JP4399652B2 - スパッタリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリング装置に関し、特に、簡素な構造の組合せで1つのスパッタチャンバを形成でき、基板上に多層膜を成膜する必要からスパッタチャンバの数の増大の要請に対して1つのスパッタチャンバを備えるだけで容易に対処できるスパッタリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
情報記録ディスクのような基板上に多層膜を形成するための従来のスパッタリング装置の代表的な構成例を図を参照して説明する。
【0003】
図6はスパッタリング装置の第1の従来例を示し、スパッタリング装置の要部の内部構造を概略的に示した平面図である。611はスパッタチャンバである。スパッタチャンバ611は4つの側壁を備えている。スパッタチャンバ611の中央には、周囲に4つの側面を有する回転体612が設けられる。回転体612の4つの側面の各々には、処理対象である基板613a〜613dが固定されている。回転体612は、回転駆動装置(図示せず)によって、その中心回転軸614の周りに時計方向または反時計方向に回転する。スパッタチャンバ611を形成する4つの側壁にはカソード615a〜615dが設けられ、各カソードにはターゲット616a〜616dが固定される。回転体612上の基板613a〜613dと、ターゲット616a〜616dとは対向する位置関係に設定されている。回転体612を回転させることにより、対向する基板とターゲットとを変更することが可能となる。ターゲット616a〜616dはそれぞれ異なる種類の材質で作られている。スパッタチャンバ611を排気する排気機構、カソードの各々に給電するカソード電源、プロセスガス供給機構等の図示は省略されている。
【0004】
上記のスパッタリング装置による成膜は次のように行われる。基板613aに対する成膜の例で説明する。図示しない排気機構でスパッタチャンバ611を所要の真空度になるように排気し、スパッタ用プロセスガスをスパッタチャンバ611へ流し、カソード615aに給電を行ってターゲット616aがスパッタされるようにする。その結果、ターゲット616aに対向する基板613aに、ターゲット材のスパッタ粒子による成膜が行われ、第1の膜が形成される。ターゲット616aに基づく成膜が終了すると、回転体612を反時計方向に90°回転させ、基板613aをターゲット616bに対向させる。この位置関係で、同様にしてターゲット616bをスパッタして基板613aの上に第2の膜を成膜する。ターゲット616bに基づく成膜が終了すると、同様に回転体612を回転させ、ターゲット616c,616dを順次にスパッタさせて、基板613aの上に第3の膜、第4の膜を順次に成膜する。上記では、基板613aの成膜について説明したが、他の基板613b〜613dについても同じ手順で成膜が行われる。
【0005】
図7と図8はスパッタリング装置の第2の従来例を示す。図7はスパッタリング装置の要部の内部構造を概略的に示した平面図であり、図8は図7におけるA−A線断面図である。このスパッタリング装置は、中央に真空搬送チャンバ711を備え、その周囲に4つのスパッタチャンバ712a〜712dと1つのロードロックチャンバ713が接続されている。真空搬送チャンバ711、スパッタチャンバ712a〜712d、ロードロックチャンバ713の各々は排気機構(真空ポンプ)714が付設されている。真空搬送チャンバ711の内部には基板搬送ロボット715が配置される。基板搬送ロボット715は、基板716を把持してロードロックチャンバ713から各スパッタチャンバへ、あるいはスパッタチャンバ同士の間で基板716を受け渡す。スパッタチャンバ712a〜712dの各々では、その上部に、ターゲット717を備えたカソード718が設けられ、その下部にカソードに対向する位置で基板固定台719が設けられている。各スパッタチャンバ712a〜712dでは、例えば、異なる材質のターゲットが設けられ、異なる膜の成膜が行われる。この場合、スパッタチャンバの数は、基板716に成膜しようとする膜の種類の数に対応して決められる。なお、同じ種類のターゲットが異なるスパッタチャンバに設けられることもある。基板搬送ロボット715でスパッタチャンバに搬入された基板716は基板固定台719の上に置かれる。また真空搬送チャンバ711と、スパッタチャンバ712a〜712dおよびロードロックチャンバ713との間には、それぞれゲートバルブ720が介設されている。ゲートバルブ720は通常閉じられており、基板716を出し入れするときに開かれる。各スパッタチャンバでスパッタリングを行うときにはゲートバルブ720は閉じられた状態に保持され、他のチャンバから隔離される。なおカソード電源、プロセスガス供給機構等の図示は省略されている。
