従来よりSDカード(24×32×2.1mm:縦×横×厚さ)の小型版メモリカードとして、図10に示すようなミニSDカード(20×21.5×1.4mm:縦×横×厚さ)200が提供されている。
図10において、ミニSDカード200の正規挿入姿勢での挿入時の前側(以下、「後側」という)の端部裏面側には11本のコンタクト204a〜kが前後方向と厚さ方向に直交する方向(以下、「左右方向」という)に並設されている。またミニSDカード200の後側には一方の角を落として切り欠き部201が形成されていると共に、この切り欠き部201によって幅が狭められたミニSDカード200の後側端部における表面側の左右両側縁には上向きの段部202が設けられており、これら切り欠き部201と段部202とでカードコネクタに対するミニSDカード200の正規挿入姿勢以外での誤挿入(前後が逆の姿勢、表裏が逆の姿勢での挿入)を防止している。さらにミニSDカード200の切り欠き部202より前側の幅広部分における表面側の左右両側部にはロック用切り欠き203が設けられ、ミニSDカード200をカードコネクタに装着した際にカードコネクタ側のロック部材がロック用切り欠き203に係止することによって、ミニSDカード200の脱落を防止するようになっている。なお、ミニSDカード200の11本のコンタクト204a〜kは、裏面側から見て左から右に1〜11番のコンタクト204a〜kが順番に配置されており、1,2,10,11番の4本のコンタクト204a,b,j,kがデータ用、3番のコンタクト204cがコマンド用、4,9番の2本のコンタクト204d,iがグランド用、7番のコンタクト204gが電源用、8番のコンタクト204hがクロック用である。そして、5,6番の2本のコンタクト204e,fはミニSDカード200で予備に追加されたもので、有効コンタクト数は9本となりSDカードのコンタクト数9本に対応している。
ところで、最近、ミニSDカード200よりさらに小型版メモリカードとして、トランスフラッシュやこの仕様を採用した図11に示すようなマイクロSDカード(11×15×1mm:縦×横×厚さ)300が提供されている。
図11において、マイクロSDカード300の後側には一方の角を落として切り欠き部301が形成されている。またマイクロSDカード300の切り欠き部301より前側の幅広部分における切り欠き部301側の一側部にはロック用切り欠き302が設けられている。さらにマイクロSDカード300の後側の端部裏面側には8本のコンタクト303a〜hが左右方向に並設されている。なお、マイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hは、裏面側から見て左から右に1〜8番のコンタクト303a〜hが順番に配置されており、1,2,7,8番の4本のコンタクト303a,b,g,hがデータ用、3番のコンタクト303cがコマンド用、4番のコンタクト303dが電源用、5番のコンタクト303eがクロック用、6番のコンタクト303fがグランド用である。つまり、マイクロSDカード300でグランド用コンタクトが1本になり、コンタクト数がSDカード及びミニSDカード200の9本(ただし、ミニSDカード200は有効コンタクト数)から8本に削減されている。
このようにマイクロSDカード300は従来のミニSDカード200に比べて外形寸法がさらに一回り小さく、またコンタクト数も少ないので、従来のミニSDカード用のカードコネクタで使うためには、そのためのメモリカード用アダプタが必要となる。そして、この種メモリカードアダプタが、例えば特許文献1に開示されている。
マイクロSDカードをミニSDカード用のカードコネクタで使えるようにする従来のメモリカード用アダプタは、ミニSDカード仕様に対応する外形寸法に形成されてマイクロSDカードを装着するミニSDカード型のアダプタ本体を備え、そのアダプタ本体の内部に、カードコネクタの11本のコンタクトと電気的に接続するための11本の固定端子とマイクロSDカードの8本のコンタクトと電気的に接続するための8本の可動端子とを別々に設け、8本の可動端子をアダプタ本体の内部に設けた回路基板を介してそれぞれ対応する8本の固定端子に電気的に接続し、また2本のグランド用固定端子同士を電気的に接続した構成とされていた。
このように、従来のメモリカード用アダプタは、回路基板を内蔵し、大型メモリカード用のカードコネクタと接続する端子と、小型メモリカードと接続する端子の2種の端子を含んでいたので、部品点数が多く、構造的に複雑になり、製造コストも高くなるという問題があった。またアダプタ本体の内部における前端から後端にわたって回路基板が存在するので、アダプタ本体の構成部品に金属製のものを使用することができず、静電破壊防止対策を講じることができないという問題もあった。
