JP4401180B2 - 圧延銅箔及びその製造方法、並びに積層基板 - Google Patents
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Description
また、上記従来技術の場合、方位が(100)面((200)面と等価)に揃っているので、方位差によるエッチング速度差の問題は小さくなる。しかし、再結晶粒が粗大化するため(1つの粒のエッチングによる減肉量が大きくなり)、エッチング到達深さが深くなるほどエッチング面の凹凸が大きくなる。その結果、周期が長く比較的大きなうねり(粗さ指標における平均凹凸間隔Smが大きい)を生じ、回路の直線性が低下する。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、エッチング性に優れ、回路の直線性を向上できる圧延銅箔の提供を目的とする。
なお、本発明においては、隣接する組織との方位の角度差が2°以上のものを全て粒界とみなし、そして、圧延面側から観察した時に、ある組織に隣接する組織の少なくとも一つとの角度差が2°以上15°未満である粒界で囲まれる領域をセル組織とした。一方、熱処理により、隣接する組織との方位の角度差がすべて15°以上となった部分を粒界とする組織を再結晶組織とした。
そして、このセル組織が観察される部分については、上記結晶粒の短径やアスペクト比をセル組織で評価し、セル組織が観察されない部分については再結晶組織で評価した。
この組織は、図1、図2に示すような繊維状の組織であり、圧延面側(図の紙面側)からみたとき、圧延方向の組織の長さ(長径)が50μmを超え、圧延方向と垂直な方向の組織の長さ(短径)が5μm未満程度である(例えば、図1の中央部右側の灰色の組織)。この組織(結晶粒)は、冷間圧延前の結晶粒が加工によって圧延方向に強く引き伸ばされるため、各結晶粒は明瞭ではないが、そのアスペクト比は10を超えている。この繊維状組織が存在する銅箔をエッチングすると、エッチング面に凹凸が生じ、回路の直線性も低下する。なお、図2は、図1に示す材料をさらに熱処理(350℃で15分)したものである。
この組織は、図3に示すような微細組織である。つまり、上記繊維状の組織をさらに冷間圧延で高加工し、最終的に加工率ηが2.3以上の加工度となるようにし、厚み20μm以下とすると、繊維状組織が分断され、又、加工による転位を基点とした回復により動的再結晶が進行し、微細な(短径2μm以下の)結晶粒が生じる。又、強加工による組織の分断等により、結晶粒の上記比も10以下となる。このような結晶粒を持つ銅箔をエッチングすると、上記した理由でエッチング面の凹凸が少ない。
ln(t0/t)
(但し、t0:圧延前の板厚、 t:圧延後の板厚)
で表され、上記場合は、過程(1)を含む冷間圧延の入側と、過程(2A)の出側との板厚から求められる冷間圧延の加工度である。又、t0は最終熱処理後(通常は最終焼鈍後、焼鈍を行わない場合は熱間圧延後)の板厚である。例えば、9mm厚の板を熱間圧延後、冷間圧延で0.3mm厚とし、さらに焼鈍後(板厚0.3mmのまま)、冷間圧延して0.012mm厚とした場合、t0=0.3mm、t:=0.012mmとなる。一方、9mm厚の板を熱間圧延後、熱処理を施さずに第1の冷間圧延で0.3mm厚とし、第2の冷間圧延で0.012mm厚とした場合、t0=9mm、t:=0.012mmとなる。
この組織は、図4に示すような微細組織であるが、上記(2A)で製造した銅箔にさらに熱処理(350℃で15分)したことにより、上記(2A)の場合より結晶粒が成長して大きくなっている。この実施形態の場合、例えば銅中にSn、P、Znのうち1種以上を添加することにより、樹脂と圧延銅箔とを積層する際の熱硬化処理に伴って静的再結晶が急速に進んで粗大粒が成長することを防止する。従って、これらの元素の存在下では、微細組織に上記熱硬化処理を施しても、適度な粒径、アスペクト比を持つことができる。
なお、フレキシブル基板に用いる樹脂に応じて、熱硬化時の条件も変わり、樹脂によっては、ポリイミド樹脂より低温の条件で硬化するものもある。又、熱硬化処理を行わない場合もありうる。これらの場合、熱処理を行わない上記(2A)の組織に近い形態となる。
この組織は、図5に示すような粗大組織である。つまり、熱処理によって繊維状組織が急速に静的再結晶し、その際結晶方位が(100)に揃った粗大粒(結晶粒径が100μm以上)が成長する。このような結晶粒を持つ銅箔をエッチングすると、同一方位の結晶粒の集団中に異なる方位の結晶粒や介在物が点在し、その結晶粒や介在物が選択的にエッチングされるので、かえって凹凸が生じ易くなる。例えば、図3の中央左側部分には、100μm以上の巨大粒内に微小介在物が見られる。
上記したように、銅中にSn、P、Znのうち1種以上を必要に応じて添加できる。これにより、樹脂と圧延銅箔とを積層する際の熱硬化処理に伴って静的再結晶が急速に進んで粗大粒が成長することを防止する。これらの元素の存在下では、微細組織が積層時の熱硬化処理を施されても、適度な粒径、アスペクト比を持つことができる。Sn、P、Znはいずれか1種のみでも、複合添加してもよいが、合計含有量が0.01〜0.2質量%であることが好ましい。合計含有量が0.01質量%未満であると、上記効果が不充分となり、樹脂フィルムに圧延銅箔を積層する際の熱硬化処理により、銅箔の組織が静的再結晶し、粗大粒となる。一方、0.2質量%を超えると導電率が低下し、回路用として不適当である。
