JP4400281B2 - シリコンウエーハの結晶欠陥評価方法 - Google Patents

シリコンウエーハの結晶欠陥評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリコンウエーハの結晶欠陥を評価する方法に関し、より詳しくは、低抵抗シリコンウエーハをエッチングし、ウエーハ表面に形成されたエッチピットを観察することによってシリコンウエーハの結晶欠陥を評価する方法に関するものである。
近年、半導体集積回路ではその集積度が著しく向上し、性能・信頼性・歩留まりの高い集積回路を得るためには、機械的な精度だけではなく、電気的な特性についても優れていることが要請されるようになってきている。それに伴い半導体集積回路に使用されるシリコンウエーハの結晶品質に対し、より厳しい条件が課されるようになり、結晶品質の優れたシリコンウエーハを製造することが求められ、そのためにはシリコンウエーハの結晶品質を高精度に評価することが必要とされる。
シリコンウエーハの結晶品質を評価する方法、特にウエーハの結晶欠陥を評価する方法として、選択エッチング法がある。これは、重クロム酸カリウムを含有するSecco液(例えば特許文献1)、あるいは、クロム酸を含有するSirtl液やWright液を用いて、シリコンウエーハ表面での結晶欠陥の有無により生じる被エッチング速度の差を利用した選択エッチングを行い、エッチング後のウエーハ表面に現れたエッチピットを光学顕微鏡等で観察することにより結晶欠陥として検出し、評価する方法である。
しかしながら、これらのエッチング液は、有害な物質であるクロムを含有するため、その廃液処理が問題となる。そこで、クロムを含有しない、いわゆる、クロムレスエッチング液が開発されている(特許文献2及び特許文献3)。
また、上記のようなクロムを含有するエッチング液やクロムレスエッチング液でシリコンウエーハ表面をエッチングする場合、そのエッチング速度は1μm/min以上と比較的高速である。そして、このようなエッチング液を用いて1Ω・cmを超える高い電気抵抗率を有するシリコンウエーハをエッチングすることにより、ウエーハ表面にエッチピットが形成され、光学顕微鏡等で容易に観察することができる。
しかしながら、例えば電気抵抗率が1Ω・cm以下となる低抵抗のシリコンウエーハに上記のような選択エッチングを行った場合、エッチング後のウエーハ表面に不飽和酸化膜やしみ(ステイン膜)が顕著に形成されてしまい、選択エッチングによって形成されたはずのエッチピットが観察できないという問題が生じていた。
そこで、上記のような1Ω・cm以下の低抵抗シリコンウエーハに形成されるエッチピットを観察できるようにするため、上記のSecco液やWright液を純水等で希釈したエッチング液を用いる希釈エッチング法が用いられることがある。しかし、この希釈エッチング法は、希釈しているといえども、上述のように有害な物質であるクロムを含有することに変わりはなく、地球環境や人体に及ぼす影響や廃液処理について考慮しなければならない。
また、上記特許文献2及び特許文献3に示されているようなクロムレスエッチング液を同様に水で希釈することにより、エッチング速度を小さくして低抵抗シリコンウエーハのエッチングを行うことも考えられるが、上記クロムレスエッチング液を単純に水で希釈するだけではエッチングの選択性が低下してしまい、結晶欠陥に起因するエッチピットの検出能力が低下する。そのため、低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を正確に評価することが極めて困難になるという問題がある。
そこで、これらの問題点を回避するために選択エッチング法を用いずに、光散乱による光学的手法(LST:Light Scattering Tomography)を用いて結晶欠陥を測定する方法も開発されている。しかしながら、このLSTによる測定方法は、評価装置が高価であり、取り扱いも難しいという問題がある。
特公平6−103714号公報 特開平7−263429号公報 特開平11−238773号公報
