JP4398428B2 - 耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材、とくに、自動車、鉄道車両、航空機などの輸送機器の構造材として好適に使用される耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、航空機などの輸送機器の構造体に要求される性能としては、(1)強度、(2)耐食性、(3)破壊力学特性(耐疲労亀裂伝播、破壊靱性などの特性)が挙げられ、最近の材料の開発動向としては強度だけでなく、材料の製造から組立、運用も含めた総合的な評価が行われている。
【0003】
高強度アルミニウム合金としては、従来からAl−Cu−Mg系(2000系)やAl−Zn−Mg−Cu系(7000系)のアルミニウム合金が知られているが、これらのアルミニウム合金は強度面では優れているが、耐食性が必ずしも十分でなく、また押出性も劣り熱間割れが生じ易く押出速度を遅くして押出加工しなければならないため、製造原価が高くなるという難点がある。さらに、ポートホールダイスやスパイダダイスを用いて中空形状に押出加工することは困難であるため、ソリッド形状を組み合わせて構造体としなければならず、適用範囲が限定されていた。
【0004】
一方、アルミニウム材料のうち6061合金、6063合金に代表される6000系(Al−Mg−Si系)のアルミニウム合金は、加工性が良く製造が容易であり、耐食性にも優れているが、前記の7000系(Al−Zn−Mg系)や2000系(Al−Cu系)の高強度アルミニウム合金と比べ強度面で劣るという難点がある。強度を向上させた6000系アルミニウム合金として6013合金、6056合金、6082合金などが開発されているが、これらの開発合金も、車両の軽量化の進行に伴う材料の薄肉化の要求を満足させるには、強度、耐食性の面で必ずしもなお十分な特性をそなえていない。
【0005】
6000系アルミニウム合金における上記の問題点を解決して、良好な耐食性を有する高強度アルミニウム合金押出材を得ることを目的として、Si:0.5%〜1.5 %、Mg:0.9%〜1.6 %、Cu:1.2%〜2.5 %を含有するとともに、条件式、3%≦Si%+Mg%+Cu%≦4%、Mg%≦1.7×Si%、Mg%+Si%≦2.7%、2%≦Si%+Cu%≦3.5%、Cu%/2≦Mg%≦(Cu%/2)+0.6%を満足し、さらにCr:0.02 %〜0.4 %を含有し、且つ不純物としてのMnを0.05%以下に制限し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の中空押出材であって、押出により形成される中空断面内の溶着部について押出方向と直角方向に引張試験を行った場合に溶着部以外の部分で破断することを特徴とするAl−Cu−Mg−Si系合金中空押出材が提案されている(特開平10−306338号公報)。
【0006】
また、上記アルミニウム合金押出材にMnを含有させてさらに強度を改善するとともに、押出材の再結晶層厚さを制御して耐食性を維持したものとして、Si:0.5%〜1.5 %、Mg:0.9%〜1.6 %、Cu:0.8%〜2.5 %を含有するとともに、条件式、3%≦Si%+Mg%+Cu%≦4%、Mg%≦1.7×Si%、Mg%+Si%≦2.7%、Cu%/2≦Mg%≦(Cu%/2)+0.6%を満足し、さらにMn:0.5%〜1.2 %を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材であって、該押出材の最小肉厚をt(mm)、押出比をRとしたとき、押出材の表層部の再結晶層の厚さG(μm)がG≦0.326t×Rを満たすことを特徴とするアルミニウム合金押出材が提案された(特開2001−11559号公報)。
【0007】
上記のアルミニウム合金押出材は、Mnを添加して表層部の再結晶層以外の結晶組織を繊維状化したもので、強度は改善されるが押出加工において条件によっては押出割れが生じるなど押出性になお問題があるため、本出願の発明者の一人は他の発明者とともに、ソリッドダイスを用いて中実材に押出加工する場合には、ソリッドダイスのベアリング長さ、およびベアリング長さと押出材の肉厚の関係を特定した条件で押出加工し、ポートホールダイスまたはブリッジダイスを用いて中空材に押出加工する場合には、ビレットが分断されてダイスのポート部に進入したのちマンドレルを取り囲んで再び一体化する溶着室におけるアルミニウム合金の溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比を特定した条件で押出加工することにより押出性を改善する方法を提案した(特願2002−319453号)。
【0008】
