鉛、バリウム、ベリリウム、パラジウム等の金属イオンでは殆ど影響を示さなかった。
【0033】
このように本発明のアルカリセルラーゼは、反応物の一つであるセロビオースに阻害されず、最適反応pHを10付近に有し、界面活性剤、キレート剤耐性の新規酵素であり、衣料用等の洗浄剤用、バイオマス用、繊維処理用酵素として有用である。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物への上記セルラーゼの配合量はセルラーゼが活性を示す量であれば特に制限されないが、洗浄剤組成物1kg当たり10〜100万Uが配合できるが、経済性等を考慮し、10万U以下が好ましく、さらに好ましくは1万U以下である。
【0035】
こうして得られる本発明のセルラーゼを含有する洗浄剤組成物は、後記実施例2に示すように優れた洗浄力を有している。
【0036】
なお、本発明のセルラーゼを粉末洗剤組成物に用いる場合は、熱による失活あるいは分解を防ぐため特開昭62−257990号公報に記載の方法に基づき製造した顆粒を洗剤粒子製造後に混合することが好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は本発明のセルラーゼ以外に様々な酵素を併用することもできる。例えば、加水分解酵素、酸化酵素、還元酵素、トランスフェラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、シンテターゼ等である。このうち、プロテアーゼ、本発明以外のセルラーゼ、ケラチナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、グルコシダーゼ、グルカナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等が好ましく、特にプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼが好ましい。プロテアーゼとしては市販のアルカラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ(以上、ノボザイム社)、プロペラーゼ、プラフェクト(ジェネンコア社)、またKAP(花王)、等が挙げられる。セルラーゼとしてはセルザイム、ケアザイム(以上、ノボザイム社)、またKAC(花王)、特開平10-313859号公報記載のバチルス・エスピーKSM-S237株が生産するアルカリセルラーゼ(花王)等が挙げられる。アミラーゼとしてはターマミル、デュラミル(以上、ノボザイム社)、プラスター(ジェネンコア社)、またKAM(花王)、等が挙げられる。これらの酵素は0.001〜10%、好ましくは0.03〜5%配合される。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物には公知の洗浄剤成分を配合することができ、当該公知の洗浄剤成分としては、例えば次のものが挙げられる。
【0039】
(1)界面活性剤
界面活性剤は洗剤組成物中0.5〜60重量%(以下単に%で示す)配合され、特に粉末状洗剤組成物については10〜45%、液体洗剤組成物については20〜50%配合することが好ましい。また本発明の洗浄剤組成物が漂白洗剤又は自動食器洗浄機用洗剤である場合、界面活性剤は一般に1〜10%、好ましくは1〜5%配合される。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤の1種または組み合わせを挙げることができるが、好ましくはアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤である。
【0041】
アニオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
【0042】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。特に、非イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを4〜20モル付加した〔HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5であるような〕ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0043】
(2)二価金属イオン補足剤
二価金属イオン補足剤は0.01〜50%、好ましくは5〜40%配合される。本発明の洗浄剤組成物に用いられる二価金属イオン補足剤としては、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、オルソリン酸塩などの縮合リン酸塩、ゼオライトなどのアルミノケイ酸塩、合成層状結晶性ケイ酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、ポリアセタールカルボン酸塩などが挙げられる。このうち結晶性アルミノケイ酸塩(合成ゼオライト)が特に好ましく、A型、X型、P型ゼオライトのうち、A型が特に好ましい。合成ゼオライトは、平均一次粒径0.1〜10μm、特に0.1〜5μmのものが好適に使用される。
【0044】
(3)アルカリ剤
