JP4399290B2 - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、特に、スロットルの開度が所定値以下で、所定のエンジン回転数以上であるときに燃料減量噴射制御を行う車両用内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
車両に搭載される内燃機関には、減速時においてスロットルが所定値以下となったときには、所定条件下で燃料噴射弁からの燃料噴射を停止させて燃費の向上を図っているものがある。ところで、スロットルが所定値以下となったときに即時に燃料噴射を停止させずにスロットルが所定値以下となったときのエンジン回転数の上昇変化率が大きいときには直ちに燃料噴射を停止させエンジン回転数の上昇変化率が小さいときには一定の遅れ時間の後に燃料噴射を停止させる装置(例えば、特許文献1参照)や、減速時にダッシュポット制御を行うとともにスロットル開度が所定以下で且つエンジン回転数が所定回転以上の場合に燃料噴射を停止させる減速制御装置(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特許第2721966号公報 特開平6−10734号公報
ところで、前記特許文献1に記載された装置では、スロットルが所定値以下となったときに、クラッチを遮断すること等によりエンジン回転数の上昇変化率が大きいときには直ちに燃料噴射を停止するように設定されているが、クラッチを遮断しない場合のエンジン回転数の上昇変化率が小さい場合には一定のディレイ時間を与えるだけで設定回転数や変速段によるエンジン回転数の上昇変化率の違いには対応できていない。従って、このような場合には燃料噴射が適切なタイミングで停止されないことが考えられる。
前記特許文献2に記載された装置は、減速ダッシュポット制御中に燃料カットを開始するエンジン回転数とスロットル開度条件を定めておくものであり、エンジン回転数の変化速度に対応した燃料噴射の停止制御はなされていない。また、特許文献1及び特許文献2に記載された装置では、燃料噴射状態から燃料噴射の停止状態への単なる切換制御を行っており、その遷移状態を制御することはできない。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、スロットルの開度が所定値以下で、所定のエンジン回転数以上であるときに、エンジンの運転状態に応じた適正な燃料減量噴射制御の状態を経て、燃料噴射停止制御の状態へ良好に移行することのできる燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、スロットルの開度を検出するスロットル開度検出手段と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたスロットルの開度及びエンジン回転数に基づいて燃料減量噴射制御を行う噴射燃料制御部とを有する車両用内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記スロットルの開度が所定開度閾値以下で、前記エンジン回転数が第1の回転数以上且つ第2の回転数未満であるときに燃料減量噴射制御を行い、前記スロットルの開度が前記所定開度閾値以下で、前記エンジン回転数が前記第2の回転数閾値以上であるときに燃料噴射の停止制御を行うことを特徴とする。
このようにすることにより、エンジン回転数が第2の回転数以上である場合には、燃料噴射の停止制御が行われ、燃料消費量を抑制することができる。この場合、エンジン回転数が比較的高回転であり、車速も高いことから車両の慣性力が大きいため、燃料噴射停止制御の状態に良好に移行することができる。また、エンジン回転数が第1の回転数から第2の回転数の間であるときには燃料減量噴射制御が行われることにより良好な減速感が得られる。
これらの燃料噴射の停止制御や燃料減量噴射制御は、シフト操作の有無にかかわらずに行うことができる。
この場合、前記開度閾値は、前記エンジン回転数に基づいて変化する変数とする。これにより、エンジン回転数に応じた一般的な運転パターンに基づいて適切な減速性能を実現することができる。