しかしながら、これらの押出材は、押出(一次加工)後に曲げ加工、切削加工などの2次加工を経て使用されることが多いが、Mnを含有する上記のアルミニウム合金押出材は、表層部が再結晶組織、内部が繊維組織をそなえたものであるため、再結晶組織が粗大になると、2次加工後の表面性状や寸法精度が低下し、厳しい寸法公差から外れることがあり、また切削性が劣るという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、上記の問題点を解消するとともに、さらに安定した押出加工性をそなえた耐食、高強度アルミニウム合金押出材を得ることを目的として、上記で提案されたアルミニウム合金組成、押出条件をベースとして、さらに試験、検討を重ねた結果、特定量のSi、Mg、Cuを含有し、さらに特定量のCrを含有し、不純物としてのMn量を制限したアルミニウム合金を、上記で提案された押出条件で押出加工することにより、押出性がさらに改善され、押出材の断面全体で微細な再結晶組織となり、優れた耐食性と高強度をそなえたアルミニウム合金押出材が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、押出加工における生産性を低下させることなく、自動車、鉄道車両、航空機などの輸送機器の構造体に要求される強度および耐食性を満足し、且つ曲げ加工や切削加工など2次加工において良好な品質を得ることを可能とするアルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材は、質量%で、Si:0.6%〜1.2%、Mg:0.8%〜1.3%、Cu:1.3%〜2.1%を含有するとともに、下記の条件式(1)、(2)、(3)、(4)を満足し、
3%≦Si%+Mg%+Cu%≦4%---(1)
Mg%≦1.7×Si%---(2)
Mg%+Si%≦2.7%---(3)
Cu%/2≦Mg%≦(Cu%/2)+0.6%---(4)
さらにCr:0.04 %〜0.35%を含有し、且つ不純物としてのMnを0.05%以下に制限し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有することを特徴とする。結晶粒径とは、押出材の直角断面における結晶粒の短径の平均値をいう。なお、以下、合金成分の含有%はすべて質量%であり、結晶粒径とは、押出材の直角断面における結晶粒の短径の平均値をいう。
【0012】
請求項2による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材は、請求項1において、前記アルミニウム合金が、さらにZr:0.03 %〜0.2 %、V:0.03 %〜0.2 %、Zn:0.03 %〜2.0 %のうちの1種類以上を含有することを特徴とする。
【0013】
請求項3による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法は、請求項1または2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットをソリッドダイスを用いて中実材に押出加工する方法であって、ソリッドダイスのベアリングの長さ(L)が0.5mm以上で、且つ該ベアリングの長さ(L)と押出加工される中実材の肉厚(T)との関係がL≦5Tであるソリッドダイスを用いて押出加工し、押出加工された中実材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中実押出材とすることを特徴とする。
【0014】
請求項4による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法は、請求項3において、前記ソリッドダイスの前面にフローガイドを配設してなり、該フローガイドは、そのガイド孔の内周面がソリッドダイスのベアリングに連続するオリフィスの外周面から5mm以上離れており、且つその厚さがビレットの直径の5〜25%であることを特徴とする。
【0015】
請求項5による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法は、請求項1または2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットをポートホールダイスまたはブリッジダイスを用いて中空材に押出加工する方法であって、ビレットが分断されてダイスのポート部に進入したのちマンドレルを取り囲んで再び一体化する溶着室におけるアルミニウム合金の溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比を1.5以下として中空材に押出加工し、該中空材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中空押出材とすることを特徴とする。
【0016】
請求項6による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法は、請求項3〜5のいずれかにおいて、前記アルミニウム合金のビレットを500℃以上融点未満の温度で均質化処理と、均質化処理後のビレットを470℃以上融点未満の温度に加熱して押出加工する工程とからなることを特徴とする。
【0017】
請求項7による耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法は、請求項3〜6のいずれかにおいて、押出直後の押出材の表面温度が450℃以上に保持された状態で10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却するプレス焼入れまたは前記押出材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度域に加熱する溶体化処理を行った後、10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却する焼入れ処理工程と、170〜200℃で2〜24時間の熱処理を施す焼戻し処理工程とからなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のアルミニウム合金における合金成分の意義およびその限定理由について説明する。
