JP4401059B2 - 燃料電池用のアノード触媒を調製するプロセスおよびそのプロセスを用いて調製されたアノード触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一酸化炭素による毒作用(poisoning)に対して高い耐性を有するPEM燃料電池用の白金−ルテニウム触媒を提供する。この触媒は、固体高分子電解質型燃料電池(PEM燃料電池)を備える燃料電池用のアノード触媒として特に適切であるが、直接型メタノール燃料電池(DMFC)用のアノード触媒としても適切である。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は基本的には、ガスによって動作するバッテリであり、水および酸素の反応から得られたエネルギーを電気エネルギーに直接変換する。本発明は、PEM燃料電池(PEM=polymer electrolyte membrane(固体高分子電解質型))用触媒のうち、水素含有ガスまたはメタノール(DMFC=direct methanol fuel cell(直接メタノール燃料電池))と動作させる用途に適切な触媒について述べるものである。前者の種類の燃料電池の場合、エネルギー密度および頑強性が高いため、電気エンジンによって駆動されるモータ車両の動力源としてその重要性が高まっており、後者の種類の燃料電池の場合、水素生成ユニットが不要となるため、必要ユニット数を低減することが可能となる。
【0003】
従来の内燃エンジンと比較すると、燃料電池は極めて排出が極めて低く、同時に効率も極めて高い。燃料ガスとして水素を用いる場合、電池のカソード側において排出されるのは水だけである。このような駆動システムを備えるモータ車両は、ZEV(zero emission vehicle(ゼロエミッションビークル))と呼ばれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現在、水素は依然として高価であり、保存および車両への燃料補給の点において問題がある。そのため、別の方法として、車両内においてメタノールから水素を直接生成する方法が注目されている。車両タンクに貯蔵されているメタノールは、燃料電池の上流にあるユニットにおいて、二次成分としての二酸化炭素および一酸化炭素と共に、水素を豊富に含む燃料ガスに変換される。または、燃料電池のアノードにおいて直接酸化される。前者の場合、シフト反応または優先的な酸化(PROX)を用いて一酸化炭素を反応させる浄化工程も必要となる。そのため、理論上は、改質油ガスの構成は、75容積%の水素および25容積%の二酸化炭素のみから構成される。このガスは実際は、浄化工程後もある程度の窒素を含有しており、浄化の程度によっては、様々な量の一酸化炭素(最大1容積%)を依然として含む。DMFCによる動作の場合、メタノールをアノード上で直接電気化学的に酸化させて二酸化炭素を得る。このアノード反応の複雑な反応メカニズムにおいて行われる中間工程の結果、一酸化炭素の吸着が発生し、その後、吸着した一酸化炭素はさらに酸化されて二酸化炭素となる。
【0005】
PEM燃料電池のアノード側およびカソード側において、白金を用いた触媒が用いられている。これらの触媒は微細な貴金属粒子からなり、これらの貴金属粒子は、導電性支持材料(カーボンブラックまたは黒鉛である場合が多い)上に堆積される。貴金属の濃度は典型的には、触媒の総重量に対して10〜80重量%である。
【0006】
従来の白金触媒は一酸化炭素による毒作用に対して非常に敏感である。したがって、アノード触媒の毒作用が原因となって燃料電池の性能が低下する事態を防ぐためには、アノードガス中の一酸化炭素の濃度を10ppm未満まで低減させる必要がある。これは、PEM燃料電池の場合、作動温度が100℃までと低く、一酸化炭素による毒作用に対して特に敏感であるため、特に当てはまる。DMFCシステムの場合、問題はもっと深刻になる。
【0007】
一酸化炭素による白金触媒への毒作用に関する問題は、一定期間にわたって認識されてきている。白金触媒の場合、分子構造が特殊であるため、一酸化炭素が白金表面に吸着し、これにより、アノードガス中の水素分子が白金中の触媒作用活性中心部分に接近することが阻害される。
【0008】
白金を他の金属(例えば、ルテニウム)と合金化または他の金属(例えば、ルテニウム)にドーピングすることにより、一酸化炭素による毒作用に対する白金触媒の耐性を改善することができることも知られている。一般的にこのことが意味することは、白金上に吸着された一酸化炭素の二酸化炭素への酸化が発生し、その後、二酸化炭素が直ちに脱着することである。これを行うために必要な酸素は、少量の空気(以下、これを空気採取と呼ぶ)の様態でか、または、アノードガスストリーム中の水として結合した様態で供給される。空気採取を用いると、一酸化炭素の酸化に加えて、水素の一部も酸化されるため、システム全体の効率が低下する。そのため、空気採取の少ないまたはさらには空気採取を用いない燃料電池システムのための触媒の重要性が増している。