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、有害なクロムを含有しないクロムレスのエッチング液を用いて、優れた欠陥検出能力で低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を評価することのできる結晶欠陥評価方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によれば、シリコンウエーハをエッチング液中に浸漬してウエーハ表面のエッチングを行い、該エッチングされたウエーハ表面に形成されたエッチピットを観察することによりシリコンウエーハの結晶欠陥を評価する方法であって、前記結晶欠陥を評価するシリコンウエーハを電気抵抗率が1Ω・cm以下となる低抵抗ウエーハとし、前記エッチング液として、フッ酸、硝酸、酢酸及び水の混合液中にヨウ素又はヨウ化物を含有し、前記硝酸のエッチング液中の容量比が最大のものであり、かつ前記シリコンウエーハのエッチング速度が100nm/min以下となるように調整したものを用いることを特徴とするシリコンウエーハの結晶欠陥評価方法が提供される。
電気抵抗率が1Ω・cm以下となる低抵抗シリコンウエーハの表面をエッチングする際に上記のようなエッチング液を用いて低抵抗ウエーハの結晶欠陥の評価を行うことにより、エッチングの際にシリコンウエーハ表面に不飽和酸化膜やしみ(ステイン膜)が形成されるのを防止でき、またエッチングの選択性も高いため、優れた欠陥検出能力で低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を検出して高精度に評価することができる。さらに、エッチング液にクロムが含有されてないため、地球環境や人体に及ぼす影響、廃液処理等に対して考慮する必要がなく、容易かつ簡便に低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥評価を行うことができる。
このとき、前記エッチング液中のフッ酸、硝酸、酢酸及び水の容量比を、1:(13〜17):(4〜8):(4〜8)となるようにすることが好ましい。
このような割合でエッチング液中のフッ酸、硝酸、酢酸及び水の容量比が調整されていることによって、適切なエッチング速度及び優れた選択性を有するエッチング液で低抵抗シリコンウエーハのエッチングを行うことができるため、効率的にかつ高精度にウエーハの結晶欠陥を評価することができる。
また、前記エッチング液中に含有するヨウ素又はヨウ化物の含有量を、該エッチング液の総液量1リットルに対し0.01g以上0.09g以下となるようにすることが好ましい。
このような含有量でエッチング液中にヨウ素又はヨウ化物を含有することによって、エッチング中のウエーハ表面に不飽和酸化膜やしみ(ステイン膜)が発生するのを確実に防止することができる。また、本発明者等は、エッチング液中にヨウ素又はヨウ化物が含有されている場合、エッチング液のエッチング速度がヨウ素又はヨウ化物の含有量に応じて非常に大きく変化することを発見したが、エッチング液中にヨウ素又はヨウ化物が上記のような含有量で含有されていれば、エッチング液のエッチング速度を100nm/min以下に容易に抑制することができる。
さらに、前記エッチングによるシリコンウエーハ表面のエッチング除去量が50nm以上となるようにすることが好ましい。
このように、シリコンウエーハ表面のエッチング除去量が50nm以上となるようにエッチングを行うことによって、結晶欠陥に起因するエッチピットを確実にウエーハ表面に形成して光学顕微鏡等により容易にかつ高精度に観察できるため、シリコンウエーハの結晶欠陥を高精度に安定して評価することができる。
本発明によれば、従来のクロムを含有するエッチング液と同等以上の感度を有し、かつシリコンのエッチング速度が小さいクロムレスのエッチング液を用いて低抵抗シリコンウエーハを不飽和酸化膜やしみを発生させずにエッチングして結晶欠陥を評価する評価方法を提供できる。このような本発明の結晶欠陥の評価方法を用いることによって、地球環境や人体に及ぼす影響や廃液処理について考慮せずに、低抵抗シリコンウエーハの表面近傍の結晶欠陥を優れた欠陥検出能力で検出して高精度に評価することが可能となる。