Siは、Mgと共存して微細な金属間化合物、MgSiを析出してアルミニウム合金の強度を向上させる機能を有する。Siの好ましい含有範囲は0.6 %〜1.2 %であり、0.6 %未満ではその効果が十分でなく、1.2 %を越えると耐食性が低下する。Siのより好ましい含有範囲は0.7 %〜1.0 %である。
【0019】
Mgは、Siと共存してMgSiを析出し、更にCuと共存することによりCuMgAlを微細析出させ、アルミニウム合金の強度を向上させる。Mgの好ましい含有範囲は0.8 %〜1.3 %であり、0.8 %未満ではその効果が十分でなく、1.3 %を越えて含有すると耐食性が低下する。Mgのより好ましい含有範囲は0.9 %〜1.2 %である。
【0020】
Cuは、Si、Mgと同様に強度向上に寄与する元素成分であり、その好ましい含有範囲は1.3 %〜2.1 %である。1.3 %未満ではその効果が小さく、2.1 %を越えて含有すると耐食性が低下し、押出の際の変形抵抗が高くなって中空形状の押出材の製造において押詰まりが生じる。Cuのより好ましい含有範囲は1.5 %〜2.0 %である。
【0021】
Crは、合金の結晶組織を微細化して成形性を向上させるとともに、耐食性向上に寄与する。Crの好ましい含有範囲は0.04%〜0.35%であり、0.04%未満ではその効果が十分でなく耐食性が劣り、0.35%を越えると粗大な金属間化合物が生成し易くなって、再結晶粒が不均一となり、加工された際の成形性が低下する。Crのより好ましい含有範囲は0.1 %〜0.2 %である。
【0022】
Mnは、結晶粒を微細にして強度を向上させるが、Mn系の金属間化合物が生成し、このMn系化合物が孔食の起点となって腐食を促進するから、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下、さらに好ましくは0.01%以下に制限することが重要である。
【0023】
本発明のアルミニウム合金においては、Si、Mg、Cu、Crを必須成分とし、Si、Mg、Cu相互間の条件式(1) 〜(4) を満足する必要があり、これによって、金属間化合物の好ましい分散状態が得られ、強度、耐食性および成形性に優れたものとなる。必須成分Si、Mg、Cuの合計含有量が3 %未満では所望の強度を得ることができず、4 %を越えると耐食性が低下する。MgとSiの量的関係をMg%≦1.7×Si%、Mg%+Si%≦2.7%、MgとCuの量的関係をCu%/2≦Mg≦(Cu%/2)+0.6%とすることによって、金属間化合物の生成量、分布状態が制御され、合金にバランスの良い強度特性、成形加工性、耐食性を与えることができる。
【0024】
上記の本発明のアルミニウム合金に、選択成分として添加されるZr、V、Znは、金属間化合物を形成して結晶粒径を微細にするとともに、強度を向上させるよう機能する。Zr、V、Znが、それぞれ下限値に満たないとその効果が小さく、上限値を越えると粗大な金属間化合物の生成量が増加し、成形性、耐食性が低下する。なお、本発明のアルミニウム合金には、通常、鋳塊組織微細化のために添加される少量のTi、Bが含まれていても本発明の特性が害されることはない。
【0025】
本発明のアルミニウム合金押出材の好ましい製造方法について説明すると、まず、前記の組成を有するアルミニウム合金の溶湯を、例えば、半連続鋳造によりビレットに造塊し、得られたビレットを500℃以上融点未満の温度で均質化処理する。均質化処理温度が500℃未満では、鋳塊偏析の除去が十分に行われず、強度向上に寄与するMgSiの生成やCuの固溶が不十分となり、十分な強度、伸びが得られない。
【0026】
均質化処理後、ビレットを470℃以上融点未満の温度に加熱して熱間押出を行う。結晶粒径が500μm以下の微細な再結晶組織を得るために押出温度と押出速度の組合わせを調整するが、押出温度が470℃未満では添加元素の固溶が不十分で強度が低下する。
【0027】
プレス焼入れを行う場合には、押出直後の押出材の表面温度が450℃以上の温度に保持された状態とし、10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却する。プレス焼入れ工程において、押出材の表面温度が450℃未満では、溶質成分が析出する所謂焼入れ遅れが生じ、所望の強度が得られない。冷却速度が10℃/秒未満では、化合物が望ましくない分散状態に析出して耐食性、強度、伸びが不十分となる。より好ましい冷却速度は50℃/秒以上である。
【0028】
押出材を、通常の焼入れ処理工程に従い、雰囲気炉や塩浴炉等の熱処理炉中で5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度で溶体化処理した後、10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下まで冷却してもよい。溶体化処理時の熱処理温度が480℃未満では、析出物の固溶が不十分となり十分な強度および伸びが得られず、580℃を越えると、局部的な共晶融解により伸びが低下する。焼入れ処理時の冷却速度が10℃/秒未満では、プレス焼入れ工程の場合と同様、化合物が望ましくない分散状態に析出して耐食性、強度、伸びが不十分となる。より好ましい冷却速度は50℃/秒以上である。
【0029】
焼入れの終了した押出材は、室温時効した状態(T4調質)でも優れた伸びを示すが、焼入れ後に引張矯正を行い、170〜200℃で2〜24時間焼戻し処理を行うことが望ましい。焼戻し処理温度が170℃未満では、所望の強度を得るために長時間の焼戻し処理を行わなければならず、工業生産上好ましくない。焼戻し処理温度が200℃を越えた場合には強度が低下する。熱処理時間が2時間に満たないと十分な強度を得られず、24時間を越えると強度が低下する。
