JP4401469B2 - ズームレンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスチルカメラ、テレビカメラ、ビデオカメラ、写真用カメラ、そしてデジタルカメラ等に好適なズームレンズに関し、特に物体側の第1群を構成する複数のレンズ群のうちの1つのレンズ群を移動させてフォーカスを行う、所謂インナーフォーカス方式を用いた望遠域を含むマイク撮影に好適なズームレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりビデオカメラ、スチルカメラ、そしてテレビカメラ等のズームレンズのうち、物体側から順に正の屈折力の第1群、変倍用の負の屈折力の第2群(変倍レンズ群)、変倍に伴って変動する像面を補正する為の正又は負の屈折力の第3群(補正レンズ群)、開口絞り、そして結像用の正の屈折力の第4群(リレーレンズ群)の4つのレンズ群より成る所謂4群ズームレンズにおいて、第1群中の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う、所謂インナーフォーカス式を採用したものが、例えば特公昭59−4686号公報で提案されている。
【0003】
同公報では第1群を負の屈折力の第11群、正の屈折力の第12群、そして正の屈折力の第13群の3つのレンズ群より構成し、無限遠物体から至近距離物体にかけてのフォーカスを第12群を像面側へ移動させて行っている。
【0004】
又、特開昭52−109952号公報,特開昭55−57815号公報,特開昭55−117119号公報,特公昭61−53696号公報,特公昭52−41068号公報等では、4群ズームレンズにおいて第1群を複数のレンズ群に分割し、そのうち最も物体側のレンズ群をフォーカシング時に固定とし、それより後方の像面側のレンズ群の一部をフォーカシング時に移動させるインナーフォーカシングとしている。
【0005】
又、特開昭52−128153号公報では4群ズームレンズにおいて第1群を2つのレンズ群に分割し、その2つのレンズ群の間隔を無限遠物体から有限距離物体へのフォーカシングに際し、大きくなるように移動させ、フォーカシングを行っている。
【0006】
一般にインナーフォーカス式のズームレンズは第1群全体を移動させてフォーカスを行なうズームレンズに比べて第1群の有効径が小さくなり、レンズ系全体の小型化が容易となり、又近接撮影、特に極近接撮影が容易となり、更に比較的小型軽量のレンズ群を移動させて行っているのでレンズ群の駆動力が小さくてすみ、迅速な焦点合わせができる等の特徴を有している。
【0007】
このようなインナーフォーカス式のズームレンズは、オートフォーカス機能を有したカメラに適している。これはフォーカスレンズ群のレンズ重量が軽量となるために一定物体距離に対するフォーカス速度を速くすることができるためである。
【0008】
特にフォーカス移動トルクが低減し、電気的負荷を減少させ、駆動機構の小型化や高速なフォーカス伝達ができるため、有効となっている。
【0009】
この他インナーフォーカス式はスムーズな駆動を行うため、フォーカスレンズ群は外からの衝撃によるフォーカス駆動障害を防止することができる等の特徴がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ズームレンズにおいて、大口径比、高変倍比で、しかも全変倍範囲及び全フォーカス範囲にわたり高い光学性能を得る為には各レンズ群の屈折力(パワー)やレンズ構成等を適切に設定する必要がある。
【0011】
一般に全変倍範囲及び全フォーカス範囲にわたり収差変動が少なく高い光学性能を得るには、例えば各レンズ群のパワーを小さくして各レンズ群で発生する収差量を小さくするか、各レンズ群のレンズ枚数を増加させて収差補正上の自由度を増やすことが必要となってくる。
【0012】
この為、高変倍比のズームレンズを達成しようとすると、どうしても各レンズ群の空気間隔が大きくなったり、レンズ枚数が増加するなどして、レンズ系全体が重厚長大化してくるという問題点が生じてくる。
【0013】
又、最近のオートフォーカス機能を有したカメラでは、フォーカス用のレンズ群の重量をなるべく軽量にして迅速にフォーカスすることが重要となっている。又、インナーフォーカス式は前述した特徴があるが、この方式を用いてレンズ系全体の簡素化を図ろうとすると、フォーカシングによる諸収差の変動が顕著となり、光学性能を良好に維持するのが大変難しくなってくる。
【0014】