また、トランスミッションのギア段を検出するギア位置検出手段を有し、前記エンジン回転数が前記第2の回転数閾値以上の領域で、前記ギア段が高いほど前記変数の平均値を大きく設定するとよい。これにより、ギア段が高くなるほど燃料噴射を停止させる領域が広がり、燃料消費量を一層抑制することができる。また、一般的にはギア段が高くなるほど高車速となっていることから、該領域を広げることができる。
本発明によれば、スロットルの開度が所定値以下でエンジン回転数が第1の回転数以上である場合、車速、エンジン回転数又はギア段の値が低いときには燃料減少噴射制御を行う。これによって、エンジンの運転状態に応じた適正な燃料減量噴射制御の状態を経て、燃料噴射停止制御の状態へ良好に移行することができ、良好な減速感が得られる。また、車速、エンジン回転数又はギア段が高いときには、燃料噴射を停止させることから燃料消費量を抑制することができる。
さらに、本発明では、スロットル開度を所定値以下としたときのシフト操作の有無にかかわらずに上記の効果を奏する。
以下、本発明に係る燃料噴射制御装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図10を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る燃料噴射制御装置10は、車両に搭載されたエンジン12に設けられた上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の制御を行う装置である。エンジン12が搭載される車両としては、例えば、自動二輪車を挙げることができる。
エンジン12の燃焼室18には、吸気ポート20および排気ポート22が開口し、吸気ポート20、排気ポート22には吸気弁24および排気弁26がそれぞれ設けられるとともに、燃焼室18の上方には点火プラグ28が設けられる。
吸気ポート20に通じる吸気通路30には、アクセル(図示せず)の操作に連動して開閉し、吸入空気量を調整するスロットル弁32、ならびに該スロットル弁32の開度THを検出するスロットルセンサ(スロットル開度検出手段)34および吸入負圧PBを検出する負圧センサ36が設けられている。吸気通路30の終端にはエアフィルタを備えるエアクリーナ38が設けられており、該エアクリーナ38を通じて吸気通路30へ外気が取り込まれる。
吸気通路30には、スロットル弁32よりも下流側に前記下流側燃料噴射弁16が設けられ、スロットル弁32よりも上流側(エアクリーナ38側)には、前記吸気通路30を指向するように前記上流側燃料噴射弁14が設けられるとともに、吸気(大気)温度TAを検出する吸気温センサ40が設けられている。排気通路41には排気の酸素濃度を検出する2つの酸素濃度センサ42が設けられている。排気通路41の先には排ガス浄化装置としての触媒(図示せず)が設けられている。
エンジン12のピストン44にコンロッド46を介して連結されたクランク軸48には、クランク軸48の回転を磁気的に検出するクランクパルサ50が対向配置されている。クランク軸48から6速のトランスミッション51を介して連結された車輪52には、車速Vを検知する車速センサ(車速検出手段)54が対向配置されている。エンジン12の周りに形成されたウォータジャケットには、エンジン12の冷却水温度TWを検出する水温センサ56が設けられている。シリンダヘッド内部におけるカムシャフトの端部には吸気弁を開閉駆動する工程判別の基準位置を検出するカムセンサ57が設けられている。
本実施の形態に係る燃料噴射制御装置10は、上記の各センサと、これらのセンサが接続されたECU(Electric Control Unit)60とを含む構成となっている。
該ECU60は、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の燃料噴射量FI(図7参照)及び燃料噴射タイミングを制御する燃料噴射弁制御部62と、カムセンサ57の信号に基づいて点火プラグ28の点火制御を行う点火タイミング制御部64とを有する。
なお、エンジン12は直列4気筒型であるが、図1においてはそのうちの1気筒分のみを示している。従って、上流側燃料噴射弁14、下流側燃料噴射弁16及び点火プラグ28等は実際上気筒毎に合計4つずつ設けられている。4気筒をその並び順に第1気筒、第2気筒、第3気筒及び第4気筒と呼ぶとき、エンジン12は、第1気筒、第2気筒、第4気筒及び第3気筒の順に180°ずつ位相がずれて動作する。