【0030】
つぎに、本発明による押出加工方法の具体的な態様について述べる。本発明の押出方法のうち中実材の押出加工について説明すると、所定の組成を有するアルミニウム合金は、通常の半連続鋳造によりビレットに造塊され、ソリッドダイスを用いて熱間で中実材に押出加工される。ソリッドダイスを用いて中実材を押出加工する場合の装置構成を図1に示す。長い押出材を製造する場合には、ビレットを押継ぎするためにソリッドダイス1の前面にフローガイド4を配置する。
【0031】
コンテナ7内に装入されたアルミニウム合金のビレット9は、押出ステム8で矢印方向に押されてフローガイド4のガイド孔5に進入した後、ソリッドダイス1のオリフィス3に入り、ソリッドダイス1のベアリング面2で成形されて中実材10として押し出される。
【0032】
中実材の押出加工においては、ソリッドダイスのベアリングにより押出材の形状が決定され、ベアリング長さLは押出材の特性に影響を与える。本発明においては、0.5mm≦Lとし、且つLと押出加工された中実材10の直角断面における肉厚T(図2)との関係をL≦5T、好ましくはL≦3Tとすることが重要であり、この寸法をそなえたソリッドダイスを用いて押出加工することにより、押し出される中実材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中実押出材とすることができる。断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中実押出材は、優れた強度、耐食性および2次加工性をそなえている。なお、肉厚Tとは、図2に示すように、押出加工された中実押出材の直角断面において、各部位の肉厚のうち最も大きいものをいう。
【0033】
ベアリングの長さが0.5mm未満になると、ベアリングの加工が難しくなり、ベアリングが弾性変形して寸法が不安定となり易い。また、ベアリングの長さが5Tを越えると、押し出される中実材の断面組織の結晶粒径が大きくなる。
【0034】
ソリッドダイス1の前面にフローガイド4を配設する場合は、フローガイド4のガイド孔5の内周面6がソリッドダイス1のオリフィス3の外周面から5mm以上離れており(A≧5mm)、且つその厚さBがビレット9の直径の5〜25%であること(B=D×5〜25%)が重要であり、前記のベアリング寸法をそなえたソリッドダイスとの組合わせで、押し出される中実材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織となり、優れた強度、耐食性および2次加工性をそなえた中実押出材が得られる。
【0035】
フローガイド4のガイド孔5の内周面6とソリッドダイス1のオリフィス3の外周面との距離Aが5mm未満では、フローガイド内でのビレットの加工度が大きくなり、押し出される中実材の結晶粒径が大きくなる。フローガイド4の厚さBがビレット9の直径(D)の5%未満では、フローガイドの強度が十分でなく変形が生じ易くなり、フローガイド厚さBがビレット9の直径(D)の25%を越えて長くなると、フローガイド内でのビレットの加工度が大きくなり、押し出された中実材に割れが生じて、強度や伸びが大幅に低下する。なお、中実押出材の形状が矩形の場合には、角部に0.5mm以上のRを付けることにより角部の割れを防止することができる。
【0036】
つぎに、本発明の押出方法のうち中空材の押出加工について説明すると、所定の組成を有するアルミニウム合金は、通常の半連続鋳造によりビレットに造塊され、ポートホールダイスまたはブリッジダイスを用いて熱間で中空材に押出加工される。図3〜4にポートホールダイスの構成を示す。図3はダイス雄型12をマンドレル15側から見た正面図、図4はマンドレル15が嵌まり込むダイス部16をそなえたダイス雌型13の背面図、図5はダイス雄型12と雌型13を合わせてなるポートホールダイス11の縦断面図、図6は図5の成形部の拡大図である。
【0037】
ポートホールダイス11は、複数のポート部14、14とマンドレル15を有する雄型12と、ダイス部16をそなえた雌型13を、図5に示すように合わせてなるもので、押出ステム(図示せず)で押されたビレットは、分断されてダイス雄型12のポート部14、14に進入したのち、溶着室17においてマンドレル15を取り囲んで再び一体化(溶着)し、溶着室17を出る時、内面をマンドレル15のベアリング部15Aで、外面をダイス部16のベアリング部16Aで成形され中空材となる。なお、ブリッジダイスは、ダイス内でのメタルのフロー、押出圧力、押出作業性などを考慮して雄型の構造を変えたもので、基本的にはポートホールダイスと同様な構造のものである。
【0038】
この場合、複数のポート部14に進入したアルミニウム合金(メタル)は、ポート部14から出て溶着室17に入ると、ポート部14とポート部14の間のブリッジ部18の裏側へも回り込み、互いに接合(溶着)するが、ポート部14から出てそのままダイス部16へ流出し、他のポート部14から出るメタルとの溶着に関わらない、すなわち非溶着部でのメタルの流速は、ブリッジ部18の裏側に流れ、他のポート部14から出るメタルとの溶着に関わる、すなわち溶着部でのメタルの流速より速くなり、溶着室17内のメタルの流速に差が生じる。なお、図3〜4では、ポート部およびブリッジ部が各2個あるポートホールダイスを示しているが、ポート部およびブリッジ部が各3個以上あるポートホールダイスでも同様である。