【0006】
図9と図10はスパッタリング装置の第3の従来例を示し、全体的構成としては第2例に類似している。図9はスパッタリング装置の要部の内部構造を概略的に示した平面図であり、図10は図9におけるB−B線断面図である。このスパッタリング装置は光ディスク製造工程に用いられる枚葉式の装置である。このスパッタリング装置では、中央に真空搬送チャンバ811を備え、その周囲に7つのスパッタチャンバ812a〜812gと1つのロードロックチャンバ813が接続されている。真空搬送チャンバ811、スパッタチャンバ812a〜812g、ロードロックチャンバ813の各々は排気機構(真空ポンプ)814が付設されている。スパッタチャンバ812a〜812gの各々では、ターゲット815を備えたカソード816が設けられている。各スパッタチャンバ812a〜812gでは、例えば、異なる材質のターゲットが設けられ、これらのターゲットを用いて異なる膜の成膜が行われており、従ってスパッタチャンバの数は、基板817に成膜しようとする膜の種類数に対応して決められている。真空搬送チャンバ811の内部には、その中央に、複数の基板817を保持する回転体818が配置される。回転体818の側面には、8個のバルブ板819と、先端にバルブ板819が固定され、バルブ板819の位置を変更できる軸方向に移動自在な8本のアーム820とが設けられる。8本のアーム820は等間隔で配置される。8個のバルブ板819の各々の外側面に基板817が固定される。8個のバルブ板819の各々は1つのスパッタチャンバに対応している。バルブ板819は基板を固定する台座としての働きと、対応するスパッタチャンバの開口部(出入り口)を開閉するバルブとしての働きを有している。アーム820を前進させてバルブ板819でスパッタチャンバの開口部を閉じると、スパッタチャンバの内部と外部とは隔離される。回転体818は、その回転中心軸の周りに時計方向または反時計方向に回転する。回転体818が回転し、各基板817がカソード815に対向する位置にあるときにのみ8本のアーム820が同時に方向821または方向822へ移動して、これによりバルブ板819はスパッタチャンバ812a〜812gの開口部に押し付けられたり離れたりする。このようにスパッタチャンバはバルブ板819で仕切られたり、開放されたりする。各スパッタチャンバでスパッタリングを行うときにはバルブ板819は閉じられた状態に保持される。なおカソード電源、プロセスガス供給機構等の図示は省略されている。以上の構成例のスパッタリング装置に類似した装置は例えば特開平60−52574号公報に開示される。この文献には、処理ユニットのゲートバルブとして用いられる基板ホルダが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した第1例の従来のスパッタリング装置によれば、1つの共通のスパッタチャンバ811の内部に4つのカソード615a〜615dが設けられ、さらに各カソードによって成膜処理が行われる領域は互いに繋がった状態にあり、互いを隔離するための構造を有していない。そのため、プロセスガスに活性ガスを使用すると、或るカソードおよびターゲットによる成膜処理実行時において活性ガスが他のカソードの部分に回り込み、当該他のカソードのターゲットの表面を汚染するという問題が生じる。
【0008】
前述した第2例の従来のスパッタリング装置では複数のスパッタチャンバが設けられている。スパッタチャンバの数は、基板716に成膜される膜の種類数に応じて決められる。そのため、スパッタチャンバ712a〜712dの数に応じて同数のゲートバルブ720、排気機構714、カソード電源が必要となる。このためスパッタチャンバが増せば増すほど、各ユニットの数も増し、その分広いスペースが必要となり、装置全体の規模が大きなり、装置の製作コストが高くなるという問題が生じる。
【0009】
前述した第3例の従来のスパッタリング装置も、第2例と同様に、スパッタチャンバ812a〜812gの数に応じて同数のアーム820、バルブ板819、排気機構814、カソード電源が必要となる。このため、スパッタチャンバが増せば増すほど、各ユニットの数も増し、その分広いスペースが必要となり、装置全体の規模が大きなり、装置の製作コストが高くなるという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、上記の問題を解決することにあり、スパッタチャンバの構造を簡単な構造で実現し、スパッタチャンバの形成に要するスペースをできるだけ小さくし、従来のゲートバルブまたはバルブ板の数をできるだけ少なくし、スパッタチャンバの数の増大の要請に対しても簡素な構造および低コストで簡単に対応できるスパッタリング装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係るスパッタリング装置は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0012】