【0009】
EP 0889 188 A2において、COに対して耐性を有するPtRuアノード触媒についての記載があり、この触媒において、これらの2つの貴金属は互いに合金化されていない。白金の粒子サイズは2nm未満であり、ルテニウムの粒子サイズは1nm未満である。空気採取を3容積%にすると、一酸化炭素に対する高い耐性が達成される。加えて、XPSを用いて表面分析を行った結果、ルテニウムが大い酸化状態で存在することも分かっている。
【0010】
DE 197 56 880 A1において、従来の触媒と比較して粒子サイズの小さい白金/ルテニウム合金を触媒として用いることによって、一酸化炭素への耐性が向上する点について記載がある。しかし、この場合においても、3容積%の空気採取が用いられていた。空気採取を低減させた場合または空気採取が無い場合の一酸化炭素に対する耐性については何も開示されていない。その上、同文献に記載されているコロイドを用いた調製は高コストである。
【0011】
DE 44 43 701 Clにおいて、単一の金属または複数の金属によって支持された触媒の使用について記載がある。この文献においても、当該触媒を調製するためには、事前作製された金属コロイドを用いることが必要となる。空気採取を用いずにアノード触媒を用いる方法については何も開示されていない。
【0012】
EP 0 501 930 B1において、白金、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる四元合金をリン酸燃料電池(PAFC=phosphoricacid fuel cell(リン酸燃料電池))用のアノード触媒として用いたものについての記載がある。このアノード触媒は、リン酸燃料電池の動作温度が160℃〜200℃と高い場合において、一酸化炭素に対して高い抵抗性を有する。これらの合金の粒子サイズは約3nmである。しかし、リン酸燃料電池の動作温度が高い場合、一酸化炭素が金属表面に吸着する傾向は、PEM燃料電池の動作温度が低い場合よりも常に低い。
【0013】
EP 0 549 543 B1において、粒子サイズの平均が2nm未満で分散性の高い金属粒子を含む支持触媒を作製するプロセスについての記載がある。このプロセスは、一酸化炭素の存在下において還元剤を用いて支持材料の懸濁液中の金属イオンを還元させる工程と、支持材料上に同時に堆積させる工程とを含む。存在する一酸化炭素は、堆積していく金属粒子上に吸着され、その結果、粒子のさらなる成長が妨げられる。この堆積プロセスが終了した後、触媒を洗浄し、還元性(reducing)雰囲気中において100℃未満の温度で乾燥させる。これにより、一酸化炭素を脱着させる。実施例4において、白金/ルテニウム粒子の平均粒子サイズが1.7nmである炭素上の白金/ルテニウム触媒を調製する工程について説明する。しかし、この触媒は、堆積期間中における金属粒子上への一酸化炭素の吸着によって合金形成が妨げられるため、合金触媒ではない。また、その後に熱処理が100℃以下の温度で行われても、合金は形成されない。この触媒を一酸化炭素含有改質油ガスを備えるPEM燃料電池においてアノード触媒として用いたときのこの触媒の特性に関するデータは提供されていない。
【0014】
様々な支持材料上の白金/ルテニウム触媒が、E−TEK(Divisionof DeNora N.A.Inc.,39 Veronica Avenue,Somerset NJ08873−6800(USA))から一定期間にわたって市販されている。これらの触媒は合金化された白金/ルテニウム触媒であり、貴金属の添加量は5〜60重量%であり、白金/ルテニウムの原子数比は1:1である。この種類の触媒(Vulcan XC 72上の40重量%のPtRu)を用いて試験を行った結果、一酸化炭素に対する耐性は、(特にアノードガス中の一酸化炭素濃度が100ppm超えたときに)不十分であることが分かった。XPS分光法を用いた表面分析結果から分かるように、この触媒は、その表面において酸化ルテニウムを相当の割合で含有している。
【0015】
M.IwaseおよびS.Kawatsuは、ある論文において、一酸化炭素に対して耐性を有するアノード触媒の開発について報告している(M.IwaseおよびS.Kawatsu、Electrochemical Society Proceedings、Volume95−23、p.12)。この論文において、最良の結果が得られたのは、特殊な熱処理によって合金が形成された白金/ルテニウム合金触媒を用いたときであると記載されている。それでも、電流密度が0.4A/cm2であるときの電圧降下は、一酸化炭素の濃度が100ppmであるとき、およそ200mVであった。これは、実用用途を実現するには依然として程遠い値である。