図2に示すように、燃料噴射弁制御部62は、クランクパルサ50の信号からエンジン回転数NEを求めるエンジン回転数検出部70と、燃料噴射量FIを求める燃料噴射量演算部72と、該燃料噴射量演算部72からアクセス可能な、記録部としてのROM(Read Only Memory)74及びRAM(Random Access Memory)75と、燃料噴射量演算部72で求められた総噴射量と噴射配分値とに基づいて各上流側燃料噴射弁14及び各下流側燃料噴射弁16を制御する噴射弁ドライバ76とを有する。ROM74には後述する第1の閾値データ78a、第2の閾値データ78b及び第3の閾値データ78cが記録されている。
燃料噴射量演算部72は、前記各センサ、エンジン回転数検出部70及び噴射弁ドライバ76に接続されており、スロットル弁32の開度TH及びエンジン回転数NEに基づいて燃料減量噴射制御を行う噴射燃料制御部72aと、再度スロットル弁32を開けたとき、燃料噴射量FIを増量補正する燃料増量補正部72bと、車速V及びエンジン回転数NEに基づいてその時点のトランスミッション51のギア段を求めるギア段算出部72cと、エンジン12の稼動サイクル数を検出するサイクル数検出部72dとを有する。
ギア段算出部72cでは、車速Vとエンジン回転数NEとの比によりトランスミッション51のギア段が1速〜6速のいずれのギア段にあるかを検出する。これによりトランスミッション51にシフトポジションセンサを設けることなくギア段を検出することができる。また、ギア段算出部72cでは、所定のクラッチ信号及びギアニュートラル信号に基づいて、エンジン12と車輪52が切り離されていることを検知したときにはギア段の算出処理を停止し、ギア段の誤検出を防止する。さらに、車輪52がスリップしていることを検出した場合にもギア段の算出処理を停止する。なお、トランスミッション51がCVT(Continuously Variable Transmission、無段変速機)である場合には、検出されるギア段は、1〜6の整数値ではなく連続的な値をとることはもちろんである。この場合、後述する第1〜第3の閾値データ78a〜78cは、連続的なギア段の値を適当に区分して対応・選択させればよい。また、この場合におけるギア段算出部72cでは、CVTのドライブプーリ及びドリブンプーリの回転数の比からギア段を検出するとよい。
また、燃料噴射量演算部72は、吸気温センサ40により検出される吸気温度TA及び水温センサ56により検出される水温TWに基づいて燃料噴射量FIの補正を行う温度補正係数算出部72eと、上流側燃料噴射弁14と下流側燃料噴射弁16との燃料噴射量FIの比率を求める噴射比率決定部72fと、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の燃料の噴射総量を求める総噴射量決定部72gとを有する。
なお、実際上、ECU60は、主制御部としてのCPU(Central Processing Unit)が前記ROM74及びRAM75と一体となったワンチップマイコンを有し、燃料噴射量演算部72及び噴射弁ドライバ76の各機能は、ROM74に記録されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現される。
ROM74に記録された第1の閾値データ78aは、図3に示すように、グラフ線200aを記録したデータである。同様に、第2の閾値データ78b及び第3の閾値データ78cは、グラフ線200b及び200cを記録したデータである。該グラフ線200a〜200cは、エンジン回転数NEが0から最大許容回転数までの間において、図3中ハッチングのない通常噴射領域100、ハッチングの燃料噴射停止領域102及びクロスハッチのリーン化領域104の区別をスロットル弁32の開度THとの関係で示すグラフであり、これらの領域を区分する閾値として用いられる。