なお、メモリカード用アダプタにおいて、アダプタ本体の構成部品の一つを金属で構成し、その金属部品を、アダプタ本体に内蔵の複数のグランド用コンタクトに電気的に接続し静電破壊防止対策を講じる技術が、例えば特許文献2に開示されている。この従来周知の技術を採用すれば、従来のメモリカード用アダプタのように、回路基板を内蔵し、大型メモリカード用のカードコネクタと接続する端子と、小型メモリカードと接続する端子の2種の端子を別々に設ける必要がないので、部品点数が少なく、構造的に簡単になり、製造コストも安くすることができる。
実用新案登録第3110839号公報
特開2004−272704号公報
本発明が解決しようとする課題は、アダプタ本体の構成部品の一つを金属で構成し、その金属部品に接続端子を一体に形成して、その接続端子を複数の特定コンタクトに接触させることで、複数の特定コンタクトを電気的に接続しているが、この場合、アダプタ本体を構成する金属部品を介しての接続になるため、グランド用コンタクトのみの接続しかできず、任意のコンタクトを電気的に接続することができない点にある。
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、小型メモリカードをそれよりも大型のメモリカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタにおいて、大型のメモリカード仕様に対応する外形寸法に形成されて複数のコンタクトを内蔵した小型メモリカードを装着する大型のメモリカード型のアダプタ本体を備え、複数のコンタクトを絶縁状態で保持するインシュレータに、複数の特定コンタクトを電気的に接続する導通路を形成し、インシュレータは、複数のコンタクトと金属板との間に絶縁体を挟んでおり、複数のコンタクトと金属板がそれぞれ絶縁体に固定され、複数の特定コンタクトをそれぞれ金属板と電気的に接続して導通路を形成したことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に、複数の特定コンタクトと金属板間の電気的接続は、特定コンタクト、絶縁体、金属板を貫通する貫通孔内面に金属メッキを施す、又は貫通孔内に導電性の充填材を充填する、又は貫通孔内に導電性の金属部材を圧入することで行う点を付加したものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明に、複数の特定コンタクトは、グランド用コンタクトである点を付加したものである。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明に、アダプタ本体を絶縁性のベースとで構成する導電性のカバーに、板バネ状の弾性変位可能な接続端子を一体に形成し、その接続端子を金属板に接触させ、グランド用コンタクト同士と、グランド用コンタクトとカバー間を電気的に接続した点を付加したものである。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明に、インシュレータの金属板側に重ね合わせる絶縁性のスペーサを設け、インシュレータを、カバーとベースとの間にスペーサを介して挟み、カバーには、インシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の側縁から延設してインシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の内面側に端部を臨ませる折り返し部を一体に形成し、接続端子は、折り返し部の端部に連設してカバーのインシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の内面側に配設し、スペーサには、カバーの折り返し部と接続端子を収容して接続端子をインシュレータの金属板に接触させるための収容孔を形成した点を付加したものである。
請求項1記載の発明によれば、複数のコンタクトを絶縁状態で保持するインシュレータに、複数の特定コンタクトを電気的に接続する導通路を形成したことで、アダプタ本体に内蔵の複数のコンタクトのうちの任意の複数の特定コンタクトを、アダプタ本体の内部で余剰スペースがない中で、接触信頼性を確保しながら確実に電気的に接続することができる。