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者等は、低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を評価するためのエッチング液として、地球環境や人体に対して有害なクロムを含有しない混酸系のエッチング液を用いることを検討した。その際、低抵抗シリコンウエーハのエッチングにおいて、従来の希釈エッチング液のような単純に純水で希釈する方法では、エッチング液の選択性が低下して結晶欠陥検出能力を低下させるという問題があることから、結晶欠陥検出能力を低下させることなく、エッチングの際にウエーハ表面に不飽和酸化膜やステイン膜が形成されるのを防止することが必要であると考えた。
そして、本発明者等は、鋭意研究及び検討を重ねた結果、エッチング液に不飽和酸化膜及びステイン膜の形成を抑える効果のあるヨウ素又はヨウ化物を添加するとともに、酸化剤であり欠陥部分での酸化速度を速める効果を有する硝酸の比率を大きくしてエッチングの選択性を高め、さらにエッチング速度を低下させれば良いことを発想し、以下の実験結果を基に本発明を完成させた。
(実験1)
先ず、エッチングの選択性を高めるために硝酸の容量比を高めたエッチング液を作製し、低抵抗シリコンウエーハに選択エッチングを行った。
前記の特許文献2に記載されている選択エッチング液では、フッ酸(濃度50重量%)と硝酸(濃度61重量%)の体積比は最大でも1:12である。そのため、本実験においては、先ずエッチングの選択性を高めるために、フッ酸:硝酸の容量比を1:15とし、さらに酢酸(濃度99.7%)と水の両方をフッ酸に対し3倍まで希釈したエッチング液、すなわち、容量比がフッ酸:硝酸:酢酸:水=1:15:3:3(以下、これら4液の比を表す場合には、常にこの順序とする)の比率となるエッチング液を作製し、そのエッチング液8リットル中にステイン膜防止剤として、KI水溶液(16.6gのKIを1リットルの水に溶解させた水溶液)を20ml添加して、使用するエッチング液とした(実験例1)。続いて、そのエッチング液を用いて低抵抗シリコンウエーハにエッチングを行ない、そのエッチング速度を測定した。
このとき、エッチングに用いたウエーハは、p型、結晶方位<100>、電気抵抗率0.01〜1Ω・cm、酸素濃度15〜25ppmaのCZシリコン単結晶ウエーハである。尚、酸素濃度はJEIDA(日本電子工業振興協会、現在のJEITA)の換算係数を用いて算出した値を用いている。
上記実験例1のエッチング液を用いて低抵抗シリコンウエーハの表面をエッチングしたところ、不飽和酸化膜やステイン膜が発生することなく、エッチピットが形成されているのを確認することができたが、エッチング後のウエーハ表面に面アレが発生しており、結晶欠陥を安定して検出することが困難であった。また、実験例1のエッチング液におけるエッチング速度を測定した結果、実験例1ではエッチング液中の各物質の容量比が1:15:3:3と上記特許文献2の選択エッチング液に比べて水の比率を3倍に高めて希釈しているにも関わらず、約1.54μm/minという極めて高いエッチング速度であることがわかった。
また比較のために、従来のシリコンウエーハの結晶欠陥評価に用いられている希釈Secco液の一例として、フッ酸(濃度50重量%)、硝酸(濃度61重量%)、クロム含有溶液(溶液1.6リットル中にKCrを10gとCu(NO・3HOを40g含有する溶液)をそれぞれ1:1.6:3.2の体積比で混合したエッチング液(希釈Secco液)を作製して、そのエッチング速度を測定した。その結果、希釈Secco液のエッチング速度は、約0.065μm/min(65nm/min)であることがわかった。
そこで、上記実験例1のエッチング液のエッチング速度を低下させるために、実験例1のエッチング液よりも酢酸と水の容量比を2倍に高めたエッチング液、すなわち各物質の容量比が1:15:6:6となるエッチング液を作製した(実験例2)。得られたエッチング液のエッチング速度を測定したところ、そのエッチング速度は約0.023μm/min(23nm/min)であり、上記希釈Secco液の半分以下の速度に低減できることがわかった。
さらに、硝酸またはフッ酸の容量比がエッチング速度に及ぼす影響を調べるために、硝酸の容量比を高めたエッチング液(容量比が1:30:3:3、実験例3)、及びフッ酸の容量比を高めたエッチング液(容量比が2:15:3:3、実験例4)を作製し、得られた各エッチング液のエッチング速度を測定した。その結果、実験例3及び実験例4のエッチング速度はそれぞれ約1.26μm/min、約8.14μm/minと高速であることがわかった。尚、実験例2〜4についても実験例1と同様にKI水溶液を20ml添加している。