アルカリ剤は0.01〜80%、好ましくは1〜40%配合される。粉末洗剤の場合、デンス灰や軽灰と総称される炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号などの非晶質のアルカリ金属珪酸塩が挙げられる。これら無機性のアルカリ剤は洗剤乾燥時に、粒子の骨格形成において効果的であり、比較的硬く、流動性に優れた洗剤を得ることができる。これら以外のアルカリとしてはセスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、またトリポリリン酸塩などのリン酸塩もアルカリ剤としての作用を有する。また、液体洗剤に使用されるアルカリ剤としては、上記アルカリ剤の他に水酸化ナトリウム、並びにモノ、ジ又はトリエタノールアミンを使用することができ、活性剤の対イオンとしても使用できる
【0045】
(4)再汚染防止剤
再汚染防止剤は0.001〜10%、好ましくは1〜5%配合される。本発明の洗浄剤組成物に用いられる再汚染防止剤としてはポリエチレングリコール、カルボン酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。このうちカルボン酸系ポリマーは再汚染防止能の他、金属イオンを捕捉する機能、固体粒子汚れを衣料から洗濯浴中へ分散させる作用がある。カルボン酸系ポリマーはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのホモポリマーないしコポリマーであり、コポリマーとしては上記モノマーとマレイン酸の共重合したものが好適であり、分子量が数千〜10万のものが好ましい。上記カルボン酸系ポリマー以外に、ポリグリシジル酸塩などのポリマー、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、並びにポリアスパラギン酸などのアミノカルボン酸系のポリマーも金属イオン捕捉剤、分散剤及び再汚染防止能を有するので好ましい。
【0046】
(5)漂白剤
例えば過酸化水素、過炭酸塩などの漂白剤は1〜10%配合するのが好ましい。漂白剤を使用するときは、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)や特開平6−316700号公報記載などの漂白活性化剤(アクチベーター)を0.01〜10%配合することができる。
【0047】
(6)蛍光剤
本発明の洗浄剤組成物に用いられる蛍光剤としてはビフェニル型蛍光剤(例えばチノパールCBS−Xなど)やスチルベン型蛍光剤(例えばDM型蛍光染料など)が挙げられる。蛍光剤は0.001〜2%配合するのが好ましい。
【0048】
(7)その他の成分
本発明の洗浄剤組成物には、衣料用洗剤の分野で公知のビルダー、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩など)、抑泡剤(シリコーンなど)、香料、その他の添加剤を含有させることができる。
【0049】
本発明の洗浄剤組成物は、上記方法で得られたセルラーゼ及び上記公知の洗浄成分を組み合わせて常法に従い製造することができる。洗剤の形態は用途に応じて選択することができ、例えば液体、粉体、顆粒などにすることができる。
かくして得られる本洗浄剤組成物は、衣料洗剤、漂白洗剤、自動食器洗浄機用洗剤などとして使用することができる。
【0050】
本発明の洗浄剤組成物が粉末洗剤である場合、以下のような洗浄剤組成物であることが特に好ましい。
界面活性剤を10〜50重量%(好ましくは15〜45重量%)、水溶性無機物を10〜50重量%(好ましくは20〜40重量%)、及び水不溶性無機物5〜50重量%(好ましくは10〜40重量%)を含有する粒子であって、水溶性無機物と水不溶性無機物の合計が40〜70重量%(好ましくは45〜65重量%)であるような粒子を含む洗浄剤組成物。またこの粒子が水に溶解する過程において粒子径の1/10以上の径の気泡を粒子内部から放出し得る粒子であるような洗浄剤組成物。
【0051】
かかる粒子に用いられる界面活性剤としては(1)に記述したような様々な界面活性剤を用いることができる。
また水溶性無機物としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硫酸水素塩、塩酸塩、又はリン酸塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩等の水溶性無機塩類や、クエン酸塩やフマル酸塩等の低分子量の水溶性有機酸塩が挙げられる。
水不溶性無機物としては、1次粒子の平均粒径が0.1〜20μmのものが好ましく、例えば、結晶性もしくは非晶質のアミノ珪酸塩や、二酸化珪素、水和珪酸化合物、パーライト、ベントナイト等の粘土化合物等があるが、結晶性もしくは非晶質のアルミノ珪酸塩や、二酸化珪素、水和珪酸化合物が好適であり、中でも金属イオン封鎖能及び界面活性剤の担持能の点で結晶性アルミノ珪酸塩が好ましい。
【0052】
この粒子は洗浄性能の点で、更に水溶性ポリマーを0.5〜20重量%含有することが好ましく、1〜15重量%がより好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。
