JP4399760B2 - インクセットおよびインクジェット記録方法ならびに記録物 - Google Patents
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Description
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、色再現性に優れたインクセットおよびインクジェット記録方法に関する。
【0002】
背景技術
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度、高品位な画像を高速で印刷可能であるという特徴を有する。
最近では、複数のカラーインク組成物を用意し、インクジェット記録によってカラー画像を形成することが行われている。一般に、カラー画像の形成は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、およびシアンインク組成物の三色、さらにブラックインク組成物を加えた四色、さらには、前記四色に加えて、色濃度の低い(ライト)シアンインク組成物と色濃度の低い(ライト)マゼンタインク組成物とを加えた六色によってカラー画像形成を行うことが行われている。
【0003】
このような複数色のインクによるインクドットを混在させることで、多彩な色彩のカラー画像を印刷することができる。
シアン色,マゼンタ色,イエロー色の3種類のインクドットを混在させて形成すると、明度の低い(暗い)カラー画像を印刷することができる。例えば、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の各色インクドットをほぼ等量ずつ混在させて形成すると、減法混色によって視覚上ではブラックを呈する。このようにして表現されたブラックは、コンポジットブラックと呼ばれる。
【0004】
一般に、記録媒体には、インクの滲み等による画質の悪化を回避する観点から、単位面積当たりに形成するインクドットの総量に所定の目安が設けられている。このようなインクドット総量の目安の値を通常インクデューティ制限値と呼んでいる。
【0005】
明度の低い(暗い)カラー画像を印刷するためにコンポジットブラックを用いる場合には3種類のインクドットを形成させる必要がある。この場合、インクデューティ制限値を越えてしまうことがあり、結果として画質の劣化を招くことがある。そこで、カラープリンタにブラックインクを備えておき、コンポジットブラックの代わりにブラックインク単独のインクドットを用いることが行われている。
【0006】
しかしながら、一般的に、ブラックインクによるドットはたいへん目立ち易いため、形成される画像によってはそのドットが目立って、画像に粒状感を生じてしまうことがある。また、ブラックインクによるドットを用いて画像形成させると、画像中に空白が残る、所謂白ポチを生じてしまうこともある。
したがって、優れた画像再現性および色再現性を示すことができるブラックインクを用いた印刷系が望まれている。
【0007】
【発明の概要】
本発明者等は、今般、ブラックインク組成物における着色剤として自己分散型の表面処理顔料を用い、有彩色を示すインク組成物における着色剤として高分子分散剤により分散された顔料を使用することにより、ブラックの表現が必要なカラー印刷画像において、優れた画像再現性および色再現性を実現することができることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、画像再現性および色再現性に優れた画像の印刷を実現することができるインクセット、およびインクジェット記録方法、ならびにこれらを用いて記録された記録物の提供をその目的としている。
【0008】
よって本発明によるインクセットは、ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、かつ、前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものである、
【0009】
また、本発明によるインクジェット記録方法は、インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、
インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものであって、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、ブラックインク組成物を吐出させることによって該ドットを印刷することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によるインクセットによれば、普通紙に印刷した場合に生ずることがある所謂白ポチの発生や、カラーブリードの発生を防止することができる。本発明によるインクセットを使用することにより、または、本発明の記録方法を適用することにより、画像再現性および色再現性に優れた画像の印刷を行うことができる。
【0011】
【発明の具体的説明】
インクセット
本発明によるインクセットは、インク組成物を用いた記録方式に用いられる。インク組成物を用いた記録方式とは、例えば、インクジェット記録方式、ペン等による筆記具による記録方式、その他各種の印字方式が挙げられる。本発明によるインクセットは、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。
【0012】
本発明によるインクセットは、ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるものである。
ここで、有彩色インク組成物とは、有彩色、すなわち彩度を有する色を示すインク組成物を意味し、所謂カラー印刷を行うことができるものである。これは、彩度を有さない無彩色のみを印刷するブラックインク組成物との対比において使用されるものである。なおここでいう有彩色としては、例えば、シアン、マゼンタおよびイエロー等の色が挙げられる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記有彩色インク組成物は、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物からなることが好ましい。
なおここで「互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能」とは、使用される複数の有彩色インク組成物により形成される各インクドットを組み合わせることによって無彩色を表現できる場合のことをいい、このように無彩色を表現できるのであれば、各有彩色インク組成物の濃度および使用量は特に限定されない。
【0014】
本発明のより好ましい態様によれば、前記有彩色インク組成物は、シアンインク組成物と、マゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなることが好ましく、さらに好ましくは、前記有彩色インク組成物は、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物と、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなる。