【0016】
支持されていない白金/ルテニウム触媒を硫酸燃料電池用の一酸化炭素に対して耐性を有するアノード触媒として用いる点について、L.W.Niedrachらが言及している(J.Electrochemical Techn.5、1967、p.318)。これらの材料は、高度に特定化された表面領域を有する微細な白金/ルテニウム合金粉末からなる。これらの材料は、いわゆるADAMSプロセスによって調製される。このADAMSプロセスでは、ヘキサクロロ白金(IV)酸、ルテニウム(III)塩化物および硝酸ナトリウムの混合物を500℃で溶融させることによってこれらの材料を調製する。しかし、この調製方法の場合、環境保護および健康の点において問題(すなわち、大量の亜硝ガスの形成、液体の取り扱い、侵食性溶融)がある。
【0017】
そのため、本発明の目的は、触媒毒(例えば、アノードガス中の一酸化炭素、特に少量またはゼロの空気採取)に対する耐性が高いことを特徴とする白金−ルテニウム触媒を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のプロセスは、支持された白金−ルテニウム触媒を粉末状の支持材料上に調製するプロセスであって、
a.該支持材料を水中に懸濁させて懸濁液を形成する工程と、
b.該懸濁液を最大該溶液の沸点まで加熱する工程と、
c.工程bの後、同じ温度および撹拌を維持しながら、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物の溶液を該懸濁液に追加する工程と、
d.工程cの後、アルカリ溶液を追加することにより、該懸濁液のpHを6.5〜10の値に上昇させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性の低い貴金属化合物の様態で沈殿させる工程と、
e.工程dの後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を該懸濁液に追加し、還元剤を追加することによって該沈殿した貴金属化合物を還元して触媒を形成する工程と、
f.工程eの後、該触媒を洗浄および乾燥する工程と、
を包含することを特徴とする。
【0019】
上記本発明のプロセスにおいて、工程fにおいて前記触媒を洗浄および乾燥した後、該触媒を不活性雰囲気または還元性雰囲気下で300〜1000℃の温度で焼成する工程をさらに包含することが好ましい。
【0020】
上記本発明のプロセスにおいて、前記支持材料は、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭素および導電性無機酸化物からなる群から選択されることが好ましい。
【0021】
上記本発明のプロセスにおいて、前記懸濁液のpHは、カセイソーダ溶液を追加することによって上昇することが好ましい。
【0022】
上記本発明のプロセスにおいて、前記有機カルボン酸は、酒石酸、フタル酸、酢酸、クエン酸およびそれらの塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0023】
上記本発明のプロセスにおいて、化学的還元は、ホルムアルデヒド、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選択される物質を追加することによって行われることが好ましい。
【0024】
上記本発明のプロセスにおいて、前記白金およびルテニウムの触媒の総重量に対する割合は10〜80重量%であることが好ましい。
【0025】
上記本発明のプロセスにおいて、前記白金とルテニウムとの間の原子数比は、4:1〜1:4の間の値になるように調節されることが好ましい。
【0026】
また、本発明のプロセスは、支持されていない白金−ルテニウム触媒を調製するプロセスであって、
a.ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を含む溶液を、該溶液の沸点の上限になるまで加熱する工程と、
b.アルカリ溶液を追加することによって該溶液のpHを6.5〜10の値まで増加させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性の低い貴金属化合物の様態で沈殿させる工程と、
c.1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を追加し、該沈殿した貴金属化合物を還元して触媒を形成する工程と、
d.該触媒を洗浄および乾燥する工程と、
を包含するものである。