水溶性ポリマーとしては、ポリアルキレングリコール、カルボン酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、糖類等が挙げられるが、中でも金属イオン封鎖能、固体汚れ・粒子汚れの分散能及び再汚染防止能の点で分子量が数千〜10万のカルボン酸系ポリマー及びポリエチレングリコールが好ましい。特に、アクリル酸−マレイン酸コポリマーの塩、ポリアクリル酸塩及びポリエチレングリコールが好ましい。ここで、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0053】
この粒子は流動性及び非ケーキング性の点で、表面被覆剤により表面改質を行うことが好ましい。表面被覆剤は本粒子中1〜30重量%が好ましく、2〜25重量%がより好ましく、5〜25重量%が更に好ましい。表面被覆剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、タルク、クレイ、非晶質シリカ誘導体、結晶性シリケート化合物等のシリケート化合物、金属石鹸、粉末の界面活性剤等の微粉体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー又はその塩等のポリカルボン酸塩等の水溶性ポリマー、脂肪酸が挙げられる。中でも水不溶性無機物が好ましく、特に結晶性アルミノケイ酸塩、非晶質アルミノケイ酸塩、結晶性シリケート化合物が好ましい。
【0054】
この粒子は溶解性の点で、水に溶解する過程において好ましくは粒子径の1/10以上、より好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/4以上、特に好ましくは1/3以上の径の気泡を放出する。気泡の放出は、水に静置した状態にて溶解させた場合、120秒以内に所定の大きさの気泡が発生することが好ましく、60秒以内がより好ましく、45秒以内が更に好ましい。また、気泡の放出には、所定の大きさの気泡を放出可能な気孔(単数個でも複数個でもよい)を有していればよく、特に粒子の形態、構造には限定されない。
【0055】
この粒子の製法は特に限定されないが、溶解性の点で、水溶性無機物、水不溶性無機物及び要すれば水溶性ポリマーを含有するスラリーを噴霧乾燥することによって得られたベース顆粒100重量部に、界面活性剤5〜80重量部を担持させ、次いで表面被覆剤により表面改質する製法が好ましい。
【0056】
この粒子は、利便性や廃棄物低減の点で、JIS K 3362により規定された方法で測定する嵩密度は600g/L以上が好ましく、700g/L以上がより好ましく、800g/L以上が更に好ましい。また、溶解性の点で、嵩密度は1600g/L以下が好ましく、1300g/L以下がより好ましく、1000g/L以下が更に好ましい。
【0057】
この粒子は溶解性の点で、JIS Z 8801の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率から求める平均粒径は150〜700μmが好ましく、より好ましくは150〜600μm、更に好ましくは180〜400μmである。また、溶解性の点で177〜350μmの粒子が粒子中40重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。
【0058】
この粒子は洗浄性能の点で洗浄剤組成物中50〜99.5重量%が好ましく、50〜98重量%がより好ましく、60〜96重量%が更に好ましく、70〜94重量%が特に好ましい。
【0059】
【実施例】
実施例1
(1)セルラーゼ生産菌のスクリーニング
日本各地の土壌を滅菌水に懸濁したものを80℃、30分間熱処理し、以下の組成を有する寒天平板培地に塗布した[カルボキシメチルセルロース(A10MC;日本製紙)2.0%、肉エキス(オキソイド)1.0%、バクトペプトン(ディフコ)1.0%、塩化ナトリウム1.0%、リン酸2水素カリウム0.1%、炭酸ナトリウム0.5%(別滅菌)、トリパンブルー0.005%(別滅菌)]。30℃の培養器で3日間静置培養し、生育した菌の周辺にカルボキシメチルセルロースの分解に伴う溶解斑が検出されたものについて選抜し、シングルコロニー化を繰り返した。これらの菌株をポリペプトンS(日本製薬)2.0%、魚肉エキス(和光純薬)1.0%、リン酸1水素カリウム0.15%、酵母エキス(ディフコ)0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.07%、カルボキシメチルセルロース0.1%、炭酸ナトリウム0.5%(別滅菌)から成る液体培地を用いて30℃、3日間振盪培養を行った。セルラーゼを生産している菌株を選択し、とりわけ高アルカリ性域で強力な活性を示したセルラーゼ生産菌としてバチルス エスピー KSM−N252株を取得した。
【0060】
(2)バチルス エスピー KSM−N252株によるセルラーゼの生産
上述のスクリーニングにより得られたバチルス エスピー KSM−N252株の培養は、500mL容坂口フラスコに100mLの培地[ポリペプトンS1.0%、魚肉エキス0.5%、酵素エキス0.1%、リン酸1水素カリウム0.15%、硫酸マグネシウム7水塩0.07%、グルタミン酸ナトリウム1.0%、ラクトース2.0%、炭酸ナトリウム0.5%(別滅菌)]を加え、30℃、4日間好気的に行った。培地組成は、上記と同様とした。その結果、約1200U/Lの生産性を得た。
【0061】
(3)セルラーゼの精製
