JP4398561B2 - アルミニウム電解コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサに関し、特にタブ端子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム電解コンデンサ(以下、電解コンデンサという。)は、図1および図3に示すように、陽極箔、陰極箔およびセパレータを巻回したコンデンサ素子2と、該コンデンサ素子2を収納した有底筒状のアルミニウム製のコンデンサケース3と、このコンデンサケース3の開放端側を封止する合成樹脂製の封口体4とを有している。封口体4の外端面には陽極端子41および陰極端子42が構成され、これらの端子41、42の下端部は、陽極内部端子43および陰極内部端子44としてコンデンサ素子2から引き出された陽極タブ端子21および陰極タブ端子22が電気的に接続されている。ここで、陽極タブ端子21および陰極タブ端子22は、いずれも200μm程度のアルミニウム箔を裁断したものである。これらのタブ端子21、22のうち、陰極タブ端子22については化成処理が施されていないものが使用される一方、陽極タブ端子21については化成処理が施されたものが使用されるが、いずれのタブ端子21、22についても、表面加工の施されていないアルミニウム箔が用いられている。
【0003】
また、陽極タブ端子21および陰極タブ端子22のいずれにおいても、陽極箔あるいは陰極箔との電気的な接続は、図2に示すように、陽極箔26および陰極箔27の表面に陽極タブ端子21および陰極タブ端子22を重ねた状態での加締め5(あるいは溶接)によってなされている。
【0004】
このような電解コンデンサ1において充放電が起こるときの挙動は以下のとおりである。
電解コンデンサ1において、陰極箔27については、厚さがたとえば20μm〜50μmのアルミニウム箔をエッチングした後、陽極酸化で数ボルト程度の皮膜生成処理を施したものを用いる場合と、エッチングのみで強制的な皮膜生成処理を行わないものを用いる場合とがあるが、強制的に皮膜生成を行わない場合においてもアルミニウム箔表面には大気中の水分または電解液中の水分と反応し1.0V前後の耐圧の皮膜が生成している。このため、電解コンデンサの静電容量は、耐圧を保持する陽極箔の静電容量と陰極箔の静電容量との直列接続での合成容量で成り立っている。
【0005】
ここで、陽極箔の単位面積当たりの静電容量をCa(μF/cm2)、陰極箔の単位体積当たりの静電容量をCc(μF/cm2)とし、電解コンデンサ1が充電された電圧をV、この電圧Vを陽極側および陰極側で分担する電圧をVa、Vcとし、このとき陰極箔および陰極箔に蓄積される電荷をQa、Qcとする。充電された電解コンデンサを放電するとき、陽極箔の静電容量と陰極側の静電容量は並列接続となる。そのため放電されず残存する電荷はQa−Qcとなり、放電時に陰極箔27にかかる電圧Vc′は〔数1〕となる。
【0006】
【数1】
【0007】
ここで、放電時に陰極箔27にかかる電圧が高過ぎると、陰極箔27に皮膜が生成してコンデンサ内でガスが発生するなどといった好ましくない現象が起こる。従って、放電時に陰極箔27に電圧が印加されても陰極箔27に皮膜生成が発生しない電圧をV′とすると、放電時には〔数2〕を満たす必要がある。
【0008】
【数2】
【0009】
ここで、Va=V−Vcであるから、〔数2〕から〔数3〕が導かれる。
【0010】
【数3】
【0011】
この〔数3〕を満たせば、放電時に陰極箔に電圧がかかっても陰極箔27に皮膜が生成しない。
【0012】
よって、従来は、〔数3〕を満たすように、陰極箔27として、静電容量の大きなもの、あるいは充放電電流によって陰極箔27に生成するであろう酸化皮膜の耐圧分をあらかじめ皮膜生成していたものを用いるなど、電解コンデンサ1の耐リプル性能、耐充放電性能を向上するにあたっては、陰極箔27あるいは陽極箔26、電解液、セパレータなどの材料の開発または改良を主体とした対応がなされてきた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような基本材料の開発によって電解コンデンサ1の耐リプル性能、耐充放電性能を向上するにも限界がある。すなわち、本願発明者が繰り返し行った実験において、耐リプル試験、耐充放電試験を行った電解コンデンサ1を調査、解析したところ、単時間のうちに許容リプルを遙かに越えるリプル電流が周期的に印加される回路や電圧差が大きく周期の短い充放電回路に用いる電解コンデンサ1には、いくら陰極箔27として理想に近いものを用いても、陰極タブ端子22およびその周辺の陰極箔27上に皮膜生成反応が起こるため、コンデンサ内でガスが発生し、内圧上昇に起因する防爆弁作動などといった不具合が発生するという新たな知見を得た。