【0027】
また、本発明の白金−ルテニウム触媒は、上記本発明のプロセスによって生成されたものである。
【0028】
また、本発明の白金−ルテニウム触媒は、白金およびルテニウムを微細に配分された貴金属粒子の様態で含む燃料電池のための白金−ルテニウム触媒であって、該ルテニウムの光電子分光法(XPS)によって測定された結合エネルギーは280〜280.7eV(Ruの3d5/2のピーク)であり、該ルテニウムはほとんど金属状態で存在するものである。
【0029】
上記本発明の触媒において、前記微細に配分された貴金属粒子は、粉末状の支持材料上に堆積され、該粉末状の支持材料は、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭素および導電性無機酸化物からなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
上記本発明の触媒において、前記微細に配分された貴金属粒子は、支持されていない状態で存在することが好ましい。
【0031】
上記本発明の触媒において、前記白金と前記ルテニウムとの間の原子数比は、4:1〜1:4であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の膜電極アセンブリは、上記本発明の触媒を含む燃料電池のためのものである。
【0033】
また、本発明の方法は、前記触媒をPEM燃料電池またはDMFC燃料電池に用いる工程を包含する、上記本発明の触媒を用いるものである。
【0034】
また、本発明のプロセスは、白金−ルテニウム触媒を生成するプロセスにおいて、その改良は、1つ以上のカルボン酸および/またはそれらの塩を溶解性の低い貴金属化合物を含む懸濁液に追加することを含むものである。
【0035】
本発明は、燃料電池用のアノード触媒を調製するプロセスと、上記プロセスによって調整されたアノード触媒とを提供する。一実施形態において、本発明は、粉末状の支持材料上に支持された白金−ルテニウム触媒を調製するプロセスを提供する。上記プロセスは以下の工程を含む:
a.上記支持材料を水中に懸濁させて懸濁液を形成する工程と、
b.上記懸濁液を最大上記溶液の沸点近くまで加熱する工程と、
c.工程bの後、同じ温度および同じ撹拌を維持しながら、ヘキサクロロ白金(hexachloroplatinic)酸およびルテニウム塩化物を含む溶液を上記懸濁液に付加する工程と、
d.工程cの後、アルカリ溶液を付加することによって上記懸濁液のpHを6.5〜10の値まで上昇させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性が低い(sparingly soluble)貴金属化合物の形態で沈殿させる工程と、
e.工程dの後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を上記懸濁液に追加して、還元剤を追加することによって上記沈殿した貴金属化合物を還元させて触媒を形成する工程と、
f.工程eの後、上記触媒を洗浄および乾燥する工程。
【0036】
さらに、本発明のPtRu触媒は、DMFC中のアノード触媒として優れた性能を示すことになる。本発明による調製方法は、環境および健康面に与えるダメージが少ない点において公知のプロセスよりもはるかに優れた方法である。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明に従って粉末形態の支持体上に支持される白金−ルテニウム触媒を調製する際、支持材料を水中に懸濁させる。その後、この懸濁液を加熱して70〜90℃にする。加熱中、撹拌を一定に行うのが好ましい。懸濁液を所望の温度にした後、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を含む水溶液をこの懸濁液に追加する。この水溶液の量は、貴金属に添加される支持材料の所望の量に対応する。次いで、アルカリ溶液を追加することによって懸濁液のpHを6.5〜10の値まで増加させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性が低い貴金属化合物の様態で沈殿させる。その後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を懸濁液に追加する。最後に、沈殿した貴金属化合物を化学的に還元する。このようにして形成された触媒を洗浄して塩化物を除去し、乾燥し、その後、必要に応じて、不活性雰囲気または還元性(reducing)雰囲気下で300〜1000℃の温度で焼成する。
【0038】
本開示はアノード触媒の調製に関する入門書ではないため、当業者に公知の基本的概念については、詳細な説明を控える。
【0039】