以上の結果を表1にまとめて示す。尚、いずれのエッチング液の場合もエッチング前の液温は24±1℃である。
Figure 0004400281
そして、上記実験例2〜4のクロムレスエッチング液によってエッチングされた低抵抗シリコンウエーハの表面を観察したところ、不飽和酸化膜及びステイン膜の発生はなく、エッチング後のウエーハ表面にエッチピットが観察されたが、実験例2を除いてはエッチング速度が速く、エッチング後のウエーハ表面に面アレが発生し、結晶欠陥を安定して検出することが困難であった。さらに、本発明者等が実験を重ねた結果、KI水溶液を添加したエッチング液のエッチング速度が100nmを超えると、エッチング後のウエーハ表面に面アレが発生し易く、結晶欠陥を安定して検出することが困難となることが明らかとなった。
そこで、次にエッチング速度を十分に低減することができた上記実験例2のエッチング液(容量比が1:15:6:6)について、ステイン膜の発生防止効果のKI濃度依存性を確認するために次のような実験を行なった。
(実験2)
まず、16.6gのKI(0.1モル)を1リットルの水に溶解してKI水溶液を作製し、容量比が1:15:6:6のクロムレスのエッチング液8リットル中にそのKI水溶液をそれぞれ5、15、20mlずつ添加したエッチング液を用意した。それぞれのエッチング液に添加されたKIの重量は、約0.083、0.249、0.332gであるため、3種類の各エッチング液の1リットル中に含まれるKIの重量を計算すると、それぞれ約0.010、0.031、0.042gとなる。
そして、作製した3種類のエッチング液を用いて実験1と同様の低抵抗シリコンウエーハにエッチングを行い、これら3種類のエッチング液のエッチング速度の測定とエッチング後のウエーハ表面状態の観察を行った。図3は、エッチング液1リットル中に含有されるKIの重量とエッチング速度との関係をプロットしたグラフである。図3に示したように、わずかなKI重量の増加であってもエッチング速度が非常に大きくなることが明らかとなった。
KIの添加は、不飽和酸化膜及びステイン膜の発生防止効果を期待したものであり、その効果は上記のいずれの濃度でも十分に発揮され、エッチピットの観察が安定して可能であることが確認されたが、また同時に、上記実験結果からわずかなKIの添加によりエッチング速度が非常に大きく変化することもわかった。このことは、フッ酸、硝酸、酢酸、水、ヨウ化物(又はヨウ素)からなるエッチング液を用いて低抵抗シリコンウエーハに選択エッチングを行なう場合、ヨウ化物の濃度(含有量)も考慮して、所定のエッチング速度(100nm/min以下)になるようにエッチング液を調整しなければならないことを意味する。
さらに、容量比が1:15:5:5のエッチング液を用いて上記と同様にKI水溶液を5、15、20mlずつ添加して実験を行い、エッチング速度を測定した結果を図3にプロットした。また、1:15:4:4のエッチング液については、KI水溶液を15ml添加したもののみを用いて実験を行い、そのエッチング速度を測定した結果も図3に併せてプロットした。
図3に示したように、容量比が1:15:5:5のエッチング液についても、やはりエッチング速度のKI濃度依存性があることがわかった。尚、1:15:5:5および1:15:4:4のいずれのエッチング液で低抵抗ウエーハをエッチングした場合も不飽和酸化膜、ステイン膜の発生はなく、エッチピットの観察を安定して行なうことができることが確認された。
以上の結果から、エッチング液中の容量比が1:15:(4〜6):(4〜6)で、エッチング液1リットル中に含有されるKIが0.01〜0.04gの範囲であれば、エッチング速度を確実に100nm/min以下、特に30nm/min以下にすることができ、不飽和酸化膜及びステイン膜の発生もなく結晶欠陥の評価を安定して行なうことが可能である。したがって、このようなエッチング液は、低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を評価するエッチング液として非常に好適であることがわかった。