本発明に係るスパッタリング装置は、複数の側面の各々にカソードを備えたカソード回転体が中央に配置されるカソードチャンバと、複数の側面の各々に基板を保持した基板回転体が中央に配置される基板搬送チャンバと、カソードチャンバと基板搬送チャンバの間に設けられた1つのスパッタチャンバとを備えるスパッタリング装置において、カソードチャンバとスパッタチャンバの間に配置され、第1駆動装置によりカソードチャンバ側またはスパッタチャンバ側に移動可能に設けられ、筒部を有する第1バルブ板と、基板搬送チャンバとスパッタチャンバの間に配置され、第2駆動装置により基板搬送チャンバ側またはスパッタチャンバ側に移動可能に設けられ、筒部を有する第2バルブ板とを備え、カソード回転体の1つの側面に備えたカソードと、基板回転体の1つの側面に保持した基板とが対向した状態で、第1駆動装置と第2駆動装置を作動させることにより第1バルブ板をカソードチャンバ側にかつ第2バルブ板を基板搬送チャンバ側にそれぞれ移動させ、第1バルブ板の筒部の端部をカソード回転体の側面に接触させ、第2バルブ板の筒部の端部を基板回転体の側面に接触させることにより、スパッタチャンバ内にスパッタ成膜スペースを形成する、ことで特徴づけられる。
基板をスパッタチャンバへ搬送するための基板搬送チャンバは、内部に回転自在な基板回転体を備え、複数の側面の各々に基板を保持している。かかる基板搬送チャンバに対して、間隔をあけてカソードチャンバが設けられる。カソードチャンバにおいても、基板搬送チャンバと類似した構造を採用し、複数の側面を備えたカソード回転体を備え、各側面にカソードを設けている。各カソードにはターゲットが取り付けられている。この構造では、カソード回転体と基板回転体をそれぞれ回転させることにより、カソードと基板を対向させ、スパッタ成膜が行えるようにする。カソードチャンバと基板搬送チャンバの間には1つのスパッタチャンバが設けられ、このスパッタチャンバで1組のカソードと基板が対向する。付設された真空ポンプでスパッタチャンバ内を所要の真空状態とし、プロセスガスを供給し、必要な高電圧を給電することによりスパッタ成膜が開始される。カソード回転体と基板回転体を回転させて、スパッタチャンバにセットされるカソードと基板を変えるだけで、種々のスパッタ成膜を行うことが可能となる。このように、1つのスパッタチャンバを設けるだけで、複数のスパッタチャンバを用意することなく、多種のスパッタ成膜を行うことができ、基板上に多層膜を形成することができる。またスパッタチャンバは1つで足りるので、従来のごとく複数のスパッタチャンバを備える構成に比較して、スパッタチャンバ用として備える真空ポンプ、プロセスガス供給機構、カソード電源はそれぞれ1つで済み、構成が全体として簡素になると共に製作コストが低減する。
【0013】
上記の構成において、第1バルブ板は、スパッタ成膜用スペースとカソードチャンバの内部スペースとを分離する仕切り板となること特徴とする。また第2バルブ板は、スパッタ成膜用スペースと基板搬送チャンバの内部スペースとを分離する仕切り板となること特徴とする。
カソード回転体と基板回転体を回転させて1組のカソードと基板をスパッタ成膜用スペースで対向させ、仕切り板を閉じた状態にすると、スパッタ成膜用スペースが他の領域から隔離され、これによりスパッタチャンバが形成される。本発明では、スパッタチャンバは予め確立したチャンバとして形成されるものではなく、カソードチャンバと基板搬送チャンバの間に形成されるスペース部分を、仕切り板と組み合わせることにより形成するものである。スパッタ成膜用スペースには、カソード回転体と基板回転体の作用によって種々のターゲットと基板の組み合わせを実現できるので、1つのスパッタチャンバで各種のスパッタ成膜を行うことが可能となる。また仕切り板で他の領域との隔離を確実に行えるので、ガスコンタミネーションの問題を解消し、かつスパッタチャンバ内を望ましい圧力に安定して維持することが可能になる。
【0014】
上記の構成において、上記仕切り板としては、スパッタ成膜用スペースとカソードチャンバの内部スペースとを分離する仕切り板と、スパッタ成膜用スペースと基板搬送チャンバの内部スペースとを分離する仕切り板を設ける場合、あるいはこれらの2つの仕切り板のうちいずれか一方を設ける場合を考えることができる。スパッタ成膜用スペースを他の領域から隔離する場合には、上記2つの仕切り板を設けることが望ましい。しかし、構成を簡易化し、排気工程を簡易化する観点から、いずれか一方の仕切り板のみとすることも可能である。