【0039】
発明者らは、ダイス内におけるメタルの流速の違いと押出された中空材の特性との関係について、試験、検討を重ねた結果、押出割れや溶着部の組織粗大化は、この流速差に起因するものであり、これを防止するためには、溶着室17におけるメタルの溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比を1.5以下(非溶着部での流速/溶着部での流速≦1.5)として押出加工することが必要であり、メタルの流速比をこの限界範囲内とすることによって、押し出される中空材の断面組織において結晶粒径500μ以下の再結晶組織を有する中空押出材とすることができ、強度、耐食性、2次加工性に優れた中空押出材が得られる。
【0040】
ダイスの溶着室17におけるメタルの溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比を1.5以下として押出加工するためには、例えば、ポートホールダイスのブリッジ幅W(図3)に対するチャンバー深さD(図5〜6)の比を調整したダイスを用いる。図7に、D/Wと(非溶着部でのメタルの流速/溶着部でのメタルの流速)の関係の一例を示す。
【0041】
上記の合金組成、製造条件の組合わせによって、押出材の断面組織が結晶粒径500μm以下の微細な再結晶組織となり、強度、耐食性に優れ、且つ曲げ加工、切削加工などの2次加工において良好な品質をそなえたアルミニウム合金押出材を得ることができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。なお、これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を半連続鋳造により造塊して、直径100mmのビレットを製造した。これらのビレットを525℃で8時間均質化処理をした後、各押出用ビレットとした。
【0044】
これらの押出用ビレットを、480℃に加熱し、ソリッドダイスを用いて、押出比27、押出速度3m/分で押出加工し、肉厚12mm、幅24mmの矩形形状の中実押出材とした。ソリッドダイスのベアリングの長さは6mm、オリフィスの角部に0.5mmのRを付けた。また、フローガイドはガイド孔を矩形形状とし、ガイド孔の内周面とオリフィスの外周面との距離(A)を15mm、厚さ(B)をビレットの直径100mmに対して15mmとした。(B=ビレット直径の15%)
【0045】
ついで、得られた中実押出材を、昇温速度10℃/秒で530℃の温度まで加熱して溶体化処理した後、10秒以内に水冷による焼入れ処理を行い、焼入れ処理の3日後に、180℃で10時間の人工時効処理(焼戻し処理)を行いT6材に調質した。これらのT6材を試験材として、以下の方法に従って、(1)直角断面における平均結晶粒径(結晶粒度の測定、(2)引張試験、(3)粒界腐食試験を行い特性を評価した。評価結果を表2に示す。なお、以下、平均結晶粒径は結晶粒度と表示する。
【0046】
(1)結晶粒度の測定:押出材の直角断面について、結晶粒毎にその短径を光学顕微鏡を用いて測定し、その平均値を求めた。
(2)引張試験:JIS Z2241に基づいて各試験片について引張強さ(UTS)、耐力(YS)、破断伸び(δ)を測定する。
(3)粒界腐食試験:塩化ナトリウム(NaCl)57g、30%H10mlを蒸留水で1リットルに調整して試験液とし、この試験液を30℃にして各試験片を6時間浸漬し腐食減量を測定する。腐食減量が1.0%未満のものを耐食性良好と判断した。
また、2次加工における品質の評価方法として、上記のT6材について90°曲げ加工を行い、その曲げ加工部外側の表面状態を目視にて観察し、表面不良発生の無いものを良好(○)、表面不良の発生したものを不良(×)とした。
【0047】
【表1】
Figure 0004398428
【0048】
【表2】
Figure 0004398428
【0049】
表2にみられるように、本発明に従う試験材No.1〜14はいずれも、優れた強度および良好な耐食性をそなえている。
【0050】
比較例1
表3に示す組成のアルミニウム合金を半連続鋳造により造塊して、直径100mmのビレットを製造した。これらのビレットを、実施例1と同様に処理して押出用ビレットとし、これらの各押出用ビレットを480℃に加熱し、実施例1と同じソリッドダイスおよびフローガイドを用いて、実施例1と同一の条件で矩形形状の中実材に押出加工し、実施例1と同様に処理してT6材に調質した。これらのT6材を試験材として、実施例1と同じく、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、(3)粒界腐食試験を行い、特性を評価した。また、試験材No.22、23については、曲げ加工後の表面状態検査も実施した。結果を表4に示す。なお、表3〜4において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0051】
【表3】
Figure 0004398428
【0052】
【表4】
Figure 0004398428
【0053】