通常噴射領域100は、所定の燃料噴射量FIをそのまま噴射する領域であり、具体的には後述するステップS4において所定の燃料が噴射される。燃料噴射停止領域102は所定条件の成立後、短い遷移時間Ta(図7参照)が経過したときに燃料噴射を停止させる領域であり、具体的には後述するステップS10において減量した燃料が噴射される。リーン化領域104は所定条件の成立後、遷移時間Taの間に徐々に燃料噴射量FIを低減して遷移時間Ta後にリーン化目標補正値K(図8参照)に対応した燃料を噴出する領域であり、具体的には後述するステップS14において燃料噴出の停止処理が行われる。
また、後述するように、第1の閾値データ78aはトランスミッション51のギア段が1〜3速のギア段であるときに選択され、第2の閾値データ78bは4速のギア段であるときに選択され、第3の閾値データ78cは5速及び6速のギア段であるときに選択される。
グラフ線200aは、0≦NE<NE1(第1の回転数閾値)の間ではTH=0を示し、NE1≦NE<NEαの間ではTH=THαを示す。開度THαは開度THの最大値と比較して小さい値であり、回転数NE1はエンジン回転数NEの最大許容回転数に比較して小さい値である。NEα≦NE<NE2(第2の回転数閾値)の間では緩やかな傾斜で、NE=NE2の箇所でTH≒THaとなる。回転数NE2は回転数NE1の略2倍の値である。
また、NE2≦NE<NEβの間では次第に急な傾斜となり、NE=NEβの箇所で開度THはグラフ上の最大値である開度THβとなる。NEβ≦NEの間ではTH=THβを示す。
に示すように、第2の閾値データ78bにおけるグラフ線200bは、0≦NE<NE1及びNE1≦NE<NEαの間では前記グラフ線200aと同じ値を示し、NEα≦NE<NE2の間ではやや急な傾斜で、NE=NE2の箇所でTH≒THγとなる。また、NE2≦NE<NEγの間ではNEα≦NE<NE2の間と略等しい傾斜で、NE=NEγの箇所でTH=THβとなる。NEγ≦NEの間ではTH=THβを示す。回転数NEγは、NEγ≒NEβである。
に示すように、第3の閾値データ78cにおけるグラフ線200cは、0≦NE<NE1及びNE1≦NE<NEαの間では前記グラフ線200aと同じ値を示し、NEα≦NE<NE2の間では急な傾斜で、NE=NE2の箇所でTH≒THδとなる。また、NE2≦NE<NEδの間の前半はTH≒THδであり、後半は所定の傾斜で、NE=NEδの箇所でTH=THβとなる。NEγ≦NEの間ではTH=THβを示す。回転数NEδは、NEδ<NEβ、NEδ<NEγである。
また、傾向としては、グラフ線200a、200b及び200cは、この順に従って大きくなるように設定されており、特に、エンジン回転数NEが回転数NE2以上の領域では、ギア段が高いほど閾値としての開度THの平均値が大きく設定されている。
グラフ線200a、200b及び200cは、エンジン12の特性や車種によって異なるように設定してもよい。
次に、このように構成される燃料噴射制御装置10の燃料噴射弁制御部62によって行われるエンジン12の上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対する燃料噴射制御の手順について、図6〜図10を参照しながら説明する。
なお、前記のとおり、燃料噴射弁制御部62の機能は、CPUがROM74に記録されたプログラムを読み込み実行することにより実現されることから、プログラムの内容によって異なる機能が実現可能であって、以下、第1のプログラム及び第2のプログラムに基づいた燃料噴射弁制御部62の制御手順を説明する。
第1及び第2のプログラムに基づく燃料噴射弁制御部62の制御処理(図6及び図9参照)は、主に噴射燃料制御部72aによって微小時間毎に繰り返し実行され、いわゆるリアルタイム処理が可能である。また、燃料噴射弁制御部62は気筒毎に異なるタイミングで燃料噴射量FIの演算を行うが、以下の説明では代表的な1気筒分の燃料噴射量FIの演算手順について説明する。以下の説明では、断りのない限り表記したステップ番号順に実行されるものとする。
先ず、第1のプログラムによれば、最初のステップS1において、ギア段算出部72cの作用下に、車速Vとエンジン回転数NEとの比Rによりトランスミッション51のギア段を検出する。具体的には、この比Rがトランスミッション51の1〜6速に対応した6つの所定数R1〜R6のうち略一致するものを抽出することによってその時点のギア段を検出する。このとき、比Rと所定数R1〜R6との比較は、完全一致を条件とする比較ではなく、所定の許容幅をもった略一致の条件比較とするとよい。これにより、車輪52に設けられたタイヤ径に誤差がある場合や、車輪52が多少スリップしている場合においてもギア段を正しく検出することができる。