支持材料、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物の懸濁液は、酸性が強い。貴金属化合物を加水分解し、溶解性の低い水酸化化合物の様態で沈殿させ、アルカリ溶液(好適にはカセイソーダ溶液)を追加することによって支持材料上に堆積させる。還元剤(例えば、ホルムアルデヒドまたはヒドラジン)を追加することにより、この沈殿した貴金属化合物を化学的に還元させる。
【0040】
驚くべきことに、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を懸濁液に追加した後で還元剤を追加することによってこの還元プロセスの質が著しく向上することが分かった。その後、ルテニウム留分(fraction)がほとんど金属の状態で存在する触媒が得られた。このルテニウムは、一酸化炭素の酸化に対して活性が高く、その金属状態により、一酸化炭素に対する高い耐性を得るための必須条件である。有機カルボン酸を追加しない場合、触媒中のルテニウムは、還元プロセスの終了後も高い酸化状態となる。
【0041】
上記にて観察された望ましい効果をもたらす適切なカルボン酸としては、任意の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸(例えば、酒石酸、フタル酸、酢酸、クエン酸など)がある。これらのカルボン酸の塩は、これらのカルボン酸とともに混合して使用してもよいし、または、単独で使用してもよい。上述したカルボン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属の塩が特に適切である。
【0042】
およそ30〜1500m2/gの特定の表面領域(DIN 66132に従って測定されたBET表面領域)を備えるカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭素または導電性の無機酸化物を触媒用の支持材料として用いるのが好ましい。触媒を燃料電池用途に用いることが意図される場合、導電性の高い支持材料が選択される。
【0043】
還元の後、触媒をろ過し、洗浄して塩化物が除去された状態にし、乾燥する。多くの適用領域において、触媒をこの条件下で用いることが可能である。触媒をPEM燃料電池用のアノード触媒として用いる場合、その後触媒を不活性雰囲気または還元性(reducing)雰囲気下において300〜1000℃の温度において焼成すると有利であることが分かっている。
【0044】
上述したプロセスは、支持材料を用いなくても同じ様式で行うことも可能である。その後、貴金属化合物が溶媒の量だけ沈殿し、その結果、還元後、支持されていない粉末触媒(いわゆる貴金属ブラック)が得られる。この場合、引き続いて焼成を行う必要はない。
【0045】
本発明によるプロセスは、本プロセスによって得られた触媒が一酸化炭素による毒作用に対して特に耐性が高いという点だけではなく、従来技術から公知のいくつかのプロセス(例えばADAMS溶融塩プロセス)よりも実質的に環境に優しいという点によっても特徴付けられる。
【0046】
一酸化炭素による毒作用に対する耐性を向上させるために、触媒中の白金/ルテニウム原子数比を4:1〜1:4(好適には1:1)に調節する必要がある。支持される範囲については、触媒の総重量に対する白金およびルテニウム比が10〜80重量%となるように選択され得る。
【0047】
本プロセスによって調製した触媒についてさらに試験を行った結果、本触媒の良好な用途指向型の特性が、微視的特性でも表されることが分かった。実際、光電子分光法(XPS)を用いて試験を行った結果、この触媒中のルテニウムは、280〜280.7eVの結合エネルギーを有するため、主に金属状態で存在することが分かった。
【0048】
光電子分光法(XPS/ESCA)は、表面感受型の分析方法である。スペクトルの評価は、DIN specialistレポートno.39(National Physics Laboratory、Teddington、UKからのレポートDMA(A)97)と、作業委員会(working committee)による過去の知見「Oberflachen−und Mikrobereichsanalysen NMP816(DIN)」とに基づいている。今回の試験では、LeyboldCo.,からの機器(モデルLHS12)と、エネルギー分析器EA11Aと組み合わせて用いた。
【0049】
白金−ルテニウム触媒の表面特性を判定するために、ルテニウムの結合エネルギーを(測定単位:電子ボルト(eV)で)確認したところ、Ruの3d5/2ピークが検出された。酸化度が低いほど、ルテニウムの金属性が高くなり、結合エネルギーの値は低くなる。Ruの3d5/2のピークに関する以下の参照データを用いた(Practical Surface Analysis(第2版、第1巻(発行元:John Wiley and Sons,New York)612ページを参照)。