バチルス エスピー KSM−N252株の培養液を遠心分離(8000×g、15分間、4℃)し上清液(2L)を得た。これをモジュール(AIP−1300;旭化成)により115mLまで濃縮した。濃縮液を予め10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化しておいたDEAEトヨパール650Mカラム(5.5×18cm;東ソー)に添着した。約1.5Lの平衡化緩衝液を用いて非吸着タンパク質を洗浄溶出させた後、0〜0.4M塩化ナトリウムの濃度勾配法により吸着タンパク質を溶出させた。0.1Mの塩化ナトリウム濃度付近に溶出されたセルラーゼ活性を示す画分を集め(325mL)、限外濾過(PM10メンブレン;アミコン)により濃縮を行い25mLとした。次いで10mMリン酸緩衝液(pH6.0)にて平衡化しておいたDEAE−Bio−GelAカラム(2.5×24cm;バイオラッド)へ添着し、約350mLの同緩衝液にて洗浄溶出を行った。さらに0〜0.125M塩化カリウムを含む緩衝液(500mLずつ)を用い、濃度勾配法により吸着タンパク質の溶出を行った。その結果、0.1〜0.125Mの塩化カリウム濃度付近でアルカリセルラーゼが溶出された。この画分を集め限外濾過(PM10メンブレン)により濃縮を行った(25mL)。これを予め10mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.5)にて平衡化しておいたDEAE−Bio−GelAカラム(2.5×11cm)に添着し、0〜0.125M塩化カリウムを含む緩衝液(250mLずつ)を用い、濃度勾配法により吸着タンパク質の溶出を行い、さらに0.125〜0.25M塩化カリウムを含む緩衝液(250mLずつ)にて吸着タンパク質の溶出を行った。その結果、0.18Mの塩化カリウム濃度付近でセルラーゼが溶出され、この画分を集め限外濾過(PM10メンブレン)により濃縮を行った(1.5mL)。得られた濃縮液を0.1M塩化カリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)により平衡化したBio−GelA05mカラム(1.5×75cm;バイオラッド)に掛けゲル濾過クロマトグラフィーを行った。セルラーゼ活性を示す画分を集め(35mL)、予め10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化しておいたハイドロキシアパタイトカラム(1.5×8cm)へ添着した。セルラーゼはカラムに吸着することなく通過したがこの画分を濃縮しSDS電気泳動を行ったところ、分子量約50kDaの均一なタンパク質バンドが検出された。以上の精製操作により本酵素は約1000倍に精製され、活性収率は6%であった。ここで得られた精製セルラーゼは、前述の酵素学的性質を示すアルカリ性セルラーゼであった。
【0062】
実施例2 洗浄力試験
(1)洗剤の調製
WO99/29830号公報の実施例3に記載の洗剤を用いて洗浄力試験を行った。即ち撹拌翼を有した1m3の混合槽に水465kgを加え、水温が55℃に達した後に、50%(w/v)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液48kg、40%(w/v)ポリアクリル酸ナトリウム水溶液135kgを添加した。15分間撹拌した後に、炭酸ナトリウム120kg、硫酸ナトリウム60kg、亜硫酸ナトリウム9kg、蛍光染料3kgを添加した。更に15分間撹拌した後に、ゼオライト300kgを添加し、30分間撹拌して均質なスラリーを得た(スラリー中の水分は50重量%)。このスラリーを噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧することでベース顆粒を得た(噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が225℃で供給し、塔頂より105℃で排出)。
【0063】
次に非イオン界面活性剤15重量部と50重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液15重量部とポリエチレングリコール1重量部を70℃になるように加熱混合し、混合液を作製した。レディゲミキサー(松坂技研(株)製、容量20L、ジャケット付)に上記ベース顆粒100重量部を投入し、主軸(150rpm)とチョッパー(4000rpm)の撹拌を開始した。なお、ジャケットに75℃の温水を10L/分で流し、そこに上記混合液を3分間で投入し、その後5分間撹拌を行った。更にこの洗剤粒子群の粒子表面を結晶性アルミノ珪酸塩10重量部で表面被膜を行い、最終粒状洗剤を得た。
【0064】
<使用した原料>
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液:ネオペレックスF65(花王(株)製)
非イオン界面活性剤:エチレンオキサイド平均付加モル数が8.5のエマルゲン108KM(花王(株)製)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液:平均分子量10000(特公平2−24283号公報に実施例に記載の方法に従って製造した)
炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