【0015】
ブラックインク組成物
本発明おけるブラックインク組成物は、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものである。
【0016】
顔料
ブラックインク組成物において用いられる表面処理顔料とは、その表面に、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはスルホン基の少なくとも一種の官能基またはその塩が結合するような表面処理により、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能とされたものである。具体的には、真空プラズマなどの物理的処理や化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子をカーボンブラックの表面にグラフトさせることによって得ることができる。本発明において、一つのカーボンブラック粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
【0017】
本発明において、顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態を「分散および/または溶解」と表現する。物質が溶解しているか、分散しているのかを明確に区別することが困難な場合も少なくない。本発明にあっては、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料である限り、その状態が分散か、溶解かを問わず、そのような顔料を利用可能である。よって、本明細書において、分散剤なしに水中に安定に存在しうる顔料を水溶性顔料ということがあるが、顔料が分散状態にあるものまでも排除することを意味するものではない。
【0018】
本発明において用いられる上記顔料は、例えば特開平8−3498号公報記載の方法によって得ることができる。また、上記顔料として市販品を利用することも可能であり、好ましい例としてはオリエント化学工業株式会社製のマイクロジェットCW1が挙げられる。
【0019】
本発明において、ブラックインク組成物に対する前記表面処理顔料の添加量は、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜10重量%である。
【0020】
主溶媒およびその他の成分
本発明によるブラックインク組成物は、主溶媒は水である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、ブラックインク組成物は、浸透剤としての水溶性有機溶媒をさらに含んでなることができる。
【0022】
このような水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロバノール、iso−プロバノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−プタノール、n−ペンタノール等の一価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類を挙げることができる。
【0023】
さらに、例えばグリコールモノ−n−ブチルエーテルが特に好ましいものとして挙げられる
【0024】
このようなグリコールモノ−n−ブチルエーテルとしては、例えば、エチレングルコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、またはジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選ばれるものが好ましいものとして挙げられる。これらは二種以上を併用しても良い。
【0025】
これらのグリコールモノ−n−ブチルエーテルの添加によれば、上記のような分散剤なしに水に分散および/または溶解する顔料を含んだインク組成物の浸透性を向上させることができる。
【0026】
本発明において、ブラックインク組成物に対するグリコールモノ−n−ブチルエーテルの添加量は、3〜30重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
【0027】
本発明において、ブラックインク組成物は1,2−アルカンジオールをさらに含んでなることが好ましい。
このような1,2−アルカンジオールとしては、その炭素数が4〜10の1,2−アルカンジオールからなる群より選択されるものが好ましい。この場合、炭素数の異なる1,2−アルカンジオールは二種以上を混合して添加してもよい。
【0028】
本発明の好ましい態様において、前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、およびそれらの混合物からなる群より選択される。これらは、記録媒体への浸透性に優れている点でより好ましい。
【0029】
本発明のより好ましい態様においては、前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオール、または1,2−ペンタンジオールであるのが好ましく、さらに好ましくは、1,2−ヘキサンジオールである。
【0030】
本発明においてブラックインク組成物は、前記1,2−アルカンジオールを、インク組成物全量に対して1〜10重量%の範囲で含んでなることが好ましく、より好ましくは、2〜5重量%の範囲で含んでなる。
【0031】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、ブラックインク組成物は、浸透性の溶剤として、グリコールエーテルと1,2−アルカンジオールとを同時に含んでなる。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、ブラックインク組成物は、ノニオン性界面活性剤をさらに含んでなる。このようなノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、および、後述するアセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。これらは二種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明のより好ましい態様によれば、ブラックインク組成物はノニオン性界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤をさらに含んでなることが好ましい。
本発明において、アセチレングリコール系界面活性剤の好ましい具体例としては、下記の式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】
[上記式中、0≦m+n≦50、R1、R2、R3、およびR4は独立してアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)を表す]
【0035】