また、比Rが所定数R1〜R6の何れにも略一致しないときにはギア段の算出を停止し、それ以前に検出したギア段の値を保持する。このような場合としては、クラッチがオフとなっている場合、トランスミッション51がニュートラルポジションとなっている場合及び車輪52がスリップしている場合等を挙げることができる。なお、前記のとおり、所定のクラッチ信号等を検出した場合にもギア段の算出処理を停止する。
ステップS2において、前記ステップS1で検出したギア段に基づいて、第1〜第3の閾値データ78a〜78cのうち1つを選択して、対応するグラフ線200a、200b及び200cを読み込む。つまり、ギア段が1〜3速のギア段である場合には第1の閾値データ78aを選択し、ギア段が4速のギア段である場合には第2の閾値データ78bを選択し、ギア段が5〜6速のギア段である場合には第3の閾値データ78cを選択する。以下の説明では、グラフ線200a、200b及び200cを代表的にグラフ線200とも呼ぶ。
ステップS3において、その時点のスロットル弁32の開度TH及びエンジン回転数NEを読み込むとともに、グラフ線200においてエンジン回転数NEに対応する箇所における開度THとして示される閾値(以下、閾値THxという)を超えているか否かを確認する。TH>THxであるときにはステップS4へ移り、TH≦THxであるときにはステップS5へ移る。
例えば、その時点のギア段が1速のギア段であってエンジン回転数NEがNE=NE2であるときには図3のグラフ線200aを参照し、TH>THaであれば通常噴射処理であるステップS4へ移り、TH≦THaであればステップS5へ移る。また、図3〜図5から明らかなように、エンジン回転数NEがNE<NE1であるときには常にステップS4へ移ることになる。
ステップS4において、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対して通常燃料噴射処理を行う。すなわち、燃料噴射量FIを開度TH、負圧PB、酸素濃度O、エンジン水温TW等に基いて、別ルーチンにおいて予め求めておき、初期状態で1.0である補正係数K1を乗算し、FI←FI×K1として更新した上で、噴射弁ドライバ76に燃料噴射の指令として与える。
この場合、K1=1.0であるが、実際上、燃料噴射量FIの補正は、補正係数K1以外にも、前記温度補正係数算出部72eにより算出される吸気温度TAに基づく補正係数K2、水温TWに基づく補正係数K3等を乗算し、FI←FI×K1×K2×K3…として求める。これらの他の補正係数K2、K3…は本発明の要部ではないことからその詳細な説明を省略する。
このステップS4は、前記のとおり通常噴射領域100(図3〜図5参照)の示す領域で実行される。
ステップS5においては、エンジン回転数NEが回転数NE2を超えるか否かを確認する。NE>NE2であるときにはステップS6へ移り、NE≦NE2であるときにはステップS11へ移る。
ステップS6において、所定のタイマによる計時が開始されていることを示すフラグFlgを確認し、Flg=1であるときにはステップS8へ移り、Flg=0であるときにはステップS7へ移る。フラグFlgは初期状態において、タイマの計時が開始されていないことを示す0に初期化されている。
ステップS7において、前記タイマによる計時を開始するとともに、フラグFlgに1をセットして計時が開始されたことを示す。
ステップS8において、前記タイマによる計時が所定の遷移時間Ta(図8参照)が経過したか否かを確認する。遷移時間Taが経過したときにはステップS9へ移り、経過前であるときにはステップS4へ移る。実際上、計時時間Taは1秒未満の微小な時間である。
ステップS9においては、前記タイマによる計時を終了する。このとき、フラグFlgは1のまま保持しておき、次のステップS10における燃料噴射停止処理が終了するときにFlg←0とリセットする。