Oの含有量が0.005質量%以下であることが好ましい。0.005質量%を超えると、酸化物系の介在物が形成され、これが選択エッチングされるので、エッチング面の凹凸が大きくなる。Oの含有量の下限は、用いる銅素材によっても変化するが、箔は比表面積が大きく、表面からOを吸着するので、素材中に比べてO含有量が高くなる。通常、Oの含有量の下限は、0.0003%程度である。
その他の不純物の含有量は、JISに規格する無酸素銅と同一であるのが好ましい。例えば、JIS H 2123に規格する無酸素形銅C1011における、不純物の含有量と同等にすることができる。このようにすると、介在物の形成等が防止され、エッチング性が低下することがない。
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.11%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、再結晶焼鈍を行わずに12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。冷間圧延における加工率ηは6.9であった。冷間圧延工程において、0.1mm厚から12μm厚までの圧延時は、1パス当たりのひずみ速度を5×106s−1以上とした。
試料の圧延面を、鹿1級リン酸浴中、1A、1.5Vで10分間電解研磨した後、FE−SEMを用いたEBSP法により測定を行った。測定は、加速電圧20kVで20μm角の領域について行い、逆極点図マップを得ることで、結晶粒界を含む組織写真を得、これより組織を観察した。組織はセル組織であった。図3は、試料の逆極点図マップを示す。
次に、この試料にワニス状のポリイミド前駆体(宇部興産(株)製のU-ワニス-A)を約200μm厚(出来上がり厚み約25μm)塗布し、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、及び350℃で10分間の熱処理をこの順で連続して行い、樹脂を硬化させた。この熱処理後の試料の逆極点図マップを同様にして得た。図4は、熱処理後の試料の逆極点図マップを示す。
上記逆極点図マップを用い、熱処理前及び熱処理後の試料の圧延方向(圧延ロールの目の方向で判断)と圧延方向に直角な方向について、それぞれ切断法により平均粒径を計算した。圧延方向の平均粒径を長径とし、圧延方向に直角な方向の平均粒径を短径とし、アスペクト比を求めた。
熱処理をしていない試料を350℃で15分間焼鈍後、硫酸-過酸化水素系エッチング液で銅箔の厚さを9μmに減肉した。次に、ドライフィルムレジスト(旭化成(株)、SUNFORT、厚さ20μm)をラミネートし、回路幅50μm、回路間隔50μmの短冊型の回路パターンを露光、現像により形成した。そして、エッチング液として45℃、45ボーメの塩化第2鉄水溶液を用い、エッチングファクタ((銅箔厚み)×2/(各回路の底部幅−各回路の頂部幅))が3.5〜4.5となる条件で銅箔をエッチングした。エッチング後の回路を上から顕微鏡観察し、回路の周縁部分の輪郭を目視評価した。
○:顕微鏡観察したとき、回路の周縁部分の輪郭が直線に近い。
×:顕微鏡観察したとき、回路の周縁部分の輪郭がうねりを持って波打っている。
なお、上記短冊型の回路パターンは、短冊が延びる方向が圧延方向に平行なもの、圧延方向に垂直なもの、圧延方向と45度の角度をなしたもの、についてそれぞれ別個に形成し、それぞれ別個にエッチングした。
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.15%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、冷間圧延して厚み0.3mmとした後、再結晶焼鈍を行った。次いで、この試料を12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。再結晶焼鈍後の冷間圧延における加工率ηは3.2であった。又、冷間圧延工程において、0.1mm厚から12μm厚までの圧延の際、1パス当たりのひずみ速度を5×106s−1以上とした。
実施例1とまったく同様にして、熱処理していない試料の組織観察を行ったところ、セル組織であることが判明した。
3.結晶粒の大きさの測定
実施例1とまったく同様にして、逆極点図マップを用い、熱処理していない試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、回路の直線性を評価した。
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.15%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、冷間圧延して0.15mm厚とした後、再結晶焼鈍を行い、さらに12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。再結晶焼鈍後の冷間圧延における加工率ηは2.5であった。又、冷間圧延工程において、0.1mm厚から12μm厚までの圧延の際、1パス当たりのひずみ速度を8×106s−1以上とした。
2.組織の観察
実施例1とまったく同様にして、熱処理していない試料の組織観察を行ったところ、セル組織であることが判明した。
3.結晶粒の大きさの測定
実施例1とまったく同様にして、逆極点図マップを用い、熱処理していない試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、回路の直線性を評価した。
1.試料の製造