【0015】
上記の構成において、スパッタチャンバに排気用真空ポンプが設けられることを特徴とする。仕切り板が開いているときには、スパッタ成膜用スペースと、カソードチャンバの内部スペースあるいは基板搬送チャンバの内部スペースは空間的に通じているので、スパッタチャンバの箇所に真空ポンプを付設するだけで、スパッタリング装置の内部の全体を排気し、真空状態にすることができる。排気に関する構成を簡素化することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
最初に概略図である図1〜図3を参照して、本発明に係るスパッタリング装置の要部の全体的な構成を説明する。概略図といっても本発明の理解を容易にするために簡略化されたものであり、本発明の特徴は十分に示されるものである。図1は縦断面図、図2は水平断面図、図3はバルブ板の開閉状態を拡大して示す図である。
【0018】
本実施形態によるスパッタリング装置では、内部にカソード機構10を設けたチャンバ100(以下「カソードチャンバ」という)と、内部に基板取付け機構20を設けたチャンバ200(以下「基板チャンバ」という)とを備える。基板チャンバ200は基板を所定の処理位置に搬送するための真空搬送チャンバである。カソードチャンバ100と基板チャンバ200は所要の間隔を開けて配置されている。カソードチャンバ100と基板チャンバ200の間には、当該間隔に基づき、スパッタチャンバを形成するためのスパッタ成膜用の領域として用いられるスペース11が確保される。このスペース11は、周囲を側壁部12で囲まれ、外部空間から隔離されている。側壁部12はカソードチャンバ100と基板チャンバ200を結合する接続部として機能する。またスペース11は、開口部13を通してカソードチャンバ100の内部空間と通じることが可能であり、開口部14を通して基板チャンバ200の内部空間と通じることが可能である。またスペース11における開口部13の側、および開口部14の側にはそれぞれバルブ板15,16が配置されている。バルブ板15は中央に筒部(またはリング部)15aを有し、筒部15aの一端の外側周囲に鍔部15bを有している。またバルブ板16も同様に筒部16aと鍔部16bを有する。バルブ板15,16はそれぞれ直線駆動装置17,18によって中央の筒部の軸方向に動くことが可能である。バルブ板15が動くことで開口部13が開閉され、バルブ板16が動くことで開口部14が実質的に開閉される。バルブ板15,16は、スペース11とその他の領域とを仕切る仕切り板として機能する。
【0019】
カソードチャンバ100、基板チャンバ200、スパッタチャンバを形成するためのスペース11は、それぞれ真空ポンプ21,22,23によって所要の真空状態に排気される。なお真空ポンプはチャンバごとに設ける代わりに、例えばスパッタチャンバの箇所に共通の真空ポンプを一台設け、この一台の真空ポンプで全体の排気を行うように構成することも可能である。構成の簡易化の観点からスパッタチャンバのみに真空ポンプを付設する構成が好ましい。
【0020】
カソードチャンバ100の内部に設けられたカソード機構10は、例えば4つの側面を有するカソード回転体24と、カソード回転体24の4つの側面に設けられたカソード25とからなる。カソード回転体24は、カソードチャンバ100の中央に取り付けられ、カソードチャンバ100の外部に設けられた回転駆動装置26で自在に回転される。4つのカソード25は90°の等間隔で配置され、各カソードにはターゲット27a〜27dが取り付けられている。ターゲット27a〜27dは、例えば、異なる材料で形成され、異なる種類の膜の形成に使用される。4つのカソード25の各々はカソード回転体24が90°の単位で回転することによりスペース11に順次に臨むように配置させることができる。カソード回転体24の内部には各種装置を組み込むためのスペースが形成されている。カソード回転体24の内部スペースには、カソード電源から4つのカソード25の各々に給電を行う給電部や、ターゲット27a〜27dの位置を変更するための位置調整機構等が内蔵される。
【0021】
基板チャンバ200の内部に設けられた基板取付け機構20は、例えば4つの側面を有する基板回転体28である。基板回転体28の4つの側面の各々には基板29が固定されている。基板回転体28は基板ホルダとして機能する。基板回転体28は、基板チャンバ200の中央部に取り付けられ、基板チャンバ200の外部に設けられた回転駆動装置31で回転自在である。4つの基板29は90°の等間隔で配置されている。4つの基板29の各々は基板回転体28が90°の単位で回転することによりスペース11に順次に臨むように配置させることができる。
【0022】