表4に示すように、試験材No.15〜17は、それぞれSi量、Mg量およびCu量が多いため耐食性が劣る。試験材No.18〜20は、それぞれSi量、Mg量およびCu量が少ないため強度が十分でない。試験材No.21はMn量が多いため、粗大な金属間化合物が生成し耐食性を低下させている。試験材No.22はCr量が少ないため、耐食性が低下する。試験材No.23はCr量が多いため、粗大な金属間化合物が生成して結晶粒が不均一となり、曲げ加工後の表面状態検査で不良が発生した。試験材No.24はMgとSiとの量的関係、Mg%≦1.7×Si%を満足しないため耐食性が劣っている。試験材No.25および26は、それぞれSi、Mg、Cuの合計量が本発明で規定される範囲の下限未満および上限を超えているため、それぞれ強度および耐食性が劣っている。試験材No.27はCu量とMg量との関係、Cu%/2≦Mg%を満足しないため耐食性が劣る。試験材No.28はCu量とMg量との関係、Mg%≦(Cu%/2)+0.6を満足しないため耐食性が劣る。
【0054】
実施例2
表1に示す組成を有するアルミニウム合金Aを半連続鋳造により造塊して直径100mmのビレットを製造し、500℃の温度で均質化処理を行った後、このビレットを表5に示すベアリング長さを有するソリッドダイスを用いて矩形形状の中実押出材(肉厚12mm、幅24mm)に押出加工した。押出温度はNo.34以外は480℃、試験材No.34は430℃とし、押出速度は3m/分とした。
【0055】
中実押出材を、表5に示す条件でプレス焼入れまたは焼入れ処理し、さらに実施例1と同一の条件で焼戻し処理してT6材とした。なお、表5において、焼入れ処理の冷却速度は溶体化処理温度から100℃までの平均冷却速度であり、溶体化処理加熱は雰囲気炉を使用した。
【0056】
得られたT6材を試験材として、実施例1と同様、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、(3)粒界腐食試験を行い、また、曲げ加工後の表面状態検査を実施し、特性を評価した。評価結果を表6に示す。
【0057】
比較例2
表1に示す組成を有するアルミニウム合金Aを半連続鋳造により造塊して、直径100mmのビレットを製造した。このビレットを表5に示す各製造条件により処理して、試験材No.29〜37、41、42についてはベアリング長さ6mm、試験材No.39についてはベアリング長さ0.4mm、試験材No.40についてはベアリング長さ65mmのソリッドダイスを用い、また試験材No.29〜40についてはフローガイドを配置することなく、試験材No.41、42についてはフローガイドを配置して、矩形形状の中実押出材に押出加工した。
【0058】
中実押出材を、表5に示す条件でプレス焼入れまたは焼入れ処理し、さらに実施例1と同一の条件で焼戻し処理してT6材とした。なお、表5において、プレス焼入れの冷却速度は水冷前の材料温度から100℃までの平均冷却速度、焼入れ処理の冷却速度は溶体化処理温度から100℃までの平均冷却速度であり、溶体化処理加熱は雰囲気炉を使用した。
【0059】
得られたT6材を試験材として、実施例1と同様、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、()粒界腐食試験を行い、特性を評価した。評価結果を表6に示す。なお、表5において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0060】
【表5】
Figure 0004398428
【0061】
【表6】
Figure 0004398428
【0062】
表6に示すように、本発明の製造条件に従う試験材No.29〜31、33、36、38はいずれも、優れた強度、良好な耐食性を示した。これに対して、試験材No.32プレス焼入れ時の冷却速度が低いため強度が劣る。試験材No.34は押出温度が低いため添加元素の固溶が不十分であり、強度が劣っている。試験材No.35は焼入れ、溶体化処理前の昇温速度が低いため、結晶粒が粗大化し伸びが低下し、曲げ加工後の表面性状が劣る。試験材No.37は焼入れ時の冷却速度が低いため強度が劣る。
【0063】
試験材No.39はソリッドダイスのベアリング長さが短いため、押出中にベアリングが破損し押出を中止した。試験材No.40はソリッドダイスのベアリング長さが長過ぎるため、押出温度が上昇して再結晶粒が粗大化し、伸びが低下し、耐食性が劣るものとなった。また、曲げ加工後の表面性状も劣る。
【0064】
フローガイドを配設してビレットを押継ぎする場合、試験材No.41はソリッドダイスの前面に配置したフローガイドのガイド孔の内周面とソリッドダイスのオリフィスの外周面との距離Aが小さいため、押出温度が上昇して再結晶粒が粗大化し、曲げ加工後の表面性状が劣るものとなった。一方、Aが5mm以上である試験材No.42は、微細な再結晶粒が得られ、強度、伸び、耐食性、曲げ加工後の表面性状は良好であった。
【0065】
実施例3
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を半連続鋳造により造塊して、直径200mmのビレットを製造した。これらのビレットを525℃で8時間均質化処理をして押出用ビレットとした。これらの各押出用ビレットを、ブリッジ幅Wに対するチャンバー深さDの比が0.5〜0.6のポートホールダイスを用いて、押出温度480℃、押出速度3m/分で外径30mm、内径20mmの管形状に押出加工(押出比:20)した。ダイスの溶着室におけるアルミニウム合金の溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比は1.3〜1.4であった。
【0066】