金属Ru (酸化状態0):279.9〜280.2eV
ルテニウム二酸化物 (酸化状態4):280.9eV
ルテニウム三酸化物 (酸化状態6):282.5eV
ルテニウム四酸化物 (酸化状態8):283.3eV
測定を行っている間、触媒を当初の状態で試験し、必要に応じて、一番上の表面の原子をアルゴンイオンで侵食させた(「スパッタリング」)後に試験を行った。信号が最大となったときの結合エネルギーの値がeVの単位で与えられている。
【0050】
驚くべきことに、本発明によるプロセスにしたがって調製された白金−ルテニウム触媒中のルテニウムはほとんど金属状態で存在し、その結合エネルギーは、XPSによって測定した結果、280.0〜280.7eV(Ruの3d5/2のピーク)であることが分かった。この結果に対応するデータを以下の実施例に示す。
【0051】
本発明によるプロセスにしたがって調製された触媒の良好な特性が得られた1つの可能な理由としては、還元期間中、表面の組成および/または金属粒子の性質が、pHによる緩衝作用による影響を受け得るという点がある。
【0052】
本発明による触媒は好適には、PEM燃料電池用のアノード触媒として用いられる。この用途において、触媒は、一酸化炭素に対して(特にアノードガス中に空気採取が少量あるかまたは全く存在しない場合)高い耐性を有する。
【0053】
さらに、この触媒は、直接メタノール燃料電池(DMFC)において、支持された様態または支持されていない様態でアノード触媒として用いることも可能である。
【0054】
ここまで本発明の概要を説明してきたが、この内容は、以下の実施例を参照すればより容易に理解され得る。これらの実施例は例示目的のために記載するものであって、特に明記が無い限り、本発明を限定することを意図したものではない。
【0055】
(実施例)
(実施例1)
30gのカーボンブラック(Vulcan XC 72)を、1.5lの完全脱イオン化水(VE水)で30分間室温中で懸濁した。52.7gの25%の濃度のヘキサクロロ白金(IV)酸と、29.4gの23.2%の濃度のルテニウム(III)塩化物溶液とを300mlになるまで完全脱イオン化水(VE水)によって希釈し、懸濁液に追加した。この懸濁液を80℃に加熱した。その後、カセイソーダ溶液を用いてpHを7.0まで上昇させた。
【0056】
はげしく撹拌した後、320mlのリン酸酒石酸二カリウム半水化物溶液(dipotassium tartrate hemihydrate solution)(Merck、Darmstadt、濃度は0.1mol/l)を懸濁液に追加した。カセイソーダ溶液をさらに追加することにより、pHを一定に保持した。その後、56mlの24%濃度のヒドラジン溶液を追加して、再度懸濁液を撹拌した。その後、触媒をろ過し、高温で乾燥した。最後に、この触媒を窒素下で500℃で焼成した。
【0057】
最終触媒の総重量に対する貴金属添加量は40重量%であり、Pt/Ruの原子数比は1:1であった。XRDおよびXPSを用いてこの触媒を特徴付けたところ、以下の値が得られた。
焼成後の粒子サイズ(XRD): 5.7nm
XPS結合エネルギー(信号3d5/2)
当初の状態: 280.7eV
Ruはほとんど金属状態で存在していた。
【0058】
(比較例1)
実施例1を繰り返したが、その際、還元前にはリン酸酒石酸二カリウム半水化物溶液を懸濁液に付加しなかった。
【0059】
XRDおよびXPSを用いてこの触媒を特徴付けたところ、以下の値が得られた。
粒子サイズ(XRD):焼成後: 7.8nm
XPS結合エネルギー(信号3d5/2)
当初の状態: 281.3eY
これにより、Ruは酸化状態で存在した(酸化状態>4)。
【0060】
(比較例2)
E−TEK(Division of DeNora N.A.Inc.,39 Veronica Avenue,Somerset NJ 08873−6800(USA))から市販されている電気触媒を用いた。この触媒は、同社のカタログ中のデータによるとVulcan XC 72上の40重量%の白金−ルテニウムからなる。Pt/Ruの原子数比は1:1である。
XPS試験を行った結果、以下の結果が得られた。
XPS結合エネルギー(信号3d5/2)
当初の状態: 282.3eV
スパッタリング後: 282.3eV
分析の結果、酸化ルテニウムが相当の割合(酸化状態はおよそ6)で触媒の表面上およびその内部に存在することが分かった。そのため、この触媒のCOに対する耐性は低下した。
【0061】
(実施例2)