次に、カソードチャンバ100と基板チャンバ200の間において、スペース11とバルブ板15,16の移動とを利用して形成されるスパッタチャンバについて説明する。本実施形態によるスパッタリング装置では、もともとスパッタチャンバとして確立したチャンバを備えておらず、バルブ板15,16を移動させてスペース11を他の領域から隔離することによりスパッタチャンバが形成される。スペース11は、本来、単にカソードチャンバ100と基板チャンバ200の間の隙間として形成され、側壁部12によって四方を囲まれることにより形成される。スペース11において、カソードチャンバ100側の箇所にはバルブ板15が配置され、基板チャンバ200側の箇所にはバルブ板16が配置される。バルブ板15,16の各々が直線駆動装置17,18により内側に移動して配置されると、開口部13,14は開かれ、スペース11は他の領域と通じた状態に保持される。バルブ板15が直線駆動装置17により外側に移動して配置されると、筒部15aの外端がカソード回転体24の側面に押し付けられかつ鍔部15bの外端が境界部32に押し付けられ、開口部13が閉じられ、かつカソード25とタートゲット27aが筒部15aの内部空間を利用してスペース11に臨む。バルブ板16が直線駆動装置18により外側に移動して配置されると、筒部16aの外端が基板回転体28の側面に押し付けられかつ鍔部16bの外端が境界部33に押し付けられ、開口部14が閉じられ、かつ基板29が筒部16aの内部空間を利用してスペース11に臨む。上記構成によりスペース11が他の部分と分離されてスパッタチャンバとして確立され、処理される基板29がターゲット27aに対向して配置されることになる。上記において、バルブ板15,16の筒部15a,16aの開口内寸法はカソード27aと基板29よりも大きく設定されている。このように形成されたスパッタチャンバは真空ポンプ23で真空にされ、当該スパッタチャンバに対し側壁部12に付設されたマスフローコントローラ34からスパッタ用ガスが導入される。スパッタチャンバ内の圧力は、マスフローコントローラ34から導入されるガスの流量を調整することにより調整される。
【0023】
上記構成を有するスパッタリング装置で、スパッタ成膜が行われる前の段階では、直線駆動装置17,18でバルブ板15,16が、図3に示すごとく内側に移動して配置されている。このとき、開口部13,14が開かれてスペース11はカソードチャンバ100の内部空間と基板チャンバ200の内部空間に通じており、カソードチャンバ100ではカソード回転体10が回転できる状態にありかつ基板チャンバ200では基板回転体28が回転できる状態にある。この状態で、回転駆動装置26でカソード回転体24が回転されかつ回転駆動装置31で基板回転体28が回転され、これによりスパッタ成膜に使用されるターゲットが選択されかつスパッタ成膜が施される基板が選択される。カソードチャンバ100と基板チャンバ200は真空ポンプ21,22でそれぞれ所要の真空状態に保持されている。スペース11に臨むターゲットと基板が選択された状態で、直線駆動装置17,18によってバルブ板15,16が矢印35,36のごとく外側に移動されると、前述のごとくスペース11が隔離され、スパッタチャンバが形成される。その後、スパッタチャンバ内のスペース11が真空ポンプ23で排気され、マスフローコントローラ34でスパッタ用プロセスガスが導入され、カソード25にカソード電源から給電が行われ、基板29に対してスパッタ成膜が開始される。基板29に対する成膜が終了すると、スパッタ用プロセスガスの導入等が停止される。その後、図3に示した状態にして次の成膜で使用されるターゲットと基板がスパッタチャンバで対向するように、カソード回転体24と基板回転体28を回転させる。バルブ板15,16を前述と同様にして移動させてスパッタ用プロセスガスを導入し、基板の表面に薄膜が形成される。さらに、前述した同様な動作に基づいて、成膜したい基板とカソードおよびターゲットとの組合せてスパッタリングにより膜を形成する。
【0024】
上記構成のスパッタリング装置によれば、カソードチャンバ100と基板チャンバ200の間のスペース11と、スペース11内に配置したバルブ板15,16の開閉動作を利用して、スパッタ成膜を行う際に他の部分から分離されたスパッタチャンバが形成される。さらにカソードチャンバ100に複数のカソードおよびターゲットを備えた回転自在なカソード回転体24を設け、基板チャンバ200に複数の基板を備えた回転自在な基板回転体28を設け、スパッタ成膜を行うとき、形成されたスパッタチャンバに、カソードおよびターゲットと基板とを任意に組合せてセットすることができる。従って、複数のスパッタチャンバを予め特別に持つ必要はなく、構成を簡単することができる。また基板に成膜される膜の数を増すため、スパッタチャンバの数を増さなければならない場合にも、カソード回転体24および基板回転体28の構造を変更し、形成される1つのスパッタチャンバにセットされるカソード等と基板の組みを増せばよく、容易に対処することができる。なお上記の例では、4つのカソードを備えたカソード回転体24、4つの基板を備える基板回転体28の例を示したが、カソードの数や基板の数は他の数に変更できるのは勿論である。