上記の式(a)で表される化合物の中で特に好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどが挙げられる。上記の式(a)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤として市販品を利用することも可能であり、その具体例としてはサーフィノール82、104、440、465、485、またはTG(いずれもAir Products and Chemicals.Inc.より入手可能)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(商品名)(以上、日信化学社製)が挙げられる。これらのアセチレングリコール系界面活性剤は、単独種でもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0036】
ノニオン性界面活性剤の添加量はインク組成物に対して0.1〜5重量%の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2重量%の範囲である。上記範囲内であると、印刷物において、にじみをより低減させることができる。
【0037】
本発明の一つの好ましい態様によれば、ブラックインク組成物は、ノニオン性界面活性剤と浸透剤としての水溶性有機溶媒とをさらに含んでなるものである。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、ブラックインク組成物は、インクジェット記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためにポリオール類を含んでなることが好ましい。このようなポリオール類としては、水溶性のあるポリオール類が好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、チオジグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0039】
また、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクラム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類を用いることもできる。さらに、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類として、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどを添加することもできる。さらにこれらの糖類の誘導体も使用することができ、例えば、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。このうち、特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。また、市販品である、HS−500、HS−300等(林原生物化学研究所製)を入手して使用してもよい。
これらは、二種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
これらの目詰まり防止成分の添加量は、1〜40重量%が好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。これらの成分は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることが好ましい。
【0041】
本発明によるブラックインク組成物は、その諸特性を改善するために、その他の任意成分、例えば、防腐剤、防かび剤、pH調整剤、酸化防止剤、導電率調整剤、表面張力調整剤、または酸素吸収剤などをさらに含んでなることができる。
【0042】
有彩色インク組成物
本発明における有彩色インク組成物は、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものである。
【0043】
本発明において、顔料はポリマーにより包含された結果、粒子の形態をとることとなる。この粒子は、後記する顔料とポリマーとから調製される。詳細は後記するが、簡潔に述べれば、顔料と、有機溶媒に溶解または分散されたポリマーと、水と、必要により中和剤とを混合分散し、前記有機溶媒を除去し、脱溶媒物を分散して顔料を包含した粒子を得る。
【0044】
顔料
本発明の有彩色インク組成物に含有される顔料としては、従来からインクジェット用のインク組成物に使用されている有機顔料を用いることができる。
【0045】
有機顔料としては、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、またはアニリンブラック等を用いることができる。
【0046】
有彩色インク組成物として、シアンインク組成物を使用する場合には、シアンインク組成物の着色剤としては、シアン顔料が好ましい。
このようなシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4および60等が好ましく用いられ、特に、C.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
【0047】
また、有彩色インク組成物として、マゼンタインク組成物を使用する場合には、マゼンタインク組成物の着色剤としては、マゼンタ顔料が好ましい。
このようなマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、202、209およびC.I.ピグメントバイオレット19等が好ましく用いられ、特に、C.I.ピグメントレッド122が好ましい。
【0048】
有彩色インク組成物として、イエローインク組成物を使用する場合には、イエローインク組成物の着色剤としては、イエロー顔料が好ましい。
このようなイエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、109、110、128、138、150、151、154、155、180、185等が挙げられる。
【0049】
これらのシアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料は、それぞれ一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本発明の好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、イエローインク組成物と、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物と、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物とからなるものであってもよい。なお、ここで色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物とは、濃度の濃い方のマゼンタインク組成物と、濃度の薄い方のマゼンタインク組成物(以下ライトマゼンタインク組成物ということがある)とからなる。また、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物とは、濃度の濃い方のシアンインク組成物と、濃度の薄い方のシアンインク組成物(以下ライトシアンインク組成物ということがある)とからなる。ライトマゼンタインク組成物およびライトシアンインク組成物は、顔料およびその他の成分を適宜選択し、またそれらの配合量を適宜変更することによって、その色濃度を低下させることにより調製することができる。