また、インシュレータは、複数のコンタクトと金属板との間に絶縁体を挟んでおり、複数のコンタクトと金属板がそれぞれ絶縁体に固定され、複数の特定コンタクトをそれぞれ金属板に電気的に接続して導通路を形成したことで、インシュレータの補強板を兼ね、ひいてはアダプタの剛性を高める金属板を介して、任意の複数の特定コンタクトの電気的な接続を簡単に行うことができる。
請求項2記載の発明によれば、複数の特定コンタクトと金属板間の電気的接続は、特定コンタクト、絶縁体、金属板を貫通する貫通孔内面に金属メッキを施す(スルーホール)、又は貫通孔内に導電性の充填材を充填する、又は貫通孔内に導電性の金属部材を圧入することで行うために、複数の特定コンタクトと金属板間の電気的接続を、インシュレータの厚さ内で行うことができ、厚さが薄いアダプタ本体の内部において特に厚さ方向のスペースに余裕がない場合でも、任意の複数の特定コンタクトの電気的な接続を行うことができる。
請求項3記載の発明によれば、複数の特定コンタクトは、グランド用コンタクトであるために、アダプタ内に浮遊グランドとなるコンタクトをなくすことができる。
請求項4記載の発明によれば、アダプタ本体を絶縁性のベースとで構成する導電性のカバーに、板バネ状の弾性変位可能な接続端子を一体に形成し、その接続端子を金属板に接触させ、グランド用コンタクト同士と、グランド用コンタクトとカバー間を電気的に接続したことで、アダプタ内に浮遊グランドとなるコンタクトをなくすことができると共に、アダプタに静電破壊防止機能を持たせることができる。しかも、接続端子は、それ自体が持つ弾性によってグランド用コンタクトに接触するので、アダプタの構成部品自体の寸法誤差や組立ての寸法誤差、使用時にアダプタに加えられる外力や熱による変形が生じても、それを吸収しながらグランド用コンタクトとの接触を自己保持することができて、高い接触信頼性を確保することができる。よって、アダプタの静電破壊防止機能を確実に維持することができる。
請求項5記載の発明によれば、インシュレータの金属板側に重ね合わせる絶縁性のスペーサを設け、インシュレータを、カバーとベースとの間にスペーサを介して挟み、カバーには、インシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の側縁から延設してインシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の内面側に端部を臨ませる折り返し部を一体に形成し、接続端子は、折り返し部の端部に連設してカバーのインシュレータをベースとの間でスペーサを介して挟む部分の内面側に配設し、スペーサには、カバーの折り返し部と接続端子を収容して接続端子をインシュレータの金属板に接触させるための収容孔を形成したことで、アダプタ使用時にアダプタ本体に厚さ方向の圧縮荷重が加えられたとしても、スペーサがあるために折り返し部及び接続端子が前記圧縮荷重により押し潰されて塑性変形することはなく、接続端子の機能を確実に維持発揮させることができる。
以下、本発明に係るメモリカード用アダプタの実施形態を図1〜9を参照して説明する。本実施形態のメモリカード用アダプタ100は、小型メモリカードであるマイクロSDカード300を装着してそれより大型のメモリカード用のカードコネクタであるミニSDカード200用のカードコネクタで使えるようにするもので、ミニSDカード仕様に対応すべくミニSDカード200と略同じ外形寸法(縦・横・厚さの各寸法)に形成されてマイクロSDカード300を装着する図1,図2に示したようなミニSDカード型のアダプタ本体1と、アダプタ本体1に内蔵する図3,図4,図7(A)(B)に示したようなインシュレータ50、図3,図4に示したようなスペーサ80、ロック部材90とで構成される。
図1,図2に示したアダプタ本体1は、図3,図4,図5(A)(B)に示したような合成樹脂材料からなる絶縁性のベース10と、図4,図6(A)(B)に示したような金属板からなる導電性のカバー30の2つの部品で構成される。
図3,図4,図5(A)(B)に示したベース10は、後側の一方の角を落とした略矩形状の底板11と、角落としによって横幅が狭められていない底板11の前側の幅広部分における左右両側域に縦横に立設した補強リブ12と、角落としによって横幅が狭められた底板11の後側の周縁に沿って立設した側壁13とを一体に有し、補強リブ12の間にマイクロSDカード300を収容するカード収容空間14を画成すると共に、カード収容空間14の後側に連続してインシュレータ収容空間15を画成している。インシュレータ収容空間15の底面には大きなコンタクト露出窓16が開口形成されている。カード収容空間14の一側にはロック部材収容空間17が隣接して画成され、ロック部材収容空間17は連通口18を介してカード収容空間14と連通されている。