また、1:15:8:8にKI水溶液20mlを添加したエッチング液について別途エッチング速度を測定したところ、約3nm/minであることがわかった。したがって、このように1:15:8:8までエッチング液中の酢酸及び水の容量比を高くすると、エッチング速度がかなり低下するものの、例えばシリコンウエーハ表面から100nm以下のウエーハ表層部における結晶欠陥を評価する場合等で実用に耐え得るが、これよりもさらに酢酸及び水の容量比を高くしてエッチング速度を低下させると、ウエーハのエッチングに長時間を要するため、効率的でないと考えられる。
さらに、図3にプロットされた値から近似線を求めたところ、上記のような容量比を有するエッチング液であれば、含有させるKIの重量を0.09gに高めてもエッチング速度を確実に100nm/min以下に抑制できることが予測される。また、実際に容量比が1:15:6:6のエッチング液に0.09gのKIを添加して低抵抗シリコンウエーハにエッチングを行なったところ、そのエッチング速度は多少のバラツキはあったが、いずれも100nm/min以下であった。一方、エッチング液にKIを0.01g未満の量で添加して低抵抗ウエーハにエッチングを行った場合では、ヨウ化物による不飽和酸化膜及びステイン膜の形成防止効果を十分に得られなくなる恐れがある。
したがって、エッチング液に含有させるヨウ化物(またはヨウ素)を0.01〜0.09gの範囲となるようにすれば、不飽和酸化膜及びステイン膜の発生を確実に防止することができるし、また、エッチング速度を100nm/min以下、さらには50nm/min以下、また30nm/min以下にすることができるため、エッチング後のウエーハに面アレが生じるのを防止し、さらにウエーハ表面のエッチング除去量を容易に制御することが可能となる。それにより、エッチング後のウエーハ表面に形成されたエッチピットを光学顕微鏡等で安定して検出することが可能となるため、ウエーハの結晶欠陥評価を高精度に行うことができる。
一方、硝酸の容量比を変化させ、容量比が1:18:6:6の混合液に対して上記で使用したKI水溶液を5ml添加したエッチング液(KI含有量が0.010g)を用いてシリコンウエーハにエッチングを行ったところ、エッチング後のウエーハ表面に面アレが発生してしまい、結晶欠陥を評価しにくくなる場合があることがわかった。また、エッチング液中の硝酸の容量比を13未満に小さくすると、エッチングの選択性が低下し、十分な感度(欠陥検出能力)での結晶欠陥の評価が困難になることが考えられる。従って、硝酸の容量比としては13〜17が好適であると判断される。
以下、本発明のシリコンウエーハの結晶欠陥評価方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において評価対象となるシリコンウエーハは、電気抵抗率が1Ω・cm以下、特に0.001〜1Ω・cmとなる低抵抗シリコンウエーハであり、その際、伝導型はp型であってもn型であっても良く、またウエーハの製造方法についても特に限定されるものではない。
このような低抵抗シリコンウエーハの表面近傍の結晶欠陥を検出するために用いられるエッチング液として、本発明の結晶欠陥評価方法では、フッ酸、硝酸、酢酸及び水の混合液中に、ヨウ素又はヨウ化物を含有したエッチング液を用いる。
このようなエッチング液を作製する場合、市販されている半導体グレードの薬液を用いることができ、例えば、フッ酸(50重量%)はダイキン工業株式会社の半導体用を、硝酸(61重量%)は関東化学株式会社のEL級を、酢酸(99.7重量%)は関東化学株式会社の特級を用いることができる。また、水については、エッチング処理時にゴミや汚れなどのウエーハへの付着を考慮すると半導体工業で使われている超純水を用いることが好ましい。また、ヨウ素又はヨウ化物としては、例えば、固体のヨウ素分子(I)やヨウ化カリウム(KI)の水溶液を作製して添加することが好ましい。
この際、これらの混合比率は、エッチングの選択性を高めるために硝酸の容量比が最大となるようにし、かつ、低抵抗シリコンウエーハのエッチング速度が100nm/min以下となるように調整する。エッチング速度が100nm/minを超える速度になると、エッチング後のウエーハ表面に面アレが発生し、その後光学顕微鏡等により結晶欠陥を観察することが困難となる。