【0025】
また仕切り板としてのバルブ板を、カソードチャンバ100側と基板チャンバ200側の両方に設けたが、いずれか一方にすることも可能である。この場合には、スパッタ成膜の際に、スペース11がカソードチャンバ100の内部スペースまたは基板チャンバ200の内部スペースと通じた状態になるが、スパッタ成膜用のスペース11は従来装置の構成に比較して他の領域から隔離した状態に保持できるので、コンタミネーション等の観点から許容できる状態である。
【0026】
次に、図4と図5に本発明に係るスパッタリング装置の要部の具体例を示し、これらの図を参照して前述したカソードチャンバ100とカソード機構10の具体的な構造について説明する。図4はカソードチャンバ100およびこれに関連する下側部分の内部構造、スパッタチャンバの内部構造、バルブ板15、基板取付け構造の一部を示す縦断面図であり、図5は図4におけるカソード回転体の内部構造を示す水平断面図である。図4と図5において前述した図1〜図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0027】
このスパッタリング装置において、カソードチャンバ100の下側には例えばテーブル状の下部フレーム41が設けられ、下部フレーム41の上部に円筒形の支持フレーム42が設けられており、またスペース11を有するスパッタチャンバ300の下側には真空ポンプ43が設けられている。円筒形の支持フレーム42は下部フレーム41の上板41aに固定されており、さらにカソードチャンバ100は支持フレーム42の上に固定されている。カソードチャンバ100の下壁には孔100aが形成されており、カソードチャンバ100に固定される円筒形支持フレーム42は下壁の孔100aの周囲の外側面に結合されている。カソードチャンバ100の内部に回転自在に取り付けられたカソード回転体24が設けられている。カソードチャンバ100の内部スペースは気密であり、減圧されて真空状態に保持されるが、カソード回転体24の内部は、その下部が開放されて大気状態になっている。真空ポンプ43は、排気チャンバ44を介してスパッタチャンバ300内のスペース11に接続される。真空ポンプ43は前述の真空ポンプ23に対応するものであるが、この具体例ではスパッタチャンバ300内のスペース11とカソードチャンバ100内のスペースを1つの真空ポンプ43で同時に排気する構造を採用している。下部フレーム41には上記の4つのカソード25にスパッタ成膜の際に必要な電力を供給する高圧のカソード用電源46と、カソード回転体24を回転させるための駆動用モータ47と、装置各部の動作を制御するコントローラ48と、その他にカソードチャンバを冷却する冷却水を供給する冷却装置と、スパッタチャンバにプロセスガスを供給するためのガス供給装置が設けられている。冷却装置や冷却水を流すための配管、ガス供給装置やガスを流す配管の図示は、図を簡略化するために省略されている。また駆動用モータ47は支持台49の上に配置されている。
【0028】
次に、カソード回転体24の内部は空洞のスペースが形成され、下壁10aには例えば円形の孔が形成され、これによってカソード回転体24の内部のスペースが開放されている。カソード回転体24の下壁の外側周囲には支持筒体51が固定されている。支持筒体51は、カソードチャンバ100の下壁の孔100aと支持フレーム42の中に挿通されて配置され、支持筒体51と支持フレーム42の間には3つの軸受け部材52,53,54が設けられ、支持筒体51は支持フレーム42に対して回転自在に取り付けられている。支持筒体51の軸方向長さは筒形支持フレーム42の軸方向長さよりも長く、その下部は、支持フレーム42の下部よりも下方に延設されている。延設された支持筒体51の下端にはプーリ55が固定されている。さらにまた支持筒体51と支持フレーム42の間には磁性流体を利用して磁気シール56が設けられる。磁気シール56によってカソードチャンバ100の内部スペースの気密性が保持され、カソードチャンバ100内が所要の真空状態に保持される。
【0029】
支持筒体51の下端のプーリ55と、モータ47の回転軸に固定されたプーリ57との間にはベルト58が掛け渡される。モータ47が回転すると、回転力がベルト58によって支持筒体51に伝達され、支持筒体51およびこれに結合されるカソード回転体24が回転させられる。