【0051】
さらに、有彩色インク組成物としては、シアン、マゼンタまたはイエローインク組成物以外のカラーインク組成物、例えば、オレンジインク組成物やグリーンインク組成物を用いてもよく、これらに用いられる顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36,43等のオレンジ顔料、C.I.ピグメントグリーン7,36等のグリーン顔料が挙げられる。
【0052】
有彩色インク組成物中における顔料の含有量は、ポリマーに包含された形態で、顔料のみの重量で、インク組成物に対して、好ましくは0.5〜10重量%であり、より好ましくは1〜7重量%である。
【0053】
ポリマー
本発明において用いられるポリマーは、疎水性基と親水性基とを有し、顔料を包含しながらそれを水中に分散可能とし、かつ実質的にインク組成物中において溶解していないものである。
本発明においてポリマーは、30〜125 KOH mg/gの酸価を有するものであることが好ましく、より好ましい下限は50 KOH mg/gであり、より好ましい上限は100 KOH mg/gである。
本発明においてポリマーは、数平均分子量として1,000〜200,000を有するものであることが好ましく、より好ましい下限は3,000であり、より好ましい上限は150,000である。
さらに本発明においてポリマーは、解離性の親水性基(例えば、カルボキシル基)の塩生成率、すなわち中和率が100%未満に、後述の顔料包含工程またはインク組成物の配合工程に調整される。本発明の好ましい態様によれば、中和率の下限は60%が好ましく、その上限は95%であることが好ましい。
【0054】
上記ポリマーは、後記する工程により顔料を包含するものとされ、同時に顔料をインク組成物中に分散させるものとなる。さらに、上記ポリマーはそれ自体インク組成物中において実質的に溶解していない。従って、本発明によるインク組成物において顔料を包含したポリマー粒子はほぼ明確な粒径を観念できるものである。上記ポリマーの利用により、顔料を安定に分散させ、かつ定着性の良好な画像を実現出来る。
【0055】
本発明の好ましい態様によれば、ポリマーが有する疎水性基は、アルキル基、シクロアルキル基および芳香環から選ばれた一種以上であることが好ましい。芳香環の好ましい例としては、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等)およびその誘導体が挙げられる。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、ポリマーが有する親水性基は、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基およびそれらの塩基から選ばれた一種以上であることが好ましい。
【0057】
本発明においてポリマーは、二重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーまたはオリゴマー類から得ることが出来る。
【0058】
本発明においてポリマーを構成するモノマーの具体例として、芳香環を有したものとして、例えばスチレン、(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等を用いることができる。またその他のモノマーとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等を用いることができる。また、上記の一官能基モノマーの他に、ポリマー中に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール及び1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。また、芳香環を含むポリマーとしてスチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリイミドと、その他のポリマーとしてポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0059】
本発明において用いられるポリマーは、上記モノマーを重合して調製されるが、好ましい重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0060】
本発明において用いられるポリマーは、乳化重合により好ましく調製することが出来る。また、乳化重合にあたり、連鎖移動剤を用いることもできる。その具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
また、本発明の好ましい態様によれば、ポリマーは、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた一種以上を主成分とするものからなることができる。
【0061】
更に、本発明においてポリマーは、重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体であってもよい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水性基、親水性基、および重合性基を有するものを意味する。重合性基の具体例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基等であり、共重合性基も同じくクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基等が挙げられる。
【0062】
顔料を包含するポリマー粒子分散液の調製
本発明において用いられる顔料を包含したポリマー粒子分散液は、具体的には、特開2001−247810号公報に記載の方法によって調製することが出来る。例えば、以下の工程により好ましく調製することが出来る。すなわち、
(1)水溶性有機溶剤に溶解したポリマー溶液と、顔料と、必要により中和剤とを混合して、溶剤分散液を調製する工程
(2)この分散液を水相に展開して水性の懸濁液を調製する転送乳化工程
(3)溶剤分散液調整時に添加してある水溶性有機溶剤を蒸留して除き、顔料をポリマー粒子で包含する工程からなる。
【0063】
中和剤は、適宜決定されてよいが、アルカリとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの三級アミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられる。また、酸としては、塩酸、硫酸などの無機塩基、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸などの有機酸が利用可能である。
【0064】
有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0065】
また、顔料をポリマーで包含する工程は分散機を利用出来、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなどの分散機を用いて分散する。より好ましくは、分散メディアの破砕片等が混入しにくい高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0066】