ついで、得られた管状押出材を、昇温速度10℃/秒で530℃の温度に加熱して溶体化処理した後、10秒以内に水冷による焼入れ処理を行い、180℃で10時間の人工時効処理(焼戻し処理)を行いT6材に調質した。これらのT6材を試験材として、実施例1と同じ方法に従って、(1)直角断面における結晶粒度、(2)引張試験、(3)粒界腐食試験を行い特性を評価した。評価結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
Figure 0004398428
【0068】
表7にみられるように、本発明に従う試験材No.43〜56はいずれも、優れた強度、良好な耐食性をそなえている。
【0069】
比較例3
表3に示す組成のアルミニウム合金を半連続鋳造により造塊して、直径100mmのビレットを製造した。これらのビレットを、実施例3と同様に処理して押出用ビレットとし、これらの各押出用ビレットを480℃に加熱し、実施例1と同じポートホールダイスを用いて管状押出材とし、実施例3と同様に処理してT6材に調質した。これらのT6材を試験材として、実施例3と同じく、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、()粒界腐食試験を行い、特性を評価した。試験材No.64、65については、曲げ加工後の表面性状検査も行った。試験結果を表8に示す。なお、表8において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0070】
【表8】
Figure 0004398428
【0071】
表8に示すように、試験材No.57〜59は、それぞれSi量、Mg量、Cu量が多いため耐食性が劣る。試験材No.60〜62は、それぞれSi量、Mg量、Cu量が少ないため強度が十分でない。試験材No.63はMn量が多いため、粗大な金属間化合物が生成し耐食性が劣るものとなった。試験材No.64はCr量が少ないため、耐食性が劣るものとなった。試験材No.65はCr量が多いため、粗大な金属間化合物が成形して結晶粒が不均一となり、曲げ加工後の表面性状が劣る。試験材No.66はMgとSiとの量的関係、Mg%≦1.7×Si%を満足しないため耐食性が劣っている。試験材No.67および68は、それぞれSi、Mg、Cuの合計量が本発明で規定される範囲の下限未満および上限を超えているため、それぞれ強度および耐食性が劣っている。試験材No.69はCu量とMg量との関係、Cu%/2≦Mg%を満足しないため耐食性が劣る。試験材No.70はCu量とMg量との関係、Mg%≦(Cu%/2)+0.6を満足しないため耐食性が劣る。
【0072】
実施例4
表1に示す組成を有するアルミニウム合金Aを半連続鋳造により造塊して、直径200mmのビレットを製造した。このビレットを500℃の温度で均質化処理後、押出温度480℃(但し、試験材No.76は430℃)、押出速度3m/分で管状押出材を作製した。押出ダイスとしては、表9の流速比を有するポートホールダイスを用いた。
【0073】
管状押出材を、表9に示す条件でプレス焼入れまたは焼入れ処理し、さらに実施例3と同一の条件で焼戻し処理してT6材とした。なお、表9において、プレス焼入れの冷却速度は水冷前の材料温度から100℃までの平均冷却速度、焼入れ処理の冷却速度は溶体化処理温度から100℃までの平均冷却速度であり、溶体化処理加熱は雰囲気炉を使用した。
【0074】
得られたT6材を試験材として、実施例3と同様、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、(3)粒界腐食試験を行い、特性を評価した。また、曲げ加工後の表面性状検査を行った。結果を表10に示す。
【0075】
比較例4
表1に示す組成を有するアルミニウム合金Aを半連続鋳造により造塊して、直径100mmのビレットを製造した。このビレットを500℃の温度で均質化処理後、押出温度480℃(但し、試験材No.76は430℃)、押出速度3m/分で管状押出材を作製した。試験材No.71〜79については、表9の流速比を有するポートホールダイスを用いて押出しを行い、試験材No.80については、ブリッジ幅Wに対するチャンバー深さDの比(D/W)が、0.43のポートホールダイスを用いて押出しを行った。
【0076】
ついで、管状押出材を、表9に示す条件でプレス焼入れまたは焼入れ処理し、さらに実施例3と同一の条件で焼戻し処理してT6材とした。
【0077】
得られたT6材を試験材として、実施例1と同様、(1)直角断面における結晶粒度の測定、(2)引張試験、()粒界腐食試験を行い、特性を評価した。評価結果を表10に示す。なお、表9〜10において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0078】
【表9】
Figure 0004398428
【0079】
【表10】
Figure 0004398428
【0080】
表10に示すように、本発明の製造条件に従う試験材No.71〜73、75、78はいずれも、優れた強度、良好な耐食性を示した。これに対して、試験材No.74はプレス焼入れ時の冷却速度が低いため強度が劣る。試験材No.76は押出温度が低いため、添加元素が十分固溶せず、強度が低下した。試験材No.77は焼入れ、溶体化処理前の昇温速度が低いため、結晶粒が粗大化し伸びが低下した。また、曲げ加工後の表面性状が劣っている。試験材No.79は焼入れ時の冷却速度が低いため強度が十分でない。試験材No.80は流速比が大きいため、押出温度の上昇に伴って再結晶粒が大きくなり、曲げ加工後の表面性状が劣るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、耐食性および二次加工性に優れた高強度アルミニウム合金押出材およびその製造方法が提供される。本発明によるアルミニウム合金押出材は、従来の鉄系の構造材に代わって自動車、鉄道車両、航空機等の輸送機器の構造材として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】 本発明で用いるソリッドダイスとフローガイドを示す断面図である。