【0014】
そこで、本発明の課題は、放電時に陰極側に皮膜生成が起こるのを防止することにより、耐充放電性能および耐リプル電流性能を大幅に向上させることのできる電解コンデンサを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明者は、繰り返し行った実験から、単時間でかつ周期的に許容リプルを遙かに越えるリプル電流が電解コンデンサに印加される回路や、電圧差が大きく周期の短い充放電回路に使われる電解コンデンサにおいて陰極タブ端子周辺の陰極箔上に皮膜生成反応が起こる理由は、従来の陰極タブ端子では単位面積当りの容量が低いため、放電電流が陰極タブ端子に流れた際に陰極タブ端子およびその周囲には高い電圧がかかるためであるという結論に到達した。
【0016】
そこで、本発明では、上記陰極タブ端子に弁金属粒子を蒸着し、さらにスポンジ状にすることで、陰極タブ端子の単位面積当りの静電容量を増大することができる。よって、単時間のうちに許容リプルを遙かに越えるリプル電流が周期的に電解コンデンサに印加されても、また、電圧差が大きく周期の短い充放電回路に用いる電解コンデンサにおいても、陰極タブ端子およびその周囲には高い電圧がかからない。それ故、陰極タブ端子およびその周囲に皮膜が生成しないので、コンデンサ内でのガス発生を防止できる。
【0017】
すなわち、陽極タブ端子が電気的に接続された陽極箔と、陰極タブ端子が電気的に接続された陰極箔とをセパレータを介して巻回または積層したコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸してなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、上記陰極タブ端子の少なくともセパレータと接する面に弁金属粒子をスポンジ状に蒸着してなり、上記弁金属粒子の蒸着厚みが、2.0〜10.0μmであり、上記弁金属粒子の粒子径が、0.020〜0.200μmであることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサである。
【0021】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、電解コンデンサの構造を模式的に示す断面である。図2は本形態に係る電解コンデンサに用いたコンデンサ素子の構造を示す説明図である。なお、本形態の電解コンデンサも、従来の電解コンデンサと基本的な構造が共通するので、対応する部分には同一の符号を付してある。
【0022】
図1および図2に示すように、電解コンデンサ1では、エッチング箔に陽極酸化(化成処理)を施した陽極箔26、陽極酸化皮膜を形成していないエッチング箔あるいは薄い陽極酸化皮膜を形成したエッチング箔からなる陰極箔27、およびセパレータ28を巻回したコンデンサ素子2と、該コンデンサ素子2を収納した有底筒状のアルミニウム製のコンデンサケース3と、このコンデンサケース3の開放端側を封止する合成樹脂製の封口体4と、コンデンサケース3にコンデンサ素子2を固定する素子固定材30とを有している。コンデンサ素子2には駆動用電解液が含浸されている。封口体4の外端面には陽極端子41および陰極端子42が構成され、これらの端子41、42の下端部は、陽極内部端子43および陰極内部端子44としてコンデンサ素子2から引き出された複数枚の陽極タブ端子21および複数枚の陰極タブ端子22がそれぞれ電気的に接続されている。ここで、陽極タブ端子21および陰極タブ端子22は、いずれも200μm程度の厚手のアルミニウム箔から裁断したものである。これらのタブ端子21、22のうち、陰極タブ端子22については化成処理が施されていないものが使用される一方、陽極タブ端子21については化成処理が施されたものが使用されているが、いずれのタブ端子21、22においても、化成処理を施したものを用いてもよい。
【0023】
本形態においては、陽極タブ端子21と陽極箔26との電気的な接続は、従来と同様、陽極箔26の表面に陽極タブ端子21を重ねた状態で加締め5(あるいは溶接)などを行うことによってなされている。但し、陰極タブ端子22には、粒子径0.02〜0.20μmの弁金属粒子を蒸着により少なくともセパレータ接触面に2〜5μm厚みでスポンジ状に形成したタブ端子を用いている。