貴金属添加量が60重量%の触媒を調製するため、実施例1を繰り返したが、その際、13.3gのカーボンブラックのみを水中に懸濁させて、添加量をより高くした。
【0062】
最終触媒の総重量に対する貴金属添加量は60重量%であり、Pt/Ruの原子数比は1:1であった。XRDおよびXPSを用いてこの触媒を特徴付けたところ、以下の値が得られた。
焼成後の粒子サイズ(XRD): 6.7nm
XPS結合エネルギー(信号3d5/2)
当初の状態 280.2eV
スパッタリング後 280.2eV
これにより、Ruは、金属状態で存在している。
【0063】
(実施例3)
支持されていない白金−ルテニウム触媒(白金−ルテニウムブラック)を調製するために、以下の手順を用いた。
【0064】
52.7gの25%の濃度のヘキサクロロ白金(IV)酸と、29.4gの23.2%の濃度のルテニウム(III)塩化物溶液とを1.8lの完全脱イオン化水(VE水)に追加し、この溶液を80℃に加熱した。その後、カセイソーダ溶液を用いてpHを7.0まで上昇させた。
【0065】
1時間半にわたってはげしく撹拌した後、320mlのリン酸酒石酸二カリウム半水化物溶液(Merck、Darmstadt、濃度は0.1mol/l)を追加した。カセイソーダ溶液をさらに追加することにより、pHを一定に保持した。その後、56mlの24%の濃度のヒドラジン溶液を追加し、懸濁液をさらに撹拌した。次いで、この触媒をろ過し、高温で乾燥した。
【0066】
XRDおよびXPSを用いてこの触媒を特徴付けたところ、以下の値が得られた。
粒子サイズ(XRD): 5.2nm
XPS結合エネルギー(信号3d5/2)
当初の状態 280.4eV
これにより、Ruは、ほとんど金属状態で存在していた。
【0067】
(用途例)
上記の実施例からの触媒をそれぞれ処理して、NAFION(登録商標)の溶液を用いてインクを生成し、この様態で、プロトン伝導性(proton−conducting)膜に塗布した。その後、このようにして調製された膜電極アセンブリ(MEA)を電気化学的に測定した。アノード側のガス組成は、25容積%の二酸化炭素と、15容積%の窒素と、60容積%の水素からなっていた。空気をカソードガスとして用いた。圧力は3barであった。
【0068】
図1は、実施例1および比較例1からの触媒の電気化学的性能(電池電圧Uは電流密度iの関数である)を示す。本発明にしたがって調製された触媒を用いるとより高い性能が達成されることが分かる。これは、アノードガスストリーム中に一酸化炭素が無い場合の性能にも、アノードガスが一酸化炭素を含有する(100ppmのCO、空気採取は無し)場合の性能にも当てはまる。
【0069】
図2は、実施例1および比較例1からの触媒を、アノードガス中に100ppmの一酸化炭素がある場合と、一酸化炭素を含まないアノードガスに様々な値の空気採取を組み合わせた場合とにおいて、電圧降下ΔUについて比較した結果を示す。図2において、本発明にしたがって調製された触媒は、従来の方法によって調製された触媒と比較して、一酸化炭素に対する耐性がより優れていることが示されている。この結果は、空気採取が低減されまたはゼロである場合に特に明確となっている。
【0070】
【発明の効果】
上記本発明は、支持された白金−ルテニウム触媒を粉末状の支持材料上に調製するプロセスであって、
a.該支持材料を水中に懸濁させて懸濁液を形成する工程と、
b.該懸濁液を最大該溶液の沸点まで加熱する工程と、
c.工程bの後、同じ温度および撹拌を維持しながら、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物の溶液を該懸濁液に追加する工程と、
d.工程cの後、アルカリ溶液を追加することにより、該懸濁液のpHを6.5〜10の値に上昇させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性の低い貴金属化合物の様態で沈殿させる工程と、
e.工程dの後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を該懸濁液に追加し、還元剤を追加することによって該沈殿した貴金属化合物を還元して触媒を形成する工程と、
f.工程eの後、該触媒を洗浄および乾燥する工程と、
を包含するので、触媒毒(例えば、アノードガス中の一酸化炭素、特に少量またはゼロの空気採取)に対する耐性が高いことを特徴とする白金−ルテニウム触媒を提供することができる。
【0071】