作製するエッチング液の具体的な比率としては、フッ酸、硝酸、酢酸及び水の容量比を1:(13〜17):(4〜8):(4〜8)とすることが好ましい。硝酸の容量比が13未満になるとエッチングの選択性が低下し、十分な感度での結晶欠陥の評価が困難になる恐れがある。また、硝酸の容量比が17を超えるとエッチング表面の面アレが発生しやすくなり、エッチング後のエッチピットの観察が困難になることがある。
一方、エッチング液中の酢酸及び/または水の容量比が4未満になると、エッチング速度が急激に速くなるため、エッチング除去量の制御が困難となったり、またエッチング後のウエーハ表面に面アレが発生し易くなることが考えられ、低抵抗シリコンウエーハのエッチングに適さなくなる恐れがある。また、酢酸及び/または水の容量比が8を超える場合、逆にエッチング速度が遅くなり過ぎるため、ウエーハのエッチングに長時間を必要とし、迅速な評価を行いにくくなることがある。
さらに、本発明のようにエッチング速度の低いエッチング液の場合、前述のように、添加するヨウ素またはヨウ化物の量によりエッチング速度が大きく影響を受ける。そのため、本発明では、エッチング液に添加するヨウ素またはヨウ化物の量を、エッチング速度が100nm/minを超えないようにするために調整する必要がある。
具体的には、エッチング液中に含有するヨウ素またはヨウ化物の含有量を、エッチング液の総液量1リットルに対し0.01g以上0.09g以下とすることが好ましい。このような範囲でヨウ素またはヨウ化物をエッチング液に含有させることにより、低抵抗シリコンウエーハをエッチングする際に不飽和酸化膜及びステイン膜の発生を確実に防止できるだけでなく、エッチング速度を100nm/min以下、さらには50nm/min以下に容易に抑制できるため、エッチング後のウエーハ表面に面アレを生じさせず、またシリコンウエーハ表面のエッチング除去量も容易に制御することができる。
そして、上記のようなエッチング液を調整した後、この調整したエッチング液に評価対象となる低抵抗シリコンウエーハを浸漬して、ウエーハ表面のエッチングを行う。このとき、エッチングにより除去されるシリコンウエーハ表面のエッチング除去量は、50nm以上となるようにすることが好ましい。このように、シリコンウエーハ表面のエッチング量が50nm以上となるようにエッチングを行うことによって、結晶欠陥に起因するエッチピットをウエーハ表面に安定して形成することができる。
このようにしてシリコンウエーハにエッチングを行った後、ウエーハ表面に形成されているエッチピットを例えば光学顕微鏡等を用いて観察することにより、シリコンウエーハの結晶欠陥を非常に高精度にかつ安定して検出し、評価することできる。
以上のようにして低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を評価することによって、エッチングの際にシリコンウエーハ表面に不飽和酸化膜やステイン膜が形成されず、またエッチングの選択性も高いため、優れた欠陥検出能力で低抵抗シリコンウエーハの結晶欠陥を検出でき、高精度にかつ安定して結晶欠陥評価を行うことができる。さらに、エッチング液にクロムが含有されてないため、地球環境や人体に及ぼす影響、廃液処理等に対して考慮する必要がなく、容易かつ簡便に結晶欠陥評価を行うことが可能となる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例、比較例)
先ず、p型で、結晶方位<100>、酸素濃度14〜18ppma、電気抵抗率0.001〜0.02Ω・cmとなる低抵抗CZシリコンウエーハを準備し、このシリコンウエーハに酸素雰囲気で800℃、4時間及び1000℃、16時間の酸素析出熱処理を行ってウエーハ中の結晶欠陥を成長させた。そして、この酸素析出熱処理を行ったシリコンウエーハを劈開して2分割した。
2分割したウエーハのうち一方は、その断面の結晶欠陥密度をLSTにて測定した後(このとき測定された結晶欠陥密度をLST欠陥密度とする)、前記の実験2に記載した各物質の容量比がフッ酸:硝酸:酢酸:水=1:15:6:6でKI水溶液の添加量が20ml(エッチング液1リットル中に含有されるKIの重量は0.042g)であるクロムレスのエッチング液に浸漬して4分間のエッチングを行った(実施例)。また、2分割したウエーハの残りの一方は、純水で希釈したWright液に浸漬して4分間のエッチングを行った(比較例)。