そして、前記ベース10には、ミニSDカード200の切り欠き部201、段部202、ロック用切り欠き203に対応するアダプタ100側の切り欠き部19、段部20、ロック用切り欠き21がそれぞれ設けられている。また前記ベース10の幅広部分における左右外側面には複数のカバー係合爪22が設けられると共に、前記ベース10の幅広部分における左右内側部にはカバー係合溝23が設けられている。
図4,6(A)(B)に示したカバー30は、前記ベース10の前側幅広部分における上面を覆う矩形状の主部31と、主部31の左右側縁から下向きに延設して前記ベース10の前側幅広部分における左右外側面を覆う第1延設部32と、主部31の後側縁から後側に面一に延設して前記ベース10のインシュレータ収容空間15の上面を覆う主部31より幅狭の第2延設部33と、第2延設部33の基部の左右両側縁から下向きに延設する第1係合爪34と、第2延設部33の先端の側縁における左右側部から下向きに延設する第2係合爪35と、第2延設部33の先端の側縁における略中央部からU字状に延設して端部を第2延設部33の内面側に臨ませる折り返し片36と、折り返し片36の端部に中間部を連設して第2延設部33の内面側で左右方向(コンタクト並設方向)に延設する板バネである弾性変位可能な接続端子37とを一体に形成している。第1延設部32には複数のベース係合孔38が設けられている。
図3,図4,図7(A)(B)に示したインシュレータ50は、ミニSDカード仕様に対応すべくミニSDカード200と同じ11本のコンタクト60a〜kとインシュレータ50の補強板を兼ねる一枚の金属板70とで、インシュレータ収容空間15に嵌合する矩形状で金属板70と略同形の一枚の合成樹脂材料からなる薄い絶縁板51を挟んでいる構造である。
11本の各コンタクト60a〜kはそれぞれ矩形板状に形成されており、絶縁板50aの裏面に左右方向に並べられて接合固定されている。金属板70は絶縁板51と略同形状に形成されて絶縁板51の表面に接合固定されている。11本の各コンタクト60a〜kと金属板70はそれぞれ絶縁板51に対して接着、溶着、インサート成形によって指定位置に一体に固定されている。
11本のコンタクト60a〜kは、裏面側から見て左から右に1〜11番のコンタクト60a〜kが順番に配置されており、1,2,10,11番の4本のコンタクト60a,b,j,kがデータ用、3番のコンタクト60cがコマンド用、4,9番の2本のコンタクト60d,iがグランド用、5,6番の2本のコンタクト60e,fが予備、7番のコンタクト60gが電源用、8番のコンタクト60hがクロック用で、ミニSDカード200のコンタクト204a〜204kと同じ配列である。また11本のコンタクト60a〜kのうちの4番の1本のグランド用コンタクト60dと5,6番の2本の予備コンタクト60e,fを除く8本のコンタクト60a〜c,60g〜kの前側の端部には、それぞれ細幅の連続部63を介してコンタクトバネ片64a〜hが片持ち梁状に延ばされて一体に設けられている。この8本のコンタクトバネ片64a〜hは、裏面側から見て左から右に1〜8番のコンタクトバネ片64a〜hが順番に配置されており、1,2,7,8番の4本のコンタクトバネ片64a,b,g,hがデータ用、3番のコンタクトバネ片64cがコマンド用、4番のコンタクトバネ片64dが電源用、5番のコンタクトバネ片64eがクロック用、6番のコンタクトバネ片64fがグランド用である。つまり、マイクロSDカード300のコンタクト303a〜hと同じ配列である。この8本のコンタクトバネ片64a〜hがインシュレータ50の前側に前上がり傾斜状に突出されている。なお、ミニSDカード200と同様に、4番のグランド用コンタクト60dと7番の電源用コンタクト60gは、他の9本のコンタクト60a〜c、60e,f、60h〜kに比べて後端位置が後方(アダプタ挿入方向)に突出して位置ずれし、カードコネクタ側のコンタクトに他の9本のコンタクト60a〜c、60e,f、60h〜kに先立って接触するようになされているため、4,9番の2本のグランド用コンタクト60d,iの後端位置の間には段差(出代の差)が設けられている(図2,図7(B)参照)。
そして、インシュレータ50における2本のグランド用コンタクト60d,iの接合位置にそれぞれスルーホール52,53を設け、2本のグランド用コンタクト60d,iをそれぞれスルーホール52,53を介して金属板70に電気的に接続し、インシュレータ50に2本のグランド用コンタクト60d,iを電気的に接続する(同電位に保つ)ためのスルーホール52,53及び金属板70からなる導通路を形成している。