このようにして得られたポリマー粒子の粒径は、好ましくは25〜250nm程度であり、より好ましくは下限が30nm程度であり、上限が175nm程度である。
【0067】
本発明において、これらの顔料を包含したポリマー粒子分散液の添加量は、有彩色インク組成物に使用される顔料に対して35〜90重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、50〜90重量%の範囲である。
【0068】
主溶媒およびその他の成分
本発明において有彩色インク組成物は、主溶媒は水である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0069】
本発明の好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、浸透剤としての水溶性有機溶媒をさらに含んでなることができる。
【0070】
このような水溶性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロバノール、iso−プロバノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−プタノール、n−ペンタノール等の一価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類が挙げることができる。
【0071】
さらに、例えばグリコールモノ−n−ブチルエーテルが特に好ましいものとして挙げられる。
【0072】
このようなグリコールモノ−n−ブチルエーテルとしては、例えば、エチレングルコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、またはジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルから選ばれるものが好ましいものとして挙げられる。これらは二種以上を併用しても良い。
【0073】
グリコールモノ−n−ブチルエーテルの含有量は、有彩色インク組成物に対し、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0074】
本発明の一つの好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、ノニオン性界面活性剤と浸透剤として前記した水溶性有機溶媒とをさらに含んでなるものである。
【0075】
そして、本発明によるインクセットを構成するブラックインク組成物と有彩色インク組成物のいずれもが、同時にノニオン性界面活性剤と浸透剤としての水溶性有機溶媒とをさらに含んでなるものであることがより好ましい。このようなインクセットによれば、色再現性がより優れた画像を印刷することができる。
【0076】
本発明において、有彩色インク組成物は1,2−アルカンジオールをさらに含んでなることが好ましい。
このような1,2−アルカンジオールとしては、その炭素数が4〜10の1,2−アルカンジオールからなる群より選択されるものが好ましい。この場合、1,2−アルカンジオールは混合して添加してもよい。
【0077】
本発明の好ましい態様において、1,2−アルカンジオールは、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、およびそれらの混合物からなる群より選択される。これらは、記録媒体への浸透性に優れている点でより好ましい。
【0078】
本発明のより好ましい態様においては、前記1,2−アルカンジオールは、1,2−ヘキサンジオール、または1,2−ペンタンジオールであるのが好ましく、さらに好ましくは、1,2−ヘキサンジオールである。
【0079】
本発明において有彩色インク組成物は、前記1,2−アルカンジオールを、インク組成物全量に対して1〜10重量%の範囲で含んでなることが好ましく、より好ましくは、2〜5重量%の範囲で含んでなる。
【0080】
本発明の好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、ノニオン性界面活性剤をさらに含んでなる。このようなノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、および、後述するアセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。これらは二種以上を併用してもよい。
【0081】
また本発明のより好ましい態様によれば、有彩色インク組成物はノニオン性界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤をさらに含んでなることが好ましい。このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、ブラックインク組成物の項で前記したものと同様のものが挙げられる。
【0082】
本発明の好ましい態様によれば、有彩色インク組成物は、インクジェット記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためにポリオール類を含んでなることが好ましい。このようなポリオール類としては、水溶性のあるポリオール類が好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、チオジグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0083】
また、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクラム類、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類を用いることもできる。さらに、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類として、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどを添加することもできる。さらにこれらの糖類の誘導体も用いることができ、例えば、前記した糖類の還元糖、酸化糖、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。このうち特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。また、市販品である、HS−500、HS−300等(林原生物化学研究所製)を入手して使用してもよい。
これらは、二種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
これらの目詰まり防止成分の添加量は、1〜40重量%が好ましく、より好ましくは1〜30重量%である。これらの成分は、他のインク添加剤と合わせてインク粘度が25℃で25cPs以下になる添加量で加えることが好ましい。
【0085】
本発明による有彩色インク組成物は、その諸特性を改善するために、その他の任意成分、例えば、防腐剤、防かび剤、pH調整剤、酸化防止剤、導電率調整剤、表面張力調整剤、または酸素吸収剤などをさらに含んでなることができる。