【0030】
回転自在なカソード回転体24の内部には、下部フレーム41に支持ロッド61を介して固定された筒形支柱62を支持筒体51の内部に挿通させて配置し、この筒形支柱62の上部に支持台63を固定する。そして支持台63の上には、可動軸64aの先端にマグネット65を備えたシリンダ64と、可動軸66aの先端に給電端子67を有するシリンダ66が配置されている。シリンダ64とシリンダ66は高さ位置を異ならせて配置されるので、支持台63も2段のステージを有するように形成されている。固定静止状態の筒形支柱62と回転自在なカソード回転体24の間には、軸受け部材68が配置される。このようにして、回転自在なカソード回転体24の内部に静止状態のマグネット65と給電端子67が一組配置される。マグネット65は永久磁石または電磁石である。電磁石の場合には筒形支柱62を通して外部から電力が供給される。またカソード25に高電圧を供給する給電端子67には高圧電源46から高圧線69を通して電圧が供給される。スパッタ処理を行うとき、スパッタチャンバ300のスペース11に臨むように配置されたカソード25に対して、マグネット65は、ターゲット27aの表面に所定の磁界分布を与えるべく、一点鎖線に示されるようにその背面部に配置される。このときの配置状態では、シリンダ64を動作させて可動軸64aを前方に伸ばし、マグネット65を前方に移動させる。また給電端子67も、シリンダ66が動作して可動軸66aが前方に伸び、カソード25側の接続端子70と接続される。スパッタ処理が終了すると、シリンダ64,66は動作してその可動軸64a,66aを後退させ、マグネット65と給電端子67をカソード25から引き離す。これによってカソード回転体24を回転動作を行える状態になる。以上のように、回転自在なカソード回転体24の内部には静止状態でかつ必要に応じてシリンダ64,66によって前進または後退するように設けられたマグネット65と給電端子67が配置されている。この一組のマグネット65と給電端子67は、カソード回転体24の側面に取り付けられた4つのカソード25のすべてに共用される。すなわち、回転式構造で設けられたカソード機構10によってスパッタ処理を行うときにスペース11に臨むように配置されたいずれのカソード25に対しても一組のマグネット65と給電端子67がセットされる。
【0031】
図5に示すごとく、カソード回転体24の4つの側面にはそれぞれカソード25が設けられ、各カソード25は所定位置に給電用の接続端子70を備えている。スパッタチャンバ300の成膜を行う領域を形成するスペース11に臨む位置にカソード25がセットされると、そのターゲットは基板29に対向する。このとき、カソード25の背面にはマグネット65が対向し、接続端子70には給電端子67が対向する位置関係になる。この状態で、シリンダ64が動作して可動軸64aを前進させるとマグネット65がカソード25の背面の近傍位置にセットされ、シリンダ66が動作して可動軸66aを前進させると給電端子67が接続端子70に接続される。その後、プロセスガスが供給される等を条件にしてスパッタ成膜が行われる。成膜が終了すると、シリンダ64,66が動作してマグネット65と給電端子67をカソードから引き離し、次のスパッタ成膜を行うためのカソードがスパッタチャンバの位置に到来するのを待機する。
【0032】
また図4に示すごとくカソードチャンバ100側のバルブ板15は、カソードチャンバ100の上側と下側に設けられた直線駆動装置17の駆動軸に連結プレート71を介して結合されている。直線駆動装置17が動作することにより、バルブ板15はカソードチャンバ100側に移動し、筒部15aがOリングを介してカソード回転体24に当接し、鍔部15bはOリングを介してカソードチャンバ100の一部に当接する。このようにして、スパッタチャンバ300の内部スペース11とカソードチャンバ100の内部スペースが隔離され、スパッタチャンバ300が他の領域から分離して形成される。図4では省略されているが、基板チャンバの側も同様な構成になっている。図4において29はターゲット27aに対向する基板である。基板29は基板ホルダ72に固定されている。
【0033】
上記の構成において、スパッタ成膜を行うときにカソードの背面に配置されるマグネット65の位置は、ターゲットとの間の距離を考慮して予め定められている。なお、ターゲットに対するマグネット65の位置については、シリンダ64の可動軸64aのストロークを変化させることによって調整することが可能である。マグネット65の位置を変更する装置としては、その他、モータとボールネジを利用した機構とによって構成された装置を用いることもできる。また、基板とターゲットの間の距離は、ターゲットを取り付けるときにスペーサを付設することによって調整される。