エッチングを行った後、それぞれのシリコンウエーハの劈開された断面を光学顕微鏡(倍率500倍)により観察して結晶欠陥密度を測定した。尚、このとき測定された結晶欠陥密度を、上記のLSTにより測定されたLST欠陥密度と区別するために、エッチング欠陥密度とする。そして、実施例のエッチング液によるエッチングを行って測定されたエッチング欠陥密度と比較例のWright液によるエッチングを行って測定されたエッチング欠陥密度の相関を図1にプロットした。また、図2には、実施例及び比較例で測定された各エッチング欠陥密度とLSTにより測定されたLST欠陥密度との相関をプロットしたグラフを示す。
尚、図1における四角点(■)は積層欠陥(SF)数、菱点(◆)は積層欠陥と微小内部欠陥(BMD)の合計数、丸点(●)はBMDより大きいがSFともBMDとも判別のつかないSF(以下微小SFという)とBMDとの合計数である。また、図2における菱点(◆)は、実施例で測定されたエッチング欠陥密度とエッチング前のLST測定によって得られたLST欠陥密度との相関を示しており、また、四角点(■)は、比較例で測定されたエッチング欠陥密度とLST欠陥密度との相関を示している。
図1から明らかなように、本発明の評価方法により測定された実施例のエッチング欠陥密度は、従来のWright液によるエッチングが行われた比較例のエッチング欠陥密度とよい相関が得られていることがわかる。さらに、BMDと微小SFとの合計結晶欠陥密度(丸点(●))については、実施例の測定結果の方が比較例よりも感度が良くなっていることが確認できる。このことから、本発明の結晶欠陥評価方法は、エッチング液の選択性が極めて優れていることが確認でき、従来では検出困難であったより微小な結晶欠陥を優れた欠陥検出能力で容易に検出することが可能となることがわかる。
さらに、図2から明らかなように、実施例で測定されたエッチング欠陥密度は、LSTによるLST欠陥密度とも良い相関があることがわかる。特に、現在のLSTによる結晶欠陥評価では、約2×1010/cm程度のLST欠陥密度が検出上限となるが、本発明の結晶欠陥評価方法によれば、図2に示したように、LST欠陥密度の検出上限に相当するエッチング欠陥密度(約2×10cm )より多い結晶欠陥密度を有するウエーハであっても、ウエーハの結晶欠陥を高精度に検出して評価することができる。またそれによって、例えばエッチング欠陥密度とLST欠陥密度との相関を取った検量線に外挿することによって、検出上限以上のLST欠陥密度を求めることも可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
実施例で測定した結晶欠陥密度と比較例で測定した結晶欠陥密度との相関をプロットしたグラフである。 実施例及び比較例で測定したエッチング欠陥密度とLSTにより測定したLST欠陥密度との相関をプロットしたグラフである。 エッチング液1リットル中に含有されるKIの重量とエッチング速度との関係をプロットしたグラフである。

Claims (2)

  1. シリコンウエーハをエッチング液中に浸漬してウエーハ表面のエッチングを行い、該エッチングされたウエーハ表面に形成されたエッチピットを観察することによりシリコンウエーハの結晶欠陥を評価する方法であって、前記結晶欠陥を評価するシリコンウエーハを電気抵抗率が1Ω・cm以下となる低抵抗ウエーハとし、前記エッチング液として、フッ酸、硝酸、酢酸及び水の混合液中にヨウ素又はヨウ化物を含有し前記シリコンウエーハのエッチング速度が100nm/min以下となるように、フッ酸が50重量%、硝酸が61重量%、酢酸が99.7重量%の水溶液に換算した際の前記エッチング液中のフッ酸、硝酸、酢酸及び水の容量比を、1:(13〜17):(4〜8):(4〜8)とし、及び前記エッチング液中に含有するヨウ素又はヨウ化物の含有量を、該エッチング液の総液量1リットルに対し0.01g以上0.09g以下として調整したものを用いることを特徴とするシリコンウエーハの結晶欠陥評価方法。
  2. 前記エッチングによるシリコンウエーハ表面のエッチング除去量が50nm以上となるようにすることを特徴とする請求項1に記載されたシリコンウエーハの結晶欠陥評価方法。
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