ステップS10においては、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の燃料噴射を停止させる。具体的には、補正係数K1をK1←0と設定するとともに、予め別のルーチンにおいて求められた燃料噴射量FIをFI←FI×K1(=0)と設定する。このように燃料噴射量FIが0と設定されることによって、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の燃料噴射を停止させる。
この場合、図7に示すように、開度THが閾値THxを下回った時点から遷移時間Ta後に補正係数K1が0となり、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対する燃料噴射が停止されることとなる。
また、このステップS10は、前記のとおり燃料噴射停止領域102(図3〜図5参照)の示す領域で実行される。
一方、ステップS11(NE≦NE2であるとき)において、エンジン回転数NEが回転数NE1を超えるか否かを確認する。NE>NE1であるときにはステップS12へ移り、NE≦NE1であるときにはステップS4へ移る。
なお、前記グラフ線200a〜200cはNE≦NE1の間においてはTH=0を示すことから、NE≦NE1であるときには前記ステップS3の処理によってステップS4へ移ることとなっている。従って、グラフ線200a〜200cが図3〜図5に示されるように設定されている場合には、このステップS11の処理を省略してもよい。
ステップS12において、初期状態で1.0である補正係数K1を微小量ΔK1だけ低減する処理を行う。すなわち、K1←K1−ΔK1として補正係数K1を更新する。この時点で更新された補正係数K1は、ステップS12が微小時間後に再度実行されたときにも微小量ΔK1が再度減算されることとなり、結果として補正係数K1は徐々に減少する。微小量ΔK1は、補正係数K1が遷移時間Ta後に次のステップS13で用いるリーン化目標補正値Kと一致するように設定されている。
ステップS13において、前記ステップS12で更新された補正係数K1を所定のリーン化目標補正値Kでリミットする。ここで、リーン化目標補正値Kは、0<K<1の値である。リーン化目標補正値Kはその時点のギア段に基づいて異なる値として設定してもよい。
ステップS14において、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対してリーン化噴射処理を行う。すなわち、前記ステップS13で更新された補正係数K1を用いて燃料噴射量FIをFI←FI×K1と設定し、該燃料噴射量FIを噴射弁ドライバ76に燃料噴射の指令として与える。
この場合、図8に示すように、補正係数K1は当初は1.0であり、開度THが閾値THxを下回った時点から遷移時間Ta後にリーン化目標補正係数値Kに一致するように徐々に減少する。遷移時間Taの経過後には補正係数K1はK1=Kを維持する。また、このステップS14は、前記のとおりリーン化領域104(図3〜図5参照)の示す領域で実行される。ステップS12〜S14の処理では、燃料噴射量FIが減少することから空燃比がいわゆるリーン状態となり、燃料減量噴射制御が行われることとなる。
ステップS4、ステップS10又はステップS14の後、燃料噴射弁制御部62における今回の処理を終了する。なお、ステップS10の燃料噴射停止処理及びステップS14のリーン化噴射処理は、スロットル弁32の開度THが前記閾値THxを上回ったときには、ステップS3の条件判断によって終了し、通常噴射処理(ステップS4)に復帰する。
上述したように、燃料噴射制御装置10の燃料噴射弁制御部62を第1のプログラムに基づいて作用させる場合、エンジン回転数NEが回転数NE2以上である場合には、シフト操作の有無にかかわらずに燃料噴射の停止制御が行われ、燃料消費量を抑制することができる。この場合、エンジン回転数NEが比較的高回転であり、車速Vも高いことから車両の慣性力が大きいため、燃料噴射の停止状態に良好に移行することができる。
また、エンジン回転数NEがNE1≦NE<NE2であるときには燃料減量噴射制御が行われる。このとき、燃料噴射量FIは補正係数K1に基づいて徐々に減少し、しかも最終的に0となることはないため、良好な減速感が得られる。結果として、燃料噴射制御装置10は車両の減速時の燃料消費を抑制して燃費を向上させることができる。さらに、高車速域における減速に起因する前記触媒に対する燃料の影響を軽減して、該触媒を良好な状態に保ち耐久性の向上を図ることができる。