本発明は、4群ズームレンズにおいて、第1群を第1aレンズ群L1a,第1bレンズ群L1bの2つのレンズ群より構成し、このうち第1bレンズ群L1b群を光軸上、移動させてフォーカスを行うインナーフォーカス方式を採用しつつ、大口径化及び高変倍化を図り、かつ各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することにより、変倍及びフォーカシングに伴う球面収差、色収差などの諸収差の変動を減少させ、全変倍範囲及び全フォーカス範囲にわたり高い光学性能を有したズームレンズの提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明のズームレンズは、物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、そして正の屈折力の第4レンズ群の4つのレンズ群のみをレンズ群として有し、広角端から望遠端への変倍において前記第1レンズ群と第2レンズ群の間隔が広く、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が狭くなるように、少なくとも第2レンズ群と第3レンズ群を光軸上移動させ、前記第1レンズ群は物体側より正の屈折力の単レンズで構成された第1aレンズ群と、全体として正の屈折力の第1bレンズ群で構成され、無限遠物体から至近距離物体へのフォーカシングを前記第1bレンズ群を物体側に光軸上移動させて行うズームレンズであって、
広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFi、前記第1aレンズ群と第1bレンズ群の焦点距離をそれぞれF1a,F1bとしたとき
0.6 <F1 /Fm <1.2
0.16<F1b/F1a<0.4
但し、
【数3】
の条件式を満足することを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記第1aレンズ群は物体側へ凸面を向けた正レンズ、第1bレンズ群は物体側より順に物体側へ凸を向けたメニスカス状の負レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズより構成することを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は請求項1又は2の発明において、広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFiとしたとき
0.18<|F2/Fm|<0.35
0.6 < F3/Fm <1.2
0.45< F4/Fm <1
但し、
【数4】
の条件式を満足することを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明のカメラは、請求項1から3のいずれか1項のズームレンズを有することを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1,図5は各々本発明の数値実施例1,2の広角端のズーム位置におけるレンズ断面図である。
【0024】
図中L1は変倍中固定の正の屈折力の第1群である。第1群L1は1枚の正レンズより成る正の屈折力の第1aレンズ群L1aと、正の屈折力の第1bレンズ群L1bの2つのレンズ群より成っている。
【0025】
無限遠物体から至近物体へのフォーカスは、第1bレンズ群L1bを物体側へ移動させて行っている。
【0026】
L2は第2群としての変倍用の負の屈折力のバリエータであり、光軸上像面側へ単調に移動させることにより、広角端(ワイド)から望遠端(テレ)への変倍を行っている。
【0027】
L3は第3群としての正の屈折力のコンペンセータであり、変倍に伴う像面変動を補正しており物体側に凸状の軌跡を有して移動する。SPは絞り、L4は第4群としての正の屈折力のリレー群である。IPは像面である。
【0028】
一般に4群ズームレンズにおいて、望遠端のズーム位置で物体距離の変化があると光学性能、特に球面収差と軸上色収差の変動が大きくなり、最短撮影距離を短くすることが難しくなると共に良好なる画像を得るのが難しくなってくる。
【0029】
そこで本発明においては前述の構成を有した4つのレンズ群より成るズームレンズにおいて、無限遠物体から至近距離物体への焦点合わせを第1群L1中の第1bレンズ群L1bを物体側へ移動させて行うインナーフォーカス方式を採用し、物体距離全般にわたり良好なる光学性能を得ると共に、外圧を防止しつつフォーカス駆動トルクに対し最適なフォーカスレンズ群のレンズ重量とフォーカス移動量を得ている。
【0030】