なお、スルーホール52,53は、各グランド用コンタクト60d,i、絶縁板51、金属板70を貫通する細径の貫通孔内面に導電性の金属メッキを施したものであるが、その他、同貫通孔内に導電性の充填材を充填したり、同貫通孔内に導電性の金属部材を圧入して圧接する方法で、2本のグランド用コンタクト60d,iをそれぞれ金属板70に電気的に接続してもよい。
図3,図4に示したスペーサ80は、インシュレータ50の金属板70の上に重ね合わせて、インシュレータ50の厚さ寸法をベース10のインシュレータ収容空間15の深さ寸法に設定するもので、インシュレータ収容空間15に嵌合可能なインシュレータ50と略同形の一枚の合成樹脂材料からなる略矩形状の絶縁板で構成されている。このスペーサ80には、前記カバー30の第2係合爪35を圧入するためのカバー係合溝82と、前記カバー30の折り返し片36及び接続端子37を収容して、図8に示したように、接続端子37の両端をインシュレータ50の金属板70に上方から接触させ、2本のグランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iと前記カバー30間を電気的に接続する(同電位に保つ)ための収容孔83が形成されている。
図3,図4に示したロック部材90は、薄板金属の板バネからなり、自由端側にカード係合部91を有している。なお、このロック部材90は、ベース10に樹脂で一体形成して設けてもよい。
本実施形態のメモリカード用アダプタ100を組み立てるに当たっては、ベース10のインシュレータ収容空間15にインシュレータ50を嵌め込み、ベース10のコンタクト露出窓16を通してインシュレータ50の11本のコンタクト60a〜kをベース10の裏面側に露出させると共に、ベース10のカード収容空間11の後部にインシュレータ50の8本のコンタクトバネ片64a〜hを突出させる。つまり、ベース10に対してインシュッレータ50を組み込んだ後、ベース10のインシュレータ収容空間15のインシュレータ50の上にスペーサ80を嵌め込む。またベース10のロック部材収容空間17にロック部材90を組み込み、ロック部材90の後側をベース10に対して固定し、ロック部材90の自由端側(前側)のカード係合部91を連通口18を介してカード収容空間14に突出させる(図3に示した状態)。次いで、ベース10のカバー係合溝23にカバー30の第1係合爪34を差し込むと共に、スペーサ80のカバー係合溝82にカバー30の第2係合爪35を差し込み、またスペーサ80の収容孔83にカバー30の折り返し片36及び接続端子37を嵌め込みながら、ベース10に対してカバー30を上方から被着し、ベース10の前側幅広部分における補強リブ12及びカード収容空間14及びロック部材90が組み込まれたロック部材収容空間17の上面をカバー30の主部31で一体的に覆うと共に、ベース10のインシュレータ収容空間15に嵌着されたスペーサ80の上面にカバー30の第2延設部33を接合させ、重合状態のインシュレータ50及びスペーサ80をベース10の底板11とカバー30の第2延設部33との間に挟み、またベース10の前側幅広部分における左右外側面をカバー30の第1延設部32で覆うと共に、ベース10の各カバー係合爪22をカバー30の各ベース係合孔38に嵌め込む。そして最後に、カバー30の第1延設部32における各ベース係合孔38の下縁を内側にかしめ、ベース10に対してカバー30を上記被着状態で固定させることで、組み立てが完了する。なお、ベース10とスペーサ80とは、熱、超音波等の溶着又は接着等の方法を用いて接合してもよい。
組み立て完了状態においては、図1,図2に示したように、ミニSDカード仕様に対応するミニSDカード200と略同じ外形寸法(縦・横・厚さの各寸法)である。そして、ミニSDカード200と同様に、後側の端部裏面側には11本のコンタクト60a〜kが左右方向に並設されて露出し、後側の一方の角を落として切り欠き部19が形成され、この切り欠き部19によって幅が狭められた後側端部における表面側の左右両側縁には上向きの段部20が設けられ、切り欠き部19より前側の幅広部分における表面側の左右両側部にはロック用切り欠き21が設けられて、ミニSDカード200用のカードコネクタに装着することができる。