【0086】
記録方法
本発明の別の態様によれば、インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、
インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
【0087】
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものであって、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、ブラックインク組成物を吐出させることによって該ドットを印刷することを特徴とする、インクジェット記録方法が提供される。
【0088】
本発明の好ましい態様によれば、前記方法におけるインク組成物として、前記した本発明によるインクセットにおけるインク組成物を用いることが好ましい。
【0089】
また本発明によれば、前記した記録方法により記録された記録物も提供される。
【0090】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0091】
インク組成物の調製
表面処理顔料分散液の調製
分散液1
カーボンブラックとしてMA100(商品名)(三菱化学株式会社製) 100gを、水500gに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この得られた粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度 12%)1500gを滴下し、10時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名)(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ過し、得られたろ過生成物をさらに水で洗浄した。このろ過生成物からなるウェットケーキを水5kgに再分散させた後、逆浸透膜にて電導度が2mS/cmになるまで脱塩・精製し、さらに顔料濃度15重量%となるまで濃縮して、水性顔料分散液(分散液1)を得た。
【0092】
分散液2
1次粒径が17nmで、比表面積が200m2/gである酸性カーボンブラック 100gを、水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この得られた粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度 12%)1400gを滴下して、ボールミルで粉砕しながら5時間反応させ、さらに攪拌しながら4時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名)(アドバンテック東洋株式会社製)を用いてろ過して、得られたろ過生成物をさらに水で洗浄した。このろ過生成物からなるウェットケーキを水5kgに再分散させた後、逆浸透膜にて電導度が2mS/cmになるまで脱塩・精製し、さらに顔料濃度15重量%となるまで濃縮して、水性顔料分散液(分散液2)を得た。
【0093】
分散液3
カーボンブラックとしてMA100(商品名、三菱化学株式会社製) 100g、スチレン−アクリル酸系水溶性樹脂としてジョンクリル63(商品名)(ジョンソンポリマー株式会社、平均分子量12000、酸価210、固形分量30%) 250g、水酸化カリウム 6g、および、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水 250gを混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液を孔径約8μmのメンブランフィルタ(商品名)(日本ミリポア・リミテッド製)で濾過して粗大粒子を除いた後、超純水により顔料濃度が15重量%になるまで希釈して、水溶性樹脂で分散したカーボンブラック顔料分散液(分散液3)を得た。
【0094】
ブラックインク組成物の調製
下記第1表に示した組成(重量基準)に従って、前記した各分散液と、溶剤類および超純水とを混合して、2時間攪拌した。続いて、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名)(日本ミリポア・リミテッド製)を用いて該溶液を濾過して、ブラックインク1〜3を調製した。
なお、ブラックインク1および2は、表面処理型のブラック顔料が用いられたインク組成物である。また、ブラックインク3は、比較例のインクセットに用いられる高分子分散剤型のブラック顔料インク組成物である。
【0095】
【表1】
【0096】
ポリマーの調製
攪拌機、温度計、還流管、および滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、スチレン30部、α−メチルスチレン10部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱した。これに、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部、およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下して、分散ポリマーを重合反応させた。さらに、反応容器にメチルエチルケトンを添加して、50重量%濃度のポリマー溶液を作成した。
得られたポリマー溶液からポリマーを抽出して、中和手滴定法による酸価とGPC法による平均分子量を測定した。その結果、酸価は55 KOHmg/g、平均分子量は35,000であった。
【0097】
イエロー分散液
イエロー顔料を含有するポリマー粒子分散液を以下の通りに製造した。すなわち、上記で製造したポリマー溶液50部、C.I.ピグメントイエロー74 75部、0.05wt%の水酸化ナトリウム水溶液27.5部、メチルエチルケトン60部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300部添加して、更に1時間攪拌した。ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した後、0.3μmのメンブレンフィルターで濾過して固形分が20重量%のイエロー分散体1を得た。
【0098】
マゼンタ分散液
マゼンタ顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントレッド122 80部とポリマー溶液40部とを用いた以外は、イエロー分散体と同様にして得た。
【0099】
シアン分散液
シアン顔料を含有するポリマー粒子分散液を、顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4 50部とポリマー溶液100部とを用いた以外は、イエロー分散体と同様にして得た。
【0100】
有彩色インク組成物の調製
下記第2表に示した組成(重量基準)に従って、上記したイエロー、マゼンタ、またはシアン分散液と、溶剤類および超純水とを混合して、2時間攪拌した。続いて、孔径約1.2μmのメンブランフィルタ(商品名)(日本ミリポア・リミテッド製)を用いて濾過して、有彩色インクを調製した。
【0101】