本発明に係るズームレンズにおいて、更に大口径化及び高変倍化を図りつつインナーフォーカス方式を採用しつつ物体距離全般にわたり良好なる光学性能を得るには、次の諸条件のうち少なくとも1つを満足させるのが良い。
【0031】
(ア−1)広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFi、前記第1aレンズ群と第1bレンズ群の焦点距離をそれぞれF1a,F1bとしたとき
0.6 <F1 /Fm <1.2 ‥‥‥(1)
0.16<F1b/F1a<0.4 ‥‥‥(2)
但し、
【0032】
【数5】
【0033】
の条件式を満足することである。
【0034】
条件式(1)はズーム中間域におけるレンズ系の焦点距離と第1レンズ群の焦点距離の比率を表わし、上限値を越えて第1レンズ群の屈折力が弱くなりすぎるとレンズ全長が長くなり同時に第1レンズ群のレンズ径が大きくなってきて良くない。
【0035】
他方、下限値を越えると高次の球面収差や色収差が多く発生してきて、これを補正することが困難になってくる。
【0036】
条件式(2)は第1レンズ群中の第1aレンズ群(前群)と第1bレンズ群(後群)の屈折力比を表わし、上限値を越えて後群の屈折力が弱くなってくるとフォーカシングにおける移動量が増加してしまい、次いでレンズ全長及びレンズ径の増加を招いてしまう。
【0037】
一方、下限値を超えると第1レンズ群の屈折力が後群に集中してしまう為、一定の屈折力を得る為には、後群のレンズ面に強い曲率を与える必要があり、結果レンズ体積及びレンズ重量の増加を招いてしまう。
【0038】
(ア−2)前記第1aレンズ群は物体側へ凸面を向けた正レンズ、第1bレンズ群は物体側より順に物体側へ凸を向けたメニスカス状の負レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズより構成することである。
【0039】
これによれば、軸上収差と軸外収差のバランスを良く補正することができる。
【0040】
(ア−3)広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFiとしたとき
0.18<|F2/Fm|<0.35 ‥‥‥(3)
0.6 < F3/Fm <1.2 ‥‥‥(4)
0.45< F4/Fm <1 ‥‥‥(5)
但し、
【0041】
【数6】
【0042】
の条件式を満足することである。
【0043】
条件式(3)は主に変倍作用を有する第2レンズ群の屈折力に関わり、変倍における第2レンズ群の移動量を規制しつつ高画質を保つための条件である。
【0044】
条件式(3)の上限値を越えて第2レンズ群の屈折力が弱くなってくると第2レンズ群の一定移動に対する変倍作用が弱くなり、結果として一定変倍比を得るため第2レンズ群の大きな移動空間が必要になりレンズ系が大型化してしまう。
【0045】
他方、下限値を越えると第2レンズ群の強い負レンズ作用により高次の球面収差や色収差が発生してこれを補正することが困難となる。
【0046】
条件式(4)は、主に変倍時における像面位置変動の補正作用を行う第3レンズ群の屈折力に関し、上限値を越えて第3レンズ群の屈折力が弱まり、第3レンズ群の共役点間隔が広くなると同時に像面位置補正を行うためのレンズ移動量が大きくなってしまう為レンズ全長が長くなってきて良くない。
【0047】
一方、下限値を超えて第3レンズ群の屈折力が強くなってくると負の球面収差が大きく発生し、これを他のレンズ群で補正を行うことが困難となってくる。
【0048】
条件式(5)は、主に第3レンズ群から射出される略アフォーカル光束を像面上に結像させる作用を有する第4レンズ群の屈折力に関する。
【0049】
条件式(5)の上限値を越えると第4レンズ群の屈折力が弱くなりすぎる為バックフォーカスが長くなってくるため、レンズ全長が増大してきて良くない。
【0050】
他方、下限値を越えるとレンズ全系のバックフォーカスが短くなりすぎて、一眼レフレックスカメラ使用時におけるクイックリターンミラーとの干渉を生じてくると同時に像面湾曲等軸外の高次収差が大きく発生してくる。
【0051】
(ア−4)第2レンズ群を物体側より像面側に強い凹面を向けた負レンズ、両レンズ面が凹面の負レンズと正レンズが接合された全体として負のレンズ、物体側に凹面を向けた負レンズより構成することである。
【0052】
(ア−5)第3レンズ群を物体側より、両レンズ面が凸面の正レンズとメニスカス状の負レンズを接合した全体として正のレンズ群とするのが良い、また更に物体側に正レンズを追加すれば更なる収差補正効果が期待できる。
【0053】