【0024】
【実施例】
表1記載の陰極タブ端子を用いて、定格400V/1500μF、サイズφ63×60mmLの電解コンデンサを各10個作製した。電解コンデンサのtanδを測定した後、400V、1秒間充電、1秒放電を1000万回繰り返す充放電試験を行った。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように、実施例1〜7は製品tanδが良好で、充放電試験でも不合格品は発生しなかったが、従来例や、静電容量が低い比較例では充放電試験で弁作動による不合格品が発生した。この結果より、弁金属粒子を蒸着したタブ端子容量は、陰極箔の静電容量の0.3倍以上が望ましいことが判明した。
【0027】
次に、弁金属粒子の蒸着厚みについて試験した。蒸着厚みと製品tanδおよび充放電試験での故障率との特性図を図4に示す。
図4より蒸着厚みは、2.0〜10.0μmが望ましいことが判明した。蒸着厚み2.0μm未満では充放電試験に耐える効果が低く、蒸着厚みが10.0μmを超えると製品tanδが高くなり問題がある。
【0028】
さらに、蒸着する弁金属粒子の粒子径について試験した。粒子径と製品tanδおよびタブ端子容量/陰極箔容量倍率との特性図を図5に示す。
図5より、0.02μm未満では粒子径が細かすぎて必要容量が得られず、0.200μmを超えると粒子径が大きすぎ必要容量まで蒸着すると蒸着厚みが厚くなり製品tanδが高くなり問題である。よって、粒子径は、0.020〜0.200μmが望ましいことが判明した。
【0029】
実施例では蒸着する弁金属にアルミニウムとチタンを用いたが、他にタンタル、ニオブ、ハフニウム等を使用しても実施例と同等の効果が得られた。また、蒸着方法は真空蒸着法だけでなく、アルゴン等の不活性ガス中、窒素等の希ガス中、微量の酸素雰囲気中で蒸着しても良い。
【0030】
また、弁金属粒子を蒸着するアルミニウム箔は、粗面化されたエッチング箔、粗面化されていないプレン箔のいずれを用いてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るアルミニウム電解コンデンサにおいて、少なくともセパレータに接する面に弁金属粒子を蒸着、特にスポンジ状に蒸着した陰極タブ端子を用いることでに単時間のうちに許容リプルを遙かに越えるリプル電流が周期的に電解コンデンサに印加されても、また、電圧差が大きく周期の短い充放電回路に用いられる電解コンデンサにおいても陰極タブ端子およびその周囲には高い電圧がかからない。それ故、陰極タブ端子およびその周囲に皮膜生成が抑制され、信頼性の高い電解コンデンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解コンデンサの構造を模式的に示す断面図。
【図2】本発明を適用した実施例のコンデンサ素子の構造説明図。
【図3】従来のコンデンサ素子の構造説明図。
【図4】弁金属粒子の蒸着厚みと製品tanδおよび充放電試験での故障率との特性図。
【図5】弁金属粒子の粒子径と製品tanδおよびタブ端子容量/陰極容量(容量倍率)との特性図。
【符号の説明】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 コンデンサケース
4 封口体
5 加締め(あるいは溶接)
21 陽極タブ端子
22 陰極タブ端子
26 陽極箔
27 陰極箔
28 セパレータ
30 素子固定材
41 陽極端子
42 陰極端子
43 陽極内部端子
44 陰極内部端子
Claims (1)
- 陽極タブ端子が電気的に接続された陽極箔と、陰極タブ端子が電気的に接続された陰極箔とをセパレータを介して巻回または積層したコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸してなるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記陰極タブ端子の少なくともセパレータと接する面に弁金属粒子をスポンジ状に蒸着してなり、
上記弁金属粒子の蒸着厚みが、2.0〜10.0μmであり、上記弁金属粒子の粒子径が、0.020〜0.200μmであることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
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