また、前面にカード挿入口2が開口し、カード挿入口2にはカード収容空間11が連通し、カード収容空間11の後部(奥部)には8本のコンタクトバネ片64a〜hが左右方向に並設され、マイクロSDカード300が、カード挿入口2からカード収容空間11に装着することができると共に、装着したマイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hに8本のコンタクトバネ片64a〜hの自由端部を接触させることができる。
さらに、表面の略全面と左右側面の前半部が金属面で構成され、それ以外の裏面や側面が樹脂面で構成されている。金属面を構成するカバー30に一体に形成した接続端子37は、図8に示したように、折り返し片36と共に内蔵のスペーサ80に形成した収容孔83の内部に配設され、スペーサ80下面に挟み込まれているインシュレータ50の金属板70に上方から自身の弾性によって押し付いて接触している。そして、インシュレータ50はスルーホール52,53及び金属板70からなる導通路を介して2本のグランド用コンタクト60d,iを電気的に接続しているので、前記金属板70への接触によって、11本のコンタクト60a〜kのうちの隣接しない2本のグランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iとカバー30間を電気的に接続している。なお、ベース10とカバー30の主部31及び第1延設部32との接合面、スペーサ80とカバー30の第2延設部33との接合面は、その周囲外面よりカバー30の板厚寸法分凹状に形成され、カバー30の主部31及び第1延設部32の外面とその周囲のベース10の外面、カバー30の第2延設部33とその周囲のスペーサ80の外面が面一になるようになっている。
以上のように組み立てられたメモリカード用アダプタ100にマイクロSDカード300を装着する際には、マイクロSDカード300を前後方向及び表裏方向を正規の方向に向けた正規挿入姿勢でカード挿入口2を通してカード収容空間14に挿入すると、マイクロSDカード300は、このロック用切り欠き302を設けた側部でロック部材90のカード係合部91をバネ力に抗して押し退けながらカード収容空間14の内奥部へと挿入され、マイクロSDカード300の後側の端部裏面側に設けられた8本のコンタクト303a〜303hが、カード収容空間14の後部に並設されている8本のコンタクトバネ片64a〜hと接触して電気的に接続される。さらにマイクロSDカード300をカード収容空間14に挿入すると、マイクロSDカード300の後側の端部が、カード収容空間14の後端で立設しているスペーサ80の前側の側面に突き当たり、それ以上の挿入が規制されると共に、マイクロSDカード300のロック用切り欠き302にロック部材90のカード係合部91が対向し、バネ力によってカード係合部91がロック用切り欠き302に係合することによって、マイクロSDカード300の脱落が防止される。
メモリカード用アダプタ100に装着されたマイクロSDカード300を抜き取る際には、マイクロSDカード300の前端部を把持し、ロック部材90のバネ力に抗してマイクロSDカード300を前方に引き抜くと、マイクロSDカード300のロック用切り欠き302とロック部材90のカード係合部91との係合が解除されて、マイクロSDカード300をメモリカード用アダプタ100から容易に抜き取ることができる。
メモリカード用アダプタ100に装着されたマイクロSDカード300は、この8本のコンタクト303a〜hが対応する8本のコンタクト60a〜c,60g〜kに電気的に接続されているため、当該メモリカード用アダプタ100をミニSDカード200用のカードコネクタに装着することで、マイクロSDカード300の8本のコンタクト303a〜hが対応する8本のコンタクト60a〜c,60g〜kを介してカードコネクタの対応する8本のコンタクトと電気的に接続される。この結果、マイクロSDカード300がミニSDカード200と同様にミニSDカード200用のカードコネクタで使えるようになる。また11本のコンタクト60a〜kのうちの隣接しない2本のグランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iとカバー30間を電気的に接続しているので、アダプタ100内に浮遊グランドとなるグランド用コンタクトをなくすことができると共に、アダプタ100に静電破壊防止機能を持たせることができる。