【0034】
以上において、カソード回転体24を回転させるモータ47の動作、カソード電源46の給電動作、バルブ板15の開閉を行う直線駆動装置17の動作、シリンダ64,66の動作、真空ポンプ43の動作等は、コントローラ48による制御に基づいて行われる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、回転式カソード機構を備えたカソードチャンバと回転式基板搬送機構を備えた基板搬送チャンバを備え、カソードチャンバと基板搬送チャンバの間の形成されたスペースと仕切り板を利用してスパッタ成膜を行うときスパッタチャンバを形成するように構成したため、スパッタチャンバの構造を簡単な構造で実現し、スパッタチャンバの形成に要するスペースをできるだけ小さくし、また1つのスパッタチャンバで多層膜を基板上に形成することができ、スパッタチャンバの数の増大の要請に対しても簡素な構造および低コストで簡単に対処することができる。またスパッタ成膜用のスペースを仕切り板を設けることによりその他の領域から分離するようにしたため、スパッタ成膜時のガスコンタミネーションの問題を解消し、かつ成膜に必要な圧力状態を安定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパッタリング装置の代表例を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係るスパッタリング装置の代表例を示す概略水平断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示した図である。
【図4】本発明に係るスパッタリング装置の具体的な構造を示す縦断面図である。
【図5】上記具体的構造でカソード回転体の内部構造を示す水平断面図である。
【図6】従来のスパッタリング装置の第1例を示す図である。
【図7】従来のスパッタリング装置の第2例を示す一部切欠き平面図である。
【図8】図7におけるA−A線断面図である。
【図9】従来のスパッタリング装置の第3例を示す水平断面図である。
【図10】図9におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
10 カソード機構
15,16 バルブ板
17,18 直線駆動装置
20 基板取付け機構
24 カソード回転体
25 カソード
26 回転駆動装置
27a〜27d ターゲット
28 基板回転体
29 基板
31 回転駆動装置
100 カソードチャンバ
200 基板チャンバ
300 スパッタチャンバ
Claims (4)
- 複数の側面の各々にカソードを備えたカソード回転体が中央に配置されるカソードチャンバと、
複数の側面の各々に基板を保持した基板回転体が中央に配置される基板搬送チャンバと、
前記カソードチャンバと前記基板搬送チャンバの間に設けられた1つのスパッタチャンバとを備えるスパッタリング装置において、
前記カソードチャンバと前記スパッタチャンバの間に配置され、第1駆動装置によりカソードチャンバ側またはスパッタチャンバ側に移動可能に設けられ、筒部を有する第1バルブ板と、
前記基板搬送チャンバと前記スパッタチャンバの間に配置され、第2駆動装置により基板搬送チャンバ側またはスパッタチャンバ側に移動可能に設けられ、筒部を有する第2バルブ板とを備え、
前記カソード回転体の1つの前記側面に備えた前記カソードと、前記基板回転体の1つの前記側面に保持した前記基板とが対向した状態で、前記第1駆動装置と前記第2駆動装置を作動させることにより前記第1バルブ板を前記カソードチャンバ側にかつ前記第2バルブ板を前記基板搬送チャンバ側にそれぞれ移動させ、前記第1バルブ板の前記筒部の端部を前記カソード回転体の前記側面に接触させ、前記第2バルブ板の前記筒部の端部を前記基板回転体の前記側面に接触させることにより、前記スパッタチャンバ内にスパッタ成膜スペースを形成する、
ことを特徴とするスパッタリング装置。 - 前記第1バルブ板は、前記スパッタ成膜用スペースと前記カソードチャンバの内部スペースとを分離する仕切り板となること特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
- 前記第2バルブ板は、前記スパッタ成膜用スペースと前記基板搬送チャンバの内部スペースとを分離する仕切り板となること特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
- 前記スパッタチャンバに排気用真空ポンプが設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
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