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.03%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、冷間圧延して0.15mm厚とした後、再結晶焼鈍を行い、さらに12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。再結晶焼鈍後の冷間圧延における加工率ηは2.5であった。又、冷間圧延工程において、0.1mm厚から12μm厚までの圧延の際、1パス当たりのひずみ速度を3×106s−1以下とした。
2.組織の観察
熱処理していない試料及び熱処理後(350℃で15分間)の試料を実施例1と同様にして電解研磨した後、実施例1で用いたFE−SEMにより、各試料の組織観察を行ったところ、それぞれ、図1、図2に示す繊維状組織であることが判明した。
3.結晶粒の大きさの測定
上記組織観察に用いた写真により、熱処理していない試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、回路の直線性を評価した。
1.試料の製造
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.08%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、冷間圧延して0.3mm厚とした後、再結晶焼鈍を行い、さらに12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。再結晶焼鈍後の冷間圧延における加工率ηは3.2であった。又、冷間圧延工程において、0.1mm厚から12μm厚までの圧延の際、1パス当たりのひずみ速度を5×106s−1以下とした。
2.組織の観察
実施例1とまったく同様にして、熱処理後(350℃で15分間)の試料の組織観察を行ったところ、静的再結晶した組織であることが判明した。又、逆極点図マップを見ると、各結晶粒の方位の多くが(100)面に揃っていた。図5は、熱処理後の試料の逆極点図マップを示す。
3.結晶粒の大きさの測定
実施例1とまったく同様にして、逆極点図マップを用い、熱処理後の試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、回路の直線性を評価した。
1.試料の製造
実施例1とまったく同様にして試料を製造した後、350℃で60分間の熱処理を行い、試料を部分的に再結晶させた。
2.組織の観察
上記熱処理後(350℃で60分)の試料を実施例1と同様にして電解研磨した後、実施例1で用いたFE−SEMにより、試料の組織観察を行ったところ、図7に示すように、セル組織と静的再結晶した粗大粒との混合組織であることが判明した。
3.結晶粒の大きさの測定
上記組織観察に用いた写真により、試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、上記熱処理後(350℃で60分)の回路の直線性を評価した。
1.試料の製造
O(酸素)濃度0.0005%の無酸素銅に0.110%のSnを添加したインゴットを鋳造し、これを12mm厚になるまで熱間圧延後、冷間圧延して0.10mm厚とした後、再結晶焼鈍を行い、さらに12μm厚になるまで冷間圧延し、試料を製造した。再結晶焼鈍後の冷間圧延における加工率ηは2.1であった。又、冷間圧延工程において0.10mm厚から12mm厚(12mm厚から0.10mm厚)までの圧延の際、1パス当たりのひずみ速度を5×106s-1以上とした。
2.組織の観察
熱処理後(350℃で15分間)の試料を実施例1と同様にして電界研磨した後、実施例1で用いたFE−SEMにより組織観察を行ったところ、繊維状組織であることが判明した。
3.結晶粒の大きさの測定
上記組織観察に用いた写真により、熱処理した試料の長径と短径を測定し、アスペクト比を求めた。
4.直線性の評価
実施例1とまったく同様にして、回路の直線性を評価した。
Claims (7)
- Sn、P、Znのうち1種以上を合計で0.01〜0.2質量%含有し、Oの含有量が0.005質量%以下であって、その他の不純物の含有量が無酸素銅と同一であり、圧延面側からみたときに、結晶粒の短径が2μm以下で、前記短径に対する長径の比が10以下であり、かつ厚みが20μm以下であることを特徴とする圧延銅箔。
- 冷間圧延工程において、1パス当たりのひずみ速度を5×10 6 s −1 以上として製造されていることを特徴とする請求項1に記載の圧延銅箔。
- 前記比は、350℃で15分間の熱処理後の値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延銅箔。
- 銅素材を加工率ηが2.3以上の加工度で冷間圧延して厚み20μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧延銅箔の製造方法。
- 熱延銅素材を、再結晶焼鈍せずに加工率ηが2.3以上の加工度で冷間圧延して厚み20μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧延銅箔の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の圧延銅箔からなる回路部が樹脂フィルムと積層されていることを特徴とする積層基板。
- 前記圧延銅箔がエッチングにより厚み10μm以下に減肉されていることを特徴とする請求項6に記載の積層基板。
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