また、前記閾値THxは、エンジン回転数NEに対応して増加するように変化する変数となっている。従って、エンジン回転数NEに応じた一般的な運転パターンに基づいて適切な減速性能を実現することができる。
さらに、前記閾値THxは、傾向として、ギア段が高くなるほど値が大きくなるように設定されており、特に、エンジン回転数NEが回転数NE2以上の領域では、ギア段が高いほどその平均値が大きくなるように設定されている。従って、ギア段が高くなるほど前記燃料噴射停止領域102の領域が広がり、燃料消費量を一層抑制することができる。また、一般的にはギア段が高くなるほど高車速となっていることから、燃料噴射停止領域102の領域を広げることができる。
なお、通常噴射領域100、燃料噴射停止領域102及びリーン化領域104の選択方法は、上記のような条件比較によって選択する方法以外にも、ギア段、閾値TH及びエンジン回転数NEをパラメータとした所定のマップを参照することにより選択してもよい。
次に、第2のプログラムに基づいて実行される燃料噴射弁制御部62の処理について図9及び図10を参照しながら説明する。
第2のプログラムによれば、最初のステップS101において、前記ステップS1と同様に、トランスミッション51のギア段を検出する。
ステップS102において、前記ステップS3と同様に、その時点のスロットル弁32の開度THを読み込み、該開度THを所定の閾値THyと比較する。TH>THyであるときにはステップS110へ移り、TH≦THyであるときにはステップS103へ移る。閾値THyは小さい値であり、TH≦THyであるときにはスロットル弁32は略全閉である。
ステップS103において、その時点のエンジン回転数NEが回転数Naを上回っているか否かを確認する。NE>NaであるときにはステップS104へ移り、NE≦NaであるときにはステップS110へ移る。回転数Naは前記回転数NE1と同値に設定してもよい。
ステップS110においては、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対して通常の燃料噴射処理を行う。つまり、予め別のルーチンにおいてスロットル弁32の開度TH、負圧PB、酸素濃度O、エンジン水温TW等に基いて燃料噴射量FIを求めておき、該燃料噴射量FIを噴射弁ドライバ76に燃料噴射の指令として与える。
一方、ステップS104においては、前記ステップS101で求めたギア段がトランスミッション51の4速に相当するギア段以上であるか否かを確認する。ギア段が4速〜6速に相当するギア段であるときにはステップS106へ移り、1〜3速に相当するギア段であるときにはステップS105へ移る。
ステップS105においては、その時点の車速Vが所定の速度閾値Va以上であるか否かを確認する。V≧VaであるときにはステップS106へ移り、V<VaであるときにはステップS107へ移る。
ステップS106においては上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16の燃料噴射を停止させる。このように、スロットル弁32の開度THが閾値THy以下で、ギア段が4速段以上又は車速Vが速度閾値Va以上のときにはステップS104〜S106の処理によって燃料噴射を停止させることから、燃費の向上を図ることができる。
ステップS106が実行される状態は、図10におけるハッチングで示す燃料噴射停止領域110として示される。
一方、ステップS107(ギア段が1〜3速相当で、V<Va未満である場合)においては、燃料噴射量FIを微小量ΔFIだけ低減する処理を行う。すなわち、予め求められた通常の燃料噴射量FIに対して微小量ΔFIを減算し、FI←FI−ΔFIとして燃料噴射量FIを低減する。このステップS107で求めた燃料噴射量FIは、ステップS107が微小時間後に再度実行されたときにも微小量ΔFIが減算されることとなり、結果として燃料噴射量FIは徐々に減少する。
ステップS108において、前記ステップS107で求められた燃料噴射量FIを所定のリーン化目標値FIでリミットする。すなわち、FI<FIであるときにはFI←FI0と設定する。リーン化目標値FIはその時点のギア段に基づいて異なる値として設定されていてもよい。