【図2】 本発明の中実押出材の肉厚Tを示す図である。
【図3】 本発明で用いるポートホールダイスの雄型の正面図である。
【図4】 本発明で用いるポートホールダイスの雌型の背面図である。
【図5】 図3のポートホールダイスの雄型と図4の雌型を合わせた縦断面図である。
【図6】 図5のポートホールダイスの成形部の拡大図である。
【図7】 ポートホールダイスにおけるブリッジ幅Wに対するチャンバー深さDの比とダイス内でのメタルの流速比との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 質量%で、Si:0.6%〜1.2%、Mg:0.8%〜1.3%、Cu:1.3%〜2.1%を含有するとともに、下記の条件式(1)、(2)、(3)、(4)を満足し、
    3%≦Si%+Mg%+Cu%≦4%---(1)
    Mg%≦1.7×Si%---(2)
    Mg%+Si%≦2.7%---(3)
    Cu%/2≦Mg%≦(Cu%/2)+0.6%---(4)
    さらにCr:0.04%〜0.35%を含有し、且つ不純物としてのMnを0.05%以下に制限し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなり、結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有することを特徴とする耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材。結晶粒径とは、押出材の直角断面における結晶粒の短径の平均値をいう。
  2. 前記アルミニウム合金が、質量%で、さらにZr:0.03 %〜0.2 %、V:0.03 %〜0.2 %、Zn:0.03 %〜2.0 %のうちの1種類以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材。
  3. 請求項1または2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットをソリッドダイスを用いて中実材に押出加工する方法であって、ソリッドダイスのベアリングの長さ(L)が0.5mm以上で、且つ該ベアリングの長さ(L)と押出加工される中実材の肉厚(T)との関係がL≦5Tであるソリッドダイスを用いて押出加工し、押出加工された中実材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中実押出材とすることを特徴とする耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法。結晶粒径とは、押出材の直角断面における結晶粒の短径の平均値をいう。
  4. 前記ソリッドダイスの前面にフローガイドを配設してなり、該フローガイドは、そのガイド孔の内周面がソリッドダイスのベアリングに連続するオリフィスの外周面から5mm以上離れており、且つその厚さがビレットの直径の5〜25%であることを特徴とする請求項3記載の耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法。
  5. 請求項1または2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットをポートホールダイスまたはブリッジダイスを用いて中空材に押出加工する方法であって、ビレットが分断されてダイスのポート部に進入したのちマンドレルを取り囲んで再び一体化する溶着室におけるアルミニウム合金の溶着部での流速に対する非溶着部での流速の比を1.5以下として中空材に押出加工し、該中空材の断面組織において結晶粒径500μm以下の再結晶組織を有する中空押出材とすることを特徴とする耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法。結晶粒径とは、押出材の直角断面における結晶粒の短径の平均値をいう。
  6. 前記アルミニウム合金のビレットを500℃以上融点未満の温度で均質化処理と、均質化処理後のビレットを470℃以上融点未満の温度に加熱して押出加工する工程とからなることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法。
  7. 押出直後の押出材の表面温度が450℃以上に保持された状態で10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却するプレス焼入れまたは前記押出材を5℃/秒以上の昇温速度で480〜580℃の温度域に加熱する溶体化処理を行った後、10℃/秒以上の冷却速度で100℃以下の温度まで冷却する焼入れ処理工程と、170〜200℃で2〜24時間の熱処理を施す焼戻し処理工程とからなることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の耐食性に優れた高強度アルミニウム合金押出材の製造方法。
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