本実施形態では、2本のグランド用コンタクト60d,iを任意の特定コンタクトとしてインシュレータ50に形成した導通路を介して電気的に接続したが、導通路は他の複数のコンタクトも同様に電気的に接続することができるものである。また、金属板70が一体構成のインシュレータ50を示したが、図9に示したように、金属板70を、例えば2本のグランド用コンタクト60d,iをスルーホール52,53を介して電気的に接続する第1ブロック71と、2番のデータ用コンタクト60bをスルーホール54を介して電気的に接続する第2ブロック72と、6番の予備コンタクト60fをスルーホール55を介して電気的に接続する第3ブロック73とに分割し、同電位ブロックを複数形成したインシュレータ50’を備えてもよい。この場合、第1ブロック71がカバー30に一体に形成した接続端子37と接触されて静電破壊防止に使用される。
以上のように、複数のコンタクト60a〜kを絶縁状態で保持するインシュレータ50に、複数の特定コンタクト60d,iを電気的に接続する導通路を形成したことで、アダプタ本体1に内蔵の複数のコンタクト60a〜kのうちの任意の複数の特定コンタクト60d,iを、アダプタ本体1の内部で余剰スペースがない中で、接触信頼性を確保しながら確実に電気的に接続することができる。
また、インシュレータ50は、複数のコンタクト60a〜kと金属板70との間に絶縁体51を挟んでおり、複数のコンタクト60a〜kと金属板70がそれぞれ絶縁体51に固定され、複数の特定コンタクト60d,iをそれぞれ金属板70に電気的に接続して導通路を形成したことで、インシュレータ50の補強板を兼ね、ひいてはアダプタ100の剛性を高める金属板70を介して、任意の複数の特定コンタクト60d,iの電気的な接続を簡単に行うことができる。
また、複数の特定コンタクト60d,iと金属板70間の電気的接続は、特定コンタクト60d,i、絶縁体51、金属板70を貫通する貫通孔内面に金属メッキを施す(スルーホール)、又は貫通孔内に導電性の充填材を充填する、又は貫通孔内に導電性の金属部材を圧入することで行うために、複数の特定コンタクト60d,iと金属板70間の電気的接続を、インシュレータ50の厚さ内で行うことができ、厚さが薄いアダプタ本体1の内部において特に厚さ方向のスペースに余裕がない場合でも、任意の複数の特定コンタクト60d,iの電気的な接続を行うことができる。
複数の特定コンタクト60d,iは、グランド用コンタクト60d,iであるために、アダプタ100内に浮遊グランドとなるコンタクトをなくすことができる。
アダプタ本体1を絶縁性のベース10とで構成する導電性のカバー30に、板バネ状の弾性変位可能な接続端子37を一体に形成し、その接続端子37を金属板70に接触させ、グランド用コンタクト60d,i同士と、グランド用コンタクト60d,iとカバー30間を電気的に接続したことで、アダプタ100内に浮遊グランドとなるコンタクトをなくすことができると共に、アダプタ100に静電破壊防止機能を持たせることができる。しかも、接続端子37は、それ自体が持つ弾性によってグランド用コンタクト60d,iに接触するので、アダプタ100の構成部品自体の寸法誤差や組立ての寸法誤差、使用時にアダプタ100に加えられる外力や熱による変形が生じても、それを吸収しながらグランド用コンタクト60d,iとの接触を自己保持することができて、高い接触信頼性を確保することができる。よって、アダプタ100の静電破壊防止機能を確実に維持することができる。
インシュレータ50の金属板70側に重ね合わせる絶縁性のスペーサ80を設け、インシュレータ50を、カバー30とベース10との間にスペーサ80を介して挟み、カバー30には、インシュレータ50をベース10との間でスペーサ80を介して挟む部分(第2延設部33)の側縁から延設してインシュレータ50をベース10との間でスペーサ80を介して挟む部分(第2延設部33)の内面側に端部を臨ませる折り返し部36を一体に形成し、接続端子37は、折り返し部36の端部に連設してカバー30のインシュレータ50をベース10との間でスペーサ80を介して挟む部分(第2延設部33)の内面側に配設し、スペーサ80には、カバー30の折り返し部36と接続端子37を収容して接続端子37をインシュレータ50の金属板70に接触させるための収容孔83を形成したことで、アダプタ使用時にアダプタ本体1に厚さ方向の圧縮荷重が加えられたとしても、スペーサ80があるために折り返し部36及び接続端子37が前記圧縮荷重により押し潰されて塑性変形することはなく、接続端子37の機能を確実に維持発揮させることができる。
以上、本実施形態は本発明の好適な実施形態の一例を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えば、マイクロSDカード300をSDカード用のカードコネクタで使えるようにするメモリカード用アダプタ以外の、他の種類のメモリカード用アダプタにも好適に実施することができるものである。