また、本発明は、白金−ルテニウム触媒を調製するプロセスと、上記プロセスを用いて調製された触媒とを提供する。上記触媒は、粉末状の支持材料上に支持されることも、支持されないことも可能である。上記支持された触媒を調整する際、上記支持材料を水中に懸濁させ、上記懸濁液をその沸点の上限に加熱する。その後、上記懸濁液の温度を同じ温度に保持しながら、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物の溶液を上記懸濁液に追加し、次いで、アルカリ溶液を追加することによって上記懸濁液のpHを6.5〜10の値になるまで上昇させ、これにより、上記貴金属を上記支持材料上に沈殿させる。その後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を上記懸濁液に追加し、上記触媒を化学的に還元し、洗浄し、乾燥し、そして、必要に応じて、続けて不活性雰囲気または還元性雰囲気下において300〜1000℃の温度で焼成する。上記触媒の特徴は、上記燃料電池中の一酸化炭素による毒作用に対する耐性が高い点である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例1に従って調製された触媒と、比較例1に従って従来の方法で調整された触媒とを電気化学的性能について比較した結果を示したグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施例1に従って調製された触媒と、比較例1に従って従来の方法で調整された触媒とを、アノードガスストリームに100ppmの一酸化炭素を導入したことによって発生する電圧降下について比較した結果を示したグラフである。
Claims (9)
- 燃料電池において使用するために、支持された白金−ルテニウム触媒を粉末状の支持材料上に調製するプロセスであって、
a.該支持材料を水中に懸濁させて懸濁液を形成する工程と、
b.該懸濁液を最大該溶液の沸点まで加熱する工程と、
c.工程bの後、同じ温度および撹拌を維持しながら、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物の溶液を該懸濁液に追加する工程と、
d.工程cの後、アルカリ溶液を追加することにより、該懸濁液のpHを6.5〜10の値に上昇させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性の低い貴金属化合物の様態で沈殿させる工程と、
e.工程dの後、1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を該懸濁液に追加し、還元剤を追加することによって該沈殿した貴金属化合物を還元して触媒を形成する工程と、
f.工程eの後、該触媒を洗浄および乾燥する工程と、
を包含する、プロセス。 - 工程fにおいて前記触媒を洗浄および乾燥した後、該触媒を不活性雰囲気または還元性雰囲気下で300〜1000℃の温度で焼成する工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
- 前記支持材料は、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、活性炭素および導電性無機酸化物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
- 前記懸濁液のpHは、カセイソーダ溶液を追加することによって上昇する、請求項1に記載のプロセス。
- 前記有機カルボン酸は、酒石酸、フタル酸、酢酸、クエン酸およびそれらの塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
- 化学的還元は、ホルムアルデヒド、ヒドラジンおよび水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選択される物質を追加することによって行われる、請求項1に記載のプロセス。
- 前記白金およびルテニウムの触媒の総重量に対する割合は10〜80重量%である、請求項1に記載のプロセス。
- 燃料電池において使用するための、支持されていない白金−ルテニウム触媒を調製するプロセスであって、
a.ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を含む溶液を、該溶液の沸点の上限になるまで加熱する工程と、
b.アルカリ溶液を追加することによって該溶液のpHを6.5〜10の値まで増加させて、ヘキサクロロ白金酸およびルテニウム塩化物を溶解性の低い貴金属化合物の様態で沈殿させる工程と、
c.1つ以上の有機カルボン酸および/またはそれらの塩を追加し、該沈殿した貴金属化合物を還元して触媒を形成する工程と、
d.該触媒を洗浄および乾燥する工程と、
を包含する、プロセス。 - 前記白金とルテニウムとの間の原子数比は、4:1〜1:4の間の値になるように調節される、請求項1または8に記載のプロセス。
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