ステップS109において、前記ステップS108で求められた燃料噴射量FIを噴射弁ドライバ76に燃料噴射の指令として与えることにより、上流側燃料噴射弁14及び下流側燃料噴射弁16に対してリーン化噴射処理を行う。つまりステップS107〜S109の処理では、燃料噴射量FIが減少することから空燃比がリーン状態となり、燃料減量噴射制御が行われる。この燃料減量噴射制御では、燃料噴射量FIが徐々に減少し、しかも最終的に0となることはないため、良好な減速感が得られる。燃料噴射量FIは、前記第1のプログラムによる処理と同様に補正係数K1に基づいて更新させるようにしてもよい。
ステップS109が実行される状態は、図10におけるクロスハッチングで示すリーン化領域112として示される。
ステップS106、S109又はS110の後、燃料噴射弁制御部62における今回の処理が終了する。
なお、燃料噴射停止領域110及びリーン化領域112の選択方法は、ギア段、及び車速Vをパラメータとして、図10に相当するマップを参照することにより選択してもよい。
本発明に係る燃料噴射制御装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成をとり得ることはもちろんである。
本実施の形態に係る燃料噴射制御装置の機能ブロック図である。 噴射燃料制御部の機能ブロック図である。 第1の閾値データの内容を示すグラフである。 第2の閾値データの内容を示すグラフである。 第3の閾値データの内容を示すグラフである。 第1のプログラムに基づく燃料噴制御部の制御手順を示すフローチャートである。 燃料噴射の停止制御を行う際の燃料噴射量、補正係数及びスロットル弁の開度の変化を示すタイムチャートである。 燃料減量噴射制御を行う際の燃料噴射量、補正係数及びスロットル弁の開度の変化を示すタイムチャートである。 第2のプログラムに基づく燃料噴制御部の制御手順を示すフローチャートである。 エンジン回転数及び車速に基づいて区分される燃料噴射停止領域及びリーン化領域を示すグラフである。
符号の説明
10…燃料噴射制御装置 12…エンジン
14…上流側燃料噴射弁 16…下流側燃料噴射弁
24…吸気弁 26…排気弁
30…吸気通路 32…スロットル弁
34…スロットルセンサ 48…クランク軸
50…クランクパルサ 51…トランスミッション
52…車輪 54…車速センサ
60…ECU 62…燃料噴射弁制御部
70…エンジン回転数検出部 72…燃料噴射量演算部
72a…噴射燃料制御部 72c…ギア段算出部
72d…サイクル数検出部 78a〜78c…閾値データ
100…通常噴射領域 102、110…燃料噴射停止領域
104、112…リーン化領域 200、200a〜200c…グラフ線
FI…燃料噴射量 K1…補正係数
TH…開度 V…車速

Claims (2)

  1. スロットルの開度を検出するスロットル開度検出手段と、
    エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
    検出されたスロットルの開度及びエンジン回転数に基づいて燃料減量噴射制御を行う噴射燃料制御部とを有する車両用内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記スロットルの開度が所定開度閾値以下で、前記エンジン回転数が第1の回転数以上且つ第2の回転数未満であるときに燃料減量噴射制御を行い、前記スロットルの開度が前記所定開度閾値以下で、前記エンジン回転数が前記第2の回転数閾値以上であるときに燃料噴射の停止制御を行い、
    前記開度閾値は、前記エンジン回転数に基づいて変化する変数であることを特徴とする燃料噴射制御装置。
  2. 請求項1記載の燃料噴射制御装置において、
    トランスミッションのギア段を検出するギア位置検出手段を有し、
    前記エンジン回転数が前記第2の回転数閾値以上の領域で、前記ギア段が高いほど前記変数の平均値が大きいことを特徴とする燃料噴射制御装置。
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