(ア−6)第4レンズ群を物体側より、物体側に凸面を向けた正レンズ、物体側に凸面を向けた両レンズ面が凸面の正レンズと像面側に凹面を向けた両レンズ面が凹面の負レンズの全体として負の接合レンズ、広い空気間隔を挟んで正レンズ、像面側に凸面を向けたメニスカス状の負レンズ、正レンズで構成し、変倍中、光軸上固定とするのが良い。
【0054】
(ア−7)更なる光学性能向上の為レンズ系の一部に非球面や回折光学素子、屈折分布型光学材料を導入するのが良い。
【0055】
(ア−8)光学系の一部を偏心させることにより像変位を行い、撮影時の像ブレ補正に用いても良く、特に第2レンズ群又は第4レンズ群の全体もしくはレンズ群中の一部を光軸と垂直方向に移動させる方法が高画質を保持する上で効果的である。
【0056】
次に本発明の数値実施例を示す。数値実施例においてRiは物体側より順に第i番目のレンズ面の曲率半径、Diは物体側より第i番目のレンズ厚及び空気間隔、Niとνiは各々物体側より順に第i番目のレンズのガラスのd線の屈折率とアッベ数である。又、前述の各条件式と数値実施例における諸数値との関係を表−1に示す。
【0057】
【外1】
【0058】
【外2】
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば以上のように、4群ズームレンズにおいて、第1群を第1aレンズ群L1a,第1bレンズ群L1bの2つのレンズ群より構成し、このうち第1bレンズ群L1bを光軸上、移動させてフォーカスを行うインナーフォーカス方式を採用しつつ、大口径化及び高変倍化を図り、かつ各レンズ群のレンズ構成を適切に設定することにより、変倍及びフォーカシングに伴う球面収差、色収差などの諸収差の変動を減少させ、全変倍範囲及び全フォーカス範囲にわたり高い光学性能を有したズームレンズを達成することができる。
【0061】
この他本発明によればフォーカスレンズ群を電気的に駆動する際のフォーカス移動トルクの低減を行いつつ高画質な変倍比2.8程度の望遠型のズームレンズを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の数値実施例1の広角端のレンズ断面図
【図2】本発明の数値実施例1の広角端の収差図
【図3】本発明の数値実施例1の中間の収差図
【図4】本発明の数値実施例1の望遠端の収差図
【図5】本発明の数値実施例2の広角端のレンズ断面図
【図6】本発明の数値実施例2の広角端の収差図
【図7】本発明の数値実施例2の中間の収差図
【図8】本発明の数値実施例2の望遠端の収差図
【符号の説明】
L1 第1群
L2 第2群
L3 第3群
L4 第4群
L1a 第1aレンズ群
L1b 第1bレンズ群
SP 絞り
IP 像面
d d線
g g線
S.C 正弦条件
ΔS サジタル像面
ΔM メリディオナル像面
Claims (4)
- 物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、そして正の屈折力の第4レンズ群の4つのレンズ群のみをレンズ群として有し、広角端から望遠端への変倍において前記第1レンズ群と第2レンズ群の間隔が広く、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が狭くなるように、少なくとも第2レンズ群と第3レンズ群を光軸上移動させ、前記第1レンズ群は物体側より正の屈折力の単レンズで構成された第1aレンズ群と、全体として正の屈折力の第1bレンズ群で構成され、無限遠物体から至近距離物体へのフォーカシングを前記第1bレンズ群を物体側に光軸上移動させて行うズームレンズであって、
広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFi、前記第1aレンズ群と第1bレンズ群の焦点距離をそれぞれF1a,F1bとしたとき
0.6 <F1 /Fm <1.2
0.16<F1b/F1a<0.4
但し、
- 前記第1aレンズ群は物体側へ凸面を向けた正レンズ、第1bレンズ群は物体側より順に物体側へ凸を向けたメニスカス状の負レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズ、物体側へ凸面を向けた正レンズより構成することを特徴とした請求項1のズームレンズ。
- 広角端における全系の焦点距離をFw、望遠端における全系の焦点距離をFt、前記第iレンズ群の焦点距離をFiとしたとき
0.18<|F2/Fm|<0.35
0.6 < F3/Fm <1.2
0.45< F4/Fm <1
但し、
- 請求項1から3のいずれか1項のズームレンズを有することを特徴とするカメラ。
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