ゼオライト:平均粒径が3.5μmのゼオライト4A型(東ソー(株)製)
ポリエチレングリコール:K−PEG6000(平均分子量8500,花王(株)製)
蛍光染料:チノパールCBS−X(チバガイギー社製)
【0065】
(2)洗浄力の測定法
(a)油脂人工汚染布
特開昭57―108199号記載の油脂人工汚染布を用いた。
【0066】
(b)セルラーゼ造粒物の調製
実施例1で得られた精製酵素から特開昭62―257990号公報記載の方法に基づき調製した(600U/g)。
【0067】
(c)洗浄条件及び方法
30℃に恒温した4°DH硬水に洗剤を溶解し、0.0667%洗剤水溶液1Lを調製する。人工油脂汚染布5枚(6×6cm)を洗剤水溶液に添加し、30℃、1時間放置後、洗剤溶液と人工汚染布をそのまま、ターゴトメーター用ステンレスビーカーに移し、ターゴトメーターにて100rpm、30℃、10分間撹拌洗浄する。人工汚染布を流水下で濯いだ後、アイロンプレスし反射率測定に供した。洗浄率の算出は下式に従った。
原布及び洗浄前後の汚染布の550nmにおける反射率を自記色彩系(島津製作所製)にて測定し、次式によって洗浄率を算出した。
洗浄率=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の反射率)×100
【0068】
(1)で示した粒状洗剤に種々の配合量で上記酵素を添加して洗浄力試験を行った。結果を表2に示す。本発明洗浄剤組成物が優れた洗浄力を有していることが判る。
【0069】
【表2】
Figure 0004402309
【0070】
【発明の効果】
本発明のセルラーゼは、反応産物の一つであるセロビオースに阻害されず、最適反応pHをpH10付近に有し、界面活性剤、キレート剤耐性の新規酵素であり衣料用等の洗浄剤用、バイオマス用、繊維処理用酵素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセルラーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図2】本発明のセルラーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図3】本発明のセルラーゼ安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図4】本発明のセルラーゼ安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図5】本発明のセルラーゼによるカルボキシメチルセルロース分解に伴う粘度低下と還元末端の生成量の関係を示す図である。
【図6】本発明のセルラーゼによるpH10、セロビオース存在下でのカルボキシメチルセルロース分解に伴う粘度低下を示す図である。
【図7】市販セルラーゼA、BによるpH9、セロビオース存在下でのカルボキシメチルセルロース分解に伴う粘度低下を示す図である。

Claims (4)

  1. 以下の酵素学的性質を有するセルラーゼ。
    1.作用:カルボキシメチルセルロースを液化型で分解する。反応生成物であるセロビオースによって阻害されず、pH10においてセロビオースにより活性化される。
    2.基質特異性:カルボキシメチルセルロース、リケナン、結晶性セルロース、セロトリオース以上のセロオリゴ糖を分解し、還元糖を生成する。
    3.最適反応pH:pH10付近(グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
    4.最適反応温度:55℃付近(pH10、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
    5.分子量:約50kDa(SDS電気泳動法)
  2. 以下の酵素学的性質を有するセルラーゼ。
    1.作用:カルボキシメチルセルロースを液化型で分解する。反応生成物であるセロビオースによって阻害されず、pH10においてセロビオースにより活性化される。
    2.基質特異性:カルボキシメチルセルロース、リケナン、結晶性セルロース、セロトリオース以上のセロオリゴ糖を分解し、還元糖を生成する。
    3.最適反応pH:pH10付近(グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
    4.最適反応温度:55℃付近(pH10、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液)
    5.安定pH範囲:pH6〜11.5(30℃、60分間)
    6.耐熱性:55℃付近まで安定(pH7.5トリス−塩酸緩衝液、15分間)
    7.分子量:約50kDa(SDS電気泳動法)
    8.等電点:約pH4.2(等電点電気泳動法)
    9.アミノ末端配列:Asp−Asn−Ser−Val−Val−Gly−Gln−Asn−Gly−Gln−Leu−Ser−Ile
  3. バチルス エスピー KSM−N252(FERM P−17474)を培養し、セルラーゼを採取する請求項1又は2記載のセルラーゼの製造法
  4. 請求項1又は2記載のセルラーゼを含有する洗浄剤組成物。
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