【表2】
【0102】
インクセットの調製
上で得たブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンインクを、以下の表の通り組み合わせて、インクセット1〜3とした。
なお、インクセット1および2は、ブラックインクとして表面処理型のブラック顔料インク組成物を用いたものであり、インクセット3は、ブラックとして、高分子分散剤型のブラック顔料インク組成物を用いたものである。
【0103】
【表3】
【0104】
印字品質評価試験
前記各インクセットについて、プリンタEM−900C(セイコーエプソン社製)を用いて、解像度720dpiで、印字画像として255階調のフルカラーチャートを印字した。このとき、記録紙としてはXerox4024(ゼロックス社製)を用いた。
得られた各印字物の印字品質を評価した。印字品質の評価は、各印字物を、白ポチ、カラーブリード、および色再現性についてそれぞれ試験を行い、下記のようにして判定した。
【0105】
試験1: 白ポチ
前記の印字物を目視および顕微鏡によって観察し下記基準にしたがって評価した。顕微鏡観察には、顕微鏡BHZ−UMA(OLYMPUS社製)を用い、倍率50倍で観察を行った。
なお、ここで白ポチとは、目視観察または顕微鏡観察により、印字物中に、印刷されずに点状に残った空白部分をいうこととする。
評価A: 顕微鏡観察によっても、印字物について白ポチが観察されない
評価B: 目視観察によっては白ポチが観察されないが、顕微鏡観察によれば白ポチが観察される
評価C: 目視観察によっても白ポチが観察される
【0106】
試験2: カラーブリード
前記の印字物におけるカラーブリードの有無を、目視および顕微鏡によって観察し下記基準にしたがって評価した。顕微鏡観察には、顕微鏡BHZ−UMA(OLYMPUS社製)を用い、倍率50倍で観察を行った。
評価A: 顕微鏡観察によっても、印字物についてカラーブリードが観察されない
評価B: 目視観察によってはカラーブリードが観察されないが、顕微鏡観察によればカラーブリードが観察される
評価C: 目視観察によってもカラーブリードが観察される
【0107】
試験3: 色再現性
色再現性については色再現範囲を以下の通りにして求めることにより評価した。
先ず、カラー384パッチ、グレー17パッチからなるカラーチャートを各インクセットについて印字し、Gretag Macbeth社製Type Spectrolinoを用いて、上記印刷物のL*、a*、b*を測色した。色再現範囲は、色空間をL*値で10分割し、各L*値のa*b*空間の領域(a*とb*の値)を求めた後、全L*値のa*b*空間領域を計算し、L*a*b*色空間体積(ガマット値)を算出することにより求めた。得られた結果を以下の基準で評価した。
評価AA: 色再現範囲の大きさが250000以上である
評価A: 色再現範囲の大きさが200000以上250000未満である
評価B: 色再現範囲の大きさが150000以上200000未満である
評価C: 色再現範囲の大きさが150000未満である
【0108】
結果は以下の表に示されるとおりであった。
【0109】
【表4】
Claims (15)
- ブラックインク組成物と、少なくとも一種以上の有彩色インク組成物とを含んでなるインクセットであって、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、前記ブラックインク組成物が分散剤としてのポリマーを含まないものであり、かつ
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものである、インクセット。 - 前記ブラックインク組成物および有彩色インク組成物のいずれもが、同時にノニオン性界面活性剤と、浸透剤としての水溶性有機溶媒とをさらに含んでなる、請求項1に記載のインクセット。
- 前記水溶性有機溶剤がグリコールモノ−n−ブチルエーテルである、請求項2に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物および/または有彩色インク組成物がノニオン性界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1に記載のインクセット。
- ノニオン性界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤である、請求項2〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物および/または有彩色インク組成物が1,2−アルカンジオールをさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
- 1,2−アルカンジオールが、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、シアンインク組成物と、マゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、色濃度の異なる二種のシアンインク組成物と、色濃度の異なる二種のマゼンタインク組成物と、イエローインク組成物とからなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインク組成物が、顔料を1〜30重量%含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクセット。
- 前記有彩色インク組成物が、顔料を0.5〜10重量%含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクセット。
- インクジェット記録方法に用いられる、請求項1〜12のいずれか一項に記載のインクセット。
- インク組成物の液滴を吐出し該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、
インク組成物として、ブラックインク組成物と、互いに組み合わせることにより無彩色を印刷可能な少なくとも二種以上の有彩色インク組成物とを用い、
前記ブラックインク組成物が、分散剤無しに水に分散および/または溶解が可能な表面処理顔料と、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなるものであって、前記ブラックインク組成物が分散剤としてのポリマーを含まないものであり、
前記有彩色インク組成物が、顔料と、該顔料を包含し、かつ該顔料をインク組成物中に分散可能とするポリマーと、主溶媒としての水とを少なくとも含んでなり、ここで、前記ポリマーが疎水性基と親水性基とを有し、実質的にインク組成物中において溶解していないものであり、かつ、
前記有彩色インク組成物を組み合わせて印刷するインクドットが無彩色である場合に、前記有彩色インク組成物の組み合わせに代えて、ブラックインク組成物を吐出させることによって該ドットを印刷することを特徴とする、インクジェット記録方法。 - インク組成物として請求項1〜13のいずれか一項に記載のインクセットのインク組成物を用いる、請求項14に記載のインクジェット記録方法。
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